はじめに
「気になっていたしこりが大きくなってきた」「触ると痛みがある」「今日診てもらって、できれば今日中に治療したい」――粉瘤(ふんりゅう)でお悩みの方から、このようなご相談をいただくことが少なくありません。
粉瘤は皮膚の下にできる良性の腫瘍で、自然に治ることはなく、根本的な治療には手術が必要です。仕事や家事で忙しい現代人にとって、「何度も通院するのは大変」「早く治療を終わらせたい」というニーズは非常に高く、即日手術を希望される方が増えています。
本記事では、粉瘤の即日手術について、その可能性や条件、メリット・デメリット、実際の手術の流れまで、医療従事者の視点から詳しく解説します。粉瘤でお悩みの方、即日手術を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。

粉瘤(アテローム)とは何か
粉瘤の基本的な特徴
粉瘤は、医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」または「アテローム」と呼ばれる皮膚の良性腫瘍です。皮膚の下に袋状の構造(嚢腫)ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が徐々に溜まっていくことで形成されます。
粉瘤の主な特徴は以下の通りです。
外見的特徴
- 皮膚の下に触れるとコリコリとしたしこり
- 表面に黒い点状の開口部(へそ)が見られることがある
- 大きさは数ミリから10センチ以上まで様々
- 半球状に盛り上がっていることが多い
発生メカニズム 粉瘤は、何らかの原因で皮膚の表皮成分が真皮内や皮下に入り込み、袋状の構造を作ることで発生します。この袋の内側は表皮と同じ構造を持っているため、通常の皮膚と同様に角質を産生し続けます。しかし、袋の中に溜まった角質は外に出ることができないため、徐々に内容物が蓄積し、しこりが大きくなっていきます。
粉瘤ができやすい部位
粉瘤は全身のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、特に以下の部位に好発します。
- 顔面・頭部:特に顔、耳たぶの後ろ、頭皮
- 頸部(首):首の後ろから側面
- 背部:肩甲骨の間や背中全体
- 臀部:お尻
- 体幹:胸部や腹部
これらの部位は皮脂の分泌が多い場所や、外傷を受けやすい場所と重なっています。
粉瘤と他の皮膚疾患との違い
粉瘤と間違えられやすい疾患として、以下のようなものがあります。
脂肪腫との違い 脂肪腫は脂肪組織からなる良性腫瘍で、粉瘤と同様に皮下のしこりとして触れます。しかし、脂肪腫は柔らかく、弾力性があり、粉瘤のような開口部(へそ)はありません。
リンパ節の腫れとの違い 感染症などでリンパ節が腫れることがありますが、リンパ節は可動性があり、原因が治れば小さくなります。粉瘤は自然に小さくなることはありません。
毛嚢炎(毛包炎)との違い 毛穴に細菌が感染して起こる毛嚢炎は、赤く腫れて痛みを伴いますが、数日から1週間程度で自然治癒します。粉瘤は慢性的に存在し続けます。
粉瘤の症状と診断
粉瘤の症状
粉瘤は通常、以下のような経過をたどります。
無症状期 初期の段階では、多くの場合、痛みやかゆみなどの症状はありません。単に皮膚の下にしこりがあるという状態で、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。この時期の粉瘤は、見た目の問題や、触れた時の違和感が主な気づきのきっかけとなります。
増大期 時間の経過とともに、嚢腫内に老廃物が蓄積し、粉瘤は徐々に大きくなっていきます。増大のスピードは個人差が大きく、数年かけてゆっくり大きくなるケースもあれば、数ヶ月で急速に大きくなるケースもあります。
炎症期(感染性粉瘤) 粉瘤が細菌感染を起こすと、急激に赤く腫れ上がり、強い痛みを伴います。これを「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼びます。炎症を起こした粉瘤の症状は以下の通りです。
- 患部が赤く腫れ上がる
- 強い痛みや圧痛がある
- 熱感がある
- 場合によっては発熱を伴う
- 自然に破裂して膿や悪臭のある内容物が出ることがある
粉瘤の診断方法
粉瘤の診断は、主に以下の方法で行われます。
視診・触診 経験豊富な医師であれば、視診と触診だけでほとんどの粉瘤を診断できます。特徴的な開口部(へそ)の有無、しこりの硬さや可動性、皮膚との癒着の程度などを確認します。
超音波検査(エコー検査) 粉瘤の大きさや深さ、周囲組織との関係を詳しく調べるために超音波検査を行うことがあります。特に、手術前に粉瘤の正確な位置や範囲を把握する上で有用です。
ダーモスコピー検査 皮膚表面を拡大して観察する検査で、粉瘤特有の開口部の構造を確認できます。
病理組織検査 摘出した粉瘤を顕微鏡で調べる検査です。粉瘤の確定診断や、まれに悪性腫瘍との鑑別が必要な場合に行われます。
粉瘤の治療法と手術の種類
粉瘤の治療の基本方針
粉瘤は良性腫瘍であり、悪性化することはまれですが、自然に治癒することはありません。根本的な治療には、嚢腫を含めた完全な摘出が必要です。
保存的治療の限界 炎症を起こした粉瘤に対しては、抗生物質の投与や切開排膿(溜まった膿を出す処置)を行うことがありますが、これらはあくまで対症療法であり、粉瘤そのものを治すことはできません。保存的治療だけでは再発のリスクが高く、根本的解決にはなりません。
粉瘤の手術方法
粉瘤の手術には、主に以下の方法があります。
1. 小切開摘出術(従来法)
粉瘤の大きさに応じた切開を行い、嚢腫を周囲組織から剥離して摘出する方法です。
手順
- 局所麻酔を行う
- 粉瘤の直径とほぼ同じ長さの紡錘形の切開を行う
- 嚢腫を周囲組織から丁寧に剥離する
- 嚢腫を完全に摘出する
- 創部を縫合する
メリット
- 確実に嚢腫を完全摘出できる
- 再発率が低い(適切に行えば1~2%程度)
- 大きな粉瘤や癒着が強い粉瘤にも対応可能
デメリット
- 切開が比較的大きい
- 抜糸が必要(通常7~14日後)
- 傷跡がやや目立つ可能性がある
2. くり抜き法(へそ抜き法)
粉瘤の中心部(開口部)から専用のパンチを用いて小さな穴を開け、そこから内容物と嚢腫壁を摘出する方法です。
手順
- 局所麻酔を行う
- 粉瘤の中心部に4~8mm程度の円形の穴を開ける
- 内容物を絞り出す
- 嚢腫壁を摘出する
- 場合によっては1~2針縫合するか、そのまま開放創とする
メリット
- 切開が小さい
- 傷跡が目立ちにくい
- 抜糸が不要または最小限
- 手術時間が短い
デメリット
- 大きな粉瘤(3cm以上)には適応しにくい
- 嚢腫壁の取り残しによる再発リスクがやや高い(5~10%程度)
- 炎症を起こしている粉瘤には適さない
3. 炎症性粉瘤に対する治療
炎症を起こしている粉瘤の場合、治療のアプローチが異なります。
切開排膿 まず切開して膿を排出し、抗生物質で炎症を鎮めます。炎症が完全に治まってから(通常1~3ヶ月後)、根治手術を行います。
一期的摘出術 経験豊富な医師によっては、炎症期でも一期的に摘出を行うこともありますが、再発リスクや創部感染のリスクが高まるため、慎重な判断が必要です。
粉瘤の即日手術について
即日手術とは
粉瘤の即日手術とは、初診当日に診察から手術、術後の処置までを完了する診療形態のことです。従来は、初診で診察と検査を行い、後日改めて手術日を予約するという流れが一般的でしたが、患者さんの利便性を考慮し、条件が整えば当日中に手術を行う医療機関が増えています。
即日手術が可能な条件
すべての粉瘤が即日手術の対象となるわけではありません。以下の条件を満たす場合に、即日手術が検討されます。
1. 粉瘤の状態による条件
適している状態
- 炎症を起こしていない粉瘤
- サイズが比較的小さい(目安として直径3cm以下)
- 部位的に手術が容易な場所にある
- 嚢腫が周囲組織と強く癒着していない
適さない状態
- 炎症を起こしている粉瘤(感染性粉瘤)
- 非常に大きな粉瘤(直径5cm以上)
- 血管や神経の近くなど、慎重な手術操作が必要な部位
- 複数個所に存在し、手術時間が長くなる場合
2. 患者さんの状態による条件
適している条件
- 全身状態が良好
- 局所麻酔に問題がない
- 術後の安静や通院が可能
- 手術内容を十分に理解し、同意している
注意が必要な条件
- 出血傾向がある(抗凝固薬を服用している等)
- アレルギー歴がある
- 糖尿病などの基礎疾患がある
- 手術に対する強い不安がある
3. 医療機関の体制による条件
- 診察枠と手術枠に空きがある
- 必要な設備・器材が整っている
- 適切な術者と補助スタッフがいる
- 術後の緊急対応が可能な体制がある
即日手術のメリット
患者さんにとってのメリット
1. 時間的な負担の軽減 仕事や家事で忙しい方にとって、何度も通院する必要がないことは大きなメリットです。初診と手術で2回の来院が必要なところ、即日手術なら1回で済みます(抜糸が必要な場合は別途来院が必要)。
2. 精神的な負担の軽減 「手術」と聞くと不安になる方も多いでしょう。手術日までの待機期間が不要なため、不安を抱える期間が短くなります。また、「早く治したい」という気持ちがすぐに叶えられることも、精神的な安心につながります。
3. 経済的な負担の軽減 通院回数が減ることで、交通費などの間接的な費用を抑えられます。
4. 粉瘤の増大を防げる 粉瘤は時間とともに大きくなる可能性があります。早期に摘出することで、より小さな切開での手術が可能となり、傷跡を最小限に抑えられます。
5. 炎症のリスクを早期に排除 粉瘤は炎症を起こすリスクが常にあります。即日手術により、炎症を起こす前に根本的に治療できます。
医療機関にとってのメリット
1. 患者満足度の向上 患者さんのニーズに応えることで、満足度が向上します。
2. 診療の効率化 計画的に診療スケジュールを組むことができます。
即日手術のデメリットと注意点
即日手術には多くのメリットがある一方で、以下のような点にも注意が必要です。
1. 十分な説明時間の確保
初診当日に手術を行う場合、診察から手術までの時間が短いため、十分な説明と患者さんの理解が重要です。焦らず、不明点があればしっかり質問することが大切です。
2. 術前の準備不足の可能性
予定手術の場合、前日からの飲食制限などを指示されることがありますが、即日手術ではそうした準備ができません。ただし、粉瘤手術は局所麻酔で行われるため、通常は術前の飲食制限は不要です。
3. 予定の調整
手術後は、当日の激しい運動や入浴の制限があります。急な予定の変更が必要になる可能性があります。
4. 緊急時の対応
万が一、術後に問題が生じた場合の連絡先や対応方法を確認しておく必要があります。
即日手術と予約手術の比較
| 項目 | 即日手術 | 予約手術 |
|---|---|---|
| 通院回数 | 少ない(1回+抜糸) | 多い(初診+手術+抜糸) |
| 準備時間 | 短い | 十分に確保できる |
| 説明時間 | 限られる | 十分に確保できる |
| 適応範囲 | 限定的 | 広い |
| 精神的負担 | 待機期間なし | 待機期間の不安 |
| スケジュール調整 | 急な変更が必要 | 計画的に調整可能 |
即日手術の実際の流れ
即日手術を希望する場合、実際にどのような流れで進むのかを詳しく説明します。
1. 受診前の準備
事前確認すべきこと
- 医療機関が即日手術に対応しているか
- 予約が必要か、当日受付可能か
- 保険証や本人確認書類の持参
- 服用中の薬がある場合は、お薬手帳の持参
- アレルギーの有無の確認
当日の服装
- 手術部位が露出しやすい服装
- 汚れても良い服装(出血する可能性があるため)
- 締め付けの少ない、ゆったりとした服装
来院のタイミング 即日手術を希望する場合は、午前中の早い時間帯に来院することをお勧めします。診察や検査、説明に時間がかかり、手術が午後になることもあります。
2. 受付・問診
受付で即日手術を希望する旨を伝えます。問診票に以下のような情報を記入します。
- 粉瘤に気づいた時期
- 症状の変化(大きさの変化、痛み、赤みなど)
- 既往歴・現病歴
- 服用中の薬
- アレルギーの有無
- 過去の手術歴
- 妊娠の可能性(女性の場合)
3. 診察
医師が以下の項目を確認します。
視診・触診
- 粉瘤の大きさ、部位、性状
- 炎症の有無
- 可動性や周囲組織との癒着の程度
- 開口部(へそ)の有無
必要に応じて行う検査
- 超音波検査:粉瘤の深さや範囲を確認
- 血液検査:全身状態の確認(出血傾向など)
即日手術の可否判断 医師は、粉瘤の状態、患者さんの状態、医療機関の体制を総合的に判断し、即日手術が可能かどうかを判断します。
4. 説明と同意(インフォームドコンセント)
即日手術が可能と判断された場合、医師から以下の説明があります。
手術方法の説明
- 選択される手術方法(小切開法かくり抜き法か)
- 手術にかかる時間
- 麻酔の方法
リスクと合併症の説明
- 出血
- 感染
- 創部の離開
- 瘢痕(傷跡)
- 再発の可能性
- 神経損傷(部位によって)
術後の注意事項
- 当日の安静度
- 入浴・シャワーの制限
- 運動の制限
- 創部のケア方法
- 抜糸の時期(必要な場合)
費用の説明 手術は保険適用となるため、3割負担の場合、通常5,000円~15,000円程度です(粉瘤の大きさや部位によって異なります)。
患者さんは、これらの説明を十分に理解した上で、手術同意書にサインします。不明点や不安な点があれば、遠慮なく質問することが重要です。
5. 術前準備
着替え 必要に応じて手術着に着替えます。顔や頭部の手術の場合は着替えないこともあります。
消毒 手術部位の周囲を広めに消毒します。
バイタルサイン測定 血圧、脈拍、体温を測定し、全身状態を確認します。
6. 手術
麻酔 局所麻酔を行います。麻酔液を注射する際に、チクッとした痛みがありますが、数秒程度です。麻酔が効くまで数分待ちます。
手術操作 選択された方法(小切開法またはくり抜き法)で粉瘤を摘出します。手術時間は、粉瘤の大きさや部位によって異なりますが、通常10~30分程度です。
縫合 傷を縫合します。くり抜き法の場合、小さな傷であれば縫合しないこともあります。
ガーゼ保護 創部をガーゼで保護し、必要に応じてテープで固定します。
7. 術後説明
手術終了後、以下の説明があります。
当日の注意事項
- 安静:激しい運動は避ける
- 入浴:当日はシャワーのみ(創部は濡らさない)
- 飲酒:当日は控える
- 運転:麻酔の影響があるため、当日の運転は避ける
翌日以降の注意事項
- 創部の観察:赤み、腫れ、痛みの増強、膿が出るなどの異常があれば連絡
- ガーゼ交換の方法
- シャワー・入浴の許可時期
- 運動再開の時期
処方薬の説明
- 抗生物質:感染予防のため数日間服用
- 痛み止め:必要時に服用
次回来院の予約
- 抜糸の時期(通常7~14日後)
- 創部チェックの時期
8. 会計
保険診療のため、保険証を提示して会計を行います。
9. 帰宅
術後は特に問題がなければ、すぐに帰宅できます。公共交通機関や徒歩での帰宅は問題ありませんが、自動車やバイクの運転は避けましょう。
術後のケアと注意点
粉瘤手術後の適切なケアは、傷の治りを良くし、合併症を防ぐために非常に重要です。
創部のケア
ガーゼ交換
- 頻度:通常、1日1回または2日に1回
- 方法:清潔な手で、古いガーゼを外し、傷を観察してから新しいガーゼで保護
- 消毒:医師の指示に従う(過度な消毒は創傷治癒を遅らせる可能性)
出血への対応 軽度の滲出や出血は正常です。大量の出血がある場合は、清潔なガーゼで圧迫し、医療機関に連絡してください。
日常生活での注意点
入浴・シャワー
- 当日:シャワーのみ、創部は濡らさない
- 翌日以降:医師の許可があればシャワー可、入浴は抜糸後
- 創部を濡らした場合は、清潔なタオルで優しく拭き、新しいガーゼで保護
運動
- 軽い運動:術後3~7日で可
- 激しい運動:抜糸後1週間程度
- 部位によって制限が異なるため、医師の指示に従う
飲酒 術後2~3日は控えることをお勧めします。アルコールは血流を増加させ、出血や腫れのリスクを高めます。
仕事・学校 デスクワークなどの軽作業であれば、翌日から可能なことが多いです。肉体労働や、手術部位を動かす作業は、医師の許可が出るまで避けましょう。
薬の服用
抗生物質 処方された抗生物質は、症状が改善しても最後まで飲み切ることが重要です。途中で中断すると、耐性菌の発生や感染の再燃のリスクがあります。
痛み止め 痛みがある場合に服用します。通常、術後2~3日で痛みは軽減します。
異常のサインと対処法
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
緊急性の高い症状
- 大量の出血が止まらない
- 激しい痛みが続く
- 38度以上の発熱
- 創部が大きく腫れて熱を持つ
- 赤みが広がっていく
- 悪臭のある膿が出る
- 息苦しさや全身のじんましん(麻酔アレルギーの可能性)
経過観察可能な症状
- 軽度の痛み
- 軽度の腫れ
- 少量の滲出液
- 創部周囲の軽い赤み
判断に迷う場合は、遠慮なく医療機関に相談してください。
抜糸
抜糸の時期は、手術部位や創の状態によって異なります。
一般的な抜糸時期
- 顔:5~7日後
- 体幹・四肢:7~10日後
- 頭皮:7~10日後
- 関節部や動きの多い部位:10~14日後
抜糸は通常、数分で終わり、痛みもほとんどありません。
傷跡のケア
抜糸後のケア 抜糸後も、傷跡が安定するまで数ヶ月かかります。
瘢痕予防のポイント
- 紫外線対策:傷跡は紫外線の影響を受けやすいため、日焼け止めやテープで保護
- 保湿:傷跡用のクリームやテープで保湿
- テンションの軽減:手術部位を過度に伸ばさない
- マッサージ:創が完全に閉鎖してから、軽いマッサージで瘢痕を柔らかく保つ
傷跡の目立ち方には個人差があり、体質(ケロイド体質など)も影響します。

よくある質問(FAQ)
A. 医療機関によって対応が異なります。予約制のところもあれば、当日受付可能なところもあります。ただし、確実に即日手術を受けたい場合は、事前に電話で確認し、予約することをお勧めします。また、来院時間は午前中の早い時間が望ましいです。
A. 炎症を起こしている粉瘤(感染性粉瘤)の場合、多くは即日での根治手術は難しいです。まず切開排膿や抗生物質で炎症を鎮め、完全に炎症が治まってから(通常1~3ヶ月後)根治手術を行うのが一般的です。ただし、医師の判断により、炎症期でも摘出を試みることもあります。
A. 局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔注射の際にチクッとした痛みがありますが、数秒程度です。術後は軽い痛みがありますが、処方される痛み止めで十分コントロールできる程度です。
Q4. 傷跡はどのくらい残りますか?
A. 手術方法や部位、粉瘤の大きさ、個人の体質によって異なります。くり抜き法では小さな円形の傷跡、小切開法では線状の傷跡が残ります。適切な術後ケアを行うことで、時間とともに目立たなくなっていきます。顔などの目立つ部位では、形成外科的な縫合技術を用いることで、傷跡を最小限にする工夫がされています。
Q5. 手術後、いつから仕事に復帰できますか?
A. デスクワークなど、手術部位をあまり動かさない仕事であれば、翌日から復帰可能なことが多いです。肉体労働や、手術部位を頻繁に動かす仕事の場合は、数日から1週間程度の休養が必要になることがあります。また、仕事内容によっては、抜糸までの期間は避けたほうが良い場合もあります。
Q6. 保険は適用されますか?
A. 粉瘤の手術は保険診療の対象です。3割負担の場合、粉瘤の大きさや部位によって異なりますが、通常5,000円~15,000円程度です。診察料や薬代、病理検査代などが別途かかります。
Q7. 再発することはありますか?
A. 適切に嚢腫壁を含めて完全に摘出できれば、再発率は非常に低いです(小切開法で1~2%、くり抜き法で5~10%程度)。ただし、嚢腫壁の一部が残ってしまうと再発する可能性があります。また、同じ人に別の場所に新たな粉瘤ができることはあります。
Q8. 複数個所の粉瘤を一度に手術できますか?
A. 可能ですが、手術時間が長くなり、術後の負担も大きくなるため、通常は1回の手術で1~2個所が目安です。多数の粉瘤がある場合は、何回かに分けて手術を行うことが一般的です。即日手術の場合は、時間的制約もあり、1個所の手術となることが多いです。
Q9. 顔の粉瘤でも即日手術できますか?
A. 顔の粉瘤も即日手術の対象となります。ただし、顔は血流が豊富で出血しやすい部位であり、また美容的な配慮も必要なため、経験豊富な医師による手術が望ましいです。傷跡を最小限にするため、くり抜き法や形成外科的縫合が選択されることが多いです。
Q10. 粉瘤を放置したらどうなりますか?
A. 粉瘤は自然に治ることはなく、放置すると以下のリスクがあります。
- 徐々に大きくなる(大きくなると手術の傷も大きくなる)
- 炎症を起こす(痛みや腫れを伴い、緊急処置が必要になる)
- まれに悪性化する(有棘細胞癌への変化が報告されているが、非常にまれ)
症状がなくても、気になる場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。
Q11. 手術後、スポーツはいつから再開できますか?
A. 軽いウォーキングなどは術後数日から可能ですが、ランニングや筋力トレーニングなどは抜糸後1週間程度待つことをお勧めします。水泳は創部が完全に閉鎖するまで(抜糸後2週間程度)避けましょう。激しいコンタクトスポーツは、医師の許可が出るまで控えてください。
Q12. 子どもの粉瘤でも即日手術できますか?
A. 小児の粉瘤も手術の適応となりますが、即日手術が可能かどうかは、お子さんの年齢や協力度によります。局所麻酔の注射や手術中じっとしていることができる年齢(通常、小学校高学年以上)であれば、即日手術も可能です。低年齢のお子さんの場合は、全身麻酔が必要になることもあり、その場合は総合病院での予定手術となります。
まとめ
粉瘤の即日手術について、その可能性や条件、メリット・デメリット、実際の流れまで詳しく解説してきました。
即日手術のポイント
即日手術が可能な条件
- 炎症を起こしていない粉瘤
- サイズが比較的小さい(3cm以下が目安)
- 患者さんの全身状態が良好
- 医療機関の体制が整っている
即日手術のメリット
- 通院回数が少ない
- 精神的・時間的負担が軽減される
- 早期治療により、粉瘤の増大や炎症のリスクを回避できる
即日手術の注意点
- すべての粉瘤が対象ではない
- 十分な説明と理解が必要
- 術後の安静や通院が必要
粉瘤治療で大切なこと
早期受診 粉瘤は自然治癒しない疾患です。小さいうちに治療すれば、より小さな傷で済み、手術時間も短くなります。気になるしこりがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。
適切な医療機関の選択 即日手術を希望する場合は、事前に医療機関に確認し、必要に応じて予約することをお勧めします。また、手術経験が豊富な医師のいる医療機関を選ぶことも重要です。
術後のケアの重要性 手術が成功しても、術後のケアが不適切では、感染などの合併症のリスクが高まります。医師の指示をしっかり守り、異常があればすぐに連絡することが大切です。
最後に
粉瘤は良性の腫瘍であり、命に関わる病気ではありませんが、放置すると大きくなったり、炎症を起こしたりする可能性があります。適切な時期に適切な治療を受けることで、より良い結果が得られます。
即日手術は、忙しい現代人のニーズに応える治療形態であり、条件が合えば非常に便利な選択肢です。しかし、すべてのケースで即日手術が最善とは限りません。医師とよく相談し、自分の状況に最も適した治療方法を選択することが大切です。
粉瘤でお悩みの方は、まずは専門医に相談してみてください。早期の適切な治療が、最良の結果につながります。
参考文献・情報源
本記事は、以下の信頼できる医学的情報源を参考に作成しました。
- 日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/
皮膚疾患に関する最新の医学的知見や治療ガイドラインを提供する専門学会 - 日本形成外科学会
https://www.jsprs.or.jp/
形成外科領域の専門的知識と治療技術に関する情報を提供 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/
医療制度や保険診療に関する公式情報 - 国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/
腫瘍性疾患に関する正確な医学情報を一般向けに提供 - 日本医療機能評価機構
https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/
医療の質と安全性に関する情報
※ 医学情報は日々更新されています。具体的な診断や治療については、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務