乾癬は皮膚の免疫システムの異常によって起こる慢性的な炎症性皮膚疾患です。薬による治療はもちろん大切ですが、日々の食生活も症状の安定や悪化に大きく影響することが研究によって明らかになってきています。「何を食べてはいけないのか」「どんな食品が症状を悪化させるのか」という疑問を持つ乾癬患者さんは非常に多く、食事管理は乾癬のセルフケアにおいて欠かせない要素のひとつです。この記事では、乾癬の人が避けるべき食品・飲料とその理由、そして逆に積極的に取り入れたい食材について、医学的な根拠をもとにわかりやすく解説します。
目次
- 乾癬と食事の関係——なぜ食べ物が症状に影響するのか
- 乾癬の人が食べてはいけないもの・控えるべき食品
- アルコールが乾癬に与える影響
- 脂質・糖質の過剰摂取が招くリスク
- グルテンと乾癬の関係
- ナス科の野菜・ナイトシェードと乾癬
- 加工食品・ファストフードを避けるべき理由
- 乾癬に積極的に取り入れたい食品・栄養素
- 乾癬と体重管理——肥満が症状を悪化させる理由
- 乾癬患者さんの食事管理で気をつけたいこと
- まとめ
この記事のポイント
乾癬患者はアルコール・加工肉・精製糖・トランス脂肪酸・加工食品を避け、青魚・緑黄色野菜・発酵食品などの抗炎症食品を積極的に摂ることで症状安定が期待できる。食事管理は薬物療法を補完するセルフケアであり、専門医との連携が重要。
🎯 乾癬と食事の関係——なぜ食べ物が症状に影響するのか
乾癬は免疫系の異常によって引き起こされる炎症性疾患です。通常、皮膚の細胞は約28日かけてターンオーバー(新陳代謝)を行いますが、乾癬では免疫細胞が皮膚に過剰反応を起こすことで、そのサイクルが数日にまで短縮されます。その結果、皮膚の表面に鱗屑(りんせつ)と呼ばれる白っぽいかさぶた状のものが積み重なり、赤みや炎症を伴う斑(プラーク)が現れます。
乾癬の発症や悪化には遺伝的素因に加え、ストレス・感染症・薬剤・喫煙・肥満など多くの環境因子が関与することが知られています。そしてその中のひとつとして、食事内容が慢性的な炎症を促進したり、あるいは抑制したりすることがわかってきています。
炎症は乾癬の根本的なメカニズムであるため、炎症を促進する食品を多く摂取することで症状が悪化しやすくなります。逆に抗炎症作用を持つ食品を積極的に取り入れることで、症状の安定化につながる可能性があります。食事だけで乾癬を完治させることは難しいものの、食事管理は薬物療法を補完する重要なセルフケアとして位置づけられています。
また、腸内環境の乱れが全身の炎症に影響することも近年の研究で注目されています。腸内細菌のバランスが崩れると「リーキーガット(腸管透過性亢進)」という状態になり、本来は体内に入るべきでない物質が腸壁から漏れ出て免疫系を過剰に刺激することがあります。このような腸と皮膚の関係性(腸皮膚相関)の観点からも、食事内容が乾癬に影響を与えるメカニズムが説明されています。
Q. 乾癬患者がアルコールを避けるべき理由は?
アルコールは炎症性サイトカイン(TNF-α・IL-17・IL-23)の産生を促進し、腸管バリア機能を低下させることで乾癬の症状を悪化させます。また治療薬メトトレキサートとの併用では肝障害リスクが著しく高まるため、完全禁酒が理想とされています。
📋 乾癬の人が食べてはいけないもの・控えるべき食品
乾癬の症状を悪化させる可能性がある食品にはいくつかのカテゴリがあります。ここでは代表的なものを整理します。すべての乾癬患者さんに同じ影響が出るわけではなく、個人差があることも念頭に置いたうえで参考にしてください。
主に避けるべきとされている食品・飲料は以下のとおりです。
- アルコール(ビール・ワイン・蒸留酒など)
- 動物性脂肪の多い食品(赤身肉・加工肉・ラード・バターなど)
- 精製糖・砂糖の多い食品(菓子類・清涼飲料水・白砂糖など)
- 精製炭水化物(白米・白パン・菓子パンなど)
- グルテンを含む食品(小麦・大麦・ライ麦など)※グルテン過敏症・セリアック病がある場合
- ナス科植物(なす・トマト・パプリカ・じゃがいも・唐辛子など)
- 高度加工食品・ファストフード
- 乳製品(牛乳・チーズ・バターなど)※乳製品過敏がある場合
- トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング・スナック菓子など)
これらの食品の多くは体内で炎症を促進するプロスタグランジンやサイトカインの産生を高める作用があり、乾癬の炎症反応を悪化させるリスクがあります。次のセクションから、それぞれについてより詳しく説明します。
💊 アルコールが乾癬に与える影響
乾癬患者さんにとって、アルコールは最も注意が必要な食品のひとつです。複数の研究において、アルコールの摂取量が多いほど乾癬の症状が悪化しやすく、治療への反応性も低下することが報告されています。
アルコールが乾癬に悪影響を及ぼすメカニズムとしては、以下のことが考えられています。
まず、アルコールは免疫系に直接影響を与え、炎症性サイトカイン(TNF-α・IL-17・IL-23など)の産生を促進します。乾癬の病態にはこれらの炎症性サイトカインが深く関与しているため、アルコール摂取によって炎症カスケードが活性化されることで症状が悪化します。
次に、アルコールは腸管のバリア機能を低下させ、前述のリーキーガット(腸管透過性亢進)を引き起こしやすくします。腸内環境が乱れることで全身の炎症が高まり、皮膚の症状にも波及します。
また、乾癬の治療薬のひとつであるメトトレキサートは肝毒性があり、アルコールとの併用によって肝障害のリスクが著しく高まります。そのため、メトトレキサートを使用している患者さんはアルコールを完全に避けることが強く推奨されています。生物学的製剤を使用している場合も、免疫抑制状態にあることを考慮するとアルコールは控えるほうが望ましいです。
さらに、アルコールはカロリーが高く、肥満につながります。肥満は乾癬の重要な悪化因子であるため、この観点からもアルコール摂取を控えることが推奨されます。
特にビールには麦芽由来のグルテンが含まれており、グルテン過敏症を持つ乾癬患者さんには二重のリスクがあります。ワインも亜硫酸塩などの添加物が炎症反応を引き起こす可能性があります。
乾癬患者さんへのアドバイスとしては、「完全禁酒が理想」とされていますが、少なくとも頻繁な飲酒・大量飲酒は確実に避けるべきです。飲む場合でも、週に1〜2回、少量にとどめることが重要です。
Q. グルテンフリー食は乾癬患者全員に必要ですか?
グルテンフリー食がすべての乾癬患者に必須なわけではありません。ただし乾癬患者の一部はセリアック病や非セリアック性グルテン過敏症を合併しており、その場合は症状改善が期待できます。グルテン摂取後に症状が悪化すると感じる方は、専門医への相談と検査が推奨されます。
🏥 脂質・糖質の過剰摂取が招くリスク
乾癬の炎症反応は、体内の脂質バランスと密接に関係しています。特に、炎症を促進する「アラキドン酸」という脂肪酸を含む食品の過剰摂取は、乾癬の症状を悪化させる可能性があります。アラキドン酸は主に動物性食品(赤身肉・鶏の皮・内臓・乳製品・卵黄など)に多く含まれており、体内でプロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性物質に変換されます。
特に加工肉(ウインナー・ハム・ベーコン・サラミなど)は、動物性脂肪に加えて亜硝酸塩などの添加物も含んでいるため、乾癬患者さんには特に注意が必要です。赤身肉(牛肉・豚肉・羊肉など)の摂りすぎも控えることが推奨されます。
また、精製糖や精製炭水化物の過剰摂取も乾癬に悪影響を及ぼします。砂糖の多い食品を食べると血糖値が急激に上昇し、インスリンの大量分泌が起こります。このインスリンスパイクは炎症性サイトカインの産生を促進することが知られています。また、高血糖状態は「糖化」と呼ばれる反応を引き起こし、組織の炎症を悪化させます。
精製炭水化物(白米・白パン・菓子パン・うどん・ラーメンなど)は食物繊維が少なく、血糖値を急激に上昇させるGI値(グリセミック指数)が高い食品です。これらを主食にしている場合は、玄米・全粒粉パン・オートミールなど食物繊維が豊富で血糖値の上昇が緩やかな低GI食品に切り替えることが勧められます。
清涼飲料水(コーラ・ジュース・スポーツドリンクなど)は液体のため吸収が早く、血糖値を急激に上昇させます。ゼロカロリー飲料も人工甘味料が腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、乾癬患者さんは水・お茶・無糖のハーブティーなどを選ぶことが望ましいです。
トランス脂肪酸についても注意が必要です。マーガリン・ショートニング・スナック菓子・市販の揚げ物・一部のクッキーやケーキなどに含まれるトランス脂肪酸は、体内の炎症を高めることが確認されています。食品ラベルで「部分水素添加油脂」と記載のあるものはトランス脂肪酸を含む可能性が高いため、確認する習慣をつけましょう。
⚠️ グルテンと乾癬の関係
グルテンは小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種で、パン・パスタ・うどん・ラーメン・餃子の皮・ケーキ・クッキーなど多くの食品に含まれています。
乾癬患者さんとグルテンの関係については、複数の研究で関連性が示されています。乾癬患者さんの一部にはセリアック病(グルテン過敏性腸症)や非セリアック性グルテン過敏症を合併しているケースがあり、このような患者さんではグルテンフリー食を実践することで乾癬の症状が改善するという報告があります。
一般的な乾癬患者さんでのセリアック病の合併率は一般人口(約1%)よりも高いとされており、乾癬とセリアック病には共通の免疫学的メカニズムが関与していると考えられています。
グルテンが腸粘膜に炎症を起こすことで腸管透過性が亢進し、全身性の炎症が促進されるメカニズムが乾癬にも影響している可能性があります。
ただし、すべての乾癬患者さんがグルテンフリー食を実践する必要があるわけではありません。グルテン過敏症が疑われる場合(グルテンを含む食品を食べると消化器症状や皮膚症状が悪化すると感じる場合)は、医師または栄養士に相談のうえ、グルテン感受性の検査を受けることが推奨されます。検査でグルテン過敏症が確認された場合は、積極的にグルテンフリー食を取り入れることが症状改善につながる可能性があります。
グルテンフリーの主食の代替品としては、玄米・もち米・じゃがいも(ナス科ではありますが)・そば・とうもろこし(コーンミール)・キヌア・アマランス・オートミール(グルテンフリー認証品)などが利用できます。
🔍 ナス科の野菜・ナイトシェードと乾癬
ナイトシェード(ナス科植物)と乾癬の関係は、医学的なエビデンスとしてはまだ研究段階にあるものの、一部の患者さんや自然療法の分野では長年注目されてきたトピックです。
ナス科に属する食品には以下のものが含まれます。
- なす
- トマト・トマト製品(ケチャップ・トマトソースなど)
- パプリカ・ピーマン
- 唐辛子・チリペッパー
- じゃがいも(さつまいもはナス科ではなく問題なし)
- たばこ(食品ではないが同じナス科)
ナス科植物には「ソラニン」「カプサイシン」「アルカロイド」などの化合物が含まれており、これらが腸の透過性を高め、全身の炎症反応を引き起こす可能性があるとされています。特に、唐辛子に含まれるカプサイシンは皮膚の神経終末を刺激し、かゆみや灼熱感を悪化させる可能性があります。
ただし、ナス科食品の制限については全ての乾癬患者さんに当てはまるわけではなく、個人差が大きいとされています。「トマトを食べると症状が悪化する」「ナスを食べた翌日に皮膚が赤くなった」などの体験を持つ患者さんがいる一方、まったく影響が見られない患者さんも多くいます。
実践的なアプローチとしては、食事日記をつけて「食べた食品」と「翌日以降の症状の変化」を記録し、自分にとってナス科食品が悪化因子になっているかどうかを確認する「除去食試験」が有効です。ナス科食品を2〜4週間避けてみて症状に変化があるかを確認し、その後少量から再導入して反応を観察するという方法が取られることがあります。
Q. 乾癬の症状改善に役立つ食品を教えてください
EPA・DHAを含むサバ・イワシなどの青魚を週3〜4回以上摂ることが特に推奨されます。加えて、ほうれん草・ブロッコリーなどの緑黄色野菜、ブルーベリー等のベリー類、納豆・味噌などの発酵食品、玄米・豆類といった食物繊維豊富な食品も炎症抑制に有効です。
📝 加工食品・ファストフードを避けるべき理由
現代の食生活で多く摂取されている加工食品やファストフードは、乾癬患者さんにとってさまざまな観点から問題のある食品です。
まず、これらの食品には先述したトランス脂肪酸・精製糖・精製炭水化物・飽和脂肪酸が多く含まれています。これらはすべて体内の炎症を促進する因子です。
次に、加工食品には食品添加物が多く使用されています。防腐剤・人工着色料・人工香料・乳化剤などの添加物は腸内細菌のバランスを乱し、腸内環境を悪化させることがあります。腸内フローラの乱れは全身の炎症を高め、乾癬の症状悪化につながります。
また、加工食品や市販の惣菜・スナック類には塩分(ナトリウム)が非常に多く含まれています。高ナトリウム食は免疫系に影響を与え、炎症性のTh17細胞を増加させることが報告されており、乾癬の病態に関与するIL-17などの炎症性サイトカインの産生を促進します。
ファストフードはこれらの問題点を複合的に持っています。揚げ物にはトランス脂肪酸・飽和脂肪酸が多く、バンズには精製小麦粉、ソースには砂糖・食品添加物が大量に含まれています。さらに、ファストフードは高カロリーで肥満につながりやすく、肥満は乾癬を悪化させる重要な因子です。
外食が多い場合は、揚げ物を避けて焼き物・蒸し物・煮物を選ぶ、野菜の多いメニューを選ぶ、ドレッシングやソースを控えるなど、選択の工夫ができます。コンビニでは、添加物の少ない食品を選び、野菜スティック・ゆで卵・豆腐・納豆などを活用するとよいでしょう。
💡 乾癬に積極的に取り入れたい食品・栄養素
乾癬の食事管理では「食べてはいけないもの」を避けることと同様に、「積極的に取り入れるべき食品」を意識することも重要です。抗炎症作用を持つ食品を積極的に摂ることで、体内の炎症バランスを整え、症状の安定化につなげることが期待できます。
オメガ3脂肪酸を多く含む食品は特に推奨されます。オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)には強い抗炎症作用があり、乾癬の炎症反応を抑制する効果が期待できます。多く含まれる食品としては、サバ・イワシ・サンマ・サーモン・ニシンなどの青魚、クルミ、亜麻仁油(フラックスシードオイル)、チアシード、えごま油などがあります。週に3〜4回以上は青魚を取り入れることが理想的です。
野菜・果物も豊富に摂ることが大切です。特に抗酸化物質(ポリフェノール・ビタミンC・ビタミンE・β-カロテンなど)を多く含む緑黄色野菜(ほうれん草・ケール・ブロッコリー・にんじん・かぼちゃなど)やベリー類(ブルーベリー・ストロベリー・ラズベリーなど)は炎症を抑制する効果があります。
食物繊維を多く含む食品も腸内環境を整えるうえで重要です。玄米・全粒粉・オートミール・豆類(大豆・ひよこ豆・レンズ豆など)・根菜類などに豊富に含まれます。食物繊維は腸内の有益な細菌の栄養源となり、健全な腸内フローラの維持に貢献します。
発酵食品も腸内環境改善に有効です。ヨーグルト(加糖でないもの)・キムチ・ぬか漬け・納豆・味噌・醤油・酢などに含まれる乳酸菌・ビフィズス菌などのプロバイオティクスは腸内フローラのバランスを整え、全身の炎症を低減させる可能性があります。
ビタミンDの摂取も乾癬患者さんには特に重要です。ビタミンDには免疫調節作用があり、乾癬の治療にも外用ビタミンD3製剤が使用されているほどです。食品から摂れるビタミンDとしては、サーモン・マグロ・イワシなどの魚類・きのこ類(干しシイタケなど)があります。ただし、食品からのビタミンD摂取量には限界があるため、日光浴(紫外線療法との関連もあります)やサプリメントの活用も検討されることがあります。
亜鉛・セレン・ビタミンAなどの微量栄養素も皮膚の健康に重要です。亜鉛は牡蠣・豚肉・牛肉・カシューナッツなどに、セレンはブラジルナッツ・魚介類・全粒穀物などに含まれています。ビタミンAはレバー・卵黄・にんじん・ほうれん草などに豊富です。
ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンは強力な抗炎症・抗酸化作用を持ち、乾癬の炎症抑制に有益である可能性が研究で示されています。カレーなどの料理に積極的に使用したり、ターメリックラテとして飲用したりする形で取り入れることができます。
緑茶・紅茶・ハーブティーにはポリフェノール類が含まれており、抗炎症・抗酸化作用が期待できます。アルコールや清涼飲料水の代わりにこれらの飲み物を選ぶことが推奨されます。
Q. 肥満はなぜ乾癬の症状を悪化させるのですか?
内臓脂肪からはTNF-αやIL-17などの炎症性サイトカインが分泌され、乾癬の炎症を直接促進します。また肥満は生物学的製剤の治療効果を低下させる要因にもなります。体重を5〜10%以上減らすことで症状が有意に改善するとの研究結果もあり、体重管理は重要な治療補完策です。
✨ 乾癬と体重管理——肥満が症状を悪化させる理由
乾癬と肥満の関係は非常に密接であり、多くの研究によって明確な関連性が示されています。乾癬患者さんには肥満の割合が高く、また肥満は乾癬の症状を悪化させるとともに、治療への反応性を低下させることが知られています。
肥満が乾癬を悪化させるメカニズムとして、まず脂肪組織(特に内臓脂肪)から炎症性サイトカイン(TNF-α・IL-6・IL-17・レプチンなど)が分泌されることが挙げられます。これらの炎症性物質は乾癬の病態そのものに関与しており、肥満によってこれらが過剰に産生されることで乾癬の炎症が促進されます。
次に、肥満は乾癬の合併症として知られる「乾癬性関節炎」のリスクも高めます。また、心血管疾患・糖尿病・高血圧・高脂血症などのメタボリックシンドロームを構成する疾患も乾癬患者さんに合併しやすいことが知られており、肥満はこれらのリスクをさらに高めます。
さらに、生物学的製剤などの乾癬治療薬の多くは体重を基準に投与量が設定されることがあり、肥満によって薬剤の効果が十分に発揮されないケースもあります。
複数の研究で、体重を5〜10%以上減少させることで乾癬の症状が有意に改善することが示されています。特に肥満または過体重の乾癬患者さんでは、適切な体重管理が治療効果を高める重要な要素となります。
食事管理においては、先述した「炎症を促進する食品を避ける」「抗炎症食品を積極的に取り入れる」という方針が、体重管理にも有効です。特に、砂糖・精製炭水化物・アルコール・加工食品を控えることは、体重管理と乾癬の炎症抑制の両方に効果的です。地中海式食事法(野菜・果物・全粒穀物・豆類・魚介類・オリーブオイルを中心とした食事)は、抗炎症作用があり、かつ体重管理にも有効な食事パターンとして、乾癬患者さんに特に推奨されています。
📌 乾癬患者さんの食事管理で気をつけたいこと

乾癬の食事管理を実践するうえで、いくつか重要な点をおさえておきましょう。
食事日記をつけることは非常に有効な方法です。乾癬の悪化因子は個人差が大きいため、自分にとって何が症状に影響しているかを把握することが重要です。食べたもの・飲んだもの・その日の症状(かゆみ・赤み・スケールの程度)・ストレスレベル・睡眠時間などを記録することで、自分固有のパターンが見えてきます。スマートフォンのアプリや専用ノートを活用するとよいでしょう。
急激な食事制限や単一食品の除去は推奨されません。特定の食品を一度に複数制限すると、どの食品が悪影響を与えているかが判断しにくくなるとともに、栄養バランスが崩れるリスクがあります。除去食試験を行う場合は、1種類ずつ段階的に行い、医師や栄養士の指導のもとで実施することが望ましいです。
サプリメントの利用については慎重な姿勢が必要です。オメガ3脂肪酸・ビタミンD・プロバイオティクス・ターメリックなどのサプリメントが乾癬に有益である可能性はありますが、服用している薬との相互作用が生じる場合があります。特に抗凝固薬を使用している場合、オメガ3脂肪酸のサプリメントは出血リスクを高める可能性があります。サプリメントの使用前には必ず担当医に相談してください。
乾癬は食事だけで治せるわけではないことを理解しておくことも大切です。食事管理は薬物療法・外用療法・光線療法などの標準的な治療を補完するものです。食事を改善しながらも、定期的に皮膚科を受診し、担当医と連携して治療を進めることが重要です。
精神的なストレスも乾癬の重要な悪化因子であることを忘れてはいけません。食事制限によるストレスが乾癬を悪化させては本末転倒です。「食べてはいけないもの」を完璧に排除しようとするあまり、食事を楽しめなくなったり、社会的な孤立を招いたりすることは避けるべきです。たとえば外食の機会や特別な行事での食事は、普段の管理をしっかり行っていれば多少の逸脱は許容できます。日々の食事全体のパターンとして「炎症を抑える食事」を心がけることが現実的なアプローチです。
また、乾癬はメタボリックシンドロームや心血管疾患との関連が知られており、食事管理は乾癬の症状改善だけでなく、これらの全身疾患の予防という意味でも重要です。乾癬の食事管理を「皮膚病の治療」としてだけでなく、「全身の健康管理」として位置づけることで、長期的に継続しやすくなります。
乾癬患者さんの中には、乳製品が症状を悪化させると感じている方もいます。牛乳・チーズ・ヨーグルト・バターなどはアラキドン酸を含み、また一部の患者さんでは乳糖不耐症や乳タンパク(カゼイン)への過敏反応が炎症を促進することがあります。グルテン過敏症と同様、食事日記と除去食試験で自分への影響を確認することが有効です。
水分補給についても触れておきます。皮膚の乾燥は乾癬の症状を悪化させる要因のひとつです。十分な水分を内側から補給することで皮膚の保湿状態を維持することができます。1日1.5〜2リットルを目安に、水や無糖のお茶を積極的に飲むことが推奨されます。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、乾癬の患者様から「何を食べれば良いのか」「何を避ければ良いのか」というご相談を多くいただいており、食事管理が症状のコントロールに大きく関わることを日々の診療で実感しています。特にアルコールの制限や抗炎症作用のある青魚・野菜を積極的に取り入れることは、薬物療法と並行して症状の安定化につながるケースが多く、地中海式食事法を参考にした食生活への切り替えを患者様にお勧めすることがあります。ただし、食事管理はあくまで標準治療を補うものですので、ご自身で極端な制限をされる前にぜひ一度専門医にご相談いただき、お一人おひとりの状態に合った無理のないアプローチを一緒に考えていきましょう。」
🎯 よくある質問
主にアルコール、赤身肉・加工肉などの動物性脂肪、砂糖・精製炭水化物、トランス脂肪酸、加工食品・ファストフードが挙げられます。これらは体内の炎症を促進するサイトカインの産生を高め、乾癬の症状を悪化させるリスクがあります。個人差もあるため、食事日記で自分の症状との関係を確認することが重要です。
完全禁酒が理想とされています。アルコールは炎症性サイトカインの産生を促進し、腸内環境を悪化させるほか、治療薬メトトレキサートとの併用で肝障害リスクも高まります。完全禁酒が難しい場合でも、頻繁な飲酒・大量飲酒は避け、週1〜2回・少量にとどめることが推奨されます。
すべての乾癬患者さんに必須ではありません。ただし、乾癬患者さんの一部にはセリアック病や非セリアック性グルテン過敏症を合併しているケースがあり、そのような方ではグルテンフリー食で症状が改善することがあります。グルテンを含む食品で症状が悪化すると感じる場合は、医師に相談のうえ検査を受けることをお勧めします。
抗炎症作用を持つ食品の積極的な摂取が推奨されます。特に、EPA・DHAを含むサバ・イワシなどの青魚(週3〜4回以上が理想)、ほうれん草・ブロッコリーなどの緑黄色野菜、ブルーベリーなどのベリー類、発酵食品、玄米・豆類などの食物繊維が豊富な食品が効果的です。地中海式食事法を参考にするとよいでしょう。
食事管理だけで乾癬を完治させることは難しいとされています。食事管理はあくまで薬物療法・外用療法・光線療法などの標準治療を補完するセルフケアです。アイシークリニックでは、食事管理についても医師や専門スタッフが一緒にご相談に応じています。症状でお悩みの方はまず専門医への受診をお勧めします。
📋 まとめ
乾癬は免疫系の異常による慢性炎症性疾患であり、食事内容が症状の悪化や改善に関与することが明らかになっています。乾癬の人が特に避けるべき食品としては、アルコール・赤身肉や加工肉などの動物性脂肪・砂糖や精製炭水化物・グルテン(グルテン過敏症がある場合)・ナス科の野菜(個人差あり)・加工食品・ファストフード・トランス脂肪酸などが挙げられます。
これらの食品を避ける一方で、オメガ3脂肪酸を多く含む青魚・抗酸化物質豊富な野菜や果物・食物繊維の多い全粒穀物や豆類・発酵食品・ビタミンDを含む食品などを積極的に取り入れることで、体内の炎症バランスを整えることが期待できます。
食事管理においては、食事日記をつけて自分の症状との関係を観察すること、急激な制限よりも段階的なアプローチを取ること、体重管理を意識すること、そして地中海式食事法のような抗炎症食パターンを参考にすることが実践的なアドバイスとなります。
最も大切なことは、食事管理はあくまで薬物療法や外用療法などの標準治療を補完するものであり、皮膚科専門医による治療と並行して実施することです。乾癬の症状でお悩みの方は、まず専門医にご相談ください。アイシークリニック上野院では、乾癬を含む皮膚疾患に関する相談を承っています。食事管理についても医師や専門スタッフが一緒に考えますので、お気軽にお問い合わせください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 乾癬の診断・治療に関するガイドラインおよび疾患情報(炎症性皮膚疾患としての乾癬の病態、悪化因子、治療方針に関する公式情報)
- 厚生労働省 – 日本人の食事摂取基準および栄養・食生活に関する指針(脂質・糖質・食物繊維などの適切な摂取量や食事管理の根拠となる基準情報)
- PubMed – 乾癬と食事・炎症の関連に関する査読済み医学文献(アルコール・肥満・グルテン・オメガ3脂肪酸・地中海食などと乾癬の関係を示す研究論文群)
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務