ワキガじゃないのに脇が臭い―その原因と正しい対処法

「自分はワキガではないはずなのに、脇の臭いが気になる」「汗をかくと脇から嫌な臭いがする」――こうした悩みを抱えている方は少なくありません。実は、脇の臭いの原因はワキガ(腋臭症)だけではなく、さまざまな要因が関係しています。

この記事では、ワキガ以外で脇が臭くなる原因を詳しく解説し、適切な対処法をご紹介します。日常生活で実践できるセルフケアから、医療機関での治療が必要なケースまで、幅広くカバーしていきます。

目次

  1. ワキガと通常の体臭の違い
  2. ワキガ以外で脇が臭くなる7つの主な原因
  3. 生活習慣が脇の臭いに与える影響
  4. 疾患が原因で脇が臭くなるケース
  5. 今日から始められるセルフケア10選
  6. 医療機関を受診すべきサイン
  7. よくある質問
  8. まとめ

1. ワキガと通常の体臭の違い

まず、ワキガと通常の体臭の違いを理解することが重要です。両者は臭いの発生メカニズムが根本的に異なります。

ワキガ(腋臭症)のメカニズム

ワキガは医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれ、アポクリン汗腺という特殊な汗腺から分泌される汗が原因です。アポクリン汗腺は主に脇の下、乳輪周辺、陰部などに分布しており、思春期以降に活発に機能するようになります。

アポクリン汗腺から出る汗には、タンパク質、脂質、糖質、アンモニア、鉄分などが含まれており、この汗自体は無臭です。しかし、皮膚表面の常在菌がこれらの成分を分解することで、独特の刺激的な臭いが発生します。

ワキガの特徴:

  • 鼻にツンとくるような独特の刺激臭
  • 鉛筆の芯、クミン、硫黄、ネギなどに例えられる臭い
  • 衣類に黄ばみがつきやすい
  • 耳垢が湿っている傾向がある
  • 家族にワキガの人がいる(遺伝性)

通常の体臭のメカニズム

一方、通常の体臭は主にエクリン汗腺から分泌される汗が関係しています。エクリン汗腺は全身に分布しており、体温調節のために汗を分泌します。

エクリン汗の成分は99%が水分で、残りの1%に塩分や尿素などが含まれています。この汗自体もほぼ無臭ですが、時間が経過すると皮脂や垢と混ざり、細菌によって分解されることで臭いが発生します。

通常の体臭の特徴:

  • 汗臭さ、すっぱい臭い
  • 時間経過とともに強くなる
  • 清潔にすることで大幅に改善できる
  • 食事や生活習慣の影響を受けやすい

このように、ワキガは体質的な要因が大きく、遺伝的な要素が強い一方、通常の体臭は生活習慣や衛生状態によって大きく変化します。

2. ワキガ以外で脇が臭くなる7つの主な原因

ワキガではないのに脇が臭う場合、以下のような原因が考えられます。

2-1. 汗の量が多い(多汗症)

脇の下は汗腺が密集しており、もともと汗をかきやすい部位です。さらに多汗症の場合、通常よりも多くの汗をかくため、細菌が繁殖しやすい環境になります。

多汗症には以下の2種類があります。

原発性多汗症 特定の原因がなく、特定の部位(脇、手のひら、足の裏、顔など)に過剰な発汗が見られる状態です。精神的緊張やストレスで悪化することがあります。

続発性多汗症 甲状腺機能亢進症、糖尿病、更年期障害などの疾患や、特定の薬剤の副作用として全身性の発汗が見られる状態です。

汗の量が多いと、それだけ細菌が繁殖する機会が増え、臭いも強くなる傾向があります。

2-2. 細菌の繁殖

脇の下は高温多湿で、細菌が繁殖しやすい環境です。皮膚の常在菌自体は悪いものではありませんが、汗や皮脂、角質などを栄養源として増殖すると、その代謝産物として臭い物質を産生します。

特に以下の条件が揃うと、細菌の繁殖が加速します。

  • 汗をかいた後、長時間そのまま放置する
  • 同じ衣類を連続して着用する
  • 脇毛が多く、通気性が悪い
  • 制汗剤や石鹸の使いすぎで皮膚のバリア機能が低下している

皮膚常在菌のバランスが崩れると、臭いの原因となる菌が優位になることもあります。

2-3. 衣類への臭いの蓄積

衣類に染み込んだ汗や皮脂が完全に落ちていないと、着用時の体温で温められて臭いが発生します。これは「生乾き臭」や「戻り臭」とも呼ばれます。

衣類の臭いが取れにくい理由:

  • 化学繊維(ポリエステルなど)は臭いを吸着しやすい
  • 洗濯物の量が多すぎて汚れが落ちていない
  • 洗濯槽にカビや細菌が繁殖している
  • 部屋干しで生乾きになっている
  • 長時間濡れたまま放置している

特に、何度も着用した衣類には臭いの原因物質が蓄積しており、通常の洗濯では落ちにくくなります。

2-4. 食生活の影響

食べ物は体臭に直接的な影響を与えます。特定の食品を摂取すると、その成分が汗として排出され、臭いの原因となることがあります。

体臭を強くする可能性がある食品:

動物性タンパク質 肉類を過剰に摂取すると、腸内で分解される際に臭いの強い物質(アンモニア、硫化水素など)が発生します。これらは血液に吸収され、汗として排出されると臭いの原因になります。

ニンニク、ニラ、ネギなどの香味野菜 これらに含まれるアリシンという成分が、体内で分解されて臭いの強い物質に変化します。摂取後、24〜48時間程度は体臭に影響することがあります。

アルコール アルコールは肝臓で分解される際にアセトアルデヒドという臭いの強い物質を産生します。これが汗として排出されると、独特の臭いになります。

辛い食べ物 カプサイシンなどの辛味成分は発汗を促進するため、汗の量が増えて臭いが強くなる可能性があります。

カフェイン コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは、アポクリン汗腺を刺激して汗の分泌を促進することがあります。

2-5. ストレスと緊張

精神的なストレスや緊張は、汗の分泌に大きな影響を与えます。これは「精神性発汗」と呼ばれ、主に手のひら、足の裏、脇の下に見られます。

ストレスがかかると、交感神経が優位になり、アドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。これにより、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方が刺激され、汗の分泌が増加します。

ストレス性の発汗の特徴:

  • 短時間で大量の汗をかく
  • 気温に関係なく発汗する
  • 汗がベタベタしている
  • 臭いが強い傾向がある

また、ストレスが慢性化すると、自律神経のバランスが乱れ、通常よりも汗をかきやすい体質になることがあります。

2-6. ホルモンバランスの変化

ホルモンバランスの変化も体臭に影響します。特に以下の時期には注意が必要です。

思春期 性ホルモンの分泌が活発になり、アポクリン汗腺の活動が始まります。また、皮脂の分泌も増えるため、体臭が強くなる傾向があります。

月経周期 女性の場合、月経周期によってホルモンバランスが変動します。排卵期から月経前にかけて、体臭が強くなることがあります。

妊娠・出産 妊娠中や産後は、ホルモンバランスが大きく変化し、汗の量や質が変わることがあります。

更年期 更年期になると、エストロゲンの減少により自律神経が不安定になり、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)や多汗が見られることがあります。

2-7. 不適切なケア方法

脇の臭いを気にするあまり、過度なケアをすることで、かえって臭いが悪化することがあります。

過度な洗浄 1日に何度も石鹸で洗うと、皮膚のバリア機能を担う必要な皮脂まで洗い流してしまいます。その結果、皮膚が乾燥し、過剰な皮脂分泌を引き起こすことがあります。

制汗剤・デオドラント剤の使いすぎ 制汗剤に含まれる成分が毛穴を詰まらせたり、皮膚を刺激したりすることがあります。また、常在菌のバランスを崩し、臭いの原因となる菌が増殖することもあります。

脱毛・除毛による肌トラブル カミソリや毛抜きによる脱毛で皮膚が傷つくと、そこから細菌が侵入して炎症を起こし、臭いが強くなることがあります。

3. 生活習慣が脇の臭いに与える影響

日々の生活習慣は、体臭に大きな影響を与えます。以下のような習慣がある場合、見直しが必要かもしれません。

3-1. 運動不足

運動不足の状態が続くと、汗腺の機能が低下します。普段あまり汗をかかない人が急に汗をかくと、ミネラルを含んだ濃い汗が出て、臭いが強くなる傾向があります。

また、運動不足は血行不良や代謝の低下を招き、老廃物が体内に蓄積しやすくなります。これらが汗として排出されると、臭いの原因となります。

定期的な運動習慣がある人は、サラサラとした臭いの少ない汗をかきやすく、汗腺の機能も正常に保たれます。

3-2. 睡眠不足

睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、ストレスホルモンの分泌を増加させます。これにより、汗の量や質が変化し、臭いが強くなることがあります。

また、睡眠中には成長ホルモンが分泌され、皮膚の新陳代謝が促進されます。睡眠不足が続くと、この機能が低下し、老廃物が蓄積しやすくなります。

3-3. 喫煙

タバコに含まれるニコチンやタールなどの化学物質は、血液に吸収されて全身を巡り、汗や皮脂として排出されます。これが独特の臭いの原因となります。

また、喫煙は血行不良を引き起こし、代謝機能を低下させるため、老廃物が蓄積しやすくなります。

3-4. 入浴習慣

シャワーだけで済ませる習慣が続くと、皮膚の汚れや古い角質が十分に落ちず、臭いの原因となることがあります。

湯船につかることで、毛穴が開き、皮脂や汚れが落ちやすくなります。また、血行が促進され、代謝機能も向上します。

3-5. 衣類の選び方

通気性の悪い衣類や、肌に密着するタイトな服は、脇の下の蒸れを引き起こし、細菌の繁殖を促進します。

臭いを抑える衣類の選び方:

  • 綿や麻などの天然素材を選ぶ
  • ゆとりのあるデザインを選ぶ
  • 速乾性や抗菌性のある素材を活用する
  • 濃い色の服は臭いを吸収しやすいため注意する

4. 疾患が原因で脇が臭くなるケース

脇の臭いが急に強くなった場合や、生活習慣の改善でも臭いが改善しない場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があります。

4-1. 糖尿病

糖尿病が進行すると、体が糖をエネルギーとして利用できなくなり、代わりに脂肪を分解します。この過程で「ケトン体」という物質が産生され、甘酸っぱい独特の臭いがすることがあります。

汗や呼気からこの臭いが感じられる場合は、糖尿病のコントロールが不十分な可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。

4-2. 甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、代謝が亢進し、体温が上昇します。その結果、発汗量が増加し、体臭が強くなることがあります。

甲状腺機能亢進症の主な症状:

  • 多汗
  • 動悸
  • 手の震え
  • 体重減少
  • イライラ感

これらの症状に心当たりがある場合は、内科や内分泌科を受診してください。

4-3. 肝臓・腎臓の疾患

肝臓や腎臓は、体内の老廃物を処理する重要な臓器です。これらの機能が低下すると、老廃物が体内に蓄積し、汗として排出されることで、独特の臭いが発生することがあります。

肝機能低下時の臭い アンモニア臭やカビ臭のような臭いがすることがあります。

腎機能低下時の臭い 尿のような臭いがすることがあります。

4-4. 魚臭症候群(トリメチルアミン尿症)

非常に稀な代謝異常で、体内で魚臭成分のトリメチルアミンを分解できないため、汗や尿、呼気から魚の腐ったような臭いがする疾患です。

遺伝性の場合と、肝疾患などの後天的な原因による場合があります。

4-5. 更年期障害

更年期には、ホルモンバランスの変化により、ホットフラッシュや多汗が見られることがあります。これにより、脇の臭いが強くなることがあります。

更年期障害による症状の場合は、婦人科でホルモン補充療法などの治療を受けることで改善することがあります。

4-6. 皮膚疾患

脇の下に湿疹、カンジダ感染、細菌感染などの皮膚疾患がある場合、臭いが発生することがあります。

間擦疹(かんさつしん) 脇の下など、皮膚が擦れ合う部位に発生する皮膚炎です。細菌や真菌が感染すると、臭いを伴うことがあります。

毛包炎 脇の下の毛穴に細菌が感染して炎症を起こす疾患です。化膿すると臭いが発生することがあります。

5. 今日から始められるセルフケア10選

ワキガ以外の原因による脇の臭いは、適切なセルフケアで大幅に改善できることが多いです。以下の方法を試してみてください。

5-1. 正しい入浴・洗浄方法

1日1〜2回の入浴・シャワー 毎日入浴またはシャワーを浴びて、汗や皮脂、汚れを落としましょう。運動後や汗をたくさんかいた後は、早めにシャワーを浴びるのが理想的です。

適切な洗浄方法

  • 低刺激性の石鹸やボディソープを使用する
  • よく泡立てて、優しく洗う(ゴシゴシこすらない)
  • 脇の下のシワの部分も丁寧に洗う
  • しっかりとすすぐ
  • 清潔なタオルで水分を拭き取る

過度な洗浄は避ける 1日に何度も石鹸で洗うと、皮膚のバリア機能が低下します。汗を流す程度なら、ぬるま湯だけでも十分です。

5-2. 制汗剤・デオドラント剤の正しい使い方

制汗剤とデオドラント剤の違い

  • 制汗剤:汗の分泌を抑える
  • デオドラント剤:臭いを抑える、細菌の繁殖を防ぐ

両方の機能を持つ製品も多くあります。

効果的な使い方

  • 清潔で乾いた肌に使用する
  • 入浴後や就寝前の使用が効果的
  • 適量を守る(使いすぎは毛穴の詰まりや肌トラブルの原因)
  • 肌に合わない場合は使用を中止する

製品の選び方

  • 敏感肌の方は、アルコールフリーや無香料のものを選ぶ
  • 汗の量が多い方は、制汗効果の高いものを選ぶ
  • パウダータイプ、スプレータイプ、ロールオンタイプなど、使いやすいものを選ぶ

5-3. 衣類のケア

こまめな着替え 汗をかいたら、できるだけ早く着替えましょう。下着や肌着は毎日洗濯します。

適切な洗濯方法

  • 脇の部分は予洗いする(臭いや黄ばみが気になる場合)
  • 酸素系漂白剤を使用する
  • 洗濯物を詰め込みすぎない
  • 洗濯後はすぐに干す
  • しっかりと乾燥させる

臭いが取れにくい場合

  • 重曹や酢を使った浸け置き洗い
  • 煮洗い(綿素材のみ)
  • 専用の洗剤を使用する

洗濯槽の清掃 月に1回程度、洗濯槽クリーナーで洗濯槽を清掃しましょう。

5-4. 食生活の改善

体臭を抑える食品

野菜や果物 抗酸化物質が豊富で、体内の活性酸素を除去し、体臭を抑える効果があります。特に、緑黄色野菜、ベリー類、柑橘類がおすすめです。

発酵食品 納豆、味噌、ヨーグルトなどの発酵食品は、腸内環境を整え、体臭を抑える効果があります。

食物繊維 便秘は体臭の原因となります。食物繊維を十分に摂取して、腸内環境を整えましょう。

水分 十分な水分摂取により、老廃物の排出が促進されます。1日1.5〜2リットルの水を飲むことを目標にしましょう。

バランスの取れた食事 肉類を控えめにし、魚、野菜、穀物をバランスよく摂取しましょう。

5-5. 適度な運動

週に3〜5回、30分程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を行いましょう。

運動により、汗腺の機能が正常化し、サラサラとした臭いの少ない汗をかけるようになります。また、血行が促進され、代謝機能も向上します。

運動後は、できるだけ早くシャワーを浴びて、汗を洗い流しましょう。

5-6. ストレス管理

効果的なストレス解消法

  • 十分な睡眠(7〜8時間)
  • 趣味や娯楽の時間を持つ
  • リラクゼーション(瞑想、ヨガ、深呼吸など)
  • 適度な運動
  • 友人や家族とのコミュニケーション

慢性的なストレスは、体臭だけでなく、さまざまな健康問題の原因となります。自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。

5-7. 脇毛の処理

脇毛があると、汗や細菌が留まりやすく、臭いが強くなる傾向があります。適度に処理することで、通気性が良くなり、臭いを軽減できます。

安全な脱毛方法

  • 電気シェーバー(肌への負担が少ない)
  • 除毛クリーム(パッチテストを行う)
  • 医療脱毛やエステ脱毛(根本的な解決)

避けるべき方法

  • カミソリでの頻繁な処理(肌を傷つけやすい)
  • 毛抜きでの処理(毛穴の炎症を起こしやすい)

処理後は、保湿ケアを忘れずに行いましょう。

5-8. 通気性の良い衣類の選択

推奨される素材

  • 綿(吸水性、通気性に優れる)
  • 麻(通気性に優れる)
  • シルク(吸放湿性に優れる)
  • 吸汗速乾機能を持つスポーツウェア素材

避けるべき衣類

  • ポリエステルなどの化学繊維100%の衣類(蒸れやすい)
  • タイトな服(通気性が悪い)

インナーに吸汗速乾性のあるものを着用し、その上にゆったりとした服を着るのも効果的です。

5-9. こまめな汗の拭き取り

汗をかいたら、できるだけ早く拭き取りましょう。時間が経つと、細菌が繁殖して臭いが強くなります。

効果的な拭き取り方法

  • 乾いたタオルよりも、濡れたタオルやウェットシートの方が効果的
  • デオドラントシートを使用する
  • 優しく拭く(ゴシゴシこすらない)
  • 拭いた後は、乾燥させる

外出時には、携帯用のウェットシートやデオドラントシートを持ち歩くと便利です。

5-10. 禁煙・節酒

喫煙や過度な飲酒は、体臭を強くする原因となります。可能であれば禁煙し、飲酒は適量を心がけましょう。

適度な飲酒量

  • 男性:1日あたりアルコール20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)
  • 女性:1日あたりアルコール10g程度(上記の半分)

6. 医療機関を受診すべきサイン

以下のような症状がある場合は、医療機関(皮膚科、形成外科など)の受診を検討してください。

6-1. セルフケアで改善しない

上記のセルフケアを数週間〜数ヶ月続けても、臭いが改善しない場合は、専門医に相談しましょう。

6-2. 急に臭いが強くなった

これまで気にならなかった脇の臭いが、急に強くなった場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があります。

6-3. 他の症状を伴う

以下のような症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 過度の発汗(多汗症の可能性)
  • 皮膚の赤み、かゆみ、痛み(皮膚疾患の可能性)
  • 体重の急激な変化
  • 動悸、息切れ
  • 疲労感、倦怠感
  • のどの渇き、頻尿

6-4. 日常生活に支障がある

脇の臭いが気になって、人と会うのが怖い、仕事や学業に集中できないなど、日常生活に支障をきたしている場合は、専門医に相談しましょう。

心理的なサポートも含めた治療が必要な場合があります。

6-5. 医療機関での治療法

医療機関では、以下のような治療が受けられます。

塗り薬

  • 塩化アルミニウム溶液(制汗作用)
  • 抗菌薬(細菌の繁殖を抑える)

内服薬

  • 抗コリン薬(発汗を抑える)
  • 漢方薬

ボツリヌス毒素注射 汗腺の働きを一時的に抑制します。効果は4〜9ヶ月程度持続します。多汗症に対して保険適用となる場合があります。

イオントフォレーシス 微弱な電流を流して汗腺の機能を抑制する治療法です。

レーザー治療・高周波治療 汗腺を熱で破壊する治療法です。

手術 重度の多汗症やワキガの場合、汗腺を除去する手術が行われることがあります。

治療法は、症状の程度や原因によって異なります。専門医と相談して、自分に合った治療法を選択しましょう。

7. よくある質問

Q1. 脇の臭いとワキガの違いがわかりません。どう見分けたらいいですか?

A. ワキガは独特の刺激臭があり、衣類に黄ばみがつきやすい、耳垢が湿っている、家族にワキガの人がいるなどの特徴があります。通常の脇の臭いは、汗臭さやすっぱい臭いで、清潔にすることで大幅に改善します。判断が難しい場合は、皮膚科や形成外科を受診して、専門医の診察を受けることをおすすめします。

Q2. 制汗剤は毎日使っても大丈夫ですか?

A. 適量を守って使用すれば、基本的には問題ありません。ただし、肌に合わない場合や、かゆみ、赤みなどの症状が出た場合は、使用を中止してください。また、制汗剤に頼りすぎるのではなく、根本的な原因への対処も大切です。

Q3. 脇毛は剃った方がいいですか?

A. 脇毛があると通気性が悪くなり、汗や細菌が留まりやすくなります。適度に処理することで、臭いの軽減につながります。ただし、カミソリでの頻繁な処理は肌を傷つける可能性があるため、電気シェーバーや医療脱毛などの肌に優しい方法を選びましょう。

Q4. 食べ物で体臭は本当に変わりますか?

A. はい、食べ物は体臭に大きく影響します。動物性タンパク質の過剰摂取、ニンニクなどの香味野菜、アルコールなどは、体臭を強くする可能性があります。一方、野菜や果物、発酵食品は、体臭を抑える効果があります。バランスの取れた食事を心がけましょう。

Q5. 汗をかかないようにするにはどうしたらいいですか?

A. 汗は体温調節に必要な生理現象なので、完全に止めることはできませんし、止めるべきでもありません。ただし、多汗症の場合は、医療機関での治療(塗り薬、ボツリヌス毒素注射など)で汗の量を減らすことができます。日常生活では、ストレス管理、カフェインや辛い食べ物の摂取を控える、通気性の良い服を着るなどの対策が有効です。

Q6. 運動すると汗をかくので、運動は控えた方がいいですか?

A. いいえ、むしろ適度な運動は推奨されます。運動不足だと汗腺の機能が低下し、臭いの強い濃い汗が出やすくなります。定期的に運動することで、汗腺の機能が正常化し、サラサラとした臭いの少ない汗をかけるようになります。運動後は早めにシャワーを浴びて、汗を洗い流しましょう。

Q7. 市販の制汗剤で効果がない場合はどうすればいいですか?

A. 市販品で効果がない場合は、医療機関を受診してください。医療用の制汗剤(塩化アルミニウム溶液など)は、市販品よりも効果が高いことがあります。また、多汗症の場合は、ボツリヌス毒素注射などの治療も選択肢となります。

8. まとめ

脇の臭いの原因は、ワキガだけではありません。汗の量が多い、細菌の繁殖、衣類への臭いの蓄積、食生活、ストレス、ホルモンバランスの変化、不適切なケア方法など、さまざまな要因が関係しています。

まずは、以下のセルフケアを実践してみましょう。

  1. 正しい入浴・洗浄方法
  2. 制汗剤・デオドラント剤の適切な使用
  3. 衣類のこまめな洗濯とケア
  4. バランスの取れた食生活
  5. 適度な運動
  6. ストレス管理
  7. 脇毛の適切な処理
  8. 通気性の良い衣類の選択
  9. こまめな汗の拭き取り
  10. 禁煙・節酒

これらのセルフケアを続けても改善しない場合や、急に臭いが強くなった場合、他の症状を伴う場合は、医療機関(皮膚科、形成外科など)を受診してください。

脇の臭いは、適切な対処により改善できることが多いです。一人で悩まず、必要に応じて専門医に相談しながら、自分に合った対策を見つけていきましょう。

参考文献

本記事の作成にあたり、以下の信頼性の高い情報源を参考にしました。

  1. 厚生労働省「e-ヘルスネット – 体臭」
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-031.html
  2. 日本皮膚科学会
    https://www.dermatol.or.jp/
  3. 国立がん研究センター「がん情報サービス」
    https://ganjoho.jp/
  4. 日本糖尿病学会
    https://www.jds.or.jp/
  5. 日本内分泌学会
    https://www.j-endo.jp/
  6. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報」
    https://hfnet.nibiohn.go.jp/

これらの公的機関や学会の情報を基に、一般の方にもわかりやすく解説することを心がけました。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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