ミラドライとボトックス注射・手術の違いとは?メリット・デメリットを徹底比較

はじめに

わきがや多汗症にお悩みの方にとって、「どの治療法を選べばよいのか」は大きな関心事です。現在、わきが・多汗症の治療には主に「ミラドライ」「ボトックス注射」「手術(剪除法など)」の3つの選択肢があります。

それぞれの治療法には異なる特徴があり、効果の持続期間、ダウンタイム、費用、適している症状なども大きく異なります。本記事では、これら3つの治療法について、メリット・デメリットを含めて詳しく解説し、あなたに最適な治療法選びをサポートいたします。

わきが・多汗症の基礎知識

わきが(腋臭症)とは

わきがは医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれ、わきの下から特有の強い臭いを発する状態を指します。この臭いの原因は、アポクリン汗腺から分泌される汗に含まれる成分が、皮膚表面の常在菌によって分解されることで発生します。

わきがは病気ではなく体質の一つであり、遺伝的要因が大きく関与しています。日本人では約10〜15%の方がわきが体質といわれていますが、欧米では70〜90%と割合が高く、人種によって大きな差があることが知られています。

多汗症とは

多汗症は、日常生活に支障をきたすほど大量の汗をかく状態を指します。特にわきの下に症状が現れる「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」は、緊張やストレスとは無関係に、安静時でも大量の汗をかいてしまうのが特徴です。

多汗症の原因は完全には解明されていませんが、交感神経の過活動が関与していると考えられています。衣服に汗染みができる、頻繁に着替えが必要になるなど、日常生活のQOL(生活の質)を大きく低下させる可能性があります。

汗腺の種類と役割

人間の汗腺には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類があります。

エクリン汗腺は全身に分布しており、体温調節のために無色無臭の汗を分泌します。多汗症に関係するのは主にこのエクリン汗腺です。

アポクリン汗腺はわきの下や陰部など特定の部位に存在し、思春期以降に発達します。この汗腺から分泌される汗には脂質やタンパク質が含まれており、これが細菌に分解されることでわきが特有の臭いが発生します。

ミラドライについて

ミラドライとは

ミラドライは、2018年に厚生労働省から承認を受けた、わきが・多汗症の最新治療機器です。マイクロ波(電磁波)のエネルギーを利用して、皮膚を切開することなく汗腺を破壊する治療法で、「切らないわきが・多汗症治療」として注目を集めています。

アメリカのFDA(米国食品医薬品局)でも承認されており、世界中で治療実績が積み重ねられている信頼性の高い治療法です。

ミラドライの治療メカニズム

ミラドライは5.8GHzのマイクロ波を照射することで、皮膚の真皮層から皮下組織にかけて存在する汗腺(エクリン汗腺・アポクリン汗腺)を選択的に加熱し、破壊します。

治療時には皮膚表面を冷却しながら照射を行うため、表皮へのダメージを最小限に抑えることができます。一度破壊された汗腺は再生することがないため、治療効果は半永久的に持続します。

ミラドライの治療手順

  1. 麻酔: 治療部位に局所麻酔を行います
  2. マーキング: わきの下に照射範囲をマーキングします
  3. 照射: ミラドライの照射ヘッドを当てながら、約1時間かけて治療を行います
  4. 冷却: 治療後、患部を冷却して終了です

治療は片側30〜40分程度、両わきで約1時間です。日帰りで治療が完了し、入院の必要はありません。

ミラドライのメリット

1. 切開不要でダウンタイムが短い

最大のメリットは、皮膚を切開しないため傷跡が残らないことです。手術と比較して身体への負担が少なく、治療当日から日常生活に戻ることができます。デスクワークであれば翌日から仕事復帰も可能です。

2. 半永久的な効果

一度破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的に持続します。ボトックス注射のように定期的な治療を繰り返す必要がありません。

3. わきがと多汗症を同時に治療

ミラドライはアポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方に作用するため、わきがと多汗症を同時に改善することができます。

4. 傷跡が残らない

メスを使わないため、わきの下に手術跡が残る心配がありません。美容面での満足度も高い治療法です。

5. 保険適用外だが、1〜2回の治療で完了

多くの場合、1回の治療で満足のいく効果が得られます。症状が強い場合でも2回目の治療で十分な効果が期待できます。

ミラドライのデメリット

1. 費用が高額

保険適用外の自由診療となるため、治療費は1回あたり30万円〜40万円程度と高額です。クリニックによって価格設定は異なります。

2. 一時的な腫れや痛み

治療後、わきの下に腫れや痛み、内出血などが現れることがあります。これらの症状は通常1〜2週間程度で改善しますが、個人差があります。

3. 完全に臭い・汗をゼロにはできない

ミラドライは高い効果が期待できますが、すべての汗腺を破壊できるわけではありません。個人差はありますが、通常70〜80%程度の改善が期待できます。

4. 一時的な感覚異常

治療後、わきの下やその周辺に一時的なしびれや感覚の変化が生じることがあります。多くは数週間から数ヶ月で自然に回復します。

5. 再治療が必要な場合がある

1回の治療で十分な効果が得られない場合、2回目の治療が必要になることがあります(通常3ヶ月以上の間隔をあける)。

ミラドライの治療後の経過

  • 当日〜3日: 腫れや痛みが最も強い時期。冷却と安静が重要
  • 1週間: 腫れや内出血が徐々に改善。激しい運動は控える
  • 2週間: ほとんどの腫れが引き、日常生活に支障がなくなる
  • 1ヶ月: 治療効果を実感し始める時期
  • 3ヶ月: 最終的な治療効果が安定

ミラドライに向いている方

  • 手術には抵抗があるが、長期的な効果を希望する方
  • 仕事や学校を長期間休めない方
  • わきがと多汗症の両方の症状がある方
  • 傷跡を残したくない方
  • 中等度から重度の症状がある方

ボトックス注射について

ボトックス注射とは

ボトックス注射は、ボツリヌス菌が産生する「ボツリヌストキシン」という成分を利用した治療法です。もともとは眼瞼痙攣や顔面痙攣などの治療に使用されていましたが、現在では多汗症治療にも広く用いられています。

重度の原発性腋窩多汗症に対しては、2012年に保険適用が認められており、比較的手軽に受けられる治療として人気があります。

ボトックス注射の治療メカニズム

ボツリヌストキシンは、神経から汗腺への信号伝達を一時的にブロックする作用があります。具体的には、神経終末から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質の分泌を抑制することで、汗腺の活動を低下させます。

効果は注射後2〜3日から現れ始め、1〜2週間で最大効果に達します。ただし、効果は永久的ではなく、時間の経過とともに神経終末が再生するため、定期的な治療が必要になります。

ボトックス注射の治療手順

  1. カウンセリング: 症状の程度を確認し、注射部位を決定
  2. マーキング: わきの下に注射位置をマーキング
  3. 注射: 片側15〜20箇所程度に細い針で注射
  4. 終了: 止血確認後、当日帰宅可能

治療時間は両わき合わせて10〜15分程度と非常に短時間で完了します。

ボトックス注射のメリット

1. 治療時間が短い

注射のみで治療が完了するため、両わき合わせて10〜15分程度と非常に短時間です。忙しい方でも気軽に受けられます。

2. ダウンタイムがほとんどない

注射による小さな針跡が残る程度で、当日から通常の生活が可能です。激しい運動やサウナなどは当日避ける必要がありますが、翌日からは制限がありません。

3. 保険適用が可能(重度の場合)

重度の原発性腋窩多汗症と診断された場合、保険適用で治療を受けることができます。保険適用の場合、3割負担で約3万円程度(両わき)となります。

4. 痛みや腫れが少ない

注射時のチクッとした痛みはありますが、治療後の痛みや腫れはほとんどありません。麻酔クリームを使用することで、注射の痛みもさらに軽減できます。

5. 効果を実感しやすい

多汗症に対しては非常に高い効果があり、多くの方が治療後すぐに汗の量の減少を実感できます。

ボトックス注射のデメリット

1. 効果の持続期間が短い

最大のデメリットは、効果が一時的であることです。個人差はありますが、効果は通常4〜9ヶ月程度で、平均すると約6ヶ月です。効果を維持するには定期的な治療が必要になります。

2. わきがへの効果は限定的

ボトックス注射は主にエクリン汗腺からの発汗を抑制するため、多汗症には高い効果がありますが、わきがの原因であるアポクリン汗腺には直接作用しません。汗の量が減ることで間接的に臭いが軽減することはありますが、根本的な治療にはなりません。

3. 定期的な治療コストがかかる

効果を維持するには年に1〜2回の治療を繰り返す必要があり、長期的には費用がかさむ可能性があります。保険適用外の場合、1回あたり5万円〜10万円程度かかります。

4. 注射時の痛み

細い針を使用しますが、15〜20箇所に注射するため、痛みに敏感な方には苦痛に感じることがあります。

5. まれに副作用が起こる

注射部位の内出血、一時的な筋力低下、アレルギー反応などが起こる可能性があります。ただし、重篤な副作用は非常にまれです。

ボトックス注射の治療後の経過

  • 当日: 注射部位の小さな針跡がある程度。日常生活は通常通り可能
  • 2〜3日: 効果が現れ始める
  • 1〜2週間: 効果が最大に達する
  • 4〜9ヶ月: 効果が徐々に減少し始める
  • 次回治療: 効果が減少してきたら再度治療を検討

ボトックス注射に向いている方

  • 主に多汗症の症状に悩んでいる方
  • 手術やミラドライには抵抗がある方
  • まずは手軽な治療から始めたい方
  • ダウンタイムを取れない方
  • 定期的な通院が可能な方
  • 夏場など特定の時期だけ症状を抑えたい方

手術治療について

手術治療の種類

わきが・多汗症の手術治療には、いくつかの方法がありますが、最も効果的で一般的なのが「剪除法(せんじょほう)」または「皮弁法」と呼ばれる方法です。その他、「吸引法」「超音波吸引法」などの方法もあります。

剪除法(皮弁法)とは

剪除法は、わきが治療の標準的な外科手術で、保険適用が認められています。わきの下の皮膚を4〜5cm切開し、皮膚を裏返して医師が目で確認しながら、アポクリン汗腺を一つひとつハサミや器具で切除していく方法です。

直視下で汗腺を確実に除去できるため、他の治療法と比較して最も高い効果が期待できます。

剪除法の治療手順

  1. 術前準備: わきの毛を剃り、手術部位を消毒
  2. 麻酔: 局所麻酔または全身麻酔
  3. 切開: わきの下を4〜5cm切開
  4. 汗腺の除去: 皮膚を裏返し、アポクリン汗腺とエクリン汗腺を目視で確認しながら切除
  5. 縫合: 皮膚を元に戻し、丁寧に縫合
  6. 固定: 皮膚がずれないようしっかりと固定

手術時間は両わきで約2〜3時間程度です。

手術治療のメリット

1. 保険適用が可能

剪除法は保険適用が認められており、3割負担で両わき約5万円程度で治療を受けることができます。これは他の治療法と比較して最も経済的です。

2. 最も高い治療効果

医師が目視で確認しながら汗腺を除去するため、確実性が高く、最も効果的な治療法といえます。わきがの原因となるアポクリン汗腺を90%以上除去することができます。

3. 再発率が低い

適切に手術が行われた場合、再発率は非常に低いとされています。一度除去された汗腺は再生しないため、効果は半永久的です。

4. 重度の症状にも対応

ミラドライやボトックス注射では十分な効果が得られない重度のわきがに対しても、高い効果が期待できます。

5. 医師の技術次第で結果が変わる

経験豊富な医師による手術であれば、非常に高い満足度が得られます。

手術治療のデメリット

1. 手術跡が残る

4〜5cmの切開を行うため、わきの下に手術跡が残ります。時間の経過とともに目立たなくなりますが、完全に消えることはありません。

2. ダウンタイムが長い

手術後は約1週間の安静が必要で、腕を大きく動かすことが制限されます。抜糸まで約1〜2週間、完全に日常生活に戻るまで約1ヶ月かかります。

3. 術後の痛みや腫れ

手術直後は痛みや腫れが強く、数日間は痛み止めが必要になります。内出血も起こりやすく、症状が落ち着くまでに時間がかかります。

4. 合併症のリスク

感染、血腫(血液が溜まる)、皮膚の壊死、傷の治りが悪い、色素沈着などの合併症が起こる可能性があります。また、術後の固定が不十分だと、皮膚の癒着不良が起こることがあります。

5. 仕事や学校を休む必要がある

術後1週間程度は仕事や学校を休む必要があり、デスクワークでも最低3〜4日は休みが必要です。運動や重労働は1ヶ月程度控える必要があります。

6. 両わきを同時に手術できない場合がある

両腕の動きが制限されるため、日常生活に支障が出る可能性があります。そのため、片側ずつ手術を行う場合もあります。

手術治療の術後経過

  • 術後〜3日: 痛みや腫れが強い。腕を大きく動かせない
  • 1週間: 抜糸。腫れは徐々に引いてくる
  • 2週間: デスクワークなら仕事復帰可能
  • 1ヶ月: 日常生活にほぼ支障なし。軽い運動が可能に
  • 3ヶ月: 傷跡が徐々に目立たなくなる
  • 6ヶ月〜1年: 傷跡がさらに薄くなり安定

手術治療に向いている方

  • 重度のわきがに悩んでいる方
  • 確実な効果を求める方
  • 費用を抑えたい方(保険適用)
  • 1〜2週間の休みが取れる方
  • 傷跡が残ることに抵抗がない方
  • ミラドライやボトックス注射で十分な効果が得られなかった方

3つの治療法の徹底比較

効果の比較

治療法わきがへの効果多汗症への効果効果の持続期間
ミラドライ◎ 70〜80%改善◎ 70〜80%改善半永久的
ボトックス注射△ 間接的な改善◎ 90%以上改善4〜9ヶ月(平均6ヶ月)
手術(剪除法)◎◎ 90%以上改善◎ 80〜90%改善半永久的

わきがへの効果: 手術が最も高く、次いでミラドライ。ボトックス注射はアポクリン汗腺に直接作用しないため、効果は限定的。

多汗症への効果: ボトックス注射と手術が最も高く、ミラドライも高い効果が期待できます。

ダウンタイムの比較

治療法治療時間当日の状態仕事復帰運動再開
ミラドライ約1時間腫れ・痛みあり翌日〜3日後1〜2週間後
ボトックス注射約10〜15分ほぼ通常通り当日〜翌日翌日
手術(剪除法)約2〜3時間痛み・腫れが強い1〜2週間後1ヶ月後

最もダウンタイムが短い: ボトックス注射 最もダウンタイムが長い: 手術(剪除法)

費用の比較

治療法保険適用費用(目安)長期的なコスト
ミラドライ適用外30〜40万円/回1〜2回で完了
ボトックス注射重度の多汗症のみ適用保険適用:約3万円<br>自費:5〜10万円年1〜2回の継続が必要
手術(剪除法)適用約5万円(3割負担)1回で完了

最も経済的(初期費用): 手術(保険適用の場合) 最も高額: ミラドライ 長期的なコスト: ボトックス注射は継続が必要なため、長期的には高額になる可能性

傷跡・美容面の比較

治療法傷跡美容的満足度
ミラドライなし高い
ボトックス注射ほぼなし(針跡のみ)非常に高い
手術(剪除法)4〜5cmの線状痕個人差が大きい

傷跡が最も目立たない: ボトックス注射、ミラドライ 傷跡が残る: 手術(剪除法)

リスク・副作用の比較

ミラドライ

  • 一時的な腫れ、痛み、内出血
  • 一時的な感覚異常
  • まれに代償性発汗(他の部位の発汗増加)

ボトックス注射

  • 注射部位の内出血
  • まれに筋力低下
  • アレルギー反応(非常にまれ)

手術(剪除法)

  • 感染
  • 血腫
  • 皮膚の壊死
  • 傷の治りが悪い
  • 色素沈着
  • 皮膚の引きつれ

最もリスクが低い: ボトックス注射 最もリスクが高い: 手術(剪除法)

適応症状の比較

軽度の症状

  • ボトックス注射が推奨
  • ミラドライも選択可能

中等度の症状

  • ミラドライが推奨
  • ボトックス注射も効果的
  • 手術も選択肢

重度の症状

  • 手術(剪除法)が最も確実
  • ミラドライも効果的
  • ボトックス注射は効果が限定的

主に多汗症の場合

  • ボトックス注射が第一選択
  • ミラドライも効果的

主にわきがの場合

  • 手術またはミラドライが推奨
  • ボトックス注射は補助的

あなたに最適な治療法の選び方

症状の重症度で選ぶ

軽度〜中等度の症状の方

  • まずはボトックス注射やミラドライから始めることをおすすめします
  • 特に多汗症が主な悩みの場合は、ボトックス注射が効果的です

重度の症状の方

  • 手術(剪除法)またはミラドライが推奨されます
  • 確実な効果を求めるなら手術、傷跡を避けたいならミラドライを選択

ライフスタイルで選ぶ

仕事や学校を休めない方

  • ボトックス注射が最適です
  • ミラドライも週末を利用すれば可能です

長期の休みが取れる方

  • 手術(剪除法)を選択できます
  • 確実で長期的な効果が得られます

定期的な通院が可能な方

  • ボトックス注射で継続的に効果を維持できます

予算で選ぶ

費用を抑えたい方

  • 保険適用の手術(剪除法)が最も経済的です
  • 多汗症の場合は保険適用のボトックス注射も選択肢

初期投資は高くても長期的にコストを抑えたい方

  • ミラドライまたは手術が適しています
  • 1〜2回の治療で半永久的な効果が得られます

美容面の優先度で選ぶ

傷跡を絶対に残したくない方

  • ミラドライまたはボトックス注射を選択
  • 特にミラドライは長期的な効果も得られます

傷跡よりも効果を重視する方

  • 手術(剪除法)が最も確実です
  • ただし、傷跡は時間とともに目立たなくなります

治療の確実性で選ぶ

最も確実な効果を求める方

  • 手術(剪除法)が第一選択です
  • 90%以上の汗腺除去が可能で、再発率も低いです

切らずに高い効果を求める方

  • ミラドライが適しています
  • 70〜80%の改善が期待できます

併用療法という選択肢

症状や目的に応じて、複数の治療法を組み合わせることも可能です。

例1: ミラドライ治療後、残存する軽度の症状にボトックス注射を追加 例2: 手術後の臭い対策として、定期的にボトックス注射で発汗を抑制 例3: 夏場はボトックス注射、冬場は無治療という季節的な使い分け

よくある質問

Q1. 治療後に再発することはありますか?

A1. ミラドライと手術で一度破壊・除去された汗腺は再生しません。ただし、残存した汗腺が活発化したり、思春期の方は治療後に新たな汗腺が発達する可能性があります。ボトックス注射は効果が一時的なため、再発ではなく効果の減弱として症状が戻ります。

Q2. 痛みはどの程度ですか?

A2. ミラドライと手術は局所麻酔を使用するため、治療中の痛みはほとんどありません。ボトックス注射は麻酔クリームを使用することで痛みを軽減できます。治療後の痛みは、手術が最も強く、ミラドライは中程度、ボトックス注射はほとんどありません。

Q3. 代償性発汗は起こりますか?

A3. 代償性発汗(他の部位の発汗が増加する)は、交感神経を切断する「胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS手術)」で高頻度に起こりますが、わきが・多汗症の局所治療では非常にまれです。ミラドライや手術で一部の方に軽度の代償性発汗が報告されていますが、ほとんどの方は問題ありません。

Q4. 治療に適した年齢はありますか?

A4. アポクリン汗腺は思春期以降に発達するため、一般的には18歳以降の治療が推奨されます。ただし、症状が強く日常生活に支障がある場合は、保護者の同意のもと、未成年でも治療可能なケースがあります。

Q5. 妊娠中・授乳中でも治療できますか?

A5. ボトックス注射は妊娠中・授乳中は推奨されません。ミラドライや手術も、可能であれば妊娠・授乳期間を避けることが望ましいです。緊急性がない場合は、出産・授乳後に治療を検討することをおすすめします。

Q6. 保険適用の基準は?

A6. 手術(剪除法)は、わきがと診断されれば保険適用となります。ボトックス注射は、重度の原発性腋窩多汗症と診断され、以下の基準を満たす場合に保険適用となります:

  • 多汗症の発症が25歳以下
  • 両側性で左右対称の発汗
  • 睡眠中は発汗が止まる
  • 週1回以上多汗のエピソードがある
  • 日常生活に支障をきたしている
  • 家族歴がある

上記のうち2項目以上を満たし、かつ重症度が一定以上の場合に保険適用となります。

まとめ

わきが・多汗症治療には、ミラドライ、ボトックス注射、手術(剪除法)という3つの主要な選択肢があります。それぞれに明確な特徴があり、最適な治療法は個人の症状、ライフスタイル、優先事項によって異なります。

各治療法のまとめ

ミラドライ: 切らずに半永久的な効果が得られる最新治療。わきがと多汗症の両方に効果的で、ダウンタイムも比較的短い。費用は高額だが、長期的には経済的。

ボトックス注射: 短時間で手軽に受けられ、ダウンタイムがほぼない。多汗症には非常に効果的だが、効果は一時的で定期的な治療が必要。わきがへの効果は限定的。

手術(剪除法): 最も確実で高い効果が得られる治療法。保険適用で経済的だが、ダウンタイムが長く傷跡が残る。重度の症状に最適。

治療法選択のポイント

  1. 症状の程度を正確に把握する: 軽度なのか重度なのか、わきがなのか多汗症なのか
  2. ライフスタイルを考慮する: 休みが取れるか、定期的な通院が可能か
  3. 優先順位を明確にする: 効果、費用、ダウンタイム、美容面など
  4. 専門医に相談する: 実際の症状を診察してもらい、最適な治療法を提案してもらう

最後に

わきがや多汗症は、適切な治療によって大きく改善できる症状です。一人で悩まず、まずは専門のクリニックで相談することが第一歩です。

アイシークリニック上野院では、患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせて、最適な治療法をご提案いたします。無料カウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

あなたに最適な治療法を見つけて、快適な日常生活を取り戻しましょう。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会: 腋臭症診療ガイドライン
    https://www.dermatol.or.jp/
  2. 日本形成外科学会: わきが・多汗症について
    http://www.jsprs.or.jp/
  3. 厚生労働省: 医療機器の承認情報(ミラドライ)
    https://www.mhlw.go.jp/
  4. 日本発汗学会
    https://hakkangakkai.com/
  5. 日本美容外科学会: わきが・多汗症治療の実態調査
    https://www.jsaps.com/

※本記事の内容は2025年10月時点の医学的知見に基づいています。治療法や効果には個人差があります。実際の治療を検討される際は、必ず専門医にご相談ください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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