汗腺を切る治療とは?多汗症やわきがの根本治療について専門医が解説

はじめに

「汗が止まらなくて困っている」「わきがのにおいが気になる」――こうした悩みを抱えている方は決して少なくありません。制汗剤やデオドラント製品を試しても効果が十分でない場合、汗腺そのものを除去する「汗腺を切る」治療が選択肢となります。

本記事では、アイシークリニック上野院の専門医が、汗腺を切除する治療法について、その仕組みから適応症、メリット・デメリット、術後の経過まで詳しく解説します。多汗症やわきが(腋臭症)に悩む方々が、適切な治療選択をするための情報を提供いたします。

多汗症とわきが(腋臭症)の基礎知識

多汗症とは

多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて過剰に汗をかく状態を指します。日本皮膚科学会の診療ガイドラインによれば、原発性局所多汗症は明らかな原因疾患がなく、6ヶ月以上にわたり日常生活に支障をきたすほどの発汗が認められる状態と定義されています。

特に脇の下(腋窩)の多汗症は「原発性腋窩多汗症」と呼ばれ、日本人の約5.8%が罹患していると報告されています。思春期以降に発症することが多く、精神的ストレスや緊張で症状が悪化する傾向があります。

わきが(腋臭症)とは

わきが、医学的には腋臭症と呼ばれる状態は、脇の下から特有の強いにおいを発する症状です。これはアポクリン汗腺から分泌される汗が、皮膚表面の細菌によって分解されることで発生します。

日本人では約10〜15%の方がわきが体質とされており、遺伝的要因が大きく関与しています。特に両親ともにわきが体質の場合、子供に遺伝する確率は約80%と高くなります。

患者さんのQOL(生活の質)への影響

多汗症やわきがは、単なる美容上の問題ではありません。厚生労働省の調査でも、これらの症状が患者さんの日常生活や社会生活に大きな影響を与えることが指摘されています。

具体的には以下のような困りごとが報告されています:

  • 対人関係での不安や自信喪失
  • 衣服への汗染みや変色による制約
  • 頻繁な着替えや洗濯の負担
  • 仕事や学業への集中力低下
  • 社交的な場面を避ける傾向
  • うつ症状や不安障害のリスク増加

こうした症状に対して、根本的な改善を目指すのが汗腺を除去する治療法なのです。

汗腺の種類と役割を理解する

汗腺を切る治療を理解するために、まず人間の皮膚に存在する2種類の汗腺について知っておきましょう。

エクリン汗腺

エクリン汗腺は全身に約200〜400万個存在する汗腺で、主に体温調節の役割を担っています。この汗腺から分泌される汗は99%以上が水分で、ほぼ無臭です。

エクリン汗腺は皮膚の比較的浅い層に存在し、手のひら、足の裏、額などに特に多く分布しています。多汗症の主な原因となるのは、このエクリン汗腺からの過剰な発汗です。

アポクリン汗腺

アポクリン汗腺は、脇の下、乳輪、外陰部、外耳道など限られた部位にのみ存在する汗腺です。毛包と一緒に皮膚の深い層に存在し、思春期以降に発達します。

アポクリン汗腺から分泌される汗には、タンパク質や脂質、アンモニアなどが含まれており、これらが皮膚表面の細菌によって分解されることで、わきが特有のにおいが発生します。わきがの根本原因は、このアポクリン汗腺の数や大きさ、活動性の個人差にあります。

治療のターゲット

多汗症の治療では主にエクリン汗腺を、わきがの治療では主にアポクリン汗腺をターゲットとします。ただし、実際の手術では両方の汗腺を同時に除去することが一般的です。これにより、多汗とにおいの両方の問題を同時に改善することができます。

汗腺を切る治療法の種類

汗腺を物理的に除去する治療法には、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分に適した治療を選択することが重要です。

剪除法(せんじょほう)

剪除法は、汗腺を切る治療の中で最も確実性が高いとされる標準的な手術方法です。

手術の方法

脇の下のしわに沿って3〜5cm程度の切開を加え、皮膚を裏返すようにめくり上げます。医師が直視下で、皮膚に付着している汗腺を専用のハサミで丁寧に切除していきます。エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方を確実に除去できることが特徴です。

メリット

  • 確実性が高く、再発率が低い(約5%以下)
  • 医師が直接目で確認しながら汗腺を除去できる
  • 重度のわきがや多汗症にも対応可能
  • 保険適用となる場合がある(腋臭症の診断基準を満たす場合)
  • 長期的な効果が期待できる

デメリット

  • 切開範囲が比較的大きい
  • 術後の固定期間が必要(3〜7日程度)
  • ダウンタイムが長い(日常生活復帰まで約2週間)
  • 傷跡が残る可能性がある
  • 手術時間が長い(片側約1時間)

吸引法

吸引法は、小さな穴から専用の器具を挿入し、汗腺を吸引除去する方法です。

手術の方法

脇の下に5〜10mm程度の小さな穴を1〜2箇所開け、そこから吸引管を挿入します。皮下組織を吸引しながら汗腺を除去していきます。脂肪吸引の技術を応用した方法です。

メリット

  • 傷跡が小さく目立ちにくい
  • 手術時間が短い(片側20〜30分程度)
  • ダウンタイムが比較的短い
  • 痛みや腫れが少ない
  • 日常生活への復帰が早い

デメリット

  • 剪除法と比べて確実性がやや劣る
  • アポクリン汗腺の除去が不完全になる可能性
  • 再発のリスクがやや高い(約15〜20%)
  • 重度のわきがには効果が限定的
  • 基本的に保険適用外(自費診療)

超音波吸引法

超音波の振動を利用して汗腺を破壊しながら吸引する方法です。

手術の方法

吸引法と同様に小さな穴を開け、超音波を発生させる特殊な器具を挿入します。超音波の振動エネルギーで汗腺組織を破壊・液化させながら吸引除去します。

メリット

  • 通常の吸引法より効果が高い
  • 傷跡が小さい
  • 出血が少ない
  • 周囲組織へのダメージが少ない
  • 比較的短時間で施術可能

デメリット

  • 剪除法と比べるとやや確実性が劣る
  • 熱によるやけどのリスク
  • 費用が高額になることが多い
  • 保険適用外(自費診療)
  • 技術習得に経験が必要

シェービング法(皮下組織削除法)

シェービング法は、専用のローラーとカミソリのような器具で皮下組織ごと汗腺を削り取る方法です。

手術の方法

1〜2cm程度の切開を加え、特殊なシェーバーを挿入します。皮膚の裏側から汗腺を含む皮下組織を薄く削り取っていきます。

メリット

  • 切開が小さい
  • 広範囲の汗腺を除去できる
  • ダウンタイムが剪除法より短い
  • 効果が比較的高い

デメリット

  • 皮膚が薄くなるリスク
  • 皮膚壊死のリスク(まれ)
  • 術後の圧迫固定が必要
  • 色素沈着が生じる可能性
  • 保険適用外の場合が多い

治療の適応症と診断

汗腺を切る治療は誰でも受けられるわけではありません。適切な診断と適応判定が重要です。

原発性腋窩多汗症の診断基準

日本皮膚科学会では、以下の基準を提唱しています。

主要項目 明らかな原因疾患がなく、6ヶ月以上にわたり脇の下に過剰な発汗が認められること

副次項目(2項目以上該当)

  1. 最初の症状が25歳以下で現れた
  2. 左右対称性に発汗がみられる
  3. 睡眠中は発汗が止まる
  4. 週1回以上の多汗エピソードがある
  5. 家族歴がある
  6. 日常生活に支障をきたしている

これらの基準を満たし、重症度が高い場合に外科的治療の適応となります。

わきが(腋臭症)の診断

わきがの診断には以下の項目を総合的に評価します:

客観的評価

  • ガーゼテスト:脇の下にガーゼを挟み、においの強度を評価
  • 耳垢の性状:湿性耳垢(あめ耳)はわきが体質の指標
  • 衣服の黄ばみ:アポクリン汗腺からの分泌物による変色
  • 家族歴:両親や兄弟のわきが体質

重症度分類

  • 軽度:本人のみが気づくにおい
  • 中等度:近くの人が気づくにおい
  • 重度:部屋に入るとすぐわかるにおい

中等度以上で、患者さん本人が強く改善を希望する場合、外科的治療の適応となります。

治療が適さないケース

以下のような場合は、汗腺を切る治療が適さない、または慎重な判断が必要です:

  • 全身性の疾患による二次性多汗症
  • 糖尿病など創傷治癒を妨げる基礎疾患
  • ケロイド体質
  • 妊娠中・授乳中
  • 未成年(保護者の同意が必要、成長期は再発リスクも)
  • 精神疾患による極度の臭気恐怖症(自己臭症)
  • 感染症の活動期

手術前の準備と注意点

汗腺を切る手術を安全に、効果的に受けるための準備について説明します。

診察とカウンセリング

まず専門医による診察とカウンセリングを受けます。この際に以下の内容を確認します:

  • 症状の詳細と発症時期
  • これまでの治療歴
  • 生活習慣や職業
  • 既往歴とアレルギーの有無
  • 服用中の薬剤
  • 期待する治療効果
  • 手術に対する不安や疑問

医師は実際に脇の下を診察し、汗腺の状態、皮膚の状態、におい(わきがの場合)などを評価します。

検査

手術前には以下の検査を行うことがあります:

  • 血液検査(全身状態の確認)
  • 心電図(必要に応じて)
  • アレルギーテスト(麻酔薬に対して)
  • ヨードデンプン反応(発汗範囲の確認)

術前の準備

手術1〜2週間前

  • 脇毛の自己処理を控える(手術前に医療機関で処理)
  • 飲酒・喫煙を控える(創傷治癒への影響)
  • 抗血栓薬やサプリメントの中止(医師の指示による)

手術前日

  • 十分な睡眠をとる
  • シャワー・入浴で清潔にする
  • 脇の下の保湿剤やデオドラント剤の使用を避ける

手術当日

  • 軽い食事は可(局所麻酔の場合)
  • ゆったりとした前開きの服装
  • アクセサリー類は外す
  • 化粧は控えめに

手術の実際の流れ

アイシークリニック上野院での一般的な手術の流れをご紹介します(剪除法の場合)。

1. 来院と最終確認(30分)

受付後、手術室に案内されます。看護師が体調確認と最終的な同意確認を行います。不安なことがあれば、この時点で遠慮なく相談してください。

2. マーキングと写真撮影(15分)

立位で脇を挙げた状態で、発汗範囲や切開線のマーキングを行います。術後の効果を客観的に評価するため、術前写真を撮影することもあります。

3. 消毒と麻酔(20分)

手術部位を消毒液で丁寧に消毒します。その後、局所麻酔を注射します。最初の針を刺すときに少し痛みがありますが、麻酔が効いてくれば痛みはありません。

当院では痛みを最小限にするため、極細針を使用し、麻酔液も体温に温めて使用しています。

4. 切開と汗腺の除去(60〜90分/片側)

麻酔が十分に効いたことを確認してから、切開を開始します。皮膚を慎重にめくり上げ、皮膚の裏側に付着している汗腺を一つひとつ丁寧に切除していきます。

医師は拡大鏡を使用し、白っぽい粒状のアポクリン汗腺と、それを取り巻くエクリン汗腺を確実に除去します。出血があれば適切に止血処置を行います。

5. 縫合と圧迫固定(20分)

汗腺の除去が完了したら、皮膚を元の位置に戻し、丁寧に縫合します。縫合には吸収糸を使用することが多く、抜糸が不要または最小限で済みます。

縫合後は、皮膚と深部組織を密着させるため、ガーゼやスポンジで圧迫固定します。この固定は術後3〜7日間継続することが重要です。

6. 術後説明と帰宅(15分)

手術室から出た後、医師または看護師から術後の注意事項について詳しい説明を受けます。処方箋と次回の診察予約を確認して帰宅となります。

手術当日は自動車の運転は控え、公共交通機関やタクシー、家族の送迎などを利用してください。

術後の経過とケア

手術後の適切なケアが、良好な結果を得るために非常に重要です。

術後当日〜3日間

安静と固定 手術部位の固定を保つため、腕の動きを制限します。脇を閉じた状態を保ち、腕を上げる動作は避けます。固定用のバンドやベルトを着用することもあります。

痛み 麻酔が切れた後、痛みが出ることがあります。処方された鎮痛薬を適切に服用してください。我慢せずに早めに服用することで、痛みをコントロールしやすくなります。

日常生活

  • シャワー・入浴は禁止(体を拭く程度)
  • デスクワークなど軽い仕事は可能
  • 重いものを持つことは避ける
  • 睡眠は仰向けで

術後4日〜1週間

初回診察 術後3〜7日目に来院し、固定を外して創部の状態を確認します。問題なければ、部分的な抜糸を行うこともあります。

日常生活の拡大

  • シャワーが許可される(創部は優しく)
  • 腕の動きを徐々に広げる
  • 軽い家事が可能に
  • デスクワークへの復帰

ただし、以下の動作は引き続き避けます:

  • 腕を大きく上げる動作
  • 重量物の持ち運び
  • 激しい運動
  • 入浴(シャワーのみ)

術後1〜2週間

傷の状態 腫れや内出血は徐々に改善してきます。しかし、まだ完全ではありません。紫色のあざのような色が残っていることは正常です。

抜糸(必要な場合) 吸収糸を使用していない場合、この時期に抜糸を行います。抜糸後も創部は安定していないため、引き続き注意が必要です。

日常生活

  • 入浴が許可される
  • 軽い運動(ウォーキングなど)が可能
  • ほとんどの日常動作が可能に
  • 事務仕事への完全復帰

避けるべき動作:

  • スポーツ
  • 重労働
  • サウナ

術後3週間〜1ヶ月

社会生活への復帰 ほとんどの方がこの時期には通常の社会生活に完全復帰できます。傷跡はまだ赤みがありますが、徐々に目立たなくなっていきます。

運動の再開 医師の許可があれば、軽いスポーツから徐々に再開できます。ただし、腕を激しく動かす運動(テニス、水泳など)はもう少し時間をおいてからにします。

術後3ヶ月〜6ヶ月

傷跡の成熟 傷跡は時間とともに白く薄くなっていきます。最終的な傷跡の状態が分かるまでには6ヶ月〜1年かかります。

保湿ケアや日焼け対策を継続することで、よりきれいな傷跡になります。必要に応じて、傷跡治療用のテープやクリームを使用することもあります。

効果の実感 多汗症やわきがの症状改善を実感する時期です。汗の量が明らかに減少し、においも気にならなくなったという声を多くいただきます。

術後の合併症と対処法

適切に行われた手術でも、以下のような合併症が起こる可能性があります:

血腫・漿液腫(5〜10%) 手術部位に血液や体液が溜まる状態です。腫れや痛みが強い場合は、早めに医療機関を受診してください。穿刺して液を抜く処置が必要なこともあります。

感染(1〜2%) 発赤、熱感、強い痛み、膿が出るなどの症状がある場合は感染の可能性があります。抗生物質の投与や創部の洗浄が必要です。

皮膚壊死(1%未満) 血流障害により皮膚の一部が壊死することがあります。多くは保存的治療で改善しますが、まれに追加の処置が必要です。

瘢痕・ケロイド 体質によっては傷跡が盛り上がることがあります。ケロイド体質の方は事前に医師に相談してください。

感覚異常 手術部位やその周辺の感覚が一時的に鈍くなることがあります。多くは数ヶ月で改善しますが、永続的に残ることもあります。

これらの症状が現れた場合は、自己判断せずに必ず医療機関に連絡してください。

治療効果と再発について

治療効果

多汗症への効果 剪除法による治療では、手術部位の発汗が70〜80%程度減少すると報告されています。完全に汗をかかなくなるわけではありませんが、日常生活に支障のないレベルまで改善することが期待できます。

術後のアンケート調査では、約85〜90%の患者さんが「満足」または「非常に満足」と回答しています。

わきがへの効果 わきがに対する剪除法の効果はさらに高く、適切に行われた場合、90〜95%以上の症状改善が期待できます。特に、においに関する患者満足度は非常に高い傾向にあります。

再発のリスク

再発率

  • 剪除法:約5%以下
  • 吸引法:約15〜20%
  • 超音波吸引法:約10〜15%

再発の定義は様々ですが、「手術前と同程度の症状が戻ること」とすると、上記の程度です。「わずかに症状が残る」程度も含めると、もう少し高くなります。

再発の原因

再発が起こる主な理由は以下の通りです:

  1. 汗腺の取り残し:最も多い原因です。特に周辺部の汗腺が残りやすい
  2. 汗腺の再生:完全に除去できなかった汗腺組織から再生することがあります
  3. 成長期の手術:思春期の手術では、その後の成長で新たに汗腺が発達する可能性
  4. 手術範囲の不足:発汗範囲より狭い範囲での手術

再発を防ぐために

  • 経験豊富な医師による手術を受ける
  • 適切な術後ケアを守る
  • 成人してから手術を受ける(可能であれば)
  • 十分な手術範囲を確保する

他の部位の発汗増加(代償性発汗)について

手術後、まれに他の部位(背中、胸、太ももなど)の発汗が増えたと感じる方がいます。これは「代償性発汗」と呼ばれる現象です。

局所の手術でこの現象が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、発生率は5〜10%程度とされています。多くの場合は軽度で、時間とともに改善する傾向があります。

他の治療法との比較

汗腺を切る外科的治療以外にも、多汗症やわきがの治療法はあります。それぞれの特徴を理解し、自分に最適な治療を選びましょう。

外用療法

塩化アルミニウム外用

  • 効果:軽度〜中等度の多汗症に有効
  • 持続期間:毎日使用が必要
  • 副作用:皮膚刺激、かゆみ
  • 費用:比較的安価
  • メリット:自宅で手軽に使用可能
  • デメリット:根本治療ではない、継続使用が必要

ボツリヌス療法(ボトックス注射)

方法 ボツリヌス毒素を脇の下に注射し、汗腺の働きを抑制します。

効果と持続期間

  • 注射後2〜3日で効果が現れる
  • 効果は4〜9ヶ月持続(個人差あり)
  • 重度の多汗症にも効果的

メリット

  • 手術不要で傷跡が残らない
  • ダウンタイムがほぼない
  • 痛みが少ない
  • 効果が高い

デメリット

  • 効果が一時的(定期的な再注射が必要)
  • 費用が継続的にかかる
  • 原発性腋窩多汗症の重症例では保険適用あり
  • わきがへの効果は限定的

マイクロ波治療(ミラドライ)

方法 マイクロ波のエネルギーで汗腺を破壊する非侵襲的治療です。

効果

  • 1回の治療で汗腺の約70〜80%を破壊
  • 多汗症とわきがの両方に効果
  • 再発率は約10〜20%

メリット

  • 切らないため傷跡がない
  • ダウンタイムが短い(数日程度)
  • 当日から日常生活が可能
  • 治療時間が短い(約1時間)

デメリット

  • 効果が手術より劣ることがある
  • 費用が高額(自費診療)
  • 治療後の腫れや痛みがある
  • 2回目の治療が必要なことも

レーザー治療

方法 レーザーファイバーを皮下に挿入し、汗腺を破壊します。

効果

  • 1〜2回の治療で効果を実感
  • ダウンタイムが短い

メリット

  • 傷跡が非常に小さい
  • 回復が早い
  • 出血が少ない

デメリット

  • 効果が限定的なことがある
  • 費用が高額
  • やけどのリスク
  • 長期的な効果データが不足

治療法の選択基準

手術(汗腺を切る治療)が適している方

  • 重度の症状で確実な改善を望む
  • 一度の治療で長期的効果を得たい
  • 再発リスクを最小限にしたい
  • ダウンタイムを許容できる
  • 保険適用の治療を希望(腋臭症の場合)

非手術的治療が適している方

  • 症状が軽度〜中等度
  • 傷跡を残したくない
  • ダウンタイムが取れない
  • 手術に抵抗がある
  • 効果が一時的でも構わない

アイシークリニック上野院では、患者さん一人ひとりの症状、ライフスタイル、希望を総合的に評価し、最適な治療法をご提案しています。

保険適用と費用について

保険適用の条件

腋臭症(わきが)に対する剪除法は、以下の条件を満たす場合に保険適用となります:

診断基準

  • 客観的に腋臭が認められる
  • 本人が症状を自覚し、治療を希望している
  • 医師が手術の適応があると判断した

重要なポイントは、「客観的に」腋臭が認められることです。単に本人が気にしているだけでは保険適用にならないこともあります。

保険適用の手術方法 保険適用となるのは、基本的に「皮弁法(剪除法)」のみです。吸引法や超音波吸引法、シェービング法などは保険適用外となります。

費用の目安

保険診療の場合(3割負担)

  • 片側:約20,000〜25,000円
  • 両側:約40,000〜50,000円 ※初診料、再診料、検査費用、薬代などは別途

自費診療の場合 治療法によって大きく異なります:

  • 剪除法:両側で200,000〜400,000円
  • 吸引法:両側で150,000〜300,000円
  • 超音波吸引法:両側で250,000〜400,000円
  • シェービング法:両側で200,000〜350,000円

※医療機関により費用は異なります

その他の治療法(参考)

  • ボトックス注射:両側で70,000〜100,000円(効果期間4〜9ヶ月)
  • ミラドライ:両側で300,000〜450,000円
  • レーザー治療:両側で200,000〜400,000円

医療費控除について

年間の医療費が一定額を超える場合、確定申告で医療費控除を受けられます。美容目的ではなく、治療目的の手術は医療費控除の対象となります。

領収書は必ず保管し、交通費の記録もつけておきましょう。

患者さんからよくある質問

Q1. 手術は痛いですか?

A. 手術中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みがありますが、その後は麻酔が効いて痛みを感じなくなります。
術後は麻酔が切れると痛みが出ますが、処方される鎮痛薬で十分にコントロール可能です。多くの患者さんは「思ったより痛くなかった」と言われます。

Q2. 手術の傷跡は目立ちますか?

A. 剪除法の場合、3〜5cm程度の傷跡が残りますが、脇のしわに沿って切開するため、腕を下ろした状態では目立ちにくいです。
術後6ヶ月〜1年で傷跡は徐々に白く薄くなります。適切なケアを行うことで、さらに目立たなくすることができます。

Q3. 仕事はいつから復帰できますか?

A. デスクワークであれば、術後2〜3日で復帰可能です。ただし、腕の動きは制限されます。

重労働や身体を使う仕事の場合は、2〜3週間の休みが必要です。仕事内容に応じて、医師と相談して復帰時期を決めましょう。

Q4. スポーツはいつから再開できますか?

A. ウォーキングなどの軽い運動は術後2週間程度から可能です。

本格的なスポーツ(水泳、テニス、ゴルフなど)は術後1〜2ヶ月程度待つことをお勧めします。ジムでの筋力トレーニングも同様です。

Q5. 再発することはありますか?

A. 剪除法の場合、再発率は5%以下と報告されています。ただし、完全にゼロではありません。

再発を防ぐためには、経験豊富な医師による丁寧な手術と、術後の適切なケアが重要です。

Q6. 脇の下の感覚はどうなりますか?

A. 手術直後は感覚が鈍くなることがありますが、多くの場合、数ヶ月で改善します。

ただし、まれに感覚の変化が永続的に残ることもあります。日常生活に大きな支障はありませんが、事前に理解しておくことが大切です。

Q7. 汗は全く出なくなりますか?

A. 完全に汗が出なくなるわけではありません。手術部位の発汗が70〜80%程度減少するイメージです。

体温調節に必要な最低限の発汗は残りますし、エクリン汗腺をすべて除去することは技術的に困難です。しかし、日常生活で困らないレベルまで改善することが期待できます。

Q8. 他の部位の汗が増えることはありますか?

A. 代償性発汗といって、他の部位の発汗が増加することがまれにあります(5〜10%)。

多くは軽度で、時間とともに改善する傾向があります。局所の手術でこの現象が起こる頻度は、全身の交感神経を遮断する手術と比べて非常に低いです。

Q9. 臭いは完全に消えますか?

A. わきがに対する剪除法では、90〜95%以上の症状改善が期待できます。

完全に無臭になるわけではなく、誰にでもある通常の汗のにおいは残ります。しかし、わきが特有の強いにおいは大幅に軽減され、日常生活で困らなくなる方がほとんどです。

Q10. 未成年でも手術できますか?

A. 身体的には可能ですが、以下の点に注意が必要です:

  • 保護者の同意が必須
  • 成長期は汗腺が発達途中のため、再発リスクが高い
  • できれば成人後の手術が望ましい

どうしても症状が辛い場合は、まず非手術的治療(ボトックス注射など)を検討することをお勧めします。

当院での治療の特徴

アイシークリニック上野院の強み

1. 豊富な経験と実績 当院では、多汗症・わきが治療に精通した専門医が、これまで数多くの手術を実施してきました。解剖学的知識と繊細な技術により、確実な効果と美しい仕上がりを追求しています。

2. 丁寧なカウンセリング 患者さん一人ひとりの症状、ライフスタイル、希望を詳しくお聞きし、最適な治療法をご提案します。手術のメリットだけでなく、デメリットやリスクについても正直にお伝えします。

3. 充実したアフターケア 術後の経過を定期的にフォローし、不安や疑問があればいつでも相談できる体制を整えています。万が一トラブルが起きた場合も、迅速に対応いたします。

4. 上野駅から徒歩圏内の好アクセス JR上野駅から徒歩数分の便利な立地で、お仕事帰りや休日のご来院にも便利です。

5. プライバシーへの配慮 完全予約制により、他の患者さんと顔を合わせることなく受診できるよう配慮しています。

治療の流れ

  1. 初診・カウンセリング:症状の診察、治療法の説明
  2. 検査:必要に応じて各種検査を実施
  3. 手術日の予約:スケジュールを相談して決定
  4. 手術:安全・確実な治療を実施
  5. 術後フォロー:定期的な診察でケア

まとめ

汗腺を切る治療は、多汗症やわきがに対する根本的な治療法です。特に剪除法は、保険適用で受けられる場合もあり、確実性の高い標準的な治療として位置づけられています。

治療を検討すべき方

  • 制汗剤やデオドラント製品では効果が不十分
  • 日常生活や社会生活に支障をきたしている
  • 他の治療法で改善しなかった
  • 根本的な解決を望んでいる

治療のメリット

  • 長期的な効果が期待できる
  • 再発率が低い
  • わきがには特に高い効果
  • 保険適用の可能性がある(腋臭症の場合)

治療前に理解すべきこと

  • ダウンタイムが必要
  • 傷跡が残る
  • 完全に汗が出なくなるわけではない
  • 術後のケアが重要

多汗症やわきがは、適切な治療により大きく改善できる症状です。一人で悩まず、まずは専門医に相談することをお勧めします。

アイシークリニック上野院では、患者さんが納得して治療を受けられるよう、丁寧な説明と確実な技術で、お一人おひとりに最適な治療を提供しています。汗やにおいの悩みから解放され、自信を持って日常生活を送れるよう、私たちがサポートいたします。

参考文献

本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。

  1. 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=3
  2. 日本皮膚科学会「腋臭症診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/
  3. 厚生労働省「多汗症に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/
  4. 日本形成外科学会「わきが・多汗症の治療」 https://www.jsprs.or.jp/

※本記事の情報は2025年10月時点のものです。最新の治療法や診療ガイドラインについては、各学会のウェブサイトをご確認ください。


免責事項 本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。症状や治療法については、必ず医師にご相談ください。治療効果や副作用には個人差があります。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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