はじめに
「背中に何かできている」「触るとしこりがある」「痛みを感じる」――こうした症状でお悩みではありませんか。背中は自分の目で確認しにくい部位であるため、家族や友人に指摘されて初めて気づくことも少なくありません。また、発見が遅れることで症状が進行してしまうケースもあります。
背中にできる腫れ物には、粉瘤(アテローム)、脂肪腫、毛包炎、せつ(おでき)など、さまざまな種類があります。多くは良性のものですが、中には適切な治療を必要とするものもあり、放置すると炎症を起こしたり、大きくなったりすることがあります。
本記事では、アイシークリニック上野院の医療コラムとして、背中にできる腫れ物の主な原因、症状、診断方法、治療法について、一般の方にもわかりやすく解説していきます。ご自身の症状と照らし合わせながら、適切な対処法を見つける参考にしていただければ幸いです。

背中の腫れ物の主な原因
背中に腫れ物ができる原因は多岐にわたります。ここでは代表的なものをご紹介します。
粉瘤(ふんりゅう・アテローム)
背中にできる腫れ物の中で最も多く見られるのが粉瘤です。皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に本来剥がれ落ちるべき角質(垢)や皮脂が溜まっていく良性の腫瘍です。背中は粉瘤の好発部位の一つで、全体の約60%が顔、首、背中に発生するといわれています。
脂肪腫
脂肪細胞が増殖して塊となった良性の腫瘍です。柔らかく、痛みを伴わないのが特徴で、皮下脂肪組織に発生します。背中や肩、首の後ろなど、体幹部に多く見られます。軟部組織の良性腫瘍の中では最も頻度が高く、1000人に1人以上が罹患するとされています。
毛包炎・せつ・よう
毛穴の奥にある毛根を包んでいる部分(毛包)に細菌が感染して炎症を起こす状態です。黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で、毛包の浅い部分の感染を「毛包炎(毛嚢炎)」、深い部分まで広がったものを「せつ(おでき)」、さらに複数の毛包に炎症が広がったものを「よう」と呼びます。
その他の原因
上記以外にも、ニキビ(尋常性ざ瘡)、イボ、ほくろなど、さまざまな皮膚トラブルが背中に生じることがあります。まれに悪性腫瘍の可能性もあるため、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
粉瘤(アテローム)について詳しく
粉瘤とは
粉瘤は「表皮嚢腫」とも呼ばれ、皮膚の下にできた袋状の構造物の中に、角質(垢)や皮脂といった老廃物が蓄積していく良性の腫瘍です。形成外科や皮膚科で最もよく扱う皮膚の良性腫瘍で、皮膚良性腫瘍の約80%を占めるとされています。
背中は粉瘤ができやすい部位の一つです。これは背中に皮脂腺が多く、皮脂の分泌が活発であることが関係していると考えられています。また、衣類との摩擦や汗の影響を受けやすいことも要因の一つです。
粉瘤の特徴的な症状
粉瘤には以下のような特徴があります。
見た目の特徴
- ドーム状に盛り上がった半球状の腫瘤
- 大きさは小豆大から鶏卵大までさまざま
- 中央に黒い点(開口部)が見えることがある
- 触るとコロコロとしたしこりを感じる
自覚症状
- 初期は痛みや赤みなどの症状がないことが多い
- 開口部を強く圧迫すると、臭いのある白色~クリーム色の内容物が出てくることがある
- 自然に消えることはほとんどない
- 徐々に大きくなる傾向がある
炎症性粉瘤について
粉瘤は本来無症状ですが、細菌感染を起こすと「炎症性粉瘤」となり、以下のような症状が現れます。
- 赤く腫れる
- 熱感がある
- 強い痛みを伴う
- 膿が溜まる
- さらに悪臭を放つ
炎症が進行すると、袋の壁が破れて内容物が皮下脂肪組織内に散らばり、症状が悪化することがあります。このような状態になる前に、早めの治療が重要です。
粉瘤の原因
粉瘤ができる正確な原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が考えられています。
- 毛穴の閉塞
- 外傷や慢性的な炎症
- 皮脂の分泌異常
- 遺伝的要因
なんらかの原因で皮膚の一部が内側に入り込み、袋状の構造物が形成されると考えられています。
粉瘤の治療法
粉瘤の根本的な治療には手術が必要です。内服薬や外用薬だけでは完治しません。主な治療法として以下の2つがあります。
くりぬき法
粉瘤の中心部に小さな穴(直径4mm程度)を開け、そこから内容物と袋を取り出す方法です。
メリット:
- 傷跡が小さく目立ちにくい
- 手術時間が短い(15〜30分程度)
- 術後の回復が早い
デメリット:
- 大きな粉瘤には適さない場合がある
- 袋が完全に取り除けない場合、再発のリスクがある
切開法
粉瘤の大きさに合わせて皮膚を切開し、袋ごと完全に摘出する方法です。
メリット:
- 袋ごと確実に除去できる
- 再発のリスクが低い
- 大きな粉瘤や炎症を繰り返しているものに適している
デメリット:
- 傷跡が比較的大きくなる
- 抜糸が必要
- 術後のケアに注意が必要
炎症性粉瘤の治療
炎症を起こしている場合は、まず切開排膿を行い、膿を出して炎症を落ち着かせます。その後、炎症が治まってから袋を摘出する二期的な手術が必要になることがあります。炎症が強い状態で袋を摘出しようとすると、組織が脆弱で袋が破れやすく、完全に摘出できないリスクが高まります。
粉瘤を放置するリスク
粉瘤を放置すると以下のようなリスクがあります。
- 徐々に大きくなり、手術の傷跡も大きくなる
- 炎症を起こして強い痛みや腫れが生じる
- 炎症が繰り返されると、周囲の組織と癒着しやすくなる
- 仕事や日常生活に支障をきたす可能性がある
小さいうちに治療を受けることで、傷跡を最小限に抑え、治療期間も短縮できます。
脂肪腫について詳しく
脂肪腫とは
脂肪腫は、脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。リポーマとも呼ばれ、軟部組織の良性腫瘍の中で最も多く見られます。正常な脂肪細胞が存在する部位であればどこにでもできる可能性がありますが、特に背中、肩、首の後ろ、臀部、大腿部など体幹部に多く発生します。
40〜60歳代に多く見られ、わずかに男性に多い傾向があります。また、肥満、高脂血症、糖尿病をお持ちの方にできやすいという報告もあります。
脂肪腫の特徴的な症状
見た目と触感
- 皮膚がドーム状に盛り上がる
- 触ると柔らかく、弾力がある
- 指で押すと動く(可動性がある)
- 大きさは数ミリから10cm以上までさまざま
自覚症状
- 通常は痛みやかゆみを伴わない
- しこり以外の症状がないことが多い
- 徐々に大きくなるが、成長速度は遅い
- 自然に消えることはない
粉瘤との大きな違いは、中央に黒い開口部がないこと、悪臭がないこと、炎症を起こしにくいことです。
脂肪腫の種類
脂肪腫にはいくつかの種類があります。
単純性脂肪腫
最も一般的なタイプで、脂肪細胞の中に膠原線維があり、被膜に包まれています。痛みはなく、柔らかいしこりとして触れます。
血管脂肪腫
脂肪細胞の隙間に毛細血管が認められるタイプです。背部、腹部、上下肢に好発し、やや硬く、自発痛や圧痛(押すと痛い)を伴うことがあります。
筋肉内脂肪腫
筋肉組織の深い位置にできる脂肪腫で、周囲の筋肉に浸み込むように浸潤します。触っても動かないことがあり、再発のリスクが高いとされています。
脂肪腫と脂肪肉腫の違い
脂肪腫は良性腫瘍ですが、悪性腫瘍である「脂肪肉腫」との鑑別が重要です。
脂肪肉腫の特徴:
- 数ヶ月で急激に大きくなる
- 硬いしこりである
- 痛みを伴うことがある
- 中年以降に発生することが多い
以下のような場合は、脂肪肉腫の可能性を考慮して精密検査が必要です。
- 直径5cm以上の大きさ
- 短期間で急速に成長している
- 硬い
- 深い場所にある
- 下の組織にくっついて動かない
脂肪腫の診断
脂肪腫の診断には以下の検査が行われます。
視診・触診
医師が実際に見て触れることで、ある程度の診断が可能です。柔らかさ、可動性、大きさなどを確認します。
画像検査
- 超音波検査(エコー): 腫瘍の大きさや深さ、内部構造を確認
- CT検査: より詳細な構造や周囲組織との関係を評価
- MRI検査: 脂肪組織の性状を詳しく観察、悪性との鑑別に有用
病理検査
悪性が疑われる場合や手術で摘出した腫瘍は、顕微鏡で組織を調べて確定診断を行います。
脂肪腫の治療法
脂肪腫の根本的な治療は外科的切除です。内服薬や外用薬、注射で内容物を抜くといった方法では治療できません。
手術の流れ
- 局所麻酔を行う
- 脂肪腫の直上の皮膚を切開する(腫瘍径の30%程度の切開)
- 被膜を破らないよう注意しながら周囲組織から剥離
- 脂肪腫を袋ごと摘出
- 十分な止血処置
- 切開部を縫合
- 患部を圧迫固定
小さな脂肪腫であれば、日帰り手術が可能です。大きなもの(5cm以上)や筋肉内脂肪腫の場合は、入院が必要になることもあります。
スクィージング法
近年では、小さな切開から内容物を絞り出すように摘出する「スクィージング法」も行われています。この方法により、傷跡を最小限に抑えることができます。
脂肪腫の治療費用
脂肪腫の手術には健康保険が適用されます。3割負担の場合、おおよそ5,000円〜20,000円程度(診察回数や腫瘍の大きさにより変動)となります。
脂肪腫を放置するリスク
脂肪腫は良性腫瘍であり、症状がなければ必ずしも手術が必要というわけではありません。しかし、放置すると以下のようなデメリットがあります。
- 徐々に大きくなり、手術の侵襲が大きくなる
- 傷跡が大きくなる
- 周囲の神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こす可能性
- 悪性腫瘍との鑑別が遅れるリスク
小さいうちに治療を受けることで、身体への負担と傷跡を最小限に抑えることができます。
毛包炎・せつ・ようについて詳しく
毛包炎とは
毛包炎(毛嚢炎)は、毛穴の奥にある毛根を包んでいる部分(毛包)に細菌が感染して炎症を起こす状態です。一般に「おでき」と呼ばれるものの多くは、この毛包炎が進行したものです。
原因菌と発症メカニズム
主な原因菌
- 黄色ブドウ球菌
- 表皮ブドウ球菌
- 緑膿菌(不衛生な入浴施設などで感染)
発症の仕組み
皮膚表面にできた小さな傷口、ひっかき傷、カミソリ負けなどから細菌が侵入し、毛包内で増殖することで炎症が起こります。以下のような状態の時に発症しやすくなります。
- 免疫力が低下している時
- 皮膚の衛生状態が良くない時
- 糖尿病などの基礎疾患がある
- 長時間座る仕事で臀部に圧迫や摩擦がかかる
- ステロイド外用薬を使用している
症状の進行段階
毛包炎は症状の程度によって以下のように分類されます。
毛包炎(初期段階)
- 毛穴の部分に赤い丘疹(ブツブツ)ができる
- 小さな膿疱(膿を持った発疹)が現れる
- 軽い痛みを伴う
- 数日で自然に治癒することも多い
せつ(中等度)
- 毛包全体に炎症が広がる
- 赤く腫れて硬いしこりができる
- ズキズキとした強い痛みがある
- 熱感や圧痛を伴う
- 中心部に膿の栓ができる
- 数日〜数週間で中心部が軟化し、破裂して膿が排出される
- 膿が出ると症状が急速に改善する
顔面の中心部(鼻の周囲や唇)にできたせつは「めんちょう(面疔)」と呼ばれ、特に注意が必要です。この部位は脳に近く、細菌が血管を通じて脳に到達する危険性があるためです。
よう(重症)
- せつが進行して複数の毛包に炎症が広がった状態
- 大きな膿瘍を形成する
- 非常に強い痛みを伴う
- 発熱や全身倦怠感などの全身症状が現れる
- 現在は非常にまれだが、糖尿病患者に発症することがある
診断と検査
多くの場合、視診(見た目の観察)で診断が可能です。しかし、以下のような場合は追加の検査を行うことがあります。
- 症状が重度で再発を繰り返す場合
- 治療に反応しない場合
- 基礎疾患がある場合
細菌培養検査
膿のサンプルを採取して検査室で培養し、原因菌を特定します。適切な抗菌薬を選択するために重要です。
毛包炎・せつ・ようの治療
軽度の毛包炎
- 皮膚を清潔に保つことで自然治癒することが多い
- 抗菌成分配合の外用薬を使用
- 通常1週間ほどで軽快する
中等度以上(せつ、よう)
- 抗菌薬(セフェム系など)の内服
- 抗菌薬の外用
- 膿が溜まっている場合は切開排膿
- 免疫機能が低下している場合は抗菌薬の点滴
切開排膿
膿が溜まって皮膚膿瘍を形成している場合、局所麻酔下で皮膚を切開し、膿を排出する処置を行います。排出後は生理食塩水で洗浄し、開いた傷口が自然に閉じるまで軟膏処置を継続します。
毛包炎を繰り返す場合
せつや毛包炎を繰り返す場合は、以下の対策が有効です。
- 特殊な抗菌成分を含む液体石鹸で身体を洗う
- 抗菌薬の軟膏を鼻の中に塗布(鼻腔内の黄色ブドウ球菌を除菌)
- 抗菌薬を1〜2ヶ月間服用
- 基礎疾患(糖尿病など)の治療
粉瘤との違い
毛包炎(特にせつ)と粉瘤は似ていますが、以下の点で区別できます。
| 特徴 | 毛包炎・せつ | 粉瘤 |
|---|---|---|
| 発症速度 | 急性(数日で発症) | 慢性(徐々に大きくなる) |
| 痛み | 初期から痛みがある | 炎症を起こすまで無痛 |
| 中央の開口部 | ない | あることが多い |
| 自然治癒 | 軽症なら可能 | 不可能 |
| 再発 | 別の場所にできることがある | 袋を取らないと同じ場所に再発 |
予防方法
毛包炎の予防には以下のような対策が効果的です。
皮膚を清潔に保つ
- 毎日入浴し、石鹸で丁寧に洗う
- 運動後はシャワーを浴びる
- 清潔なタオルを使用する
皮膚を傷つけない
- カミソリを使う際は清潔な刃を使用
- 爪を短く保ち、皮膚をひっかかないようにする
- 過度な摩擦を避ける
免疫力を維持する
- バランスの良い食事
- 十分な睡眠
- ストレスを溜めない
- 基礎疾患(糖尿病など)の適切な管理
衛生環境に注意する
- 入浴施設やプールの衛生状態を確認
- 清潔な衣類を着用
- 寝具を定期的に洗濯する
その他の背中にできる腫れ物
ニキビ(尋常性ざ瘡)
思春期だけでなく、成人になってからも背中にニキビができることがあります。背中は皮脂腺が多く、衣類による蒸れや摩擦の影響を受けやすいため、ニキビができやすい部位です。
ニキビと毛包炎の違い
- ニキビはアクネ菌の増殖が原因
- 毛包炎は黄色ブドウ球菌などが原因
- 治療法が異なるため、正確な診断が必要
イボ(尋常性疣贅)
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によってできる良性の腫瘍です。表面がザラザラしており、触るとやや硬い感触があります。
ほくろ(色素性母斑)
メラニン色素を含む細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。生まれつきあるものや、後天的にできるものがあります。
注意が必要なほくろ
- 急速に大きくなる
- 色が不均一
- 形が非対称
- 境界が不明瞭
- 出血や潰瘍がある
このようなほくろは悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性があるため、早急に皮膚科を受診してください。
血管腫
血管が異常に増殖してできる腫瘍です。赤や青紫色をしており、触ると柔らかいのが特徴です。
皮膚悪性腫瘍
まれではありますが、背中に悪性腫瘍ができることもあります。
- 基底細胞癌
- 有棘細胞癌
- 悪性黒色腫(メラノーマ)
- 脂肪肉腫
早期発見・早期治療が重要ですので、気になる症状があれば速やかに医療機関を受診しましょう。
症状から見分ける方法
背中の腫れ物の種類を見分けるために、以下のポイントをチェックしてみましょう。
チェックポイント
触った感触
- 柔らかい → 脂肪腫の可能性
- 硬い、弾力がある → 粉瘤の可能性
- 熱を持っている → 炎症性粉瘤、せつの可能性
痛みの有無
- 痛みなし → 粉瘤(非炎症時)、脂肪腫
- 痛みあり → 炎症性粉瘤、毛包炎、せつ、よう
見た目の特徴
- 中央に黒い点がある → 粉瘤
- 赤く腫れている → 毛包炎、せつ、炎症性粉瘤
- 白っぽい膿が見える → 毛包炎、せつ
成長速度
- ゆっくり大きくなる → 粉瘤、脂肪腫
- 急速に大きくなる → 炎症性病変、悪性腫瘍の可能性
動くかどうか
- 触ると動く → 脂肪腫、粉瘤(浅いもの)
- 動かない → 深部の腫瘍、筋肉内脂肪腫
ただし、これらはあくまで目安であり、正確な診断は医療機関で行う必要があります。自己判断で放置したり、無理に潰したりすることは避けてください。
診断方法
医療機関では以下のような検査を行って診断します。
視診・触診
医師が実際に腫れ物を見て、触れて確認します。多くの場合、この段階である程度の診断が可能です。
画像検査
超音波検査(エコー)
- 腫瘍の大きさ、深さ、内部構造を確認
- 痛みがなく、侵襲が少ない
- 外来で短時間で実施可能
CT検査
- より詳細な構造や周囲組織との関係を評価
- 骨との位置関係も確認できる
MRI検査
- 軟部組織の性状を詳しく観察
- 悪性腫瘍との鑑別に有用
- 造影剤を使用することもある
生検(病理検査)
悪性が疑われる場合や、画像検査だけでは診断が困難な場合に行います。
穿刺吸引細胞診
- 細い針を刺して細胞を採取
- 顕微鏡で細胞を観察
切除生検
- 腫瘍の一部または全部を摘出
- 組織を詳しく調べる
細菌培養検査
毛包炎やせつなど、細菌感染が疑われる場合に行います。膿を採取して培養し、原因菌を特定することで、適切な抗菌薬を選択できます。
治療法の選択
背中の腫れ物の治療法は、その原因によって異なります。
保存的治療
経過観察
- 小さく、症状のない脂肪腫
- 自然治癒が期待できる軽度の毛包炎
薬物療法
- 抗菌薬の内服・外用(毛包炎、せつ、炎症性粉瘤)
- 抗炎症薬
- 痛み止め
外科的治療
切開排膿
- 炎症性粉瘤
- せつ、よう
- 皮膚膿瘍
腫瘍摘出術
- 粉瘤(くりぬき法、切開法)
- 脂肪腫
- その他の良性腫瘍
治療を受けるタイミング
できるだけ小さいうちに治療を受けることをおすすめします。
早期治療のメリット
- 手術の侵襲が小さい
- 傷跡が小さく目立ちにくい
- 治療期間が短い
- 費用が安く済む
- 合併症のリスクが低い
- 日常生活への影響が少ない
放置することのデメリット
- 腫瘍が大きくなる
- 炎症を起こすリスクが高まる
- 手術の難易度が上がる
- 傷跡が大きくなる
- 治療期間が長くなる
- 悪性腫瘍の発見が遅れる可能性
予防とセルフケア
背中の腫れ物を予防するために、日常生活で以下のことを心がけましょう。
皮膚を清潔に保つ
- 毎日入浴し、背中も丁寧に洗う
- 柔らかいタオルやスポンジで優しく洗う
- 洗い残しがないようにする
- 運動後はシャワーを浴びる
適切な衣類の選択
- 通気性の良い素材を選ぶ
- きつすぎる衣類は避ける
- 清潔な衣類を着用する
- 寝具も定期的に洗濯する
皮膚への刺激を避ける
- リュックサックなどによる長時間の圧迫を避ける
- 背中を掻かないように注意する
- 日焼けに注意する
生活習慣の改善
- バランスの良い食事を摂る
- 十分な睡眠をとる
- ストレスを溜めない
- 適度な運動をする
- 禁煙する
- アルコールは適量に
基礎疾患の管理
糖尿病や免疫機能が低下する疾患がある方は、適切な治療を継続することが重要です。これにより、皮膚感染症のリスクを減らすことができます。

受診のタイミングと診療科の選択
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
すぐに受診すべき症状
- 強い痛みがある
- 急速に大きくなっている
- 赤く腫れて熱を持っている
- 発熱や全身倦怠感を伴う
- 膿が出ている
- 出血がある
- 数ヶ月で急激に成長している(悪性腫瘍の可能性)
早めの受診が望ましい症状
- しこりを触れる
- 徐々に大きくなっている
- 痛みはないが気になる
- 見た目が気になる
- 背中に何かできている
受診する診療科
背中の腫れ物の診察・治療は、以下の診療科で行っています。
皮膚科
- 皮膚疾患全般を扱う
- 診断から治療まで一貫して対応
- 小さな腫瘍の手術も可能
形成外科
- 皮膚腫瘍の手術を専門とする
- 傷跡をきれいに仕上げる技術に優れる
- 大きな腫瘍や複雑な手術に対応
外科
- 大きな腫瘍や深部の腫瘍
- 入院が必要な手術
アイシークリニック上野院での診療
当院では、粉瘤、脂肪腫をはじめとする皮膚腫瘍の日帰り手術を行っています。経験豊富な医師が丁寧に診察し、患者様お一人お一人に最適な治療法をご提案いたします。
- 土曜・日曜も診療
- 予約制でお待たせしません
- 最新の医療機器を完備
- 術後のアフターケアも充実
背中の腫れ物でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
背中にできる腫れ物には、粉瘤、脂肪腫、毛包炎、せつなど、さまざまな種類があります。多くは良性のものですが、中には適切な治療を必要とするものもあり、放置すると炎症を起こしたり、大きくなったりすることがあります。
本記事のポイント
- 背中の腫れ物で最も多いのは粉瘤: 皮膚の下にできた袋に角質や皮脂が溜まる良性腫瘍。自然治癒せず、手術が必要。
- 脂肪腫は柔らかく痛みのない良性腫瘍: 脂肪細胞が増殖してできる。小さいうちに治療すれば傷跡も小さい。
- 毛包炎は細菌感染による炎症: 軽症なら自然治癒するが、進行すると「せつ」「よう」となり治療が必要。
- 早期発見・早期治療が重要: 小さいうちに治療を受けることで、侵襲が少なく、傷跡も小さく済む。
- 自己判断は危険: 見た目だけでは正確な診断は困難。気になる症状があれば医療機関を受診。
- 予防も大切: 皮膚を清潔に保ち、適切な生活習慣を心がけることで、ある程度予防可能。
背中は自分では見にくい場所ですが、だからこそ定期的に家族にチェックしてもらったり、気になる症状があれば早めに医療機関を受診したりすることが大切です。
腫れ物の多くは良性ですが、中には悪性のものや、放置すると悪化するものもあります。「これくらい大丈夫」と自己判断せず、専門医に診てもらうことをおすすめします。
アイシークリニック上野院では、専門医が丁寧に診察し、患者様に最適な治療をご提供しています。背中の腫れ物でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる医療情報源を参考にしました。
- 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド – 粉瘤(ふんりゅう)
- 粉瘤の症状、診断、治療について詳しく解説
- メディカルノート – 粉瘤を放置するとどうなるの?
- 粉瘤を放置した場合のリスクについて
- 関東労災病院 – 脂肪腫 (しぼうしゅ)
- 脂肪腫の基本情報と治療法
- 日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科 – 脂肪腫と「良性悪性の判断」と手術
- 脂肪腫と脂肪肉腫の鑑別、治療について
- 田辺三菱製薬 ヒフノコトサイト – 毛嚢炎(毛包炎)の症状・治療法
- 毛包炎の原因、症状、治療法について
- 第一三共ヘルスケア ひふ研 – 毛包炎(毛嚢炎)
- 毛包炎の基礎知識と対処法
- MSDマニュアル家庭版 – 毛包炎と皮膚膿瘍
- 毛包炎と皮膚膿瘍の詳細な医学情報
- MSDマニュアル プロフェッショナル版 – せつとよう
- せつとようの専門的な医学情報
- メディカルノート – 癰について
- 癰(よう)の症状と治療
- 池田模範堂 肌トラブル情報館 – おでき(毛嚢炎)原因・症状・治療法
- おできの基礎知識と対処法
- 公益社団法人日本皮膚科学会 – 一般公開ガイドライン
- 日本皮膚科学会が作成した各種診療ガイドライン
- がん診療ガイドライン – 皮膚悪性腫瘍
- 皮膚悪性腫瘍に関する診療ガイドライン
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務