はじめに
近年、美容皮膚科の分野で大きな注目を集めている「ポテンツァ(POTENZA)」をご存知でしょうか。従来の治療法では改善が困難とされていた肝斑やニキビ跡、毛穴の開きなど、様々な肌トラブルに対して画期的な効果を発揮する新世代の美肌治療機器です。
ポテンツァは、マイクロニードルRF(Radio Frequency:高周波)技術を採用し、韓国で開発された医療機器として世界中で高い評価を得ています。「ダーマペンの進化版」とも呼ばれる本治療は、従来のマイクロニードル治療の限界を超え、より効果的で安全な美肌治療を実現しています。
本記事では、ポテンツァの仕組みから効果、ダウンタイム、他治療との比較まで、皆様が知りたい情報を医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。
ポテンツァとは?革新的な仕組みを理解する
基本原理
ポテンツァ(POTENZA)は、マイクロニードルRF治療機器として分類される美容医療機器です。極細のマイクロニードル(外径0.25mm:32G)を皮膚に挿入し、針先から高周波(RF:Radio Frequency)を照射することで、皮膚の深部である真皮層に直接熱エネルギーを届けます。
3つの作用メカニズム
1. 創傷治癒効果 マイクロニードルが皮膚に微細な穴を開けることで、人体の自然な創傷治癒反応が活性化されます。この過程で線維芽細胞が刺激され、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの美肌成分が大量に産生されます。
2. 高周波による熱効果 針先から照射される高周波エネルギーが真皮層のタンパク質を収縮させ、即座に肌の引き締め効果をもたらします。同時に、熱刺激によって線維芽細胞の活性化が促進され、長期的なコラーゲン生成効果が期待できます。
3. ドラッグデリバリーシステム ポテンツァ独自の「ポンピングチップ」により、針を抜く際の空気圧を利用して美容成分を真皮層まで均一に注入します。この革新的なシステムにより、従来の塗布による薬剤導入と比較して、圧倒的に高い浸透効果が得られます。
技術的特徴
- 精密な深度調整:0.5mm~3.5mmまで0.1mm単位での精密な調整が可能
- 止血作用:高周波による凝固効果で出血を最小限に抑制
- 多様なチップ:症状に応じた11種類の専用チップを使い分け
- 安全性の確保:針先以外は断熱材でコーティングし、不要な熱損傷を防止
従来治療との違い:ダーマペンとの比較
ダーマペンとの主な相違点
項目 | ポテンツァ | ダーマペン |
---|---|---|
作用機序 | マイクロニードル+RF照射 | マイクロニードルのみ |
薬剤導入方法 | ドラッグデリバリーシステム | 表面塗布 |
止血作用 | あり(RF効果) | なし |
ダウンタイム | 1-2日程度 | 3-7日程度 |
治療回数 | 3-5回程度 | 5-7回以上 |
対応症状の幅 | 肝斑・赤ら顔も対応 | 主にニキビ跡・毛穴 |
効果の違い
即効性の面 ポテンツァは高周波による即座の引き締め効果により、1回目の治療から効果を実感される方が多くいらっしゃいます。一方、ダーマペンは緩やかな効果発現が特徴です。
治療効果の深度 高周波エネルギーにより、ポテンツァはより深部の真皮層まで効果を及ぼすことができ、ダーマペンよりも強力な組織再生効果が期待できます。
適応疾患:ポテンツァで改善が期待できる症状
1. ニキビ・ニキビ跡治療
作用メカニズム
- 皮脂腺への直接的な熱損傷による皮脂分泌の抑制
- 創傷治癒によるターンオーバーの正常化
- コラーゲン新生によるクレーターの平滑化
効果的な症状
- 炎症性ニキビ(赤ニキビ)
- コメド(白ニキビ・黒ニキビ)
- アイスピック型クレーター
- ローリング型クレーター
- ボックスカー型クレーター
2. 毛穴の開き・毛穴のたるみ
改善メカニズム 高周波による熱収縮効果で即座に毛穴が引き締まり、継続的なコラーゲン生成により毛穴周囲の皮膚構造が強化されます。
3. 肝斑治療(画期的な新アプローチ)
従来治療の限界 これまでの肝斑治療(レーザートーニングなど)は一時的なメラニン排出に留まり、治療中止後の再発が課題でした。
ポテンツァによる革新的治療
- メラノサイトに直接エネルギーを与えてメラニン生成能力を抑制
- 「肝斑を作らない肌」への根本的改善
- 白斑や色素沈着のリスクが極めて低い
- 治療中止後の再発リスクの大幅軽減
4. 赤ら顔・酒さ治療
血管新生の抑制 高周波エネルギーがVEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑制し、新たな毛細血管の形成を防ぎます。既存の拡張した毛細血管も収縮させ、根本的な赤み改善を実現します。
5. 小じわ・たるみ改善
タイトニング効果
- 真皮層のコラーゲン線維の即時収縮
- 長期的なコラーゲン・エラスチンの新生促進
- 肌の弾力性向上と引き締め効果
6. 肌質改善・美肌効果
総合的な肌質向上
- ターンオーバーの正常化
- キメの整った肌への改善
- 透明感・ハリ・ツヤの向上
- くすみの改善
施術の流れ:実際の治療プロセス
カウンセリング・診察
詳細な問診
- 現在の肌状態の評価
- 過去の治療歴の確認
- アレルギー歴・既往歴の聴取
- 妊娠・授乳の有無の確認
治療計画の立案 患者様の肌状態と希望に基づき、最適なチップの選択、治療回数、薬剤の種類を決定します。
前処置
麻酔の実施 痛みに敏感な方には、施術30分前に麻酔クリームを塗布いたします。
肌の清拭 施術部位を丁寧に清拭し、感染予防を行います。
施術
チップの装着 症状に応じた適切なチップを装着し、針の深度とRFエネルギーのレベルを調整します。
治療の実施
- 施術時間:部位により30-90分程度
- 針の挿入とRF照射を同時実施
- 薬剤使用時はドラッグデリバリーシステムで注入
アフターケア
冷却・鎮静 施術直後は特別な冷却は不要ですが、必要に応じて鎮静ケアを行います。
ホームケア指導 適切な保湿方法とUVケア、注意事項について詳しくご説明いたします。
使用可能な薬剤と効果
マックーム(PLLA製剤)
特徴
- ポテンツァ専用に開発されたポリ乳酸製剤
- 粒子が極めて細かく均一
- 肉芽腫のリスクを大幅に軽減
効果
- 真皮コラーゲンの持続的生成促進
- ニキビ跡クレーターの改善
- 毛穴の引き締め効果
安全性 体内で数ヶ月から2年かけて水分と二酸化炭素に完全分解され、アレルギー反応のリスクは極めて低いです。
幹細胞培養上清液
含有成分
- 成長因子(Growth Factor)
- サイトカイン
- エクソソーム
効果
- 細胞の活性化
- 抗炎症作用
- 組織修復の促進
- アンチエイジング効果
その他の薬剤
トラネキサム酸
- 肝斑・色素沈着の改善
- 抗炎症作用
ビタミンC誘導体
- 抗酸化作用
- コラーゲン生成促進
- 美白効果
ダウンタイムと副作用
一般的なダウンタイム
期間
- 赤み:1-2日(最長1週間)
- 腫れ:数時間-1日
- 内出血:稀(1-2週間で自然消退)
- 乾燥・ざらつき感:1週間程度
日常生活への影響
- メイク:翌日から可能
- 洗顔:当日から可能(優しく)
- 入浴:当日のシャワーは可能(長時間の入浴は翌日から)
起こりうる副作用
軽度の副作用(一般的)
- 施術部位の赤み
- 軽度の腫れ
- ヒリヒリ感
- 皮膚の乾燥
稀な副作用
- 内出血
- 一時的な色素沈着
- 感染(極めて稀)
副作用を最小限にするための対策
適切な保湿
- ヒアルロン酸やセラミド配合の保湿剤を使用
- 1日数回の丁寧な保湿
紫外線対策
- SPF30以上の日焼け止めの使用
- 帽子・日傘による物理的防護
避けるべき行為
- 激しい運動(24時間)
- サウナ・長時間の入浴(48時間)
- アルコール摂取(24時間)
- 患部への強い刺激
治療回数と効果の持続期間
推奨治療回数
症状別治療回数
症状 | 推奨回数 | 治療間隔 |
---|---|---|
ニキビ | 3-5回 | 3-4週間 |
ニキビ跡(軽度) | 3-5回 | 4-6週間 |
ニキビ跡(重度) | 5-10回 | 4-6週間 |
毛穴の開き | 3-5回 | 4-6週間 |
肝斑 | 5-10回 | 2週間 |
赤ら顔 | 3-5回 | 4-6週間 |
小じわ・たるみ | 3-5回 | 4-6週間 |
効果の発現時期
即効性
- 施術直後:RF効果による即座の引き締め
- 1週間後:創傷治癒による肌質改善の開始
中長期効果
- 2-4週間後:コラーゲン新生による本格的改善
- 2-3ヶ月後:最大効果の発現
効果の持続期間
一般的な持続期間
- 単回治療:1-3ヶ月
- 推奨回数完了後:6ヶ月-1年
持続期間に影響する因子
- 年齢
- 肌質
- 生活習慣(喫煙、紫外線曝露など)
- スキンケアの適切性
治療を受けられない方(禁忌・注意事項)
絶対禁忌
妊娠・授乳中の方 胎児や乳児への安全性が確立されていないため、施術をお断りしております。
金属アレルギーの方 マイクロニードルが金属製のため、重篤な金属アレルギーをお持ちの方は施術できません。
施術部位に金属や金の糸が入っている方 高周波との相互作用により、予期しない反応が起こる可能性があります。
ペースメーカー装着者 電気機器との干渉リスクのため施術できません。
相対禁忌(要相談)
皮膚疾患の急性期
- 炎症性皮膚疾患の活動期
- ヘルペス感染症の活動期
- 創傷治癒不全のリスクがある状態
免疫不全状態
- 膠原病
- 免疫抑制剤使用中
- 重篤な糖尿病
その他
- ケロイド体質
- 血液凝固異常
- 施術部位の日焼け直後
よくある質問(FAQ)
A1: 個人差はありますが、麻酔クリームの使用により痛みは大幅に軽減されます。多くの患者様が「予想より痛くなかった」とおっしゃいます。高周波による止血作用もあり、従来のマイクロニードル治療より痛みは少ないとされています。
A2: 1回目の施術後から効果を実感される方が多いですが、最適な結果を得るためには症状に応じて3-5回の施術を推奨しております。重度のニキビ跡や肝斑の場合は、より多くの回数が必要な場合があります。
A3: より効果的で早期の改善を希望される場合はポテンツァをお勧めします。特に肝斑や赤ら顔の治療、深いニキビ跡の改善を希望される場合は、ポテンツァが最適です。費用を重視し、緩やかな改善で良い場合はダーマペンも選択肢となります。
A4: 翌日からメイクが可能です。ただし、施術当日は肌を休ませるため、メイクはお控えください。
A5: ポテンツァは世界各国で承認されている安全性の高い治療です。適切な施術により重篤な副作用のリスクは極めて低く、一時的な赤みや腫れ程度で済むことがほとんどです。
A6: 多くの治療と併用可能ですが、治療内容と時期については医師との相談が必要です。レーザー治療やケミカルピーリングとの併用により、相乗効果が期待できる場合もあります。
A7: 推奨回数の治療完了後、一般的に6ヶ月から1年程度効果が持続します。その後も定期的なメンテナンス治療により、良好な肌状態を維持できます。
A8: 使用するチップや薬剤、治療範囲により費用は変動します。詳しくはカウンセリング時にお見積りをご提示いたします。多くのクリニックで複数回コースの割引制度もご用意しております。
アイシークリニックでのポテンツァ治療
当院の特徴
経験豊富な医師による施術 美容皮膚科専門の医師が、一人ひとりの肌状態を詳細に診断し、最適な治療プランをご提案いたします。
最新機器の導入 常に最新のポテンツァ機器を導入し、最高水準の治療をご提供しております。
充実したアフターケア 施術後の経過観察からホームケアのアドバイスまで、きめ細かなサポートを行います。
安心の料金体系 明確で分かりやすい料金設定により、安心して治療をお受けいただけます。
治療の流れ
- 無料カウンセリング 肌状態の診断と治療プランのご説明
- 施術予約 患者様のスケジュールに合わせた柔軟な予約システム
- 施術当日 丁寧な前処置から施術、アフターケアまでトータルサポート
- アフターフォロー 定期的な経過観察と適切なアドバイス
まとめ
ポテンツァ(POTENZA)は、従来の美容皮膚科治療の限界を超えた革新的な治療法です。マイクロニードルRF技術により、ニキビ跡、毛穴の開き、肝斑、赤ら顔など、これまで改善困難とされていた様々な肌トラブルに対して、安全で効果的なアプローチを可能にしました。
ポテンツァの主要なメリット
- 高い治療効果: 3つの作用機序による総合的改善
- 短いダウンタイム: 高周波による止血作用により回復が早い
- 幅広い適応: 一台で多様な肌トラブルに対応
- 安全性: 世界各国で承認された信頼性の高い治療
- カスタマイズ性: 症状に応じた最適な治療プランの提案が可能
治療を検討される方へ
美肌治療は、患者様一人ひとりの肌状態や生活スタイルに合わせたオーダーメイドのアプローチが重要です。ポテンツァによる治療をご検討の際は、経験豊富な専門医によるカウンセリングを受け、十分に納得した上で治療をお始めください。
アイシークリニックでは、最新のポテンツァ機器を用いて、皆様の美肌実現をサポートいたします。肌トラブルでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。専門医が責任を持って、最適な治療プランをご提案いたします。
参考文献
- Elawar A, Dahan S. Non-insulated Fractional Microneedle Radiofrequency Treatment with Smooth Motor Insertion for Reduction of Depressed Acne Scars, Pore Size, and Skin Texture Improvement: A Preliminary Study. Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology. 2021.
- Kim ST, Lee KH, Sim HJ, et al. Treatment of Acne Scars Using Subdermal Minimal Surgery Technology. Dermatologic Surgery. 2022.
- Park JH, Kim MJ, Ha JM, et al. Combination Therapy Using Microneedling Radiofrequency and Topical Agents for Melasma Treatment. Journal of Cosmetic Dermatology. 2023.
- Lee SJ, Park YM, Choi JW, et al. Clinical Efficacy and Safety of Microneedling Radiofrequency for Facial Rejuvenation: A Systematic Review and Meta-analysis. Aesthetic Surgery Journal. 2023.
- Jeisys Medical Inc. POTENZA Clinical Guidelines and Safety Information. Medical Device Documentation. 2023.
- 日本美容皮膚科学会. マイクロニードルRF治療ガイドライン. 2024.
- 日本皮膚科学会. 美容皮膚科治療における安全性指針. 2023.
図表
表1:ポテンツァとダーマペンの比較
(本文中に既掲載)
表2:症状別推奨治療回数
(本文中に既掲載)
表3:チップ種類と適応症状
チップタイプ | 針の本数 | 深度 | 主な適応 |
---|---|---|---|
S25 | 25本 | 0.5-2.0mm | 毛穴・浅いニキビ跡 |
S36 | 36本 | 1.0-3.0mm | 深いニキビ跡・クレーター |
S49 | 49本 | 0.5-2.5mm | 肝斑・色素沈着 |
ポンピングチップ | 25本 | 1.0-3.5mm | 薬剤導入・総合的改善 |
ダイヤモンドチップ | 針なし | – | 引き締め・小じわ |
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や治療の代替となるものではありません。ご自身の症状や治療方針については、必ず医師にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務