「胼胝(べんち)は鶏眼(けいがん)と何が違う?」
「胼胝になったらどうすればいい?」
このように足や手の皮膚疾患に悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。
胼胝(べんち)は、足や手が硬く盛り上がる皮膚疾患で「たこ」とも呼ばれます。
本記事では、胼胝の原因をはじめ治療方法についても解説します。
また、記事の後半では鶏眼との違いについても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
胼胝とは?
胼胝とは、主に足の裏にできる硬いできものです。
胼胝は別名「たこ」とも呼ばれ、外部の刺激によって角質が厚くなることが原因です。
鶏眼と違い、胼胝は皮膚が盛り上がっているだけなので痛みはありません。
胼胝はなぜできる?原因を解説
胼胝の原因は外部からの刺激です。
特定の部位に長期間の刺激が加わることで角質が厚くなり、胼胝となります。
主にサイズの合っていない靴やサンダルなどにより足の一部に負荷がかかることで発症しやすいです。
特に、ハイヒールは胼胝ができる大きな原因で、足がきゅう屈な状態になる上、つま先に重心が乗ることで胼胝や鶏眼ができやすくなります。
また、ハイヒールは長期間履いていると足の形そのものを歪ませるため、履き続ければ胼胝や鶏眼ができやすい足になってしまう場合があります。
他にも、スポーツや職業などの生活環境が原因で発症することも少なくありません。
胼胝ができると痛い?症状を紹介
胼胝は、多くの場合で痛みがありません。
胼胝は外部の刺激から体を守るために角質が厚くなることで発症します。
また、広い範囲で角質が厚くなるため痛みは少なく、むしろ刺激に対して鈍感になる場合も少なくありません。
なお、胼胝は足以外にもできることがあります。
主な発症箇所は足ですが、よくペンを持つ方であれば「ペンだこ」、正座の多い方であれば「座りだこ」など、足以外の部位でも発症するのが特徴です。
胼胝は基本的に無症状なものの、極端な摩擦や刺激を受けるとより角質が厚くなり焼けるような不快感を感じる場合もあります。
胼胝の治療方法は?治し方を紹介
胼胝の治療方法は以下の通りです。
- 硬くなった角質を軟膏などで柔らかくする
- 角質を剥がす作用のある薬やハサミ・メスなどを用いて除去
胼胝は同じ部位への継続的な刺激によって角質が厚くなることで発症します。
そのため、角質が厚くなっている部位を柔らかくして自然治癒を待ったり患部を切除する形で除去したりして治療します。
また、胼胝は生活環境によって再発しやすい皮膚疾患のため、原因を取り除くことも非常に重要です。
しかし、どうしても原因が取り除けない場合は軟膏やワセリンを塗って皮膚を柔らかくしたりクッションを敷いたりして局部への刺激を緩和させます。
鶏眼と胼胝の違いは?
胼胝によく似た病気に「鶏眼」があります。
鶏眼と胼胝の違いは以下の通りです。
鶏眼 | 胼胝 | |
---|---|---|
症状 | ・強い痛みを伴う ・皮膚の奥に芯ができる ・芯が神経を圧迫する | ・皮膚が黄色くなる ・分厚く、硬くなる ・痛みはない場合が多い |
できやすい部位 | 足の裏 | 全身 |
鶏眼は別名「うおのめ」とも呼ばれる皮膚疾患です。
鶏眼と胼胝の原因は同じで、外部からの継続的な刺激が一部分に加わることです。
しかし、症状は大きく異なります。鶏眼は足の皮膚の奥に芯ができ、歩行などによって圧力が加わると芯が神経を圧迫して強い痛みを伴います。
一方で、胼胝に痛みの症状はない場合が多く、分厚く、硬くなるだけのことが多いです。
ただし、胼胝は放置しておくと細菌感染を起こす場合があるため皮膚に違和感を覚えたらまずは医師の診療を受けましょう。
下記の記事では、鶏眼の原因や症状について詳しく解説しています。
鶏眼の治療方法や歩行が困難なほど痛い場合の対処法なども紹介しているので参考にしてください。
魚の目(うおのめ)の原因と治療方法は?たことの違いや痛い場合の対処法を解説
胼胝に関するよくある質問
胼胝に関するよくある質問に回答します。
胼胝を放置すると「皮膚潰瘍(ひふかいよう)」を起こす可能性があるため速やかな治療が必要です。
糖尿病で、足の感覚がなくなる「末梢神経障害」も併発している場合は胼胝になっても何も感じない場合があります。しかし、硬い胼胝を放置していると皮膚の下にある組織を傷つけ、皮膚潰瘍を誘発するケースがあります。
皮膚潰瘍とは、何らかのきっかけで皮膚の細胞が死に、皮膚の一部が欠損してしまう状態です。実際に、糖尿病性足潰瘍を発症した人の大部分が胼胝を原因としていたという調査もあります。
皮膚潰瘍を誘発しないためにも、胼胝ができていたら速やかに医師の診療を受けましょう。
胼胝は足だけでなく、手の指にできることもあります。
特にペンがよく当たる部分に胼胝はできやすく、「ペンダコ」と呼ばれます。
胼胝はスポーツや職業などの生活環境によって、足や手だけでなく様々な部位にできるのが特徴です。
東京でべんち(たこ)の治療ならアイシークリニックへご相談ください
胼胝は外部からの刺激が一定の部位に加わり続けることによって誰にでも起こり得る皮膚疾患です。
しかし、痛みや違和感がないからと言って放置していると皮膚の欠損を招くこともあります。そのため、無症状であっても医師の診療を受けましょう。
アイシークリニックは、老若男女どなたでも相談しやすいクリニックを目指しています。
どんな症状であっても、患者様と相談しながら安心の治療方法を提案させていただきますので、足や手に胼胝ができてお悩みの方は、アイシークリニックにご相談くださいませ。
胼胝の詳しい分類とタイプ
胼胝は発症部位や原因によっていくつかのタイプに分類されます。適切な治療を行うためには、まずどのタイプの胼胝なのかを正確に把握することが重要です。
発症部位による分類
足底胼胝(そくていべんち) 最も一般的なタイプで、足の裏、特に踵(かかと)や前足部(つま先の付け根)にできる胼胝です。歩行時の体重負荷が集中する部位に形成されやすく、厚く硬い角質層が特徴的です。
趾胼胝(しべんち) 足の指に形成される胼胝で、特に第1趾(親指)や第5趾(小指)の側面にできやすいタイプです。狭い靴による圧迫が主な原因となります。
掌胼胝(しょうべんち) 手のひらにできる胼胝で、職業性のものが多く見られます。工具を使う職人や楽器演奏者、スポーツ選手などに頻発します。
指胼胝(しべんち) 指先や指の関節部分にできる胼胝です。ペンだこが代表的な例ですが、楽器演奏や手作業による継続的な刺激が原因となります。
形状による分類
びまん性胼胝 広範囲に渡って角質が厚くなるタイプで、境界が不明瞭なのが特徴です。慢性的な刺激により徐々に範囲が拡大していきます。
限局性胼胝 特定の小さな範囲に集中して角質が厚くなるタイプです。境界が比較的明瞭で、鶏眼との鑑別が重要になる場合があります。
胼胝の進行段階と重症度
胼胝は一朝一夕にできるものではなく、段階的に進行していきます。各段階を理解することで、早期発見・早期治療につなげることができます。
第1段階:初期段階
皮膚がわずかに厚くなり始める段階です。見た目にはほとんど変化がなく、触ってもわずかな硬さを感じる程度です。この段階では適切な靴選びや刺激の軽減により、自然に改善することが多いです。
第2段階:進行段階
角質の肥厚が明確になり、黄白色の硬い皮膚が形成される段階です。範囲も徐々に拡大し、触ると明らかな硬さを感じるようになります。この段階では医療機関での治療を検討することをお勧めします。
第3段階:完成段階
角質が相当厚くなり、表面がごわごわした状態になります。色調も黄褐色から褐色に変化し、周囲の正常な皮膚との境界が明瞭になります。
第4段階:合併症段階
胼胝が非常に厚くなり、亀裂や出血を伴う場合があります。特に糖尿病患者では感染のリスクが高まるため、緊急の医療対応が必要となる段階です。
胼胝の効果的な予防方法
胼胝は予防可能な疾患です。日常生活の中で適切な対策を講じることで、胼胝の発症を大幅に減らすことができます。
適切な靴選びのポイント
サイズの確認 足の長さだけでなく、幅や甲の高さも考慮した靴選びが重要です。足のサイズは一日の中でも変動するため、夕方の足がむくんだ状態でフィッティングすることをお勧めします。
素材の選択 革靴の場合は天然皮革、スニーカーの場合は通気性の良いメッシュ素材など、足にフィットしやすく蒸れにくい素材を選びましょう。
ヒールの高さ ハイヒールを避け、できるだけヒールの低い靴を選ぶことが胼胝予防には効果的です。どうしてもヒールの高い靴を履く必要がある場合は、着用時間を短くし、休憩時間には楽な靴に履き替えることが重要です。
足のケア方法
毎日の足の観察 入浴時に足の状態をチェックし、皮膚の変化や硬くなっている部位がないかを確認しましょう。早期発見により軽症のうちに対処することが可能です。
適切な保湿ケア 入浴後にはクリームやローションで足の保湿を行い、皮膚の柔軟性を維持しましょう。特に踵や足裏は乾燥しやすいため、重点的なケアが必要です。
爪の適切な手入れ 爪の切りすぎや深爪は足指への負荷を増加させ、胼胝形成の原因となる場合があります。爪は直線的にカットし、角を軽く丸めるスクエアオフという方法が推奨されます。
職業・活動別の胼胝リスクと対策
高リスク職業と対策
立ち仕事(販売員・調理師・美容師など) 長時間の立位により足底に持続的な圧力がかかり、胼胝ができやすくなります。クッション性の高いインソールの使用や、定期的な足の休息、適切な靴の選択が重要です。
肉体労働者(建設作業員・工場勤務など) 重い物を持ったり、不安定な足場で作業することが多く、足に不均等な負荷がかかりやすくなります。安全靴の選択と、作業後の足のケアが欠かせません。
スポーツ選手・愛好者 ランニング、テニス、バスケットボールなど、足に強い衝撃や摩擦が加わるスポーツでは胼胝ができやすくなります。スポーツ専用のシューズ着用と、運動前後のストレッチが予防に効果的です。
音楽家・芸術家 楽器演奏者は指に、画家や彫刻家は手に胼胝ができやすい傾向があります。演奏や制作時の姿勢に注意し、適度な休息を取ることが大切です。
生活習慣による胼胝リスク
歩き方の癖 内股歩きや外股歩き、前傾姿勢での歩行は足の特定部位に負荷を集中させ、胼胝の原因となります。正しい歩行姿勢を意識し、必要に応じて歩行指導を受けることを検討しましょう。
体重の変化 急激な体重増加は足への負荷を増大させ、胼胝のリスクを高めます。適切な体重管理と、体重変化に応じた靴のサイズ調整が重要です。
胼胝の詳しい治療選択肢
保存的治療
角質軟化剤の使用 尿素配合クリームやサリチル酸系軟膏により、硬くなった角質を柔らかくする治療法です。毎日継続して使用することで、角質を徐々に正常な状態に近づけていきます。
機械的除去 医療用のハサミやメスを用いて、厚くなった角質を物理的に除去する方法です。即効性があり、一回の治療で大幅な改善が期待できますが、技術が必要なため医療機関での実施が推奨されます。
フットケア用品の活用 胼胝パッド、クッション材、インソールなどを使用して患部への刺激を軽減する方法です。根本的な治療ではありませんが、症状の悪化を防ぎ、治療効果を高める補助的な役割を果たします。
専門的治療
医療用フットケア 足専門の医療スタッフによる専門的なケアです。角質の状態に応じた適切な除去技術と、再発防止のための総合的なアドバイスを受けることができます。
装具療法 足の形状や歩行パターンに合わせてカスタマイズされたインソールやパッドを使用し、圧力分散を図る治療法です。根本的な原因解決に向けた長期的なアプローチが可能です。
胼胝と関連する足のトラブル
胼胝は他の足のトラブルと密接に関連しており、複合的な問題として捉える必要があります。
外反母趾との関係
外反母趾により足の構造が変化すると、体重のかかり方が変わり、特定部位に胼胝ができやすくなります。外反母趾の治療と並行した胼胝ケアが重要です。
扁平足・ハイアーチとの関係
足のアーチ構造の異常は、歩行時の圧力分散に影響を与え、胼胝形成のリスクを高めます。アーチサポート付きのインソール使用が効果的です。
巻き爪・陥入爪との合併
爪のトラブルにより歩行パターンが変わると、二次的に胼胝が形成される場合があります。爪の治療と足のケアを総合的に行う必要があります。
胼胝の自宅でのセルフケア方法
医療機関での治療と併用して行う自宅でのケア方法をご紹介します。ただし、糖尿病などの基礎疾患がある方は、セルフケアの前に必ず医師にご相談ください。
基本的なケア手順
1. 足浴による角質軟化 38-40度程度のぬるま湯に足を10-15分間浸け、角質を柔らかくします。この際、塩やエプソムソルトを加えると軟化効果が高まります。
2. 軽石やフットファイルでの除去 足浴後の柔らかくなった状態で、軽石やフットファイルを使って優しく角質を除去します。強くこすりすぎると逆に刺激となり、胼胝が悪化する可能性があるため注意が必要です。
3. 保湿ケア ケア後は尿素配合クリームなどで十分に保湿し、皮膚の柔軟性を維持します。特に就寝前の保湿ケアは効果的です。
4. 保護対策 胼胝用パッドやクッション材を使用して、日中の刺激を軽減します。粘着力が強すぎるものは皮膚トラブルの原因となるため、肌に優しい素材を選択しましょう。
注意すべきセルフケアのNG行為
カッターやカミソリでの自己処理 角質をカッターやカミソリで削ることは、感染や出血のリスクが高く、絶対に避けるべきです。深く削りすぎた場合、傷が治る過程でより厚い角質が形成される可能性もあります。
市販の角質除去剤の過度な使用 サリチル酸配合の市販薬は効果的ですが、使用方法を誤ると化学熱傷を起こす可能性があります。使用前には必ず説明書をよく読み、使用頻度や時間を守りましょう。
胼胝ができやすい生活環境と対策
住環境による影響
床材と胼胝の関係 硬いフローリングや石材の床で裸足で過ごすことが多い場合、足底への刺激が増加し胼胝のリスクが高まります。クッション性のあるスリッパの着用や、部分的にマットを敷くことが効果的です。
階段の多い住環境 階段の昇降が多い住環境では、つま先や踵への負荷が増加します。手すりを活用した正しい昇降方法を身につけ、クッション性の高い履物を選択することが重要です。
季節による胼胝の変化
夏季の注意点 サンダルやミュールなど開放的な履物を使用する機会が増える夏季は、足指の側面や甲に胼胝ができやすくなります。ストラップの調整や、足にフィットするサンダル選びが予防のポイントです。
冬季の注意点 ブーツなど密閉性の高い履物を長時間着用することで、足の蒸れや圧迫により胼胝が悪化する可能性があります。定期的な換気と、吸湿性の良い靴下の使用が効果的です。
胼胝治療における最新アプローチ
レーザー治療
近年注目されている治療法で、炭酸ガスレーザーを用いて胼胝を除去する方法です。従来のメスでの除去に比べて出血が少なく、治癒期間の短縮が期待できます。ただし、全ての胼胝に適用できるわけではなく、医師による適応の判断が重要です。
液体窒素療法
超低温の液体窒素を用いて胼胝組織を凍結破壊する治療法です。特に厚い胼胝や従来の治療で効果が得られない場合に選択されることがあります。
プラズマ治療
プラズマエネルギーを利用した新しい治療アプローチです。組織の再生促進効果があり、治療後の回復を早める可能性があると研究が進められています。
胼胝の合併症とリスク管理
感染症のリスク
胼胝そのものは無害ですが、亀裂が生じた場合には細菌感染のリスクがあります。特に免疫力の低下した状態や、糖尿病患者では重篤な感染症に発展する可能性があるため注意が必要です。
感染症の兆候
- 胼胝周囲の発赤、腫脹
- 熱感や拍動性の痛み
- 膿の排出
- 発熱や全身倦怠感
これらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。
糖尿病患者における特別な注意
糖尿病患者では末梢神経障害により足の感覚が鈍くなることがあり、胼胝の進行に気づきにくくなります。また、血流障害により傷の治りが悪く、感染のリスクも高くなります。
糖尿病患者の胼胝管理ポイント
- 毎日の足の観察を習慣化
- 定期的な医療機関でのフットチェック
- 血糖値の適切な管理
- 専門医による継続的な治療
胼胝治療後のアフターケア
治療が成功しても、原因が除去されていなければ胼胝は再発します。治療後の適切なアフターケアが長期的な成功の鍵となります。
治療後の経過観察
治療直後(1週間以内) 治療部位の清潔保持と適切な保護が重要です。医師の指示に従い、処方された軟膏の使用や、ガーゼでの保護を行います。
回復期(1週間〜1ヶ月) 新しい皮膚が形成される期間です。過度な刺激を避け、柔らかい靴下や適切な履物を選択します。
安定期(1ヶ月以降) 正常な皮膚が回復した状態です。再発防止のために、原因となった生活習慣の改善を継続し、定期的なセルフチェックを行います。
再発防止戦略
生活環境の見直し 胼胝の原因となった環境要因を特定し、可能な限り改善します。職業的な要因で完全な除去が困難な場合は、保護具の使用や作業方法の工夫により刺激を軽減します。
定期的な専門チェック 3-6ヶ月に一度程度、医療機関でのフットチェックを受けることで、早期の再発発見と対処が可能になります。
胼胝に効果的な運動とストレッチ
足の筋力強化と柔軟性向上は、胼胝の予防と再発防止に重要な役割を果たします。
足指の筋力強化運動
タオルギャザー 床に敷いたタオルを足指でつかんで手前に引き寄せる運動です。足指の筋力強化により、正しい歩行パターンの維持に役立ちます。
足指じゃんけん 足指でグー、チョキ、パーを作る運動です。足指の可動域改善と筋力強化に効果があります。
足底筋膜のストレッチ
カーフレイズ つま先立ちの状態を5-10秒間保持し、ゆっくりと踵を下ろす運動です。ふくらはぎの筋力強化と足底筋膜の柔軟性向上に効果があります。
足底筋膜ストレッチ 座った状態で足を反対の膝に乗せ、手で足指を反らせて足底筋膜を伸ばします。朝晩に行うことで足底の柔軟性を維持できます。
胼胝と栄養・食生活
皮膚の健康維持には適切な栄養摂取が不可欠です。胼胝の予防と治療においても、栄養面からのアプローチが効果的です。
皮膚の健康に重要な栄養素
ビタミンA 皮膚の新陳代謝を促進し、角質の正常な形成をサポートします。緑黄色野菜、レバー、卵黄などに豊富に含まれています。
ビタミンE 抗酸化作用により皮膚の老化を防ぎ、血行を促進します。ナッツ類、植物油、魚介類に多く含まれています。
亜鉛 皮膚の修復と再生に必要なミネラルです。牡蠣、赤身肉、豆類などから摂取できます。
オメガ3脂肪酸 炎症を抑制し、皮膚のバリア機能を向上させます。青魚、えごま油、くるみなどに含まれています。
水分摂取の重要性
適切な水分摂取は皮膚の潤いを保ち、角質の柔軟性維持に重要です。一日1.5-2リットルの水分摂取を目安とし、アルコールやカフェインの過度な摂取は避けましょう。
胼胝治療における心理的側面
慢性的な胼胝は、見た目の変化や履物の制限により、患者の生活の質(QOL)に影響を与える場合があります。
見た目への懸念
特に女性では、足の見た目を気にして素足になることに抵抗を感じる場合があります。適切な治療により改善可能であることを理解し、早期の治療開始が重要です。
活動制限による影響
胼胝による不快感や痛みにより、スポーツや趣味活動を制限してしまう場合があります。治療により活動レベルの回復が可能であることを認識し、積極的な治療を検討しましょう。
胼胝治療に関する詳細Q&A
Q: 胼胝は自然に治ることはありますか?
A: 胼胝の原因となっている刺激が完全に除去された場合、軽度の胼胝は自然に改善する可能性があります。しかし、多くの場合、日常生活の中で完全に刺激を避けることは困難なため、医療的な治療が必要となります。また、厚く形成された胼胝は自然治癒が期待できないため、専門的な除去が推奨されます。
Q: 胼胝の治療に痛みはありますか?
A: 胼胝自体が無感覚な角質組織のため、適切に行われる治療では通常痛みを感じることはありません。ただし、胼胝周囲の正常な皮膚に処置が及ぶ場合や、深く除去しすぎた場合には軽度の痛みを感じる可能性があります。当院では患者様の負担を最小限に抑えるよう、丁寧な治療を心がけています。
Q: 胼胝の治療後、どのくらいで元の生活に戻れますか?
A: 治療の程度にもよりますが、軽度の角質除去であれば当日から通常の生活が可能です。広範囲の除去を行った場合でも、通常は2-3日程度で日常生活への復帰が可能です。激しいスポーツや重労働については、医師の指示に従って段階的に復帰していただきます。
Q: 胼胝は遺伝しますか?
A: 胼胝そのものが遺伝することはありません。しかし、足の形状や歩行パターン、皮膚の特性などの遺伝的要因により、胼胝ができやすい体質というものは存在します。家族に胼胝ができやすい方がいる場合は、予防的なケアを早めに始めることをお勧めします。
Q: 妊娠中でも胼胝の治療は受けられますか?
A: 妊娠中でも胼胝の治療は可能ですが、使用する薬剤や治療方法に制限がある場合があります。妊娠中は体重増加や足のむくみにより胼胝が悪化しやすいため、適切な医学的管理のもとで治療を受けることが重要です。治療前には必ず妊娠していることをお伝えください。
Q: 高齢者の胼胝治療で注意すべき点はありますか?
A: 高齢者では皮膚の再生能力が低下し、感染に対する抵抗力も弱くなっているため、より慎重な治療が必要です。また、視力や手の機能低下により自己管理が困難な場合があるため、家族のサポートや定期的な医療機関でのケアが重要になります。
Q: スポーツ選手の胼胝は治療すべきですか?
A: スポーツ選手の胼胝は、競技特性上完全に予防することが困難な場合があります。適度な胼胝は足を保護する役割も果たしますが、過度に厚くなった場合は運動能力の低下や他の足のトラブルの原因となるため、適切な管理が必要です。競技スケジュールを考慮した治療計画の立案が重要です。
胼胝治療の費用と保険適用
保険診療での治療
胼胝の治療は基本的に保険診療の対象となります。初診料、処置料、外用薬の処方などが保険適用となり、患者様の自己負担は最小限に抑えられます。
自費診療での選択肢
より高度な治療や美容的な改善を目的とした場合、自費診療での治療選択肢もあります。最新のレーザー治療や、特殊な角質ケア製品の使用などが該当します。
胼胝予防のためのライフスタイル改善
日常生活の工夫
歩行習慣の改善 正しい歩行姿勢を身につけることで、足への負荷を分散し、胼胝の予防につながります。背筋を伸ばし、踵から着地してつま先で蹴り出す歩行を心がけましょう。
体重管理 適正体重の維持により足への負荷を軽減できます。急激な体重変化は足の形状にも影響を与えるため、段階的な体重管理が重要です。
足の筋力維持 加齢とともに足の筋力は低下し、歩行パターンの変化により胼胝のリスクが高まります。定期的な運動により足の筋力を維持することが予防につながります。
職場環境の改善
立ち仕事での対策 疲労軽減マットの使用、定期的な足の休息、適切な作業靴の選択により、職業性胼胝のリスクを軽減できます。
デスクワークでの注意点 長時間の座位により足の血行が悪くなると、皮膚の代謝が低下し胼胝ができやすくなる場合があります。定期的な立位休憩や足首の運動が効果的です。
胼胝治療の効果判定と治療継続の目安
治療効果の評価方法
胼胝治療の効果は、角質の厚さの変化、範囲の縮小、皮膚の色調変化、患者様の主観的な改善感により評価されます。写真による記録を併用することで、客観的な効果判定が可能になります。
治療継続の判断基準
治療効果が十分でない場合や、治療後の再発が早い場合は、治療方法の変更や原因の再検討が必要です。患者様の生活スタイルや治療への取り組み状況も考慮し、個別の治療計画を調整します。
まとめ:胼胝治療の総合的アプローチ
胼胝は決して単純な皮膚の問題ではなく、患者様の生活環境、職業、体質、基礎疾患など多様な要因が関連する複合的な疾患です。そのため、治療においても単一のアプローチではなく、総合的な視点からの管理が重要となります。
当院では、患者様一人ひとりの状況を詳しく伺い、最適な治療プランを提案いたします。胼胝でお悩みの方は、症状の軽重にかかわらず、お気軽にご相談ください。早期の適切な治療により、快適な日常生活を取り戻すことができます。
また、治療後も継続的なケアと定期的なチェックにより、再発予防に努めてまいります。足の健康を通じて、患者様のQOL向上に貢献できるよう、スタッフ一同全力でサポートいたします。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務