はじめに
ワキガ(腋臭症)に悩む方の多くが、「治療を受けたいけれど、傷跡が残るのが心配」という不安を抱えています。特に夏場やノースリーブを着る機会が多い方にとって、脇の傷跡は大きな心理的負担となります。
実際、従来のワキガ手術では数センチの切開を伴うため、術後に傷跡が残ることは避けられませんでした。しかし、医療技術の進歩により、現在では傷跡をほとんど残さない、あるいはまったく残さない治療法が複数登場しています。
本記事では、アイシークリニック上野院の視点から、ワキガ治療における傷跡の問題と、傷跡を残さない最新の治療法について、一般の方にもわかりやすく詳しく解説していきます。治療法の選択に悩んでいる方、まずは情報収集をしたい方にとって、有益な情報をお届けします。

ワキガ(腋臭症)とは
ワキガの基礎知識
ワキガは医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれ、脇の下から特有の強い臭いを発する症状です。日本皮膚科学会によると、これは病気というよりも体質の一種とされています。
人間の汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があります。エクリン腺から分泌される汗は無臭ですが、アポクリン腺から分泌される汗にはタンパク質や脂質が含まれており、これが皮膚表面の常在菌によって分解されることで、特有の臭いが発生します。
ワキガの原因
ワキガの主な原因は、遺伝的な要因によるアポクリン腺の数や活動性の違いです。アポクリン腺が多く、活発に活動している人ほど、ワキガになりやすい傾向があります。
日本人のワキガ体質の割合は約10〜15%程度とされており、欧米人(約70〜90%)と比較すると少ないため、日本では体質的な問題として意識されやすい側面があります。
ワキガのセルフチェック
以下の項目に当てはまる場合、ワキガ体質の可能性があります:
- 両親のどちらか、または両方がワキガ体質である
- 耳垢が湿っている(アポクリン腺は耳の中にも存在するため)
- 衣服の脇部分に黄色い汗染みができる
- 脇毛に白い粉のようなものが付着する
- 他人から臭いを指摘されたことがある
ただし、自己判断だけでなく、専門医による診断を受けることが重要です。
従来のワキガ手術と傷跡の問題
剪除法(せんじょほう)について
従来、ワキガの根本的な治療法として最も一般的だったのが「剪除法(皮弁法)」です。これは、脇の下を3〜5cm程度切開し、皮膚を裏返してアポクリン腺を目で確認しながら、医療用ハサミで一つひとつ切除していく手術方法です。
剪除法は、アポクリン腺を直接目で見て除去できるため、確実性が高く、重度のワキガに対して高い効果が期待できます。日本皮膚科学会のガイドラインでも、重症例に対する有効な治療法として位置づけられています。
剪除法の傷跡
しかし、剪除法には大きなデメリットがあります。それが「傷跡」の問題です。
数センチの切開を伴うため、術後には必ず傷跡が残ります。縫合技術の向上により、以前よりも目立ちにくくはなっていますが、完全に消すことは困難です。特に以下のような問題が指摘されています:
- 縫合跡の残存: 切開線に沿って白い線状の傷跡が残る
- ケロイド形成: 体質によっては傷跡が盛り上がり、赤く硬いケロイドになることがある
- 色素沈着: 傷跡周辺の皮膚が茶色く変色することがある
- 拘縮: 傷跡が引きつれて、腕の動きが制限されることがある
これらの傷跡は、特に若い女性にとって大きな心理的負担となります。ノースリーブやキャミソール、水着を着ることへの抵抗感、温泉やプールでの視線への不安など、生活の質(QOL)に影響を与えることも少なくありません。
その他の外科的治療法と傷跡
剪除法以外にも、以下のような外科的治療法がありますが、いずれも傷跡の問題は避けられません:
吸引法: 小さな切開口から専用の機器を挿入し、アポクリン腺を吸引除去する方法。切開は小さいものの、傷跡は残ります。また、目視での除去ではないため、取り残しの可能性もあります。
超音波吸引法: 超音波でアポクリン腺を破壊しながら吸引する方法。吸引法よりも効果的とされますが、やはり切開が必要です。
これらの問題から、「傷跡を残さずにワキガを治療できないか」という患者さんのニーズが高まり、近年では様々な非侵襲的・低侵襲的治療法が開発されてきました。
傷跡を残さない・少ないワキガ治療法
現在、傷跡をまったく残さない、あるいは最小限に抑えられる治療法として、以下のようなオプションがあります。それぞれの特徴と適応について詳しく見ていきましょう。
1. 保存的治療(外用薬・制汗剤)
最も侵襲性が低く、傷跡の心配が一切ない治療法が、外用薬や制汗剤による保存的治療です。
塩化アルミニウム液
医療用の塩化アルミニウム液は、汗腺の出口を収縮させることで発汗を抑制します。軽度から中等度のワキガに対して効果があり、継続的な使用が必要ですが、傷跡は一切残りません。
使用方法は、就寝前に脇の下に塗布し、朝に洗い流すというシンプルなものです。ただし、皮膚刺激やかぶれが生じることがあるため、医師の指導のもとで使用することが推奨されます。
抗菌外用薬
ワキガの臭いは、アポクリン腺からの分泌物が皮膚表面の細菌によって分解されることで発生します。そのため、細菌の繁殖を抑える抗菌外用薬も有効です。
市販の制汗デオドラント製品も含め、これらは日常的なケアとして有用ですが、根本的な治療ではなく、症状の軽減を目的としたものです。
メリット:
- 傷跡が一切残らない
- 費用が比較的安い
- 自宅で手軽に実施できる
- 副作用のリスクが低い
デメリット:
- 効果が一時的で継続的な使用が必要
- 中等度から重度のワキガには効果が不十分な場合がある
- 皮膚刺激が生じることがある
2. ボトックス注射
ボトックス(ボツリヌストキシン)注射は、神経伝達物質の働きを一時的にブロックすることで、汗腺の活動を抑制する治療法です。主にエクリン腺からの発汗を抑えますが、結果的にワキガの症状も軽減されます。
治療の流れ
- 脇の下に局所麻酔クリームを塗布(痛みの軽減のため)
- 極細の針で複数箇所にボトックスを注射
- 治療時間は約10〜15分程度
注射なので切開は不要で、針跡は数日で目立たなくなります。つまり、傷跡は実質的に残らないと言えます。
効果と持続期間
治療後2〜3日で効果が現れ始め、1週間程度で最大の効果に達します。効果の持続期間は個人差がありますが、一般的に4〜9ヶ月程度です。そのため、効果を維持するには定期的な治療が必要です。
なお、ボトックス注射は、2012年に重度の原発性腋窩多汗症に対する治療として厚生労働省の承認を受けており、保険適用の対象となる場合があります。
メリット:
- 傷跡がほぼ残らない(針跡のみ)
- ダウンタイムがほとんどない
- 治療時間が短い
- 重度の多汗症の場合、保険適用の可能性がある
デメリット:
- 効果が一時的(4〜9ヶ月)
- 定期的な治療が必要
- 費用が継続的にかかる(自費診療の場合、1回あたり5〜10万円程度)
- アポクリン腺そのものを除去するわけではない
3. ミラドライ(miraDry)
ミラドライは、マイクロ波(電磁波)のエネルギーを利用して、汗腺を破壊する最新の治療法です。2018年に厚生労働省の承認を受けた医療機器で、切開を一切必要としないため、傷跡が全く残らないことが最大の特徴です。
治療の原理
ミラドライは、マイクロ波を皮膚の真皮層と皮下脂肪層の境界付近に集中的に照射します。この層には、エクリン腺とアポクリン腺が集中して存在しており、マイクロ波の熱エネルギー(約60℃)によって汗腺を破壊します。
同時に、皮膚表面は冷却システムによって保護されるため、やけどのリスクを最小限に抑えることができます。
治療の流れ
- 治療部位のマーキング
- 局所麻酔(数箇所に注射)
- ミラドライのハンドピースを脇に当て、マイクロ波を照射
- 片脇約30〜40分、両脇で約60〜80分程度
効果と持続期間
破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的とされています。1回の治療で約70〜80%の汗腺が破壊され、多くの患者さんが満足できる結果を得られます。より高い効果を求める場合は、3ヶ月以上の間隔を空けて2回目の治療を行うことも可能です。
日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも、原発性腋窩多汗症に対する治療法の一つとして記載されています。
メリット:
- 傷跡が全く残らない(切開不要)
- 効果が半永久的
- ダウンタイムが比較的短い(通常1〜2週間)
- 治療当日から日常生活が可能
- 重度の多汗症に対して高い効果
デメリット:
- 費用が高額(両脇で30〜40万円程度、自費診療)
- 治療直後は腫れや痛みが生じる
- 局所麻酔の注射が必要
- 一時的に脇の感覚が鈍くなることがある
- すべての汗腺を完全に除去できるわけではない
ミラドライは、「傷跡を残したくない」「効果の持続期間が長い治療を希望する」という方に特におすすめの治療法です。
4. レーザー治療
近年、レーザーを用いたワキガ治療も注目されています。いくつかの方法がありますが、代表的なものをご紹介します。
ビューホット(View HOT)
ビューホットは、高周波(RF)を利用して汗腺を破壊する治療法です。極細の針(カートリッジ)を皮膚に刺入し、針の先端から高周波を照射することで、汗腺を選択的に破壊します。
針を刺すため、ミラドライよりも侵襲性は若干高いものの、針跡は非常に小さく(約0.3mm)、数日から数週間で目立たなくなります。つまり、目立つ傷跡は残らないと言えます。
その他のレーザー・高周波治療
その他にも、様々なレーザーや高周波を用いた治療法が開発されていますが、効果や安全性については治療法によって差があります。治療を検討する際は、厚生労働省の承認を受けている機器かどうか、十分な実績があるかどうかを確認することが重要です。
メリット:
- 目立つ傷跡が残らない
- ダウンタイムが比較的短い
- 効果の持続期間が長い
デメリット:
- 費用が高額(自費診療)
- 治療直後は腫れや赤みが生じる
- 効果に個人差がある
- 長期的なデータが十分でない場合がある
5. イオントフォレーシス(イオン導入療法)
イオントフォレーシスは、弱い電流を流すことで発汗を抑制する治療法です。主に手掌多汗症や足底多汗症に用いられますが、腋窩多汗症にも応用されることがあります。
水道水を入れたトレイに手や足を浸し、微弱な電流を流します。メカニズムは完全には解明されていませんが、電流が汗腺の働きを一時的に抑制すると考えられています。
傷跡はまったく残らず、副作用も少ない安全な治療法ですが、ワキガに対する効果は限定的で、主に多汗症の治療として用いられます。
各治療法の比較
ここまでご紹介した治療法を、傷跡の有無、効果の持続期間、費用などの観点から比較してみましょう。
| 治療法 | 傷跡 | 効果の持続 | 費用(目安) | 保険適用 | ダウンタイム |
|---|---|---|---|---|---|
| 外用薬・制汗剤 | なし | 一時的(使用中のみ) | 数千円/月 | 一部あり | なし |
| ボトックス注射 | ほぼなし(針跡) | 4〜9ヶ月 | 5〜10万円/回 | 条件付きであり | ほぼなし |
| ミラドライ | なし | 半永久的 | 30〜40万円 | なし | 1〜2週間 |
| レーザー・高周波治療 | ほぼなし(針跡程度) | 長期的 | 20〜40万円 | なし | 1〜2週間 |
| 剪除法(参考) | あり(3〜5cm) | 永久的 | 3〜5万円(保険) | あり | 1〜2週間 |
この表から分かるように、傷跡を残さない治療法は複数存在しており、それぞれに特徴があります。どの治療法が最適かは、ワキガの重症度、予算、ライフスタイル、傷跡に対する懸念の度合いなどによって異なります。
傷跡を残さないための治療選択のポイント
ワキガの重症度に応じた選択
軽度のワキガ: 外用薬や制汗剤による保存的治療から始めることをおすすめします。これらは傷跡の心配がなく、日常生活に取り入れやすい方法です。効果が不十分な場合は、ボトックス注射を検討すると良いでしょう。
中等度のワキガ: ボトックス注射やミラドライが適しています。特にミラドライは、1回の治療で長期的な効果が期待できるため、費用対効果の面でも優れています。
重度のワキガ: ミラドライや、場合によっては剪除法を検討する必要があります。重度の場合、非侵襲的治療では十分な効果が得られないこともあるため、専門医とよく相談することが重要です。ただし、傷跡を避けたい場合は、ミラドライを2回受けるという選択肢もあります。
ライフスタイルに応じた選択
仕事や学業で長期の休みが取れない方: ダウンタイムがほとんどないボトックス注射や、比較的短期間で日常生活に復帰できるミラドライが適しています。
夏場にノースリーブを着る機会が多い方: 傷跡が目立たないことを最優先するなら、切開を伴わないミラドライやボトックス注射がおすすめです。
スポーツや身体を動かす仕事をしている方: 術後の腕の動きの制限を避けるため、切開を伴わない治療法が適しています。
予算に応じた選択
予算に制約がある場合: まずは保存的治療から始め、効果を見ながら段階的に治療を進めることをおすすめします。また、重度の多汗症と診断された場合、ボトックス注射や剪除法は保険適用となる可能性があるため、医師に相談してみましょう。
初期投資が可能な場合: ミラドライは高額ですが、効果が半永久的なため、長期的に見ると費用対効果が高いと言えます。ボトックス注射を何度も繰り返すよりも、トータルコストは低くなる可能性があります。
傷跡への懸念の度合い
絶対に傷跡を残したくない方: ミラドライ、ボトックス注射、外用薬などの非侵襲的治療法を選択しましょう。これらの治療法では、切開を伴わないため、傷跡の心配がありません。
ある程度の傷跡は許容できる方: より確実な効果を求める場合、剪除法も選択肢に入ります。ただし、縫合技術の高い医師を選ぶことが重要です。
治療後のケアと注意点
傷跡を残さない治療法を選んだ場合でも、適切なアフターケアは重要です。
ミラドライ治療後のケア
- 冷却: 治療後数日間は、定期的に患部を冷やすことで、腫れや痛みを軽減できます
- 圧迫: 医師の指示に従って、適切な圧迫を行います
- 清潔保持: 治療翌日からシャワーは可能ですが、強くこすらないよう注意します
- 運動制限: 激しい運動や腕を大きく動かす動作は、1〜2週間控えます
- 保湿: 治療後の皮膚は乾燥しやすいため、適度な保湿を心がけます
ボトックス注射後のケア
- マッサージ厳禁: 注射部位を強くマッサージすると、ボトックスが周囲に拡散する恐れがあります
- 過度な運動: 治療当日は激しい運動を避けます
- 入浴: 長時間の入浴やサウナは、治療当日は避けましょう
- 飲酒: 治療当日の飲酒は控えめにします
一般的な注意点
どの治療法を選択した場合でも、以下の点に注意しましょう:
- 直射日光を避ける: 治療後の皮膚は敏感になっているため、紫外線対策を徹底します
- 刺激の強い制汗剤の使用を控える: 治療直後は、刺激の少ない製品を選びます
- 禁煙: 喫煙は傷の治癒を妨げるため、控えることをおすすめします
- 定期的な受診: 医師の指示に従って、経過観察のための受診を欠かさないようにします

よくある質問(FAQ)
Q1: ミラドライとボトックス注射、どちらを選ぶべきですか?
A: それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 効果の持続期間を重視するなら、ミラドライがおすすめです。1回の治療で半永久的な効果が期待できます。
- 初期費用を抑えたい、まずは試してみたいという場合は、ボトックス注射から始めるのも良いでしょう。
- ダウンタイムを最小限にしたい場合も、ボトックス注射の方が適しています。
症状の程度やライフスタイルに応じて、医師とよく相談して決定することをおすすめします。
A: はい、ミラドライは皮膚を切開しないため、手術による傷跡は残りません。
ただし、治療直後は一時的に腫れや赤み、内出血が生じることがあります。これらは通常1〜2週間程度で改善し、目立たなくなります。また、非常に稀ですが、色素沈着が残るケースも報告されていますが、多くの場合は時間とともに薄くなります。
A: ボトックス注射に使用される針は極めて細いため、針跡はほとんど目立ちません。
通常、注射直後は針を刺した部位に小さな赤い点が見られることがありますが、数時間から数日で消失します。ほとんどの方は、翌日には気にならなくなります。
A: 軽度から中等度のワキガであれば、外用薬による症状のコントロールは可能です。
ただし、外用薬はアポクリン腺そのものを除去するわけではないため、使用を中止すると症状が再び現れます。根本的な治療を希望する場合は、ミラドライなどの治療法を検討する必要があります。
一方で、外用薬は傷跡の心配がなく、費用も抑えられるため、まず試してみる価値は十分にあります。
Q5: 治療後に再発することはありますか?
A: 治療法によって異なります。
- ミラドライ: 破壊された汗腺は再生しないため、再発のリスクは低いです。ただし、治療で破壊されなかった汗腺が残っている場合、わずかに症状が残ることがあります。
- ボトックス注射: 効果が一時的なため、4〜9ヶ月後には症状が戻ってきます。これは再発というより、効果の切れ目です。
- 剪除法: アポクリン腺を直接除去するため、再発率は低いですが、完全に除去できなかった場合、わずかに症状が残ることがあります。
Q6: 保険適用で傷跡を残さない治療を受けられますか?
A: 限定的ですが、可能です。
重度の原発性腋窩多汗症と診断された場合、ボトックス注射は保険適用となります。ボトックス注射は傷跡がほとんど残らない治療法です。
一方、ミラドライやレーザー治療は現時点では保険適用外です。剪除法は保険適用となりますが、傷跡が残ります。
まずは医師の診察を受け、保険適用の可能性について相談してみることをおすすめします。
Q7: 治療の痛みはどの程度ですか?
A: 治療法によって異なります。
- ボトックス注射: 極細の針を使用するため、痛みは最小限です。我慢できる程度の痛みで、麻酔なしで行われることが多いです。
- ミラドライ: 局所麻酔を使用するため、治療中の痛みはほとんどありません。ただし、麻酔の注射時にチクッとした痛みがあります。治療後は、筋肉痛のような鈍痛が数日続くことがあります。
- 外用薬: 痛みはありませんが、皮膚刺激やかゆみが生じることがあります。
痛みへの不安が強い方は、事前に医師に相談し、痛み対策について確認しておくと良いでしょう。
Q8: 未成年でも治療を受けられますか?
A: 治療法によって異なりますが、多くの場合は可能です。
ワキガは思春期に発症することが多いため、未成年の患者さんも少なくありません。ボトックス注射や外用薬は、年齢制限は比較的緩やかです。
ただし、ミラドライなどの高額な治療や侵襲的な治療については、身体的・精神的な成熟度や、本人の意思を十分に確認する必要があります。未成年の場合は、保護者の同意が必須となります。
まずは専門医に相談し、年齢に応じた適切な治療法を検討することをおすすめします。
ワキガ治療における医師・クリニック選びのポイント
傷跡を残さない治療法を成功させるためには、適切な医師・クリニック選びが極めて重要です。
専門性と経験
ワキガ治療は皮膚科や形成外科の専門領域です。特にミラドライなどの最新治療を受ける場合は、以下の点を確認しましょう:
- 日本皮膚科学会や日本形成外科学会の認定医・専門医であるか
- ワキガ治療の実績が豊富か
- 使用する機器のトレーニングを受けているか
- 症例写真や治療実績を公開しているか
カウンセリングの質
初回のカウンセリングで、以下の点に注意しましょう:
- 患者の話をしっかりと聞いてくれるか
- メリットだけでなく、デメリットやリスクについても説明してくれるか
- 複数の治療法を提示し、患者に合った方法を提案してくれるか
- 費用について明確に説明してくれるか
- 質問に対して丁寧に答えてくれるか
良い医師は、患者の不安や懸念に寄り添い、十分な情報提供を行った上で、患者自身が納得して治療法を選択できるようサポートしてくれます。
アフターフォロー体制
治療後のフォローアップも重要です:
- 定期的な経過観察があるか
- トラブル時の対応体制が整っているか
- 連絡手段が明確か
- 追加費用が発生する場合の説明があるか
特にミラドライのような高額な治療を受ける場合は、アフターフォローの内容を事前に確認しておくことをおすすめします。
ワキガ治療の将来展望
医療技術の進歩により、ワキガ治療の選択肢は今後もさらに広がると予想されます。
より低侵襲な治療法の開発
現在もなお、より効果的で侵襲性の低い治療法の研究開発が続けられています。例えば:
- 新しいレーザー技術: より選択的に汗腺を破壊できるレーザーの開発
- 超音波技術の進化: より正確に標的を絞った治療が可能に
- 薬物療法の進歩: より効果的な外用薬や内服薬の開発
再生医療の応用
将来的には、汗腺の機能をコントロールする遺伝子治療や、汗腺の活動を調整する新しい薬物療法なども登場する可能性があります。
パーソナライズド医療
遺伝子検査などにより、個人の体質に合わせた最適な治療法を選択できるようになることも期待されています。
いずれにしても、「傷跡を残さない」「ダウンタイムが短い」「効果が高い」という患者さんのニーズに応える治療法が、今後も登場してくるでしょう。
まとめ
ワキガ治療における傷跡の問題は、多くの患者さんにとって大きな懸念事項でした。しかし、医療技術の進歩により、現在では傷跡を残さない、あるいは最小限に抑える治療法が複数存在します。
傷跡を残さない主な治療法:
- 外用薬・制汗剤(保存的治療)
- ボトックス注射
- ミラドライ
- レーザー・高周波治療
これらの治療法は、それぞれに特徴があり、患者さんのワキガの重症度、ライフスタイル、予算、傷跡への懸念の度合いなどに応じて、最適な方法を選択することが重要です。
特に、ミラドライは切開を一切必要とせず、効果が半永久的に持続するため、「傷跡を残したくない」「長期的な効果を求める」という方に適した治療法と言えます。一方、初期費用を抑えたい場合や、まず効果を試してみたい場合は、ボトックス注射から始めるのも良い選択です。
どの治療法を選ぶにしても、重要なのは、専門的な知識と経験を持つ医師に相談し、十分な説明を受けた上で、自分に合った治療法を選択することです。
アイシークリニック上野院では、患者さん一人ひとりの症状や希望に合わせて、最適な治療法をご提案しています。ワキガや傷跡に関する不安や疑問がある方は、ぜひ一度、専門医にご相談ください。適切な治療を受けることで、傷跡を残すことなく、ワキガの悩みから解放され、より快適な日常生活を送ることができます。
参考文献
- 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」 https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=3
- 厚生労働省「腋臭症に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/
- 日本形成外科学会「腋臭症(ワキガ)の治療」 https://www.jsprs.or.jp/
- J-STAGE「マイクロ波を用いた原発性腋窩多汗症治療の有効性と安全性」 https://www.jstage.jst.go.jp/
- 日本多汗症学会 https://www.jshh.org/
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療相談に代わるものではありません。治療法の選択にあたっては、必ず医師の診察を受け、専門的なアドバイスを受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務