「シミ取りをしたいけれど、本当に今やるべきなのか」「レーザー治療を受けて後悔しないだろうか」とお悩みの方は少なくありません。シミ取り治療は美容医療のなかでも人気の高い施術ですが、実はすべての方に適しているわけではなく、シミの種類や肌の状態、タイミングによっては治療を控えたほうがよいケースもあります。近年、国民生活センターに寄せられる美容医療トラブルの相談件数は急増しており、2024年度には1万件を超えました。このうち「しみ取り」は相談件数の多い施術のひとつとして報告されています。シミ取り治療で失敗しないためには、まず自分のシミの種類を正しく把握し、治療を受けるべきかどうかを慎重に判断することが大切です。本記事では、シミ取り治療を「しないほうがいい」ケースや人、シミの種類別の注意点、そして治療を検討する前に知っておきたいリスクについて、美容皮膚科の観点から詳しく解説します。

目次
- シミ取り治療とは
- シミ取りをしないほうがいい人の特徴
- シミの種類と治療適応の判断
- 肝斑がある場合にシミ取りを控えるべき理由
- シミ取りを避けるべきタイミング
- シミ取りレーザーの副作用とリスク
- シミ取り治療のトラブル事例と注意点
- シミ取り以外の選択肢
- 失敗しないクリニック選びのポイント
- まとめ
シミ取り治療とは
シミ取り治療とは、肌に蓄積したメラニン色素を除去することでシミを改善する医療行為を指します。代表的な治療法には、レーザー治療、光治療(IPL)、外用薬による治療、内服薬による治療などがあります。
レーザー治療は、特定の波長のレーザー光をシミに照射し、メラニン色素を選択的に破壊する方法です。Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、ピコレーザーなど複数の種類があり、シミの深さや種類によって使い分けられます。メラニン色素のみに反応するため、正常な皮膚組織へのダメージを最小限に抑えながら治療できるという特徴があります。
光治療(IPL)は、複数の波長を持つ光を広範囲に照射する治療法で、シミだけでなく肌の赤みやくすみの改善にも効果が期待できます。レーザーに比べてダウンタイムが短いのが特徴ですが、効果が穏やかなため複数回の施術が必要になることが多いです。
外用薬による治療では、ハイドロキノンやトレチノインなどの美白成分を含む塗り薬を使用します。メラニンの生成を抑制したり、ターンオーバーを促進することでシミを徐々に薄くしていきます。内服薬としては、トラネキサム酸やビタミンCが処方されることがあり、特に肝斑の治療に用いられます。
シミ取り治療は効果的な方法ではありますが、すべてのシミに同じ治療が適用できるわけではありません。シミの種類によって適した治療法は異なり、間違った治療を行うとかえってシミが悪化することもあります。そのため、治療を受ける前に医師による正確な診断を受けることが非常に重要です。
シミ取りをしないほうがいい人の特徴
シミ取り治療は多くの方に効果をもたらす一方で、特定の条件に該当する方は治療を控えたほうがよい場合があります。以下に、シミ取りをしないほうがいい人の主な特徴を解説します。
肝斑を発症している人
肝斑は、両頬や額、口の周りなどに左右対称に現れる薄茶色のシミで、30代から60代の女性に多く見られます。肝斑の大きな特徴は、強い刺激を与えると悪化してしまうことです。従来の高出力レーザー治療を肝斑に照射すると、メラノサイト(メラニンを作る細胞)が刺激されてメラニンがさらに生成され、シミがかえって濃くなってしまうリスクがあります。そのため、肝斑がある方は通常のシミ取りレーザーを控えるべきです。肝斑の治療には、低出力のレーザートーニングや内服薬、外用薬による治療が推奨されています。
妊娠中・授乳中・不妊治療中の人
妊娠中や授乳中、不妊治療中の方は、ホルモンバランスが大きく変化している時期です。この時期にレーザー治療を受けると、予期せぬ肌トラブルが起きやすくなります。また、治療後に処方される薬剤のなかには、妊娠中や授乳中に使用できないものもあります。例えば、美白外用薬として使用されるトレチノインは、妊娠中や妊娠予定がある方には使用が禁止されています。安全のため、これらの時期はシミ取り治療を避け、出産後や授乳終了後に改めて治療を検討されることをおすすめします。
皮膚の炎症や乾燥がひどい人
皮膚に炎症がある状態でレーザー治療を受けると、症状が悪化したり、治療後に炎症後色素沈着を起こしやすくなります。アトピー性皮膚炎や湿疹、ニキビなどで肌が荒れている場合は、まず皮膚の状態を改善してから治療を検討しましょう。また、極度の乾燥肌の方も、レーザーによる刺激を受けやすく、赤みや炎症が長引くことがあります。十分な保湿ケアを行い、肌のバリア機能を回復させてから治療に臨むことが大切です。
日焼け直後の人
日焼け直後の肌は紫外線によるダメージを受けており、バリア機能が低下しています。この状態でレーザーを照射すると、日焼け部分のメラニン色素にレーザーが反応してしまい、やけどや色素沈着のリスクが高まります。夏場のレジャーや海外旅行後など、日焼けをしてしまった場合は、肌が落ち着くまで数週間から数か月程度待ってから治療を受けるようにしましょう。治療前だけでなく、治療後も紫外線対策を徹底することが重要です。
ケロイド体質の人
ケロイド体質の方は、傷が治る過程で皮膚が過剰に盛り上がる傾向があります。レーザー治療によって皮膚にダメージを与えると、ケロイドが形成されるリスクがあるため、治療を慎重に検討する必要があります。ケロイド体質であることが分かっている方は、必ずカウンセリング時に医師に伝え、リスクについて十分な説明を受けてください。
光線過敏症の人
光線過敏症をお持ちの方や、光に対するアレルギーがある方は、レーザー治療や光治療を受けることができません。また、一部の薬剤(抗生物質や利尿薬など)を服用していると光線過敏症を引き起こすことがあるため、現在服用中の薬がある場合は必ず医師に申告してください。
ダウンタイムを取れない人
シミ取りレーザー治療後は、2週間程度のダウンタイムが必要になることがあります。治療部位にかさぶたができ、それが自然に剥がれ落ちるまでテープを貼って保護する必要があります。人前に出る機会が多い方や、仕事の都合でテープを貼れない方は、治療のタイミングを慎重に検討する必要があります。また、かさぶたを無理に剥がすと色素沈着や傷跡が残るリスクがあるため、アフターケアを十分に行える時期を選ぶことが大切です。
シミの種類と治療適応の判断
シミにはさまざまな種類があり、それぞれ原因や治療法が異なります。自分のシミがどの種類に該当するのかを正しく理解することで、適切な治療を選択できるようになります。
老人性色素斑(日光黒子)
老人性色素斑は、一般的に「シミ」と呼ばれるもののなかで最も多いタイプです。紫外線によるダメージの蓄積が主な原因で、頬やこめかみ、手の甲など日光に当たりやすい部位に発生します。形は丸形や楕円形で、境界がはっきりしており、色は茶色から褐色です。30代以降に発症することが多く、加齢とともに数が増え、色も濃くなる傾向があります。老人性色素斑は、レーザー治療の効果が高く期待できるシミです。適切な治療により、1回から数回の施術で改善することが多いです。ただし、肝斑や後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)など他のシミと混在していることもあるため、正確な診断が重要です。
肝斑
肝斑は、主に30代から50代の女性に見られるシミで、両頬の頬骨に沿って左右対称に現れるのが特徴です。輪郭がぼんやりしており、薄い褐色をしています。女性ホルモンとの関連が指摘されており、妊娠や出産、ピルの服用をきっかけに発症したり悪化することがあります。また、紫外線や摩擦などの刺激も悪化因子となります。肝斑は、通常の高出力レーザー治療では悪化するリスクがあるため、治療を控えるべきシミの代表格です。内服薬(トラネキサム酸、ビタミンC)や外用薬(ハイドロキノン)による治療が第一選択となります。レーザー治療を行う場合は、低出力のレーザートーニングが検討されますが、それでも悪化する例があるため、経験豊富な医師による慎重な管理が必要です。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは、鼻を中心に両頬に散らばるように現れる小さな斑点状のシミです。遺伝的な要因が強く、幼少期から思春期にかけて目立つようになることが多いです。夏場に色が濃くなり、冬場に薄くなるという季節変動が見られるのも特徴です。そばかすは、レーザー治療や光治療(IPL)で改善が期待できます。ただし、広範囲に分布していることが多いため、複数回の治療が必要になることがあります。また、遺伝的な要因があるため、治療後も紫外線対策を怠ると再発する可能性があります。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
ADMは、思春期以降に両頬や額などに現れる灰色から青みを帯びた褐色のシミ(あざ)です。米粒大程度の大きさで、左右対称に散在的にできるのが特徴です。メラニン色素が皮膚の深い層(真皮)に存在しているため、通常のシミとは治療アプローチが異なります。ADMは肝斑と見分けるのが難しく、誤診されることも少なくありません。治療には、深い層に届くレーザー(Qスイッチレーザーやピコレーザー)が必要ですが、複数回の治療が必要で、治療期間も長くなります。ADMに肝斑が併発している場合は、さらに治療が複雑になるため、専門医による正確な診断が不可欠です。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着は、ニキビや傷、やけど、虫刺されなどの炎症が治った後に残る茶色いシミです。炎症が起きた部位にメラニンが沈着することで発生します。時間の経過とともに自然に薄くなることが多いですが、完全に消えるまでに数か月から1年以上かかることもあります。炎症後色素沈着に対してレーザー治療を行うと、刺激によってかえって色素沈着が悪化する可能性があります。そのため、まずは外用薬や内服薬による保存的治療を行い、十分に改善してからレーザー治療を検討するのが一般的です。
脂漏性角化症(老人性イボ)
脂漏性角化症は、老人性色素斑を長期間放置することで生じる、皮膚から盛り上がったイボ状の病変です。色は肌色から黒色までさまざまで、ほくろと似ていますが、より硬い触感があります。脂漏性角化症は、シミ取りレーザーでは治療できません。盛り上がった部分を除去するためには、炭酸ガスレーザーなど別の治療法が必要になります。シミだと思っていたものが実は脂漏性角化症だったというケースもあるため、自己判断せずに医師の診察を受けることが重要です。
肝斑がある場合にシミ取りを控えるべき理由
肝斑に対するシミ取り治療は特に注意が必要です。ここでは、肝斑がある場合にシミ取りを控えるべき理由を詳しく解説します。
高出力レーザーによる悪化リスク
肝斑は、一般的なシミ(老人性色素斑)とは性質が大きく異なります。老人性色素斑には効果的な高出力レーザー治療が、肝斑に対しては逆効果になることがあります。これは、レーザーの熱刺激によってメラノサイトが活性化し、メラニンの産生がさらに促進されてしまうためです。その結果、シミが濃くなったり、新たなシミが発生したりすることがあります。実際に、肝斑に対して従来のレーザー治療を行った結果、シミが悪化してしまったという症例が多数報告されています。
肝斑の診断の難しさ
肝斑の診断は、専門医であっても難しいことがあります。肝斑は老人性色素斑やADM、そばかすなど他のシミと混在していることが多く、見た目だけでは判別が困難なケースがあります。両頬に左右対称にシミがあるからといって肝斑とは限らず、老人性色素斑も両頬に発生することがあります。また、肝斑が目立たない「潜在性肝斑」というものも存在し、一見普通のシミに見えても、実は肝斑が隠れている可能性があります。このような状態でシミ取りレーザーを照射すると、潜在していた肝斑が顕在化して悪化することがあります。これが「医師泣かせのシミ」と呼ばれる所以です。
肝斑の適切な治療法
肝斑の治療には、内服薬や外用薬による保存的治療が第一選択となります。トラネキサム酸の内服は、メラニンの生成を抑制する効果があり、肝斑治療の基本となります。通常、3か月程度の継続服用が推奨されます。外用薬としては、ハイドロキノンやビタミンC誘導体などが使用されます。ハイドロキノンはメラニンの合成を阻害する働きがあり、肝斑を徐々に薄くする効果が期待できます。レーザー治療を行う場合は、低出力で広範囲に照射する「レーザートーニング」が選択されることがあります。ただし、レーザートーニングでも悪化するケースがあるため、必ず肝斑の治療経験が豊富な医師のもとで行うべきです。また、肝斑の悪化因子となる紫外線対策や摩擦を避けることも重要な治療の一部です。
シミ取りを避けるべきタイミング
シミ取り治療には適したタイミングがあります。以下のような時期は、治療を避けるか延期することが望ましいです。
紫外線が強い時期
夏場や紫外線の強い時期は、シミ取り治療を避けたほうがよいタイミングです。治療後の肌は非常にデリケートで、紫外線のダメージを受けやすくなっています。紫外線を浴びると、メラニン色素が大量に生成され、色素沈着やシミの再発につながるリスクがあります。理想的なのは、紫外線が比較的弱い秋から冬にかけての時期に治療を受けることです。ただし、どの季節であっても、治療後は日焼け止めや帽子、日傘などで紫外線対策を徹底することが重要です。
大切なイベントの直前
結婚式、成人式、就職面接、写真撮影など、大切なイベントを控えている方は、直前のシミ取り治療は避けるべきです。治療後は、赤みや腫れ、かさぶたなどが生じ、肌の状態が落ち着くまでに2週間から1か月程度かかることがあります。また、炎症後色素沈着が起こった場合は、元の状態に戻るまでに数か月を要することもあります。大切なイベントに最良の状態で臨むためには、少なくとも3か月から6か月前に治療を完了させておくことをおすすめします。
アウトドアの予定がある時期
旅行やキャンプ、海水浴など、屋外で長時間過ごす予定がある場合は、その前後のシミ取り治療は控えましょう。治療前に日焼けをすると、レーザーが肌のメラニンに反応してやけどのリスクが高まります。治療後は紫外線対策が必須となりますが、アウトドアでは十分な対策が難しいこともあります。屋外活動の予定がある場合は、その時期を避けて治療計画を立てましょう。
体調不良や免疫力が低下している時期
風邪を引いている時や、疲労が蓄積している時など、体調が優れない状態での治療は避けるべきです。免疫力が低下していると、治療後の回復が遅れたり、感染症のリスクが高まったりする可能性があります。また、ストレスが多い時期も肌のコンディションに影響を与えるため、心身ともに落ち着いた状態で治療を受けることが望ましいです。
生理前後のホルモンバランスが乱れている時期
女性の場合、生理前後はホルモンバランスの変動により、肌が敏感になりやすい時期です。この時期にレーザー治療を受けると、通常よりも痛みを強く感じたり、肌トラブルが起きやすくなったりすることがあります。可能であれば、生理が終わって肌のコンディションが安定してから治療を受けることをおすすめします。
シミ取りレーザーの副作用とリスク
シミ取りレーザー治療には、一定の副作用やリスクが伴います。治療を検討する前に、これらについて十分に理解しておくことが重要です。
炎症後色素沈着(戻りジミ)
炎症後色素沈着は、シミ取りレーザー治療後に最も多く見られる副作用のひとつです。治療後1か月から2か月頃に、照射した部位が一時的に茶色く色づく現象で、「戻りジミ」とも呼ばれます。これは、レーザーによる刺激でメラノサイトが活性化し、新たなメラニンが生成されるために起こります。日本人を含むアジア人の肌は、炎症後色素沈着が起きやすい傾向があり、約半数の方に何らかの色素沈着が見られるとも言われています。通常は3か月から6か月で自然に薄くなりますが、完全に消えるまでに1年程度かかることもあります。紫外線対策や保湿、外用薬の使用によって、色素沈着の予防や改善を促すことができます。
赤みや腫れ
レーザー照射直後は、治療部位に赤みや腫れが生じることがあります。これはレーザーの熱による一時的な炎症反応で、通常は数日から1週間程度で落ち着きます。ただし、出力が強すぎた場合や、肌が敏感な状態だった場合は、赤みが長引くことがあります。赤みや腫れが激しい場合や、なかなか治まらない場合は、速やかに治療を受けたクリニックに相談してください。
やけど
レーザーの出力設定が適切でなかった場合や、日焼けした肌に照射した場合などに、やけどが生じることがあります。軽度のやけどであれば数日で回復しますが、重度の場合は水ぶくれができたり、傷跡が残ったりするリスクがあります。日焼け直後の肌や、炎症がある肌への照射は避け、医師の指示に従って治療を受けることが大切です。
白斑
白斑は、レーザー照射によって色素細胞(メラノサイト)がダメージを受け、メラニンを正常に生成できなくなった結果、皮膚が白くなってしまう状態です。照射出力が強すぎた場合や、同じ部位に繰り返しレーザーを照射した場合などに起こる可能性があります。白斑は一度発生すると改善が難しいため、予防が重要です。経験豊富な医師による適切な出力設定と、必要以上の繰り返し照射を避けることが大切です。
シミの残存や再発
1回の治療でシミが完全に取りきれず、一部が残ってしまうことがあります。特にシミに厚みがある場合や、色素が深い部分に存在する場合は、複数回の治療が必要になることがあります。また、一度治療したシミが数年後に再発することもあります。シミの原因となる紫外線対策を継続しなければ、新たなシミが発生するリスクも常にあります。シミ取り治療は「永久的にシミがなくなる」というものではなく、継続的なケアが必要であることを理解しておきましょう。
痛み
レーザー照射時には、輪ゴムで弾かれたような痛みを感じることがあります。痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの方が我慢できる程度の痛みです。痛みに弱い方には、麻酔クリームや麻酔テープを使用することで痛みを軽減することができます。施術前に医師に相談し、必要に応じて麻酔の使用を検討しましょう。
シミ取り治療のトラブル事例と注意点
美容医療に関するトラブルは年々増加しており、厚生労働省や国民生活センターも注意を呼びかけています。ここでは、シミ取り治療に関する実際のトラブル事例と、それを防ぐための注意点を解説します。
トラブル事例
国民生活センターには、シミ取り治療に関するさまざまな相談が寄せられています。具体的な事例としては、「シミ取りレーザーを受けたらかえってシミが濃くなった」「治療後に目の周りに痛みが出て、救急車で病院に搬送された結果、角膜びらんと診断された」「効果についての説明が不十分だった」「高額な契約を勧められ、断りづらい雰囲気で契約してしまった」などがあります。2023年度の美容医療サービスに関する相談件数は6,000件を超え、2024年度にはさらに増加して1万件を超えています。施術内容別では、「しわ取り」「たるみ取り」に次いで「しみ取り」の相談が多いことが報告されています。
トラブルを防ぐための注意点
シミ取り治療でトラブルを防ぐためには、以下の点に注意することが重要です。
まず、施術前に十分な説明を受けることです。使用する機器や薬剤の種類、期待できる効果、起こりうる副作用やリスク、ダウンタイムの長さ、必要な治療回数と費用などについて、納得できるまで説明を受けましょう。説明が不十分なクリニックや、質問に対してあいまいな回答しか返ってこないクリニックは避けるべきです。
次に、その場で契約を決めないことです。美容医療は基本的に緊急性を伴う治療ではありません。カウンセリング当日に契約を迫られても、一度持ち帰って冷静に検討する時間を取りましょう。「今日だけの特別価格」などと言われても、焦って決める必要はありません。
また、複数のクリニックでセカンドオピニオンを受けることも有効です。同じシミでも、クリニックによって診断や治療方針が異なることがあります。複数の医師の意見を聞くことで、より適切な治療法を選択できる可能性が高まります。
そして、万が一トラブルが発生した場合は、早めに相談窓口に連絡することです。消費者ホットライン(188番)や医療安全支援センターなどに相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。
シミ取り以外の選択肢
レーザーによるシミ取り治療が適さない場合や、治療に不安がある場合は、他の選択肢を検討することもできます。
外用薬による治療
皮膚科や美容皮膚科では、シミに効果的な外用薬を処方してもらうことができます。ハイドロキノンはメラニンの生成を抑制する働きがあり、シミを徐々に薄くする効果が期待できます。トレチノインは肌のターンオーバーを促進し、メラニンの排出を助けます。これらを組み合わせて使用することで、レーザー治療を行わずにシミを改善できる可能性があります。ただし、外用薬には刺激感や皮むけなどの副作用があることもあるため、医師の指示に従って正しく使用することが大切です。
内服薬による治療
トラネキサム酸やビタミンC、ビタミンEなどの内服薬は、体の内側からメラニンの生成を抑えたり、排出を促したりする効果があります。特にトラネキサム酸は肝斑治療の第一選択薬として広く使用されています。内服薬だけでシミを完全に消すことは難しいですが、他の治療と併用することで効果を高めることができます。また、シミの予防や治療後の再発防止にも役立ちます。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布し、古い角質を除去することでターンオーバーを促進する治療法です。メラニンを含む古い角質が剥がれ落ちることで、シミやくすみが改善されます。レーザー治療に比べてダウンタイムが短く、比較的穏やかな効果を得られるため、レーザーに抵抗がある方にも取り入れやすい治療法です。ただし、効果を実感するには複数回の施術が必要で、レーザーほど劇的な効果は期待できません。
イオン導入・エレクトロポレーション
イオン導入やエレクトロポレーションは、電気の力を利用してビタミンCやトラネキサム酸などの美白成分を肌の奥まで浸透させる治療法です。塗るだけでは届かない深い部分にまで有効成分を届けることができます。痛みがほとんどなく、ダウンタイムもないため、肌への負担が少ない治療を希望する方に適しています。
スキンケアによる予防と改善
日々のスキンケアを見直すことで、シミの予防や進行の抑制が期待できます。最も重要なのは紫外線対策です。日焼け止めを毎日欠かさず塗り、帽子や日傘を活用して紫外線を防ぎましょう。また、美白有効成分を配合した化粧品を使用することで、メラニンの生成を抑えることができます。ビタミンC誘導体やナイアシンアミド、アルブチンなどが代表的な美白成分です。即効性はありませんが、継続することで肌のトーンが明るくなる効果が期待できます。
失敗しないクリニック選びのポイント
シミ取り治療で満足のいく結果を得るためには、クリニック選びが非常に重要です。以下のポイントを参考に、信頼できるクリニックを選びましょう。
医師の経験と専門性
シミ取り治療は、シミの種類を正確に診断し、それに適した治療法を選択する能力が求められます。皮膚科専門医や形成外科専門医など、専門的なトレーニングを受けた医師がいるクリニックを選ぶことをおすすめします。また、シミ治療の症例数や経験年数も確認しておくとよいでしょう。クリニックのウェブサイトに症例写真が掲載されている場合は、治療の質を判断する参考になります。
カウンセリングの丁寧さ
カウンセリングでは、シミの種類や原因、適切な治療法、期待できる効果、起こりうるリスク、ダウンタイム、費用などについて詳しい説明が行われるべきです。質問に対して丁寧に答えてくれるか、不安や疑問を解消してくれるかを確認しましょう。医師自身がカウンセリングを行わず、カウンセラーだけで説明を完結させるクリニックには注意が必要です。また、無理に高額な施術を勧められたり、その場で契約を迫られたりする場合は、別のクリニックを検討することをおすすめします。
使用する機器の種類
シミの種類によって適したレーザーは異なります。複数の種類のレーザー機器を取り揃えているクリニックであれば、自分のシミに最適な治療を受けられる可能性が高まります。また、最新の機器を導入しているかどうかも確認しておくとよいでしょう。ただし、機器の新しさだけでなく、それを使いこなす医師の技術が最も重要です。
アフターケア体制
シミ取り治療では、治療後のアフターケアが結果を左右する重要な要素となります。治療後のケア方法について詳しい指導があるか、何かトラブルが起きた際にすぐに相談できる体制が整っているかを確認しましょう。治療後のフォローアップ診察が含まれているかどうかも重要なポイントです。
口コミや評判
実際に治療を受けた方の口コミや評判を参考にすることも有効です。ただし、ウェブサイトに掲載されている口コミは良い内容だけが選ばれている可能性もあるため、複数の情報源から情報を集めることをおすすめします。過度に良い評価ばかりのクリニックや、逆にネガティブな口コミが多いクリニックには注意が必要です。
費用の透明性
治療費用が明確に提示されているかどうかも重要です。ウェブサイトに料金表が掲載されていても、カウンセリング時に追加費用が発生したり、想定外に高額な見積もりを提示されたりするケースもあります。初診料、カウンセリング料、施術料、薬代、アフターケア費用など、すべての費用を事前に確認し、総額がいくらになるのかを把握しておきましょう。
まとめ
シミ取り治療は、適切な診断と治療法の選択により、高い効果が期待できる美容医療です。しかし、すべての方にすべてのシミ取り治療が適しているわけではありません。肝斑を発症している方、妊娠中や授乳中の方、皮膚に炎症がある方、日焼け直後の方などは、シミ取りを控えたほうがよいケースがあります。また、シミの種類によっても適切な治療法は異なり、誤った治療を行うとかえってシミが悪化するリスクがあります。
シミ取り治療を検討する際は、まず自分のシミの種類を正確に診断してもらうことが大切です。そのためには、シミ治療の経験が豊富な専門医を受診し、十分なカウンセリングを受けることが重要です。治療のメリットだけでなく、起こりうるリスクや副作用についても理解した上で、治療を受けるかどうかを判断しましょう。
レーザー治療以外にも、外用薬や内服薬、ケミカルピーリングなど、さまざまな選択肢があります。自分に合った方法を見つけるためにも、焦らず慎重に検討することをおすすめします。当院では、患者様お一人おひとりのシミの状態を丁寧に診断し、最適な治療法をご提案しております。シミにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

よくある質問
肝斑を発症している方、妊娠中・授乳中・不妊治療中の方、皮膚に炎症や乾燥がある方、日焼け直後の方、ケロイド体質の方、光線過敏症の方などはシミ取りレーザーを控えたほうがよいとされています。また、ダウンタイムを十分に取れない方や、紫外線対策が難しい時期も避けるべきです。
肝斑に通常の高出力シミ取りレーザーを照射すると、レーザーの刺激によってメラノサイトが活性化し、メラニンの産生がさらに促進されてしまいます。その結果、シミがかえって濃くなったり、範囲が広がったりするリスクがあります。肝斑の治療には内服薬や外用薬、低出力のレーザートーニングなど、刺激の少ない方法が推奨されます。
はい、レーザー治療後に一時的にシミが濃くなる炎症後色素沈着(戻りジミ)が起こることがあります。これは日本人を含むアジア人に比較的多く見られる現象で、レーザーの刺激でメラノサイトが活性化しメラニンが生成されるためです。通常は3か月から6か月程度で自然に薄くなりますが、紫外線対策や保湿ケアを徹底することが重要です。
シミ取り治療は紫外線が比較的弱い秋から冬にかけての時期が最適とされています。治療後の肌は紫外線に対して敏感になるため、夏場や紫外線の強い時期は避けることをおすすめします。また、大切なイベントの直前やアウトドアの予定がある時期、体調不良の時期も避けるべきです。治療後は季節を問わず紫外線対策を徹底することが重要です。
レーザー治療以外にも、ハイドロキノンやトレチノインなどの外用薬、トラネキサム酸やビタミンCなどの内服薬、ケミカルピーリング、イオン導入、エレクトロポレーションなどの治療法があります。また、日焼け止めの使用や美白成分配合の化粧品によるスキンケアで予防や進行抑制を図ることもできます。シミの種類や状態に応じて最適な方法を選択することが大切です。
肝斑は両頬の頬骨に沿って左右対称に現れ、輪郭がぼんやりしていて薄い褐色をしているのが特徴です。一方、老人性色素斑は境界がはっきりしていて色が濃い傾向があります。ただし、肝斑と他のシミは混在していることも多く、専門医でも見分けるのが難しい場合があります。自己判断で治療法を選ぶとシミを悪化させるリスクがあるため、必ず医師の診断を受けることをおすすめします。
参考文献
- 厚生労働省「確認してください!美容医療の施術を受ける前にもう一度!」
- 厚生労働省「その美容医療、ちょっと待って!」
- 政府広報オンライン「美容医療サービスの消費者トラブル サービスを受ける前に確認したいポイント」
- 消費者庁「美容医療を受ける前に確認したい事項と相談窓口について」
- 国民生活センター「美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)」
- 公益社団法人日本皮膚科学会「一般公開ガイドライン」
- Mindsガイドラインライブラリ「美容医療診療指針(令和三年度改訂版)」
- 一般社団法人日本形成外科学会「しみ(色素斑)」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務