手掌多汗症とは
手掌多汗症とは、手のひらに大量の汗をかく状態を指します。医学的には「原発性局所多汗症」に分類され、特定の原因がはっきりしないものの、自律神経の一部である交感神経の働きが過剰になることが関係しています。暑さや運動とは無関係に、日常生活の中で突然手のひらが湿る、あるいは汗が滴り落ちるほどになるのが特徴です。
発症する年齢は?
手掌多汗症は、主に小学生から思春期にかけて発症することが多く、特に10代前半がピークとされています。学業や人間関係など、社会生活が本格化する時期に重なるため、精神的な負担を感じやすい時期でもあります。
原因について
発症の正確な原因はまだ明らかではありませんが、交感神経の過剰な活動が背景にあると考えられています。緊張やストレスによって発汗が誘発されることが多く、家族に同様の症状を持つ人がいる場合、遺伝的要因が関係している可能性もあります。
主な症状
もっとも顕著な症状は、手のひらに異常なほどの汗をかくことです。汗の量は人によって異なり、湿り気程度からポタポタと滴るほどの量まであります。通常は両手に対称的に現れ、気温や運動に左右されない点が特徴です。
汗が出るタイミング
発汗は、起床直後から始まり日中に最も強く現れる傾向があります。試験やプレゼン、人前での会話など、緊張する場面で悪化することが多い一方で、リラックス時にも突然発汗が起きることがあります。夜間の睡眠中には、基本的に発汗は見られません。
日常生活への影響
手掌多汗症は、日常生活に様々な不便をもたらします。例えば、紙に文字を書くと濡れてしまう、握手をためらう、スマートフォンの操作が困難になる、楽器演奏やスポーツのパフォーマンスが低下するといった影響があります。心理的にもストレスが強く、人間関係や自己肯定感に悪影響を及ぼすことがあります。
治療方法
治療には複数の選択肢があります。
– 外用薬:塩化アルミニウム溶液などがあり、汗腺の活動を抑制します。
– ボツリヌス毒素注射:即効性があり、効果は数ヶ月持続します。
– 手術:重症例では、交感神経を遮断する胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)が行われることもあります。
いずれの治療も保険適用になる可能性があるため、専門医に相談することが大切です。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年東京大学医学部医学科卒業
- 2009年東京逓信病院勤務
- 2012年東京警察病院勤務
- 2012年東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年東京逓信病院勤務
- 2013年独立行政法人労働者健康安全機構横浜労災病院勤務
- 2015年国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務