ビューホット治療で「効果なし」と感じる理由と対処法|アイシークリニック上野院

はじめに

わきがや多汗症でお悩みの方が、「切らない治療」として注目を集めるビューホット(View HOT)を選択したものの、「効果が感じられない」「期待したほどの改善がない」と悩まれるケースがあります。インターネット上でも「ビューホット 効果 なし」といったキーワードで検索される方が少なくありません。

本記事では、ビューホット治療の仕組みから、なぜ「効果なし」と感じてしまうのか、そして治療を検討される際に知っておくべきポイントまで、医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。

ビューホットとは

基本的な仕組み

ビューホットは、韓国のshenb社が開発した高周波(RF:Radio Frequency)を用いたわきが・多汗症治療機器です。皮膚を切開することなく、極細針を使用して汗腺に直接高周波を照射し、熱エネルギーで汗腺を破壊することで、においや汗の分泌を抑制します。

具体的には、30Gニードル(極細針)が36本並んだ専用のカートリッジを使用し、針の先端のみから高周波を出力する設計になっています。針の深度は0.1mm単位で調整可能で、個々の患者さんの皮膚の厚さや汗腺の位置に合わせた治療が可能とされています。

ターゲットとなる汗腺

人間の汗腺には大きく分けて2種類あります。

エクリン汗腺

  • 全身に分布する汗腺
  • 99%が水分のサラサラした汗を分泌
  • 主に体温調節の役割
  • 多汗症の主な原因

アポクリン汗腺

  • わきの下、外耳道、乳輪、陰部など限定的に分布
  • タンパク質や脂質を含むベタベタした汗を分泌
  • 皮膚表面の細菌によって分解されると特有のにおいを発生
  • わきが(腋臭症)の主な原因

ビューホットは、これらの汗腺が存在する深さに応じて照射の深度を変えながら、両方の汗腺に対してアプローチします。皮膚面から約1.0mmを治療開始位置とし、0.5mmおきに4〜6段階で高周波を照射することで、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方を破壊するとされています。

治療の特徴

メリット

  • 皮膚を切開しないため、長期的な傷跡が残りにくい
  • 治療時間が20〜30分程度と比較的短時間
  • ダウンタイムが比較的短い
  • 当日からシャワー浴が可能
  • わきだけでなく、手のひら、足の裏、デリケートゾーン、乳輪周囲なども治療可能

デメリット・注意点

  • 針を刺すため、治療後しばらく針痕が残る
  • 発赤、内出血、色素沈着が生じる可能性がある
  • 個人差により効果に差がある
  • 成長期の方は汗腺が再生する可能性がある

「効果なし」と感じる主な理由

1. 効果判定のタイミングが早すぎる

ビューホット治療において最も多い誤解が、効果判定のタイミングです。治療直後から劇的な変化を期待される方がいらっしゃいますが、実際には効果が安定するまでに一定の期間が必要です。

効果の経過

  • 治療直後〜1週間:腫れや赤みが強く、正確な効果判定は困難
  • 1〜2週間:腫れや赤みが徐々に引いていく時期
  • 1〜3ヶ月:炎症が完全に落ち着き、効果が安定してくる時期
  • 3ヶ月以降:最終的な効果判定が可能な時期

治療後3ヶ月程度は、破壊された汗腺の周辺で炎症反応が続くため、一時的ににおいや汗が気になることがあります。この時期に「効果がない」と判断してしまうのは時期尚早です。

2. 期待値が高すぎる

ビューホット治療は「1回の治療で95%以上の効果」といった宣伝文句を目にすることがありますが、これには注意が必要です。医療機器の効果には必ず個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。

特にわきが・多汗症の程度には大きな個人差があります。日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」においても、治療法の選択には患者さん個々の状態に応じた判断が必要とされています。

重度のわきがや多汗症の場合、ビューホット単独では完全な改善が難しいケースもあります。「完全ににおいが消える」「まったく汗をかかなくなる」といった完璧な結果を期待すると、実際の効果とのギャップに「効果なし」と感じてしまう可能性があります。

3. 多汗症に対する効果の限界

ビューホットの治療効果に関して、特に理解しておくべき重要なポイントがあります。それは、エクリン汗腺由来の多汗症に対する効果には限界があるという点です。

ビューホットは針先から高周波を照射する仕組みのため、効果が現れやすいのは針先周辺のみとなります。わきがの原因となるアポクリン汗腺は比較的数が少なく局所的に分布しているため、針先からの照射でも効果的に破壊できます。

しかし、多汗症の原因となるエクリン汗腺は全身に数百万個も存在し、広範囲に分布しています。針先からの限定的な照射では、これらすべてを破壊することは物理的に困難です。そのため、治療後も破壊しきれなかったエクリン汗腺から汗が分泌され、「思ったより汗が減らない」「効果がない」と感じるケースが少なくありません。

一部のクリニックでは、この点を考慮して「わきが治療としてはビューホットを推奨するが、多汗症治療にはビューホットは不向きである」と明示しているところもあります。

4. 照射条件が適切でない

ビューホット治療の効果は、照射条件の設定に大きく左右されます。

重要な照射パラメータ

  • 針の深度(どの深さまで針を刺すか)
  • 照射出力(どのくらいの強さで高周波を照射するか)
  • 照射回数(何段階で照射するか)
  • 照射範囲(どの範囲まで治療するか)

これらの設定が不適切だと、以下のような問題が生じます。

深度が浅すぎる場合 深いところにあるアポクリン汗腺に届かず、わきがの改善効果が不十分

出力が弱すぎる場合 汗腺を完全に破壊できず、治療効果が不十分

照射範囲が狭すぎる場合 治療範囲外の汗腺から依然として汗やにおいが発生

過度に慎重な設定の場合 合併症のリスクを避けるために、効果を犠牲にした控えめな設定がされている可能性

特に手のひらや足の裏の治療では、感覚神経を損傷するリスクを避けるため、出力を抑えた設定が推奨されることがあります。この場合、「汗を約50%抑えることを目標とする」といった、あえて控えめな治療目標が設定されます。

5. 施術者の技術差

ビューホット治療は、単に機械を当てれば効果が出るというものではありません。施術者の技術や経験によって、治療効果に大きな差が生じます。

技術が必要な理由

  • 個々の患者さんの汗腺の分布を正確に把握する必要がある
  • 皮膚の厚さに応じて針の深度を適切に調整する必要がある
  • 照射範囲を適切に設定する必要がある
  • 治療中の患者さんの反応を見ながら出力を調整する必要がある

経験豊富な医師であれば、患者さんの状態を的確に評価し、最適な照射条件を設定できます。一方、経験が浅い医師の場合、標準的な設定のみで治療を行い、個別の状態に応じた調整ができないことがあります。

6. 成長期における汗腺の再生

ビューホットの宣伝文句として、「一度破壊された汗腺は基本的に再生しない」という説明がよく見られます。これは一般的には正しいのですが、成長期の方については例外となります。

思春期の子どもや若年者の場合、アポクリン汗腺がまだ発達途中です。治療時点で破壊された汗腺以外に、その後新たに発達する汗腺が存在する可能性があります。そのため、治療当初は効果があったのに、数年後に再びにおいや汗が気になるようになることがあります。

日本皮膚科学会の診断基準では、原発性腋窩多汗症の診断において「最初の症状が25歳以下で出現」という項目が含まれており、多汗症やわきがの発症が若年期に多いことが示されています。そのため、小学生や中学生のうちにビューホット治療を受けた場合、その後の成長に伴って効果が減弱する可能性があることを理解しておく必要があります。

7. 生活習慣やストレスの影響

ビューホット治療でアポクリン汗腺を破壊しても、においが完全に消えないケースがあります。これは、アポクリン汗腺以外にもにおいの原因があるためです。

その他のにおいの原因

  • エクリン汗腺からの汗と皮脂の混合による体臭
  • 衣類に染み付いた雑菌の繁殖によるにおい
  • 食生活(肉類や脂肪分の多い食事)
  • ストレスや疲労による体臭の変化
  • 不十分な清潔ケア

特に、中度以上のわきがの場合、毛穴に粘着質の汗が残り、細菌によってにおいが発生することがあります。治療後も適切な清潔ケアを継続しないと、「効果がない」と感じる原因になります。

また、ストレスや緊張といった精神的要因も、汗の分泌に大きく影響します。治療後も不安やストレスが続くと、残存した汗腺からの発汗が増加し、効果を実感しにくくなる可能性があります。

ビューホットと他の治療法の比較

ミラドライとの違い

ビューホットと比較されることが多いのが、同じく「切らないわきが・多汗症治療」として知られるミラドライです。両者には重要な違いがあります。

治療メカニズムの違い

項目ビューホットミラドライ
照射方法針を刺して高周波を照射皮膚表面からマイクロ波を照射
ターゲット針先周辺の汗腺広範囲の汗腺層
効果範囲限定的(針先周辺)広範囲かつ均一
わきがへの効果比較的高い高い
多汗症への効果限定的高い(70〜80%の汗腺破壊)
治療部位わき、手のひら、足の裏、デリケートゾーン、乳輪周囲わきのみ
安全性認証なしFDA・厚生労働省認可

ミラドライの特徴

ミラドライは、マイクロ波が水分に反応して熱を発する性質を利用し、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方にエネルギーを集中させます。広範囲かつ均一に照射できるため、1回の治療で70〜80%の汗腺を破壊できるとされています。

特に重要なのは、ミラドライは日本の厚生労働省とアメリカのFDA(食品医薬品局)の認可を得ているという点です。これは、治療の安全性と有効性が科学的に検証されていることを意味します。

一方、ビューホットは現時点でこうした公的機関の認可を得ておらず、あくまで医師の裁量で使用される治療機器という位置づけです。

どちらを選ぶべきか

  • わきがが主な悩み:ビューホットでも一定の効果が期待できる
  • 多汗症が主な悩み:ミラドライの方が効果的
  • 両方が悩み:ミラドライの方が総合的な改善効果が高い
  • わき以外の部位も治療したい:ビューホットが選択肢になる
  • 安全性を重視:認可を得ているミラドライがより安心

ただし、個々の患者さんの状態によって最適な治療法は異なります。皮膚が薄い方や皮下脂肪が少ない方、小児の場合などは、ビューホットの方が適している場合もあります。

手術療法との比較

根本的な治療を希望される場合、外科的手術という選択肢もあります。

剪除法(皮弁法)

最も確実性の高い治療法で、わきの皮膚を3〜5cm切開し、医師が直接目で確認しながらアポクリン汗腺とエクリン汗腺を一つずつ丁寧に切除します。保険適用が可能で、重度のわきがに対して推奨されます。

メリット

  • 汗腺を直接目で確認しながら除去するため、確実性が最も高い
  • 再発リスクが低い
  • 保険適用で費用負担が少ない

デメリット

  • 手術による傷跡が残る
  • ダウンタイムが長い(1〜2週間程度)
  • 術後の痛みや腫れが強い
  • 一定期間の固定と安静が必要

その他の手術法

吸引法やシェービング法など、より侵襲の少ない手術法もありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

効果を最大化するためのポイント

治療前の準備

1. 正確な診断を受ける

まず、自分の症状が本当にわきがなのか、多汗症なのか、あるいは両方なのかを正確に診断してもらうことが重要です。

日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」では、以下の診断基準が示されています。

原発性腋窩多汗症の診断基準

明らかな原因がないまま、6か月以上、局所的に過剰な発汗が認められ、以下の6項目のうち2項目以上を満たす場合:

  1. 最初に症状が出るのが25歳以下
  2. 対称性に発汗がみられる
  3. 睡眠中は発汗が止まっている
  4. 1週間に1回以上多汗のエピソードがある
  5. 家族歴がみられる
  6. それらによって日常生活に支障をきたす

この基準に照らして、自分の症状を客観的に評価してもらいましょう。

2. 治療の目標を明確にする

「完全ににおいをなくしたい」「まったく汗をかかなくなりたい」といった完璧を求めるのではなく、「日常生活で気にならない程度に改善したい」「衣服のシミが減れば満足」といった現実的な目標設定が重要です。

3. クリニック選び

  • ビューホット治療の経験が豊富な医師がいるか
  • カウンセリングで十分な説明があるか
  • メリットだけでなくデメリットや限界も説明してくれるか
  • 他の治療法との比較を提示してくれるか
  • 術後のフォロー体制が整っているか

これらの点を確認しましょう。

治療時の注意点

1. 適切な照射条件の設定

担当医とよく相談し、自分の症状の程度や体質に合った照射条件を設定してもらいましょう。特に以下の点を確認することが大切です。

  • わきがが主な悩みか、多汗症が主な悩みか
  • どの程度の改善を目指すか
  • 合併症のリスクをどこまで許容できるか

2. 麻酔の使用

ビューホット治療は針を刺すため、局所麻酔が使用されます。手のひらや足の裏の治療の場合は、より強い痛みを伴うため、静脈麻酔や全身麻酔が推奨される場合もあります。

痛みに対する不安がある方は、事前に医師に相談し、適切な麻酔方法を選択してもらいましょう。

治療後のケア

1. 適切な経過観察期間を設ける

前述の通り、効果が安定するまでには3ヶ月程度かかります。焦らず、十分な期間をかけて効果を判定しましょう。

2. 清潔ケアの継続

治療後も、以下のような清潔ケアを継続することが重要です。

  • 1日2回の消毒(中度以上のわきがの場合)
  • こまめなシャワー浴
  • 薬用石鹸の使用
  • アルコール綿での拭き取り
  • 脱毛の実施
  • 天然素材の衣類の着用

3. 生活習慣の改善

  • 肉類や脂肪分の多い食事を控え、和食中心の食生活を心がける
  • ストレス管理を行う
  • 十分な睡眠をとる
  • 生活リズムを整える

これらの生活習慣の改善により、治療効果をより実感しやすくなります。

4. 定期的な経過観察

治療後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月といった定期的なタイミングで、クリニックでの経過観察を受けることをおすすめします。効果が不十分な場合は、追加治療や他の治療法への切り替えを検討できます。

効果が不十分な場合の対処法

1. 追加治療の検討

1回の治療で十分な効果が得られなかった場合、追加治療を検討することができます。ただし、最初の治療から一定期間(通常3〜6ヶ月)空ける必要があります。

2. 他の治療法との併用

ビューホット単独では効果が不十分な場合、以下のような治療法との併用が考えられます。

  • ボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)
  • 塩化アルミニウム外用療法
  • 外用抗コリン薬(エクロックゲルなど)
  • イオントフォレーシス

これらの治療法を組み合わせることで、より良好な結果が得られる可能性があります。

3. 根本的な治療への切り替え

何度治療しても満足な効果が得られない場合や、より確実な効果を求める場合は、外科的手術への切り替えを検討するのも一つの選択肢です。

保険適用と費用について

保険適用の条件

ビューホット治療は、基本的に**自由診療(保険適用外)**です。治療費用は全額自己負担となり、クリニックによって料金設定が異なります。一般的には、両わきで30〜40万円程度が相場です。

一方、以下の治療法は保険適用が可能です。

保険適用の治療法

  • 剪除法(皮弁法)による手術
  • 重度の原発性腋窩多汗症に対するボツリヌス毒素注射
  • 塩化アルミニウム外用療法(院内製剤の場合)

保険適用外の治療法

  • ビューホット
  • ミラドライ
  • その他のレーザー治療
  • 軽度〜中等度の多汗症に対するボツリヌス毒素注射

費用対効果の考え方

ビューホット治療は高額な自費診療です。費用対効果を考える際は、以下の点を検討しましょう。

検討すべき点

  • 期待できる効果の程度
  • 効果の持続期間
  • ダウンタイムの長さ
  • 再治療が必要になる可能性
  • 他の治療法(特に保険適用の治療法)との比較

特に、重度のわきがで確実な効果を求める場合は、保険適用で受けられる剪除法の方が、費用対効果が高い可能性があります。

一方、軽度〜中等度のわきがで、傷跡を残したくない、ダウンタイムを最小限にしたいという場合は、ビューホットの費用対効果が高くなる可能性があります。

治療を受ける前に知っておくべきこと

ビューホットの限界を理解する

ビューホットは万能な治療法ではありません。以下のような限界があることを理解しておきましょう。

限界

  • すべての人に同じ効果があるわけではない
  • 完全ににおいや汗をなくすことは困難な場合がある
  • 多汗症に対する効果は限定的
  • 成長期の方は再発の可能性がある
  • 公的機関の認可を得ていない

合併症のリスク

ビューホット治療には、以下のような合併症のリスクがあります。

一般的な合併症(多くの方に起こりうる)

  • 発赤(1〜3ヶ月程度続くことがある)
  • 腫れ(数日〜2週間程度)
  • 内出血(1〜2週間程度)
  • 色素沈着(3〜6ヶ月程度で徐々に改善)
  • 針痕(5〜7日程度でかさぶたが剥がれる)

まれな合併症

  • 小さな水疱や潰瘍
  • 発疹
  • 感覚異常(特に手のひらや足の裏の治療時)

これらの合併症は、適切な処置により改善しますが、完全に避けることはできません。

セカンドオピニオンの重要性

高額な自費診療であるビューホット治療を受ける前に、複数のクリニックでカウンセリングを受け、セカンドオピニオンを得ることをおすすめします。

セカンドオピニオンで確認すべきこと

  • 自分の症状に対して本当にビューホットが適切か
  • 他にどのような治療選択肢があるか
  • それぞれの治療法のメリット・デメリット
  • 費用対効果の比較
  • 治療を受けないという選択肢もありうるか

特に、「絶対にビューホット治療を受けるべきだ」と強く勧められる場合や、デメリットの説明が不十分な場合は、他のクリニックでも意見を聞いてみることが大切です。

日本におけるガイドラインと推奨治療

日本皮膚科学会が策定した「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」では、多汗症治療について以下のような治療アルゴリズムが示されています。

腋窩多汗症の治療選択

第1選択

  • 外用抗コリン薬(エクロックゲルなど)
  • 塩化アルミニウム外用療法(単純外用または密封療法)

第2選択

  • ボツリヌス毒素注射(重度の場合は保険適用)
  • イオントフォレーシス

その他の選択肢

  • 内服療法(抗コリン薬など)
  • 外科的治療(剪除法など)
  • マイクロ波治療(ミラドライ)

注目すべき点は、ビューホットはこのガイドラインに記載されていないということです。これは、ビューホットの有効性や安全性に関する十分な科学的エビデンスがまだ蓄積されていないことを意味します。

推奨される治療の進め方

ガイドラインでは、以下のような治療の進め方が推奨されています。

  1. 保存的治療から開始:まずは外用療法などの侵襲の少ない治療から始める
  2. 段階的なステップアップ:効果が不十分な場合に、より侵襲的な治療を検討
  3. 患者さんの希望を尊重:QOLの改善が目的であり、本人が困っていなければ治療の必要はない
  4. 総合的な判断:部位、重症度、年齢、職業、生活環境などを考慮

これらの推奨を踏まえると、いきなりビューホットのような高額な自費診療を選択するのではなく、まずは保険適用の治療法を試してみることが合理的と言えます。

わきが・多汗症の正しい理解

「治療すべきか」の判断基準

わきがや多汗症は、必ずしも治療が必要な「病気」ではありません。日本皮膚科学会のガイドラインでも、「治療は患者自らの希望により開始されるべき」とされています。

治療を検討する基準

  • 日常生活に支障をきたしている
  • 対人関係に影響が出ている
  • 仕事や学業に支障がある
  • 衣服が頻繁に汚れる
  • 心理的なストレスが大きい

自分自身が困っていない場合は、無理に治療を受ける必要はありません。

においに対する過度な意識

特に日本では、「自分のにおいに配慮することはエチケット」という考えが強く、においに対して過度に敏感になりがちです。実際には周囲の人は気にしていないのに、自分だけが過度に気にしているケースもあります。

**自己臭症(自己臭恐怖症)**という状態もあり、実際にはにおいがほとんどないにもかかわらず、「自分は臭い」と思い込んでしまうことがあります。この場合、ビューホット治療を受けても、根本的な問題は解決しません。

信頼できる家族や友人に率直に意見を聞いたり、複数の医療機関で客観的な診断を受けたりすることで、自分の状態を正確に把握することが大切です。

遺伝的要因の理解

わきが(腋臭症)は、ABCC11遺伝子が関与する遺伝性の体質です。両親のどちらかがわきが体質の場合、子どもに遺伝する可能性が高くなります。

一方で、世界的に見ると、わきがは決して珍しい体質ではありません。欧米では大多数の人がわきが体質であり、治療対象とはされていません。体臭に対する文化的な捉え方の違いが、治療の必要性に影響しています。

自分の体質を否定的に捉えすぎず、適切なケアや必要に応じた治療で対処していくという前向きな姿勢が大切です。

まとめ

ビューホット治療で「効果なし」と感じる理由には、さまざまな要因があります。

主な要因

  1. 効果判定のタイミングが早すぎる
  2. 期待値が高すぎる
  3. 多汗症に対する効果の限界
  4. 照射条件が適切でない
  5. 施術者の技術差
  6. 成長期における汗腺の再生
  7. 生活習慣やストレスの影響

ビューホット治療を検討される際は、これらの点を十分に理解した上で、以下のようなプロセスを踏むことをおすすめします。

推奨プロセス

  1. 複数の医療機関でカウンセリングを受ける
  2. 自分の症状を正確に診断してもらう
  3. ビューホット以外の治療選択肢についても説明を受ける
  4. メリット・デメリット、費用対効果を比較検討する
  5. 現実的な治療目標を設定する
  6. 信頼できる医師のもとで治療を受ける
  7. 適切な期間をかけて効果を判定する

ビューホットは、適切な条件下で適切な患者さんに対して使用すれば、有用な治療選択肢の一つとなり得ます。しかし、すべての方に適しているわけではなく、限界もあることを理解しておくことが重要です。

わきがや多汗症でお悩みの方は、一人で悩まず、まずは専門の医療機関で相談されることをおすすめします。適切な診断と治療により、QOLの改善が期待できます。

アイシークリニック上野院でのご相談

アイシークリニック上野院では、わきがや多汗症に関する専門的な診療を行っています。

当院の特徴

  • 丁寧なカウンセリングと正確な診断
  • 患者さん一人ひとりに合わせた治療プランの提案
  • メリット・デメリットを含めた正直な説明
  • 保険適用の治療法から自費診療まで幅広い選択肢
  • 経験豊富な医師による治療

ビューホット治療に限らず、あなたの症状や希望に最適な治療法をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」日本皮膚科学会雑誌 133巻13号, 2023
  2. 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:汗の病気―多汗症と無汗症―」
  3. 慶應義塾大学病院「KOMPAS:腋臭症(わきが)」医療・健康情報サイト
  4. 一般社団法人日本形成外科学会「腋臭症(わきが)」
  5. Mindsガイドラインライブラリ「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版」

※本記事は医学的情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨または否定するものではありません。実際の治療については、必ず医師にご相談ください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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