はじめに
ワキガや多汗症の治療法として注目を集めているミラドライ。メスを使わずに汗腺を破壊できる画期的な治療法として、多くの方が関心を寄せています。しかし、治療を検討している方の多くが気になるのが「治療後の経過」ではないでしょうか。
「腫れはどのくらい続くの?」「痛みはいつまで我慢すればいい?」「しこりができたけど、これって大丈夫?」
このような不安を抱える方は少なくありません。実際、ミラドライは効果的な治療法である一方で、施術後には一定期間のダウンタイムが伴います。
本記事では、アイシークリニック上野院の専門医が、ミラドライ治療後の腫れ・痛み・しこりについて、それぞれの症状がいつまで続くのか、どのように対処すればよいのかを詳しく解説します。治療を検討している方はもちろん、すでに治療を受けて経過中の方にも役立つ情報をお届けします。

ミラドライとは?基本的な仕組みを理解する
ミラドライの治療原理
ミラドライは、マイクロ波(電磁波)を用いてワキガや多汗症の原因となる汗腺を破壊する治療法です。2018年に厚生労働省から承認を受けた医療機器で、世界中で広く使用されています。
治療のメカニズムは以下の通りです:
- マイクロ波の照射: 専用の機器を使って、ワキの皮膚にマイクロ波を照射します
- 熱エネルギーの発生: マイクロ波が皮膚の深部(真皮層から皮下脂肪層)に到達し、熱エネルギーを発生させます
- 汗腺の破壊: エクリン汗腺とアポクリン汗腺が存在する層を、約60度の熱で処理します
- 冷却システム: 表皮を保護するため、同時に冷却システムが作動し、皮膚表面を守ります
なぜダウンタイムが生じるのか
ミラドライは「切らない治療」として知られていますが、体内では熱による組織の破壊が起こっています。この治療プロセスにより、以下のような反応が体内で生じます:
- 炎症反応: 熱で破壊された組織に対して、体が自然な治癒反応を起こします
- 組織液の貯留: 損傷部位に組織液が集まり、腫れの原因となります
- 線維化プロセス: 破壊された汗腺組織が吸収され、新しい組織に置き換わっていきます
これらの生体反応が、腫れ・痛み・しこりといった症状として現れるのです。
ミラドライ後の腫れについて
腫れが出現するメカニズム
ミラドライ治療後の腫れは、ほぼ全ての患者さんに見られる自然な反応です。腫れが生じる主な理由は以下の通りです:
急性期の炎症反応 治療直後から数日間は、マイクロ波による熱エネルギーで組織が損傷したことに対する急性炎症反応が起こります。この時期には、血管透過性が亢進し、組織液が間質に漏れ出すことで腫れが生じます。
リンパ液の貯留 ワキの下にはリンパ節が存在し、多くのリンパ管が通っています。治療による影響で一時的にリンパの流れが滞り、リンパ液が貯留することも腫れの原因となります。
腫れの経過(時系列)
ミラドライ治療後の腫れは、段階的に変化していきます。一般的な経過を時系列で見ていきましょう。
治療当日~3日目:ピーク期
治療直後からワキの腫れが始まります。多くの場合、治療後2~3時間で腫れが目立ち始め、翌日から2~3日目にかけてピークを迎えます。この時期の特徴は:
- ワキ全体がパンパンに腫れる
- 腕を下ろすとワキが窮屈に感じる
- ワキの下が膨らんで見える
- 触ると熱を持っている感じがする
- ワキから上腕の内側にかけて腫れが広がることもある
この段階では、ワキの下に「ゴルフボール」や「ピンポン玉」が入っているような感覚を訴える方も少なくありません。
4日目~1週間:軽減期
治療から4日目以降、腫れは徐々に軽減していきます。1週間程度で、日常生活にほとんど支障がないレベルまで改善する方が多いです。
- ワキの膨らみが目立たなくなってくる
- 熱感が減少する
- 腕の動かしやすさが戻ってくる
- 見た目の違和感が少なくなる
2週間~1ヶ月:残存期
多くの方は2週間程度で腫れがほぼ消失しますが、個人差があります。1ヶ月程度、わずかな腫れや硬さが残る方もいます。
- 見た目にはほぼ正常
- 触るとまだ少し腫れている感じがする
- 以前と比べるとやや硬い
1ヶ月以降
通常、1ヶ月を過ぎると腫れは完全に消失します。ただし、体質や治療の照射レベルによっては、2~3ヶ月程度かかる場合もあります。
腫れの程度に個人差が生じる要因
同じミラドライ治療を受けても、腫れの程度には個人差があります。以下のような要因が影響します:
体質的要因
- むくみやすい体質
- 皮下脂肪の厚さ
- 皮膚の弾力性
- 年齢(若い方の方が腫れやすい傾向)
治療条件
- 照射エネルギーのレベル(出力が高いほど腫れやすい)
- 照射回数
- 治療範囲の広さ
術後管理
- 冷却の徹底度
- 安静度
- 圧迫固定の適切さ
腫れへの対処法
ミラドライ後の腫れを最小限に抑え、早期回復を促すための対処法をご紹介します。
1. 十分な冷却
治療当日から3日間は、腫れを抑えるために冷却が非常に重要です。
- 保冷剤や氷嚢をタオルで包んでワキに当てる
- 1回15~20分程度、1日に数回繰り返す
- 冷やしすぎによる凍傷に注意する
- 就寝時も可能な範囲で冷却を継続する
2. 適切な圧迫固定
クリニックで処方される圧迫バンドやサポーターを適切に使用します。
- 医師の指示通りに装着する
- きつすぎず緩すぎない適度な圧迫を保つ
- 血行不良を起こさないよう注意する
- 通常、3~7日間の使用が推奨される
3. 上半身を高くして休む
重力の影響で腫れが増悪するのを防ぐため、休息時の姿勢に注意します。
- 就寝時は上半身をやや高くする
- クッションや枕を使って調整する
- 横向きで寝る場合、治療側を上にする
4. 血行を促進する行動を避ける
治療後1週間程度は、血行を促進して腫れを悪化させる行動を控えます。
- 入浴は避け、シャワー程度にする(ぬるめのお湯で)
- 激しい運動は控える
- 飲酒を控える
- サウナや岩盤浴は避ける
5. 腕を上げすぎない
ワキの安静を保つため、腕の動きに注意します。
- 重いものを持ち上げない
- 腕を大きく上げる動作を避ける
- できるだけワキを刺激しない
6. 弾性ストッキングの活用
医師の指示があれば、腕用の弾性ストッキングを使用することもあります。適度な圧迫により、腫れの軽減とリンパの流れの改善が期待できます。
こんな時はすぐに相談を
以下のような症状がある場合は、感染や血腫などの合併症の可能性があるため、すぐにクリニックに連絡してください。
- 腫れが日に日に悪化する
- 赤みが強くなり、熱を持っている
- 激しい痛みがある
- 発熱がある(38度以上)
- 膿のような分泌物が出る
- 極端に腫れて腕が動かせない
ミラドライ後の痛みについて
痛みが生じるメカニズム
ミラドライ治療後の痛みは、以下のようなメカニズムで発生します:
組織損傷による痛み マイクロ波による熱エネルギーで汗腺とその周囲組織が破壊されることで、炎症性サイトカインが放出され、痛覚神経が刺激されます。
神経の一時的な刺激 治療時の熱や腫れにより、周囲の神経が一時的に刺激され、痛みやしびれといった感覚異常が生じることがあります。
筋肉の緊張 痛みをかばうために無意識に筋肉が緊張し、それが新たな痛みの原因となることもあります。
痛みの経過(時系列)
治療直後~当日夜:麻酔が切れた後
ミラドライは局所麻酔下で行われるため、治療中の痛みはほとんどありません。しかし、治療後2~6時間で麻酔が切れてくると、痛みを感じ始めます。
- じんじんとした痛み
- 鈍い痛み
- ヒリヒリとした灼熱感
- 腕を動かすと痛みが増す
多くの方が「筋肉痛のような痛み」「打撲したような痛み」と表現されます。この時期が最も痛みを感じやすく、処方された鎮痛剤の使用が推奨されます。
2日目~4日目:ピーク期
痛みは2~3日目にピークを迎えることが多いです。
- 腕を動かした時の痛み
- ワキを触ると痛い
- 寝返りを打つと痛い
- 重だるい感じ
この時期は、鎮痛剤を適切に使用しながら、できるだけワキを安静に保つことが大切です。
5日目~1週間:軽減期
5日目頃から痛みは徐々に軽減していきます。1週間程度で、日常生活にほとんど支障がないレベルまで改善する方が多いです。
- 安静時の痛みはほぼ消失
- 動かすと少し痛む程度
- 鎮痛剤なしで過ごせる
- 触ると違和感がある程度
2週間~1ヶ月
2週間を過ぎると、ほとんどの方で痛みは消失します。
- 通常の動作では痛みを感じない
- 強く押すとまだ少し痛い
- 完全に元通りの感覚ではない
1ヶ月以降
1ヶ月を過ぎると、痛みは完全に消失することが一般的です。ただし、神経の感覚が完全に元に戻るには、さらに時間がかかることもあります。
痛みの種類と特徴
ミラドライ後には、いくつかの異なるタイプの痛みが出現することがあります。
1. 炎症性の痛み 最も一般的なタイプで、組織の炎症反応によるものです。鈍い痛みや圧痛として感じられ、通常の鎮痛剤で軽減できます。
2. 神経性の痛み ピリピリ、チクチクといった痛みや、しびれを伴うことがあります。一時的な神経の刺激によるもので、通常は数週間で改善します。
3. 筋肉痛のような痛み ワキから上腕にかけての筋肉痛のような痛みです。これは治療による影響と、痛みをかばう姿勢による二次的なものが含まれます。
4. 触れると痛い(圧痛) 外からの圧力に対して敏感になり、触ると痛みを感じます。腫れが引くにつれて改善していきます。
痛みへの対処法
ミラドライ後の痛みを軽減し、快適に過ごすための対処法をご紹介します。
1. 処方された鎮痛剤の適切な使用
クリニックで処方される鎮痛剤を正しく使用することが最も基本的で効果的です。
- 痛みが出る前、または軽いうちに服用する
- 我慢せずに適切に使用する
- 用法用量を守る
- 通常、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が処方される
- 3~5日間の服用が目安
2. 冷却による痛みの緩和
腫れの項目でも述べた通り、冷却は痛みの軽減にも効果的です。
- 治療当日から3日間は特に重要
- 保冷剤や氷嚢をタオルで包んで使用
- 1回15~20分程度
- 冷感により痛覚が鈍化する
3. 安静を保つ
無理な動作は痛みを増悪させるため、治療後1週間程度は安静を心がけます。
- 腕を大きく動かす動作を避ける
- 重いものを持たない
- スポーツや激しい運動は控える
- デスクワークなど負担の少ない活動は可能
4. 適切な姿勢
就寝時や休息時の姿勢も痛みに影響します。
- 仰向けまたは治療していない側を下にして寝る
- 治療側を下にして寝ると痛みが増す
- クッションを使って楽な姿勢を見つける
5. ゆったりとした服装
ワキへの刺激を最小限にするため、服装にも配慮します。
- ゆったりとした袖の服を選ぶ
- 締め付けのない下着を使用
- ノースリーブは避ける
- 柔らかい素材の服を選ぶ
6. ストレス管理
痛みは精神的ストレスにより増悪することがあります。
- 十分な睡眠をとる
- リラックスできる時間を持つ
- 痛みに対する不安を軽減する
痛みが長引く場合の注意点
通常、2週間を過ぎても強い痛みが続く場合は、以下の可能性を考慮する必要があります:
感染症 発熱、赤み、腫れの増悪を伴う場合は感染の可能性があります。早急に医療機関を受診してください。
神経損傷 しびれや電気が走るような痛みが持続する場合、神経への影響が考えられます。多くは一時的ですが、経過観察が必要です。
過度な炎症反応 体質により炎症反応が強く出る方もいます。医師に相談し、必要に応じて追加の治療を検討します。
ミラドライ後のしこりについて
しこりが形成されるメカニズム
ミラドライ治療後のしこりは、医学的には「硬結(こうけつ)」と呼ばれ、多くの患者さんに見られる現象です。しこりが形成されるプロセスは以下の通りです:
1. 組織の損傷と炎症 マイクロ波により汗腺とその周囲組織が熱損傷を受けます。損傷した組織には炎症細胞が集まり、炎症反応が起こります。
2. 線維芽細胞の増殖 損傷部位を修復するため、線維芽細胞が活性化し、コラーゲンなどの細胞外マトリックスを産生し始めます。
3. 線維化(瘢痕化) 修復過程で過剰にコラーゲンが沈着すると、組織が硬くなり、しこりとして触知されるようになります。
4. リモデリング 時間の経過とともに、余分なコラーゲンは徐々に分解され、組織が柔らかくなっていきます。このプロセスには数ヶ月から1年程度かかることがあります。
しこりの経過(時系列)
2週間~1ヶ月:出現期
腫れが引いてくると、ワキの下にしこりがあることに気づく方が多いです。
- 硬いコリコリとしたしこり
- 触るとはっきり分かる
- ゴルフボール大のこともある
- 複数のしこりが感じられることもある
- 若干の圧痛を伴うことがある
この時期のしこりは、まだ炎症が続いている状態であり、比較的硬く感じられます。
1ヶ月~3ヶ月:ピーク期
しこりが最も硬く、大きく感じられる時期です。
- しこりの境界がはっきりしている
- 皮膚の表面から触知できる
- 動かすと少し動く
- 日常生活に支障はないが違和感がある
この時期、「本当に消えるのか」と不安になる方も多いですが、これは正常な経過の一部です。
3ヶ月~6ヶ月:縮小期
3ヶ月を過ぎると、しこりは徐々に小さく、柔らかくなっていきます。
- しこりが小さくなる
- 硬さが和らいでくる
- 境界が不明瞭になってくる
- 日常生活での違和感が減少
6ヶ月~1年:消失期
多くの方で、6ヶ月から1年程度でしこりは完全に消失するか、ほとんど気にならないレベルまで小さくなります。
- ほとんど触れない
- 意識しないと分からない程度
- 柔らかくなり周囲組織と区別がつかない
ただし、体質や治療条件によっては、1年以上残る場合もあります。その場合でも、徐々に改善していくことが多いです。
しこりの大きさと個人差
しこりの大きさや持続期間には、以下のような個人差があります:
体質的要因
- ケロイド体質の方はしこりができやすい
- 線維化しやすい体質
- 年齢(若い方の方が線維化が活発)
- 皮下脂肪の量
治療条件
- 照射エネルギーが高いほどしこりができやすい
- 照射回数が多いほど影響が大きい
- 治療範囲が広いとしこりも大きくなりやすい
術後ケア
- マッサージの実施の有無
- 圧迫固定の適切さ
- 安静度
しこりへの対処法
ミラドライ後のしこりを早期に軽減させ、快適に過ごすための対処法をご紹介します。
1. 優しいマッサージ
腫れが落ち着いた2週間後頃から、優しいマッサージを開始できます。
- 強く押さず、優しく撫でるように
- 円を描くようにマッサージ
- 1日2~3回、1回5分程度
- お風呂上がりの血行が良い時が効果的
- 痛みがある場合は無理をしない
マッサージの目的は、リンパの流れを促進し、線維化を軽減することです。ただし、強すぎるマッサージは逆効果になることもあるため、力加減に注意が必要です。
2. 温熱療法
治療後2週間を過ぎたら、温めることも効果的です。
- 温かいタオルを当てる
- お風呂でゆっくり温まる(ぬるめのお湯で)
- 温熱により血行が促進され、組織の代謝が活発になる
ただし、炎症が残っている間(赤みや熱感がある場合)は、冷却を優先します。
3. 適度な運動
安静期間が過ぎたら、適度な運動を再開します。
- 軽い腕の運動(回す、伸ばすなど)
- ストレッチ
- ウォーキング
- ヨガ
運動により血液とリンパの循環が改善され、しこりの軽減につながります。
4. 保湿ケア
皮膚を柔軟に保つことも大切です。
- 保湿クリームやローションを塗る
- 乾燥を防ぐ
- 皮膚のバリア機能を保つ
5. 圧迫療法の継続
医師の指示があれば、圧迫バンドやサポーターを使用します。
- 適度な圧迫により、しこりの形成を抑制
- 通常、1~2週間の使用が推奨されるが、個人差がある
6. 経過観察と定期受診
しこりの状態を定期的にチェックし、異常があれば早めに相談します。
- 1ヶ月後、3ヶ月後などに経過観察
- 写真を撮って変化を記録
- 医師の診察を受け、適切なアドバイスをもらう
しこりに関する注意点
良性のしこりと異常なしこりの見分け方
ミラドライ後のしこりは基本的に良性で、治療による正常な反応です。しかし、以下のような症状がある場合は注意が必要です:
すぐに受診すべき症状
- しこりが急速に大きくなる
- 激しい痛みを伴う
- 赤みや熱感が強い
- 皮膚の変色がある
- 膿が出る
- 発熱を伴う
これらは、感染や血腫、その他の合併症の可能性を示唆します。
経過観察で良い症状
- 徐々に小さくなっている
- 硬さが和らいできている
- 痛みがない、または軽い
- 日常生活に支障がない
これらは正常な経過であり、時間とともに改善していくことが期待できます。
しこりが長期間残る場合の対応
1年以上経過してもしこりが残る場合、以下のような対応を検討することがあります:
1. ステロイド注射 しこり部位に少量のステロイドを注射することで、線維化を抑制し、しこりを縮小させる効果が期待できます。ケロイド体質の方に特に有効です。
2. レーザー治療 特定のレーザーを使用して、しこりの改善を図ることもあります。
3. 経過観察の継続 明らかな問題がなければ、さらに長期的な経過観察を継続します。2年、3年と時間をかけて改善することもあります。
部位別の症状の特徴
ワキ全体
最も一般的に症状が現れる部位です。
腫れ: ワキ全体がパンパンに腫れ、腕を下ろすと窮屈に感じます 痛み: 腕を動かすと痛み、特に腕を上げる動作で強く感じます しこり: ワキの中央から前方にかけて形成されやすい
ワキから上腕内側
腫れ: 重力の影響で、上腕の内側に腫れが広がることがあります 痛み: 腕全体の重だるさとして感じられます しこり: ワキから上腕にかけて、線状のしこりを感じることもあります
ワキから胸の外側
腫れ: 治療範囲が広い場合、胸の外側まで腫れが及ぶことがあります 痛み: ブラジャーの締め付けで痛みを感じることがあります しこり: あまり形成されにくい部位です
年齢・性別による違い
年齢による違い
若年層(10代~20代)
- 組織の修復能力が高く、回復は比較的早い
- しかし、線維化反応も活発なため、しこりができやすい
- 腫れや痛みは強めに出ることがある
- 最終的な結果は良好なことが多い
中年層(30代~40代)
- バランスの取れた回復過程
- 腫れ、痛み、しこりいずれも中程度
- 標準的な経過をたどることが多い
高齢層(50代以上)
- 組織の修復がゆっくり
- 腫れや痛みは比較的軽度
- しこりも少ない傾向
- ただし、回復に時間がかかることがある
性別による違い
女性
- 皮下脂肪が多いため、腫れが目立ちやすい
- ホルモンの影響で、むくみやすい時期がある
- 月経周期により症状が変動することがある
- 美容面での懸念が強い
男性
- 筋肉質の方は、腫れが比較的軽度
- 痛みの訴えが少ない傾向
- しこりの形成は個人差が大きい
- 仕事への影響を懸念する方が多い
日常生活への影響と対策
仕事への影響
デスクワーク
- 治療翌日から可能な場合が多い
- 腕を上げる動作が少ないため、比較的支障が少ない
- ただし、長時間同じ姿勢は避ける
立ち仕事
- 治療後2~3日は休むことが望ましい
- 長時間立っていると、重力で腫れが増悪する可能性
- こまめに休憩を取り、腕を高くする
力仕事
- 治療後1~2週間は避けるべき
- 重いものを持つ、腕を大きく動かす作業は控える
- 徐々に負荷を上げていく
家事への影響
洗濯物を干す
- 腕を高く上げる動作のため、1週間程度は避けるか、誰かに代わってもらう
料理
- 軽い料理は翌日から可能
- 重い鍋を持つなどは1週間程度控える
掃除
- 腕を大きく動かす掃除機がけは数日控える
- 拭き掃除など軽い作業は可能
スポーツへの影響
軽い運動(ウォーキングなど)
- 治療後1週間程度で再開可能
- 無理のない範囲で
水泳
- 治療後2週間程度は避ける
- 傷口が完全に閉じてから
球技、テニス、ゴルフなど
- 腕を大きく動かすため、2~3週間は避ける
- 徐々に軽い練習から再開
筋力トレーニング
- 上半身のトレーニングは3~4週間は控える
- 下半身のトレーニングは早めに再開可能
- 負荷は段階的に上げる
入浴・シャワー
治療当日
- シャワーのみ(ワキを濡らさないように注意)
- 入浴は避ける
治療後1週間
- シャワーは可能
- ぬるめのお湯で短時間
- ワキを強くこすらない
- 長時間の入浴は避ける
治療後2週間以降
- 通常の入浴が可能
- ただし、長時間の入浴やサウナは控える
飲酒・喫煙
飲酒
- 治療後3日間は避ける
- 血行が促進されて腫れや痛みが悪化する可能性
- その後も1週間程度は控えめに
喫煙
- 組織の治癒を妨げるため、できるだけ控える
- 血流が悪くなり、回復が遅れる可能性
服装の選び方
治療後1週間
- ゆったりとした袖の服
- 締め付けのないトップス
- 柔らかい素材
- ワキに摩擦が少ないもの
治療後2週間以降
- 徐々に通常の服装へ
- まだ違和感がある場合は、ゆったりめを選ぶ
合併症のサインと対応
注意すべき合併症
ミラドライは安全性の高い治療法ですが、まれに以下のような合併症が起こる可能性があります。
1. 感染症
発生頻度: 1%未満
症状:
- 発熱(38度以上)
- 治療部位の強い赤み
- 腫れの急激な悪化
- 膿性の分泌物
- 激しい痛み
対応:
- すぐにクリニックに連絡
- 抗生物質の投与が必要
- 場合によっては排膿処置
2. 血腫(けっしゅ)
発生頻度: 1~2%
症状:
- 治療部位の急激な腫れ
- 皮膚の変色(紫色や赤黒い色)
- 痛みの増悪
- しこりが突然大きくなる
対応:
- クリニックで診察を受ける
- 小さい血腫は自然吸収を待つ
- 大きい場合は穿刺排液を行うことがある
3. 神経障害
発生頻度: 一時的なものは10~20%、永続的なものは極めてまれ
症状:
- 腕の内側のしびれ
- 感覚の鈍麻
- ピリピリとした異常感覚
対応:
- 多くは一時的で、数週間から数ヶ月で改善
- ビタミンB12などの神経賦活剤が処方されることがある
- 経過観察が重要
4. 皮膚の変色
発生頻度: 一時的なものは30~40%
症状:
- 治療部位の色素沈着
- 色素脱失(まれ)
対応:
- 多くは数ヶ月で自然に改善
- 色素沈着には美白剤の使用を検討
- 紫外線対策が重要
5. 運動制限
発生頻度: 一時的なものは5~10%
症状:
- 腕の可動域制限
- 上げにくさ、回しにくさ
対応:
- リハビリテーション
- 適度なストレッチ
- 多くは1~2ヶ月で改善
こんな症状があればすぐに受診
以下の症状がある場合は、遠慮なくすぐにクリニックに連絡してください:
- 発熱(38度以上)
- 治療部位の激しい痛み
- 腫れや赤みの急激な悪化
- 膿や異常な分泌物
- 呼吸困難やアレルギー症状
- 腕がまったく動かせない
- 激しいしびれや感覚の完全な消失
- 我慢できないほどの痛み
治療効果の確認時期
効果を実感できる時期
ミラドライの治療効果は、症状(腫れ、痛み、しこり)が落ち着いた後に実感できるようになります。
1ヶ月後
- 腫れがほぼ消失
- 痛みがなくなる
- 汗の量が明らかに減少していることを実感
- においが軽減していることを実感
3ヶ月後
- しこりが小さくなってくる
- 治療効果が安定してくる
- 汗の量がさらに減少
- 生活の質の改善を実感
6ヶ月後
- 最終的な治療効果がほぼ確定
- しこりが目立たなくなる
- ワキの状態が落ち着く
効果が不十分だった場合
ミラドライの効果には個人差があり、1回の治療で十分な効果が得られない場合もあります。
再治療の検討時期
- 通常、6ヶ月後以降に検討
- 症状が完全に落ち着いてから
再治療のメリット
- 追加の汗腺破壊により、効果が向上
- 2回目は1回目より軽度のダウンタイムで済むことが多い
再治療の注意点
- しこりができやすい体質の方は慎重に検討
- 前回の経過を踏まえた治療計画が必要
セルフケアのポイント
治療後1週間のケアスケジュール
当日
- 冷却を徹底(1時間おきに15~20分)
- 圧迫固定
- 鎮痛剤の服用
- 安静
2~3日目
- 冷却継続
- 圧迫固定
- 鎮痛剤の服用(必要に応じて)
- シャワーのみ
4~7日目
- 冷却は終了してもよい
- 圧迫固定(医師の指示に従う)
- 鎮痛剤は不要になることが多い
- 軽い日常活動の再開
治療後1ヶ月のケアスケジュール
2週間目
- 優しいマッサージ開始
- 温熱療法の開始(医師の許可があれば)
- 軽い運動の再開
- 通常の入浴が可能
3~4週間目
- マッサージ継続
- 徐々に活動レベルを上げる
- しこりの経過観察
長期的なケア(1ヶ月以降)
しこりのケア
- 継続的なマッサージ
- 保湿ケア
- 経過観察
効果の確認
- 汗の量の変化
- においの変化
- 生活の質の改善
フォローアップ
- 定期的な診察
- 写真での記録
- 不安な点の相談

よくある質問(Q&A)
Q1: 腫れがひどくて心配です。これは正常ですか?
A: 治療後2~3日目に腫れがピークになるのは正常な経過です。ワキがパンパンに腫れて、ゴルフボールが入っているような感覚を訴える方も多いですが、多くの場合、1週間程度で大幅に改善します。ただし、以下のような症状がある場合は、すぐにクリニックに連絡してください:
- 腫れが日に日に悪化する
- 激しい痛みを伴う
- 発熱がある
- 赤みが強く、熱を持っている
Q2: 痛み止めはどのくらい飲んでもいいですか?
A: 処方された鎮痛剤は、用法用量を守れば安全に使用できます。痛みを我慢する必要はありません。多くの方は3~5日間の服用で十分ですが、個人差があります。痛みが強い場合は、遠慮なく服用してください。ただし、処方された量を超えて服用する場合は、必ずクリニックに相談してください。
Q3: しこりがずっと残ったらどうしよう?
A: ミラドライ後のしこりは、ほとんどの場合、時間とともに小さくなります。個人差はありますが、6ヶ月から1年程度で目立たなくなることが多いです。しこりが残ることを心配される方は多いですが、実際には1年後に問題となるほどのしこりが残るケースは少ないです。優しいマッサージや適度な運動により、改善を促すことができます。
Q4: 両ワキを一度に治療すると、日常生活に支障がありますか?
A: 両ワキを同時に治療すると、腕の動きが両側で制限されるため、片側ずつ治療するよりも日常生活への影響が大きくなります。特に治療後数日間は、以下のような動作が困難になる可能性があります:
- 洗髪
- 背中のファスナーを上げる
- 高いところのものを取る
可能であれば、家族のサポートがあると安心です。ただし、多くの方は両側同時治療を選択されており、工夫しながら乗り切っています。
Q5: 治療後、どのくらいで仕事に復帰できますか?
A: 仕事の内容によります:
- デスクワーク: 翌日から可能な場合が多い
- 軽い立ち仕事: 2~3日後から可能
- 力仕事や腕を使う仕事: 1~2週間程度休むことが望ましい
ただし、個人差があるため、医師と相談して決定してください。
Q6: スポーツはいつから再開できますか?
A: スポーツの種類により異なります:
- ウォーキング、軽いジョギング: 1週間後から
- 水泳: 2週間後から
- 球技、テニス、ゴルフ: 2~3週間後から
- 筋力トレーニング(上半身): 3~4週間後から
いずれも、無理のない範囲で段階的に負荷を上げていくことが大切です。
Q7: 治療後の腫れで、服が着られなくなることはありますか?
A: 通常の服が着られなくなるほどの腫れは稀ですが、治療後数日間は、ワキがゆったりした服を選ぶことをおすすめします。特に、以下のような服装は避けた方が良いでしょう:
- タイトな袖の服
- ノースリーブ
- 硬い素材の服
- ワキを圧迫する下着
Q8: しこりができやすい体質はありますか?
A: 以下のような方は、しこりができやすい傾向があります:
- ケロイド体質の方
- 過去に傷跡が盛り上がりやすかった方
- 若年層(線維化反応が活発なため)
ただし、しこりができやすい体質であっても、適切なケアにより改善は可能です。心配な方は、治療前に医師に相談してください。
Q9: 腫れや痛みで寝られない場合、どうすればいいですか?
A: 以下の対策を試してください:
- 上半身を高くして寝る(クッションや枕を使用)
- 治療していない側を下にして横向きで寝る
- 就寝前に鎮痛剤を服用する
- 冷却を続ける
- リラックスできる環境を作る
それでも眠れない場合は、翌日クリニックに相談してください。
Q10: マッサージはいつから始めればいいですか?
A: 腫れが落ち着いた2週間後頃から開始できます。ただし、以下の点に注意してください:
- 優しく、ゆっくりと行う
- 痛みがある場合は無理をしない
- 強く押さない
- 1日2~3回、1回5分程度
マッサージの方法について不安がある場合は、受診時に医師や看護師に指導してもらうとよいでしょう。
まとめ:ミラドライ後の経過を理解して安心して治療を
ミラドライは、ワキガや多汗症の効果的な治療法ですが、治療後には一定期間のダウンタイムが伴います。本記事で解説した通り、腫れ・痛み・しこりといった症状は、ほとんどの場合、時間とともに改善していく正常な経過です。
重要なポイントのおさらい
腫れについて
- ピークは治療後2~3日目
- 1週間程度で大幅に改善
- 冷却と圧迫固定が重要
痛みについて
- 麻酔が切れた後から始まる
- ピークは2~3日目
- 処方された鎮痛剤を適切に使用
- 1~2週間で消失することが多い
しこりについて
- 治療後2週間~1ヶ月頃から触知できる
- 6ヶ月~1年程度で改善
- 優しいマッサージが効果的
- ほとんどの場合、時間とともに消失
治療を成功させるために
ミラドライ治療を成功させ、快適に回復期を過ごすためには、以下の点が重要です:
- 医師の指示を守る: 術後のケア方法について、医師の指示をしっかりと守りましょう
- 無理をしない: 回復には個人差があります。自分のペースで無理なく過ごしましょう
- 適切なセルフケア: 冷却、圧迫、マッサージなど、適切なセルフケアを行いましょう
- 不安があれば相談: 少しでも気になることがあれば、遠慮なくクリニックに相談しましょう
- 経過を記録: 写真を撮るなどして経過を記録すると、改善を実感しやすくなります
長期的な視点を持つことの大切さ
治療直後の腫れや痛みに不安を感じる方は多いですが、これらの症状は一時的なものです。多くの患者さんが、数週間から数ヶ月後には「治療を受けてよかった」と感じられています。
しこりについても、「このまま残ったらどうしよう」と心配される方は多いですが、ほとんどの場合、時間とともに改善していきます。焦らず、長期的な視点を持って経過を見守ることが大切です。
アイシークリニック上野院のサポート体制
アイシークリニック上野院では、治療後も丁寧にフォローアップを行っています。不安なことや気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。経験豊富な専門医が、一人ひとりの状態に応じた適切なアドバイスを提供いたします。
ミラドライ治療により、多くの方が長年悩んできたワキの問題から解放され、自信を持って日常生活を送れるようになっています。正しい知識と適切なケアにより、安心して治療を受けていただければと思います。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました:
- 日本皮膚科学会「原発性腋窩多汗症診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/
- 厚生労働省医薬品医療機器情報検索サイト https://www.pmda.go.jp/
- 日本形成外科学会 公式サイト https://jsprs.or.jp/
- 日本美容外科学会 公式サイト https://www.jsaps.com/
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療相談に代わるものではありません。ご自身の症状や治療については、必ず医師にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務