毎日の生活の中で、「なんだかめんどくさいな」「やる気が出ない」と感じることは誰にでもあります。朝起きるのがつらい、家事や仕事に手がつかない、休日なのに何もしたくない。そんな経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
しかし、この「めんどくさい」という感情が長く続いたり、以前は何でもなかったことまで億劫に感じるようになったりした場合、それは単なる怠けや性格の問題ではないかもしれません。実は、心や体が発している重要なSOSのサインである可能性があるのです。
本記事では、「めんどくさい」という感情の正体や、その背景に潜む可能性のある病気について詳しく解説します。また、「めんどくさい」という理由で医療機関への受診を先延ばしにすることの危険性や、日常生活での対処法についてもお伝えしていきます。ご自身やご家族の健康管理の参考にしていただければ幸いです。

目次
- 「めんどくさい」の正体とは?脳科学から見た倦怠感のメカニズム
- 見過ごせない「めんどくさい」が示す可能性のある病気
- うつ病と「めんどくさい」の深い関係
- 慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気を知っていますか?
- 甲状腺機能低下症が引き起こす全身の不調
- 貧血による「隠れ疲労」に要注意
- 睡眠障害と倦怠感の意外なつながり
- 「めんどくさい」で受診を先延ばしにする危険性
- 日常生活で実践できる「めんどくさい」対策
- 医療機関を受診すべきタイミングの見極め方
- まとめ:自分の体の声に耳を傾けることの大切さ
1. 「めんどくさい」の正体とは?脳科学から見た倦怠感のメカニズム
「めんどくさい」という感情は、私たちの脳がエネルギーを節約しようとする自然な反応のひとつです。脳は体重の約2%しかありませんが、全身のエネルギーの約20%を消費する非常にエネルギー消費の激しい臓器です。そのため、脳は常に効率よくエネルギーを使おうとしており、不要な活動を避けようとする傾向があります。
通常であれば、この「めんどくさい」という感情は一時的なものであり、休息を取ったり、気分転換をしたりすることで解消されます。しかし、体調が優れないときや精神的なストレスを抱えているとき、あるいは何らかの病気が隠れているときには、この「めんどくさい」という感覚が慢性的に続くことがあります。
倦怠感や疲労感が生じるメカニズムについては、近年の研究で少しずつ明らかになってきています。かつては運動後に体内に乳酸が蓄積することで疲労が起こると考えられていましたが、現在の研究では、脳神経系の機能や免疫システムが深く関与していることがわかってきています。特に慢性的な疲労感を訴える方の場合、脳内に炎症が起きていたり、脳や神経細胞への血流が低下していたりすることが確認されています。
つまり、長引く「めんどくさい」や倦怠感は、単なる気持ちの問題ではなく、体の中で何らかの変化が起きているサインである可能性が高いのです。
2. 見過ごせない「めんどくさい」が示す可能性のある病気
「最近ずっとだるい」「何をするのもめんどくさい」という状態が続いている場合、以下のような病気が隠れている可能性があります。
まず挙げられるのが、うつ病などの精神疾患です。うつ病は、何もやる気が出ない、悲しい気持ちが続くといった心の症状だけでなく、体のだるさや倦怠感といった身体症状も伴うことが多い病気です。特に軽症のうつ病では、体の症状のほうが目立ち、心の症状に気づきにくいことがあります。
次に考えられるのが、慢性疲労症候群という病気です。これは、日常生活に支障をきたすほどの強い疲労感が6か月以上続く状態で、十分に休んでも回復しないという特徴があります。
また、甲状腺機能低下症も見逃せません。甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する重要な役割を担っており、このホルモンの分泌が低下すると、体のさまざまな機能が低下して倦怠感や無気力感が生じます。
さらに、貧血も「めんどくさい」の原因となりえます。貧血になると全身への酸素供給が不足し、慢性的な疲労感やだるさを感じやすくなります。特に女性は月経による出血があるため、貧血になりやすい傾向があります。
これらの病気について、以下で詳しく見ていきましょう。
3. うつ病と「めんどくさい」の深い関係
うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの働きが低下することで起こる病気です。これらの神経伝達物質は、精神を安定させたり、やる気を起こさせたりする働きがあるため、減少すると無気力で憂うつな状態になってしまいます。
日本では約15人に1人が一生のうちにうつ病にかかるとされており、決して珍しい病気ではありません。しかし、うつ病にかかっている人の4分の1程度しか適切な治療を受けていないという現状があります。その理由のひとつとして、うつ病の症状が「なまけ」や「気の持ちよう」と誤解されやすいことが挙げられます。
うつ病で見られる主な症状には、心の症状と体の症状の両方があります。
心の症状としては、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、自分を責める気持ち、集中力の低下、死について繰り返し考えるなどが挙げられます。
一方、体の症状としては、不眠または過眠、食欲の低下または増加、体のだるさ、疲れやすさ、頭痛、めまい、動悸、肩こり、便秘などがあります。特に注目すべきは、体の症状がこころの症状よりも先に現れることが多いという点です。
厚生労働省の情報によると、うつ病の症状は始めのうち、こころの不調ではなく体の不調や行動の問題として現れることがほとんどです。めまいや耳鳴り、頭痛や肩こり、手足のしびれなどで内科を受診し、さまざまな検査を繰り返しても原因が見つからない場合は、うつ病の可能性を考える必要があります。
また、うつ病の症状には日内変動があり、朝の調子がいちばん悪く、午後から夕方にかけて改善してくることがよくあります。そのため、朝なかなか起きられずに学校や仕事を休んでも、午後からは元気そうに見えることがあり、周囲からは「サボっている」と誤解されることもあります。
このようなサインが2週間以上続いている場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。うつ病は適切な治療を受けることで回復できる病気です。決して怠けているわけでも、気の持ちようでなんとかなるものでもありません。
4. 慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気を知っていますか?
慢性疲労症候群は、正式には「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」と呼ばれる病気です。日常生活が著しく損なわれるほどの強い全身倦怠感や慢性的な疲労感が、休養しても回復せず6か月以上続く状態を指します。
この病気の「慢性疲労」は、「最近疲れやすくなった」「なんとなくだるい」といった日常的な疲れとはまったく異なります。健康だったときとの境目がはっきりしていて、風邪をひいたときのような明確なしんどさがある日突然始まり、十分に休息しても回復しないという特徴があります。
慢性疲労症候群の主な症状には以下のようなものがあります。
まず、激しい全身倦怠感があります。これは単なる疲労感ではなく、日常生活を送ることすら困難になるほどの強い症状です。重症の場合、朝起きることができない、椅子に座っているのもつらい、場合によっては寝たきりの状態になることもあります。
次に、発熱やリンパ節の腫れ、咽頭痛などの感染症のような症状が見られることがあります。また、頭痛や筋肉痛、関節痛、脱力感といった症状も現れます。
さらに、睡眠障害や思考力の低下、記憶力の低下、集中力の低下といった認知機能の障害も特徴的です。これらの症状は「ブレインフォグ(脳に霧がかかったような状態)」と呼ばれることもあります。
日本における慢性疲労症候群の患者数は約10万人から30万人と推定されており、決して珍しい病気ではありません。近年では、新型コロナウイルス感染症の後遺症として慢性疲労症候群と診断される方も増えており、世界中で注目が集まっています。
この病気の大きな問題点のひとつは、「慢性疲労症候群」という名前が誤解を招きやすいことです。名前から「ただの慢性疲労」「怠けているだけ」と思われがちですが、実際には脳神経系の複雑な疾患であり、患者さんは非常につらい症状と闘っています。
慢性疲労症候群の診断基準を満たすかどうかは、医師による詳細な問診と検査によって判断されます。他の病気(貧血、糖尿病、がん、甲状腺障害など)を除外した上で診断が行われるため、気になる症状がある場合は、まず内科を受診することをお勧めします。
5. 甲状腺機能低下症が引き起こす全身の不調
甲状腺は、首の前面にある蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。重さは約15gほどですが、全身の代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌する重要な役割を担っています。
甲状腺機能低下症とは、何らかの原因でこの甲状腺ホルモンの分泌が低下した状態を指します。甲状腺ホルモンは新陳代謝を促進するほか、脳や胃腸の活性化、体温の調節などさまざまな機能を持っているため、分泌量が減少すると全身にさまざまな症状が現れます。
甲状腺機能低下症の主な症状には、身体的症状と精神的症状の両方があります。
身体的症状としては、倦怠感、疲れやすさ、寒がり、体重増加、むくみ、便秘、皮膚の乾燥、脱毛、生理不順、声のかすれなどが挙げられます。
精神的症状としては、無気力感、眠気、記憶力の低下、抑うつ気分、動作緩慢、集中力の低下などがあります。これらの症状は、うつ病の症状と非常によく似ているため、甲状腺機能低下症であるにもかかわらず、うつ病と誤診されてしまうケースもあります。
日本内分泌学会の情報によると、甲状腺機能低下症の症状として一般的に見られるのは、無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘などです。ただし、軽度の甲状腺機能低下症では症状や所見に乏しいことも多く、診断が確定するまで長期間見逃されていることもあります。
甲状腺機能低下症の原因で最も多いのは、慢性甲状腺炎(橋本病)です。これは自己免疫疾患の一種で、自分の免疫システムが甲状腺を攻撃してしまうことで起こります。成人女性に多く見られ、40歳以降の女性の約1%が発症するとされています。また、健康な人でも1割程度は潜在的に甲状腺機能が低下した状態にあることがわかっています。
甲状腺機能低下症は、血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べることで診断できます。治療は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補充することが中心となります。適切な治療を受けることで、症状は改善していきます。
「最近なんだかだるい」「やる気が出ない」「寒がりになった」「体重が増えた」といった症状が気になる方は、一度血液検査を受けてみることをお勧めします。
6. 貧血による「隠れ疲労」に要注意
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態を指します。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ働きがあるため、その量が減少すると体が酸素不足の状態になり、さまざまな症状が現れます。
貧血の中で最も多いのが、鉄欠乏性貧血です。貧血全体の80%から90%を占めるとされています。ヘモグロビンを作るには鉄分が必要ですが、何らかの原因で体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンをうまく合成できなくなります。
鉄欠乏性貧血の主な症状として、だるさ、疲れやすさ、息切れ、動悸、めまい、頭痛、顔色の悪さなどが挙げられます。階段を上ったり、少し早歩きをしたりするだけで息が切れる、以前より疲れやすくなった、という方は貧血の可能性があります。
特に女性は、月経による出血があるため、男性に比べて鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。月経のある女性の5人に1人は貧血があり、さらに多くの人が「非貧血性鉄欠乏状態」、いわゆる「隠れ貧血」の状態にあるとも言われています。
隠れ貧血とは、ヘモグロビン値は正常範囲内にあるものの、体内の鉄分の貯蔵量が不足している状態のことです。この状態でも、疲れやすい、肌が荒れる、爪が割れやすいなどの症状が現れることがあります。健康診断で「貧血なし」と言われていても、鉄分不足の症状に心当たりがある場合は、詳しい血液検査を受けることをお勧めします。
貧血は放置すると、長期的にはより深刻な健康問題につながる可能性があります。貧血の状態が続くと、正常よりも多い血液量を全身に送り出さなければならないため、心臓に負担がかかります。長年の貧血放置により、心不全などの循環器系の問題に至るケースも報告されています。
また、貧血の背景には、消化管出血(胃潰瘍や大腸がんなど)や子宮筋腫などの病気が隠れていることもあります。貧血の治療だけでなく、その原因を特定することも重要です。
貧血の治療は、鉄分を補充することで改善します。医師の指導のもとで鉄剤を内服することが多く、1〜3か月程度で貧血は改善していきます。ただし、貧血が改善した後もすぐに治療を止めてしまうと、また貧血になりやすいため、体内に十分な鉄分が貯蔵されるまで数か月は治療を継続する必要があります。
7. 睡眠障害と倦怠感の意外なつながり
「めんどくさい」「だるい」という症状と睡眠の質には、深い関係があります。十分な睡眠時間を取っているはずなのに疲れが取れない、朝起きたときから体がだるいという場合、睡眠の質に問題がある可能性があります。
睡眠は、体と脳を休息させ、日中に蓄積した疲労を回復させるために不可欠なものです。しかし、睡眠の質が低下していると、長時間寝ても十分な回復効果が得られません。
睡眠の質を低下させる要因には、さまざまなものがあります。
まず、睡眠時無呼吸症候群があります。これは、睡眠中に呼吸が何度も止まってしまう病気で、いびきがひどい、日中の眠気が強い、朝起きたときに頭痛がするなどの症状があります。睡眠中に呼吸が止まることで体が十分に休まらず、慢性的な疲労感につながります。
次に、不眠症も睡眠の質を低下させます。なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまうなどの症状があると、睡眠による疲労回復効果が十分に得られません。
また、生活習慣も睡眠の質に大きく影響します。就寝前のスマートフォンやパソコンの使用、不規則な就寝時間、カフェインやアルコールの摂取、運動不足などは、いずれも睡眠の質を低下させる要因となります。
ストレスや不安も睡眠の質に影響を与えます。心配事や悩みがあると、なかなか眠れなかったり、眠りが浅くなったりします。このような状態が続くと、自律神経のバランスが乱れ、日中の疲労感やだるさにつながります。
良質な睡眠を得るためには、規則正しい生活リズムを心がけること、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控えること、適度な運動を行うこと、寝室の環境を整えることなどが効果的です。
ただし、生活習慣を改善しても睡眠の問題が解決しない場合は、睡眠障害の可能性があります。その場合は、医療機関を受診して適切な検査と治療を受けることをお勧めします。
8. 「めんどくさい」で受診を先延ばしにする危険性
「病院に行くのがめんどくさい」「待ち時間が長いから行きたくない」「大したことないだろうから」。このような理由で医療機関への受診を先延ばしにしている方は少なくありません。しかし、受診を先延ばしにすることには、さまざまな健康上のリスクが伴います。
厚生労働省も「過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性がある」と注意を呼びかけています。
まず、病気の早期発見・早期治療の機会を逃してしまうリスクがあります。多くの病気は、早期に発見して治療を開始することで、より良い予後が期待できます。特にがんなどは、早期であればあるほど治療の選択肢が広がり、完治の可能性も高まります。自覚症状が現れにくい病気も少なくなく、定期的な健診やがん検診を受けることが重要です。
次に、症状が悪化してから受診することで、治療が長期化・複雑化するリスクがあります。初期段階であれば簡単な治療で済んだものが、進行してしまうと入院が必要になったり、手術が必要になったりすることもあります。結果的に、時間的にも経済的にも大きな負担が生じることになります。
また、「めんどくさい」と感じること自体が病気のサインである可能性があります。前述のように、うつ病や慢性疲労症候群、甲状腺機能低下症、貧血などの病気では、倦怠感や無気力感が主な症状として現れます。「病院に行くのがめんどくさい」という気持ちの背景に、これらの病気が隠れている可能性があるのです。
さらに、生活習慣病などの慢性疾患を放置することで、合併症のリスクが高まります。例えば、高血圧や糖尿病を放置すると、心臓病や脳卒中、腎臓病などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
厚生労働省の調査によると、健康診断で異常所見があった人の割合は約59%に達しています。多くの人が何らかの健康上の問題を抱えている可能性があるにもかかわらず、適切なフォローアップを受けていないケースも少なくありません。
「めんどくさい」という気持ちはよくわかりますが、自分の健康を守るためには、定期的な健診を受け、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。
9. 日常生活で実践できる「めんどくさい」対策
「めんどくさい」という気持ちを軽減し、日々の活力を取り戻すために、日常生活で実践できるいくつかの対策をご紹介します。
睡眠の質を向上させる
良質な睡眠は、疲労回復の基本です。毎日同じ時間に就寝・起床する習慣をつけ、寝室の環境を整えましょう。就寝前の1〜2時間はスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる時間を設けることも効果的です。また、就寝前のカフェインやアルコールの摂取は控えめにしましょう。
バランスの良い食事を心がける
体を動かすエネルギーは、食事から得られます。偏った食事や不規則な食生活は、疲労感の原因となります。特に、鉄分、ビタミンB群、たんぱく質などは、エネルギー代謝や血液の生成に重要な栄養素です。レバーや赤身の肉、魚、卵、豆類、緑黄色野菜などをバランスよく摂取するよう心がけましょう。
適度な運動を取り入れる
運動は疲労を増やすように思えるかもしれませんが、適度な運動は逆に疲労回復に効果的です。運動によって血行が促進され、代謝が活発になります。また、運動後は睡眠の質が向上することも知られています。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
ストレスを適切に管理する
慢性的なストレスは、心身の疲労を蓄積させます。ストレスの原因を把握し、できる範囲で解消や軽減を図りましょう。趣味の時間を持つ、信頼できる人に話を聞いてもらう、リラクゼーション法を実践するなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
こまめに休息を取る
疲労感があるときに無理に活動を続けると、さらに疲労が蓄積し、症状が悪化する恐れがあります。疲れを感じたら、こまめに休息を取ることを心がけましょう。短時間でも、楽な姿勢で体を休めることで、疲労の回復が促されます。
日光を浴びる
朝起きたら、まずカーテンを開けて日光を浴びましょう。日光を浴びることで体内時計がリセットされ、生活リズムが整います。また、日光はセロトニンの分泌を促進する効果もあり、気分の改善にも役立ちます。
小さな目標から始める
「めんどくさい」と感じているときに大きな目標を立てると、かえってやる気をなくしてしまうことがあります。まずは小さな目標から始め、達成感を積み重ねることで、徐々に活動量を増やしていきましょう。
これらの対策を実践しても「めんどくさい」「だるい」という症状が改善しない場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。その場合は、医療機関を受診して、原因を調べてもらうことをお勧めします。
10. 医療機関を受診すべきタイミングの見極め方
「めんどくさい」「だるい」という症状があるとき、どのようなタイミングで医療機関を受診すべきでしょうか。以下のような状態が見られる場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
症状が2週間以上続いている場合
一時的な疲労であれば、休息を取ることで数日以内に回復することがほとんどです。しかし、十分に休んでいるにもかかわらず、倦怠感やだるさが2週間以上続いている場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
日常生活に支障をきたしている場合
仕事や家事、趣味など、今まで普通にできていたことができなくなった、または非常につらく感じるようになった場合は、注意が必要です。特に、朝起きられない、会社や学校に行けないなど、社会生活に影響が出ている場合は、早めの受診をお勧めします。
他の症状を伴っている場合
倦怠感やだるさに加えて、以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
発熱が続く、体重が急激に減少した、または増加した、動悸や息切れがひどい、めまいや立ちくらみが頻繁に起こる、頭痛が続く、不眠または過眠がある、食欲がない、または異常に食欲がある、気分の落ち込みや不安感が強い、これらの症状は、うつ病や甲状腺機能低下症、貧血、その他の病気のサインである可能性があります。
「いつもと違う」と感じる場合
自分自身の体調について、「何かおかしい」「いつもと違う」と感じる場合は、その直感を大切にしてください。たとえ具体的な症状がうまく説明できなくても、「なんとなく調子が悪い」という状態が続くのであれば、医療機関で相談することをお勧めします。
受診する際は、まず内科やかかりつけ医を受診するのがよいでしょう。必要に応じて、血液検査などを行い、貧血や甲状腺機能異常、糖尿病などの身体的な病気がないかを確認してもらえます。身体的な原因が見つからない場合や、心の症状が強い場合は、精神科や心療内科への受診を検討することになります。

11. まとめ:自分の体の声に耳を傾けることの大切さ
本記事では、「めんどくさい」という感情の正体や、その背景に隠れている可能性のある病気について解説してきました。
「めんどくさい」「だるい」「やる気が出ない」という感情は、誰もが経験するものです。しかし、これらの症状が長く続いたり、以前よりも強く感じるようになったりした場合、それは体や心からの重要なメッセージである可能性があります。
うつ病、慢性疲労症候群、甲状腺機能低下症、貧血など、倦怠感や無気力感を引き起こす病気はさまざまです。これらの病気は、適切な診断と治療を受けることで改善が期待できます。決して「気のせい」「怠けているだけ」と自分を責める必要はありません。
大切なのは、自分の体の声に耳を傾け、異変を感じたら早めに対処することです。生活習慣の改善で対処できる場合もあれば、医療機関での治療が必要な場合もあります。判断に迷ったときは、専門家に相談することをためらわないでください。
また、「病院に行くのがめんどくさい」という気持ちから受診を先延ばしにすることは、健康上のリスクを高める可能性があります。定期的な健診を受け、気になる症状があれば早めに医療機関を受診する習慣をつけましょう。
私たちの体は、さまざまな形でメッセージを送っています。「めんどくさい」という感情も、そのメッセージのひとつかもしれません。そのサインを見逃さず、自分自身の健康を大切にしていただければ幸いです。
何か気になる症状がある方は、どうぞお気軽に医療機関にご相談ください。
参考文献
- 体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- うつ病|こころの病気について知る|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
- うつ病を防ぐ:ご存知ですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(厚生労働省)
- うつ病を知る|厚生労働省
- 甲状腺機能低下症|一般の皆様へ|日本内分泌学会
- 甲状腺の病気について|内分泌・代謝内科|独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
- 貧血:国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ
- コロナ禍でも必要な受診を|厚生労働省
- あなどってはいけない疲労・倦怠感 | サワイ健康推進課
- 慢性疲労症候群とは?症状や診断基準、治し方を解説|大正製薬
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務