蕁麻疹の薬について知っておきたいこと|症状に合わせた治療薬の選び方

突然、皮膚に赤い発疹ができて強いかゆみに悩まされる蕁麻疹。多くの方が一度は経験したことがある症状ではないでしょうか。蕁麻疹は適切な薬による治療で症状をコントロールできる疾患です。この記事では、蕁麻疹の治療に使われる薬について、その種類や特徴、使い方のポイントまで、皮膚科医の視点から詳しく解説します。

目次

  1. 蕁麻疹とは
  2. 蕁麻疹の原因とメカニズム
  3. 蕁麻疹治療の基本的な考え方
  4. 抗ヒスタミン薬:蕁麻疹治療の中心的な薬
  5. 第一世代抗ヒスタミン薬の特徴
  6. 第二世代抗ヒスタミン薬の特徴
  7. その他の治療薬
  8. 薬の使い方と注意点
  9. 蕁麻疹の種類別の治療アプローチ
  10. 日常生活で気をつけること
  11. よくある質問
  12. まとめ

1. 蕁麻疹とは

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚に突然赤いふくらみ(膨疹)が現れ、強いかゆみを伴う症状です。「urticaria(アーティカリア)」という医学用語でも呼ばれます。膨疹は蚊に刺されたような盛り上がりで、数ミリから数センチ大の大きさになることもあります。

蕁麻疹の特徴的な点は、個々の膨疹が比較的短時間(通常24時間以内)で消失することです。ただし、次々と新しい膨疹が出現することで、全体としては症状が長く続くこともあります。

蕁麻疹の頻度

蕁麻疹は非常に一般的な疾患で、日本人の約15〜20%が一生のうちに一度は経験すると言われています。特に急性蕁麻疹は誰にでも起こりうる症状です。年齢や性別を問わず発症しますが、慢性蕁麻疹は女性にやや多い傾向があります。

急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹

蕁麻疹は発症からの期間によって分類されます。

急性蕁麻疹:発症から6週間以内のもの。食物や薬剤、感染症などが原因となることが多く、原因が特定できる場合も少なくありません。適切な治療により比較的早期に改善することが多いです。

慢性蕁麻疹:6週間以上症状が続くもの。原因の特定が難しいことが多く、特発性慢性蕁麻疹と呼ばれます。毎日症状が出る場合や、間欠的に症状が現れる場合があります。

2. 蕁麻疹の原因とメカニズム

蕁麻疹を理解するには、その発症メカニズムを知ることが重要です。薬の効果を理解する上でも役立ちます。

ヒスタミンの役割

蕁麻疹の症状は、主に「ヒスタミン」という物質によって引き起こされます。皮膚には肥満細胞(マスト細胞)という細胞があり、この細胞からヒスタミンが放出されることで蕁麻疹の症状が現れます。

ヒスタミンが放出されると、以下のような変化が起こります。

  • 血管の拡張:皮膚が赤くなります
  • 血管透過性の亢進:血管から液体成分が漏れ出し、皮膚が膨らみます
  • 神経への刺激:強いかゆみを感じます

蕁麻疹を引き起こす要因

蕁麻疹の原因は多岐にわたります。

アレルギー性の原因

  • 食物(卵、牛乳、小麦、エビ、カニなど)
  • 薬剤(抗生物質、解熱鎮痛薬など)
  • 昆虫刺傷

非アレルギー性の原因

  • 物理的刺激(圧迫、摩擦、寒冷、温熱、日光など)
  • 発汗、運動
  • 感染症(ウイルス、細菌)
  • ストレス
  • 疲労

慢性蕁麻疹の場合、約70%は原因が特定できない特発性です。近年の研究では、自己免疫的なメカニズムが関与している可能性も指摘されています。

3. 蕁麻疹治療の基本的な考え方

蕁麻疹の治療は、症状の種類や重症度に応じて段階的に行われます。

治療の目標

蕁麻疹治療の主な目標は以下の通りです。

  1. 症状の完全なコントロール:膨疹やかゆみをなくすこと
  2. 日常生活への影響を最小限にする:仕事や学業、睡眠に支障がないようにすること
  3. 副作用を最小限にする:効果と安全性のバランスを考慮すること

日本皮膚科学会のガイドライン

日本皮膚科学会が作成した「蕁麻疹診療ガイドライン」では、蕁麻疹の標準的な治療法が示されています。このガイドラインに基づいた治療により、多くの患者さんで症状のコントロールが可能となっています。

治療の基本は、原因・悪化因子の除去と薬物療法です。原因が特定できる場合はその除去が最優先ですが、慢性蕁麻疹では原因不明のことが多いため、薬物療法が中心となります。

4. 抗ヒスタミン薬:蕁麻疹治療の中心的な薬

蕁麻疹治療において最も重要な薬が「抗ヒスタミン薬」です。ヒスタミンの働きを抑えることで、蕁麻疹の症状を改善します。

抗ヒスタミン薬の作用メカニズム

抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが結合する受容体(H1受容体)をブロックすることで効果を発揮します。具体的には以下のような効果があります。

  • かゆみの軽減
  • 膨疹(ふくらみ)の抑制
  • 赤みの改善

第一世代と第二世代の違い

抗ヒスタミン薬は、開発された時期や特性によって第一世代と第二世代に分類されます。それぞれに特徴があり、患者さんの症状や生活スタイルに応じて使い分けられます。

5. 第一世代抗ヒスタミン薬の特徴

第一世代抗ヒスタミン薬は古くから使用されている薬剤です。

主な第一世代抗ヒスタミン薬

  • ジフェンヒドラミン(商品名:レスタミンなど)
  • クロルフェニラミン(商品名:ポララミンなど)
  • ヒドロキシジン(商品名:アタラックスなど)
  • シプロヘプタジン(商品名:ペリアクチンなど)

第一世代の特徴

利点

  • 効果発現が比較的早い
  • 強い鎮静作用により、かゆみで眠れない場合に有効
  • 長年の使用実績があり安全性が確立している
  • 比較的安価

欠点

  • 眠気が強く出やすい
  • 口の渇き、便秘などの副作用
  • 集中力や判断力の低下
  • 1日2〜3回の服用が必要

使用上の注意

第一世代抗ヒスタミン薬は眠気が強いため、以下の点に注意が必要です。

  • 自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避ける
  • 日中の活動に支障が出る可能性がある
  • アルコールとの併用は避ける(眠気が増強される)

近年では、眠気などの副作用が少ない第二世代抗ヒスタミン薬が第一選択となることが多いですが、夜間のかゆみが強い場合など、鎮静作用を利用したい場合には就寝前に使用することがあります。

6. 第二世代抗ヒスタミン薬の特徴

第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代の欠点を改善するために開発された薬剤です。現在の蕁麻疹治療の主流となっています。

主な第二世代抗ヒスタミン薬

  • フェキソフェナジン(商品名:アレグラなど)
  • ロラタジン(商品名:クラリチンなど)
  • セチリジン(商品名:ジルテックなど)
  • レボセチリジン(商品名:ザイザルなど)
  • エピナスチン(商品名:アレジオンなど)
  • オロパタジン(商品名:アレロックなど)
  • ベポタスチン(商品名:タリオンなど)
  • ビラスチン(商品名:ビラノアなど)
  • デスロラタジン(商品名:デザレックスなど)
  • ルパタジン(商品名:ルパフィンなど)

第二世代の特徴

利点

  • 眠気などの副作用が少ない(個人差はあります)
  • 脳への移行が少なく、認知機能への影響が小さい
  • 1日1回の服用で効果が持続する薬が多い
  • 効果が比較的マイルドで安定している

欠点

  • 第一世代に比べてやや高価
  • 効果発現までに時間がかかることがある
  • 薬剤によっては食事の影響を受ける

日本皮膚科学会の推奨

日本皮膚科学会のガイドラインでは、蕁麻疹の第一選択薬として非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬を推奨しています。これは、効果と副作用のバランスが優れているためです。

個々の薬剤の特性

第二世代抗ヒスタミン薬の中でも、それぞれ特性が異なります。

フェキソフェナジン

  • 眠気が最も少ない部類
  • 自動車運転への制限がない
  • 空腹時服用が推奨される

ロラタジン

  • 眠気が少ない
  • 1日1回で効果が持続
  • 食事の影響を受けにくい

セチリジン・レボセチリジン

  • 効果が比較的強い
  • やや眠気が出やすい
  • 腎機能低下時は用量調整が必要

ビラスチン

  • 眠気が少ない
  • 空腹時服用が必要(食事の影響を受ける)
  • 比較的新しい薬剤

医師は、患者さんの症状の強さ、生活スタイル、他の持病や服用している薬などを考慮して、最適な薬剤を選択します。

7. その他の治療薬

抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られない場合、以下のような治療薬が追加されることがあります。

ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)

使用される場合

  • 急性蕁麻疹で症状が非常に強い場合
  • 血管性浮腫(唇や目の周りの腫れ)を伴う場合
  • 抗ヒスタミン薬だけでは症状がコントロールできない場合

特徴

  • 強力な抗炎症作用がある
  • 速やかに症状を改善できる
  • 短期間の使用が原則(通常3〜7日程度)
  • 長期使用は副作用のリスクがある

主な薬剤

  • プレドニゾロン(内服)
  • ベタメタゾン(注射)

ステロイド薬は効果が高い一方で、長期使用により感染症のリスク増加、骨粗鬆症、糖尿病の悪化などの副作用があるため、慢性蕁麻疹の長期治療には適していません。

抗ロイコトリエン薬

特徴

  • 喘息の治療薬としても使用される
  • アレルギー反応を引き起こす別の物質(ロイコトリエン)を抑制
  • 抗ヒスタミン薬と併用することで効果を高める

主な薬剤

  • モンテルカスト(商品名:シングレア、キプレスなど)
  • プランルカスト(商品名:オノンなど)

特にアスピリン喘息を合併する蕁麻疹や、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による蕁麻疹で有効性が報告されています。

H2受容体拮抗薬

特徴

  • 本来は胃酸分泌を抑える薬
  • 皮膚にもH2受容体が存在し、抗ヒスタミン作用を補完
  • 抗ヒスタミン薬(H1拮抗薬)と併用することがある

主な薬剤

  • ファモチジン(商品名:ガスターなど)
  • ラニチジン

免疫抑制薬(シクロスポリン)

使用される場合

  • 重症の慢性蕁麻疹で他の治療が無効な場合
  • 自己免疫性蕁麻疹が疑われる場合

特徴

  • 免疫系を抑制することで症状を改善
  • 効果は高いが、副作用のモニタリングが必要
  • 定期的な血液検査が必要
  • 専門医による管理下で使用

生物学的製剤(オマリズマブ)

特徴

  • 比較的新しい治療法
  • 抗IgE抗体という特殊な薬剤
  • 注射による投与(月1回)
  • 抗ヒスタミン薬で効果不十分な慢性蕁麻疹に使用

商品名:ゾレア

適応

  • 既存治療で効果不十分な慢性特発性蕁麻疹
  • 12歳以上が対象

オマリズマブは、従来の治療で改善しなかった難治性の慢性蕁麻疹に対して高い有効性が示されています。ただし、高額な治療となるため、医療費助成制度の利用なども検討します。

8. 薬の使い方と注意点

蕁麻疹の薬を効果的に使用するためのポイントを解説します。

抗ヒスタミン薬の服用方法

継続的な服用が重要: 蕁麻疹の治療では、症状が出たときだけ薬を飲むのではなく、毎日継続して服用することが基本です。特に慢性蕁麻疹では、症状が出る前から予防的に薬を服用することで、症状の出現を抑えることができます。

服用のタイミング

  • 1日1回タイプ:朝または夕食後など、決まった時間に服用
  • 1日2回タイプ:朝夕食後など
  • 食事の影響を受ける薬剤:空腹時に服用(ビラスチン、フェキソフェナジンなど)

飲み忘れた場合: 気づいた時点で早めに服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばして次回から通常通り服用します。2回分を一度に服用してはいけません。

効果の判定

抗ヒスタミン薬の効果は、通常1〜2週間の継続服用で判定します。すぐに効果が現れない場合でも、自己判断で中止せず、医師の指示に従って継続することが大切です。

効果が不十分な場合、医師は以下のような対応を検討します。

  • 薬剤の変更
  • 用量の増量(通常量の2倍まで増量可能な場合があります)
  • 他の薬剤との併用

副作用への対応

眠気が出た場合

  • 自動車運転や危険な作業は避ける
  • 就寝前の服用に変更できないか医師に相談
  • 別の薬剤への変更を検討

口の渇きがある場合

  • こまめに水分を取る
  • 無糖のガムやキャンディーを利用
  • 症状が強い場合は医師に相談

その他の副作用: 頭痛、めまい、吐き気、便秘などが現れることがあります。症状が続く場合は医師に相談してください。

妊娠・授乳中の服用

妊娠中や授乳中の蕁麻疹治療は、慎重な判断が必要です。

妊娠中

  • 一部の抗ヒスタミン薬は妊娠中も使用可能とされています
  • 特に妊娠初期は薬の影響を考慮する必要があります
  • 必ず医師に妊娠の可能性を伝えてください

授乳中

  • 多くの抗ヒスタミン薬は母乳に移行しますが、一般的に使用可能とされているものもあります
  • 薬の種類や赤ちゃんの状態を考慮して判断します

子どもへの使用

小児の蕁麻疹治療でも抗ヒスタミン薬が使用されます。

  • 年齢や体重に応じた適切な用量調整が必要
  • ドライシロップや細粒などの剤形が利用可能
  • 第二世代抗ヒスタミン薬が推奨されます
  • 市販薬を使用する前に必ず医師や薬剤師に相談

高齢者への使用

高齢者では以下の点に注意が必要です。

  • 腎機能や肝機能の低下により、薬の代謝が遅くなることがある
  • 副作用が出やすい傾向
  • 他の薬との飲み合わせに注意
  • 少量から開始することが多い

他の薬との相互作用

抗ヒスタミン薬は、他の薬との飲み合わせに注意が必要な場合があります。

特に注意が必要な組み合わせ

  • 睡眠薬や抗不安薬:眠気が増強される
  • アルコール:中枢神経抑制作用が強まる
  • 一部の抗真菌薬や抗生物質:薬の血中濃度が上昇する可能性
  • グレープフルーツジュース:一部の薬で相互作用あり

必ず、服用中の薬やサプリメント、健康食品について医師・薬剤師に伝えてください。

9. 蕁麻疹の種類別の治療アプローチ

蕁麻疹にはさまざまなタイプがあり、それぞれに適した治療法があります。

特発性蕁麻疹

最も一般的なタイプで、明らかな原因が特定できない蕁麻疹です。

治療の基本

  • 第二世代抗ヒスタミン薬の継続服用
  • 症状が落ち着いたら徐々に減量
  • 症状がなくなっても数か月は服用を続けることが多い

物理性蕁麻疹

物理的な刺激によって起こる蕁麻疹です。

機械性蕁麻疹(皮膚描記症)

  • 皮膚を引っかくと数分後に膨疹が出現
  • 抗ヒスタミン薬が有効
  • 強い摩擦や圧迫を避ける

寒冷蕁麻疹

  • 冷たい刺激で膨疹が出現
  • 抗ヒスタミン薬の予防的服用
  • 急激な温度変化を避ける
  • 冷水での水泳は危険なため注意

日光蕁麻疹

  • 日光に当たった部分に膨疹が出現
  • 抗ヒスタミン薬と遮光対策
  • 日焼け止めの使用

温熱蕁麻疹

  • 温かい刺激で膨疹が出現
  • 抗ヒスタミン薬
  • 過度な温熱刺激を避ける

遅延圧蕁麻疹

  • 持続的な圧迫後、数時間してから膨疹が出現
  • 抗ヒスタミン薬の効果が弱いことがある
  • 圧迫を避ける工夫が必要

コリン性蕁麻疹

運動や入浴、精神的緊張などで体温が上昇したときに、小さな膨疹が多数出現するタイプです。

特徴

  • 1〜4mm程度の小さな膨疹
  • 主に体幹、腕、脚に出現
  • 若年者に多い

治療

  • 抗ヒスタミン薬(特にヒドロキシジンが有効とされる)
  • 徐々に運動に慣れていく
  • ストレス管理

アレルギー性蕁麻疹

特定の原因物質(アレルゲン)により起こる蕁麻疹です。

治療の基本

  • 原因物質の除去・回避が最も重要
  • 抗ヒスタミン薬
  • アナフィラキシーのリスクがある場合はエピペンの携帯

食物アレルギー

  • 原因食物の完全除去
  • 栄養指導
  • 必要に応じてアレルギー検査

薬剤性蕁麻疹

  • 原因薬剤の中止
  • 今後の投与禁止
  • お薬手帳への記載

10. 日常生活で気をつけること

薬による治療と並行して、日常生活での工夫も蕁麻疹の管理には重要です。

悪化因子を避ける

以下のような因子が蕁麻疹を悪化させることがあります。

ストレスと疲労

  • 十分な睡眠を確保
  • 適度な休息
  • リラックスできる時間を持つ

体温の急激な変化

  • 熱い風呂を避け、ぬるめのお湯にする
  • 急激な温度変化を避ける
  • エアコンの設定温度に注意

刺激物の摂取

  • アルコールは控えめに
  • 香辛料の過剰摂取を避ける
  • カフェインの取りすぎに注意

皮膚への刺激

  • きつい衣服を避ける
  • 化学繊維より綿などの天然素材を選ぶ
  • 激しく掻かない
  • 適度な保湿を心がける

食生活の工夫

特定の食物が原因でない場合でも、以下の点に注意します。

ヒスタミンを多く含む食品

  • 発酵食品(チーズ、ワイン、漬物など)
  • 古い魚(特に青魚)
  • トマト、ほうれん草

これらが必ずしも蕁麻疹を悪化させるわけではありませんが、症状が強い時期は控えめにすることを検討します。

新鮮な食材を使用

  • 鮮度の落ちた食品はヒスタミンが増加
  • 適切な保存と調理

スキンケア

皮膚を健康に保つことも大切です。

  • 低刺激性の石鹸やボディソープを使用
  • 入浴後の保湿
  • 爪を短く切る(掻き傷を防ぐため)
  • 適度な室温・湿度の維持

記録をつける

症状の記録をつけることで、悪化因子の特定や治療効果の判定に役立ちます。

記録する内容

  • 膨疹の出現時刻と消失時刻
  • かゆみの程度(10段階評価など)
  • 食事内容
  • 活動内容
  • ストレスの有無
  • 薬の服用状況

スマートフォンのアプリなどを活用するのも良いでしょう。

11. よくある質問

Q1. 蕁麻疹の薬はいつまで飲み続ける必要がありますか?

A1. 急性蕁麻疹の場合は、通常数日から数週間で治療が終了します。慢性蕁麻疹の場合は、症状が完全に消失してからも数か月間は服用を継続することが推奨されます。自己判断で中止すると再発しやすいため、医師と相談しながら徐々に減量していきます。一般的には、症状が安定してから3〜6か月程度は服用を続け、その後徐々に減量や中止を試みます。

Q2. 市販の蕁麻疹薬でも効果はありますか?

A2. 薬局やドラッグストアで購入できる抗ヒスタミン薬もあり、軽症の場合は効果が期待できます。ただし、市販薬の多くは第一世代抗ヒスタミン薬で眠気が強く出ることがあります。また、症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関を受診して適切な診断と処方を受けることをお勧めします。特に慢性蕁麻疹の場合は、医師の管理下での治療が望ましいです。

Q3. 抗ヒスタミン薬を飲んでも効果がない場合はどうすればいいですか?

A3. 抗ヒスタミン薬の効果判定には1〜2週間かかることがあります。それでも効果が不十分な場合、医師は用量の増量や別の薬剤への変更、他の薬との併用などを検討します。自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談してください。難治性の場合は、生物学的製剤などの選択肢もあります。

Q4. 蕁麻疹は完治しますか?

A4. 急性蕁麻疹の多くは完治します。慢性蕁麻疹の場合、数か月から数年で自然に軽快することも多いですが、長期にわたることもあります。適切な治療により、症状をコントロールしながら日常生活を送ることは十分可能です。根気強く治療を続けることが大切です。

Q5. 薬を飲み続けると体に悪影響はありませんか?

A5. 第二世代抗ヒスタミン薬は長期服用の安全性が確立されており、適切に使用すれば大きな問題は起こりにくいです。定期的に医師の診察を受け、必要に応じて血液検査などでモニタリングを行います。ステロイド薬の長期使用には注意が必要ですが、抗ヒスタミン薬の長期使用は比較的安全とされています。

Q6. 妊娠を希望していますが、薬は中止すべきですか?

A6. 妊娠中でも使用可能な抗ヒスタミン薬があります。妊娠を希望している、または妊娠の可能性がある場合は、必ず医師に伝えてください。妊娠時期に応じて適切な薬剤を選択します。自己判断での中止は症状悪化につながる可能性があるため、医師と相談しながら決めることが重要です。

Q7. 蕁麻疹の薬で眠くなりますが、運転はできますか?

A7. 抗ヒスタミン薬の種類によって眠気の程度が異なります。第一世代抗ヒスタミン薬や一部の第二世代抗ヒスタミン薬では、眠気や集中力低下により自動車運転が禁止または注意喚起されています。フェキソフェナジンなど、運転への影響が少ない薬剤もあります。運転の必要がある場合は、必ず医師にその旨を伝え、適切な薬剤を選択してもらってください。

Q8. 他の病気の薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

A8. 多くの場合、抗ヒスタミン薬は他の薬と併用可能ですが、一部に相互作用がある組み合わせもあります。必ず、服用中の全ての薬(処方薬、市販薬、サプリメントを含む)を医師・薬剤師に伝えてください。お薬手帳の活用も有効です。

12. まとめ

蕁麻疹の治療において、薬物療法は症状をコントロールする上で重要な役割を果たします。本記事の要点をまとめます。

治療薬の基本

  • 抗ヒスタミン薬が治療の中心
  • 第二世代抗ヒスタミン薬が第一選択として推奨される
  • 症状が強い場合や効果不十分な場合は、他の薬剤の追加を検討

効果的な薬の使い方

  • 毎日継続して服用することが重要
  • 効果判定には1〜2週間必要
  • 自己判断での中止は避ける
  • 副作用が気になる場合は医師に相談

日常生活での工夫

  • 悪化因子の回避
  • ストレス管理
  • 適切なスキンケア
  • 症状の記録

医療機関受診のタイミング

以下のような場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 蕁麻疹の症状が初めて出現した場合
  • 市販薬を使用しても改善しない場合
  • 症状が悪化する場合
  • 呼吸困難や飲み込みにくさを感じる場合
  • 強い腹痛や嘔吐を伴う場合

蕁麻疹は適切な治療により、多くの場合でコントロール可能な疾患です。症状に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門医に相談することをお勧めします。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン作成委員会「蕁麻疹診療ガイドライン2018」日本皮膚科学会雑誌 128巻1号 p.2503-2624(2018年) https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/urticaria2018.pdf
  2. 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a04.pdf
  3. 日本アレルギー学会「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン」 https://www.jsaweb.jp/modules/guideline/
  4. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療用医薬品の添付文書情報」 https://www.pmda.go.jp/
  5. 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」
  6. 秀道広「慢性蕁麻疹の診断と治療」日本皮膚科学会雑誌(各年版)

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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