はじめに
近年、自宅で手軽にムダ毛のケアができる「家庭用脱毛器」が注目を集めています。ドラッグストアや家電量販店、オンラインショップなどで様々な製品が販売され、多くの方が購入を検討されているのではないでしょうか。
しかし、「本当に効果があるの?」「医療脱毛とどう違うの?」「安全性は大丈夫?」といった疑問を持たれる方も少なくありません。本記事では、皮膚科医の視点から、家庭用脱毛器について正確で分かりやすい情報をお届けします。

家庭用脱毛器とは
家庭用脱毛器とは、自宅で使用できるムダ毛処理用の美容機器です。光やレーザーのエネルギーを利用して毛根にアプローチし、継続的に使用することで減毛・抑毛効果を得ることを目的としています。
家庭用脱毛器の位置づけ
医薬品医療機器等法(旧薬事法)において、家庭用脱毛器は「美容機器」として分類されており、「脱毛」ではなく「除毛」や「減毛」を目的とした製品として販売されています。これは、永久脱毛が医療行為とされているためです。
厚生労働省の見解によれば、毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊する行為は医療行為に該当するとされています。そのため、家庭用脱毛器は医療機器ほどの高出力を出すことができず、毛根を完全に破壊するのではなく、毛の成長を遅らせたり細くしたりする効果を目指して設計されています。
家庭用脱毛器の種類と仕組み
家庭用脱毛器には、主に以下の種類があります。
1. 光脱毛器(IPL方式)
最も一般的なタイプで、IPL(Intense Pulsed Light:インテンス・パルス・ライト)という広範囲の波長を持つ光を照射します。
仕組み
- 黒い色素(メラニン)に反応する光を照射
- 毛のメラニンが光を吸収し、熱に変換される
- 熱が毛根周辺に伝わり、毛の成長を抑制する
特徴
- 照射面積が広く、短時間で広範囲の処理が可能
- 痛みが比較的少ない
- 肌への負担が少ない
2. レーザー式脱毛器
医療用レーザーと同じ原理ですが、家庭用は出力が大幅に抑えられています。単一波長のレーザー光を使用します。
仕組み
- 特定の波長のレーザー光を照射
- メラニンに選択的に吸収される
- より集中的に毛根にエネルギーを届ける
特徴
- ピンポイントで照射できる
- 濃い毛に効果的
- 光脱毛器よりやや痛みを感じやすい場合がある
- 照射面積が狭いため、処理に時間がかかる
3. サーミコン式(熱線式)
熱線で毛を焼き切る方式です。厳密には「脱毛器」ではなく「除毛器」に分類されます。
仕組み
- 熱線が毛に接触し、高温で焼き切る
- 毛根には作用しない
特徴
- 即効性がある
- 毛根には作用しないため、すぐに毛が生えてくる
- 繰り返し使用する必要がある
4. ローラー式(抜く方式)
電動で毛を挟んで抜き取る方式です。電動毛抜きとも呼ばれます。
特徴
- 物理的に毛を抜く
- 痛みを伴う
- 毛根は残るため、また生えてくる
- 肌への負担が大きい
本記事では、主に光脱毛器とレーザー式脱毛器について詳しく解説していきます。
家庭用脱毛器のメリット
1. 自宅で好きな時間に処理できる
最大のメリットは、いつでも自分の都合に合わせて使用できることです。サロンやクリニックに通う必要がないため、予約の手間や待ち時間がありません。
2. コストパフォーマンスが良い
初期投資は必要ですが、長期的に見ると医療脱毛やエステ脱毛よりも費用を抑えられる可能性があります。一度購入すれば、家族で共有することも可能です(衛生面に注意が必要ですが)。
費用比較の目安
- 家庭用脱毛器:2万円〜10万円程度(一度の購入)
- 医療脱毛:全身5回で20万円〜40万円程度
- エステ脱毛:全身6回で10万円〜20万円程度
3. 人に見られる恥ずかしさがない
デリケートゾーンなど、人に見られたくない部位も自分で処理できます。プライバシーが守られるため、精神的なストレスが少ないという利点があります。
4. 自分のペースで進められる
肌の状態を見ながら、自分のペースで使用回数や照射レベルを調整できます。肌が敏感な時期は使用を控えるなど、柔軟な対応が可能です。
家庭用脱毛器のデメリットと限界
1. 効果が医療脱毛より緩やか
家庭用脱毛器の出力は医療用レーザーの約1/3〜1/5程度と言われています。そのため、効果を実感するまでに時間がかかり、永久脱毛のような効果は期待できません。
2. 自己処理の手間がかかる
背中など手の届きにくい部位は、自分では処理が難しい場合があります。また、全身を処理する場合は相応の時間と労力が必要です。
3. 使い方を誤ると肌トラブルのリスク
照射レベルの設定を誤ったり、使用頻度が適切でなかったりすると、火傷や色素沈着などのトラブルが起こる可能性があります。取扱説明書をよく読み、正しく使用することが重要です。
4. すべての毛に効果があるわけではない
光やレーザーはメラニンに反応するため、以下のような毛には効果が出にくいという特徴があります。
- 産毛や白髪(メラニンが少ない)
- 金髪や赤毛(メラニンの種類が異なる)
- 非常に細い毛
5. 継続使用が必要
使用を中断すると、再び毛が生えてくることがあります。効果を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要です。
家庭用脱毛器と医療脱毛の違い
多くの方が疑問に思うのが、「家庭用脱毛器と医療脱毛、どちらを選ぶべきか」という点です。両者の違いを詳しく見ていきましょう。
出力パワーの違い
医療脱毛
- 医療機関でのみ使用可能な高出力機器
- 毛を作る組織(毛母細胞・毛乳頭)を破壊できる
- 永久脱毛が可能
家庭用脱毛器
- 安全性を考慮した低出力設計
- 毛の成長を抑制・遅らせる効果
- 永久脱毛は期待できない
効果の持続性
医療脱毛
- 毛根組織を破壊するため、処理した毛穴からは基本的に毛が生えてこない
- 5〜8回程度の施術で、長期的な効果が期待できる
- 一度完了すれば、メンテナンスはほとんど不要
家庭用脱毛器
- 毛の成長サイクルを遅らせる効果
- 継続的な使用が必要
- 使用を中断すると、徐々に毛が戻ってくる可能性がある
安全性とリスク管理
医療脱毛
- 医師または看護師が施術
- 万が一のトラブル時も、医師が即座に対応
- 肌質や毛質に合わせた出力調整が可能
- 麻酔の使用も可能
家庭用脱毛器
- 自己責任での使用
- 誤った使用方法によるトラブルのリスク
- トラブル発生時は自分で医療機関を受診する必要がある
処理できる範囲
医療脱毛
- 全身のほぼすべての部位に対応可能
- デリケートゾーンの粘膜付近も施術可能(VIO脱毛)
- プロが処理するため、背中など手の届かない部位も問題なし
家庭用脱毛器
- 自分で処理できる範囲に限定される
- 顔やデリケートゾーンへの使用は製品によって制限がある
- 背中など手の届きにくい部位は困難
費用の違い
医療脱毛
- 初期費用は高額
- トータル費用:全身5回で20万円〜40万円程度
- 一度完了すれば追加費用は基本的に不要
家庭用脱毛器
- 初期購入費用:2万円〜10万円程度
- ランニングコスト:カートリッジ交換が必要な場合あり(5,000円〜1万円程度)
- 長期的に見ると経済的な可能性がある
所要時間
医療脱毛
- 1回の施術時間:全身で60〜120分程度
- 通院回数:5〜8回程度
- 予約の手間がある
家庭用脱毛器
- 自分のペースで処理可能
- 全身処理:30分〜数時間(慣れや機器による)
- 通院不要だが、自分で時間を確保する必要がある
どちらを選ぶべきか
医療脱毛が向いている方
- 確実に永久脱毛したい
- 短期間で効果を実感したい
- 安全性を最優先したい
- 予算に余裕がある
- 背中など手の届かない部位も処理したい
家庭用脱毛器が向いている方
- 費用を抑えたい
- 自分のペースで処理したい
- 人に見られたくない
- メンテナンス程度の減毛で十分
- すでに医療脱毛を完了し、残った毛を処理したい
家庭用脱毛器の効果はどのくらいで出る?
毛周期と脱毛のメカニズム
家庭用脱毛器の効果を理解するには、まず「毛周期」について知る必要があります。
毛には「成長期」「退行期」「休止期」という3つのサイクルがあります。
成長期
- 毛が伸びている時期
- 毛根のメラニンが濃い
- 脱毛器の効果が最も出やすい
退行期
- 毛の成長が止まる時期
- 毛根が浅くなる
休止期
- 毛が抜け落ち、次の毛が準備される時期
- 毛根がない状態
脱毛器は成長期の毛にしか効果がありません。すべての毛が同じタイミングで成長期にあるわけではないため、定期的に繰り返し照射する必要があります。
効果を実感するまでの期間
個人差がありますが、一般的な目安は以下の通りです。
初期(使用開始〜3ヶ月)
- 2週間に1回程度の使用
- 毛の伸びるスピードが遅くなる
- 毛が細くなる
- 一部の毛が抜けやすくなる
中期(3〜6ヶ月)
- 月1〜2回程度の使用に移行
- 明らかに毛量が減る
- 毛が目立たなくなる
- 自己処理の頻度が減る
長期(6ヶ月以降)
- メンテナンスとして月1回程度の使用
- 安定した減毛効果
- ツルツルではないが、気にならないレベルに
部位による効果の違い
効果が出やすい部位
- ワキ(毛が太く、メラニンが濃い)
- 脚(広い範囲だが毛質が適している)
- 腕(毛が比較的濃い)
- ビキニライン(メラニンが濃い)
効果が出にくい部位
- 顔(産毛が多い)
- 背中(産毛が多い)
- お腹(毛が薄い)
家庭用脱毛器の選び方
市場には多くの家庭用脱毛器があり、どれを選べば良いか迷われる方も多いでしょう。選ぶ際のポイントをご紹介します。
1. 脱毛方式の選択
光脱毛器(IPL)を選ぶべき人
- 広範囲を短時間で処理したい
- 痛みに弱い
- 全身脱毛を考えている
- 初めて脱毛器を使う
レーザー式を選ぶべき人
- 濃い毛をしっかり処理したい
- 狭い範囲を集中的に処理したい
- ピンポイントで照射したい
2. 照射面積
照射面積が広いほど、短時間で広範囲を処理できます。
- 大きい(7㎠以上):脚や背中など広い部位向き
- 中程度(3〜6㎠):バランスが良く、多くの部位に対応
- 小さい(3㎠未満):細かい部位や顔向き
3. 照射レベルの調整機能
肌の色や毛の濃さ、部位によって適切な出力は異なります。照射レベルを細かく調整できる機種がおすすめです。
- 5段階以上の調整機能があると理想的
- 初心者は低いレベルから始められる
- 慣れてきたら徐々にレベルを上げられる
4. 照射回数(寿命)
多くの機器には照射回数の上限があります。
- カートリッジ交換式:カートリッジを交換すれば継続使用可能
- 本体一体型:照射回数を使い切ったら本体ごと買い替え
照射回数の目安:
- 30万回以上:全身脱毛を数年間継続可能
- 20万回前後:一般的な使用に十分
- 10万回未満:部分脱毛向き
5. 安全機能
必須の機能
- 肌色センサー:肌の色が濃い場合は照射を停止
- タッチセンサー:肌に接触していないと照射されない
- 冷却機能:照射時の痛みや熱を軽減
あると便利な機能
- 連続照射モード:スムーズに処理できる
- オートモード:適切な照射レベルを自動調整
6. 使用可能部位
製品によって使用できる部位が異なります。
- 顔への使用:可・不可が分かれる
- VIO(デリケートゾーン):Vラインのみ可、全て不可など
- 全身対応:すべての部位に使える製品が便利
7. 価格とコストパフォーマンス
価格帯別の特徴
低価格帯(2万円〜4万円)
- 基本的な機能のみ
- 照射回数が少ない場合も
- 初めての方の試用に
中価格帯(4万円〜7万円)
- 十分な機能と性能
- コストパフォーマンスが良い
- 多くの人に適している
高価格帯(7万円以上)
- 高性能・多機能
- 冷却機能など付加価値が高い
- 長期使用を考える方に
8. メーカーとサポート体制
- 国内外の有名メーカーの製品が安心
- 保証期間の確認(1〜2年が一般的)
- カスタマーサポートの充実度
- 修理対応の可否
9. 口コミと評価
- 実際の使用者のレビューを確認
- 効果の実感度
- 使いやすさ
- 故障の有無
- ただし、個人差があることを理解する
家庭用脱毛器の正しい使い方
効果を最大限に引き出し、安全に使用するための手順をご説明します。
使用前の準備
1. 前日または当日にシェービング
- 毛を剃ってから使用する(抜かない)
- 毛の長さは1mm程度が理想
- 長すぎると光が毛根に届きにくい
- 肌表面に毛があると火傷のリスクが高まる
2. 肌の状態チェック
- 日焼け直後は避ける
- 傷や炎症がある部位には使用しない
- 肌が乾燥している場合は保湿してから
3. パッチテスト
- 初めて使用する際は、目立たない部位でテスト
- 低い照射レベルから試す
- 24時間後の肌の状態を確認
照射の手順
1. 照射レベルの設定
- 初回は最も低いレベルから
- 問題なければ徐々にレベルアップ
- 部位によってレベルを変える
2. 照射方法
- 照射面を肌にしっかり密着させる
- 垂直に当てる
- 同じ箇所に重複照射しない
- 打ち漏れがないよう丁寧に
3. 照射後の冷却
- 冷却機能がない場合は、保冷剤で冷やす
- 赤みや熱感を軽減
使用後のケア
1. 保湿
- 照射後は肌が乾燥しやすい
- しっかりと保湿ケアを行う
- 敏感肌用の化粧水やクリームがおすすめ
2. 紫外線対策
- 照射後の肌は敏感
- 外出時は日焼け止めを必ず使用
- できれば照射後数日は強い日差しを避ける
3. 入浴
- 照射当日は熱い湯船は避ける
- シャワーで済ませるか、ぬるめのお湯に
使用頻度
初期(最初の3ヶ月)
- 2週間に1回のペース
- 毛周期に合わせた照射
中期以降(3ヶ月〜)
- 効果を見ながら頻度を調整
- 月1〜2回に減らしていく
メンテナンス期
- 月1回程度
- 必要に応じて照射
注意点
- 毎日や週に何度も使用しない
- 高頻度の使用は肌トラブルの原因に
- 効果が高まるわけではない
家庭用脱毛器の安全性と注意点
家庭用脱毛器は正しく使用すれば安全性の高い美容機器ですが、誤った使い方をするとトラブルにつながる可能性があります。
起こりうる肌トラブル
1. 火傷
- 原因:照射レベルが高すぎる、照射時間が長い、日焼け肌に使用
- 症状:赤み、水ぶくれ、痛み
- 予防:適切なレベル設定、日焼け直後は避ける
2. 色素沈着
- 原因:炎症後の色素沈着、紫外線対策不足
- 症状:照射部位が黒ずむ
- 予防:照射後の保湿と紫外線対策の徹底
3. 毛嚢炎(もうのうえん)
- 原因:照射後の毛穴に細菌が入る
- 症状:赤いブツブツ、かゆみ
- 予防:清潔な肌状態で使用、照射後の保湿
4. 乾燥・かゆみ
- 原因:照射による肌の水分喪失
- 症状:肌のカサつき、かゆみ
- 予防:十分な保湿ケア
使用してはいけない人・部位
使用を避けるべき人
- 妊娠中・授乳中の方
- 光過敏症の方
- ステロイド剤を使用している方
- てんかんの既往がある方
- 皮膚がんや前がん状態の方
- ペースメーカーを使用している方
使用を避けるべき部位
- 目の周り(眼球に光が入る危険)
- 唇や口の中
- タトゥーやアートメイクの上
- ほくろやシミの上
- 傷や炎症がある部位
- 日焼け直後の肌
- 製品によってはVIOの一部
使用を慎重にすべき状況
- 日焼けした肌(2〜4週間後から)
- 肌が敏感になっている時期
- 生理中のデリケートゾーン
- アトピー性皮膚炎の方(医師に相談)
トラブルが起きた時の対処法
軽度の赤み・ヒリヒリ感
- 保冷剤で冷やす
- 低刺激の保湿剤を使用
- 1〜2日で改善することが多い
水ぶくれ・強い痛み
- すぐに冷やす
- 自己判断で処置せず、皮膚科を受診
- 火傷の可能性があるため専門医の診察が必要
色素沈着が気になる
- 美白化粧品の使用
- ビタミンC配合の製品
- 改善しない場合は皮膚科を受診
製品の保管・メンテナンス
適切な保管方法
- 直射日光を避ける
- 高温多湿を避ける
- 子どもの手の届かない場所に
定期的なメンテナンス
- 照射面の汚れを拭き取る
- カートリッジの残量確認
- コードの断線チェック

家庭用脱毛器に関するよくある質問
A. 家庭用脱毛器では永久脱毛はできません。永久脱毛は医療行為とされており、医療機関でのみ可能です。家庭用脱毛器は「減毛」「抑毛」効果を目的としており、継続使用により毛を目立たなくすることはできますが、完全に生えてこなくなるわけではありません。
A. 個人差がありますが、多くの方が「輪ゴムで弾かれる程度」と表現されます。光脱毛器は比較的痛みが少なく、レーザー式はやや痛みを感じやすい傾向があります。痛みを軽減するコツは、照射前に肌を冷やすこと、低いレベルから始めること、肌の保湿を十分に行うことです。
A. 多くの製品は18歳以上を推奨していますが、メーカーによって異なります。未成年の使用については、保護者の同意と監督のもとで行うことが望ましいです。ホルモンバランスが安定していない思春期は、効果が出にくい場合もあります。
Q4. 男性のヒゲにも使えますか?
A. 製品によっては使用可能ですが、男性のヒゲは非常に濃く太いため、家庭用脱毛器では十分な効果が出にくい場合があります。また、顔への使用を推奨していない製品もあるため、必ず説明書を確認してください。ヒゲ脱毛を希望される場合は、医療脱毛の方が確実です。
Q5. 白髪や産毛にも効果がありますか?
A. 残念ながら、白髪にはほとんど効果がありません。光やレーザーはメラニン色素に反応するため、メラニンがない白髪には作用しません。産毛については、メラニンが薄いため効果が出にくいですが、継続使用で徐々に目立たなくなる場合もあります。
Q6. 脱毛後、いつから毛が抜けますか?
A. 照射後1〜2週間で毛が抜け始めることが一般的です。すぐにポロポロ抜けるわけではなく、徐々に抜けていきます。無理に引っ張って抜かず、自然に抜け落ちるのを待ちましょう。
Q7. 毎日使った方が効果が高いですか?
A. いいえ、毎日使用しても効果は高まりません。むしろ肌に負担をかけ、トラブルの原因になります。毛周期に合わせて2週間に1回程度の使用が推奨されています。適切な頻度を守ることが、安全で効果的な使用につながります。
Q8. 脱毛器を使うと毛が濃くなることはありますか?
A. 正しく使用していれば、毛が濃くなることはありません。ただし、照射が不十分だったり、中途半端な状態で使用を中断したりすると、一時的に毛が目立つように感じることがあります。これは「硬毛化」という現象で、稀に起こることがあります。
Q9. サロンや医療脱毛と併用できますか?
A. 併用は推奨されません。肌への負担が大きくなり、トラブルのリスクが高まります。また、どちらの効果か判断が難しくなります。サロンや医療脱毛を受けている期間中は、家庭用脱毛器の使用は控えましょう。
Q10. カートリッジの交換時期は?
A. 製品に表示されている照射回数を目安にします。多くの製品では、照射回数が残り少なくなるとランプで知らせてくれます。カートリッジ交換式の場合、純正品を使用することが重要です。
家庭用脱毛器を使った効果的なムダ毛ケア計画
家庭用脱毛器で効果を最大化するための、体系的なケア計画をご提案します。
ステップ1:準備期間(使用開始前)
1〜2週間前
- 日焼けを避ける
- 保湿ケアを始める
- 毛抜きの使用を中止(剃るのはOK)
使用直前
- シェービング
- 肌の状態確認
- パッチテスト
ステップ2:導入期(1〜3ヶ月)
使用頻度
- 2週間に1回
目標
- 脱毛器の使い方に慣れる
- 自分に合った照射レベルを見つける
- 肌トラブルなく使用できることを確認
この期間の変化
- 毛の伸びるスピードが遅くなる
- 毛が細くなり始める
- 一部の毛が抜けやすくなる
ステップ3:効果実感期(3〜6ヶ月)
使用頻度
- 3〜4週間に1回
目標
- 明確な減毛効果を実感
- 自己処理の頻度を減らす
この期間の変化
- 毛量が明らかに減る
- ツルツルとまではいかないが、気にならないレベルに
- 部位によっては、ほぼ処理不要に
ステップ4:メンテナンス期(6ヶ月以降)
使用頻度
- 月1回程度、または気になった時
目標
- 効果の維持
- 新たに生えてくる毛への対応
長期的な継続
- 完全に使用をやめると、徐々に毛が戻る可能性
- 無理のない範囲で定期的なケアを継続
部位別のケア計画
ワキ
- 効果が出やすい部位
- 3〜6ヶ月で満足できる結果が期待できる
- メンテナンスは月1回程度
脚・腕
- 範囲が広いため時間がかかる
- 効果は比較的出やすい
- 6ヶ月程度で目立たなくなることが多い
顔(産毛)
- 効果が出にくい部位
- 照射可能な機種に限る
- 低いレベルから慎重に
VIO
- Vラインのみ対応の製品が多い
- デリケートな部位なので低レベルから
- 痛みを感じやすいため、冷却を十分に
医師から見た家庭用脱毛器の評価
皮膚科医の視点から、家庭用脱毛器についての見解をお伝えします。
家庭用脱毛器のメリット(医学的観点)
1. カミソリ負けの軽減 頻繁なカミソリでの処理は、肌を傷つけ、色素沈着や炎症の原因になります。家庭用脱毛器で毛量が減れば、カミソリを使う頻度も減り、肌への負担が軽減されます。
2. 埋没毛の予防 毛抜きで無理に毛を抜くと、埋没毛(皮膚の下で毛が成長してしまう状態)が起こりやすくなります。光やレーザーによる処理は、このリスクを減らすことができます。
3. 皮膚疾患のリスク低減 適切に使用すれば、毛嚢炎などの皮膚トラブルのリスクを減らすことができます。
家庭用脱毛器の限界(医学的観点)
1. 出力の制限 安全性を考慮して出力が抑えられているため、医療脱毛のような確実な効果は期待できません。
2. 個人差が大きい 肌質、毛質、ホルモンバランスなどにより、効果に大きな個人差があります。
3. トラブル時の対応 自己責任での使用となるため、トラブルが起きた際は自分で医療機関を受診する必要があります。
医師からのアドバイス
安全に使用するために
- 取扱説明書をよく読む
- 低いレベルから始める
- 肌の状態を常にチェック
- 異常を感じたらすぐに使用を中止し、医療機関を受診
こんな方は医療脱毛を検討してください
- 確実な脱毛効果を求める方
- 肌が敏感で、自己処理が不安な方
- 背中など手の届かない部位を処理したい方
- 短期間で効果を出したい方
併用を検討しても良いケース
- 医療脱毛後の残った毛の処理
- 医療脱毛の予算が限られている場合(医療脱毛で主要部位、家庭用で補助的に)
- メンテナンスとしての使用
まとめ
家庭用脱毛器は、正しく使用すれば自宅で手軽にムダ毛ケアができる便利な美容機器です。医療脱毛のような永久脱毛はできませんが、継続使用により減毛・抑毛効果を得ることができます。
家庭用脱毛器のポイント
- 永久脱毛ではなく、減毛・抑毛が目的
- 継続的な使用が必要
- 医療脱毛より効果は緩やか
- 自分のペースで処理できる
- コストパフォーマンスに優れる
- 正しい使用方法と肌ケアが重要
選び方のポイント
- 脱毛方式(光脱毛器が一般的)
- 照射面積と使用可能部位
- 安全機能の充実度
- 照射回数と寿命
- 価格とコストパフォーマンス
安全に使用するために
- 取扱説明書をよく読む
- 適切な照射レベルと頻度を守る
- 使用前後の肌ケアを徹底
- 日焼けや肌トラブル時は使用しない
- 異常を感じたら使用を中止し、医療機関を受診
家庭用脱毛器は、医療脱毛とは異なるメリットを持つ選択肢です。ご自身のライフスタイル、予算、求める効果などを総合的に考えて、最適な脱毛方法を選択してください。
当院では、より確実で安全な脱毛をご希望の方に、医療レーザー脱毛をご提供しています。家庭用脱毛器について疑問がある方、肌トラブルが起きた方、医療脱毛に興味がある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
本記事は以下の信頼できる情報源を参考に作成しました。
- 厚生労働省「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」 https://www.mhlw.go.jp/
- 独立行政法人国民生活センター「エステや家庭用脱毛器での脱毛でのトラブルに注意」 https://www.kokusen.go.jp/
- 日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/
- 日本医学脱毛学会 https://www.jsmle.com/
- 消費者庁「美容医療サービスに関する情報」 https://www.caa.go.jp/
※本記事の情報は2025年10月時点のものです。製品の仕様や規制は変更される可能性がありますので、最新情報は各メーカーや関連機関のウェブサイトでご確認ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務