「平日に溜まった睡眠不足を、週末にまとめて寝ることで解消しよう」と考えたことはありませんか?多くの方が習慣的に行っているこの「寝だめ」ですが、実は科学的に見ると思うような効果は期待できないことが分かっています。むしろ、体内時計を乱したり、翌週の疲れをより強くしてしまったりするリスクもあります。この記事では、なぜ寝だめに効果がないのか、そして本当に睡眠不足を解消するにはどうすればよいかを、医学的な根拠とともに詳しく解説していきます。
目次
- 寝だめとは何か?多くの人が行う理由
- 寝だめに効果がない理由① 睡眠負債は完全には返済できない
- 寝だめに効果がない理由② 体内時計が乱れる「社会的時差ぼけ」
- 寝だめに効果がない理由③ 睡眠の質と量は別物である
- 寝だめに効果がない理由④ 認知機能の低下は取り戻しにくい
- 寝だめが引き起こす体への悪影響
- 睡眠負債とは何か?どのくらい危険なのか
- 正しい睡眠不足の解消方法
- 良質な睡眠を毎日確保するためのポイント
- まとめ

🎯 寝だめとは何か?多くの人が行う理由
寝だめとは、平日に十分な睡眠が取れなかった分を補うために、休日や週末に長時間睡眠を取ろうとする行動のことです。日本では働き世代を中心に多くの人がこの習慣を持っており、「金曜の夜から日曜の朝まで思いっきり寝る」「土日は昼過ぎまで布団の中にいる」という方も珍しくありません。
そもそも、なぜ多くの人が寝だめをしようとするのでしょうか。その背景には、現代社会における慢性的な睡眠不足があります。仕事や育児、勉強、スマートフォンの使用など、様々な要因によって平日の睡眠時間は削られがちです。厚生労働省の調査によると、日本人の平均睡眠時間はOECD加盟国の中でも特に短く、睡眠不足に悩む人の割合は非常に高い水準にあります。
このような状況の中で、週末に長く眠ることで「帳消しにしよう」という発想が生まれるのは自然なことかもしれません。しかし、この考え方には大きな落とし穴が潜んでいます。人間の睡眠の仕組みは、貯金のように積み立てたり、後から取り返したりすることができるほど単純ではないからです。
📋 寝だめに効果がない理由① 睡眠負債は完全には返済できない
寝だめに効果がない最も根本的な理由として、睡眠不足で生じた「睡眠負債」は週末の長時間睡眠では完全に解消できないという点が挙げられます。
アメリカのペンシルバニア大学が行った研究では、1週間にわたって睡眠を1日6時間以下に制限されたグループと、1日8時間の睡眠を確保したグループを比較したところ、睡眠制限を受けたグループでは反応速度や集中力が著しく低下したことが示されました。そして、その後2〜3日間の回復睡眠を与えても、パフォーマンスは完全には元のレベルに戻らなかったという結果が得られています。
つまり、月曜日から金曜日にかけて毎日2時間ずつ睡眠を削ったとしても、土日に10時間ずつ眠ったからといって、蓄積された睡眠負債がきれいに「返済」されるわけではないのです。体は一時的に睡眠の量を補えても、その間に低下した認知機能や免疫機能が完全に元通りになるまでには、より長い時間と継続的な睡眠の改善が必要とされます。
また、睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」というサイクルがあり、それぞれが記憶の定着や体の修復、感情の調整など異なる役割を担っています。この睡眠サイクルは一夜の中で規則正しく繰り返されることが理想であり、まとめて眠るだけでは質の高い睡眠サイクルを十分に確保しているとはいえません。長く寝たとしても、睡眠の構造自体が乱れていれば、脳や体が本当の意味で回復することはないのです。
💊 寝だめに効果がない理由② 体内時計が乱れる「社会的時差ぼけ」
寝だめが問題視される大きな理由の一つが、体内時計を狂わせてしまうことにあります。この状態は「社会的時差ぼけ(ソーシャルジェットラグ)」と呼ばれ、近年の睡眠研究において非常に注目されている概念です。
社会的時差ぼけとは、平日と休日の睡眠・起床時刻の大きなズレによって起こる体内時計の乱れのことです。例えば、平日は毎朝7時に起きているのに、週末は昼の12時まで寝ているという場合、その差は5時間になります。これはまるで毎週末に日本からハワイ(標準時差約5時間)に旅行して月曜日に戻ってきているようなものです。
人間の体内時計は約24時間のリズム(サーカディアンリズム)で動いており、睡眠・覚醒だけでなく、体温、ホルモン分泌、消化活動、免疫機能なども連動してコントロールしています。このリズムが崩れると、月曜日の朝になっても体は「まだ夜中」と感じてしまい、目覚めが悪く、午前中のパフォーマンスが著しく低下します。「月曜日の朝がつらい」「週の始めは頭が働かない」という経験がある方は、まさにこの状態に陥っている可能性があります。
さらに、社会的時差ぼけが慢性化すると、肥満、糖尿病、心血管疾患、うつ病などのリスクが高まることも研究で示されています。ドイツのミュンヘン大学による大規模調査では、社会的時差ぼけが1時間増えるごとに肥満リスクが約33%上昇するという結果も報告されています。週末の寝だめは、単に「眠い月曜日」を生み出すだけでなく、長期的な健康リスクにも影響するのです。
🏥 寝だめに効果がない理由③ 睡眠の質と量は別物である
「昨日は10時間も寝たのに、なんだか疲れが取れない」という経験をしたことはないでしょうか。これは、睡眠の「量」だけが多くても、「質」が伴っていなければ十分な休息にならないことを示しています。
良質な睡眠とは、深い眠り(深いノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)が適切なリズムで繰り返される状態を指します。通常、一晩の睡眠は90分程度のサイクルで4〜6回繰り返され、その中で睡眠の深さが変化します。入眠直後は深いノンレム睡眠が多く、後半になるにつれてレム睡眠の割合が増えていきます。
しかし、寝だめをしようとして普段よりもずっと長く眠ろうとすると、このリズムが崩れやすくなります。特に後半の睡眠は浅くなりがちで、うとうとしているだけの時間が増え、深い回復睡眠の割合が減ってしまいます。その結果、時間的には長く眠ったにもかかわらず、スッキリとした爽快感が得られにくくなるのです。
また、昼近くまで眠り続けると、朝の光を浴びるタイミングが遅れます。朝の光は体内時計をリセットし、夜になると自然に眠くなるホルモン(メラトニン)の分泌サイクルを整える重要な役割を持っています。この光を浴び損ねることで、夜になっても目が冴えてしまい、翌日も寝つきが悪くなるという悪循環に陥ることがあります。
⚠️ 寝だめに効果がない理由④ 認知機能の低下は取り戻しにくい
睡眠不足が続くと、集中力、判断力、記憶力、反応速度といった認知機能が著しく低下することはよく知られています。問題なのは、この低下が週末の寝だめによっても完全には回復しないという点です。
2019年にアメリカの科学誌「カレント・バイオロジー」に掲載された研究では、1週間にわたって睡眠を制限されたグループを対象に、週末に十分な回復睡眠を取らせた場合と取らせなかった場合を比較しました。回復睡眠を取ったグループは主観的な眠気や倦怠感は改善しましたが、認知機能テストのスコアは睡眠が制限されていない対照グループのレベルには戻りませんでした。また、回復睡眠後も代謝異常(インスリン感受性の低下など)が残存していたことも報告されています。
さらに興味深いのは、睡眠不足が続くと、当事者自身がその機能低下に気づきにくくなるという点です。慢性的な睡眠不足の状態では「今の自分がどれほど眠いか」「どれほどパフォーマンスが落ちているか」という自己評価が鈍くなり、「自分は大丈夫」と錯覚してしまいがちです。これは睡眠不足による認知機能低下の中でも特に厄介な側面であり、睡眠不足を軽視させる原因にもなっています。
週末にたっぷり寝て「スッキリした」と感じても、それは主観的な疲労感が一時的に和らいだに過ぎず、脳や体の機能が完全に回復しているわけではないと理解することが重要です。
🔍 寝だめが引き起こす体への悪影響
寝だめが単に「効果がない」だけでなく、積極的に体に悪影響をもたらす可能性があることも知っておく必要があります。以下に代表的な悪影響をまとめます。
🦠 頭痛(睡眠時頭痛)
長時間睡眠後に頭痛が起きる経験をしたことがある方は少なくないでしょう。これは「睡眠時頭痛」と呼ばれるもので、長時間同じ姿勢でいることによる血流の変化や、脳内の神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)のバランスが乱れることが原因と考えられています。また、睡眠中は水分補給ができないため、長時間眠ると脱水症状を引き起こしやすく、これも頭痛の一因となります。
👴 倦怠感・体のだるさ
「たっぷり寝たのに体がだるい」という状態は、過剰な睡眠による弊害の一つです。長時間の横臥は筋肉を使わない状態が続くため、血流が滞り、体のだるさや腰痛を引き起こすことがあります。また、体内時計が乱れることで自律神経のバランスが崩れ、これもだるさや無気力感の原因になります。
🔸 夜の不眠
昼過ぎまで眠ることで、夜になっても睡眠欲求(睡眠圧)が十分に高まらず、夜なかなか寝つけないという問題が生じます。これが翌日の睡眠不足につながり、また平日に睡眠が足りなくなる…という悪循環が生まれます。寝だめは「今週末の疲れを癒す」つもりが、「来週の睡眠不足を作り出す」結果になりがちです。
💧 代謝・ホルモンへの影響
不規則な睡眠パターンは、インスリンの働きを低下させ、血糖値のコントロールを乱すことがあります。また、コルチゾール(ストレスホルモン)やレプチン・グレリン(食欲に関わるホルモン)の分泌リズムも乱れ、過食や体重増加につながりやすくなります。長期的には糖尿病や肥満のリスクを高める要因になりえます。
✨ 気分の落ち込みや不安感
体内時計の乱れは、セロトニンやドーパミンといった気分に関わる神経伝達物質の分泌にも影響します。週末の寝だめ後にどこか気分が優れない、月曜日に強い憂鬱感を感じるという方は、この影響を受けている可能性があります。

📝 睡眠負債とは何か?どのくらい危険なのか
「睡眠負債」という言葉は、スタンフォード大学の睡眠研究者ウィリアム・デメント博士が提唱した概念で、毎日の睡眠不足が積み重なることで生じる「睡眠の借金」のことを指します。
人が必要とする睡眠時間(睡眠必要量)は個人差がありますが、成人では一般的に7〜9時間とされています。毎日6時間しか眠れていない人は、1日1〜3時間の睡眠負債を毎日積み上げていることになります。1週間で7〜21時間、1ヶ月では30〜90時間にもなる計算です。
睡眠負債が蓄積した状態では、以下のような深刻な影響が生じることが分かっています。
まず、免疫機能の低下です。睡眠中には免疫細胞が活性化し、ウイルスや細菌に対する防御機能が高まります。睡眠負債があると、この免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなることが分かっています。カリフォルニア大学の研究では、6時間未満の睡眠が続くと、8時間の睡眠を取っている人に比べて風邪をひく確率が4倍以上になったという結果が示されています。
次に、心臓血管疾患のリスク上昇です。慢性的な睡眠不足は血圧の上昇や炎症反応の増加をもたらし、心臓病や脳卒中のリスクを高めることが複数の研究で示されています。
また、メンタルヘルスへの影響も深刻です。睡眠不足はうつ病や不安障害のリスクを大幅に高めます。睡眠と精神疾患の関係は双方向的であり、不眠がうつを引き起こし、うつが不眠をさらに悪化させるという悪循環に陥ることもあります。
さらに、認知症リスクとの関連も近年注目されています。睡眠中には脳内の老廃物(アミロイドベータなど、アルツハイマー病に関連するタンパク質を含む)を洗い流す「グリンパティック系」が活発に働きます。睡眠不足が続くと、この老廃物の除去が不十分となり、長期的に認知症リスクを高める可能性が指摘されています。
睡眠負債の怖いところは、慣れによって自覚症状が薄れてしまう点です。「自分は少ない睡眠でも大丈夫」と思っている方の多くは、実は慢性的な睡眠不足に適応してしまっているだけで、体や脳は着実にダメージを受け続けているのです。
💡 正しい睡眠不足の解消方法
では、寝だめに頼らずに睡眠不足を解消するためには、どのようにすればよいのでしょうか。科学的な知見に基づいた方法をご紹介します。
📌 毎日の睡眠時間を少しずつ増やす
睡眠負債を解消するための最も効果的な方法は、毎日の睡眠時間をコンスタントに確保することです。週末に10時間眠るよりも、毎日30分早く寝るほうがはるかに効果的です。たとえば、これまで1日6時間しか眠れていなかった方が、毎日7時間眠れるようになれば、1週間で7時間分の睡眠負債を回収できることになります。
急に就寝時刻を大幅に早めようとしてもなかなか眠れないことが多いので、まずは15〜30分早く寝ることから始め、徐々に調整していくのがおすすめです。
▶️ 週末の起床時刻のズレを1時間以内に抑える
寝だめを完全にやめることが難しい方でも、週末の起床時刻を平日より1時間以内のズレに留めることで、社会的時差ぼけの影響を最小限にすることができます。例えば、平日が7時起きなら、週末は8時までには起きるようにすることが目標となります。
もし少し遅く起きたい場合は、就寝時刻も少し遅らせて睡眠サイクルを後ろにずらすというアプローチが有効です。ただし、このズレは1〜1.5時間以内に収めることが体内時計への影響を抑えるためのポイントです。
🔹 昼寝を上手に活用する
日中の眠気が強い場合は、短い昼寝(パワーナップ)が効果的です。20〜30分程度の昼寝は、眠気を解消して午後のパフォーマンスを向上させる効果があり、夜の睡眠への影響も少ない時間帯(午後2〜3時頃まで)に取ることが理想的です。
ただし、30分以上の昼寝は深い眠りに入ってしまい、起きた後に「睡眠慣性」と呼ばれるぼんやりした状態が続きやすくなります。また、午後4時以降の昼寝は夜の睡眠に影響するため避けましょう。昼寝前にコーヒーやお茶を飲んでおくと、カフェインが効いてくる約20〜30分後にスッキリと目が覚めやすくなる「コーヒーナップ」というテクニックも有効です。
📍 睡眠の「質」を高める工夫をする
睡眠負債の解消には、量だけでなく質の向上も重要です。就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控えることで、ブルーライトによるメラトニン分泌の抑制を防ぐことができます。また、寝室の温度を18〜22℃程度に保つこと、遮光カーテンや耳栓を使って光や音の刺激を排除することも、睡眠の質向上に役立ちます。
就寝前の1〜2時間はリラックスタイムとして過ごし、入浴(就寝の1〜1.5時間前に38〜40℃のぬるめのお湯に浸かる)やストレッチ、深呼吸などで体と心を落ち着ける習慣をつけることもおすすめです。
💫 生活習慣を整える
睡眠の質と量に影響する生活習慣の改善も欠かせません。規則正しい食事時間を守ること、適度な運動を習慣にすること(ただし就寝直前の激しい運動は避ける)、カフェインやアルコールの過剰摂取を控えることなどが、良質な睡眠の土台となります。特にアルコールは一見眠りを誘うように感じますが、実際には睡眠の後半でレム睡眠を阻害し、睡眠の質を大幅に低下させることが分かっています。
✨ 良質な睡眠を毎日確保するためのポイント
睡眠の問題を根本から解決するためには、日常的な睡眠習慣(スリープハイジーン)を整えることが最も重要です。以下に、毎日実践できる具体的なポイントをまとめます。
🦠 毎日同じ時間に起きる
体内時計を安定させるためには、毎日同じ時刻に起きることが何よりも大切です。就寝時刻より起床時刻を固定することを優先すると、体内時計が整いやすくなります。どんなに夜遅くまで起きていた翌日でも、決まった時間に起きることを習慣にしましょう。自然と夜になれば眠くなるリズムが作られていきます。
👴 朝の光を積極的に浴びる
起床後できるだけ早く(理想は30分以内に)明るい光を浴びることで、体内時計がリセットされます。天気の良い日は外に出るのが最も効果的ですが、曇りの日でも屋外の光は屋内照明より数倍明るく、十分な効果があります。光療法器(ライトセラピーランプ)を朝食時に使用することも有効な手段の一つです。
🔸 就寝前のルーティンを作る
毎晩同じ手順で就寝準備をすることで、脳に「これから眠る」というシグナルを送ることができます。歯磨き→軽いストレッチ→読書→消灯といった自分なりのルーティンを決めて、それを継続することが大切です。このルーティンが習慣化されると、ルーティンを始めただけで眠気が誘発されやすくなります。
💧 寝室は眠るための場所にする
寝室でスマートフォンを操作したり、仕事をしたりすることは避けましょう。「寝室=眠る場所」という条件づけを脳に行うことで、ベッドに入るだけで眠気が高まりやすくなります。これは「刺激制御法」と呼ばれる認知行動療法的なアプローチであり、慢性的な不眠の治療にも活用されています。
✨ 眠れなくてもベッドで長時間過ごさない
なかなか眠れない夜に、いつまでもベッドの中でスマートフォンを見たり、眠れないことへの不安を感じながら横になり続けたりすることは逆効果です。20分以上眠れないと感じたら、一度ベッドを出て薄暗い場所でリラックスできることをし、眠気を感じてからベッドに戻るほうが良質な睡眠につながりやすくなります。
📌 睡眠日誌をつける
自分の睡眠パターンを客観的に把握するために、就寝時刻・起床時刻・中途覚醒の有無・日中の眠気などを記録する習慣をつけることも有益です。スマートフォンのアプリやウェアラブルデバイスを活用しても良いでしょう。記録を続けることで、睡眠に影響している要因(飲酒した日、運動した日、ストレスが多かった日など)が見えてきます。
▶️ 深刻な睡眠の問題は専門家に相談する
生活習慣の改善を行っても睡眠の問題が改善しない場合は、睡眠外来や内科、精神科・心療内科などの専門機関に相談することをおすすめします。慢性不眠症には薬物療法よりも効果が高いとされる認知行動療法(CBT-I)という治療法があり、専門家の指導のもとで行うことで根本的な改善が期待できます。また、「いびきがひどい」「睡眠中に呼吸が止まる」などの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるため、早めの検査・治療が必要です。

👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、「週末にたくさん寝たのに月曜日がつらい」「疲れが取れない」というお悩みでご来院される方が少なくなく、その背景に寝だめによる体内時計の乱れが関係していることも多く見受けられます。睡眠負債は貯金のように後から取り戻せるものではなく、毎日の睡眠リズムを一定に保つことが根本的な解決への近道ですので、まずは起床時刻を固定することから始めてみてください。睡眠の問題は放置すると心血管疾患やメンタルヘルスにも影響を及ぼすことがありますので、生活習慣を整えても改善が見られない場合は、どうぞお気軽にご相談ください。」
📌 よくある質問
週末に平日より大幅に遅く起きることで、体内時計が乱れる「社会的時差ぼけ」が起きるためです。平日7時起きの人が週末に12時まで寝ると、5時間分の時差が生じます。これにより月曜日の朝、体は「まだ夜中」と感じてしまい、目覚めの悪さや午前中のパフォーマンス低下につながります。
睡眠は「量」だけでなく「質」が重要だからです。長時間眠ると後半の睡眠が浅くなり、深い回復睡眠の割合が減ってしまいます。また、昼近くまで眠ることで朝の光を浴び損ね、体内時計が乱れることも、スッキリ感が得られにくい原因のひとつです。
週末にまとめて寝るのではなく、毎日の睡眠時間を少しずつ増やすことが最も効果的です。まずは15〜30分早く就寝する習慣から始め、毎日同じ時刻に起きるリズムを整えましょう。週末の起床時刻は平日との差を1時間以内に抑えると、体内時計への影響を最小限にできます。
慢性的な寝だめによる体内時計の乱れは、肥満・糖尿病・心血管疾患・うつ病などのリスクを高めることが研究で示されています。また、睡眠中に脳内の老廃物を洗い流す機能が低下することで、長期的に認知症リスクが上昇する可能性も指摘されています。軽視せず早めの対策が重要です。
生活習慣の改善を続けても眠れない・疲れが取れない状態が続く場合や、いびきがひどい・睡眠中に呼吸が止まると指摘される場合は、早めに医療機関への相談をおすすめします。アイシークリニックでも睡眠に関するお悩みのご相談を受け付けておりますので、一人で抱え込まずにご相談ください。
🎯 まとめ
今回は「寝だめに効果がない理由」について、医学的な観点から詳しく解説しました。
まず、睡眠負債は週末の長時間睡眠で完全には返済できません。蓄積した睡眠不足は、一度の寝だめで取り戻せるほど単純なものではなく、認知機能の低下や代謝異常などは回復睡眠後も残存することが研究で示されています。
次に、寝だめは体内時計を乱す「社会的時差ぼけ」を引き起こし、月曜日の体調不良や長期的な健康リスク(肥満、糖尿病、心疾患など)につながる可能性があります。
また、睡眠は量だけでなく質が重要であり、長く眠るだけでは深い回復睡眠が十分に得られない場合があります。さらに、長時間の寝だめは頭痛、倦怠感、夜の不眠、気分の落ち込みといった様々な悪影響をもたらすこともあります。
睡眠不足を本当の意味で解消するためには、週末の寝だめに頼るのではなく、毎日少しずつ睡眠時間を増やすこと、規則正しい睡眠・起床リズムを保つこと、そして睡眠の質を高める生活習慣を整えることが大切です。起床時刻を毎日一定に保ち、朝の光を浴び、就寝前のルーティンを作るといった基本的な取り組みが、長期的な睡眠の質向上につながります。
「疲れたら週末に寝だめすればいい」という考え方から卒業し、毎日の睡眠を丁寧に確保する習慣を身につけることが、心身の健康を守るための最善策です。それでも睡眠の悩みが解決しない場合は、ぜひ専門の医療機関にご相談ください。アイシークリニック上野院でも、睡眠に関するお悩みを含め、皆様の健康に関する相談を受け付けております。一人で抱え込まず、専門家のサポートを活用することも、健康な毎日を送るための大切な選択肢の一つです。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 日本人の睡眠時間の短さやOECD加盟国との比較データ、睡眠不足に悩む人の割合など、記事内で言及されている日本人の睡眠実態に関する統計・調査情報の参照元として活用
- PubMed – ペンシルバニア大学による睡眠制限と認知機能低下の研究、ミュンヘン大学による社会的時差ぼけと肥満リスクの研究、2019年カレント・バイオロジー掲載の回復睡眠と代謝異常に関する研究など、記事内で引用されている複数の科学的エビデンスの原著論文データベースとして参照
- WHO(世界保健機関) – 睡眠不足とうつ病・不安障害・心血管疾患・糖尿病などの健康リスクとの関連、成人に推奨される睡眠時間(7〜9時間)の国際的な基準、睡眠が免疫機能やメンタルヘルスに与える影響に関する国際的な見解の参照元として活用
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務