ほくろ除去は保険適用される?条件・費用・治療法を専門医が解説

「ほくろを除去したいけれど、保険は適用されるの?」「どのような条件を満たせば保険診療で治療を受けられるの?」このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。ほくろの除去には保険診療と自由診療の2種類があり、すべての施術に保険が適用されるわけではありません。実際、多くのほくろ除去は美容目的として扱われるため、保険適用外となるケースがほとんどです。しかし、一定の条件を満たす場合には、公的医療保険を使用して自己負担3割で治療を受けることが可能です。本コラムでは、ほくろ除去が保険適用となる具体的な条件や、保険診療と自由診療の違い、治療方法の選び方、費用の目安などを詳しく解説いたします。ほくろでお悩みの方が適切な治療選択ができるよう、皮膚科専門の視点から情報をお届けします。


目次

  1. ほくろとは何か:基本的な知識を理解する
  2. ほくろ除去に保険が適用される3つの条件
  3. 保険適用の可否を判断する診察の流れ
  4. ダーモスコピー検査でわかること
  5. 悪性黒色腫(メラノーマ)との見分け方
  6. 保険適用となるほくろ除去の治療方法
  7. 保険適用時の費用の目安
  8. 保険診療と自由診療の違いとメリット・デメリット
  9. ほくろ除去後の経過と注意点
  10. 受診前に確認しておきたいポイント
  11. よくある質問

ほくろとは何か:基本的な知識を理解する

ほくろは医学用語では「色素性母斑」または「母斑細胞母斑」と呼ばれ、皮膚の一部にメラニン色素を産生する母斑細胞が集まって形成された良性の腫瘍です。生まれつき存在するものもあれば、成長過程で新たに出現するものもあり、褐色から黒色までさまざまな色調を呈します。形状も平坦なものから隆起したものまで多様で、大きさも数ミリ程度の小さなものから直径1センチメートルを超える大きなものまであります。

ほくろを構成する母斑細胞は、表皮と真皮の境目付近に存在するメラノサイト(色素細胞)やシュワン細胞に分化しなかった細胞が増殖したものです。皮膚の深さによってほくろの色調は変化し、表面に近い部分にある母斑細胞はメラニン色素を多く産生するため濃い色になりますが、深い部分にある母斑細胞はメラニン色素をほとんど産生しないため、肌色に近い色調となることがあります。

一般的なほくろは良性であり、放置しても健康上の問題を引き起こすことはほとんどありません。しかし、ごく稀にほくろと見分けがつきにくい悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんが発生することがあるため、気になるほくろがある場合は自己判断せず、皮膚科専門医による診察を受けることが推奨されています。

ほくろ除去に保険が適用される3つの条件

ほくろの除去において公的医療保険が適用されるのは、医学的な治療が必要と判断される場合に限られます。見た目が気になるという美容目的での除去は保険適用外となり、全額自己負担での治療となります。以下に、保険が適用される主な3つの条件について詳しく説明いたします。

条件1:悪性腫瘍の疑いがある場合

医師がほくろを診察した際に、悪性黒色腫(メラノーマ)などの皮膚がんの可能性があると判断した場合、保険適用での治療が可能となります。悪性腫瘍は早期発見と早期治療が非常に重要であり、放置すると命に関わる事態に発展する可能性があるため、公的医療保険を使用した迅速な治療が認められています。悪性の疑いがある場合は、ほくろを切除して病理検査(組織を顕微鏡で詳しく調べる検査)を行い、確定診断を得ることが標準的な治療の流れとなります。

悪性を疑う所見としては、形がいびつで左右非対称である、境界線が不明瞭でギザギザしている、色調にムラがあり複数の色が混在している、急に大きくなってきた、出血やかさぶたを繰り返すなどの特徴が挙げられます。これらの特徴に該当するほくろがある場合は、速やかに皮膚科を受診することが大切です。

条件2:日常生活に支障をきたしている場合

ほくろの大きさや位置によって日常生活に支障が生じている場合も、保険適用の対象となる可能性があります。具体的には以下のようなケースが該当します。

目の近くにあるほくろが視界を遮っている場合は、視力や視野に直接影響を及ぼすため治療の対象となります。また、鼻の下や顎にあるほくろがひげを剃る際に引っかかって傷ができてしまう場合、洗顔時に爪が当たって出血を繰り返す場合なども、生活上の支障があると認められます。

さらに、体幹部や脇などにあるほくろが衣類の着脱時に擦れて炎症を起こす場合、アクセサリーや下着のひもが当たって痛みが生じる場合、頭皮にあるほくろがブラッシングやシャンプーの際に引っかかる場合なども保険適用となることがあります。このように、美容目的ではなく、実際の生活において物理的・機能的な問題を引き起こしているほくろは、医学的な治療が必要と判断されます。

条件3:医学的に経過観察や治療が必要な変化がある場合

悪性の確定診断には至らなくても、ほくろに何らかの気になる変化がある場合は、医師の判断により保険適用での治療が行われることがあります。例えば、以前から存在したほくろが急に大きくなってきた場合、色調が以前と変わってきた場合、出血を繰り返している場合、かゆみや痛みなどの自覚症状がある場合などが該当します。

また、高く盛り上がったほくろや、炎症を繰り返す部位にあるほくろは、見た目の問題を超えて皮膚トラブルや感染のリスクがあると判断される場合があります。このような場合には、予防的な意味合いも含めて保険診療での除去が認められることがあります。

ただし、保険適用の最終的な判断は診察を行う医師が行います。同じような症状であっても、医療機関や医師によって判断が異なる場合があるため、保険適用を希望される場合は事前に相談されることをお勧めいたします。

保険適用の可否を判断する診察の流れ

ほくろ除去において保険が適用されるかどうかは、医師による診察を経て判断されます。ここでは、保険適用の可否が決まるまでの一般的な診察の流れについて説明いたします。

問診と視診

診察ではまず、患者様からほくろに関する詳しい情報をお聞きします。いつ頃からほくろがあるのか、最近になって大きくなったり色が変わったりしていないか、かゆみや痛みなどの自覚症状はあるか、出血したことはあるか、日常生活で困っていることはあるかなどの問診を行います。これらの情報は、ほくろが良性か悪性かの判断や、保険適用の可否を決める上で非常に重要です。

問診の後、医師が肉眼でほくろの状態を観察します。ほくろの大きさ、形状、色調、境界線の明瞭さ、隆起の有無、周囲の皮膚との関係などを確認し、総合的に評価します。この段階で悪性の可能性や生活への支障が認められれば、保険適用での治療に進むことになります。

ダーモスコピー検査

肉眼での観察だけでは判断が難しい場合や、より詳細な評価が必要な場合には、ダーモスコピー検査が行われます。ダーモスコピーとは、特殊な光源を備えた拡大鏡で、皮膚表面の構造を6倍から9倍に拡大して観察できる医療機器です。角層で起こる光の乱反射を抑えることで、肉眼では見えない皮膚の深部の状態まで詳しく観察することが可能となります。

ダーモスコピー検査は痛みを伴わない非侵襲的な検査であり、その場で結果がわかります。健康保険が適用されており、自己負担3割の場合は数百円程度の費用で受けることができます。この検査により、良性のほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)を高い精度で鑑別することが可能となり、不必要な切除を避けたり、早期の悪性腫瘍を発見したりすることに役立っています。

治療方針の決定

問診、視診、必要に応じてダーモスコピー検査を行った結果をもとに、医師が治療方針を決定します。保険適用の条件を満たすと判断された場合は、保険診療での治療が可能であることを患者様に説明し、治療方法や費用、術後の経過などについて詳しく説明を行います。一方、美容目的と判断された場合は、自由診療での治療について案内されます。

悪性の可能性が疑われる場合は、切除後に病理検査(切除した組織を顕微鏡で調べる検査)を行い、確定診断を得ます。病理検査の結果が出るまでには通常2週間程度かかり、結果を聞くために再度受診していただくことになります。

ダーモスコピー検査でわかること

ダーモスコピー検査は、ほくろの良性・悪性を判断する上で非常に重要な役割を果たしています。日本皮膚科学会でも、ほくろやシミの診断においてダーモスコピーの使用が推奨されており、多くの皮膚科クリニックで導入されています。

ダーモスコピーで皮膚を観察すると、メラニン色素の分布パターンや血管の構造など、肉眼では確認できない詳細な情報が得られます。良性のほくろと悪性黒色腫では、色素の配列パターンや境界部の構造が異なるため、これらの特徴を見ることで診断の精度が向上します。研究によれば、ダーモスコピーを用いることで、肉眼のみでの診察と比較して診断精度が約4倍から15倍向上するとされています。

特に日本人に多い足の裏や手のひらに発生する末端黒子型メラノーマの診断において、ダーモスコピーは非常に有用です。足底のほくろをダーモスコピーで観察すると、「皮溝平行パターン」や「皮丘平行パターン」といった特徴的な色素配列が確認でき、良性か悪性かを高い精度で判別することができます。皮丘平行パターンはメラノーマに特徴的な所見とされ、感度86%、特異度99%という高い診断精度が報告されています。

ただし、ダーモスコピーはあくまでも補助的な診断ツールであり、すべての病変を100%正確に診断できるわけではありません。最終的な確定診断には、病変の一部または全部を切除して顕微鏡で組織を調べる病理検査が必要となる場合があります。

悪性黒色腫(メラノーマ)との見分け方

悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニン色素を産生する細胞であるメラノサイトが悪性化して発生する皮膚がんです。日本人における発生頻度は10万人あたり1から2人程度と稀ながんですが、転移しやすく悪性度が高いため、早期発見と早期治療が非常に重要です。メラノーマは見た目が良性のほくろと似ていることが多く、区別が難しいため、国際的に「ABCDEルール」と呼ばれる自己チェックの基準が用いられています。

ABCDEルールによるセルフチェック

ABCDEルールは、メラノーマを早期発見するための5つのチェックポイントの頭文字をとったものです。これらの特徴に該当するほくろがある場合は、速やかに皮膚科専門医を受診することが推奨されます。

Aは「Asymmetry(非対称性)」を表し、ほくろの形が左右対称ではなく、いびつな形をしている状態を指します。良性のほくろは通常、丸や楕円に近い左右対称の形をしていますが、メラノーマは不規則な形状になることが多いです。

Bは「Border irregularity(境界の不整)」を表し、ほくろの輪郭がギザギザしていたり、境界線が不明瞭で周囲の皮膚にしみ出しているように見える状態を指します。良性のほくろは境界がはっきりしていることが多いのに対し、メラノーマは境界が不整になる傾向があります。

Cは「Color variegation(色調の不均一)」を表し、ほくろの中に複数の色が混在している状態を指します。黒、茶色、赤、白、青など、さまざまな色がまだらに存在している場合は注意が必要です。良性のほくろは通常、均一な色調をしています。

Dは「Diameter(直径)」を表し、ほくろの大きさが6ミリメートル以上ある状態を指します。鉛筆の消しゴム部分の直径がおよそ6ミリメートルですので、これよりも大きいほくろは要注意とされています。ただし、6ミリメートル未満の小さなメラノーマも存在するため、大きさだけで判断することは適切ではありません。

Eは「Evolving(経時的変化)」を表し、ほくろに何らかの変化が見られる状態を指します。短期間で急に大きくなった、色が変わってきた、形が変化してきた、盛り上がってきた、出血するようになった、かゆみや痛みが出てきたなど、以前と比べて変化がある場合は医師の診察を受けることが大切です。

特に注意が必要なケース

日本人のメラノーマは、足の裏や手のひら、爪の周囲など「末端部」に発生することが多いという特徴があります。全体の約半数が手足に発生するとされており、これは日光による紫外線の影響を受けやすい白人のメラノーマとは異なる傾向です。足の裏や手のひらは自分では見えにくい部位であるため、発見が遅れやすく、注意が必要です。

爪に発生する爪下メラノーマは、爪に縦方向の黒い線が入ることから始まることが多く、初期段階では内出血や色素沈着と間違えられることがあります。成人になってから片方の指の爪に黒い線が出現し、数か月以内にその幅が広がってきた場合や、爪の周囲の皮膚にも色素沈着が広がってきた場合(ハッチンソン徴候)は、メラノーマの可能性を考えて皮膚科を受診することが推奨されます。

また、高齢者の顔面に発生する悪性黒子型メラノーマは、シミと見間違われやすいため注意が必要です。茶色や黒色のシミが徐々に大きくなってきた場合は、早めに専門医の診察を受けることをお勧めいたします。

保険適用となるほくろ除去の治療方法

保険診療でほくろを除去する場合、主にメスを使用した外科的切除が行われます。レーザー治療は多くの場合、保険適用外の自由診療となります。ここでは、保険適用となる主な治療方法について説明いたします。

切除縫合法

切除縫合法は、ほくろの周囲を紡錘形(楕円形)に切開し、皮膚の深部にある母斑細胞も含めて完全に切除した後、傷を縫い合わせる方法です。局所麻酔を行ってから施術するため、術中の痛みはほとんどありません。手術時間は通常30分程度で、日帰りで行うことができます。

切除縫合法の最大のメリットは、ほくろを構成する母斑細胞を根こそぎ取り除くことができるため、再発のリスクが低いことです。また、切除した組織を病理検査に提出することができるため、良性か悪性かの確定診断を得ることができます。悪性の疑いがある場合には、必ず切除縫合法が選択されます。

縫合後の傷跡は直線状になりますが、形成外科医や皮膚科専門医は、皮膚のしわの方向に沿って切開線を設計し、細い糸で丁寧に縫合することで、傷跡が目立たなくなるよう配慮します。抜糸は通常、術後1週間から2週間後に行われます。術後の傷跡は最初は赤みがありますが、時間の経過とともに徐々に目立たなくなっていきます。

くりぬき法(パンチ切除法)

くりぬき法は、円筒状の専用器具(パンチ)を使用して、ほくろを丸くくり抜くように切除する方法です。主に直径6ミリメートル以下の小さなほくろに適用され、鼻や口の周りなど、直線的な傷跡が目立ちやすい部位での治療に向いています。

くりぬき法では、切除後に縫合を行わず、傷を開放したまま軟膏を塗布して自然治癒を待つ場合と、縫合を行う場合があります。縫合を行わない場合は、傷が治癒するまでに時間がかかりますが、抜糸の必要がなく通院回数を減らすことができます。傷跡は丸く少し凹んだ状態になることがありますが、時間の経過とともに目立たなくなっていきます。

切除縫合法と同様に、くりぬき法でも切除した組織を病理検査に提出することが可能です。深い部分まで組織を採取できるため、再発のリスクは比較的低い治療法です。

炭酸ガスレーザーによる治療

炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)は、水分に吸収されやすい波長のレーザーを照射して、ほくろの組織を蒸散させる治療法です。メスを使用しないため出血が少なく、傷の治りが早いというメリットがあります。

炭酸ガスレーザーによるほくろ除去は、隆起したほくろに対しては保険適用となる場合があります。しかし、小さく平坦なほくろや、美容目的での除去には保険が適用されず、自由診療となります。また、レーザー治療では組織が蒸散してしまうため、病理検査を行うことができません。そのため、悪性の疑いがあるほくろに対しては、レーザー治療ではなく切除縫合法が選択されます。

炭酸ガスレーザーは顔や首など血流が豊富で傷の治りが早い部位に適しており、比較的きれいに傷跡が治ることが期待できます。一方、手足や体幹などでは傷跡が目立つ場合があるため、部位によっては切除縫合法のほうが適していることもあります。

保険適用時の費用の目安

ほくろ除去を保険診療で行う場合の費用は、ほくろの大きさ、部位、治療方法によって異なります。健康保険の自己負担割合が3割の場合の費用の目安をご紹介いたします。

露出部と非露出部の違い

保険診療における手術費用は、ほくろがある部位が「露出部」か「非露出部」かによって異なります。露出部とは、頭部、顔面、頸部、肘から指先までの上肢、膝から足趾までの下肢を指し、これ以外の部位(体幹、上腕、大腿など)は非露出部となります。

露出部は人目につきやすく、傷跡の処理にも配慮が必要となるため、非露出部と比較して手術点数が高く設定されています。例えば、露出部で2センチメートル未満のほくろを切除した場合、手術費用は自己負担3割で約5,000円から9,000円程度となります。非露出部で3センチメートル未満のほくろを切除した場合は、約3,000円から6,000円程度が目安となります。

総費用の内訳

保険診療でほくろ除去を行う場合、手術費用のほかに以下の費用がかかります。

初診料または再診料は、初めて受診する場合は初診料、2回目以降の受診では再診料が発生します。術前の検査として、感染症検査(B型・C型肝炎検査など)が必要となる場合があります。病理組織検査は、切除した組織を顕微鏡で調べる検査で、約3,000円程度の費用がかかります。薬剤費として、術後に使用する軟膏や内服薬、処方箋料などが発生します。

これらを合計すると、初診から手術、病理検査、術後の経過観察までを含めた総費用は、自己負担3割の場合で約8,000円から15,000円程度が一般的な目安となります。ただし、ほくろの大きさや数、部位、治療方法によって費用は変動しますので、事前に医療機関に確認されることをお勧めいたします。

保険診療と自由診療の違いとメリット・デメリット

ほくろ除去には保険診療と自由診療の2つの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。自分に合った治療を選択するために、両者の違いを理解しておくことが大切です。

保険診療のメリット・デメリット

保険診療の最大のメリットは、費用を大幅に抑えられることです。健康保険が適用されるため、自己負担は治療費の3割(または1割・2割)で済みます。また、全国どこの保険医療機関でも同じ診療報酬に基づいた治療を受けられるため、医療機関による料金の差がありません。

一方、保険診療のデメリットとしては、治療方法の選択肢が限られることが挙げられます。保険診療ではメスによる切除が基本となるため、レーザー治療など傷跡が目立ちにくい治療法を選択できない場合があります。また、保険診療では「ほくろを除去する」ことが第一の目的となるため、美容的な仕上がりへの配慮は自由診療と比較して限定的になる可能性があります。

さらに、一般の皮膚科や形成外科は他の疾患の患者様も多く受診されるため、予約が取りにくかったり、待ち時間が長くなったりすることがあります。治療後の経過観察や傷の回復にも時間がかかる場合があり、治療全体の期間が長引く可能性があります。

自由診療のメリット・デメリット

自由診療のメリットは、治療方法の選択肢が豊富であることです。炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなど、さまざまな治療法の中から、ほくろの状態や患者様の希望に合わせて最適な方法を選択することができます。美容的な仕上がりを重視した治療が可能であり、傷跡が目立ちにくい方法で除去できる場合があります。

また、美容クリニックなどでは予約制で待ち時間が少なく、カウンセリングに十分な時間をかけてもらえることが多いです。当日施術が可能な場合もあり、スケジュールに合わせて治療を受けやすいというメリットがあります。

自由診療のデメリットは、費用が全額自己負担となることです。保険適用の場合と比較して、数倍から10倍以上の費用がかかることもあります。また、医療機関によって料金設定が異なるため、事前に複数のクリニックを比較検討する必要があります。

どちらの診療形態を選ぶかは、ほくろの状態、治療の目的、予算、希望する仕上がりなどを総合的に考慮して決定することが大切です。まずは皮膚科を受診して、保険適用の可否や治療の選択肢について医師に相談されることをお勧めいたします。

ほくろ除去後の経過と注意点

ほくろ除去後の傷の経過は、治療方法や部位、個人の体質によって異なります。適切なアフターケアを行うことで、傷跡をきれいに治すことができます。

術後の一般的な経過

切除縫合法の場合、術後は縫合部位に赤みや腫れが生じることがありますが、通常は数日で落ち着いてきます。抜糸は術後1週間から2週間後に行われます。抜糸後も傷跡には赤みが残りますが、これは時間の経過とともに徐々に薄くなっていきます。傷跡が完全に目立たなくなるまでには、通常3か月から6か月程度かかります。

炭酸ガスレーザーやくりぬき法で縫合を行わなかった場合は、術後に浅い傷(すりむき傷のような状態)ができます。傷の部分にはかさぶたが形成され、1週間から2週間程度で自然に脱落して新しい皮膚が再生されます。この間、傷を乾燥させないように軟膏を塗布し、テープで保護することが大切です。

アフターケアの注意点

術後のアフターケアで最も重要なのは、傷を清潔に保つことと、紫外線から保護することです。傷の洗浄は、医師の指示に従って行います。形成外科ガイドラインでは水道水での洗浄で十分とされており、石鹸を使って優しく洗うことが推奨されています。

紫外線対策は傷跡をきれいに治すために非常に重要です。紫外線を浴びると傷の部分に色素沈着が起こり、傷跡が目立つ原因となります。術後数か月間は、傷の部分に日焼け止めを塗るか、テープで保護するなどして、紫外線から守るようにしてください。

また、かさぶたができた場合は、無理にはがさないようにしてください。かさぶたの下では新しい皮膚が再生されており、無理にはがすと傷跡が残りやすくなります。かゆみがある場合は、冷やすなどして対処し、かきむしらないように注意してください。

再発と追加治療について

ほくろは完全に除去したように見えても、皮膚の深部に母斑細胞が残っている場合、再発することがあります。特にレーザー治療では、深い部分の母斑細胞を完全に除去することが難しいため、再発率が切除縫合法と比較して高い傾向にあります。

再発した場合は、追加の治療が必要となります。多くのクリニックでは、施術後一定期間内の再発に対して、無料または割引価格で再治療を行う保証制度を設けています。治療を受ける前に、再発時の対応について確認しておくことをお勧めいたします。

受診前に確認しておきたいポイント

ほくろ除去を検討されている方が、スムーズに治療を受けられるよう、受診前に確認しておきたいポイントをまとめました。

医療機関の選び方

ほくろ除去を行う医療機関としては、皮膚科、形成外科、美容皮膚科、美容外科などがあります。保険診療を希望される場合は、保険医療機関として登録されている皮膚科や形成外科を受診してください。美容クリニックでは自由診療のみを行っている場合もありますので、事前に確認が必要です。

悪性腫瘍の可能性を心配されている場合は、ダーモスコピー検査が可能な医療機関を選ぶことをお勧めいたします。また、顔の目立つ部位にあるほくろの除去を希望される場合は、傷跡を目立たなくする技術を持つ形成外科専門医のいる医療機関を選ぶとよいでしょう。

受診時に伝えるべきこと

診察時には、ほくろに関する情報をできるだけ詳しく医師に伝えることが大切です。いつ頃からほくろがあるのか、最近になって変化がないか、かゆみ・痛み・出血などの症状がないか、日常生活で困っていることがないかなどを伝えてください。

また、保険適用での治療を希望する場合は、その旨を伝えてください。「ひげを剃るときに引っかかる」「洗顔時に爪が当たって出血することがある」など、具体的に生活上の支障を説明することで、保険適用の判断がしやすくなります。

持参するもの

受診時には健康保険証を必ずお持ちください。また、現在服用中の薬がある場合は、お薬手帳も持参してください。血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用されている方は、手術前に休薬が必要な場合がありますので、必ず医師に申告してください。

過去にほくろ除去を受けたことがある場合や、皮膚に関する既往歴がある場合は、その情報も伝えてください。アレルギーの有無、ケロイド体質かどうかなども、治療方針を決める上で重要な情報となります。

まとめ

ほくろ除去における保険適用の条件について詳しく解説いたしました。保険が適用されるのは、悪性腫瘍の疑いがある場合、日常生活に支障をきたしている場合、医学的に治療が必要な変化がある場合の3つの条件を満たす場合です。美容目的での除去は保険適用外となり、自由診療での治療となります。

保険診療でほくろを除去する場合、主にメスによる切除縫合法やくりぬき法が行われ、自己負担3割で約8,000円から15,000円程度の費用がかかります。保険診療には費用が抑えられるというメリットがある一方、治療方法の選択肢が限られるというデメリットもあります。

ほくろが気になる方は、まず皮膚科を受診してダーモスコピー検査を受け、良性か悪性かの診断を受けることが大切です。特にABCDEルールに該当する特徴を持つほくろがある場合は、速やかに専門医の診察を受けることをお勧めいたします。自己判断で放置することなく、専門家に相談することで、適切な治療を受けることができます。

アイシークリニック上野院では、専門医による診察と治療を行っております。ほくろでお悩みの方、保険適用で治療を受けたい方は、お気軽にご相談ください。患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。

よくある質問

ほくろ除去は保険適用されますか?

ほくろ除去が保険適用されるかどうかは、除去の目的と医師の診断によって決まります。悪性腫瘍(皮膚がん)の疑いがある場合、日常生活に支障をきたしている場合(視界を遮る、ひげ剃りで引っかかる等)、医学的に治療が必要な変化がある場合には保険適用となります。一方、見た目が気になるという美容目的での除去は保険適用外となり、全額自己負担の自由診療となります。保険適用の可否は医師が診察した上で判断しますので、まずは皮膚科を受診してご相談ください。

保険適用の場合、ほくろ除去の費用はいくらですか?

保険適用でほくろを除去する場合、自己負担3割の方で総額約8,000円から15,000円程度が目安です。内訳としては、露出部(顔・首・腕など)の2cm未満のほくろで手術費用が約5,000円から9,000円、非露出部(背中・腹部など)の3cm未満で約3,000円から6,000円となります。これに加えて初診料、病理検査料(約3,000円)、薬剤費などがかかります。ほくろの大きさや部位、治療方法によって費用は変動しますので、受診時に詳しくご確認ください。

ほくろとメラノーマ(悪性黒色腫)の見分け方を教えてください

ほくろとメラノーマを見分けるためにはABCDEルールと呼ばれる基準が参考になります。Aは非対称性(形が左右対称でない)、Bは境界の不整(輪郭がギザギザしている)、Cは色調の不均一(複数の色が混在している)、Dは直径6mm以上、Eは経時的変化(急に大きくなった、色が変わったなど)を表します。ただし、この基準に該当しても良性の場合もあり、自己判断は危険です。気になるほくろがある場合は皮膚科でダーモスコピー検査を受けることをお勧めします。

ダーモスコピー検査とは何ですか?費用はいくらですか?

ダーモスコピー検査は、特殊な光源を備えた拡大鏡(ダーモスコープ)を使って皮膚の状態を詳しく観察する検査です。肉眼では見えない皮膚の深部の構造や色素の分布パターンを確認することができ、ほくろが良性か悪性かを高い精度で判断することができます。痛みはなく、数分で終わる簡単な検査です。健康保険が適用されており、自己負担3割の場合は検査料のみで約200円から300円程度、診察料を合わせても1,000円程度で受けることができます。

保険適用でのほくろ除去はどのような方法で行われますか?

保険適用でのほくろ除去は、主にメスを使用した外科的切除が行われます。具体的には、切除縫合法(ほくろを紡錘形に切除して縫い合わせる方法)とくりぬき法(円筒状の器具でほくろをくり抜く方法)があります。いずれも局所麻酔を行うため術中の痛みはほとんどなく、日帰りで治療を受けることができます。切除した組織は病理検査に提出され、良性か悪性かの確定診断が行われます。レーザー治療は隆起したほくろに対しては保険適用となる場合がありますが、多くの場合は自由診療となります。

ほくろ除去後、傷跡は残りますか?

どのような治療方法を用いても、傷跡が完全にゼロになることはありません。しかし、適切な治療とアフターケアにより、傷跡を目立たなくすることは可能です。切除縫合法では直線状の傷跡が残りますが、皮膚のしわの方向に沿って切開することで目立ちにくくなります。傷跡は最初は赤みがありますが、通常3か月から6か月程度で徐々に薄くなっていきます。術後は紫外線対策を行い、色素沈着を防ぐことが重要です。傷跡の治り方は個人差がありますので、ケロイド体質の方は事前に医師にお伝えください。

ほくろ除去後に再発することはありますか?

ほくろは完全に除去したように見えても、皮膚の深部に母斑細胞が残っている場合、再発することがあります。切除縫合法は深い部分の母斑細胞まで除去できるため再発率が低く、レーザー治療は深部の細胞を完全に除去することが難しいため再発率が比較的高い傾向にあります。再発した場合は追加の治療が必要となりますが、多くのクリニックでは施術後一定期間内の再発に対して無料または割引での再治療制度を設けています。治療を受ける前に、再発時の対応について確認しておくことをお勧めします。

足の裏や手のひらのほくろは危険ですか?

足の裏や手のひらのほくろがすべて危険というわけではありません。ただし、日本人の悪性黒色腫(メラノーマ)は足の裏や手のひらなど末端部に発生することが多いという特徴があり、全体の約半数がこれらの部位に発生するとされています。足の裏のほくろで特に注意が必要なのは、短期間で急に大きくなった、色にムラがある、境界がはっきりしないなどの変化がある場合です。成人になってから新たにできたほくろや、変化のあるほくろは、念のため皮膚科でダーモスコピー検査を受けることをお勧めします。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

プロフィールを見る

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

プロフィールを見る

電話予約
0120-000-702
1分で入力完了
簡単Web予約