はじめに
鼠径部(そけいぶ)にしこりやできものを見つけて、不安を感じていませんか?「これは何だろう」「放置しても大丈夫なのか」と心配になる方も多いでしょう。鼠径部は足の付け根にあたる部分で、デリケートな場所であるため、人に相談しづらいという悩みもあるかもしれません。
鼠径部にできる「しこり」の原因はいくつかありますが、その中でも比較的多く見られるのが「粉瘤(ふんりゅう)」です。粉瘤は医学用語で「アテローム」や「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」とも呼ばれ、皮膚の良性腫瘍の一種です。
本記事では、鼠径部にできる粉瘤について、その原因や症状、診断方法、治療法まで詳しく解説します。アイシークリニック上野院での実際の治療経験に基づき、患者様からよくいただく質問にもお答えしていきます。

粉瘤(アテローム)とは
粉瘤の基本的な特徴
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に本来は剥がれ落ちるはずの角質(垢)や皮脂が溜まってできる良性の腫瘍です。専門的には「表皮嚢腫」と呼ばれます。
粉瘤の特徴は以下の通りです:
- 良性腫瘍: がんではありません
- 自然治癒しない: 自然に消えることはほとんどありません
- 徐々に大きくなる: 時間とともにゆっくりと成長することが多い
- 全身どこにでもできる: 特に顔、首、背中、耳の裏などに多いですが、鼠径部にもできます
- 再発の可能性: 袋(嚢腫壁)を完全に取り除かないと再発することがあります
粉瘤ができるメカニズム
通常、皮膚の表面にある角質は自然に剥がれ落ちていきます。しかし、何らかの理由で皮膚の一部が内側に入り込んでしまい、袋状の構造ができることがあります。この袋の中に角質や皮脂が溜まり続けることで、徐々に大きくなっていくのが粉瘤です。
袋の内側は表皮と同じ構造をしているため、角質を作り続けます。出口がないため、作られた角質は袋の中に溜まる一方となり、粉瘤は次第に大きくなっていきます。
粉瘤と似た他の疾患
鼠径部にできる「しこり」には、粉瘤以外にも以下のような疾患があります:
リンパ節の腫れ: 感染症や炎症によってリンパ節が腫れることがあります。風邪や感染症が治ると小さくなることが多いです。
脂肪腫: 脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍です。粉瘤よりも柔らかく、弾力があるのが特徴です。
鼠径ヘルニア: 腸の一部が鼠径部から飛び出す状態で、立った時や力を入れた時に膨らみます。
毛巣洞(もうそうどう): 毛が皮膚に埋没して炎症を起こす状態で、お尻の割れ目付近に多く見られます。
悪性腫瘍: まれですが、鼠径部に悪性のしこりができることもあります。
これらの鑑別診断が重要であり、自己判断せず医療機関を受診することをお勧めします。
鼠径部の解剖と特徴
鼠径部とはどこか
鼠径部は、下腹部と太ももの境目にあたる部分で、いわゆる「足の付け根」の部分を指します。左右両側にあり、V字型のラインを形成しています。
鼠径部の特徴
鼠径部には以下のような特徴があります:
皮膚が薄い: 他の部位と比べて皮膚が比較的薄いです。
リンパ節が多い: 下肢からのリンパ液が集まる重要なリンパ節があります。
摩擦が多い: 歩行時や運動時に常に動き、衣服との摩擦も多い部位です。
湿気がこもりやすい: 通気性が悪く、汗をかきやすい部位です。
デリケートゾーンに近い: プライバシーに関わる部位であるため、受診をためらう方も多いです。
これらの特徴から、鼠径部は粉瘤ができやすく、また炎症を起こしやすい環境にあると言えます。
鼠径部に粉瘤ができる原因
主な原因
鼠径部に粉瘤ができる明確な原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています:
外傷や刺激: 鼠径部は歩行時の摩擦や下着の締め付けなど、常に刺激を受けています。この刺激によって皮膚の一部が内側に入り込み、粉瘤の袋ができる可能性があります。
毛穴の閉塞: 毛穴が詰まることで、皮脂や角質の出口がふさがれ、袋状の構造ができることがあります。
炎症後の変化: ニキビや毛嚢炎などの炎症後に、粉瘤が形成されることがあります。
体質的要因: 粉瘤ができやすい体質の方もいらっしゃいます。家族内で複数の方に粉瘤がある場合もあります。
鼠径部特有のリスク要因
鼠径部は以下のような理由で粉瘤ができやすい、または悪化しやすい環境にあります:
摩擦と圧迫: 歩行時の大腿部の動き、座位での圧迫、下着やズボンとの摩擦など、常に刺激を受けています。
湿潤環境: 汗をかきやすく、通気性が悪いため、細菌が繁殖しやすい環境です。これにより、粉瘤が炎症を起こす(炎症性粉瘤)リスクが高まります。
毛が密集: 鼠径部は体毛が密集している部位であり、毛穴のトラブルが起こりやすいです。
脱毛処理: カミソリや除毛クリームでの処理によって皮膚にダメージを与え、粉瘤形成のきっかけとなることがあります。
粉瘤ができやすい人の特徴
以下のような方は粉瘤ができやすい傾向があります:
- 皮脂の分泌が多い方
- ニキビができやすい体質の方
- 過去に粉瘤ができたことがある方
- 家族に粉瘤が多い方
- 肥満傾向の方(摩擦が増えるため)
ただし、これらに当てはまらなくても粉瘤はできることがあり、誰にでも起こりうる一般的な疾患です。
鼠径部粉瘤の症状と特徴
初期症状
粉瘤の初期段階では、以下のような症状が見られます:
小さなしこり: 数ミリから1センチ程度の皮下のしこりとして触れます。
痛みがない: 初期の段階では通常、痛みはありません。
皮膚と同じ色: 表面の皮膚は正常な色をしていることが多いです。
黒い点(開口部): 粉瘤の中心部に小さな黒い点が見えることがあります。これは「へそ」と呼ばれる粉瘤特有の開口部です。
可動性: 皮膚とは動きますが、下の組織には固定されていません。
進行した場合の症状
粉瘤が大きくなったり、炎症を起こしたりすると、以下のような症状が現れます:
しこりの増大: 数センチから、時には10センチ以上になることもあります。
圧迫感や違和感: 大きくなると、歩行時や座位で圧迫感を感じるようになります。
悪臭を伴う内容物: 開口部から白いドロドロした内容物が出ることがあり、独特の不快な臭いがします。
炎症性粉瘤(感染した粉瘤)の症状
粉瘤が細菌感染を起こすと、以下のような症状が急激に現れます:
強い痛み: ズキズキとした拍動性の痛みが生じます。
腫れと発赤: 粉瘤の周囲が赤く腫れ上がります。
熱感: 触ると熱く感じます。
膿の排出: 開口部や皮膚が破れたところから膿が出ることがあります。
発熱: 炎症が強い場合、全身的な発熱を伴うこともあります。
リンパ節の腫れ: 鼠径部のリンパ節がさらに腫れることがあります。
炎症性粉瘤は痛みが強く、日常生活に支障をきたすため、早急な治療が必要です。
鼠径部粉瘤特有の問題点
鼠径部の粉瘤には、他の部位とは異なる特有の問題があります:
炎症を起こしやすい: 湿潤環境と摩擦により、細菌感染のリスクが高いです。
生活の質への影響: 歩行時の痛みや違和感、座位での不快感など、日常生活に直接影響します。
再発しやすい: 摩擦や刺激が継続的にあるため、手術後も再発のリスクがやや高い部位です。
心理的ストレス: デリケートな部位であるため、受診をためらったり、精神的なストレスを感じたりする方が多いです。
診断方法
問診と視診
医師は以下のような点について質問し、確認します:
- いつからしこりがあるか
- 大きさの変化はあるか
- 痛みや赤みはあるか
- 過去に同じような症状があったか
- 最近、外傷や炎症があったか
視診では、しこりの大きさ、色、表面の状態、開口部の有無などを確認します。
触診
触診では以下の点を確認します:
- しこりの大きさと形状
- 硬さ(弾力性や固さ)
- 可動性(皮膚や下の組織との関係)
- 圧痛の有無
- 波動感(液体が入っている感覚)
粉瘤の場合、皮下に境界明瞭な球状のしこりとして触れ、皮膚とともに動きますが、下の筋肉層とは独立して動くという特徴があります。
画像検査
必要に応じて、以下のような画像検査を行うことがあります:
超音波(エコー)検査: 粉瘤の大きさ、深さ、内部の状態を確認できます。痛みがなく、簡便に行える検査です。リンパ節腫大や血管との位置関係も評価できます。
CT検査やMRI検査: 大きな粉瘤や、深部に及ぶ場合、または悪性腫瘍との鑑別が必要な場合に行われることがあります。
鑑別診断
鼠径部のしこりは粉瘤以外にもさまざまな原因があるため、以下のような疾患との鑑別が重要です:
鼠径リンパ節腫大: 感染症、炎症、悪性腫瘍などで腫れることがあります。
鼠径ヘルニア: 腹部の内容物が鼠径部に脱出した状態です。
脂肪腫: 脂肪組織の良性腫瘍で、粉瘤より柔らかいのが特徴です。
皮様嚢腫: 先天性の嚢胞で、粉瘤に似ていますが内容物が異なります。
毛巣洞: 毛が皮膚に埋没して起こる疾患です。
悪性腫瘍: まれですが、皮膚がんやリンパ腫などの可能性も考慮する必要があります。
経験豊富な医師であれば、問診と視触診である程度の診断は可能ですが、確定診断のためには超音波検査や、摘出後の病理組織検査が必要な場合もあります。
治療方法
保存的治療(手術以外の治療)
経過観察
小さく、症状のない粉瘤の場合、すぐに治療せず経過を見ることもあります。ただし、粉瘤は自然に消失することはほとんどなく、徐々に大きくなる可能性があるため、定期的なチェックが必要です。
抗生物質による治療
炎症を起こしている場合(炎症性粉瘤)、まず抗生物質で炎症を抑える治療を行います。内服薬や外用薬を使用し、炎症が落ち着くのを待ちます。
ただし、抗生物質治療は一時的に炎症を抑えるだけで、粉瘤そのものを治すことはできません。炎症が治まった後、根治的な手術を検討します。
穿刺・排膿
炎症が強く膿が溜まっている場合、皮膚を小さく切開して膿を出す処置を行うことがあります。これにより痛みは軽減しますが、袋が残っているため再発の可能性が高く、根治治療ではありません。
根治的治療(手術)
粉瘤を完全に治すためには、袋(嚢腫壁)ごと摘出する手術が必要です。
小切開摘出術
最も一般的な粉瘤の手術方法です:
方法: 粉瘤の直上の皮膚を切開し、袋ごと摘出します。
メリット:
- 確実に袋を取り除ける
- 再発率が低い
- 病理検査で確定診断ができる
デメリット:
- 傷跡が残る(ただし、縫合技術により最小限にできます)
- 術後数日は安静が必要な場合がある
くり抜き法(へそ抜き法)
粉瘤の開口部(へそ)から特殊な器具で内容物と袋を取り出す方法です:
方法: 数ミリの穴を開けて、内容物を絞り出した後、袋を摘出します。
メリット:
- 傷跡が小さい
- 治りが早い
デメリット:
- 袋が完全に取りきれない場合がある
- 炎症を起こしている場合や大きな粉瘤には適さない
炎症中の粉瘤の手術
炎症を起こしている粉瘤に対しては、従来は炎症が治まるまで待ってから手術を行うのが一般的でした。しかし、最近では炎症があっても手術を行う「炎症期手術」も行われるようになってきました。
炎症期手術のメリット:
- 1回の手術で治療が完結する
- 再燃を繰り返すリスクがない
- 早期の問題解決
炎症期手術のデメリット:
- 通常より傷が大きくなる可能性がある
- 術後の腫れや痛みが強い場合がある
どちらの方法を選択するかは、炎症の程度、患者さんの希望、医師の経験などによって判断されます。
鼠径部粉瘤手術の特徴
鼠径部の粉瘤手術には、他の部位とは異なる配慮が必要です:
皮膚の余裕: 鼠径部は比較的皮膚に余裕があるため、切除後の縫合がしやすい部位です。
しわに沿った切開: 鼠径部の自然なしわに沿って切開することで、傷跡を目立ちにくくできます。
血管と神経への注意: 鼠径部には重要な血管や神経が走っているため、慎重な操作が必要です。
術後の管理: 歩行時の摩擦や座位での圧迫を避けるため、術後の生活指導が重要です。
再発予防: 摩擦が多い部位であるため、袋を完全に摘出することが特に重要です。
手術の流れ
術前の準備
診察と説明: 手術の方法、リスク、術後の経過などについて詳しく説明を受けます。
同意書の記入: 手術内容を理解した上で、同意書に署名します。
血液検査: 必要に応じて、血液検査や感染症の検査を行います。
内服薬の確認: 血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は、医師に相談が必要です。
剃毛: 鼠径部の場合、手術部位周辺の毛を剃ることがあります。
手術当日
消毒: 手術部位を消毒します。
局所麻酔: 手術部位に局所麻酔を注射します。針を刺す時にチクッとした痛みがありますが、麻酔が効けば手術中の痛みはほとんどありません。
切開と摘出: 麻酔が効いたことを確認してから、皮膚を切開し、粉瘤の袋を周囲の組織から剥離して摘出します。通常10〜30分程度で終了します。
止血: 出血がないことを確認し、必要に応じて止血処置を行います。
縫合: 皮膚の下の組織を溶ける糸で縫合し、皮膚は細い糸で丁寧に縫合します。
ガーゼ固定: 傷口をガーゼで保護し、必要に応じて圧迫固定します。
手術時間と麻酔
粉瘤の手術は通常、局所麻酔で行われます。手術時間は粉瘤の大きさや炎症の有無によりますが、多くの場合15〜30分程度で終了します。
大きな粉瘤や、深部に及ぶ場合は、手術時間が長くなることもあります。
術後の処置
手術後は以下のような処置を行います:
安静: 手術直後は少し休んでから帰宅していただきます。
痛み止めの処方: 術後の痛みに対して、痛み止めを処方します。
抗生物質の処方: 感染予防のため、抗生物質を処方することがあります。
ガーゼ交換の指導: 自宅でのガーゼ交換の方法を説明します。
次回受診日の決定: 通常、翌日または数日後に経過観察のため受診していただきます。
術後のケアと経過
術後の注意点
安静: 手術当日は激しい運動や長時間の歩行は避けましょう。
入浴: 手術当日のシャワーや入浴は避け、翌日以降、医師の指示に従ってください。傷口を濡らさないように注意が必要です。
圧迫を避ける: きつい下着やズボンは避け、傷口への圧迫を最小限にします。
清潔を保つ: 傷口を清潔に保ち、ガーゼ交換を指示通りに行います。
飲酒: 手術当日の飲酒は避けてください。
激しい運動: 抜糸まで激しい運動は控えましょう。
術後の経過
当日〜翌日: 麻酔が切れると多少の痛みがありますが、痛み止めでコントロール可能です。
2〜3日後: 腫れや痛みは徐々に軽減します。
1週間後: 多くの場合、抜糸を行います(部位や縫合方法によって異なります)。
2週間後: 傷跡は赤みがありますが、徐々に目立たなくなっていきます。
1〜3ヶ月後: 傷跡が落ち着き、ほとんど目立たなくなります。
術後の合併症
まれですが、以下のような合併症が起こる可能性があります:
感染: 傷口が化膿することがあります。発赤、腫れ、痛みの増強、発熱などの症状があれば、すぐに受診してください。
血腫: 傷の中に血液が溜まることがあります。腫れが強い場合は、血液を抜く処置が必要です。
創離開: 縫合部が開いてしまうことがあります。過度の運動や圧迫を避けることが予防につながります。
肥厚性瘢痕・ケロイド: 傷跡が盛り上がることがあります。体質的な要因が大きいですが、適切なケアで最小限に抑えられます。
再発: 袋が完全に取りきれなかった場合、再発することがあります。
傷跡のケア
傷跡をきれいに治すためのポイント:
紫外線対策: 抜糸後は傷跡を紫外線から守りましょう。色素沈着の予防になります。
保湿: 傷跡の保湿を心がけましょう。
テープ固定: 医師の指示がある場合、テープで傷跡を固定することで、きれいに治りやすくなります。
瘢痕ケアの軟膏: 必要に応じて、傷跡を目立たなくする軟膏を使用します。
再発予防と日常生活での注意点
再発を防ぐために
粉瘤の手術後の再発率は、袋を完全に摘出できれば非常に低いですが、以下の点に注意することでさらに再発リスクを減らせます:
完全摘出の確認: 手術時に袋を完全に取り除くことが最も重要です。経験豊富な医師による手術を受けることをお勧めします。
病理検査: 摘出した組織を病理検査に出し、粉瘤であることと、袋が完全に摘出されているかを確認します。
定期的な観察: 術後しばらくは、手術部位を定期的に観察し、異常がないか確認しましょう。
新たな粉瘤を予防するために
粉瘤の発生を完全に防ぐことは難しいですが、以下の点に注意することで、リスクを減らすことができます:
皮膚への刺激を減らす: きつい下着や衣服を避け、皮膚への摩擦を最小限にします。
清潔を保つ: 鼠径部を清潔に保ち、汗をかいたらこまめに拭き取りましょう。
適切な脱毛方法: カミソリでの処理は皮膚を傷つけやすいため、慎重に行うか、他の方法を検討しましょう。
保湿: 皮膚を適度に保湿し、バリア機能を保ちます。
体重管理: 肥満は摩擦を増やす要因となるため、適正体重の維持が望ましいです。
しこりを見つけたら
鼠径部に新たなしこりを見つけたら、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。早期発見・早期治療により、以下のメリットがあります:
- 小さいうちに治療できるため、傷跡が小さくて済む
- 炎症を起こす前に治療できる
- 悪性疾患の早期発見につながる

よくある質問(FAQ)
A: 粉瘤自体は良性腫瘍なので、命に関わることはほとんどありません。しかし、以下の理由から早めの治療をお勧めします:
自然に消えることはほとんどない
徐々に大きくなる可能性が高い
大きくなると手術の傷跡も大きくなる
炎症を起こすと強い痛みを伴う
まれに悪性化することがある
特に鼠径部の粉瘤は炎症を起こしやすいため、早めの対処が望ましいです。
A: 局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みがありますが、一時的なものです。術後は多少の痛みがありますが、痛み止めでコントロール可能です。
A: 鼠径部は下着で隠れる部位であり、また自然なしわに沿って切開することで、傷跡は比較的目立ちにくくなります。時間とともに傷跡は薄くなっていきます。
Q4: 手術後、いつから普通の生活に戻れますか?
A: デスクワークなど軽作業であれば、翌日から可能です。ただし、激しい運動や長時間の歩行は、抜糸まで避けることをお勧めします。個人差や粉瘤の大きさによっても異なるため、医師の指示に従ってください。
Q5: 保険は使えますか?
A: 粉瘤の手術は保険適用です。費用は粉瘤の大きさや手術方法によって異なりますが、3割負担で数千円〜1万円程度が一般的です。
Q6: 再発することはありますか?
A: 袋を完全に摘出できれば、再発率は非常に低いです。ただし、袋の一部が残った場合や、新たに別の粉瘤ができる可能性はあります。
Q7: 自分で潰しても大丈夫ですか?
A: 絶対にやめてください。自分で潰すと:
- 細菌感染を起こす危険性が高い
- 袋が残るため再発する
- 傷跡が残りやすい
- 炎症が広がる可能性がある
必ず医療機関で適切な治療を受けましょう。
Q8: 粉瘤は遺伝しますか?
A: 粉瘤そのものが直接遺伝するわけではありませんが、粉瘤ができやすい体質は家族内で見られることがあります。
Q9: 悪性化することはありますか?
A: 非常にまれですが、長期間放置した粉瘤が悪性化することがあります。特に急速に大きくなる、硬くなる、周囲の組織と癒着するなどの変化があれば、早めに受診してください。
Q10: 妊娠中でも手術できますか?
A: 妊娠中でも局所麻酔での手術は可能ですが、時期や全身状態によって判断が必要です。炎症がなければ出産後に手術を延期することも検討します。必ず産婦人科医と相談の上、決定してください。
まとめ
鼠径部の粉瘤は、決して珍しい疾患ではありません。デリケートな部位であるため受診をためらう方も多いですが、早期に適切な治療を受けることで、以下のメリットがあります:
- 小さな傷で済む
- 炎症を起こす前に治療できる
- 日常生活への影響を最小限にできる
- 心理的な不安から解放される
粉瘤は自然治癒することはほとんどなく、放置すると徐々に大きくなったり、炎症を起こしたりする可能性があります。特に鼠径部は摩擦や湿気により炎症を起こしやすい部位です。
手術は局所麻酔で行われ、痛みは最小限に抑えられます。経験豊富な医師による適切な治療を受ければ、再発のリスクも低く、傷跡も目立ちにくくなります。
鼠径部にしこりを見つけたら、自己判断せず早めに医療機関を受診することをお勧めします。アイシークリニック上野院では、粉瘤の診断から治療まで、患者様一人ひとりに合わせた丁寧な医療を提供しています。
何か気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「皮膚良性腫瘍」 https://www.dermatol.or.jp/
- 日本形成外科学会「粉瘤(アテローム)について」 https://www.jsprs.or.jp/
- 厚生労働省「皮膚・皮下腫瘍に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/
- 日本外科学会「体表の良性腫瘍」 https://www.jssoc.or.jp/
- 国立がん研究センター「皮膚の良性腫瘍と悪性腫瘍の見分け方」 https://www.ncc.go.jp/
※本記事の内容は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務