はじめに
鏡を見るたびに気になる頬の赤み。メイクで隠そうとしても透けて見える赤ら顔に、多くの女性が悩みを抱えています。「なぜ私だけこんなに顔が赤くなるの?」「体質だから仕方ない」と諦めている方も多いのではないでしょうか。
実は、赤ら顔には様々な原因があり、その多くは適切な対処によって改善が期待できます。特に女性の場合、ホルモンバランスの変動や特有の肌質、日常のスキンケア習慣など、男性とは異なる要因が赤ら顔を引き起こしていることがあります。
この記事では、女性特有の赤ら顔の原因を医学的な観点から詳しく解説し、日常生活でできるセルフケアから医療機関での専門的な治療まで、幅広い対策法をご紹介します。あなたの赤ら顔の原因を理解し、適切なケアを始める第一歩としてお役立てください。

赤ら顔とは?基本的なメカニズム
皮膚が赤く見える仕組み
私たちの顔が赤く見えるのは、皮膚の浅い部分にある毛細血管が拡張し、血流量が増加することが主な原因です。顔の皮膚は体の他の部位と比べて非常に薄く、特に頬や鼻の部分は0.5〜1.0mm程度しかありません。そのため、皮膚の下を流れる血液の赤い色が表面に透けて見えやすいのです。
健康な状態では、毛細血管は適度に収縮と拡張を繰り返し、体温調節や栄養供給を行っています。しかし、何らかの原因で血管が拡張したままになったり、血管の数が増えたりすると、持続的な赤みとして現れます。
赤ら顔の種類
医学的には、赤ら顔は大きく分けて以下の種類に分類されます。
一過性の赤み 緊張や運動、気温の変化などで一時的に顔が赤くなる状態です。血管が一時的に拡張しているだけで、原因がなくなれば通常の肌色に戻ります。
持続性の赤み 常に頬や鼻が赤みを帯びている状態です。毛細血管の拡張が慢性化していたり、血管の数自体が増えていることがあります。
炎症性の赤み 皮膚に炎症が起きて赤くなっている状態です。赤みに加えて、かゆみやヒリヒリ感、皮むけなどの症状を伴うことがあります。
女性に赤ら顔が多い理由
皮膚の構造的特徴
女性の肌は男性と比べて、いくつかの構造的な違いがあります。
まず、女性の皮膚は男性よりも薄い傾向にあります。特に表皮の厚さは男性の約80〜90%程度とされています。皮膚が薄いということは、その分だけ毛細血管が透けて見えやすいということを意味します。
また、女性の肌は男性に比べて皮脂の分泌量が少なく、水分量が多い特徴があります。これは一見良いことのように思えますが、皮脂膜が薄いため外部刺激から肌を守るバリア機能が弱く、刺激に対して敏感になりやすいのです。
ホルモンバランスの影響
女性ホルモンは赤ら顔と深い関係があります。エストロゲン(卵胞ホルモン)は血管を拡張させる作用があり、プロゲステロン(黄体ホルモン)は皮脂分泌を促進したり、体温を上昇させる働きがあります。
月経周期による変動 排卵後から月経前にかけて、プロゲステロンの分泌が増加します。この時期には体温が上がり、血管も拡張しやすくなるため、顔の赤みが強くなることがあります。また、この時期は肌が敏感になりやすく、普段は問題ないスキンケア製品でも刺激を感じることがあります。
妊娠期 妊娠中は女性ホルモンの分泌量が大幅に増加します。血液量も通常の1.5倍程度に増え、血管も拡張しやすい状態になります。そのため、妊娠前にはなかった赤ら顔の症状が現れることがあります。
更年期 閉経前後の更年期には、エストロゲンの分泌が急激に減少します。これにより自律神経のバランスが乱れ、血管の収縮・拡張のコントロールがうまくいかなくなります。いわゆる「ホットフラッシュ(ほてり)」として、突然顔が赤くなり、ほてりを感じる症状が現れることがあります。
自律神経との関係
女性は男性に比べて自律神経が乱れやすい傾向にあります。これは女性ホルモンの変動が自律神経に影響を与えるためです。
自律神経は血管の収縮と拡張をコントロールしています。交感神経が優位になると血管は収縮し、副交感神経が優位になると血管は拡張します。この切り替えがスムーズに行われないと、血管が拡張したままになり、慢性的な赤ら顔につながります。
ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣などは自律神経のバランスを乱す大きな要因となります。特に現代女性は仕事と家事の両立、育児、介護など、多くのストレス要因を抱えており、これが赤ら顔の一因となっているケースも少なくありません。
女性の赤ら顔の主な原因
1. 酒さ(しゅさ)
酒さは、顔の中心部、特に頬や鼻、額、顎に慢性的な赤みやほてりが現れる皮膚疾患です。30〜50代の女性に多く見られ、赤ら顔の原因として最も代表的なものの一つです。
症状の特徴 初期段階では、一時的な赤みやほてりとして始まります。刺激のある食べ物を食べたときや、温度変化、緊張などで症状が悪化します。進行すると、赤みが持続的になり、細かい血管(毛細血管拡張)が目立つようになります。
さらに進行すると、赤いブツブツ(丘疹)や膿を持った吹き出物(膿疱)が現れることもあります。一見するとニキビのようですが、ニキビとは異なり、黒ニキビや白ニキビは見られません。
発症のメカニズム 酒さの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。血管の異常な反応性、皮膚の炎症反応、顔に常在するニキビダニ(デモデックス)の増加、紫外線ダメージなどが関係していると言われています。
女性に多い理由 女性ホルモンの変動が血管反応に影響を与えることや、女性の方が皮膚が薄く血管が透けて見えやすいことなどが、女性に酒さが多い理由と考えられています。
2. 脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に起こる湿疹の一種です。顔では特に鼻の周り、眉間、生え際などに赤みや皮むけが現れます。
症状の特徴 赤みに加えて、カサカサとした細かいフケのような皮むけが特徴的です。かゆみを伴うこともあり、時に脂っぽい黄色いかさぶたのようなものが付着することもあります。症状は季節によって変動し、多くの場合、冬に悪化します。
原因 皮膚に常在するマラセチアという真菌(カビの一種)が、皮脂を分解する際に皮膚に刺激を与えることが主な原因と考えられています。ストレス、睡眠不足、ビタミンB群の不足なども発症や悪化の要因となります。
女性特有の要因 月経前のホルモンバランスの変化により皮脂分泌が増加すると、症状が悪化することがあります。また、ファンデーションなどのメイク製品が毛穴に詰まることも、症状を悪化させる要因となります。
3. 敏感肌・バリア機能の低下
近年、自分の肌を「敏感肌」と感じる女性が増えています。実際、化粧品会社の調査では、約7割の女性が自身を敏感肌だと感じているというデータもあります。
バリア機能とは 皮膚の最も外側にある角質層は、わずか0.02mmほどの薄い層ですが、外部からの刺激や異物の侵入を防ぎ、内部の水分が蒸発するのを防ぐ「バリア機能」を果たしています。このバリア機能が低下すると、些細な刺激でも炎症反応が起こりやすくなり、赤みが生じます。
バリア機能が低下する原因 過度な洗顔やクレンジング、ピーリングなどで必要な皮脂まで取り除いてしまうこと、エアコンによる乾燥、紫外線ダメージ、ストレスや睡眠不足による肌のターンオーバーの乱れなどが主な原因です。
女性に多い理由 女性は美容への関心が高く、様々なスキンケア製品を使用したり、メイクとクレンジングを日常的に行うため、知らず知らずのうちに肌に過度な負担をかけてしまっていることがあります。特に「しっかりメイクを落とさなければ」という意識から、強力なクレンジング剤を使ったり、ゴシゴシと擦りすぎたりすることで、バリア機能を損なってしまうケースが多く見られます。
4. 毛細血管拡張症
毛細血管拡張症は、顔の毛細血管が拡張して赤い糸状や網目状の模様として見える状態です。特に頬や小鼻の脇に現れやすく、細い赤い線(血管)が透けて見えます。
発症のメカニズム 長年の紫外線ダメージ、寒暖差の激しい環境、皮膚の薄さなどが原因で、毛細血管の弾力が失われ、一度拡張すると元に戻りにくくなります。また、ステロイド外用薬の長期使用も毛細血管拡張の原因となることがあります。
女性に多い理由 女性は男性に比べて皮膚が薄いため、拡張した毛細血管が目立ちやすい傾向にあります。また、美容への意識から過度なスキンケアを行った結果、皮膚が薄くなってしまうケースもあります。
5. ニキビ・ニキビ跡
ニキビそのものや、ニキビが治った後の炎症後紅斑も、赤ら顔の原因となります。
炎症後紅斑 ニキビの炎症が治まった後も、数ヶ月から数年にわたって赤みが残ることがあります。これは炎症によってダメージを受けた部位を修復するために、毛細血管が増生したり、血流が増加したりするためです。
女性特有の要因 月経前にはプロゲステロンの影響で皮脂分泌が増加し、ニキビができやすくなります。また、メイクによる毛穴の詰まりもニキビの原因となります。気になってニキビを触ったり潰したりすることで、炎症が悪化し、より長期間赤みが残ることもあります。
6. アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返される皮膚疾患です。顔に症状が出ると、赤みやカサつきが目立ちます。
成人女性のアトピー性皮膚炎の特徴 子供の頃にアトピー性皮膚炎があった人が、成人してから再発するケースや、大人になって初めて発症するケースもあります。顔では特に目の周り、口の周りに症状が出やすく、赤みとともに乾燥や皮むけが見られます。
悪化要因 ストレス、睡眠不足、生理周期によるホルモンバランスの変化、化粧品やヘアケア製品の刺激などが悪化の要因となります。
生活習慣と赤ら顔
食生活の影響
日々の食事内容は、赤ら顔に大きな影響を与えます。
血管を拡張させる食品 辛いもの、熱い飲み物、カフェイン、アルコールなどは血管を拡張させ、顔の赤みを強くします。特に唐辛子に含まれるカプサイシンは、体温を上昇させ、血管を拡張させる作用があります。
カフェインは少量であれば血管を収縮させる作用がありますが、過剰摂取は逆効果です。また、カフェインの摂取を突然やめると、離脱症状として一時的に血管が拡張することもあります。
アルコールは、「酒さ」という名前の由来にもなっているほど、顔の赤みと関係が深い物質です。アルコールが体内で代謝される過程で血管拡張物質が産生され、顔が赤くなります。
炎症を促進する食品 糖質の過剰摂取は、体内で炎症反応を引き起こしやすくします。また、トランス脂肪酸を多く含む加工食品も炎症を促進する可能性があります。
不足しがちな栄養素 ビタミンB群、特にビタミンB2とB6は、皮膚の健康維持に重要な役割を果たします。これらが不足すると、脂漏性皮膚炎などの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
また、オメガ3脂肪酸は抗炎症作用があり、肌の健康をサポートします。青魚、くるみ、亜麻仁油などに多く含まれています。
温度変化の影響
寒暖差 急激な温度変化は、血管の急速な拡張や収縮を引き起こします。特に冬場、暖房の効いた室内から寒い屋外に出たり、その逆の動きをしたりすることで、顔が真っ赤になることがあります。
これを繰り返していると、血管の調節機能が乱れ、慢性的な赤ら顔につながることがあります。
入浴習慣 熱いお湯に長時間浸かると、血管が拡張して顔が赤くなります。特に42度以上の熱い湯は、皮膚のバリア機能を低下させる可能性もあります。38〜40度程度のぬるめのお湯で、15〜20分程度の入浴が理想的です。
スキンケアの影響
過度なクレンジング・洗顔 「しっかり汚れを落とさなければ」という意識から、必要以上に強力なクレンジング剤を使ったり、一日に何度も洗顔したりすることは、皮膚のバリア機能を損ないます。
特にオイルクレンジングやシートタイプのメイク落としは、洗浄力が強い反面、肌への負担も大きい傾向にあります。また、洗顔時にゴシゴシと擦る習慣も、摩擦によって皮膚を傷つけます。
不適切な保湿 乾燥は肌のバリア機能を低下させる大きな要因です。洗顔後、できるだけ早く保湿することが重要です。化粧水だけで終わらせず、乳液やクリームで水分の蒸発を防ぐことも大切です。
しかし、過度な保湿も問題です。あまりに多くの製品を重ね塗りすることは、肌への負担となります。自分の肌に必要な量を見極めることが重要です。
合わない化粧品の使用 アルコール、香料、防腐剤などが配合された化粧品は、敏感な肌には刺激となることがあります。特に敏感肌の人は、「敏感肌用」「低刺激性」と表示された製品を選ぶことをお勧めします。
ただし、「自然派」「オーガニック」という表示があっても、必ずしも肌に優しいとは限りません。植物由来成分でもアレルギーを起こすことがあるからです。
紫外線の影響
紫外線は赤ら顔の大きな悪化要因です。
UVダメージのメカニズム 紫外線を浴びると、皮膚では炎症反応が起こります。この炎症を抑えるために、血管が拡張して血流が増加します。短期的には日焼けによる赤みとして現れますが、長期的には血管の弾力が失われ、慢性的な赤ら顔につながります。
また、紫外線は皮膚のコラーゲンやエラスチンを破壊し、皮膚を薄くします。皮膚が薄くなると、血管がより透けて見えやすくなります。
日焼け止めの選び方 敏感肌の人は、紫外線吸収剤ではなく、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)を使用した日焼け止めを選ぶとよいでしょう。紫外線吸収剤は効果は高いのですが、化学反応を起こすため、肌への刺激となることがあります。
SPF値やPA値は高ければ高いほど良いというわけではありません。日常生活ではSPF30、PA+++程度で十分です。数値が高いものほど、肌への負担も大きくなる傾向があります。
ストレスの影響
精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血管の調節機能に影響を与えます。
ストレス反応のメカニズム ストレスを感じると、体は「闘争・逃走反応」を起こします。この時、交感神経が優位になり、心拍数が上がり、血圧が上昇します。顔の血管も拡張し、赤くなります。
慢性的なストレス状態では、この反応が頻繁に起こるため、血管が拡張しやすい状態が続きます。また、ストレスはホルモンバランスを乱し、肌のバリア機能を低下させることもあります。
女性とストレス 現代の女性は、仕事、家事、育児、人間関係など、多くのストレス要因を抱えています。特に「完璧にこなさなければ」というプレッシャーを感じやすい傾向があり、これが慢性的なストレス状態を生み出しています。
睡眠の重要性
睡眠不足は、肌の健康に大きな影響を与えます。
睡眠と肌の関係 睡眠中、特に深い睡眠時には成長ホルモンが分泌され、肌の修復や再生が行われます。睡眠不足が続くと、この修復プロセスが十分に行われず、肌のバリア機能が低下します。
また、睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、血管の調節機能にも影響を与えます。さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加し、炎症が起こりやすくなります。
質の良い睡眠のために 就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトによって睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されます。就寝の1〜2時間前には、これらのデバイスの使用を控えることが推奨されます。
また、寝室の温度は18〜22度程度、湿度は40〜60%程度が理想的です。暗く、静かで、快適な睡眠環境を整えることが大切です。
セルフケアでできる赤ら顔対策
スキンケアの見直し
クレンジング・洗顔の改善 クレンジングは、自分の肌質とメイクの濃さに合ったものを選びましょう。普段のメイクがナチュラルであれば、ミルクタイプやクリームタイプの優しいクレンジング剤で十分です。
洗顔は、ぬるま湯(32〜36度程度)を使い、たっぷりの泡で優しく洗います。泡立てネットを使うと、きめ細かい泡が簡単に作れます。洗顔時間は1分程度で十分です。長時間洗うと、必要な皮脂まで取り除いてしまいます。
すすぎは特に丁寧に行いましょう。生え際や顎のラインに洗顔料が残ると、肌トラブルの原因となります。20〜30回程度、しっかりとすすぎましょう。
洗顔後は、柔らかいタオルで押さえるように優しく水分を拭き取ります。ゴシゴシと擦るのは厳禁です。
保湿ケア 洗顔後は、できるだけ早く保湿しましょう。理想は洗顔後3分以内です。
化粧水は、手のひらに適量を取り、体温で温めてから、両手で顔全体を包み込むように優しくなじませます。パッティングは毛細血管を刺激して赤みを悪化させる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。
化粧水の後は、乳液やクリームで水分の蒸発を防ぎます。特に乾燥が気になる部分には重ね付けをしても良いでしょう。
成分選び 赤ら顔の人におすすめの成分として、以下のようなものがあります。
- セラミド:バリア機能をサポート
- ナイアシンアミド:血行を改善し、炎症を抑制
- ビタミンC誘導体:抗炎症作用、血管強化作用
- アラントイン:抗炎症作用
- グリチルリチン酸:抗炎症作用
- トラネキサム酸:抗炎症作用、美白作用
逆に避けた方が良い成分は、アルコール(エタノール)、メントール、ハッカ油などの清涼感を与える成分、高濃度のレチノールなどです。
生活習慣の改善
食事の工夫 赤ら顔を悪化させる食品(辛いもの、熱い飲み物、アルコール、カフェインの過剰摂取)を控えめにしましょう。完全に避ける必要はありませんが、摂取量や頻度を減らすことを意識します。
積極的に摂りたい栄養素は、ビタミンB群(豚肉、レバー、納豆、卵など)、ビタミンC(野菜、果物)、オメガ3脂肪酸(青魚、くるみ、亜麻仁油など)です。
また、腸内環境を整えることも大切です。発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)や食物繊維を積極的に摂取しましょう。
温度管理 急激な温度変化を避けることが大切です。冬場は、外出時にマスクやマフラーで顔を保護したり、室内に入る前に少し涼しい場所で体を慣らしたりすると良いでしょう。
入浴は、38〜40度程度のぬるめのお湯で、15〜20分程度にとどめます。熱い湯に長時間浸かるのは避けましょう。
エアコンの温度設定も重要です。外気温との差が5度以内になるように調整するのが理想的です。また、エアコンによる乾燥を防ぐために、加湿器を使用することもお勧めします。
紫外線対策 一年を通じて日焼け止めを使用しましょう。曇りの日でも紫外線は届いています。外出の15〜30分前に塗り、2〜3時間ごとに塗り直すのが理想的です。
日傘や帽子、サングラスなども併用すると、より効果的です。特に午前10時から午後2時までは紫外線が強いため、この時間帯の外出時は特に注意が必要です。
ストレス管理 完全にストレスをなくすことは不可能ですが、ストレスとうまく付き合う方法を見つけることが大切です。
深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れてみましょう。1日5〜10分程度でも効果があります。
また、自分が楽しめる趣味の時間を持つことも重要です。読書、音楽鑑賞、園芸、手芸など、自分がリラックスできる活動を見つけましょう。
完璧主義を手放すことも大切です。「全てを完璧にこなさなければ」というプレッシャーは、大きなストレス源となります。「今日できることをする」という姿勢で、自分に優しくしましょう。
質の良い睡眠 規則正しい睡眠リズムを心がけましょう。毎日同じ時間に就寝し、同じ時間に起床することで、体内時計が整います。
就寝前のリラックスタイムを設けることも効果的です。軽いストレッチ、読書、アロマテラピーなど、自分に合ったリラックス法を見つけましょう。
寝室の環境も整えます。遮光カーテンで光を遮断し、静かで快適な温度・湿度を保ちます。寝具も肌触りの良いものを選びましょう。
マッサージ・エクササイズ
顔のリンパマッサージ リンパの流れを促進することで、顔のむくみや赤みの改善が期待できます。ただし、炎症がある場合や、酒さなどの症状が強い時期は避けましょう。
マッサージは、必ずクリームやオイルを使って、摩擦を最小限にします。力は入れず、優しく撫でるように行います。
基本的な流れは、以下の通りです。
- 首のリンパを流す(鎖骨から下方向へ)
- 顎から耳の下へ
- 口角から耳の中央へ
- 小鼻から耳の上へ
- 額の中心からこめかみへ
各動作を3〜5回繰り返します。入浴後など、血行が良くなっているときに行うと効果的です。
表情筋エクササイズ 顔の筋肉を動かすことで、血行が改善され、肌の代謝も促進されます。
簡単なエクササイズとして、以下のようなものがあります。
- 「あいうえお」を大きく口を開けて発音する
- 頬を膨らませて、空気を左右に移動させる
- 目を大きく見開いたり、ギュッと閉じたりを繰り返す
これらのエクササイズは、1日1〜2回、それぞれ10〜20回程度行います。ただし、やりすぎると逆効果になることもあるので、適度に行いましょう。
医療機関での治療
セルフケアで改善が見られない場合や、症状が強い場合は、医療機関での治療を検討しましょう。
皮膚科での診断と治療
診断 まず、赤ら顔の原因を正確に診断することが重要です。酒さ、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎など、原因によって適切な治療法が異なります。
皮膚科では、視診に加えて、必要に応じてダーモスコピー(拡大鏡)を使った詳細な観察や、皮膚の組織検査を行うこともあります。
外用薬治療 原因に応じて、様々な外用薬が処方されます。
酒さの場合は、メトロニダゾールゲル、アゼライン酸、イベルメクチンなどが使用されます。これらは炎症を抑え、ニキビダニの増殖を抑制する効果があります。
脂漏性皮膚炎には、抗真菌薬(ケトコナゾールなど)やステロイド外用薬が使用されます。ただし、ステロイドは長期使用すると皮膚萎縮や毛細血管拡張を引き起こす可能性があるため、医師の指示に従って使用することが重要です。
アトピー性皮膚炎には、タクロリムス軟膏などの非ステロイド性の免疫調整剤や、症状に応じてステロイド外用薬が使用されます。
内服薬治療 外用薬だけでは改善が難しい場合、内服薬が処方されることもあります。
酒さの場合、テトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリンなど)が使用されることがあります。これらは抗菌作用に加えて、抗炎症作用も持っています。
アトピー性皮膚炎には、抗ヒスタミン薬や免疫抑制剤が使用されることがあります。
ビタミンB群やビタミンCの補給も、補助的な治療として行われることがあります。
美容皮膚科での治療
レーザー治療 拡張した毛細血管に対しては、レーザー治療が効果的です。
色素レーザー(ダイレーザー)やKTPレーザーは、血管に反応する波長のレーザーを照射し、拡張した毛細血管を破壊します。治療後、血管は徐々に体内に吸収され、赤みが改善します。
通常、数回の治療が必要です。治療間隔は4〜8週間程度です。治療後は一時的に赤みが強くなったり、内出血が起こったりすることがありますが、通常1〜2週間で落ち着きます。
IPL(光治療) IPL(Intense Pulsed Light)は、複数の波長の光を照射する治療法です。レーザーよりもマイルドな治療で、ダウンタイムが少ないのが特徴です。
赤みの改善に加えて、肌のキメやトーンの改善、毛穴の引き締めなどの効果も期待できます。通常、3〜5回の治療を推奨されます。
イオン導入 ビタミンCやトラネキサム酸などの美容成分を、微弱な電流を使って肌の深部まで浸透させる治療法です。
抗炎症作用や美白作用があり、赤みの改善に効果が期待できます。ダウンタイムがなく、比較的気軽に受けられる治療です。
ケミカルピーリング 酸性の薬剤を使って古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進する治療法です。毛穴の詰まりを解消し、ニキビや脂漏性皮膚炎の改善に効果があります。
ただし、炎症が強い時期や、バリア機能が著しく低下している場合は、症状を悪化させる可能性があるため、医師とよく相談してから受けることが大切です。
治療を受ける際の注意点
医療機関の選び方 赤ら顔の治療は、皮膚科専門医がいる医療機関で受けることをお勧めします。美容皮膚科を選ぶ場合も、皮膚科専門医が在籍しているかを確認しましょう。
カウンセリングで、自分の症状や悩みをしっかり聞いてくれるか、治療のメリットだけでなくリスクや副作用についても説明してくれるかなどを確認しましょう。
費用について 赤ら顔の治療は、原因となる疾患の治療であれば保険適用となります。酒さ、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの診断がつけば、外用薬や内服薬の処方は保険診療となります。
一方、レーザー治療やIPL、ケミカルピーリングなどの美容医療は、基本的に自由診療(保険適用外)となります。費用は医療機関によって異なりますが、1回あたり数千円から数万円程度が一般的です。
治療期間 赤ら顔の改善には時間がかかります。外用薬治療でも数週間から数ヶ月、レーザー治療などは複数回の施術が必要です。
すぐに効果が出ないからといって諦めずに、継続して治療を受けることが大切です。また、治療と並行して、日常のスキンケアや生活習慣の改善も続けることが重要です。
年代別の赤ら顔対策
20代の赤ら顔
20代の赤ら顔は、多くの場合、ニキビやニキビ跡、敏感肌、過度なスキンケアが原因です。
この年代の特徴 美容への関心が高く、様々なスキンケア製品を試したり、メイクを楽しんだりする年代です。しかし、知識が不十分なまま、SNSなどの情報に影響されて過度なケアをしてしまい、逆に肌トラブルを引き起こすケースが多く見られます。
対策のポイント 基本的なスキンケアを正しく行うことが最も重要です。クレンジング、洗顔、保湿というシンプルなケアを丁寧に行いましょう。
新しいスキンケア製品を次々と試すのではなく、自分の肌に合った製品を見つけたら、それを継続して使用することが大切です。
また、紫外線対策を習慣化することで、将来の肌トラブルを予防できます。若いうちからのケアが、将来の肌の状態を左右します。
30代の赤ら顔
30代になると、酒さの初期症状が現れ始めることがあります。また、仕事や育児などのストレス、睡眠不足による影響も出やすい年代です。
この年代の特徴 仕事の責任が増し、結婚や出産を経験する人も多い年代です。多忙な生活の中で、自分のケアが疎かになりがちです。また、20代の頃のケアでは物足りなくなり、より効果的なケアを求める傾向があります。
対策のポイント バリア機能を意識したスキンケアにシフトしましょう。セラミドなどの保湿成分を重視した製品を選びます。
忙しい中でも、最低限のスキンケアは欠かさないようにしましょう。オールインワンゲルなど、時短でできるアイテムを活用するのも一つの方法です。
ストレス管理と睡眠の確保も重要です。完璧を求めすぎず、できる範囲でのケアを継続することが大切です。
気になる症状があれば、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。初期の段階で適切な治療を始めることで、症状の進行を防ぐことができます。
40代・50代の赤ら顔
この年代は、更年期によるホルモンバランスの変化が大きく影響します。ホットフラッシュ(ほてり)や、酒さの悪化などが見られることがあります。
この年代の特徴 エストロゲンの分泌が減少し、自律神経のバランスが乱れやすくなります。また、長年の紫外線ダメージや加齢により、皮膚が薄くなったり、血管の弾力が失われたりします。
対策のポイント 更年期症状が強い場合は、婦人科でホルモン補充療法(HRT)を相談することも一つの選択肢です。ホルモンバランスが整うことで、ほてりや赤みの改善が期待できます。
スキンケアでは、保湿と抗炎症成分を重視します。また、エイジングケア成分(レチノールやビタミンC誘導体など)を取り入れるのも効果的ですが、敏感な時期は控えめに使用しましょう。
レーザー治療やIPLなどの美容医療も、この年代から検討する価値があります。拡張した毛細血管は、セルフケアだけでは改善が難しいためです。
生活習慣では、適度な運動を取り入れることで、自律神経のバランスを整えることができます。ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で続けられる運動を選びましょう。
60代以降の赤ら顔
加齢による皮膚の薄さや、血管の脆弱性が主な原因となります。また、長年の紫外線ダメージの蓄積も影響します。
この年代の特徴 皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激に対して非常に敏感になります。また、ターンオーバーが遅くなり、傷の治りも遅くなります。
対策のポイント シンプルで優しいスキンケアを心がけましょう。刺激の少ない製品を選び、丁寧に保湿します。
紫外線対策は引き続き重要です。既に蓄積したダメージは消えませんが、これ以上の悪化を防ぐことができます。
医療機関での治療を検討する場合は、ダウンタイムや副作用について十分に説明を受け、理解した上で受けるようにしましょう。

よくある質問
A. 原因によって異なります。ニキビや炎症による一時的な赤みは、適切な治療で完全に改善することが多いです。一方、酒さや毛細血管拡張症などは、完全に元の状態に戻すことは難しいですが、適切な治療とケアで目立たなくすることは可能です。
A. グリーンのコントロールカラーなどで赤みを視覚的にカバーすることはできますが、根本的な改善にはなりません。ただし、抗炎症成分や血管強化成分を配合した化粧品は、継続使用で改善効果が期待できる場合があります。
A. 一時的に血管が収縮して赤みが軽減することはありますが、冷やしすぎると逆に血管が拡張することがあります。また、冷やすことで根本的な改善にはなりません。
A. ビタミンB群やオメガ3脂肪酸などのサプリメントは、補助的な役割として有効な場合があります。ただし、サプリメントだけで劇的な改善は期待できません。バランスの取れた食事が基本です。
A. 輪ゴムで弾かれるような軽い痛みを感じることがありますが、多くの場合、麻酔なしで施術可能です。痛みに弱い方には、麻酔クリームを使用することもできます。
A. 外用薬の中には妊娠中・授乳中に使用できないものがあります。また、レーザー治療も避けた方が良いとされています。この時期は、刺激の少ないスキンケアと生活習慣の改善を中心に対策しましょう。必ず医師に相談してください。
まとめ
女性の赤ら顔には、皮膚の構造的特徴、ホルモンバランスの変動、自律神経の乱れなど、複数の要因が関与しています。酒さ、脂漏性皮膚炎、敏感肌、毛細血管拡張症など、原因も様々です。
改善のためには、まず自分の赤ら顔の原因を知ることが重要です。セルフケアで改善が見られない場合は、医療機関での診断と適切な治療を受けることをお勧めします。
日常生活では、優しいスキンケア、適切な保湿、紫外線対策、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理などが大切です。これらは即効性はありませんが、継続することで確実に肌の状態は改善していきます。
赤ら顔は、体質や年齢による部分もありますが、決して「どうしようもない」問題ではありません。正しい知識を持ち、自分に合った対策を続けることで、必ず改善の道は開けます。
一人で悩まず、専門家に相談しながら、自分の肌と向き合っていきましょう。アイシークリニック上野院では、専門医による診察と、一人ひとりの症状に合わせた治療を提供しています。赤ら顔でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「酒さ診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/
- 日本化粧品工業連合会「化粧品と皮膚の科学」 https://www.jcia.org/
- 厚生労働省「皮膚疾患に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/
- 日本女性医学学会「更年期障害と皮膚」 https://www.jmwh.jp/
- 日本臨床皮膚科医会「皮膚の健康情報」 https://www.jocd.org/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務