「春になるたびに肌がかゆくなる」「秋口になると急に肌荒れがひどくなる」という経験はありませんか?季節の変わり目は、肌のトラブルが起きやすい時期として多くの方が実感しています。特にアトピー性皮膚炎を抱えている方にとって、この時期は症状が大きく揺れ動く「魔の季節」ともいえます。なぜ季節の変わり目になると肌は不安定になるのでしょうか。そして、どのような対策をとれば症状を落ち着かせることができるのでしょうか。この記事では、季節の変わり目と肌荒れ・アトピーの関係を医学的な視点からわかりやすく解説し、日常生活で取り入れられるケア方法や、クリニックでの治療選択肢について詳しくお伝えします。
目次
- 季節の変わり目に肌荒れが起きるメカニズム
- アトピー性皮膚炎とは何か
- 春の変わり目に起こる肌トラブルの特徴
- 秋の変わり目に起こる肌トラブルの特徴
- 冬から春・夏から秋の気温差が肌に与える影響
- アトピー性皮膚炎が季節の変わり目に悪化する理由
- 季節の変わり目における正しいスキンケアの方法
- 食事・生活習慣で肌を守る方法
- クリニックで受けられる治療とは
- まとめ
この記事のポイント
季節の変わり目は気温・湿度・花粉・ダニ等の変動で皮膚バリアが低下し、アトピーが悪化しやすい。適切な保湿・アレルゲン対策・生活習慣の整備が基本で、重症例ではアイシークリニックで生物学的製剤やJAK阻害薬などの最新治療も受けられる。
🎯 季節の変わり目に肌荒れが起きるメカニズム
私たちの皮膚は、外部の刺激から身体を守るバリア機能を持っています。このバリア機能は、皮脂膜・角質層・天然保湿因子・セラミドなどが複合的に働くことで成り立っています。健康な肌では、これらが適切に機能することで外からの異物の侵入を防ぎ、内側からの水分の蒸散を抑えています。
季節の変わり目になると、気温・湿度・紫外線量・花粉・ハウスダストなどの環境因子が短期間で大きく変動します。こうした急激な環境変化に対して、皮膚のバリア機能が追いつかなくなることで肌荒れが生じます。
具体的なメカニズムとしては、まず気温や湿度の変化によって皮脂分泌量が乱れます。皮脂は肌の表面を覆う天然の保護膜として機能していますが、気温が低下すると分泌量が減少し、乾燥しやすくなります。逆に気温が高くなると皮脂が過剰に分泌され、毛穴詰まりや炎症を引き起こすことがあります。
次に、角質層の水分量の変化も大きな要因です。湿度が低下すると角質層から水分が蒸発しやすくなり、肌のキメが乱れて外部刺激に対する防御力が低下します。この状態になると、花粉・ほこり・細菌などが肌の内部に侵入しやすくなり、炎症反応が起きやすくなります。
さらに、自律神経の乱れも肌荒れに深く関わっています。気温の変動が大きい季節の変わり目は、自律神経がうまくコントロールできず、血流や免疫機能にも影響を与えます。免疫機能の低下は皮膚の炎症を助長し、かゆみや赤みを悪化させる一因となります。
Q. 季節の変わり目に肌荒れが起きるメカニズムは?
季節の変わり目は気温・湿度・花粉・紫外線などの環境因子が短期間で大きく変動し、皮膚のバリア機能が追いつかなくなることで肌荒れが生じます。皮脂分泌の乱れ・角質層の水分低下・自律神経の乱れによる免疫機能低下が重なり、炎症やかゆみが起きやすくなります。
📋 アトピー性皮膚炎とは何か
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返す皮膚疾患です。遺伝的な体質(アトピー素因)と環境要因が組み合わさって発症すると考えられており、日本では乳幼児から成人まで幅広い年齢層に見られます。厚生労働省の調査によると、日本の子どもの約10〜20%、成人の約5〜10%がアトピー性皮膚炎を患っているとされています。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、生まれつき皮膚のバリア機能が弱い傾向があります。これはセラミドをはじめとした皮膚の構成成分が少なかったり、フィラグリン遺伝子の変異によって角質層の保水力が低下していたりすることが背景にあります。バリア機能が低いと、外部からのアレルゲンや刺激物が皮膚に侵入しやすくなり、免疫系が過剰に反応して炎症が生じます。
アトピー性皮膚炎の主な症状は、乾燥・かゆみ・湿疹(赤み、ぶつぶつ、じくじくした皮疹)です。症状が現れやすい部位は、肘の内側・膝の裏・首・顔・耳の周辺などで、これらは皮膚が薄く刺激を受けやすい部位でもあります。症状は寛解と増悪を繰り返すのが特徴で、適切な治療なしに完全に症状がなくなることはまれです。
アトピー性皮膚炎は、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎などの他のアレルギー疾患と合併することが多く、これらをまとめて「アトピーマーチ」と呼ぶこともあります。季節の変わり目はこうした関連疾患も含めて症状が悪化しやすい時期です。
💊 春の変わり目に起こる肌トラブルの特徴
冬から春への季節の変わり目は、特に肌に多くの変化をもたらします。この時期のトラブルの代表格は、花粉による肌への影響です。スギ・ヒノキなどの花粉は空気中に大量に飛散し、肌に直接付着することで接触性の炎症を起こします。これは「花粉皮膚炎」とも呼ばれており、特に顔・首・手などの露出部位に赤みやかゆみ・湿疹として現れます。
また、春は気温の上昇とともに紫外線量が急増する季節でもあります。冬の間、紫外線に慣れていなかった肌は、春の強い紫外線に対して非常に敏感です。紫外線は皮膚の炎症を促進するだけでなく、活性酸素を発生させてバリア機能を低下させる作用があります。アトピー性皮膚炎の方にとって、紫外線による炎症の悪化は特に注意が必要です。
さらに、春は温度の変動が激しく、朝晩と日中の気温差が大きくなります。この温度差によって自律神経が乱れ、皮膚の血流調節がうまくいかなくなります。その結果、肌の血行不良やかゆみの悪化が生じることがあります。入学や就職など生活環境が大きく変わる方も多く、精神的なストレスが重なって症状がさらに悪化するケースも少なくありません。
春特有のもう一つの問題として、黄砂の飛散があります。黄砂には花粉や大気汚染物質が付着していることが多く、複合的なアレルギー反応を引き起こすことが指摘されています。肌への直接的な刺激とともに、呼吸器系の炎症を通じて全身的なアレルギー反応を悪化させる側面もあります。
Q. 春と秋で肌トラブルの原因はどう違いますか?
春はスギ・ヒノキ花粉の飛散・急増する紫外線・黄砂が主なリスクで、顔や首などの露出部位に赤みやかゆみが現れやすくなります。一方、秋は夏に増殖したダニの死骸・フンによるアレルゲン増加と空気の乾燥が主な要因で、乾燥によるかゆみや掻破サイクルに陥りやすい点が特徴です。
🏥 秋の変わり目に起こる肌トラブルの特徴
夏から秋への移行期もまた、肌にとって試練の時期です。夏の間、汗や紫外線によってダメージを受けた肌は、秋になると乾燥が進みやすい状態にあります。夏に過剰に活発だった皮脂分泌が気温の低下とともに急激に減少し、肌の水分保持能力が低下します。
秋はまた、ダニの死骸やほこりが増加する季節でもあります。夏の間に増殖したダニは、気温が下がるにつれて死滅し、その死骸やフンがアレルゲンとして空気中に漂います。これを吸入することで呼吸器系のアレルギー反応が起き、皮膚の炎症にも影響を及ぼします。アトピー性皮膚炎の悪化とダニアレルゲンの関係は古くから知られており、秋の掃除や寝具の管理が特に重要とされています。
秋の乾燥した空気も、肌荒れの大きな原因の一つです。空気中の湿度が低下すると、肌からの水分蒸発量が増加し、角質層が乾燥してひび割れや粉吹きが生じます。この乾燥状態はかゆみを引き起こし、かいてしまうことで皮膚のバリア機能がさらに損傷される悪循環(「かゆみ・掻破サイクル」)に陥りやすくなります。
また、秋はキク科植物の花粉(ブタクサ・ヨモギなど)が飛散する季節でもあります。春のスギ花粉ほど知名度はありませんが、秋の花粉アレルギーに悩む方も多く、肌への影響も春と同様に生じます。花粉が皮膚に直接触れることで接触性の炎症反応が起こり、特に敏感肌やアトピー体質の方に強く現れる傾向があります。
⚠️ 冬から春・夏から秋の気温差が肌に与える影響
気温の急激な変化は、皮膚の生理機能にさまざまな影響を与えます。まず、体温調節のための発汗と血管拡張・収縮の繰り返しが皮膚に負担をかけます。気温が低い朝に身体が縮こまり、日中に気温が上がって汗をかく、この繰り返しが皮膚の恒常性を乱します。
特に問題になるのが「温冷交互刺激」による神経的なかゆみの誘発です。皮膚には温度変化を感知する熱受容体(TRPVチャネルなど)があり、急激な温度変化が加わるとかゆみを伝える神経信号を活性化させることが研究で示されています。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、この温度感受性が健常者よりも高い傾向があり、より強いかゆみを感じやすいことが知られています。
また、気温の変化は皮膚の常在菌叢(マイクロバイオーム)にも影響を与えます。皮膚の温度や水分量が変わることで、常在菌のバランスが崩れ、アトピー性皮膚炎の悪化に関わるとされる黄色ブドウ球菌が増殖しやすくなります。黄色ブドウ球菌は炎症性物質を産生し、皮膚のバリア機能をさらに低下させることが明らかになっています。
冬の乾燥した低温環境から春の温暖な環境への移行期には、皮脂分泌のリズムが変化する過渡期にあたります。この時期は皮膚が一時的に脂っぽくなりつつも乾燥するという「混合肌」状態になりやすく、スキンケアの方法を誤ると状態を悪化させることがあります。
Q. アトピー悪化を防ぐ食事や生活習慣のポイントは?
食事ではビタミンA・C・E・オメガ3脂肪酸を積極的に摂り、アルコールや刺激の強い加工食品は控えることが望ましいです。また、規則正しい睡眠で皮膚の修復を促し、ヨガや軽いウォーキングでストレスを管理すること、週2回以上の掃除機がけなどダニアレルゲン対策を行うことも症状悪化の予防に有効です。
🔍 アトピー性皮膚炎が季節の変わり目に悪化する理由
アトピー性皮膚炎が季節の変わり目に悪化する理由は、複数の要因が重なり合って起こります。もっとも根本的な原因は、もともとバリア機能が弱い皮膚が、環境変化という追加のストレスによってさらに機能を失うことです。
免疫学的な観点からは、季節の変わり目に増加するアレルゲン(花粉・ダニなど)に対するIgE抗体が関与しています。アトピー性皮膚炎の患者さんは、しばしば複数のアレルゲンに対して感作されており、これらのアレルゲンが増加する時期に炎症が誘発されやすくなります。また、アレルゲンへの曝露が増えることで、Th2型免疫反応が優位になり、IL-4・IL-13・IL-31などのサイトカインが増加してかゆみや炎症を増強させます。
精神的なストレスも見逃せない要因です。季節の変わり目は環境変化や生活リズムの変化が重なりやすく、精神的なストレスが増加しやすい時期です。ストレスはコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌させ、免疫系のバランスを乱してアレルギー反応を悪化させます。また、ストレスによって掻いてしまう「心因性のかゆみ」も悪化しやすくなります。
睡眠の乱れも症状悪化の一因です。季節の変わり目は日照時間の変化によって体内時計が乱れやすく、睡眠の質が低下する方が多くいます。睡眠不足や睡眠の質の低下は皮膚の修復機能を妨げ、かゆみに対する痛覚閾値を下げることでかゆみをより強く感じさせるという悪影響があります。夜間のかゆみは特に睡眠の質を下げ、それがまた症状の悪化につながるという悪循環を生じさせます。
運動による発汗も、季節の変わり目には特に注意が必要です。気温が上昇してくる春や、夏の終わりから秋にかけては、急に激しい運動をして大量に汗をかく機会が増えます。汗の中に含まれる成分(汗のタンパク質やアミラーゼなど)はアトピー性皮膚炎の患者さんでアレルギー反応を起こすことがあり、「汗アレルギー」として症状が悪化するケースがあります。
📝 季節の変わり目における正しいスキンケアの方法
季節の変わり目に肌荒れやアトピーの症状を悪化させないためには、日々のスキンケアを適切に行うことが非常に重要です。スキンケアの基本は「清潔にすること」と「保湿すること」の2つですが、季節に応じたきめ細かい対応が求められます。
まず、洗顔・洗体については、刺激の少ない低刺激のソープや洗浄料を使用することが基本です。熱いお湯は皮脂を過剰に取り除いてしまうため、ぬるめのお湯(37〜38度程度)での洗顔・入浴が推奨されます。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、泡立てた石鹸をやさしく乗せるように洗い、ナイロンタオルやスポンジでこすることは避けるべきです。
保湿は、季節の変わり目において特に意識すべきケアです。入浴後は5〜10分以内に保湿剤を塗布することで、入浴で温まった皮膚から水分が蒸発するのを防ぐことができます。保湿剤の種類としては、ヘパリン類似物質含有クリーム・ワセリン・セラミド配合乳液などが一般的に使われます。
保湿剤の選び方は、季節によって変える必要があります。乾燥が強い秋冬には油分を多く含むクリームやワセリンが適していますが、汗をかきやすい春〜夏にかけてはさらっとした使い心地のローションやジェルタイプが適している場合があります。ただし、保湿剤の選択については医師や薬剤師に相談しながら決めるのが安全です。
花粉が多い季節には、外出から帰宅したあとにすぐに顔や首を洗い流すことが重要です。花粉が長時間肌に付着したままでいると、接触性の炎症が強まります。洗い落とした後は速やかに保湿を行うことで、皮膚のバリア機能を維持できます。
紫外線対策も春から夏にかけては欠かせません。日焼け止めは皮膚に刺激を与えないように、アルコールフリーで低刺激処方のものを選ぶと良いでしょう。アトピー性皮膚炎がある方は、日焼け止めの成分でかぶれることがあるため、使用前にパッチテストを行うか、皮膚科医に相談することをおすすめします。帽子・日傘・長袖などの物理的な紫外線対策を組み合わせることも有効です。
肌が敏感になっている季節の変わり目には、新しいスキンケア製品を試すことは避けた方が無難です。成分変更や新製品導入はできる限り症状が安定している時期に行い、少量からテストするようにしましょう。
Q. アトピー性皮膚炎にはどんな最新治療がありますか?
保湿療法・ステロイド外用薬・タクロリムス外用薬による治療が基本です。症状が重く外用薬で対応しきれない場合は、IL-4・IL-13をブロックするデュピルマブなどの生物学的製剤や、アブロシチニブ・ウパダシチニブといったJAK阻害内服薬が選択肢となります。アイシークリニックでも症状の程度に合わせた治療をご提案しています。
💡 食事・生活習慣で肌を守る方法
肌の健康は、スキンケアだけでなく食事や生活習慣によっても大きく左右されます。季節の変わり目に肌荒れやアトピーを悪化させないためには、内側からのアプローチも同時に行うことが大切です。
食事において重要なのは、皮膚のバリア機能を維持するために必要な栄養素をしっかり摂取することです。ビタミンA(レバー・にんじん・ほうれん草など)は皮膚の細胞分裂を促進し、角質を正常に保つ働きがあります。ビタミンC(柑橘類・ブロッコリー・パプリカなど)はコラーゲンの生成を助け、皮膚の修復を促します。ビタミンE(ナッツ類・植物油・アボカドなど)は抗酸化作用があり、紫外線や炎症によるダメージから皮膚を守ります。
オメガ3脂肪酸(青魚・亜麻仁油・チアシードなど)は炎症を抑える働きがあり、アトピー性皮膚炎の症状緩和に役立つ可能性があります。また、腸内環境の改善も肌荒れ対策として注目されています。腸と皮膚は「腸皮膚軸」とも呼ばれる密接な関係があり、腸内フローラのバランスが乱れると全身の免疫機能に影響を与え、皮膚の炎症にも関与すると考えられています。発酵食品(ヨーグルト・味噌・納豆・漬物など)や食物繊維を積極的に摂取することで腸内環境を整えることが、間接的に肌の健康維持につながる可能性があります。
一方、アルコールや刺激の強いスパイス、加工食品・添加物の多い食事は皮膚の炎症を悪化させる可能性があるため、症状がひどい時期には控えるのが望ましいとされています。ただし、食物アレルギーについては自己判断で除去するのではなく、アレルギー検査を受けた上で医師の指導のもとで行うことが重要です。不必要な食物除去は栄養バランスを崩す可能性があります。
睡眠については、毎日一定の時間に就寝・起床する習慣をつけることが大切です。睡眠中は成長ホルモンが分泌されて皮膚の修復が行われるため、質の高い睡眠は肌の健康に直結します。就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控えること、室温・湿度を適切に保つこと(冬は加湿器の活用を検討すること)なども睡眠の質改善に役立ちます。
ストレスマネジメントも重要な生活習慣の一つです。ヨガ・瞑想・軽い運動・趣味の時間を作るなど、自分に合ったストレス解消法を日常に取り入れることが、季節の変わり目の免疫系の乱れを抑えることにつながります。ただし、運動については激しい発汗を伴うものよりも、軽い有酸素運動(ウォーキングや水泳など)の方が、アトピー性皮膚炎のある方には適していることが多いです。
室内環境の管理も忘れてはなりません。ダニアレルゲンを減らすためには、定期的な掃除機がけ(週2回以上)・布団の乾燥と洗濯・フローリングへの変更・防ダニカバーの使用などが有効です。また、エアコンのフィルターを定期的に清掃することで、ダニや花粉の室内への拡散を防ぐことができます。加湿器を使う際も、カビが生えないようにフィルターの清掃・消毒を定期的に行いましょう。
✨ クリニックで受けられる治療とは

セルフケアだけでは症状のコントロールが難しい場合には、早めに皮膚科・アレルギー科を受診することをおすすめします。特にアトピー性皮膚炎は「適切な治療を受けながら、よい状態を長く維持すること」が治療の目標であり、季節の変わり目に症状が悪化したとき、または悪化しそうな時期の前に医師に相談しておくことが大切です。
現在、アトピー性皮膚炎の標準的な治療の基盤は保湿療法と外用薬療法です。外用薬の中心はステロイド外用薬とタクロリムス外用薬(プロトピック)です。ステロイド外用薬は優れた抗炎症効果を持ち、炎症がある部位に適切に使用することで症状を速やかに改善します。強さの違いによってウィーク・ミディアム・ストロング・ベリーストロング・ストロンゲストの5段階に分類されており、使用部位や症状の程度に応じて使い分けられます。
タクロリムス外用薬(プロトピック)は、ステロイドとは異なる作用機序で炎症を抑える薬剤で、顔や首などステロイドの副作用が出やすい部位に使いやすいという特徴があります。また、症状が軽快した後にも週2〜3回の頻度で継続して塗布する「プロアクティブ療法」によって、再燃を防ぐ効果が認められています。
近年では、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の外用薬(デルゴシチニブ:コレクチム軟膏)も選択肢に加わっています。JAK阻害外用薬はアトピー性皮膚炎に関わる複数のサイトカインシグナルを遮断することで炎症を抑えるもので、従来の外用薬が効きにくかった患者さんにも効果を示すことがあります。
症状が重い方や外用薬で十分にコントロールできない方には、全身療法が選択されることがあります。従来から行われてきた全身療法としては、シクロスポリンなどの免疫抑制薬の内服がありますが、副作用の観点から長期使用には注意が必要でした。
近年、アトピー性皮膚炎の治療において大きな進歩をもたらしたのが、生物学的製剤(バイオ製剤)です。デュピルマブ(デュピクセント)は、IL-4とIL-13の受容体をブロックすることでアトピー性皮膚炎の中心的な炎症経路を抑制する注射薬です。2週間に1回の皮下注射で投与し、重症のアトピー性皮膚炎に対して高い有効性が確認されています。その後、トラロキヌマブ(アドトラーザ)やネモリズマブ(ミチーガ)など新たな生物学的製剤も承認されており、患者さんの症状や生活スタイルに合わせた選択が可能になっています。
JAK阻害内服薬もアトピー性皮膚炎の治療に使われるようになっています。アブロシチニブ(サイバインコ)・バリシチニブ(オルミエント)・ウパダシチニブ(リンヴォック)などが承認されており、内服薬として手軽に使えるメリットがあります。これらは中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対して使用されますが、感染症リスクや血栓症などの副作用に注意しながら使用する必要があり、医師による厳重な管理のもとで使用されます。
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法・皮下免疫療法)は、ダニや花粉などの特定のアレルゲンに対する過敏性を根本から低減させることを目的とした治療です。アトピー性皮膚炎に対する有効性についての研究は続いており、特にダニアレルギーを持つ患者さんでは症状の改善が見られるケースがあります。数年間の継続治療が必要ですが、アレルゲンへの根本的な過敏性を改善できる可能性がある治療として注目されています。
光線療法(ナローバンドUVB療法など)も、難治性アトピー性皮膚炎に対して選択されることがあります。紫外線の一種を照射することで免疫系を調節し、炎症を抑える効果があります。週に数回の通院が必要ですが、全身性の副作用が少なく、妊娠中の方にも比較的安全に使用できるとされています。
いずれの治療においても、自己判断で薬を中断したり用量を変更したりすることは避け、定期的に医師の診察を受けながら治療を継続することが重要です。季節の変わり目には特に症状が変化しやすいため、悪化のサインを見逃さずに早めに受診するよう心がけましょう。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「季節の変わり目になると、アトピー性皮膚炎や肌荒れの症状が急に悪化したとご来院される患者様が増える傾向にあります。当院では、こうした季節性の悪化に対して外用薬や保湿指導による基本的なケアはもちろん、症状が重い方にはデュピルマブなどの生物学的製剤やJAK阻害薬も含めた最新の治療選択肢をご提案しています。「毎年この時期がつらい」とお感じの方は、症状が悪化してからではなく、変わり目の前に一度ご相談いただくことで、より早く快適な状態を取り戻していただきやすくなりますので、どうぞお気軽にお声がけください。」
📌 よくある質問
気温・湿度・花粉・紫外線などの環境因子が短期間で大きく変動することで、皮膚のバリア機能が追いつかなくなることが主な原因です。さらに自律神経の乱れや免疫機能の低下も重なり、炎症やかゆみが起きやすくなります。春は花粉・紫外線・黄砂、秋はダニアレルゲン・乾燥がそれぞれ主なリスクとなります。
アトピー性皮膚炎の方はもともとバリア機能が弱いため、環境変化というストレスが加わると症状がさらに悪化しやすくなります。また、花粉やダニなど季節性のアレルゲンの増加、精神的ストレス、睡眠の乱れなど複数の要因が重なることで、かゆみや炎症が強くなるケースが多くみられます。
基本は「清潔」と「保湿」の2つです。洗顔・入浴は37〜38度のぬるめのお湯を使い、低刺激の洗浄料でやさしく洗いましょう。入浴後は5〜10分以内に保湿剤を塗布することが重要です。乾燥が強い秋冬はクリームやワセリン、汗をかきやすい春夏はローションやジェルタイプが適している場合があります。
食事ではビタミンA・C・E、オメガ3脂肪酸を積極的に摂り、アルコールや刺激の強い食品は控えめにすることが望ましいです。また、規則正しい睡眠で皮膚の修復を促すこと、ヨガや軽い運動でストレスを管理すること、週2回以上の掃除機がけなどダニ対策も症状の悪化予防に有効です。
保湿療法や外用薬(ステロイド・タクロリムス・JAK阻害外用薬)による治療が基本です。症状が重い場合は、デュピルマブなどの生物学的製剤やJAK阻害内服薬といった最新治療も選択肢となります。アイシークリニック上野院でも、症状の程度に合わせた治療をご提案していますので、悪化する前にお気軽にご相談ください。
🎯 まとめ
季節の変わり目に肌荒れやアトピー性皮膚炎が悪化するのは、気温・湿度・花粉・ダニ・紫外線など複数の環境因子が重なることで、皮膚のバリア機能が低下し、免疫系が過剰反応を起こしやすくなるためです。春は花粉・紫外線・黄砂、秋はダニアレルゲン・乾燥・秋の花粉と、それぞれの季節に特有のリスクがあります。
こうした季節の変化に対応するためには、日々の保湿ケアを丁寧に行い、外部のアレルゲンへの曝露を減らすことが基本となります。食事・睡眠・ストレス管理といった生活習慣の整備も肌の健康維持に不可欠です。
セルフケアだけでは対応が難しいと感じたときは、ためらわずに皮膚科・アレルギー科を受診してください。アトピー性皮膚炎の治療は近年大きく進化しており、以前は治療が難しかった重症例にも効果的な選択肢が増えています。自分の皮膚の状態を正確に把握し、専門医の指導のもとで適切な治療を続けることで、季節の変わり目を乗り越え、より快適な肌状態を保つことができます。
アイシークリニック上野院では、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患の診察・治療を行っています。「最近、肌荒れがひどくなった」「アトピーが悪化している気がする」と感じる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – アトピー性皮膚炎診療ガイドラインの参照。バリア機能・免疫機序・標準治療(ステロイド外用薬・タクロリムス・生物学的製剤・JAK阻害薬など)に関する医学的根拠として活用
- 厚生労働省 – アトピー性皮膚炎の有病率データ(子ども約10〜20%・成人約5〜10%)および疾患概要の根拠として活用
- PubMed – 季節の変わり目におけるアトピー性皮膚炎の悪化メカニズム(TRPVチャネルによる温度感受性・黄色ブドウ球菌・Th2免疫反応・IL-4/IL-13/IL-31等のサイトカイン関与)に関する国際的な研究文献の根拠として活用
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務