「アレルギー検査の種類は?」
「アレルギーの症状や治し方とは?」
このようにアレルギーに悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。
アレルギーは、体内に入った異物に対して免疫反応が働いてしまうことで起こります。
本記事では、アレルギー検査の種類やアレルギーの症状について解説します。
また、記事の後半ではアレルギー検査の費用やアレルギーへの対処方法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
アレルギー検査とは
アレルギー検査とは、血液検査によって自分がどのようなアレルギーを持っているかを調べることを指します。
アレルギー症状を発症する原因となるアレルゲンは、花粉やハウスダスト、食べ物、金属などさまざまなものが挙げられます。
アレルギー検査によって自分のアレルゲンを知っておけば、日常生活で避けることが可能です。
特に、体質によってはアナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギーを引き起こすこともあるため、健康を守るためにも事前にアレルゲンを知っておきましょう。
アレルギー検査の種類とは
アレルギー検査には以下の3種類があります。
- MAST36
- MAST48mix
- VIEW39
アレルギー検査は血液採取によって行われ、疑われるアレルゲンによって検査の種類を選択します。
次に、アレルギー検査の種類ごとに検査項目や特徴を解説します。
アレルギー検査(1)MAST36
MAST36では、アレルギーの原因として多い36項目のアレルゲンが一度に測定できます。
検査できる項目は以下の通りです。
検査できる項目 | 項目数 |
---|---|
食物アレルゲン | 20項目 |
花粉アレルゲン | 8項目 |
環境アレルゲン | 4項目 |
その他アレルゲン | 4項目 |
MAST36で検査できるアレルゲンの例は以下の通りです。
- ミルク
- 小麦
- 大豆
- スギ
- ヒノキ
項目数は限られていますが、基本的なアレルゲンは検査できます。
アレルギー検査(2)MAST48mix
MAST48mixは、MAST36に新たに6項目(18種類)がミックスとして追加されたアレルギー検査です。
ミックスとは、1項目に複数のアレルゲンが含まれている項目です。ミックス項目でアレルギー反応が見られた場合には個別のアレルギー検査が必要となります。
新たにミックス項目として追加される項目は以下の通りです。
- 木の実
- カビ
- ブタクサ
- イネ科
- ダニ
- ペット(犬・猫)
上記項目のアレルゲンが疑われる場合には、MAST48mixを受けましょう。
アレルギー検査(3)VIEW39
VIEW39は、MAST36の項目に近年認知度が高まりつつある項目を含めたアレルギー検査です。
追加項目として、ガやゴキブリなどの昆虫が加わっています。また、MAST36にはないサバやリンゴ、ヤケヒョウダニ、マセラチアなどのアレルゲンも検査できます。
アレルギー検査39項目の費用とは
アレルギー検査の費用目安は以下の通りです。
アレルギー検査の種類 | 費用 ※3割負担の場合 |
---|---|
アレルギー検査 | 4,700円程度 |
花粉症のアレルギー検査 | 1,800円程度 |
アレルギー症状を伴う場合、アレルギー検査には保険が適用されます。
そもそもアレルギーとは?
アレルギーとは、花粉や食物タンパクなどに対し、免疫機能が過剰にはたらいてしまうことで体に何らかの影響が出ることです。
免疫には以下の2種類があります。
- 自然免疫:もともと生き物が持っている免疫
- 獲得免疫:外部からの刺激を受けて獲得する免疫
アレルギーは獲得免疫の中の「IgE」と呼ばれる、体を守るための抗体が関わっていると考えられています。
体内のIgEが増加することによって特定の物質に対し、免疫反応が過剰に出るようになるのがアレルギー反応を引き起こす仕組みです。
IgEは、ダニや花粉・食物タンパクなどの物質に対してもできる場合があります。
また、IgEができやすい「アレルギー体質」は遺伝しやすいと言われています。
アレルギーの症状とは?
アレルギーでは、以下のような症状が現れます。
- 鼻水
- くしゃみ
- 咳
- 喉の痛み
- 倦怠感
アレルギーの症状は風邪症状と似ているものの、鼻水が水っぽかったりくしゃみが頻発するなどの違いがあります。
また、目のかゆみや充血、皮膚のかゆみ、蕁麻疹といった症状が現れる方もいます。
食べ物によるアレルギーの場合、アレルゲンとなる食べ物を摂取することでアナフィラキシーショックを起こして呼吸困難に陥る危険性があるため注意が必要です。
アレルギー反応は体質や体調によっても変化するため、可能な限りアレルゲンは避けましょう。
アレルギーの治療方法とは
アレルギーの根本的な治療方法はなく、あくまでも対症療法です。
アレルギーへの対処において重要なことは、アレルゲンを避けることです。
たとえば、花粉やペットなどといった吸引型のアレルゲンは近付かないことが対策として挙げられます。
また、特定の食べ物がアレルゲンの場合は摂取しないようにしましょう。
アレルギー検査に関するよくあるご質問
アレルギー検査に関するよくある質問をまとめました。
アレルギー検査は皮膚科や内科、耳鼻咽喉科で受けられます。
ただし、医療機関によってはアレルギー検査を受け付けていないところもあるため、事前に確認しましょう。
アレルギー検査の結果は1週間程で出ます。
MAST36に関しては3日~5日で結果が出ますが、VIEW39の検査結果が出るのには1週間かかります。
したがって、アレルギー検査の結果は「1週間程度で出る」と覚えておきましょう。
東京でアレルギー検査を受けるならアイシークリニックへご相談ください
アレルギーは、重篤な場合アナフィラキシーショックによって死亡する可能性もあります。
アレルギー検査を受けて、自身のアレルゲンを事前に知っておけばアレルギー反応を避けることができます。
アレルギー検査がまだの方や少しでもアレルギー反応が疑われる方は、自分の健康や命を守るためにも一度検査を受けてみましょう。
アイシークリニックは、老若男女どなたでも相談しやすいクリニックを目指しています。
どんな症状であっても、患者様と相談しながら治療方法を提案させていただきますので、アレルギーがあるかも知れないと思ったらぜひアイシークリニックにご相談くださいませ。
アレルギー検査の詳しい流れと準備について
検査前の準備と注意点
アレルギー検査をより正確に行うために、検査前にはいくつかの注意点があります。
服薬している薬について 抗ヒスタミン剤やステロイド剤を服用中の場合、検査結果に影響を与える可能性があります。これらの薬剤は免疫反応を抑制するため、本来陽性となるべき結果が陰性として現れることがあります。検査前には必ず医師に服用中の薬について相談し、必要に応じて一定期間の休薬を検討することもあります。
体調管理 風邪や発熱、強いストレス状態にあるときは、免疫システムが正常に機能せず、正確な検査結果が得られない場合があります。体調が良好な状態で検査を受けることが重要です。
食事について 血液検査のため、特別な絶食は必要ありませんが、検査当日は普段通りの食事を心がけましょう。極端に多量の摂取や初めて食べる食品は避けることをお勧めします。
アレルギー検査結果の見方と解釈
アレルギー検査の結果は、特異的IgE抗体の数値によって判定されます。
判定基準
- クラス0(0.34未満):陰性
- クラス1(0.35~0.69):疑陽性
- クラス2(0.70~3.49):陽性
- クラス3(3.50~17.49):陽性
- クラス4(17.50~49.99):強陽性
- クラス5(50.00~99.99):強陽性
- クラス6(100以上):非常に強い陽性
数値の意味 クラス2以上が陽性と判定されますが、数値が高いからといって必ずしも症状が重篤になるとは限りません。逆に、クラス1の疑陽性でも実際にアレルギー症状を起こすことがあります。検査結果は症状と合わせて総合的に判断することが重要です。
偽陽性・偽陰性について アレルギー検査では、実際にはアレルギーがないのに陽性となる「偽陽性」や、アレルギーがあるのに陰性となる「偽陰性」が起こることがあります。これは検査の限界であり、症状の経過観察や追加検査が必要になる場合があります。
年齢別アレルギーの特徴と対策
乳幼児期(0~2歳)のアレルギー
乳幼児期は消化管や免疫システムが未発達のため、食物アレルギーが最も多い時期です。
主なアレルゲン
- 卵(最も多い)
- 牛乳・乳製品
- 小麦
- 大豆
症状の特徴 乳幼児では皮膚症状が主体となることが多く、湿疹やアトピー性皮膚炎として現れます。また、嘔吐や下痢などの消化器症状も見られます。
対策のポイント 離乳食を始める際は、新しい食材を一つずつ少量から開始し、3日間は同じ食材を続けて様子を見ることが大切です。また、家族にアレルギー歴がある場合は、特に慎重に進めましょう。
学童期(3~12歳)のアレルギー
学童期になると食物アレルギーは改善傾向にある一方で、環境アレルゲンによるアレルギー性鼻炎や気管支喘息が増加します。
主なアレルゲン
- ダニ・ハウスダスト
- 花粉(スギ、ヒノキなど)
- ペットの毛
- 甲殻類(新たに発症)
症状の特徴 鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどのアレルギー性鼻炎症状や、咳、喘鳴などの呼吸器症状が中心となります。
学校生活での注意 給食でのアレルギー対応や、体育の授業での運動誘発性アレルギーへの配慮が必要です。エピペンを処方されている場合は、学校への連携も重要になります。
思春期・青年期のアレルギー
ホルモンバランスの変化により、これまでなかったアレルギーが新たに発症することがあります。
特徴的なアレルギー
- 口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群)
- 化粧品や金属による接触性皮膚炎
- ラテックスアレルギー
ライフスタイルへの影響 受験や就職活動などのストレスが症状を悪化させることがあります。また、一人暮らしを始める際のアレルゲン管理も重要な課題となります。
成人期のアレルギー
成人になってから新たにアレルギーを発症するケースも珍しくありません。
職業性アレルギー 特定の職業に従事することで発症するアレルギーがあります。
- 美容師:毛染め剤アレルギー
- 医療従事者:ラテックスアレルギー
- 農業従事者:農薬アレルギー
- 食品関係者:特定食材アレルギー
大人の食物アレルギー 子どもの頃は問題なく食べられていた食品に対して、突然アレルギーを発症することがあります。特に甲殻類、果物、ナッツ類での発症が多く見られます。
季節別アレルギー対策ガイド
春(3~5月):花粉症対策の季節
主要アレルゲン
- スギ花粉(2月下旬~4月上旬)
- ヒノキ花粉(3月下旬~5月上旬)
- シラカンバ花粉(4月~6月)
効果的な対策
- 情報収集: 花粉飛散予測を毎日チェック
- 外出時の工夫: マスク、メガネの着用、花粉の付きにくい衣類の選択
- 帰宅時: 衣類を払ってから入室、手洗い・うがい・洗顔の徹底
- 住環境: 窓を閉める、空気清浄機の使用、洗濯物の室内干し
- 予防薬: 症状が出る前からの抗アレルギー薬の服用
夏(6~8月):ダニ・カビ対策が重要
主要アレルゲン
- ヤケヒョウダニ
- コナヒョウダニ
- 各種カビ(クラドスポリウム、アルテルナリアなど)
効果的な対策
- 湿度管理: 湿度50%以下を維持
- 寝具のケア: 週1回以上の高温洗濯(60℃以上)
- 掃除: ダニアレルゲン除去効果のある掃除機の使用
- カビ対策: 浴室や台所の換気徹底、防カビ対策
秋(9~11月):雑草花粉とダニに注意
主要アレルゲン
- ブタクサ花粉
- ヨモギ花粉
- カナムグラ花粉
- ダニ(死骸やフンの蓄積)
効果的な対策 春の花粉症対策に加えて、夏場に繁殖したダニの死骸やフンによるアレルギーにも注意が必要です。大掃除や寝具の入れ替え時期でもあるため、十分な換気とマスク着用を心がけましょう。
冬(12~2月):室内アレルゲンと乾燥対策
主要アレルゲン
- ダニ・ハウスダスト
- ペットのフケ
- カビ
効果的な対策 暖房により室内が乾燥するため、適度な湿度管理が必要です。また、換気不足により室内のアレルゲン濃度が高くなりやすいため、定期的な換気と空気清浄機の活用が重要です。
食物アレルギーの詳細ガイド
3大食物アレルゲンの詳細
卵アレルギー 卵は乳幼児期に最も多い食物アレルゲンです。卵白に含まれるオボムコイドという蛋白質が主な原因となります。
症状: 皮膚症状(湿疹、蕁麻疹)、消化器症状(嘔吐、下痢)、呼吸器症状(咳、喘鳴)
注意が必要な食品: マヨネーズ、ケーキ、パン、麺類、ワクチン(一部)
加熱による変化: 十分に加熱した卵は症状が軽減されることがありますが、重篤なアレルギーの場合は加熱調理済みでも摂取を避ける必要があります。
牛乳アレルギー 牛乳に含まれるカゼインやβ-ラクトグロブリンなどの蛋白質が原因となります。
症状: 消化器症状が中心で、嘔吐、下痢、腹痛などが現れます。
注意が必要な食品: チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、パン、お菓子、加工食品
代替品: 豆乳、アーモンドミルク、オーツミルクなどの植物性ミルクの活用
小麦アレルギー 小麦に含まれるグルテンやその他の蛋白質が原因となります。セリアック病とは異なる疾患です。
症状: 皮膚症状、消化器症状、運動誘発性アナフィラキシー
注意が必要な食品: パン、麺類、お菓子、醤油、ビール、化粧品
代替品: 米粉、タピオカ粉、アーモンド粉などの使用
成人に多い食物アレルギー
甲殻類アレルギー エビ、カニなどの甲殻類に対するアレルギーで、成人期に発症することが多い特徴があります。
主な症状: 蕁麻疹、血管浮腫、アナフィラキシーショック
注意点: 甲殻類の殻を砕いて作られるキチン・キトサンサプリメント、グルコサミン、カニ風味かまぼこなども注意が必要です。
魚類アレルギー 特定の魚種や魚全般に対するアレルギーがあります。
代表的な魚: サバ、マグロ、サケ、イワシ
症状: 口の中のしびれ、蕁麻疹、呼吸器症状
果物・野菜アレルギー(口腔アレルギー症候群) 花粉症と関連して発症することが多く、生の果物や野菜を食べると口の中がかゆくなったり腫れたりします。
花粉との関連:
- スギ・ヒノキ花粉: トマト
- シラカンバ花粉: リンゴ、桃、さくらんぼ、アーモンド
- ブタクサ花粉: メロン、スイカ、バナナ
対策: 加熱調理することで症状を避けられる場合が多くあります。
アレルギーの最新治療法
舌下免疫療法
近年注目されているアレルギーの根本的治療法です。アレルゲンを少量ずつ舌の下に投与することで、体をアレルゲンに慣らしていく治療法です。
対象となるアレルギー
- スギ花粉症
- ダニアレルギー性鼻炎
治療の流れ
- 初回投与は医療機関で実施
- その後は自宅で毎日投与
- 治療期間は3~5年間
- 定期的な通院による経過観察
効果と注意点 約7~8割の患者で症状の軽減が期待できます。ただし、治療開始後にアナフィラキシーショックを起こすリスクがあるため、十分な説明と同意のもとで行われます。
生物学的製剤
重症のアレルギー性喘息やアトピー性皮膚炎に対して使用される新しい治療法です。
主な薬剤
- 抗IgE抗体(オマリズマブ)
- 抗IL-4受容体抗体(デュピルマブ)
- 抗IL-5抗体(メポリズマブ)
適応 従来の治療では効果が不十分な重症例に限定されます。高額な治療費がかかりますが、劇的な症状改善が期待できる場合があります。
アレルゲン免疫療法(減感作療法)
アレルゲンエキスを注射により投与する従来からの免疫療法です。舌下免疫療法が困難な場合や、複数のアレルゲンに対応する場合に選択されることがあります。
アレルギーと生活習慣の関係
住環境の改善
ダニ対策の住環境
- 畳よりもフローリングを選択
- カーペットの除去または定期的なクリーニング
- 寝具は防ダニカバーの使用
- ぬいぐるみは定期的な冷凍・洗濯
- 室内湿度を50%以下に維持
花粉対策の住環境
- 高性能エアフィルター(HEPAフィルター)付きの空気清浄機
- 窓周辺の花粉侵入防止対策
- 玄関での花粉除去スペース設置
食生活とアレルギー
腸内環境の改善 腸内細菌バランスがアレルギー症状に影響することが分かってきています。
有効な食品:
- 発酵食品(ヨーグルト、味噌、キムチ)※アレルギーがない場合
- 食物繊維豊富な食品
- オメガ3脂肪酸(魚油、亜麻仁油)
抗酸化作用のある食品 活性酸素がアレルギー症状を悪化させることがあるため、抗酸化作用のある食品を積極的に摂取しましょう。
推奨食品:
- ビタミンC豊富な食品(柑橘類、ブロッコリー)
- ビタミンE豊富な食品(ナッツ類、植物油)
- ポリフェノール豊富な食品(緑茶、ブルーベリー)
重篤なアレルギー反応への対応
アナフィラキシーショックの認識と対応
アナフィラキシーは生命に関わる重篤なアレルギー反応です。迅速な対応が生命を救います。
症状の進行
- 初期症状(5~30分以内)
- 皮膚: 全身の蕁麻疹、かゆみ、紅潮
- 消化器: 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
- 呼吸器: 鼻水、くしゃみ、軽い咳
- 進行期症状(30分~2時間以内)
- 血圧低下、意識朦朧
- 呼吸困難、喘鳴
- 顔面・咽頭の腫れ
- 重篤期症状
- ショック状態
- 心停止
- 呼吸停止
対応手順
- 即座にエピペンを使用(処方されている場合)
- 119番通報で救急車を要請
- 安静な姿勢を保つ(ショック体位)
- 気道確保と呼吸・脈拍の確認
- 医療機関での継続治療
エピペンの使い方
エピペン(アドレナリン自己注射薬)は、アナフィラキシーショックの際に使用する緊急治療薬です。
使用方法
- オレンジ色のキャップを外す
- 太ももの外側に対して垂直に当てる
- 「カチッ」という音がするまで強く押し付ける
- 10秒間押し続ける
- 針を抜いて、注射部位をマッサージ
注意点
- 衣服の上からでも注射可能
- 使用後も必ず救急車を要請
- エピペンの有効期限を定期的に確認
- 家族や周囲の人にも使用方法を教えておく
アレルギーに関する誤解と正しい知識
よくある誤解
誤解1: 「アレルギーは気持ちの問題」 正しい知識: アレルギーは免疫システムの異常反応による身体的な病気です。心理的な要因が症状を悪化させることはありますが、根本的な原因は免疫学的なメカニズムです。
誤解2: 「アレルギー検査で陽性でも症状がなければ問題ない」 正しい知識: 検査で陽性であっても必ずしもアレルギー症状が出るとは限りませんが、将来的に症状が現れる可能性があります。また、疲労やストレスなどの条件が重なると症状が出現することもあります。
誤解3: 「自然食品なら安全」 正しい知識: 天然の食品であってもアレルギーを起こす可能性があります。むしろ、加工度の低い食品の方がアレルゲン蛋白質がそのまま残っている場合が多く、注意が必要です。
誤解4: 「アレルギーは子どものうちに治る」 正しい知識: 卵や牛乳などの一部の食物アレルギーは成長とともに改善することがありますが、すべてのアレルギーが治るわけではありません。また、大人になってから新たにアレルギーを発症することもあります。
アレルギーと遺伝の関係
家族歴とリスク
- 両親ともにアレルギー体質: 子どものアレルギー発症リスク約60-70%
- 片方の親がアレルギー体質: 子どものアレルギー発症リスク約30-40%
- 両親ともにアレルギーなし: 子どものアレルギー発症リスク約10-15%
予防可能性 完全な予防は困難ですが、以下の対策により発症リスクを低減できる可能性があります:
- 妊娠中・授乳中の適切な栄養管理
- 乳児期の適切な離乳食開始時期
- 過度に清潔すぎない環境での育児
- 母乳による育児の推奨
職場でのアレルギー対策
職場環境の改善
オフィス環境
- 空気清浄機の設置
- 定期的な清掃とダスト除去
- 観葉植物の適切な管理
- 香料・芳香剤の使用制限
食堂・給食での配慮
- アレルギー表示の徹底
- 調理器具の洗浄・分離
- 代替食品の提供
- 緊急時対応マニュアルの整備
アレルギー患者の職場での権利
労働安全衛生法により、職場でのアレルギー対策は事業者の義務となっています。
事業者の義務
- 作業環境測定と改善
- アレルゲンばく露防止対策
- 健康診断とフォローアップ
- 緊急時対応体制の整備
労働者の権利
- 安全で健康な作業環境を求める権利
- アレルギー情報の適切な管理を求める権利
- 合理的配慮を受ける権利
アレルギーのある子どもの育児・教育
乳幼児期の注意点
離乳食の進め方 アレルギーリスクの高い食材の導入は、以下のガイドラインに従って慎重に行います:
- 生後5-6か月から開始
- 新しい食材は一つずつ、少量から
- 3日間同じ食材を続けて様子観察
- 午前中に与えて症状観察
- 家族がいる時間帯に実施
スキンケアの重要性 皮膚バリア機能の低下は食物アレルギー発症のリスクを高めます。乳幼児期からの適切なスキンケアが重要です。
保育園・幼稚園での対応
入園前の準備
- アレルギー管理指導表の提出
- 緊急時対応計画の策定
- 代替食品の準備
- エピペンの保管・使用方法の説明
日常的な注意点
- 他の子どもとの食べ物の共有防止
- 手洗いの徹底指導
- アレルギー症状出現時の連絡体制
学校でのアレルギー管理
学校生活管理指導表 医師による詳細な指導表の作成により、学校での適切な対応が可能になります。
記載内容:
- アレルゲンの詳細
- 症状の程度
- 緊急時の対応方法
- 使用薬剤の情報
- 運動制限の有無
給食対応
- 詳細な原材料情報の提供
- 代替食品の準備
- 調理過程での混入防止
- 配膳時の確認体制
アレルギーと他の疾患との関係
アレルギーマーチ
アレルギー疾患は年齢とともに症状が変化していく傾向があり、これを「アレルギーマーチ」と呼びます。
典型的な経過
- 乳児期: アトピー性皮膚炎、食物アレルギー
- 幼児期: 気管支喘息の発症
- 学童期: アレルギー性鼻炎の発症
- 思春期以降: 症状の変化、新たなアレルギーの発症
早期介入の重要性 アトピー性皮膚炎の適切な治療により、その後の喘息やアレルギー性鼻炎の発症を予防できる可能性があることが分かってきています。
合併症リスク
気管支喘息との関係 アレルギー性鼻炎と気管支喘息は密接に関連しており、「one airway, one disease」という概念で捉えられています。鼻炎の適切な治療が喘息の予防や改善につながります。
副鼻腔炎との関係 慢性的なアレルギー性鼻炎により、副鼻腔炎を併発するリスクが高まります。特に好酸球性副鼻腔炎は難治性で、ステロイド治療や手術が必要になることがあります。
ストレスとアレルギーの関係
心身相関
ストレスはアレルギー症状を悪化させる重要な要因です。
ストレスがアレルギーに与える影響
- 免疫システムのバランス崩壊
- 炎症反応の増強
- 症状に対する知覚の敏感化
- 治療薬の効果減弱
ストレス管理の方法
- 規則正しい生活: 十分な睡眠、バランスの取れた食事
- 適度な運動: 免疫機能の正常化、ストレス解消
- リラクセーション: 深呼吸、瞑想、ヨガ
- 趣味や娯楽: ストレス発散の場の確保
- 社会的サポート: 家族や友人との良好な関係
睡眠とアレルギー
睡眠不足の影響
- 免疫機能の低下
- ストレスホルモンの増加
- 症状の悪化
- 治療効果の減弱
良質な睡眠のための環境作り
- アレルゲン除去された寝室
- 適切な温度・湿度管理
- 遮光・遮音対策
- 寝具の定期的な洗濯・交換
妊娠・授乳期とアレルギー
妊娠中のアレルギー管理
薬物療法の注意点 妊娠中はアレルギー薬の使用に制限があります。妊娠の可能性がある女性や妊娠中の女性は、必ず医師に相談してから薬を使用してください。
安全性の高い薬剤
- 一部の抗ヒスタミン薬
- 局所ステロイド薬(点鼻・点眼)
- 生理食塩水による鼻洗浄
授乳期の注意点
母乳への影響 授乳中の母親がアレルゲンを摂取しても、通常は母乳を通じて乳児にアレルギー症状が現れることは稀です。ただし、重篤な食物アレルギーがある乳児の場合は、医師と相談しながら母親の食事制限を検討することがあります。
薬剤の使用 授乳中でも比較的安全に使用できるアレルギー薬があります。自己判断で薬を中止せず、医師に相談しながら適切な治療を継続しましょう。
高齢者のアレルギー
加齢とアレルギーの変化
高齢になると免疫機能が変化し、アレルギーの症状や治療反応が変わることがあります。
特徴的な変化
- 新たなアレルギーの発症
- 既存アレルギーの症状変化
- 薬物への反応性の変化
- 副作用のリスク増加
注意が必要なアレルギー
- 薬物アレルギー
- 食物アレルギー(特に魚介類)
- ラテックスアレルギー(医療器具)
高齢者向けの対策
服薬管理 複数の薬を服用している高齢者では、薬物相互作用やアレルギー反応のリスクが高まります。お薬手帳の活用と定期的な見直しが重要です。
生活環境の調整 身体機能の低下により、従来のアレルゲン回避が困難になる場合があります。家族のサポートや住環境の改善、介護サービスの活用を検討しましょう。
旅行時のアレルギー対策
国内旅行での注意点
事前準備
- 旅行先のアレルゲン情報収集
- 十分な薬剤の準備
- エピペンの携帯(処方されている場合)
- アレルギー情報カードの準備
宿泊施設での配慮
- ペット同伴可否の確認
- 寝具のアレルゲン対策
- 食事のアレルギー対応確認
海外旅行での注意点
言語の準備 アレルギー情報を現地語または英語で伝えられるよう準備しましょう。
英語での表現例:
- I have a severe allergy to…(…に重篤なアレルギーがあります)
- This is my emergency medication(これは緊急時の薬です)
- Please call an ambulance(救急車を呼んでください)
医療体制の確認 旅行先の医療体制や緊急時の対応方法を事前に調べておくことが重要です。
アレルギー検査の新技術と展望
分子アレルゲン検査
従来の検査では特定できなかった詳細なアレルゲン成分を調べる最新の検査法です。
メリット
- より精密なアレルゲンの特定
- 交差反応の予測
- 重症度の予測
- 個別化された治療計画
対象となるアレルギー
- 花粉症(スギ、シラカンバなど)
- 食物アレルギー(ピーナッツ、牛乳など)
- ラテックスアレルギー
バイオマーカーの活用
最新の研究動向
- 好酸球数の測定
- 総IgE値の評価
- サイトカインプロファイル
- マイクロバイオーム解析
これらの新しい指標により、より精密なアレルギー診断と治療方針の決定が可能になりつつあります。
まとめ:アレルギーと上手に付き合うために
基本的な心構え
アレルギーは完治が困難な疾患ですが、適切な知識と対策により、症状をコントロールしながら快適な生活を送ることが可能です。
重要なポイント
- 正確な診断: 適切なアレルギー検査による原因特定
- 個別化された対策: 自分のアレルギーに合わせた具体的対策
- 継続的な管理: 定期的な見直しと調整
- 緊急時への備え: 重篤な反応に対する準備
- 周囲の理解: 家族や職場での適切な情報共有
医療機関選びのポイント
アレルギー専門医の重要性 一般的な内科や皮膚科に加えて、アレルギー専門医による診療を受けることで、より専門的で個別化された治療が可能になります。
セカンドオピニオンの活用 治療効果が不十分な場合や、診断に疑問がある場合は、他の医療機関での意見を求めることも重要です。
定期的なフォローアップ アレルギーは症状が変化する疾患です。定期的な検査と診察により、適切な治療調整を行いましょう。
アレルギーに関する正しい知識を身につけ、適切な対策を講じることで、アレルギーと上手に付き合いながら充実した生活を送ることができます。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務