ふと鏡を見たとき、「このほくろ、前より大きくなっていないだろうか」と不安を感じた経験はありませんか。ほくろは私たちの肌に自然に存在するもので、その多くは良性であり、特別な治療を必要としません。しかし、急激に大きくなったり、形や色が変化したりするほくろには注意が必要な場合があります。本記事では、ほくろが大きくなる原因や、注意すべきほくろの特徴、悪性黒色腫(メラノーマ)との見分け方、そして医療機関での検査・治療法について、皮膚科専門の知見をもとに詳しく解説いたします。気になるほくろがある方は、ぜひ最後までお読みいただき、適切な対応の参考にしてください。

目次
- ほくろとは何か|医学的な定義と種類
- ほくろが大きくなる5つの原因
- 注意が必要なほくろの特徴|ABCDEルールとは
- ほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)の違い
- ほくろが大きくなったときの対処法
- 医療機関での検査・診断方法
- ほくろの除去方法|レーザー治療と切除手術
- 日常生活での予防法とセルフケア
- 受診のタイミング|こんな症状があれば早めに皮膚科へ
- アイシークリニック上野院でのほくろ治療について
- よくある質問
ほくろとは何か|医学的な定義と種類
ほくろは医学的には「母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)」または「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれます。皮膚の中にある色素細胞(メラノサイト)に似た「母斑細胞」が局所的に増殖し、メラニン色素を産生することで、褐色から黒色の斑点として皮膚に現れます。ほくろは体のあらゆる場所にでき、顔、腕、背中、足の裏など、その発生部位はさまざまです。
ほくろの分類|発生時期による分類
ほくろは発生時期によって、大きく二つに分類されます。一つは生まれつき存在する「先天性色素性母斑」で、もう一つは成長過程で後から現れる「後天性色素性母斑」です。先天性のほくろの中には比較的大きなものも存在し、特に成人になった時点で直径20cmを超えるものは「巨大先天性色素性母斑」と呼ばれ、将来的に悪性黒色腫が発生するリスクがあるため、定期的な経過観察が推奨されます。後天性のほくろは幼少期から増えはじめ、20~30代でピークを迎えることが一般的です。
ほくろの分類|組織学的な分類
顕微鏡で観察した際、母斑細胞が存在する深さによって、ほくろは三つのタイプに分類されます。皮膚の浅い部分(表皮と真皮の境界部)に母斑細胞が存在するものを「境界母斑」と呼び、平らで黒褐色を呈することが多いです。真皮内に母斑細胞が存在するものを「真皮内母斑」と呼び、盛り上がりのあるほくろになります。そして両方の性質を併せ持つものを「複合母斑」といいます。一般的に、時間の経過とともに境界母斑から複合母斑、真皮内母斑へと進行していき、次第に盛り上がって大きく見えるようになることがあります。
ほくろの分類|臨床的な分類(Ackerman分類)
皮膚科で用いられるAckerman分類では、ほくろを以下の四つのタイプに分けています。第一に「Miescher母斑」は、顔面や頭部にできやすいドーム状のほくろで、毛が生えていることもあります。第二に「Unna母斑」は、体幹や首に発生しやすく、柔らかく盛り上がり、表面に凹凸があって桑の実のような形状を呈することがあります。大きさは10mm前後になることもあり、比較的大きなほくろです。第三に「Spitz母斑」は若年者に多く見られ、黒色から赤色を呈し、急にサイズが大きくなることがあるため、悪性黒色腫との鑑別が難しい場合があります。第四に「Clark母斑」は、全身に発生する平らな黒褐色のほくろで、中心部の色が濃く、辺縁に向かって徐々に薄くなっていくのが特徴です。
ほくろが大きくなる5つの原因
ほくろは基本的に良性の腫瘍であり、時間をかけて少しずつ大きくなることは自然な現象です。しかし、急激な変化には注意が必要です。ここでは、ほくろが大きくなる主な原因について解説します。
原因1:母斑細胞の自然な増殖
ほくろの本質は、母斑細胞という細胞の集まりです。時間の経過とともに、この母斑細胞が少しずつ増殖することで、ほくろ自体が徐々に大きくなっていきます。特に幼児期から思春期にかけては、体の成長に伴って皮膚が伸びるため、ほくろも一緒に大きく見えるようになります。ほくろができたばかりの頃は少し大きくなることがありますが、やがて成長が止まり、多くは直径6mm以下にとどまります。ただし、生まれつきのほくろや5歳以下で生じたほくろは、成長とともにさらに大きくなることがあります。
原因2:紫外線の影響
紫外線はほくろの大きさや色に影響を与える重要な要因です。日光を長時間浴びると、皮膚のメラノサイトが活性化してメラニン色素の産生が促進され、既存のほくろが濃くなったり、大きくなったりすることがあります。また、紫外線は新しいほくろの発生を促す要因にもなります。日焼けを頻繁にする人は、紫外線がほくろに与える影響に特に注意が必要です。ただし、日本人の場合、欧米人と比べて紫外線によるメラノーマの発生リスクは比較的低いとされています。
原因3:物理的な刺激や摩擦
ほくろを頻繁に触ったり、衣服やアクセサリーによる摩擦、圧迫などの物理的な刺激を繰り返し受けたりすると、母斑細胞が刺激され、ほくろが大きくなったり、色が濃くなったりすることがあります。特に、ベルトやブラジャーのストラップが当たる部位、足の裏、手のひらなど、日常的に刺激を受けやすい場所にあるほくろは注意が必要です。できるだけほくろへの刺激を避けることが推奨されます。
原因4:ホルモンバランスの変化
思春期や妊娠期など、ホルモンバランスが大きく変化する時期には、ほくろが増加したり、既存のほくろが大きくなったりすることがあります。これは、ホルモンがメラノサイトの活性に影響を与えるためと考えられています。妊娠中に一時的にほくろが目立つようになったり、色が濃くなったりすることもありますが、多くの場合は出産後に元に戻ります。ただし、妊娠中であっても、急激な変化や気になる症状がある場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
原因5:加齢に伴う変化
年齢を重ねるにつれて、ほくろの数や大きさ、形状が変化することがあります。特に、若い頃に平らだったほくろが、加齢とともに盛り上がってくることは珍しくありません。これは、母斑細胞が皮膚の深い層に移動していく自然な過程の一部です。また、加齢に伴い「脂漏性角化症」と呼ばれる老人性のイボができることもあり、これがほくろと混同されることがあります。脂漏性角化症は良性の腫瘍で悪性化することはありませんが、ほくろとの見分けが難しい場合は、医療機関での診断を受けることが大切です。
注意が必要なほくろの特徴|ABCDEルールとは
ほくろの多くは良性ですが、中には悪性黒色腫(メラノーマ)などの皮膚がんと見分けがつきにくいものもあります。早期発見・早期治療のために、注意すべきほくろの特徴を知っておくことは非常に重要です。メラノーマを見分けるための国際的な基準として広く知られているのが「ABCDEルール」です。
A(Asymmetry):非対称性
通常のほくろは円形や楕円形で、中心線で折りたたむと左右がほぼ対称になります。一方、悪性の可能性があるほくろは、形がいびつで左右非対称であることが多いです。ほくろの真ん中に線を引いたとき、左右の形が大きく異なる場合は注意が必要です。
B(Border):境界不整
良性のほくろは、周囲の肌との境界がはっきりしています。しかし、悪性の可能性があるほくろは、輪郭がギザギザしていたり、周囲にじみ出すように色素が広がっていたり、境界がぼやけていたりすることがあります。ほくろの縁がくっきりしていない場合は、注意深く観察する必要があります。
C(Color):色の不均一
良性のほくろは通常、全体が均一な色をしています。しかし、悪性の可能性があるほくろは、一つのほくろの中に複数の色が混在していることがあります。たとえば、黒、茶、褐色、青、白、灰色、赤などが混じっている場合や、色にムラがある場合は要注意です。また、以前より色が急に濃くなったり、まだら模様に変化したりした場合も、医療機関での確認が推奨されます。
D(Diameter):直径6mm以上
良性のほくろは、ほとんどが直径6mm以下です。一方、悪性黒色腫は直径6mm以上になることが多いとされています。ただし、初期のメラノーマは6mm未満のこともあるため、大きさだけで判断することはできません。消しゴムの直径(約6mm)を目安に、それより大きいほくろがある場合は、一度専門医に診てもらうことをおすすめします。
E(Evolving):変化
最後の「E」は変化を意味します。短期間でほくろの大きさ、形、色、高さが変化したり、表面がただれたり、出血したり、かゆみや痛みを伴ったりする場合は、特に注意が必要です。ここ1〜2年でほくろに何らかの変化が見られる場合は、悪性の可能性を否定するためにも、早めに皮膚科を受診してください。
ほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)の違い
悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚がんの中でも特に悪性度が高く、転移しやすいことで知られています。日本では年間約1,800人が新たに診断されており、発生率は増加傾向にあります。メラノーマは色素細胞(メラノサイト)ががん化したもので、初期の段階ではほくろと見分けがつきにくいことが大きな特徴です。
ほくろはメラノーマになるのか
「ほくろを刺激するとがんになる」という話を聞いたことがある方も多いかもしれません。しかし、通常の良性のほくろがメラノーマに変化することは基本的にないとされています。ただし、生まれつきの巨大な色素性母斑(直径20cm以上)は、将来的に悪性黒色腫が発生するリスクがあるため、定期的な経過観察が必要です。また、ほくろだと思っていたものが実は初期のメラノーマだったというケースもあるため、変化のあるほくろには注意が必要です。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは主に4つのタイプに分類されます。第一に「末端黒子型」は、日本人に最も多いタイプで、手のひら、足の裏、足や手の爪などに発生します。日本人のメラノーマの約40%がこのタイプです。第二に「表在拡大型」は、体幹部(背中、胸、お腹など)や手足の付け根に発生しやすく、水平方向に広がっていく特徴があります。第三に「結節型」は、しこりのようなものができるタイプで、全身に発生し、進行が早いことが特徴です。第四に「悪性黒子型」は、高齢者の顔面など日光がよく当たる部位に発生しやすく、不規則な形の色素斑が徐々に大きくなり、やがて中央が膨らんでくることがあります。
日本人特有の注意点
欧米人に比べて日本人は紫外線によるメラノーマの発生は少ないですが、足の裏や手のひら、爪など末端部に発生するメラノーマが多いという特徴があります。これらの部位は普段あまり注目しない場所であるため、発見が遅れることがあります。足の裏や爪に新しくできた黒い斑点や線には特に注意し、変化が見られたら早めに皮膚科を受診することが大切です。特に爪にできるメラノーマは、初期では爪に黒色の縦線として現れるだけで、爪甲色素線条(縦の筋)と区別がつきにくいですが、6か月から1年程度の短期間で色が濃くなったり筋の幅が広がったりする場合は、進行している可能性があります。
ほくろが大きくなったときの対処法
ほくろが大きくなったと感じたとき、まず大切なのは落ち着いて状況を確認することです。多くのほくろは良性であり、心配のないケースがほとんどです。しかし、適切な対応を取るためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
セルフチェックを行う
まずは前述のABCDEルールに基づいて、ほくろの状態を確認してみてください。形が左右対称か、境界がはっきりしているか、色は均一か、大きさはどれくらいか、そして最近変化があったかどうかをチェックします。できれば定期的にほくろの写真を撮っておくと、変化を客観的に把握しやすくなります。スマートフォンのカメラで記録を残しておくのも良い方法です。
むやみに触らない・刺激しない
気になるからといって、ほくろを頻繁に触ったり、引っ掻いたり、自分で取ろうとしたりすることは避けてください。物理的な刺激は母斑細胞を活性化させ、ほくろが大きくなったり、色が濃くなったりする原因になることがあります。また、自力でほくろを除去しようとして、市販のほくろ取りクリームやお灸などを使う人がいますが、火傷や化膿、大きな傷跡が残る恐れがあり、非常に危険です。絶対に自己判断での除去は行わないでください。
変化があれば写真で記録
ほくろに変化があると感じたら、日付とともに写真を撮って記録しておきましょう。同じ条件(照明、角度、距離)で撮影することで、変化を正確に把握できます。この記録は、医療機関を受診した際に医師に見せることで、診断の参考になります。
気になる場合は早めに皮膚科を受診
ABCDEルールのいずれかに該当する場合や、少しでも不安がある場合は、自己判断せずに皮膚科を受診しましょう。特に、短期間で急に大きくなった、色が変わった、出血や痛み・かゆみがあるといった症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。皮膚がんは早期発見・早期治療が非常に重要であり、早期であれば完治する可能性も高くなります。
医療機関での検査・診断方法
皮膚科を受診すると、医師はほくろの状態を詳しく診察し、必要に応じて各種検査を行います。ここでは、医療機関で行われる主な検査・診断方法について解説します。
視診
まず医師が肉眼でほくろを観察します。ほくろの大きさ、形、色、境界の状態などを確認し、良性か悪性かの初期判断を行います。皮膚疾患の診断において視診は非常に重要であり、経験豊富な皮膚科専門医であれば、見た目だけでもある程度の判断が可能です。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査は、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を用いて、ほくろを10〜30倍程度に拡大して観察する検査方法です。皮膚の表面だけでなく、皮膚の内部のメラニンの分布パターンや血管の様子まで詳しく確認することができます。この検査により、良性のほくろと悪性黒色腫を見分ける精度が約20%向上するとされています。痛みもなく、短時間で行える非侵襲的な検査であり、メラノーマなどの皮膚がんの診断には欠かせない検査となっています。2006年からは健康保険が適用されています。
皮膚生検(病理検査)
ダーモスコピー検査などで悪性の可能性が疑われる場合、確定診断のために「皮膚生検」という検査を行います。局所麻酔をした後、ほくろの一部または全部をメスで切り取り、顕微鏡で細胞を詳しく観察する検査です。麻酔を使うので、検査中に強い痛みを感じることはほとんどありません。病理検査により、ほくろが良性か悪性かを確定的に診断することができます。なお、レーザー治療ではほくろを蒸発させて除去するため、病理検査を行うことができません。悪性が疑われる場合は、レーザー治療ではなく切除手術が選択されます。
画像検査
皮膚生検で悪性黒色腫と診断された場合は、がんが他の臓器に転移していないかを調べるために、CTやMRI、PET-CTなどの画像検査を行うことがあります。これらの検査結果に基づいて、がんの進行度(病期、ステージ)を判定し、適切な治療方針を決定します。
ほくろの除去方法|レーザー治療と切除手術
良性と診断されたほくろであっても、美容上の理由や、衣類との摩擦で炎症を繰り返すなどの生活上の問題がある場合は、除去を検討することがあります。ほくろの除去には主にレーザー治療と切除手術の二つの方法があり、ほくろの大きさ、深さ、部位、患者さんの希望などに応じて最適な方法が選択されます。
レーザー治療
レーザー治療は、メスを使わずにほくろを除去できる方法です。主に使用されるレーザーには、炭酸ガス(CO2)レーザー、Qスイッチレーザー、ピコレーザーなどがあります。炭酸ガスレーザーは、波長10,600nmの赤外線領域の光を発し、皮膚や組織に含まれる水分にレーザーエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換され、ほくろの組織を蒸散させて取り除く方法です。周囲の皮膚へのダメージが少なく、ピンポイントでの施術が可能で、傷跡が残りにくいのが特徴です。小さくて浅いほくろに適しており、施術時間も短く、縫合も不要です。
レーザー治療の施術の流れとしては、まず局所麻酔を行い、ほくろにレーザーを照射してほくろの組織を蒸散させていきます。施術後は患部が少し凹んだ状態になり、最初はジュクジュクしていますが、7〜14日程度で新しい皮膚が再生して治っていきます。その後、赤みが2〜3か月程度続くことがありますが、徐々に目立たなくなっていきます。完全に肌の色に馴染むまでには平均で6か月ほどかかります。
レーザー治療のメリットは、傷跡が小さく目立ちにくいこと、縫合が不要であること、施術時間が短いこと、複数のほくろをまとめて除去しやすいことなどです。一方、デメリットとしては、深いほくろの場合は取り残しによる再発の可能性があること、病理検査ができないため悪性の有無を調べられないこと、基本的に保険適用外(自由診療)であることなどが挙げられます。
切除手術
切除手術は、メスでほくろを根元から切除し、縫合して治療する方法です。深いほくろや大きなほくろ、悪性の可能性があるものに適しています。ほくろを根こそぎ取り除くため、再発のリスクが低く、切除した組織を病理検査に回すことで、悪性かどうかの確定診断を行うことができます。
手術の流れとしては、まず局所麻酔を行い、ほくろを周囲の皮膚とともに切除します。傷跡がシワの方向に沿うように切除することで、傷を目立ちにくくする工夫がなされます。切除後は真皮を吸収糸で縫合し、皮膚の表面は抜糸が必要な糸で縫合します。抜糸は通常5〜7日後に行われます。傷跡は当初は線状に見えますが、時間とともに徐々に目立たなくなっていきます。形成外科では、傷の方向や縫い方を工夫することで、かなり目立たなく仕上げることが可能です。
切除手術のメリットは、根元からしっかり取り除けるため再発しにくいこと、切除した組織を病理検査に回せるため悪性かどうかの確定診断ができること、医師の判断によっては保険適用になる可能性があることなどです。一方、デメリットとしては、縫合が必要なため抜糸までダウンタイムがあること、線状の傷跡が残る可能性があることなどが挙げられます。
治療法の選択について
レーザー治療と切除手術のどちらが適しているかは、ほくろの大きさ、深さ、部位、悪性の可能性の有無、患者さんの希望などによって異なります。一般的に、直径5mm以下の小さくて浅いほくろにはレーザー治療が向いていますが、直径5mm以上の大きなほくろや、膨らみのあるほくろ、悪性が疑われるほくろには切除手術が推奨されます。どちらの方法が最適かは、医師の診察を受けた上で判断することが大切です。
日常生活での予防法とセルフケア
ほくろの増加や拡大を防ぎ、皮膚がんのリスクを軽減するために、日常生活で気をつけたいポイントがあります。
紫外線対策を徹底する
紫外線は、ほくろの増加や色素沈着、皮膚がんのリスク因子の一つとされています。外出時には、日焼け止めを塗る、日傘や帽子を使用する、サングラスをかける、長袖の服を着るなどして、過度な紫外線曝露を避けることが重要です。特に紫外線の強い時間帯(午前10時〜午後2時頃)の外出を控えることも効果的です。日焼け止めは、SPF30以上、PA+++以上のものを選び、2〜3時間ごとに塗り直すことが推奨されます。
ほくろへの刺激を避ける
ほくろを頻繁に触ったり、擦ったりすることは避けましょう。衣服やアクセサリーがほくろに擦れる場合は、その部分にガーゼやテープを貼るなどして保護することも一つの方法です。また、ひげ剃りや毛抜きを使う際に、ほくろを傷つけないよう注意してください。
定期的なセルフチェック
月に一度程度、全身のほくろをセルフチェックする習慣をつけましょう。鏡を使って背中や後頭部など見えにくい部分も確認し、ABCDEルールに基づいて異常がないかをチェックします。特に、足の裏、手のひら、爪の下など、日本人でメラノーマが発生しやすい部位は念入りに確認してください。変化に気づいた場合は、写真を撮って記録し、早めに皮膚科を受診しましょう。
バランスの良い生活習慣
直接的な因果関係は明らかではありませんが、バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動など、健康的な生活習慣を維持することは、免疫機能を正常に保ち、皮膚の健康を維持するためにも大切です。ストレスを溜め込まないようにすることも、ホルモンバランスを整える上で重要です。
受診のタイミング|こんな症状があれば早めに皮膚科へ
以下のような症状がある場合は、自己判断せずに早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
第一に、ほくろが短期間(数か月から1〜2年)で急に大きくなった場合です。良性のほくろは、成長しても長い年月をかけてゆっくりと変化するのが通常です。急激な変化は注意が必要です。
第二に、ほくろの形が左右非対称になったり、境界がギザギザになったりした場合です。良性のほくろは円形や楕円形で境界がはっきりしているのが一般的です。
第三に、ほくろの色が不均一になった、または色調が変化した場合です。一つのほくろの中に複数の色が混在していたり、以前より急に色が濃くなったりした場合は要注意です。
第四に、直径が6mm以上ある場合です。成人になってから新たにできたほくろで、7mm以上になるものは珍しいため、早めに皮膚科を受診しましょう。
第五に、ほくろから出血したり、表面がただれたり、じくじくしたりする場合です。良性のほくろは通常、このような症状を呈しません。
第六に、ほくろにかゆみや痛みを感じる場合です。通常、ほくろには自覚症状がないため、これらの症状がある場合は確認が必要です。
第七に、足の裏、手のひら、爪の下に新しくほくろができた場合です。これらは日本人でメラノーマが発生しやすい部位です。
第八に、成人になってから新しくできたほくろが変化し続けている場合です。特に30歳以降に新しくできたほくろは注意深く観察する必要があります。
これらの症状に当てはまるからといって、必ずしも悪性というわけではありません。しかし、早期発見・早期治療が重要な皮膚がんにおいては、「念のため」受診することが大切です。受診して良性と診断されれば安心できますし、万が一悪性であっても、早期であれば完治の可能性が高くなります。
アイシークリニック上野院でのほくろ治療について
アイシークリニック上野院では、患者さま一人ひとりのほくろの状態やご希望に合わせて、最適な治療法をご提案しております。丁寧な診察を行い、良性・悪性の見極めを慎重に行った上で、治療方針を決定いたします。
レーザー治療から切除手術まで、幅広い治療オプションをご用意しておりますので、「このほくろ、取りたいけれど大丈夫かな」「最近大きくなってきた気がして心配」など、気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。専門医が丁寧に診察し、患者さまの不安を解消できるよう努めてまいります。
ほくろは身近な存在ですが、だからこそ変化に気づきにくいこともあります。定期的なセルフチェックを習慣にし、気になる変化があれば早めにご来院いただくことをおすすめします。早期発見・早期治療は、皮膚の健康を守るための第一歩です。

よくある質問
ほくろが大きくなること自体は必ずしも危険とは限りません。ほくろは母斑細胞という細胞の集まりであり、時間の経過とともに少しずつ大きくなることは自然な現象です。特に成長期のお子さんでは、体の成長に伴って皮膚が伸びるため、ほくろも一緒に大きく見えるようになります。ただし、短期間で急激に大きくなった場合、形や色に変化がある場合、出血やかゆみなどの症状を伴う場合は、念のため皮膚科を受診して確認されることをおすすめします。
通常の良性のほくろが刺激によって癌(悪性黒色腫)に変化することは基本的にないとされています。ただし、ほくろを頻繁に触ったり擦ったりする刺激は、ほくろが大きくなったり色が濃くなったりする原因になることがあります。また、自分でほくろを取ろうとして傷つけることは、感染や傷跡のリスクがあるため避けるべきです。気になるほくろがある場合は、触らずに皮膚科を受診することをおすすめします。
ほくろ除去が保険適用になるかどうかは、治療の目的と方法によって異なります。悪性の疑いがある場合や、衣類との摩擦で炎症を繰り返すなど医学的に除去が必要と判断された場合は、メスによる切除手術が保険適用となる可能性があります。一方、見た目を改善したいという美容目的での除去は基本的に自由診療となります。また、レーザー治療は治療目的であっても保険適用外となることがほとんどです。詳しくは受診時に医師にご相談ください。
はい、レーザー治療後にほくろが再発することはあります。特に、皮膚の深いところまで母斑細胞が存在している場合、レーザーでは完全に除去できず、一部が残って再発することがあります。再発した場合は、再度レーザー治療を行うか、切除手術を検討することになります。多くのクリニックでは再発保証制度を設けており、一定期間内の再発については追加費用なしで再治療を行っています。詳しくは治療前に医師にご確認ください。
足の裏のほくろは必ずしも取らなければならないわけではありません。多くの足の裏のほくろは良性であり、特に問題がなければ経過観察で様子を見ることも可能です。ただし、足の裏は日本人で悪性黒色腫(メラノーマ)が発生しやすい部位であるため、新しくできたほくろや、急に大きくなった、形や色が変わった、出血するなどの変化がある場合は、皮膚科でダーモスコピー検査などを受けることをおすすめします。また、歩行時の圧迫や摩擦で不快感がある場合は除去を検討してもよいでしょう。
ABCDEルール(非対称性、境界不整、色の不均一、直径6mm以上、変化)を参考にセルフチェックを行うことはできますが、自己判断だけで確実に見分けることは困難です。初期のメラノーマは良性のほくろと非常によく似ていることがあり、皮膚科専門医でも肉眼だけでは判断が難しい場合があります。ダーモスコピー検査や病理検査によって初めて正確な診断がつくことも多いため、少しでも気になる症状がある場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することをおすすめします。
傷跡の目立ち方は、ほくろの大きさ、深さ、部位、治療法、個人の肌質や治癒力などによって異なります。レーザー治療の場合、小さなほくろであれば傷跡はほとんど目立たなくなることが多いですが、大きなほくろや深いほくろでは、くぼみや色素沈着が残ることがあります。切除手術の場合は線状の傷跡が残りますが、形成外科的技術を用いることで、シワに沿った目立ちにくい傷跡に仕上げることが可能です。いずれの場合も、術後のケア(日焼け止め、保湿など)を適切に行うことで、傷跡を目立ちにくくすることができます。
参考文献
- 公益社団法人日本皮膚科学会|皮膚科Q&A「日焼け」
- 一般社団法人日本形成外科学会|色素性母斑(ほくろ・母斑細胞母斑・黒子)
- 国立がん研究センター がん情報サービス|メラノーマ(悪性黒色腫)
- 一般社団法人日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚科学会雑誌|皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン2025
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS|色素性母斑(ほくろ)
- 東京女子医科大学附属足立医療センター皮膚科|ほくろの説明
- 日本医科大学武蔵小杉病院|「ほくろ」「できもの」と『がん』
- がん研有明病院|皮膚がん
- 東邦大学|皮膚がんの早期発見で覚えておきたいこと~ほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)の5つの見分け方~
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務