ビューホットによる多汗症・ワキガ治療の最新情報

~切らない治療法で快適な生活を取り戻す~

はじめに

多汗症やワキガ(腋臭症)は、日常生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性がある疾患です。手術以外のあらゆる治療法の中で、現在最もお勧めできる治療法の一つとして、ビューホットというマイクロニードルRF(高周波)技術を応用した、最新のわきが・多汗症治療器があります。

近年、医療技術の進歩により、従来の外科手術に頼らない「切らない治療」が注目を集めています。その中でも、ビューホット(ViewHOT)は、韓国のShenb社が開発した革新的な治療機器として、多くの患者様の悩みを解決してきました。本コラムでは、ビューホットの仕組みや効果、安全性について、最新の医学的知見を交えながら詳しく解説いたします。

1. 多汗症・ワキガとは何か

1-1. 多汗症の定義と診断基準

原発性局所多汗症は、局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上認められ、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合と診断されます:1)最初に症状がでるのが25歳以下であること、2)対称性に発汗がみられること、3)睡眠中は発汗が止まっていること、4)1週間に1回以上多汗のエピソードがあること、5)家族歴がみられること、6)それらによって日常生活に支障をきたすこと。

多汗症は、大きく分けて全身性多汗症と局所性多汗症に分類されます。さらに、それぞれが原因不明の原発性と、他の疾患に伴う続発性に分けられます。2020年の日本における大規模調査では、原発性局所多汗症の有病率は10.0%(腋窩5.9%、頭部・顔面3.6%、手掌2.9%、足底2.3%)と報告されています。

1-2. ワキガ(腋臭症)のメカニズム

人体に存在する汗腺には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類があります。エクリン汗腺は全身に存在し、99%が水分、1%が塩分のサラサラとした汗を分泌します。一方、アポクリン汗腺は「ワキ」「外耳道」「乳房」「陰部」などに存在し、この汗腺から分泌される汗が細菌に分解されることで、特有の臭いが発生します。

1-3. 生活への影響

多汗症の影響は生活のあらゆる側面に及び、日常生活(95.8%)、心理生活(91.5%)、社会生活(90.1%)、職業生活(74.6%)など、17のテーマに大別される問題を引き起こします。不安や恥ずかしさなどのネガティブな感情が様々な活動を避ける理由となり、長期的には人生の決断や性格にまで影響を与える可能性があります。

2. ビューホットの治療原理と特徴

2-1. フラクショナルRF技術の革新性

ビューホットは、患部に針を挿入し、針から「フラクショナルRF高周波」を照射することで、ワキガの原因となる「アポクリン汗腺」を熱破壊する施術です。針は深度を0.1mm単位で調節できるため、皮膚の厚さに応じて照射の深さを変えることができ、1人1人に合わせた施術が可能です。

ビューホットの先端には36本の極細の照射針がついており、異なる深さにある汗腺組織にまで到達します。針の先端から高周波による熱エネルギーが照射され、ピンポイントで汗腺組織だけを焼灼・破壊することで、汗や臭いを抑えます。

2-2. 特許技術による安全性の確保

高周波によって発生した熱が表皮に伝導し、火傷などの事故とならないよう、表皮を冷却する「クーリングプレート」という特許技術が使用されています。これにより、表皮に余分なダメージを与えることなくワキガ治療を行うことができます。

皮膚表面の熱影響によるダメージを防ぐため、特許技術の着脱式の冷却システムにより-0度以下まで冷却・保護しながら高周波の照射を行いますので、熱から肌を守り汗腺以外の組織に影響がありません。

2-3. 深度調節による精密な治療

エクリン汗腺・アポクリン汗腺は深度の異なる層に存在しています。ビューホットはそれぞれの汗腺に狙い撃ちするため、照射針を最大4mmの深さから0.5mmずつ深度を変え刺入することができます。また深度に合わせて適切な出力の調節を行い照射することで焼灼・破壊され、汗や臭いが気にならなくなります。

3. ビューホットの治療効果

3-1. 臨床成績と有効性

171名に対する臨床試験で、1回治療後1か月の時点の評価で95.9%の改善が報告されています。多数の治療経験を有するGクリニックでは、6-12か月のフォローアップで2回以上の治療を要したのは235例中7例(3.1%)でした。

日本人150名以上で検証され、1回の治療で95%以上の実効果が報告されています。中央クリニックグループ全体で3000件以上の実績があります(2017年8月現在)。

3-2. 即効性と持続性

ビューホットの最大の特徴は、すぐに効果が実感できるところです。大半の方は1回の治療で効果を実感します。さらに、一度破壊された汗腺は基本的に再生することはない(成長期の方を除く)ため、一般的には、1回の治療で高い効果が得られると言われています。

3-3. 治療部位の広がり

ビューホットは「ワキ・手のひら・足底・すそ」の各部位を施術可能です。ビューホットは、ワキ、乳輪周囲、デリケートゾーンの治療が可能です。

従来の治療法では対応が困難だった部位にも適用できることが、ビューホットの大きな特徴の一つです。特に、従来の手術やミラドライでの治療では対応できなかったチチガ(乳輪のワキガ)・スソワキガ(陰部のワキガ)・ケツガ(肛門周囲のワキガ)にも対応が可能です。

4. ビューホットと他の治療法との比較

4-1. ミラドライとの違い

ビューホットは患部に針を刺し「フラクショナルRF高周波」を照射することによって汗腺を焼灼する治療機となりますが、ミラドライはお肌の上から「マイクロ波」を照射することで熱を発生させて汗腺を焼灼する治療機となります。

ミラドライは日本の厚生労働省やFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を得ているため、治療における安全性が高いといえます。

しかし、ビューホットでは乳周りやすそ周りの治療が可能で、多汗症の原因となるエクリン汗腺が少なく、匂いの原因となるアポクリン汗腺をピンポイントで破壊することが可能です。特に女性に多い症状ですので、乳・すそ周辺の匂いにお悩みがある女性にこそおすすめな治療です。

4-2. 従来の外科手術との比較

保険診療で行う切開法や稲葉式の手術では、ワキの毛の生えている範囲よりやや広い範囲で皮膚の下を剥離(完全にはがす)ため手術後は約1週間の固定が必要です。この間、腕は水平より上に挙げるのを制限し、固定が外れるまでの間は患部を濡らすことができないため、入浴が制限されます。

一方、ビューホットは当日こそ患部を濡らさずに過ごしていただきますが、翌日からはシャワー浴が可能です。患部の赤みはしばらく残り、その後色素沈着がみられることがありますが、運動の制限もほぼありません。

5. 治療の流れと実際

5-1. カウンセリングと適応判断

治療前には、医師による詳細なカウンセリングが行われます。患者様の症状の程度、治療への期待、生活スタイルなどを総合的に評価し、ビューホットが最適な治療法であるかを判断します。

原発性局所多汗症の重症度は自覚症状により、HDSS(Hyperhidrosis disease severity scale)で4段階に分類されます:1.発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない、2.発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある、3.発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある、4.発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。

5-2. 施術の手順

  1. マーキング:治療の効果を高めるため、有毛部よりも広範囲にマーキングをしていきます。
  2. 麻酔:麻酔は、ワキ、乳輪周囲は局部麻酔。デリケートゾーンはブロック麻酔を使用します。
  3. 照射:汗の臭いが強い方にはアポクリン汗腺のある深い層を重点的に、汗の量が多い方にはエクリン汗腺のある浅い層を重点的に治療をしていきます。どちらも気になる方には、浅い層と深い層のどちらも照射をしていきます。
  4. 冷却:照射後は皮膚へのダメージを軽減させるために冷却を行います。
  5. アフターケア:炎症を鎮めるための軟膏を塗布します。ご自宅で2、3日程軟膏を塗布して頂きます。

5-3. 施術時間

ビューホットは、部位にもよりますが、短い時間で効率的に治療することが可能です。一般的には、片ワキ15分~20分の施術時間で治療が完了します。施術時間は30分前後と短時間で行える上、個人差はありますが再発の可能性はかなり低くほとんど再発しないと言われています。

6. 副作用とリスク管理

6-1. 一般的な副作用

施術後に多少の腫れや赤み、内出血などの症状は数週間ほど続く場合もあります。上記の症状は、治療後に処方される軟膏や内服薬で早期に改善することが可能です。治療した部位の血行が良くなると、腫れ・赤み・痒みが出たり増したりすることがあるため、治療後は、飲酒や激しい運動、日光浴やサウナなどは避けるなどの注意は必要です。

ビューホット治療は、重症の多汗症に対して効果を発揮する可能性がありますが、安全性の観点から注意が必要です。過度の熱により正常な皮膚への影響や熱傷のリスクが考慮される必要があります。そのため、安全性を優先すると、重症の多汗症に対するビューホットの効果は限定的になることがあります。

6-2. ダウンタイム

ビューホットは、皮膚を切らずに治療をすることが可能なため、汗腺を切除する切開手術のような傷跡が残ることはありません。治療後の腫れ・硬さ・凹凸等を極端に少なくし、治療後の固定も一切無いため、施術後のダウンタイムはほぼありません。(シャワーは当日、入浴は翌日から可能)。

ビューホットは、高周波エネルギーを利用してワキガや多汗症の原因となる汗腺を破壊する治療法ですが、皮膚を切開せずに治療できるため、術後の制限がほとんどなく、日常生活への影響を最小限に抑えられるのが大きな特徴です。施術当日から通常通りの生活を送ることができ、運動や飲酒も特に制限はありません。

7. 最新の多汗症治療ガイドラインとビューホット

7-1. 日本皮膚科学会のガイドライン

2023年に改訂された日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドラインでは、多汗症の治療は患者自らの希望により開始されるべきであり、患者本人が困らなければ治療を行う必要はないとされています。

治療法としては、以下のような段階的アプローチが推奨されています:

第一選択:外用療法

  • 塩化アルミニウム外用療法は原発性局所多汗症において、まず行ってよい治療です。腋窩多汗症や掌蹠多汗症の軽症例、頭部顔面に関しては単純外用、掌蹠多汗症中等~重症例にはODT療法が望ましいとされています
  • 原発性腋窩多汗症において、保険適用の外用抗コリン薬(ソフピロニウム臭化物、グリコピロニウムトシル酸塩水和物)による治療が推奨されています

第二選択:物理療法

  • 水道水イオントフォレーシス療法は掌蹠多汗症に対しては行うことが勧められます

その他の治療法

  • ボツリヌス毒素注射(重度の腋窩多汗症に保険適用)
  • 交感神経遮断術(重症例で他の治療に抵抗性の場合)

7-2. ビューホットの位置づけ

現在の診療ガイドラインには、ビューホットなどのRF(高周波)治療機器についての明確な記載はありませんが、医療法人ジュエリメディカルでは、多汗症やわきがの治療を3,000件以上行っており、皮膚を切開することなく外科手術と同程度の治療効果を得られるため、痛みやダウンタイムなどのリスクを抑えた治療が可能と報告されています。

8. 治療費用と保険適用

ビューホット治療は現在、保険適用外の自由診療となります。そのため、治療費用は医療機関によって異なりますが、一般的に両ワキで20万円~40万円程度が相場となっています。

一方、保険適用の治療法としては:

  • 外用抗コリン薬(エクロックゲル、ラピフォートワイプ)
  • 重度の腋窩多汗症に対するボツリヌス毒素注射
  • 交感神経遮断術

これらがありますが、それぞれに適応や制限があり、すべての患者様に適しているわけではありません。

10. ビューホットが向いている方・向いていない方

10-1. ビューホットが向いている方

  • 切開手術に抵抗がある方
  • ダウンタイムを最小限にしたい方
  • 仕事や学校を休めない方
  • ワキ以外の部位(すそ、乳輪周囲など)の治療を希望する方
  • 1回の治療で効果を実感したい方
  • 小学校高学年以上の児童・生徒

10-2. 慎重に検討すべき方

重症の多汗症に対するビューホットの効果は限定的になることがあります。多汗症は、表層近くのエクリン汗腺の活動が活発であることが原因ですが、効果が現れやすいのは針先周辺のみとなり、広範囲にあるエクリン汗腺のほとんどを破壊することができません。

そのため、以下の方は他の治療法も含めて検討することをお勧めします:

  • 重度の多汗症の方(特に手掌・足底)
  • 広範囲の多汗に悩む方
  • ケロイド体質の方
  • 妊娠中・授乳中の方
  • ペースメーカーを使用している方

11. 最新の研究動向と今後の展望

11-1. フラクショナルRF技術の進化

マイクロニードルフラクショナルRF技術は、最新のRFテクノロジーによって、最小限のダウンタイムで最大限の効果を得ることを目的とした第3世代の新しいフラクショナル治療器として進化を続けています。

近年では、針の本数を増やしたり(25本、36本、49本など)、深度調整をより精密に行えるようになったりと、技術的な改良が進んでいます。1本のマイクロニードルで皮脂腺を破壊させることで、ニキビ治療も可能になりました。

11-2. 併用療法の可能性

深部にあるアポクリン汗腺を徹底的に破壊するため、深層をHIFU(高密度高焦点超音波治療)で同時に処理する方法も開発されています。このような併用療法により、より高い治療効果が期待できる可能性があります。

まとめ

ビューホットは、多汗症やワキガに悩む多くの方にとって、画期的な治療選択肢となっています。皮膚を切開することなく外科手術と同程度の治療効果を得られるため、痛みやダウンタイムなどのリスクを抑えた治療が可能で、施術時間は30~60分で、治療した当日から症状の改善が期待できます。

しかし、すべての方に適した治療法というわけではありません。重症度や治療部位、生活スタイルなど、様々な要因を考慮して、最適な治療法を選択することが重要です。多汗症の治療ゴールは、患者の生活の中で発汗が起こらないように常にコントロールすることではなく、あくまで患者本人が多汗のことで損なわれている自身の生活のQOLが改善されることにあります。

多汗症やワキガでお悩みの方は、まずは専門医によるカウンセリングを受け、ご自身に最適な治療法を見つけることから始めてみませんか。アイシークリニック上野院では、患者様の悩みに寄り添い、最善の治療法をご提案させていただきます。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版. 日本皮膚科学会雑誌 2023; 133(2): 157-188
  2. 日本皮膚科学会. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂). 日本皮膚科学会雑誌 2023; 133(13): 3025-3056
  3. Fujimoto T, et al. Questionnaire-based epidemiological survey of primary focal hyperhidrosis and survey on current medical management of primary axillary hyperhidrosis in Japan. Arch Dermatol Res. 2022
  4. Murota H, et al. Cost-of-illness study for axillary hyperhidrosis in Japan. J Dermatol. 2021; 48: 1482-1490
  5. Kamudoni P, et al. The impact of hyperhidrosis on patients’ daily life and quality of life: a qualitative investigation. Health Qual Life Outcomes. 2017; 15: 121
  6. 藤本智子, 他. 腋窩多汗症の患者意識調査:インターネットアンケート調査608人の結果報告. 日本臨床皮膚科医会雑誌. 2022; 39: 431-439
  7. 横関博雄, 他. グリコピロニウムトシル酸塩水和物ワイプ製剤の原発性腋窩多汗症患者に対する長期投与試験. 日本臨床皮膚科医会雑誌. 2022; 39: 55-63
  8. Yokozeki H, et al. A phase 3, multicenter, randomized, double-blind, vehicle-controlled, parallel-group study of 5% sofpironium bromide gel in Japanese patients with primary axillary hyperhidrosis. J Dermatol. 2021; 48: 279-288
  9. Glaser DA, et al. Topical glycopyrronium tosylate for the treatment of primary axillary hyperhidrosis: Results from the ATMOS-1 and ATMOS-2 phase 3 randomized controlled trials. J Am Acad Dermatol. 2019; 80: 128-138

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

プロフィールを見る

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

プロフィールを見る