はじめに
「最近、爪の色がなんだか変わってきた気がする」「爪が厚くなってきたような…」そんな症状に気づいたら、それは爪水虫(爪白癬)の初期症状かもしれません。
爪水虫は、日本人の10人に1人が罹患しているとされる非常に身近な疾患です。特に中高年に多く見られますが、若年層でも発症することがあります。初期段階では痛みがないため見過ごされがちですが、放置すると治療に時間がかかり、日常生活にも支障をきたす可能性があります。
本記事では、アイシークリニック上野院の医療コラムとして、爪水虫の初期症状を画像所見とともに詳しく解説し、早期発見・早期治療につながる情報をお届けします。

爪水虫(爪白癬)とは何か
基本的な定義
爪水虫は、正式には「爪白癬(つめはくせん)」と呼ばれる感染症です。白癬菌というカビの一種が爪に感染することで発症します。白癬菌は皮膚や爪のケラチンというタンパク質を栄養源として増殖し、爪の組織を破壊していきます。
足の爪に発症することが最も多く、全体の約80%以上を占めます。手の爪にも発症することがありますが、足の爪と比較すると頻度は低くなります。
爪水虫の原因菌
爪水虫の原因となる主な白癬菌は以下の通りです:
トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum) 最も一般的な原因菌で、全体の約90%を占めます。足白癬(足の水虫)から爪に感染することが多く、慢性化しやすい特徴があります。
トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes) 全体の約10%を占める原因菌です。炎症症状が比較的強く出ることがあります。
その他の白癬菌 まれにトリコフィトン・トンズランスやエピデルモフィトン・フロッコスムなどが原因となることもあります。
発症メカニズム
爪水虫は突然発症するものではありません。多くの場合、以下のような経過をたどります:
- 足白癬(足の水虫)の先行:足の皮膚に白癬菌が感染している状態が続く
- 爪への侵入:白癬菌が爪と皮膚の境目から爪の中に侵入する
- 爪内での増殖:爪のケラチンを栄養源として白癬菌が増殖する
- 症状の進行:爪が徐々に変色・肥厚していく
このプロセスには数ヶ月から数年かかることもあり、ゆっくりと進行するため初期段階では気づきにくいのが特徴です。
爪水虫の初期症状:画像所見のポイント
爪水虫の初期症状を見逃さないためには、視覚的な変化を正確に捉えることが重要です。ここでは、初期段階で見られる典型的な画像所見について詳しく解説します。
初期症状の典型的な見た目の特徴
1. 爪の先端部分の白濁・黄白色の変色
最も頻度が高い初期症状
爪水虫の初期症状として最も多く見られるのが、爪の先端(爪甲遊離縁)から始まる白濁や黄白色への変色です。これは「遠位側縁部爪甲下型(えんいそくえんぶそうこうかがた)」と呼ばれる最も一般的なタイプの初期段階です。
画像所見の特徴:
- 爪の先端や側縁に、わずかな白濁や黄白色の変色が現れる
- 最初は爪の一部だけが変色し、徐々に範囲が広がる
- 健康な爪との境界が比較的はっきりしている
- 変色部分は不透明で、光沢が失われている
この段階では、爪の厚みはまだ正常に近く、痛みもないため見過ごされがちです。しかし、放置すると変色範囲が拡大し、爪の根元方向に進行していきます。
2. 爪甲下の角質増殖
爪の下に白い粉状のものが溜まる
初期段階から中期段階にかけて見られる特徴的な所見です。白癬菌の感染により、爪の下の皮膚が角質化して厚くなり、白っぽい粉状の物質が爪と皮膚の間に溜まります。
画像所見の特徴:
- 爪の下に白色から黄白色の粉状の物質が見える
- 爪が浮いたように見えることがある
- 爪と皮膚の間に隙間ができているように見える
- この角質は崩れやすく、爪を切る際にポロポロと落ちることがある
3. 爪の表面の光沢低下
健康な爪特有のツヤがなくなる
健康な爪は適度な光沢があり、滑らかな表面をしていますが、爪水虫に感染すると初期段階から徐々に光沢が失われていきます。
画像所見の特徴:
- 爪の表面が艶消しのようになる
- 光を当てても反射が弱い
- 表面がわずかに粗く見える
- 全体的にくすんだ印象になる
4. 爪の一部の軽度な肥厚
爪が少し厚くなる
初期段階では顕著ではありませんが、よく観察すると爪の一部がわずかに厚くなっていることがあります。
画像所見の特徴:
- 爪の先端部分や側縁部が少し厚くなる
- 左右の爪を比較すると差がわかることがある
- まだ爪切りで切れる程度の厚さ
- 断面を見ると、層が厚くなっているのがわかる
初期症状が出やすい部位
爪水虫の初期症状は、特定の部位から始まることが多くあります。
足の親指の爪
最も発症頻度が高いのが足の親指の爪です。全体の約50%以上を占めます。親指の爪は面積が大きく、白癬菌が侵入しやすいと考えられています。
足の小指の爪
次に多いのが足の小指です。靴による圧迫や摩擦を受けやすく、外傷を受けやすいことが関係していると考えられています。
その他の足の爪
人差し指、中指、薬指の爪にも発症しますが、親指や小指と比較すると頻度は低くなります。
複数の爪への感染
初期段階では1本の爪だけに症状が出ることが多いですが、放置すると隣接する爪にも感染が広がることがあります。
健康な爪との比較
初期症状を正確に見分けるためには、健康な爪の特徴を知っておくことが重要です。
健康な爪の特徴:
- 淡いピンク色で透明感がある
- 表面は滑らかで光沢がある
- 適度な硬さと弾力性がある
- 爪の厚さは均一
- 爪と皮膚の境目がはっきりしている
爪水虫初期の爪の特徴:
- 白濁または黄白色に変色している部分がある
- 光沢が低下している
- わずかに厚みが増している部分がある
- 爪の下に白い粉状の物質が見える
爪水虫の進行段階と画像所見の変化
爪水虫は放置すると徐々に進行し、症状が悪化していきます。各段階の画像所見を理解することで、現在の状態を把握し、適切な治療を始めるタイミングを判断できます。
初期段階(発症から数ヶ月)
画像所見:
- 爪の先端や側縁に限局した白濁・黄白色の変色
- 爪の厚さはほぼ正常
- 爪甲下に少量の角質増殖
- 痛みや不快感はほとんどない
特徴: この段階では、日常生活への影響はほとんどありません。しかし、放置すると確実に進行するため、早期発見・早期治療が重要です。外用薬による治療が効果的な時期でもあります。
中期段階(発症から数ヶ月~1年程度)
画像所見:
- 変色範囲が爪の半分以上に拡大
- 爪の肥厚が明らかになる(正常の1.5~2倍程度)
- 爪甲下の角質増殖が顕著
- 爪の表面に凹凸が現れることがある
- 爪の先端が崩れやすくなる
特徴: 爪切りが困難になり始める時期です。見た目の変化も明らかになり、サンダルや素足になることに抵抗を感じる方も増えます。この段階でも適切な治療により改善が期待できます。
進行期(発症から1年以上)
画像所見:
- 爪全体が白濁または黄褐色に変色
- 著しい肥厚(正常の2~3倍以上)
- 爪の表面が粗くなり、凹凸が顕著
- 爪が脆くなり、欠けたり割れたりする
- 爪甲下の角質増殖が高度
- 爪床からの爪の剥離(爪甲剥離)
特徴: 通常の爪切りでは切れなくなり、靴を履く際に痛みを感じることもあります。周囲の皮膚に炎症が及ぶこともあります。治療には長期間(6ヶ月~1年以上)を要することが多くなります。
重症期
画像所見:
- 爪の形状が大きく変形
- 爪が非常に厚く、硬くなる
- 爪が茶褐色から黒褐色に変色することもある
- 爪が完全に崩壊していることもある
- 周囲の皮膚に二次的な細菌感染や炎症
特徴: 日常生活に大きな支障をきたす段階です。歩行時の痛み、靴選びの困難、美容上の問題などが生じます。内服薬を含む積極的な治療が必要となります。
爪水虫と間違えやすい疾患
爪の変色や変形は、爪水虫以外の疾患でも起こります。正確な診断のためには、これらの疾患との鑑別が重要です。
爪乾癬(つめかんせん)
画像所見の特徴:
- 爪に小さな凹み(点状陥凹)が多数見られる
- 爪の下に黄褐色の斑点(オイルドロップサイン)
- 爪が分厚くなり、崩れやすくなる
- 爪の周囲の皮膚に乾癬の皮疹があることが多い
鑑別ポイント: 乾癬は皮膚疾患で、爪だけでなく肘や膝、頭皮などにも特徴的な皮疹が現れることが多いです。真菌検査が陰性であることで鑑別できます。
爪甲剥離症
画像所見の特徴:
- 爪が爪床から浮き上がって剥がれる
- 剥離部分は白色から黄色に見える
- 爪の厚さは比較的正常
- 複数の指に同時に起こることが多い
鑑別ポイント: 外傷、薬剤、甲状腺疾患などが原因で起こります。爪水虫との違いは、爪甲下の角質増殖が少ないことです。
爪カンジダ症
画像所見の特徴:
- 爪の周囲が赤く腫れる(爪囲炎)
- 爪が緑色や黒色に変色することがある
- 爪の根元から病変が始まることが多い
- 急性の炎症症状を伴うことがある
鑑別ポイント: 水仕事が多い人や糖尿病患者に多く見られます。真菌検査でカンジダが検出されることで診断されます。
黒色爪(爪下血腫を含む)
画像所見の特徴:
- 爪が黒色や茶褐色に変色
- 外傷の既往があることが多い
- 時間とともに爪の成長に伴って移動する
- 痛みを伴うことがある
鑑別ポイント: 外傷後に生じた爪下出血が原因です。メラノーマ(悪性黒色腫)との鑑別が重要な場合もあります。
老人性爪甲肥厚症
画像所見の特徴:
- 爪が全体的に厚くなる
- 爪が黄色から灰色に変色
- 爪の表面に縦の筋が目立つ
- 両側対称的に起こることが多い
鑑別ポイント: 高齢者に多く、長年の物理的刺激や循環障害が原因です。真菌検査が陰性であることで鑑別できます。
爪水虫の診断方法
爪の見た目だけでは確定診断はできません。正確な診断のためには、医療機関での検査が必要です。
問診
医師は以下のような点について質問します:
- いつ頃から症状があるか
- 足白癬(足の水虫)の既往はあるか
- 家族に水虫の人はいるか
- 過去に爪水虫の治療を受けたことがあるか
- 糖尿病などの基礎疾患はあるか
- 現在服用している薬はあるか
視診
医師が爪を詳しく観察します:
- 変色の範囲と程度
- 爪の厚さ
- 爪の表面の状態
- 爪甲下の角質増殖の有無
- 周囲の皮膚の状態
- 他の爪の状態
真菌検査(顕微鏡検査)
最も重要な検査
爪の一部を採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認します。
検査の流れ:
- 変色している爪の先端部分や、爪甲下の角質を少量採取
- KOH(水酸化カリウム)溶液で処理
- 顕微鏡で白癬菌の菌糸や胞子を確認
メリット:
- 当日または翌日に結果がわかる
- 比較的簡便で痛みがほとんどない
デメリット:
- 検体の採取部位が適切でないと偽陰性になることがある
- 検査者の技術により結果が左右される
真菌培養検査
より確実な診断のための検査
採取した爪の組織を培地で培養し、白癬菌の増殖を確認します。
検査の流れ:
- 爪の組織を採取
- 専用の培地に接種
- 2~4週間培養
- 増殖した菌を同定
メリット:
- 原因菌の種類まで特定できる
- 顕微鏡検査より感度が高い
デメリット:
- 結果が出るまで時間がかかる(2~4週間)
- 費用が顕微鏡検査より高い
PCR検査
最新の診断方法
白癬菌のDNAを検出する検査です。まだ一般的ではありませんが、一部の医療機関で実施されています。
メリット:
- 感度・特異度が高い
- 比較的短時間で結果が出る
デメリット:
- 実施できる施設が限られている
- 保険適用外の場合、費用が高額
ダーモスコピー検査
皮膚用の拡大鏡を使用して、爪をより詳細に観察します。補助的な検査として有用です。
爪水虫の治療方法
爪水虫の治療には、病変の範囲や重症度に応じて、外用療法、内服療法、あるいはその組み合わせが選択されます。
外用療法(塗り薬)
適応:
- 初期段階の爪水虫
- 病変が爪の先端3分の1以下に限局している場合
- 内服薬が使用できない場合(肝機能障害、薬剤相互作用など)
主な外用薬:
- エフィナコナゾール(クレナフィン爪外用液)
- 1日1回、爪全体に塗布
- 爪への浸透性が高い
- 治療期間:6ヶ月以上
- ルリコナゾール(ルコナック爪外用液)
- 1日1回、爪全体に塗布
- 抗真菌作用が強い
- 治療期間:6ヶ月以上
外用療法のポイント:
- 毎日欠かさず塗布することが重要
- 爪全体と爪の周囲にも塗布する
- 効果が現れるまで最低3ヶ月、完治まで6~12ヶ月かかる
- 根気強く継続することが成功の鍵
メリット:
- 全身への副作用がほとんどない
- 他の薬との相互作用の心配が少ない
- 通院回数が少なくて済む
デメリット:
- 内服療法に比べて治療期間が長い
- 重症例や広範囲の病変には効果が限定的
- 毎日の塗布が必要で、手間がかかる
内服療法(飲み薬)
適応:
- 中等度以上の爪水虫
- 病変が爪の3分の1以上に及ぶ場合
- 複数の爪に病変がある場合
- 外用療法で効果が不十分な場合
主な内服薬:
- テルビナフィン(ラミシール錠)
- 最も一般的に使用される内服薬
- 1日1回125mg錠を服用
- 治療期間:6ヶ月(足の爪)、3ヶ月(手の爪)
- 治癒率:約70~80%
- イトラコナゾール(イトリゾール錠)
- パルス療法として使用されることが多い
- 1週間服用、3週間休薬を1クールとし、3クール繰り返す
- 治療期間:3ヶ月(足の爪)
- 治癒率:約60~70%
内服療法のポイント:
- 定期的な血液検査が必要(肝機能検査)
- 他の薬との相互作用に注意が必要
- 処方された期間は必ず飲み切る
メリット:
- 外用療法より治療期間が短い
- 重症例にも効果が期待できる
- 複数の爪を同時に治療できる
デメリット:
- 肝機能障害などの副作用のリスクがある
- 他の薬との相互作用がある
- 定期的な血液検査が必要
- 妊娠中・授乳中は使用できない
併用療法
外用療法と内服療法を組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。
適応:
- 重症の爪水虫
- 早期治癒を希望する場合
- 再発を繰り返している場合
方法: 内服薬を服用しながら、同時に外用薬も使用します。相乗効果により、治癒率の向上と再発率の低下が期待できます。
レーザー治療
一部の医療機関では、レーザーを用いた治療も行われています。
特徴:
- 爪にレーザーを照射し、白癬菌を死滅させる
- 保険適用外のため費用が高額
- 効果についてはまだ十分なエビデンスがない
外科的治療(爪甲除去術)
適応:
- 極めて重症の爪水虫
- 保存的治療で効果が得られない場合
- 爪の変形により歩行困難などの症状がある場合
方法: 病変のある爪を部分的または全体的に除去し、新しい爪の再生を促します。除去後は外用薬や内服薬で治療を継続します。
治療成功のポイント
- 早期発見・早期治療
- 初期段階で治療を始めるほど、治癒率が高く治療期間も短い
- 治療の継続
- 見た目が改善しても、完全に治癒するまで治療を継続する
- 自己判断で中止しない
- 定期的な受診
- 医師の指示通りに通院し、経過を確認してもらう
- 副作用のチェックも重要
- 生活習慣の改善
- 足を清潔に保つ
- 通気性の良い靴や靴下を選ぶ
- 感染源となる足白癬も同時に治療する
- 根気強く続ける
- 爪が完全に生え変わるまで6ヶ月~1年以上かかる
- 途中で諦めずに治療を継続することが重要
爪水虫の予防法
爪水虫は一度治っても再発しやすい疾患です。予防のためには、日常生活での工夫が重要です。
足を清潔に保つ
基本中の基本
- 毎日の入浴・シャワー
- 足の指の間まで丁寧に洗う
- 石鹸をよく泡立てて使用する
- 洗った後はしっかり水気を拭き取る
- 入浴後のケア
- タオルで足の指の間まで丁寧に水分を拭き取る
- 特に指の間は湿気が残りやすいので注意
- 必要に応じてドライヤーの冷風で乾燥させる
足の蒸れを防ぐ
白癬菌は高温多湿を好む
- 靴の選び方
- 通気性の良い素材の靴を選ぶ
- サイズの合った靴を履く(きつすぎる靴は避ける)
- 長時間同じ靴を履き続けない
- 革靴を履く場合は、できるだけ休憩時間に脱ぐ
- 靴下の選び方
- 吸湿性・通気性の良い素材(綿や絹)を選ぶ
- 化繊100%の靴下は避ける
- 5本指ソックスは指の間の蒸れを防ぐのに効果的
- 汗をかいたら履き替える
- 靴のケア
- 毎日同じ靴を履かず、最低2足でローテーションする
- 帰宅後は靴を風通しの良い場所で乾燥させる
- 定期的に靴の中に除菌・消臭スプレーを使用する
- 靴用の乾燥剤を使用する
感染機会を減らす
白癬菌との接触を避ける
- 公共の場での注意
- プール、温泉、銭湯などの共用スペースでは、備え付けのスリッパを使用した後、しっかり足を洗う
- ホテルや旅館のスリッパは直接素足で履かない
- ジムやヨガスタジオでは自分専用のタオルやマットを使用する
- 家庭内での注意
- 家族に水虫の人がいる場合、バスマットやスリッパを共用しない
- バスマットは毎日洗濯するか、個人専用のものを使用する
- 床はこまめに掃除する(白癬菌は床に落ちた垢などに付着している)
- ペディキュア・ネイルサロンの利用
- 衛生管理がしっかりしている店を選ぶ
- 使用する器具が適切に消毒されているか確認する
- 爪に傷をつけないよう注意してもらう
免疫力を高める
体の抵抗力を保つ
- バランスの良い食事
- タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取する
- 特にビタミンB群は皮膚の健康に重要
- 十分な睡眠
- 質の良い睡眠は免疫力の向上につながる
- 規則正しい生活リズムを心がける
- ストレス管理
- 過度のストレスは免疫力を低下させる
- 適度な運動やリラックスできる時間を持つ
- 基礎疾患の管理
- 糖尿病などの基礎疾患がある場合は、適切にコントロールする
- 定期的に医療機関を受診する
爪のケア
爪を健康に保つ
- 適切な爪切り
- 爪は短く切りすぎない(深爪は避ける)
- 爪の角は丸く切らず、スクエアオフ(角を少し丸める程度)にする
- 清潔な爪切りを使用する
- 爪の保湿
- 爪やその周囲の皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下する
- ハンドクリームやネイルオイルで保湿する
- 外傷の予防
- 爪に過度な負担をかけない
- スポーツ時は適切な靴を履く
- 爪に傷がついたら、早めに消毒する
足白癬(足の水虫)の治療
爪水虫の最大の予防
爪水虫の多くは、足白癬から進展します。足に水虫がある場合は、必ず治療しましょう。
- 足白癬の症状に気づいたら早期受診
- 足の指の間の皮むけ
- 足裏の小水疱
- 足裏全体のガサガサ
- かゆみ
- 足白癬の完治まで治療を継続
- 症状が消えても、最低1~2ヶ月は治療を続ける
- 自己判断で治療を中止しない
- 再発予防
- 治癒後も予防的なケアを続ける
- 定期的に足の状態をチェックする

よくある質問(Q&A)
A: いいえ、爪水虫は自然治癒することはほとんどありません。白癬菌は爪のケラチンを栄養源として増殖し続けるため、放置すると徐々に悪化していきます。早期に適切な治療を受けることが重要です。
A: 市販の水虫薬(外用薬)は主に足白癬用に開発されており、厚い爪への浸透が不十分なため、爪水虫には効果が限定的です。爪水虫には、爪への浸透性が高い処方薬や内服薬が必要です。まずは医療機関を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることをお勧めします。
A: はい、爪水虫は感染症なので、他人にうつる可能性があります。ただし、健康な皮膚に白癬菌が付着してもすぐに感染するわけではありません。高温多湿の環境で長時間放置されると感染リスクが高まります。家族内での感染を防ぐため、バスマットやスリッパの共用を避け、足を清潔に保つことが大切です。
Q4:治療期間はどのくらいかかりますか?
A: 治療期間は症状の程度によって異なりますが、一般的には以下の通りです:
- 外用療法のみ:6~12ヶ月
- 内服療法:6ヶ月(足の爪)、3ヶ月(手の爪)
- 併用療法:6~9ヶ月
爪が完全に生え変わるまで治療を継続する必要があり、根気が必要です。
Q5:治療中に注意すべきことは?
A: 以下の点に注意しましょう:
- 処方された薬を医師の指示通りに使用する
- 自己判断で治療を中止しない
- 内服薬を服用している場合は、定期的に血液検査を受ける
- 足を清潔に保ち、蒸れを防ぐ
- 足白癬がある場合は同時に治療する
- 家族への感染を防ぐため、バスマットなどの共用を避ける
Q6:再発することはありますか?
A: はい、爪水虫は再発しやすい疾患です。完治後も以下の予防策を継続することが重要です:
- 足を清潔に保つ
- 足の蒸れを防ぐ
- 足白癬を予防・治療する
- 定期的に爪の状態をチェックする
- 感染リスクの高い場所(公共浴場など)での注意
Q7:妊娠中・授乳中でも治療できますか?
A: 妊娠中・授乳中の場合、内服薬は使用できません。外用薬のみでの治療となりますが、その場合でも医師に相談してから使用することが重要です。出産・授乳後に内服薬を含む本格的な治療を開始することも選択肢の一つです。
Q8:糖尿病があると爪水虫になりやすいですか?
A: はい、糖尿病患者さんは爪水虫になりやすく、また重症化しやすい傾向があります。これは以下の理由によります:
- 免疫機能の低下
- 末梢循環障害
- 神経障害による感覚鈍麻
糖尿病の方は特に足のケアに注意し、早期発見・早期治療を心がけることが重要です。
Q9:爪水虫と診断されましたが、痛みがありません。治療は必要ですか?
A: はい、痛みがなくても治療は必要です。爪水虫は初期段階では痛みがほとんどありませんが、放置すると以下のリスクがあります:
- 症状の進行により日常生活に支障をきたす
- 他の爪への感染拡大
- 家族など周囲の人への感染
- 治療期間の長期化
早期に治療を開始するほど、治癒率が高く治療期間も短くなります。
Q10:治療費はどのくらいかかりますか?
A: 治療費は治療方法や期間によって異なります(保険適用の場合、3割負担として):
- 初診料・検査費:約2,000~3,000円
- 外用薬(1ヶ月分):約1,500~2,000円
- 内服薬(1ヶ月分):約2,500~4,000円
- 定期的な血液検査(内服薬使用時):約1,500円
6ヶ月間の治療で、総額2~5万円程度が目安となります。ただし、症状や治療内容によって変動します。
爪水虫で医療機関を受診すべきタイミング
以下のような症状や状況がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
すぐに受診すべき症状
- 爪の色が変わってきた
- 白濁、黄白色、黄褐色などへの変色
- 特に爪の先端や側縁から変色が始まった場合
- 爪が厚くなってきた
- 以前より爪が厚くなり、爪切りがしにくくなった
- 爪の下に白い粉状のものが溜まっている
- 爪の表面に変化がある
- 光沢がなくなった
- 表面がガサガサしている
- 凹凸ができてきた
- 足白癬がある
- 足に水虫があり、爪にも影響が出始めた
- 足の症状が改善しても爪の変化が続いている
早めの受診が望ましい状況
- 複数の爪に症状がある
- 1本だけでなく、複数の爪に変化が見られる
- 症状が進行している
- 少しずつ症状が悪化している
- 変色の範囲が広がっている
- 家族に水虫の人がいる
- 家族内感染のリスクがある
- 基礎疾患がある
- 糖尿病、免疫不全、循環障害などの疾患がある
- 過去に爪水虫になったことがある
- 再発の可能性を考慮して早めにチェック
まとめ
爪水虫(爪白癬)は、早期発見・早期治療が非常に重要な疾患です。本記事の要点をまとめます:
初期症状のポイント
- 爪の先端や側縁の白濁・黄白色への変色
- 爪甲下の白い粉状の角質増殖
- 爪の光沢低下
- 軽度の爪の肥厚
これらの症状に気づいたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
診断と治療
- 正確な診断には真菌検査が必須
- 治療方法は外用療法、内服療法、またはその併用
- 治療期間は6ヶ月~1年以上かかることが多い
- 根気強く治療を継続することが重要
予防のポイント
- 足を清潔に保ち、よく乾燥させる
- 通気性の良い靴や靴下を選ぶ
- 足白癬(足の水虫)を治療・予防する
- 公共の場での感染予防に注意する
- 免疫力を維持する
医療機関受診の重要性
爪水虫は自然治癒することはほとんどありません。見た目の変化に気づいたら、自己判断せずに医療機関を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが大切です。
早期発見・早期治療で、健康で美しい爪を取り戻しましょう。
参考文献
- 日本皮膚科学会「皮膚真菌症診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/
- 日本医真菌学会「爪白癬診療マニュアル」 https://www.jsmm.jp/
- 厚生労働省「感染症情報」 https://www.mhlw.go.jp/
- 国立感染症研究所「真菌症の疫学」 https://www.niid.go.jp/
- 日本爪学会「爪疾患の診断と治療」
※本記事は医学的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務