リベルサス(セマグルチド)による医療痩身

リベルサスとは

リベルサス(Rybelsus)は、有効成分としてセマグルチドを含有する経口薬です。セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬と呼ばれる薬剤で、もともと2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、体重減少効果が認められたことから、医療痩身(メディカルダイエット)の分野でも注目されています。

従来のGLP-1受容体作動薬は注射薬のみでしたが、リベルサスは世界初の経口GLP-1受容体作動薬として、2019年にアメリカで承認され、日本では2021年に2型糖尿病治療薬として承認されました。経口薬であることから、注射に抵抗がある方でも治療を始めやすいという特徴があります。

作用機序(働くメカニズム)

リベルサスの有効成分であるセマグルチドは、体内で自然に分泌されるホルモン「GLP-1」と同様の働きをします。GLP-1は、食事摂取時に小腸から分泌されるホルモンで、血糖値を調節する重要な役割を担っています。

主な作用

1. 食欲抑制作用 脳の視床下部にある満腹中枢に作用し、食欲を抑制します。食事量の自然な減少につながり、無理な食事制限をせずとも摂取カロリーを減らすことができます。

2. 胃内容物排出遅延作用 胃から腸への食物の移動を遅らせることで、満腹感が長時間持続します。これにより間食や過食の抑制効果が期待できます。

3. インスリン分泌促進・グルカゴン分泌抑制 血糖値に応じてインスリンの分泌を促進し、同時に血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制します。これにより血糖値の安定化が図られます。

4. 脂肪分解促進 体内の脂肪分解を促進し、エネルギー消費を高める作用があります。

期待できる効果

体重減少効果

臨床試験では、リベルサスを服用した患者において有意な体重減少が確認されています。個人差はありますが、適切な食事療法と運動療法を併用することで、より効果的な体重減少が期待できます。

血糖値の安定化

食後血糖値の上昇を抑制し、血糖値の変動を小さくすることで、糖尿病の予防や改善に寄与します。また、血糖値の安定化により、食べたい欲求のコントロールがしやすくなります。

内臓脂肪の減少

体重減少とともに、特に内臓脂肪の減少効果が期待できます。内臓脂肪の減少は、メタボリックシンドロームの改善や生活習慣病の予防につながります。

食行動の改善

食欲の適正化により、これまで困難だった食事コントロールが容易になります。暴飲暴食の抑制や、適切な食事量での満足感を得られるようになります。

用法・用量

初回投与と増量スケジュール

リベルサスは段階的に用量を増加していく必要があります。これは副作用を最小限に抑え、体を薬に慣らすためです。

1. 導入期(3mg) 治療開始から4週間は、リベルサス3mgを1日1回服用します。この期間で体の反応を確認し、副作用の有無をチェックします。

2. 維持期(7mg) 導入期を問題なく経過した場合、5週目からリベルサス7mgに増量します。多くの患者では、この用量で十分な効果が得られます。

3. 最大用量(14mg) 7mgで効果が不十分な場合、さらに4週間以上経過後にリベルサス14mgに増量することがあります。ただし、副作用の増加にも注意が必要です。

服用方法の重要なポイント

空腹時服用 リベルサスは食事の影響を受けやすいため、必ず空腹時(起床時など)に服用する必要があります。

服用時の水分量 120mL以下の水で服用してください。多量の水分は薬物の吸収を阻害する可能性があります。

服用後の注意事項 服用後最低30分間(できれば1〜2時間)は、食事、飲水、他の薬剤の服用を避けてください。

適応となる方

医療痩身の対象者

以下の条件に該当する方が、リベルサスによる医療痩身の適応となります:

  • BMI 25以上の方
  • 従来のダイエット方法で効果が得られなかった方
  • 食欲のコントロールが困難な方
  • 糖代謝異常のリスクがある方
  • 内臓脂肪型肥満の方

治療に適さない方

以下に該当する方は、リベルサス治療の対象外となります:

  • 妊娠中・授乳中の女性
  • 1型糖尿病の方
  • 重篤な胃腸障害のある方
  • 甲状腺髄様癌の既往歴または家族歴のある方
  • 多発性内分泌腫瘍症2型の方
  • 重度の腎機能障害のある方
  • 18歳未満の方

副作用について

主な副作用

リベルサスの副作用は、主に消化器系に現れることが多く、治療開始初期に発現しやすい傾向があります。

軽微〜中等度の副作用

  1. 消化器症状
    • 悪心(吐き気):最も頻度の高い副作用
    • 嘔吐
    • 下痢
    • 便秘
    • 腹痛
    • 胃もたれ
  2. 全身症状
    • 食欲低下
    • 疲労感
    • めまい
    • 頭痛
  3. その他
    • 味覚の変化
    • 胸やけ
    • げっぷの増加

重篤な副作用(稀)

以下の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください:

  • 重篤な低血糖症状(冷汗、震え、意識混濁など)
  • 急性膵炎(激しい腹痛、背部痛、持続的な嘔吐)
  • 胆石症、胆のう炎
  • 腸閉塞
  • 糖尿病性網膜症の悪化

副作用の対処法

軽微な消化器症状の場合

  • 食事量を少なくし、ゆっくりと食べる
  • 脂っこい食事を避ける
  • 炭酸飲料の摂取を控える
  • 十分な水分補給を心がける

多くの場合、これらの症状は治療継続とともに軽減していきます。しかし、症状が持続する場合や悪化する場合は、医師にご相談ください。

当院での治療の流れ

初回診察

1. 問診・診察 現在の健康状態、既往歴、服用中の薬剤、ダイエット歴などを詳しくお聞きします。

2. 身体計測 身長、体重、BMI、体脂肪率、内臓脂肪レベルなどを測定します。

3. 血液検査 肝機能、腎機能、血糖値、HbA1c、脂質代謝などの検査を行います。

4. 治療計画の策定 検査結果を基に、個人に最適な治療計画を立案します。

5. 説明・同意 治療内容、期待できる効果、副作用、費用について詳しく説明し、十分にご理解いただいた上で治療を開始します。

治療開始後のフォローアップ

2週間後 副作用の確認と体重変化の評価を行います。

4週間後 効果判定を行い、必要に応じて用量調整を検討します。

8週間後 7mgへの増量を検討し、血液検査による安全性確認を行います。

3ヶ月後 治療効果の総合的な評価を行い、今後の治療方針を決定します。

以降 月1回の定期診察により、継続的な効果確認と安全性の監視を行います。

治療期間

個人差がありますが、一般的には以下のような経過をたどります:

  • 1ヶ月目:副作用への慣れと軽度の体重減少
  • 2〜3ヶ月目:明確な体重減少効果の実感
  • 3〜6ヶ月目:最大効果の発現
  • 6ヶ月以降:効果の維持期

治療期間は患者様の状態や目標により決定しますが、通常6ヶ月〜1年程度を目安としています。

料金について

当院では、患者様の状態や治療目標に応じて、適切な用量でのリベルサス治療を提供しています。

リベルサス処方料金

  • リベルサス 3mg(初回1週間):1,980円(税込)
  • リベルサス 3mg(30錠):7,700円(税込)
  • リベルサス 7mg(30錠):16,000円(税込)
  • リベルサス 14mg(30錠):22,000円(税込)

初回診察料

  • 初回診察:無料
  • 血液検査込み:別途料金

再診料

  • 定期診察料:無料

※自費診療のため、保険適用外となります ※価格は予告なく変更される場合があります

治療効果を高めるためのポイント

食事療法との併用

リベルサスは食欲を抑制しますが、それだけに頼るのではなく、バランスの良い食事を心がけることが重要です。

推奨される食事のポイント

  • タンパク質を十分に摂取する
  • 野菜を多く取り入れる
  • 精製された糖質の摂取を控える
  • 適切な食事間隔を保つ
  • よく噛んでゆっくり食べる

運動療法との併用

定期的な運動は、リベルサスの効果を最大化し、筋肉量の維持にも重要です。

推奨される運動

  • 週3〜4回の有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
  • 週2〜3回の筋力トレーニング
  • 日常生活での活動量増加

生活習慣の改善

睡眠の質の向上 十分な睡眠は、食欲を調節するホルモンのバランスを整えます。

ストレス管理 慢性的なストレスは過食の原因となるため、適切なストレス解消法を見つけることが大切です。

水分摂取 十分な水分摂取は、代謝の向上と満腹感の維持に寄与します。

他の治療法との比較

従来のダイエット方法との違い

意志力への依存度が低い 食欲そのものを生理学的に抑制するため、精神的な我慢を強いられることが少なくなります。

リバウンドしにくい 徐々に食習慣を改善していくため、治療終了後もリバウンドしにくい特徴があります。

他のGLP-1受容体作動薬との違い

経口薬であること 注射への恐怖心がある方でも治療を始めやすく、日常生活への影響が少ないです。

携帯性 注射薬と比較して持ち運びが容易で、旅行時なども負担になりません。

外科的治療との比較

侵襲性が低い 手術を必要とせず、重篤な合併症のリスクが低いです。

可逆性 効果が不十分だった場合や副作用が生じた場合、治療を中止することができます。

よくある質問

Q1: リベルサスはどのくらいで効果が現れますか?

A: 個人差がありますが、多くの方で治療開始から2〜4週間で食欲の変化を実感し、2〜3ヶ月で明確な体重減少効果が現れます。最大効果は通常3〜6ヶ月で得られます。

Q2: 副作用が心配です。どの程度の頻度で現れますか?

A: 最も多い副作用は軽度の吐き気で、治療開始初期に現れることが多いですが、多くの場合2〜4週間で改善します。重篤な副作用は非常に稀です。

Q3: 治療を止めるとリバウンドしますか?

A: 治療中に適切な食習慣と生活習慣を身につけることで、リバウンドのリスクを最小限に抑えることができます。段階的な減量も考慮します。

Q4: 他の薬との飲み合わせは大丈夫ですか?

A: 一部の薬剤(特に血糖降下薬)では相互作用の可能性があります。現在服用中のお薬がある場合は、必ず医師にお伝えください。

Q5: 食事制限は必要ですか?

A: 極端な食事制限は不要ですが、バランスの良い食事を心がけることで、より効果的な結果が期待できます。栄養指導も併せて行います。

Q6: どのくらいの期間治療を続ける必要がありますか?

A: 通常6ヶ月〜1年程度ですが、個人の目標や体重減少の経過により調整します。定期的な評価を行いながら最適な治療期間を決定します。

Q7: 妊娠を希望していますが治療可能ですか?

A: 妊娠中・授乳中の方、妊娠を計画している方への使用は推奨されていません。治療終了後、一定期間を置いてから妊娠計画を立てることをお勧めします。

Q8: 保険は適用されますか?

A: 医療痩身目的での使用は自費診療となり、保険適用外です。ただし、2型糖尿病の診断がある場合は保険適用となる可能性があります。

治療を受ける前の注意事項

事前準備

服用中の薬剤リストの作成 現在服用しているすべての薬剤(市販薬、サプリメントを含む)をリストアップしてお持ちください。

既往歴の整理 過去の病気や手術歴、アレルギーの有無を整理しておいてください。

治療目標の明確化 どの程度の体重減少を目指すか、治療期間の希望などを考えておいてください。

治療開始後の注意事項

定期診察の遵守 安全で効果的な治療のため、指定された診察日は必ず受診してください。

副作用の記録 治療初期は特に、体調の変化や副作用を記録しておくことをお勧めします。

緊急時の対応 重篤な副作用が疑われる症状が現れた場合の連絡先を確認しておいてください。

最新の研究・エビデンス

大規模臨床試験の結果

リベルサスの有効性と安全性は、多数の大規模臨床試験により確認されています。これらの試験では、プラセボと比較して有意な体重減少効果が認められており、長期安全性についても継続的に検証されています。

日本人での効果

日本人を対象とした臨床試験においても、欧米人と同様の効果が確認されており、日本人特有の体質や生活習慣に対しても有効性が示されています。

将来の展望

GLP-1受容体作動薬の分野では、現在もより効果的で副作用の少ない新薬の開発が進められており、医療痩身の選択肢はさらに広がっていくと予想されます。

まとめ

リベルサスは、従来のダイエット方法では効果が得られなかった方にとって、新たな治療選択肢となる可能性があります。経口薬であることの利便性と、科学的根拠に基づいた効果により、多くの患者様から選択されている治療法です。

ただし、リベルサスは「飲むだけで痩せる魔法の薬」ではありません。適切な食事療法と運動療法を併用し、生活習慣全体の改善に取り組むことで、初めて持続的で健康的な体重減少が実現できます。

当院では、患者様一人ひとりの状態に応じた個別化治療を提供し、治療開始から目標達成まで、専門的なサポートを行っています。リベルサス治療に興味をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

医療痩身は単なる美容目的ではなく、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸という重要な意味を持ちます。適切な医学的管理のもとで、安全で効果的な体重管理を始めていきましょう。


お問い合わせ・ご予約

リベルサス治療についてのご相談やご予約は、お電話またはWebサイトからお気軽にお問い合わせください。専門スタッフが丁寧にご対応いたします。

※本治療は自費診療となります ※治療効果には個人差があります ※副作用や合併症のリスクについては、診察時に詳しくご説明いたします

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監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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