頭にできる粉瘤(アテローム)の完全ガイド – 原因・症状・治療法

はじめに

頭を触ったときに、コリコリとしたしこりを見つけて不安になった経験はありませんか? シャンプーをしているときや髪をとかしているときに、頭皮の下に何か硬いものがあることに気づくことがあります。それは「粉瘤(ふんりゅう)」かもしれません。

粉瘤は皮膚の良性腫瘍の中で最も多く見られるもので、医学用語では「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」とも呼ばれています。特に頭部は粉瘤ができやすい部位の一つで、多くの方が一度は経験する可能性のある身近な皮膚トラブルです。

この記事では、頭にできる粉瘤について、その原因から症状、診断方法、治療法まで、わかりやすく詳しく解説していきます。

粉瘤とは何か

粉瘤の基本的な定義

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってできる良性の腫瘍です。本来であれば皮膚表面から剥がれ落ちるはずの角質が、皮膚の下に作られた袋の中に溜まり続けることで、徐々に大きくなっていきます。

粉瘤の特徴として、以下の点が挙げられます。

粉瘤の主な特徴

  • 皮膚の下に球状のしこりができる
  • 表面に黒い点(開口部)が見られることがある
  • 押すと白っぽいドロドロした内容物が出ることがある
  • 悪臭を伴うことがある
  • 炎症を起こすと赤く腫れて痛みを伴う
  • 自然に治癒することはほとんどない

粉瘤ができるメカニズム

粉瘤は、何らかの原因で皮膚の一部(表皮)が皮膚の内側に入り込み、袋状の構造を作ることから始まります。この袋の内側は表皮と同じ構造をしているため、通常の皮膚と同じように角質を作り続けます。

しかし、作られた角質は袋の外に出ることができず、袋の中に溜まり続けます。時間の経過とともに、この角質や皮脂などの老廃物が蓄積し、粉瘤は徐々に大きくなっていくのです。

粉瘤と似た症状との違い

頭にできるしこりは粉瘤だけではありません。以下のような症状と混同されることがあります。

脂肪腫との違い 脂肪腫は脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍です。粉瘤と比べて柔らかく、開口部がないのが特徴です。また、炎症を起こすことはほとんどありません。

リンパ節の腫れとの違い 感染症などによってリンパ節が腫れることがあります。リンパ節の腫れは通常、複数箇所に現れ、原因となる病気が治ると小さくなるのが特徴です。

毛包炎との違い 毛包炎は毛穴に細菌が感染して起こる炎症です。粉瘤よりも小さく、赤みや痛みを伴いますが、適切な治療で比較的短期間で治癒します。

頭部の粉瘤の特徴

なぜ頭にできやすいのか

頭皮は粉瘤ができやすい部位の一つです。その理由として、以下のような要因が考えられます。

頭皮の特性

  • 毛髪が密集しているため、毛穴が多い
  • 皮脂腺が発達しており、皮脂分泌が盛んである
  • 日常的に外傷を受けやすい(ブラッシング、かきむしりなど)
  • シャンプーやヘアケア製品による刺激を受けやすい

頭皮には毛穴が非常に多く存在し、それぞれの毛穴が粉瘤の発生ポイントになり得ます。また、頭皮は顔の皮膚の約2倍の皮脂を分泌すると言われており、この豊富な皮脂分泌も粉瘤の形成に関係していると考えられています。

頭部の粉瘤の好発部位

頭部の中でも、特に粉瘤ができやすい場所があります。

  • 頭頂部: 最も多く見られる部位
  • 後頭部: 枕で圧迫されやすい場所
  • 側頭部: 耳の上周辺
  • 生え際: 前髪の生え際付近

これらの部位は、日常的に摩擦や圧迫を受けやすく、また皮脂腺が多いという共通点があります。

頭部の粉瘤特有の問題

頭にできる粉瘤には、他の部位の粉瘤とは異なる特有の問題があります。

発見が遅れやすい 髪の毛に覆われているため、視覚的に確認しにくく、触れるまで気づかないことが多いです。そのため、発見されたときにはすでにある程度大きくなっていることもあります。

日常生活への影響

  • ヘアブラシやくしが当たって痛い
  • シャンプー時に違和感がある
  • 枕に当たって不快感や痛みを感じる
  • 帽子をかぶると圧迫される
  • 美容院でカットやパーマをする際に支障が出る

外観上の懸念 大きくなると頭の形が変わって見えたり、髪の毛の生え方に影響が出たりすることがあります。また、炎症を起こして赤く腫れると、髪の毛を通して目立つこともあります。

治療後の問題 手術で摘出した場合、髪の毛を部分的に剃る必要があることや、縫合した部分の髪の毛の生え方に影響が出る可能性があります。

粉瘤ができる原因

粉瘤がなぜできるのか、その根本的な原因は完全には解明されていません。しかし、これまでの研究から、いくつかの要因が関係していることがわかっています。

外傷による表皮の迷入

最も有力な原因の一つが、外傷によって表皮が皮膚の深部に入り込むことです。

頭皮は日常的に様々な刺激を受けています。

  • ヘアブラシやくしによる刺激
  • 強くかきむしる行為
  • 転倒や打撲などの外傷
  • ニキビや吹き出物をつぶす行為

これらの刺激によって、本来皮膚表面にあるべき表皮の一部が、皮膚の内側に押し込まれることがあります。この迷入した表皮が袋状の構造を作り、粉瘤の始まりとなるのです。

毛穴の閉塞

毛穴が何らかの理由で塞がれることも、粉瘤形成の一因と考えられています。

毛穴が詰まる原因

  • 過剰な皮脂分泌
  • 古い角質の蓄積
  • シャンプーやヘアケア製品の洗い残し
  • 汗や汚れの蓄積
  • ホルモンバランスの変化

毛穴が詰まると、本来排出されるべき皮脂や角質が行き場を失い、皮膚の内側に溜まり始めます。この状態が続くと、袋状の構造が形成され、粉瘤となる可能性があります。

遺伝的要因

粉瘤のできやすさには、遺伝的な要素も関係していると考えられています。家族に粉瘤ができやすい人がいる場合、自分も粉瘤ができやすい体質である可能性があります。

ただし、粉瘤そのものが遺伝するわけではなく、以下のような体質的特徴が遺伝すると考えられています。

  • 皮脂腺の発達度合い
  • 皮膚の構造的特徴
  • 毛穴の詰まりやすさ

その他の要因

体質的な要因

  • オイリー肌(脂性肌)
  • ニキビができやすい体質
  • 毛穴が大きい、目立ちやすい

生活習慣の影響

  • 不規則な生活
  • ストレス
  • 偏った食生活
  • 不適切なヘアケア

これらの要因が複合的に作用して、粉瘤が形成されると考えられています。

頭部の粉瘤の症状

粉瘤の症状は、炎症の有無によって大きく異なります。ここでは、炎症を起こしていない場合と、炎症を起こした場合に分けて説明します。

炎症を起こしていない粉瘤(非炎症性粉瘤)

初期症状

  • 頭皮の下に小さなしこりを触れる(数mm〜1cm程度)
  • 痛みはほとんどない
  • 皮膚の表面に変化は見られないことが多い
  • ゆっくりと成長する

進行した状態

  • しこりが大きくなる(数cm程度まで)
  • 皮膚の表面が盛り上がる
  • しこりの中央に黒い点(開口部)が見えることがある
  • 押すと白〜クリーム色のドロドロした内容物が出ることがある
  • 独特の悪臭を伴うことがある

非炎症性の粉瘤は通常、痛みや不快感が少ないため、長期間放置されることも少なくありません。しかし、徐々に大きくなり、日常生活に支障をきたすようになることもあります。

炎症を起こした粉瘤(炎症性粉瘤・感染性粉瘤)

粉瘤が細菌感染を起こすと、急激に症状が悪化します。これを「感染性粉瘤」または「炎症性粉瘤」と呼びます。

急性期の症状

  • 患部の急激な腫れ
  • 強い痛み(ズキズキとした拍動性の痛み)
  • 皮膚の発赤(赤く腫れる)
  • 熱感(触ると熱い)
  • 化膿して膿が溜まる
  • 発熱することもある

炎症が起こる原因

  • 粉瘤の内容物に細菌が感染
  • 無理に内容物を押し出そうとした
  • 粉瘤を強く圧迫した
  • 粉瘤が破れた
  • 免疫力の低下

炎症を起こした粉瘤は、早急な治療が必要です。放置すると、感染が周囲に広がったり、膿瘍(膿の塊)を形成したりする可能性があります。

粉瘤の大きさと成長速度

粉瘤の成長速度には個人差がありますが、一般的な傾向として以下のような特徴があります。

成長パターン

  • 初期: 数mm程度の小さなしこり
  • 数ヶ月〜数年: 徐々に大きくなり、1〜3cm程度に
  • 長期間放置: 5cm以上の大きさになることも

成長速度は非常にゆっくりで、年単位で徐々に大きくなることが多いです。ただし、炎症を起こすと急激に腫れることがあります。

日常生活での困りごと

頭部の粉瘤は、以下のような日常生活での困りごとを引き起こすことがあります。

身体的な不快感

  • シャンプーやブラッシング時の違和感
  • 枕に当たって眠りにくい
  • 帽子やヘルメットの着用時の圧迫感
  • 頭を触られるのが不快

精神的な負担

  • 見た目が気になる
  • 人に見られるのが恥ずかしい
  • 美容院に行きづらい
  • 悪性腫瘍ではないかと不安になる

社会生活への影響

  • 美容院で説明するのが憂鬱
  • スポーツ時のヘッドギアが使いにくい
  • 人前で頭を触る癖がついてしまう

これらの症状や困りごとは、粉瘤の大きさや場所、炎症の有無によって異なります。

診断方法

粉瘤の診断は、主に視診と触診によって行われます。経験豊富な医師であれば、多くの場合、見て触るだけで粉瘤と診断できます。

視診と触診

視診でのチェックポイント

  • しこりの大きさ、形状
  • 皮膚表面の状態(発赤、腫れ、開口部の有無)
  • 周囲の皮膚との境界の明瞭さ
  • 炎症の程度

触診でのチェックポイント

  • しこりの硬さ、弾力性
  • 可動性(皮膚とともに動くか、下の組織と癒着していないか)
  • 圧痛の有無
  • 波動感(中に液体が溜まっているか)

粉瘤の特徴的な所見として、「中央に黒い点状の開口部が見られる」「押すと白っぽいドロドロした内容物が出る」「独特の悪臭がある」などが挙げられます。

超音波検査(エコー検査)

頭皮は髪の毛があり視診が困難な場合や、粉瘤の状態をより詳しく知りたい場合には、超音波検査が有用です。

超音波検査でわかること

  • 粉瘤の正確な大きさ
  • 粉瘤の深さ(どの程度深い場所にあるか)
  • 内部の構造(嚢腫の壁の厚さ、内容物の性状)
  • 周囲組織との関係
  • 炎症の程度

超音波検査は痛みがなく、リアルタイムで粉瘤の状態を確認できるため、治療方針の決定にも役立ちます。

病理組織検査

摘出した粉瘤は、通常、病理組織検査に提出されます。これは、以下の目的で行われます。

病理検査の目的

  • 粉瘤であることの確定診断
  • 悪性腫瘍でないことの確認
  • 炎症の程度の評価
  • 完全に摘出できたかの確認

病理検査では、顕微鏡で組織を詳しく観察し、粉瘤の嚢腫壁が表皮と同じ構造をしていることを確認します。また、角質が層状に溜まっている様子も観察できます。

他の疾患との鑑別

粉瘤と間違えやすい疾患として、以下のようなものがあります。医師はこれらの疾患を除外しながら診断を進めます。

脂肪腫 脂肪組織が増殖してできる良性腫瘍です。粉瘤よりも柔らかく、開口部がないのが特徴です。

石灰化上皮腫 小児に多く見られる、石灰化を伴う良性腫瘍です。触ると石のように硬いのが特徴です。

類皮嚢腫 粉瘤と似た袋状の構造物ですが、中に毛髪や皮脂腺、汗腺なども含まれることがあります。

皮様嚢腫 先天性の嚢腫で、粉瘤と構造が似ていますが、より深い場所にできることが多いです。

悪性腫瘍 非常に稀ですが、悪性腫瘍(皮膚がん、転移性腫瘍など)の可能性も考慮する必要があります。急速に大きくなる、硬い、皮膚と癒着している、などの特徴がある場合は注意が必要です。

正確な診断は、適切な治療を行うために非常に重要です。

治療方法

粉瘤の治療方法は、大きく分けて「根治的治療(手術)」と「対症療法」があります。ここでは、それぞれの方法について詳しく説明します。

粉瘤治療の基本原則

粉瘤を完治させるためには、嚢腫の袋ごと完全に摘出する必要があります。袋を残したまま内容物だけを取り出しても、袋が残っている限り、再び角質が溜まって再発してしまうのです。

したがって、根本的な治療は手術による完全摘出となります。

手術による治療

小切開摘出術(くり抜き法)

小切開摘出術は、粉瘤の中心部に小さな穴を開け、内容物と嚢腫の袋を摘出する方法です。「くり抜き法」とも呼ばれます。

手術の流れ

  1. 局所麻酔を行う
  2. 粉瘤の中心部に数mmの穴を開ける
  3. 内容物を絞り出す
  4. 嚢腫の袋を摘出する
  5. 傷口を縫合する(場合によっては縫合しないこともある)

メリット

  • 傷跡が小さい(数mm程度)
  • 手術時間が短い(10〜20分程度)
  • 日帰りで受けられる
  • 術後の痛みが少ない
  • 早期に日常生活に戻れる

デメリット

  • 大きな粉瘤には適用できないことがある
  • 炎症を起こしている粉瘤には適用できない
  • 嚢腫の袋が完全に摘出できないと再発の可能性がある

紡錘形切除術(従来法)

紡錘形切除術は、粉瘤を含む皮膚を紡錘形(楕円形)に切り取り、嚢腫を袋ごと摘出する方法です。

手術の流れ

  1. 局所麻酔を行う
  2. 粉瘤を含む皮膚を紡錘形に切開する
  3. 嚢腫を袋ごと完全に摘出する
  4. 傷口を丁寧に縫合する
  5. 抜糸(通常、7〜14日後)

メリット

  • 嚢腫を確実に完全摘出できる
  • 再発のリスクが低い
  • 大きな粉瘤にも対応可能
  • 病理検査で確実な診断ができる

デメリット

  • 傷跡が比較的大きい
  • 手術時間がやや長い(20〜40分程度)
  • 抜糸が必要
  • 頭皮の場合、部分的に毛髪を剃る必要がある

炎症を起こしている粉瘤の治療

炎症を起こしている粉瘤(感染性粉瘤)は、通常の手術では対応できません。まず炎症を鎮めることが優先されます。

急性期の対応

  1. 抗生物質の投与(内服または点滴)
  2. 切開排膿(膿が溜まっている場合)
  3. 消炎鎮痛剤の投与

二期的手術 炎症が落ち着いた後(通常、1〜3ヶ月後)に、改めて嚢腫の摘出手術を行います。これを「二期的手術」と呼びます。

保存的治療(対症療法)

粉瘤を根治させることはできませんが、以下のような対症療法も行われることがあります。

抗生物質の投与 軽度の炎症がある場合や、炎症の予防目的で抗生物質が処方されることがあります。ただし、これは一時的な対処法であり、根本的な治療にはなりません。

内容物の排出 開口部から内容物を排出することで、一時的に粉瘤を小さくすることができます。ただし、嚢腫の袋が残っているため、必ず再発します。

経過観察 小さく、症状のない粉瘤の場合、経過観察という選択肢もあります。ただし、粉瘤は自然治癒しないため、将来的に手術が必要になる可能性が高いです。

頭部の粉瘤手術における注意点

頭部の粉瘤手術には、以下のような特別な配慮が必要です。

毛髪の処理 手術部位の毛髪を剃る必要があります。ただし、必要最小限の範囲にとどめるよう配慮されます。

出血への対処 頭皮は血流が豊富なため、出血しやすい特徴があります。丁寧な止血操作が重要です。

縫合の工夫 髪の毛の生え方を考慮して、傷跡が目立ちにくいように縫合します。

術後のヘアケア 抜糸までの期間、シャンプーの方法などについて、医師から指示があります。

術後の経過と注意点

術後すぐ(当日〜数日)

  • 患部の腫れ、痛み
  • 軽度の出血
  • 患部を清潔に保つ
  • 激しい運動は避ける

抜糸まで(7〜14日)

  • 患部を濡らさないように注意
  • 医師の指示に従ったシャンプー方法
  • 患部への刺激を避ける

抜糸後

  • 傷跡のケア
  • 通常のシャンプー可能
  • 髪の毛が生えそろうまで待つ

術後の経過は個人差がありますが、多くの場合、抜糸後は通常の生活に戻ることができます。

予防と日常のケア

粉瘤の発生を完全に予防することは困難ですが、リスクを減らすための対策はあります。

頭皮の清潔を保つ

適切なシャンプー

  • 毎日または1日おきに洗髪する
  • 頭皮をマッサージするように優しく洗う
  • すすぎをしっかり行う(洗い残しを防ぐ)
  • 自分の頭皮タイプに合ったシャンプーを選ぶ

ヘアケア製品の選び方

  • 頭皮に刺激の少ない製品を選ぶ
  • スタイリング剤は頭皮につけないよう注意
  • 整髪料は就寝前にしっかり洗い流す

頭皮への刺激を避ける

注意すべき行為

  • 爪を立てて頭皮をかかない
  • 強く頭皮をこすらない
  • ニキビや吹き出物をつぶさない
  • ブラッシングは優しく行う

外傷の予防

  • スポーツ時は適切な防具を着用
  • 転倒に注意する
  • 頭をぶつけないよう注意

生活習慣の改善

食生活

  • バランスの取れた食事
  • 脂っこい食事を控えめに
  • ビタミンB群、ビタミンCを積極的に摂取
  • 水分を十分に取る

規則正しい生活

  • 十分な睡眠時間の確保
  • ストレス管理
  • 適度な運動
  • 禁煙、節酒

ホルモンバランスの維持

  • 規則正しい生活リズム
  • ストレスコントロール
  • 必要に応じて医師に相談

早期発見・早期治療

粉瘤は完全に予防することは難しいですが、早期に発見して治療すれば、大きな問題になる前に対処できます。

セルフチェックの習慣

  • シャンプー時に頭皮を触ってチェック
  • しこりを見つけたら様子を観察
  • 変化があれば医療機関を受診

受診のタイミング

  • しこりを見つけたとき
  • しこりが大きくなってきたとき
  • 痛みや赤みが出てきたとき
  • 不安や心配があるとき

早期であれば、小さな傷で済み、治療後の回復も早くなります。

よくある質問

粉瘤は放置しても大丈夫ですか?

粉瘤は良性腫瘍なので、すぐに命に関わることはありません。しかし、放置すると以下のようなリスクがあります。

  • 徐々に大きくなる
  • 炎症を起こして痛みや腫れが出る
  • 大きくなると手術の傷跡も大きくなる
  • 日常生活に支障が出る

小さいうちに治療した方が、傷跡も小さく、回復も早いため、早めの受診をお勧めします。

粉瘤の内容物を自分で出してもいいですか?

絶対にやめてください。 自分で内容物を押し出す行為は、以下のような危険があります。

  • 細菌感染を起こす
  • 炎症が悪化する
  • 嚢腫が破裂して周囲に広がる
  • 傷跡が残る
  • 再発する(袋が残るため)

粉瘤を見つけたら、触らずに医療機関を受診しましょう。

手術は痛いですか?

手術は局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔注射時にチクッとした痛みがある程度です。

術後は多少の痛みがありますが、処方される鎮痛剤で十分コントロールできる程度です。多くの患者さんは「思ったより痛くなかった」と感想を述べられます。

手術後、髪の毛は生えてきますか?

手術のために剃った部分の髪の毛は、通常、数ヶ月で元通りに生えてきます。ただし、縫合した部分は、まれに傷跡が残り、その部分の毛髪が生えにくくなることがあります。

医師は傷跡が目立たないよう、細心の注意を払って手術を行います。

粉瘤は再発しますか?

嚢腫の袋を完全に摘出できれば、同じ場所に再発することはほとんどありません。ただし、以下のような場合は注意が必要です。

  • 嚢腫の袋が一部残った場合(約1〜2%の確率で再発)
  • 粉瘤体質の方は別の場所に新しい粉瘤ができることがある

適切な手術を受ければ、再発のリスクは非常に低いです。

粉瘤はがんになりますか?

粉瘤そのものが悪性化(がん化)することは極めて稀です。ただし、長期間放置した大きな粉瘤が、ごく稀に悪性化した報告があります。

また、初めから粉瘤だと思っていたものが、実は別の腫瘍だったということもあります。正確な診断のためにも、しこりを見つけたら医療機関を受診することが大切です。

保険は適用されますか?

粉瘤の手術は保険適用となります。手術の種類や大きさによって費用は異なりますが、3割負担で数千円〜2万円程度が一般的です(初診料、検査料、術後の処置料などを含む)。

美容目的でない医学的に必要な治療であれば、健康保険が適用されます。

手術後、いつから仕事や学校に行けますか?

手術の規模にもよりますが、デスクワークであれば翌日から通常通り仕事ができることが多いです。

ただし、以下のような場合は注意が必要です。

  • 肉体労働や激しいスポーツ: 抜糸まで控える
  • 帽子やヘルメットの着用が必要な仕事: 患部への圧迫を避けるため、医師と相談
  • プールや公衆浴場: 抜糸まで避ける

具体的な制限については、手術を受ける医師に相談しましょう。

複数の粉瘤がある場合、一度に手術できますか?

複数の粉瘤がある場合、一度に複数箇所の手術を行うことも可能です。ただし、以下の要因を考慮して判断されます。

  • 粉瘤の大きさと数
  • 患者さんの体力や年齢
  • 手術時間
  • 術後の痛みや負担

医師と相談して、最適な治療計画を立てましょう。

まとめ

頭にできる粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質などの老廃物が溜まる良性の腫瘍です。頭部は粉瘤ができやすい部位の一つで、多くの方が経験する可能性のある症状です。

粉瘤の重要ポイント

  1. 粉瘤は自然治癒しません – 完治させるには手術で嚢腫の袋ごと摘出する必要があります
  2. 早期発見・早期治療が大切 – 小さいうちに治療すれば、傷跡も小さく、回復も早くなります
  3. 自己判断で内容物を出すのは危険 – 感染や炎症のリスクがあるため、必ず医療機関を受診しましょう
  4. 炎症を起こす前に治療を – 炎症を起こすと痛みが強く、治療も複雑になります
  5. 適切な予防とケア – 頭皮を清潔に保ち、刺激を避けることでリスクを減らせます

頭にしこりを見つけたら、まずは皮膚科や形成外科を受診して、正確な診断を受けることが大切です。粉瘤は良性腫瘍であり、適切な治療を受ければ完治可能な病気です。

不安や疑問があれば、遠慮なく医師に相談しましょう。早めの対処が、より良い結果につながります。

参考文献

本記事は以下の信頼できる医学情報源を参考に作成しました。

  1. 日本皮膚科学会ホームページ
    https://www.dermatol.or.jp/
  2. 日本形成外科学会ホームページ
    https://www.jsprs.or.jp/
  3. 「皮膚科診療プラクティス」編集委員会編『皮膚科診療プラクティス』文光堂
  4. 上田説子、清水宏「標準皮膚科学」医学書院
  5. 日本臨床皮膚科医会
    https://www.jocd.org/

※ 本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりとなるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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