「鏡を見るたびに気になる顔のシミを何とかしたい」「テレビで紹介されていたシミを消す方法は本当に効果があるの?」そんなお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。NHKの人気番組「ためしてガッテン」では、2016年1月に「戻れ!シミの消えた肌 冬こそ徹底対策」というテーマで顔のシミを消す方法が特集され、放送から数年が経過した現在でも多くの方が検索している人気の内容となっています。番組では「赤いシミ」と「茶色いシミ」という2種類のシミに分けて、それぞれの原因と対策法が紹介されました。本記事では、ためしてガッテンで紹介された内容を踏まえながら、シミの種類や原因、自宅でできるセルフケアから美容皮膚科で受けられる最新治療まで、顔のシミを消すための方法を皮膚科専門の知見に基づいて詳しく解説します。シミでお悩みの方は、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身に合ったシミ対策を見つけてください。

目次
- ためしてガッテンで紹介された顔のシミを消す方法とは
- シミの種類と原因を正しく理解する
- 赤いシミ(日光角化症)の特徴と治療法
- 茶色いシミの原因と自宅でできるケア方法
- シミを消すための美容皮膚科治療
- シミ治療に使われる外用薬と内服薬
- 紫外線対策の重要性と日焼け止めの選び方
- シミを作らない・増やさないための生活習慣
- よくある質問
- まとめ
ためしてガッテンで紹介された顔のシミを消す方法とは
NHK総合テレビで1995年から2022年まで放送されていた生活情報番組「ためしてガッテン(後にガッテン!に改称)」は、科学的な視点から暮らしに役立つ情報を紹介する人気番組でした。2016年1月20日に放送された「戻れ!シミの消えた肌 冬こそ徹底対策」という回では、顔のシミを消す方法が特集され、大きな反響を呼びました。
番組の中で特に注目されたのは、シミを「赤いシミ」と「茶色いシミ」の2種類に分類し、それぞれに適した対策法を紹介した点です。この分類方法は非常に実践的で、自分のシミがどちらのタイプに該当するかを知ることで、適切なケア方法を選択できるようになります。
また、番組では冬がシミ対策に最適な季節であることも強調されていました。夏に比べて紫外線量が少ない冬は、新たなメラニンが生成されにくいため、集中的にシミをケアするチャンスといえます。紫外線の強い夏場は紫外線防御に追われがちですが、冬こそシミを薄くするための積極的なケアに取り組むべき時期なのです。
番組で紹介された2つのシミタイプ
ためしてガッテンでは、シミの色に注目して2つのタイプに分類しました。1つ目は「赤いシミ」で、これは医学的には「日光角化症」と呼ばれる皮膚疾患である可能性があります。日光角化症は紫外線を長年浴び続けることで発症する皮膚がんの一種で、放置すると有棘細胞がんに進行する恐れがあるため、早期発見・早期治療が重要です。番組内では、この赤いシミに対してイミキモドクリーム(商品名:ベセルナクリーム)という塗り薬による治療法が紹介され、シミがポロっと取れていく様子が放送されました。
2つ目は「茶色いシミ」で、これは一般的にシミと呼ばれるものの多くが該当します。茶色いシミの原因はさまざまですが、番組では特に「摩擦」による炎症後色素沈着に焦点を当てていました。洗顔時にゴシゴシとこすったり、化粧を落とす際に強くこすったり、髪の毛が顔に当たり続けたりすることで、肌に慢性的な炎症が起こり、それがシミとして残ってしまうのです。
ガッテン塗りとシミの関係
ためしてガッテンのシミに関する情報を調べていると、「ガッテン塗り」や「ニベアでシミが消える」といった情報を目にすることがあります。しかし、これらは番組内容の誤解に基づく情報です。「ガッテン塗り」とは、2010年11月に放送された乾燥肌対策の回で紹介されたスキンケア方法で、洗顔後に化粧水を使わずに保湿クリームだけを塗るというものでした。この方法は肌の乾燥対策には有効ですが、シミを消す効果があるわけではありません。ニベアなどの保湿クリームには美白成分は含まれておらず、シミを消す効果は期待できません。シミ対策を行う際は、正しい情報に基づいて適切な方法を選択することが大切です。
シミの種類と原因を正しく理解する
顔のシミを効果的に消すためには、まず自分のシミがどの種類に該当するのかを正しく理解することが重要です。シミにはさまざまな種類があり、それぞれ原因や適切な治療法が異なります。間違った方法でケアを続けると、かえってシミが悪化してしまうこともあるため、まずはシミの種類について詳しく見ていきましょう。
老人性色素斑(日光黒子)
老人性色素斑は、シミの中で最も一般的なタイプです。「日光黒子」とも呼ばれ、主に紫外線によるダメージの蓄積が原因で発生します。長年にわたって紫外線を浴び続けることで、メラニン色素が過剰に生成され、それが皮膚に沈着することでシミとなります。男女問わず発生し、加齢とともに増えていく傾向があります。30代以降に発生することが多いですが、紫外線を多く浴びる環境にいる方は20代でも見られることがあります。
老人性色素斑の特徴としては、境界がはっきりしていること、色が濃い茶色から黒褐色であること、形が円形に近いことが挙げられます。顔だけでなく、手の甲や腕、首など日光に当たりやすい部位にもできやすいのが特徴です。このタイプのシミは、レーザー治療やフォトフェイシャルなどの光治療が効果的とされています。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、30代から60代の女性に多く見られるシミの一種です。主に女性ホルモンの乱れが原因と考えられており、妊娠・出産、ピルの服用、過度なストレスなどをきっかけに発症することが多いです。閉経後には少しずつ薄くなっていく傾向があり、人によっては自然に消失することもあります。
肝斑の最大の特徴は、左右対称に現れることです。両頬や額、口の周りなどに左右対称のもやもやとした薄茶色のシミが広がります。一方で、まぶたにできることはほとんどありません。境界がぼんやりとしていて、輪郭がはっきりしないのも特徴です。肝斑は非常にデリケートなシミで、こすったり強い刺激を与えると濃くなってしまうことがあります。そのため、一般的なレーザー治療は禁忌とされており、トラネキサム酸の内服やハイドロキノンの外用など、刺激の少ない治療法が選択されます。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは、遺伝的要因が大きく関係するシミの一種です。幼少期から思春期にかけて発症することが多く、鼻を中心に頬や目の下などに小さな点状のシミが散らばるように現れます。色素の薄い欧米人に多く見られますが、日本人でも色白の方には比較的よく見られます。
そばかすの特徴は、1〜4mm程度の小さな点が顔全体に散らばるように存在することです。紫外線を浴びると濃くなり、冬場には薄くなるという季節変動があります。思春期にピークを迎え、その後は徐々に薄くなっていく傾向がありますが、完全に消えないことも多いです。そばかすに対しては、フォトフェイシャルやQスイッチルビーレーザーなどの治療が効果的です。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着は、ニキビや傷、やけど、虫刺されなど、皮膚に炎症が起こった後に残る色素沈着のことを指します。ためしてガッテンで紹介された「茶色いシミ」の多くは、この炎症後色素沈着に該当します。洗顔やメイク時の摩擦による慢性的な炎症が原因となることも多いです。
このタイプのシミは、原因となっている炎症や刺激を取り除くことで、肌のターンオーバーとともに徐々に薄くなっていく可能性があります。ただし、薄くなるまでには半年から1年以上かかることもあり、紫外線を浴びることで色が濃くなることもあるため、注意が必要です。摩擦を減らすスキンケアの見直しと、紫外線対策を徹底することが重要です。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)は、両頬や額に左右対称に現れる灰褐色または青褐色のシミで、厳密には「あざ」に分類されます。20歳前後から出現することが多く、肝斑と好発部位が似ているため、しばしば肝斑と間違われることがあります。
ADMの特徴は、グレーがかった独特の色味と、小さな斑点状の形態です。通常のシミとは異なり、メラニンが皮膚の深い部分(真皮)に存在するため、一般的な美白化粧品やハイドロキノンの外用だけでは効果が限定的です。Qスイッチレーザーやピコレーザーなど、真皮に到達する波長のレーザー治療が適応となります。治療にはある程度の期間が必要ですが、再発率が低く、治療後の満足度は高いとされています。
赤いシミ(日光角化症)の特徴と治療法
ためしてガッテンで特に注目を集めたのが、「赤いシミ」として紹介された日光角化症です。日光角化症は単なる美容上の問題ではなく、皮膚がんの一種であるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。ここでは、日光角化症の特徴と治療法について詳しく解説します。
日光角化症とは
日光角化症(光線角化症、老人性角化症とも呼ばれます)は、主に紫外線を長年浴び続けてきたことにより発症する皮膚がんの早期病変です。有棘細胞がんの表皮内がんと位置づけられており、この段階ではがん細胞は表皮内にとどまっているため転移の心配はありません。しかし、放置しておくと一部は深く進展し、真皮内浸潤性の有棘細胞がんに進行する可能性があるため、早期治療が重要とされています。
日本での日光角化症の罹患率は、1年間に1000人あたり1〜1.2人程度と報告されており、皮膚科の外来では比較的よく見かける疾患です。高齢化社会の進行とともに発症数は年々増加傾向にあり、今後さらに増えることが予測されています。50代以上の方や高齢の方に多く見られますが、屋外でのスポーツや作業などで紫外線を多く浴びてきた方は、30代など若い世代でも発症する可能性があります。
日光角化症の見分け方
日光角化症は、顔面や頭部、手の甲など日光に当たりやすい部位に発生しやすいのが特徴です。見た目の特徴としては、やや赤みを帯びたまだら状のシミ、黄色味がかったかさぶたがついたシミ、表面がザラザラしているシミなどが挙げられます。サイズは1〜2cm程度のものが多いですが、それより小さいものや大きいものもあります。
日光角化症には、紅斑型、疣状型、色素沈着型などいくつかのタイプがあります。最も多いのは紅斑型で、紅色の平らな病変に表面にカサカサしたウロコ状のものやかさぶたが見られます。疣状型は皮膚の表面が角化してイボのような皮疹が見られ、脂漏性角化症との鑑別が重要です。色素沈着型は褐色調が強いため、一般的なシミと間違われやすいです。
自分のシミが日光角化症かどうかを見分けるポイントとしては、長期間変化がないシミが急に大きくなったり、形が変わったり、出血したりする場合は注意が必要です。また、触るとザラザラしている、かさぶたが繰り返しできる、赤みが持続しているなどの症状がある場合も、皮膚科を受診することをお勧めします。
イミキモドクリーム(ベセルナクリーム)による治療
ためしてガッテンの番組内で「赤いシミを消す薬」として紹介されたのが、イミキモドクリーム(商品名:ベセルナクリーム5%)です。イミキモドクリームは、2011年に日光角化症(顔面または禿頭部に限る)に対して健康保険が適用されるようになった塗り薬です。日本皮膚悪性腫瘍学会の診療指針においても、外科的治療が困難な高齢者や再発例に対する治療選択肢として位置づけられています。
イミキモドクリームの作用機序は、皮膚の中にいる免疫関連細胞を刺激し、炎症を起こすことでがん細胞を死滅させるというものです。使用方法は、治療部位に適量を1日1回、週3回(例:月・水・金)、就寝前に塗布します。塗布後はそのままの状態を保ち、翌朝に石鹸と水で洗い流します。4週間塗布した後、4週間休薬し、病変が消失した場合は終了、効果不十分の場合はさらに4週間塗布を続けます。
イミキモドクリームによる治療の奏効率は約78%と報告されており、治療後の再発率が低く、整容的な仕上がりが良いというメリットがあります。ただし、治療中は塗布部位に赤み、ただれ、痛みなどの炎症反応が生じることがあります。これは薬が効いていることの目安でもありますが、症状が強い場合は医師に相談することが大切です。
その他の日光角化症治療法
日光角化症の治療法には、イミキモドクリーム以外にも外科的切除、液体窒素療法などがあります。外科的切除は最も確実な治療法で、病変を完全に取り除くことができます。また、切除した組織を病理検査に出すことで、がん化していないかを確認できるというメリットもあります。ただし、傷跡が残ることや、病変が多発している場合は全てを切除することが困難であるというデメリットがあります。
液体窒素療法は、液体窒素をひたした綿棒などを患部に押し付けて凍結・壊死させて除去する治療法です。局所麻酔が不要で、外来で簡単に行える治療法ですが、治療後に紅斑、かさぶた、疼痛、水疱ができることがあります。どの治療法を選択するかは、病変の部位や大きさ、全身状態などを考慮して、医師と相談の上で決定します。
茶色いシミの原因と自宅でできるケア方法
ためしてガッテンで紹介された「茶色いシミ」の多くは、日常生活における摩擦が原因で起こる炎症後色素沈着です。このタイプのシミは、原因となる摩擦を減らすことで、肌のターンオーバーとともに徐々に薄くなっていく可能性があります。ここでは、茶色いシミを薄くするために自宅でできるケア方法について解説します。
摩擦を減らすスキンケア
ためしてガッテンの番組内でも、茶色いシミを薄くするための方法として「摩擦を減らすこと」が重要であると紹介されていました。肌に与える摩擦を最小限にすることで、メラニンが過剰に作られるのを防ぎ、シミができにくい肌環境を整えることができます。番組では実際にシミが気になる女性たちが摩擦を減らす対策を2週間実施したところ、肌の赤みの数値やシミの濃さの数値が改善されたという結果が紹介されました。
摩擦を減らすための具体的なポイントとして、まず洗顔方法の見直しが挙げられます。洗顔料は十分に泡立てて、こんもりと柔らかい泡を作ります。泡を肌の上に乗せるようにして、手が直接肌に触れないようにやさしく洗います。すすぎの際もシャワーを直接顔に当てるのは避け、手で優しく洗い流しましょう。洗顔後はタオルでゴシゴシこすらず、押さえるようにして水分を拭き取ります。
クレンジングの際も摩擦に注意が必要です。クレンジング剤はたっぷりと手に取り、メイクによくなじませてから、こすらずに落とすようにします。ウォータープルーフの化粧品を使用している場合は、専用のクレンジングを使うことで、こする回数を減らすことができます。また、メイクに使用するスポンジやブラシは肌触りの良い柔らかい素材のものを選び、ファンデーションの重ね塗りは控えめにしましょう。
日常生活での摩擦対策
スキンケア以外にも、日常生活の中で無意識に肌に摩擦を与えている行動があります。例えば、頬杖をつく癖がある方は、頬に圧力と摩擦が加わり続けることでシミの原因になることがあります。また、髪の毛が顔にかかっている場合、その摩擦もシミの原因になり得ます。顔を触る癖がある方も注意が必要です。
マスクの着用も摩擦の原因になることがあります。マスクと肌が擦れることで、頬や顎のあたりに色素沈着が起こることがあります。肌に優しい素材のマスクを選んだり、マスクの下に保湿剤を塗って摩擦を軽減したりする工夫が有効です。
これらの摩擦を減らす対策は、すぐに目に見える効果が現れるわけではありません。肌のターンオーバーには約28日から45日かかるため、効果を実感するまでには数ヶ月の継続が必要です。ためしてガッテンの番組内でも、長い目で見て摩擦を減らしていくことが大切であると強調されていました。
美白化粧品の効果と限界
シミ対策として美白化粧品を使用している方も多いと思います。美白化粧品には、ビタミンC誘導体、アルブチン、コウジ酸、トラネキサム酸など、さまざまな美白成分が配合されています。これらの成分には、メラニンの生成を抑制したり、メラニンの排出を促進したりする作用があります。
ただし、市販の美白化粧品に期待できる効果には限界があることを理解しておく必要があります。薬機法における医薬部外品の美白効果の定義は「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」とされており、今あるシミを消す効果ではなく、新たなシミを予防する効果が認められているにすぎません。すでにできてしまったシミを薄くするためには、美白化粧品だけでは不十分な場合が多く、皮膚科での治療を検討する必要があるかもしれません。
美白化粧品を使用する際は、継続して使い続けることが大切です。また、美白ケアと同時に紫外線対策を徹底することで、より効果的にシミの予防ができます。美白化粧品は朝晩のスキンケアに取り入れ、日中は必ず日焼け止めを塗るようにしましょう。
シミを消すための美容皮膚科治療
自宅でのセルフケアだけでは改善が難しいシミには、美容皮膚科での治療が効果的です。美容皮膚科では、シミの種類や状態に合わせてさまざまな治療法を提供しています。ここでは、代表的なシミ治療について解説します。
レーザー治療
レーザー治療は、シミ治療の中でも最も効果が高いとされている方法です。レーザー光がメラニン色素に吸収されることで熱エネルギーに変換され、メラニンを破壊します。代表的なレーザーとしては、Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、ピコレーザーなどがあります。
Qスイッチルビーレーザーは、老人性色素斑やそばかすの治療に広く使用されているレーザーです。シミのメラニン色素に選択的に反応するため、周囲の正常な皮膚へのダメージを最小限に抑えることができます。治療後はかさぶたができ、1〜2週間程度で自然に剥がれ落ちます。
ピコレーザーは、従来のレーザーよりもさらに短いパルス幅(照射時間)でレーザー光を照射することができる最新の機器です。周囲の組織へのダメージが少なく、ダウンタイムが短いのが特徴です。また、真皮に存在するメラニンにもアプローチできるため、ADMなどの深いシミにも効果が期待できます。
レーザー治療の注意点として、治療後に一時的に炎症後色素沈着(戻りジミ)が起こることがあります。これはレーザーがメラノサイトを刺激してしまうことで起こる現象で、通常は数ヶ月で薄くなっていきます。また、肝斑がある場合は従来のレーザー治療で悪化する恐れがあるため、慎重な判断が必要です。
フォトフェイシャル(光治療)
フォトフェイシャルは、IPL(Intense Pulsed Light)という特殊な光を顔全体に照射する治療法です。レーザーが単一の波長であるのに対し、IPLは複数の波長を含む光であるため、シミだけでなく、赤ら顔や毛穴の開き、肌のハリなど複合的な肌悩みにアプローチすることができます。
フォトフェイシャルの特徴は、ダウンタイムが少なく、治療後すぐにメイクが可能な点です。治療後に薄いかさぶたができることがありますが、化粧で隠しやすく、日常生活への影響が少ないのがメリットです。ただし、1回の治療でシミが完全に消えることは少なく、3〜5回程度の治療を繰り返すことで徐々に改善していきます。
フォトフェイシャルは老人性色素斑やそばかすに効果的ですが、肝斑に対しては注意が必要です。強い光を照射すると肝斑が悪化する可能性があるため、肝斑がある場合は医師に相談の上、トラネキサム酸の内服を併用するなどの対策が必要です。
レーザートーニング
レーザートーニングは、低出力のレーザーを広範囲に照射することで、肌全体のトーンアップを図る治療法です。従来のレーザー治療では悪化の恐れがあった肝斑にも対応できることで注目されています。メラニンを少しずつ破壊していくため、肌への刺激が少なく、ダウンタイムもほとんどありません。
レーザートーニングは1〜2週間に1回のペースで、5〜10回程度の治療を繰り返すことで効果を実感できます。シミだけでなく、肌全体のくすみや毛穴の開きの改善にも効果が期待できます。ただし、効果には個人差があり、全ての肝斑に効果があるわけではないため、医師とよく相談の上で治療を受けることが大切です。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布することで古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進する治療法です。ターンオーバーが促進されることで、メラニンの排出が促され、シミが薄くなる効果が期待できます。また、肌のキメを整えたり、ニキビやニキビ跡の改善にも効果があります。
使用する薬剤には、グリコール酸、サリチル酸、乳酸などがあり、肌の状態や目的に合わせて選択されます。治療後は一時的に肌が敏感になるため、紫外線対策を徹底することが重要です。ケミカルピーリングは単独で行うこともありますが、レーザー治療やイオン導入と組み合わせることでより高い効果が期待できます。
シミ治療に使われる外用薬と内服薬
シミ治療には、レーザーなどの施術だけでなく、外用薬や内服薬による治療も重要な役割を果たします。これらの薬剤は、単独で使用することもありますが、レーザー治療と併用することでより効果を高めることができます。ここでは、シミ治療に使われる代表的な外用薬と内服薬について解説します。
ハイドロキノン
ハイドロキノンは「肌の漂白剤」とも呼ばれる強力な美白成分で、シミ治療の外用薬として広く使用されています。ハイドロキノンの主な作用は、メラニンを生成するメラノサイトの活動を抑制し、メラニン合成酵素であるチロシナーゼの働きを阻害することです。これにより、新たなメラニンの生成を抑え、シミが濃くなるのを防ぎます。その美白効果は、アルブチンやコウジ酸など他の美白成分の約100倍と言われています。
日本では、市販化粧品へのハイドロキノン配合は2%までと厚生労働省により規制されています。それ以上の濃度のハイドロキノンは医療機関での処方が必要です。美容皮膚科では通常4〜5%程度の濃度のハイドロキノンが処方されます。使用方法は、1日2回、朝晩の洗顔後にシミ部分に少量を塗布します。
ハイドロキノンを使用する際の注意点として、紫外線を浴びるとかえってシミが濃くなる可能性があるため、日中は必ず日焼け止めを使用することが重要です。また、まれにかぶれやアレルギー反応を起こすことがあるため、使用開始前にパッチテストを行うことをお勧めします。長期間の使用は避け、医師の指導のもとで適切な期間使用することが大切です。
トレチノイン
トレチノイン(オールトランスレチノイン酸)は、ビタミンA誘導体で、肌のターンオーバーを強力に促進する作用があります。表皮の細胞を活発に分裂・増殖させ、皮膚の再生を促進することで、メラニンの排出を促します。アメリカではFDA(米国食品医薬品局)によりシミやシワ、ニキビの治療薬として認可されていますが、日本では厚生労働省の認可が下りていないため、医師の判断による適応外使用として処方されています。
トレチノインはハイドロキノンと併用することで、より高い効果が期待できます。トレチノインが今あるメラニンを皮膚の外に排出し、ハイドロキノンが新たなメラニンの生成を抑制するという相乗効果が得られるためです。また、トレチノインにはコラーゲンの生成を促進する作用もあり、小じわの改善や肌のハリを取り戻す効果も期待できます。
トレチノインを使用すると、塗布後数日から1週間程度で肌が赤くなったり、ヒリヒリしたり、皮膚がポロポロと剥けたりすることがあります。これは薬が効いている証拠でもありますが、症状が強い場合は使用頻度を減らすか、医師に相談してください。また、トレチノインには催奇形性の報告があるため、妊娠中や妊娠予定のある方は使用できません。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、もともと止血剤や抗炎症剤として使用されてきた成分ですが、シミや肝斑の治療にも効果があることがわかっています。トラネキサム酸は、プラスミンという酵素の作用を抑えることで、メラニン色素の生成を抑制します。特に肝斑に対しては、レーザー治療が使えない場合の第一選択薬として位置づけられています。
トラネキサム酸は内服薬として処方されることが多く、1日2〜3回、数週間から数ヶ月にわたって継続して服用することで効果が現れます。即効性はありませんが、肝斑が強く出ている方ほど効果を実感しやすいと言われています。副作用としては、まれに下痢や胃部不快感、発疹などが報告されていますが、いずれも頻度は少なく、比較的安全に服用できる薬剤です。
ビタミンC・ビタミンE
ビタミンC(アスコルビン酸)とビタミンE(トコフェロール)は、シミ治療の補助的な内服薬として使用されます。ビタミンCにはメラニンの生成を抑制する作用や、できてしまったメラニンを還元して薄くする作用があります。ビタミンEは抗酸化作用があり、紫外線によるダメージから肌を守る効果が期待できます。
これらのビタミン剤は単独ではシミを消すほどの効果はありませんが、トラネキサム酸やハイドロキノンなど他の治療と併用することで、総合的なシミ治療の効果を高めることができます。市販のサプリメントでも摂取できますが、医療機関で処方される薬剤のほうが含有量が多く、効果が期待できます。
紫外線対策の重要性と日焼け止めの選び方
シミを消す方法を実践していても、紫外線対策を怠っていては効果が半減してしまいます。紫外線はシミの最大の原因であり、すでにあるシミを濃くするだけでなく、新たなシミを作り出す原因にもなります。ためしてガッテンでも、紫外線対策の重要性が強調されていました。ここでは、紫外線の基礎知識と効果的な日焼け止めの選び方について解説します。
紫外線がシミを作るメカニズム
紫外線は波長によってUVA、UVB、UVCの3種類に分けられます。このうち地表に届くのはUVAとUVBで、シミの原因となるのは主にこの2種類です。UVB(紫外線B波)は波長が短く、肌の表皮に急性の炎症(日焼け、サンバーン)を引き起こします。肌が赤くなり、ひどい場合は水ぶくれができることもあります。UVBはシミやそばかすの直接的な原因となる紫外線です。
一方、UVA(紫外線A波)は波長が長く、雲や窓ガラスも透過して肌の奥深く(真皮)まで到達します。UVAは即座に肌を黒くする作用(サンタン)があり、シワやたるみの原因にもなります。UVAは紫外線全体の約9割を占め、年間を通して降り注いでいるため、冬場や曇りの日でも油断は禁物です。
紫外線を浴びると、肌は防御反応としてメラノサイト(メラニンを作る細胞)を活性化させ、メラニン色素を生成します。若く健康な肌であれば、生成されたメラニンは肌のターンオーバーによって排出されますが、加齢や紫外線ダメージの蓄積によってターンオーバーが乱れると、メラニンが排出されずに肌に残り、シミとして定着してしまうのです。
SPFとPAの意味
日焼け止めを選ぶ際に目にするSPFとPAという表示は、それぞれ異なる紫外線に対する防御効果を示しています。SPF(Sun Protection Factor)はUVBを防ぐ効果の指標で、数値が高いほど防御効果が高いことを示します。SPFの数値は、日焼け止めを塗らない場合と比べて、肌が赤くなるまでの時間を何倍に延ばせるかを表しています。
例えば、何も塗らないで20分で肌が赤くなる人がSPF30の日焼け止めを塗った場合、20分×30=600分(10時間)まで日焼けを防ぐことができる計算になります。ただし、これは理想的な量を塗った場合の数値であり、実際には汗や摩擦で落ちてしまうため、2〜3時間おきに塗り直すことが推奨されています。
PA(Protection Grade of UVA)はUVAを防ぐ効果の指標で、+の数で表されます。PA+からPA++++までの4段階があり、+の数が多いほど防御効果が高くなります。UVAはシワやたるみの原因になるだけでなく、シミの悪化にも関わっているため、シミ対策を行う上ではPA値にも注目することが大切です。
シーンに合わせた日焼け止めの選び方
日焼け止めは、使用するシーンに合わせて適切なものを選ぶことが大切です。環境省の「紫外線環境保健マニュアル」では、日常生活での外出(散歩や買い物など)ではSPF10〜20、PA+〜++程度で十分とされています。一方、屋外でのスポーツやレジャーにはSPF30以上、PA+++程度、炎天下でのレジャーやマリンスポーツにはSPF50以上、PA++++の最高値のものを使用することが推奨されています。
SPFやPA値が高いほど紫外線防御効果は高くなりますが、その分肌への負担も大きくなる傾向があります。敏感肌の方や日常使いには、数値が低めで肌に優しいタイプを選び、こまめに塗り直すという方法も有効です。また、紫外線吸収剤不使用(ノンケミカル)の日焼け止めは肌への刺激が少ないとされていますが、白浮きしやすいというデメリットもあります。
日焼け止めの効果を最大限に発揮させるためには、適切な量を塗ることが重要です。顔に塗る場合の目安は、クリームタイプで真珠2個分、液状タイプで1円硬貨2枚分程度です。また、塗りムラがないように、顔全体に均一に伸ばすことを心がけましょう。汗をかいたりタオルで拭いたりすると落ちてしまうため、2〜3時間おきの塗り直しを忘れずに行いましょう。
シミを作らない・増やさないための生活習慣
シミを消す治療を受けても、シミを作りやすい生活習慣を続けていては、また新たなシミができてしまいます。シミのない美しい肌を維持するためには、日常生活の中でシミ予防を意識することが大切です。ここでは、シミを作らない・増やさないための生活習慣について解説します。
紫外線を避ける工夫
日焼け止めを塗ることは基本中の基本ですが、それ以外にも紫外線を避ける工夫があります。外出時は帽子や日傘を活用し、できるだけ日陰を歩くようにしましょう。つばの広い帽子を選ぶと、顔や首への紫外線を効果的にカットできます。日傘はUVカット加工が施されたものを選ぶとより効果的です。
紫外線は目からも入り、脳に信号を送ってメラニン生成を促進することがわかっています。そのため、サングラスの着用も有効な紫外線対策となります。UVカット機能のあるサングラスを選び、特に紫外線の強い時間帯(10時〜14時頃)の外出時には着用するようにしましょう。
室内にいても油断は禁物です。UVAは窓ガラスを透過するため、室内にいても紫外線を浴びています。窓際で長時間過ごすことが多い方は、UVカットフィルムを窓に貼るか、室内でも日焼け止めを塗ることをお勧めします。また、車の運転中も紫外線を浴びているため、UVカット機能のある車用フィルムの使用や、運転用手袋の着用が有効です。
肌のターンオーバーを整える
メラニンは肌のターンオーバー(新陳代謝)によって排出されるため、ターンオーバーを正常に保つことがシミ予防において重要です。ターンオーバーの周期は通常28日程度ですが、加齢とともに遅くなり、40代では約45日かかるとも言われています。ターンオーバーが遅れると、メラニンの排出が滞り、シミとして残りやすくなります。
ターンオーバーを正常に保つためには、規則正しい生活習慣が大切です。十分な睡眠をとることで、肌の修復に必要な成長ホルモンが分泌され、ターンオーバーが促進されます。また、バランスの良い食事も重要です。特にビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどは肌の健康に欠かせない栄養素です。
ストレスもターンオーバーを乱す原因になります。ストレスを感じると、自律神経やホルモンバランスが乱れ、肌の機能が低下します。適度な運動やリラクゼーション、趣味の時間を持つなど、ストレスを上手に発散することを心がけましょう。
食事でできるシミ対策
シミ対策には、内側からのケアも重要です。ビタミンCはメラニンの生成を抑制し、できてしまったメラニンを還元する作用があります。ビタミンCを多く含む食品としては、パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、いちご、柑橘類などが挙げられます。ビタミンCは水溶性で体内に蓄積されにくいため、毎日こまめに摂取することが大切です。
ビタミンEは抗酸化作用があり、紫外線による肌のダメージを軽減する効果があります。アーモンドなどのナッツ類、アボカド、かぼちゃ、ほうれん草などに多く含まれています。ビタミンEはビタミンCと一緒に摂取することで、相乗効果が期待できます。
リコピンやアスタキサンチンなどのカロテノイド類も、強力な抗酸化作用を持ち、紫外線から肌を守る効果があるとされています。リコピンはトマトに、アスタキサンチンは鮭やエビなどに含まれています。また、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンも、体内でビタミンAに変換され、肌の健康維持に役立ちます。

よくある質問
ためしてガッテンで紹介された方法は、シミの種類によって効果が異なります。赤いシミ(日光角化症)に対しては、イミキモドクリーム(ベセルナクリーム)による治療が保険適用で受けられ、約78%の奏効率が報告されています。茶色いシミ(炎症後色素沈着)に対しては、摩擦を減らすスキンケアを数ヶ月継続することで、徐々に改善が期待できます。ただし、シミの原因は摩擦だけではないため、すべてのシミに効果があるわけではありません。まずは皮膚科で自分のシミの種類を診断してもらうことをお勧めします。
軽度のシミであれば、紫外線対策の徹底、摩擦を減らすスキンケア、美白化粧品の使用などのセルフケアで薄くなることがあります。ただし、市販の美白化粧品はシミを消すのではなく、新たなシミを予防する効果が主であり、今あるシミを完全に消すことは困難です。濃いシミや長年定着したシミを消すためには、皮膚科でのレーザー治療やハイドロキノン・トレチノインなどの医療用外用薬による治療が効果的です。
肝斑はシミの一種ですが、一般的なシミ(老人性色素斑)とは原因や特徴が異なります。肝斑は主に女性ホルモンの乱れが原因で、30〜60代の女性に多く見られます。最大の特徴は左右対称に現れることで、両頬や額、口の周りなどにもやもやとした薄茶色のシミが広がります。一般的なシミは紫外線が主な原因で、境界がはっきりしていて色が濃いのが特徴です。肝斑は通常のレーザー治療で悪化する恐れがあるため、トラネキサム酸の内服など別の治療法が選択されます。
シミ取りレーザーの効果は、シミの種類や状態、使用するレーザーの種類によって異なります。老人性色素斑(一般的なシミ)に対するQスイッチレーザーの場合、多くは1〜2回の治療で効果が現れます。治療後はかさぶたができ、1〜2週間で自然に剥がれ落ちます。ただし、治療後に炎症後色素沈着(戻りジミ)が一時的に起こることがあり、完全に落ち着くまでには3〜6ヶ月程度かかることもあります。そばかすや広範囲のシミに対するフォトフェイシャルは、3〜5回程度の治療を繰り返すことで徐々に改善します。
ハイドロキノンとトレチノインは、それぞれ異なる作用を持つシミ治療の外用薬です。ハイドロキノンはメラニンの生成を抑制する作用があり、新たなシミを作らせないようにします。トレチノインは肌のターンオーバーを促進し、今あるメラニンを皮膚の外に排出する作用があります。この2つを併用することで、相乗効果が期待できます。使用方法は、洗顔後にまずトレチノインをシミ部分に塗り、乾いてからハイドロキノンをやや広めに塗ります。いずれも医師の処方が必要な薬剤であり、使用中は紫外線対策を徹底することが重要です。
まとめ
本記事では、ためしてガッテンで紹介された顔のシミを消す方法を中心に、シミの種類や原因、自宅でできるセルフケアから美容皮膚科での治療まで、幅広く解説してきました。
ためしてガッテンでは、シミを「赤いシミ」と「茶色いシミ」の2種類に分類し、それぞれに適した対策法が紹介されました。赤いシミ(日光角化症)は皮膚がんの一種であり、イミキモドクリームによる治療や外科的切除が必要です。茶色いシミ(炎症後色素沈着)は、洗顔やメイク時の摩擦を減らすことで、徐々に改善が期待できます。
ただし、シミにはさまざまな種類があり、間違った方法でケアを続けるとかえって悪化してしまうこともあります。特に肝斑は通常のレーザー治療で悪化する恐れがあるため、まずは皮膚科専門医に相談し、自分のシミの種類を正確に診断してもらうことが大切です。
シミを消すためには、紫外線対策を徹底することが何よりも重要です。どんなに効果的な治療を受けても、紫外線を浴び続ければ新たなシミができてしまいます。日焼け止めを毎日塗る習慣をつけ、帽子や日傘も活用して、紫外線から肌を守りましょう。
アイシークリニック上野院では、患者様一人ひとりのシミの状態を丁寧に診察し、最適な治療法をご提案しています。シミでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」
- 第一三共ヘルスケア「肝斑information」
- 持田製薬株式会社「シミと日光角化症」
- 日本皮膚科学会雑誌「日光角化症に対するイミキモド外用の有効性・安全性を評価する後ろ向き多施設共同臨床研究」
- ベセルナクリーム5% 添付文書
- 厚生労働省検疫所「日焼けを防ぐ」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務