「痔」という言葉を聞くと、多くの方が恥ずかしさを感じたり、人に相談しにくいと感じたりするかもしれません。しかし、痔は決して珍しい病気ではなく、日本人の3人に1人が一生のうちに一度は経験すると言われているほど一般的な疾患です。
その中でも「いぼ痔(痔核)」は痔の中で最も多い種類であり、適切な知識と対処法を知ることで、症状の改善や予防が可能です。本記事では、いぼ痔について、その仕組みから症状、原因、治療法、そして日常生活での予防法まで、わかりやすく詳しく解説していきます。
恥ずかしさから受診を躊躇される方も多いのですが、早期に適切な治療を受けることで、生活の質を大きく改善することができます。この記事を通じて、いぼ痔に関する正しい知識を身につけていただければ幸いです。

🔍 いぼ痔(痔核)の症状・原因・治療法|正しい基礎知識
💡 痔核の定義と仕組み
いぼ痔は医学的には「痔核(じかく)」と呼ばれ、肛門周辺の血管が集まった部分(静脈叢)がうっ血して腫れ上がり、いぼ状に膨らんだ状態を指します。
肛門には元々、排便をスムーズにするためのクッションのような組織があります。この組織は血管が豊富に集まった構造になっており、通常は便を出すときに膨らんで便の通りをスムーズにし、排便後は元に戻ります。
しかし、さまざまな原因でこの部分の血流が悪くなったり、支持組織が弱くなったりすると、血管が膨らんだまま戻らなくなり、いぼ痔になってしまいます。
📊 痔の種類と頻度
痔には大きく分けて3つの種類があります。
- いぼ痔(痔核) – 全体の約50〜60%
- 切れ痔(裂肛) – 全体の約10〜15%
- 痔ろう(痔瘻) – 全体の約5%
このように、いぼ痔は痔の中で最も多く、多くの方が悩まされている疾患です。年齢や性別を問わず発症しますが、特に中高年に多く見られる傾向があります。
🟡 内痔核・外痔核・内外痔核の違い
いぼ痔は発生する場所によって、「内痔核」と「外痔核」の2つに分類されます。それぞれ症状や治療法が異なるため、違いを理解することが重要です。
🩸 いぼ痔(痔核)の症状
いぼ痔の症状は、種類や進行度によって異なりますが、主な症状について詳しく見ていきましょう。
🔴 内痔核の症状
内痔核は、肛門の内側(直腸側)にできるいぼ痔です。直腸粘膜にできるため、痛みを感じる神経が少なく、初期段階では痛みを伴わないことが特徴です。
主な症状
- 排便時の出血(鮮やかな赤色の血液)
- いぼが肛門外に脱出する(脱肛)
- 違和感や残便感
- 粘液の分泌による下着の汚れ
内痔核は進行度によって4段階(Goligher分類)に分けられます。
- Ⅰ度: 排便時に出血はあるが、いぼは肛門の外に出ない段階
- Ⅱ度: 排便時にいぼが肛門の外に出るが、自然に戻る段階
- Ⅲ度: 排便時にいぼが肛門の外に出て、指で押し込まないと戻らない段階
- Ⅳ度: いぼが常に肛門の外に出たままで、押し込んでも戻らない段階
🔵 外痔核の症状
外痔核は、肛門の外側(皮膚側)にできるいぼ痔です。皮膚にできるため、痛みを感じる神経が豊富で、強い痛みを伴うことが多いのが特徴です。
主な症状
- 肛門周囲の腫れや突起
- 強い痛み(特に血栓性外痔核の場合)
- 圧迫感や違和感
- 肛門周囲のかゆみ
特に「血栓性外痔核」という状態では、外痔核の中に血の塊(血栓)ができ、急激な腫れと激しい痛みを引き起こします。
📤 脱出と痛みの詳細
内痔核が進行すると、排便時にいぼが肛門の外に飛び出してくる「脱出」という症状が現れます。
初期段階では排便後に自然に戻りますが、進行すると指で押し込まないと戻らなくなり、最終的には常に出たままの状態になることもあります。脱出したいぼは、下着に擦れたり、座ったときに圧迫されたりして不快感や痛みを引き起こします。
🎯 いぼ痔(痔核)の原因とリスクファクター
いぼ痔は一つの原因で発症するのではなく、複数の要因が重なって発症します。主な原因とリスクファクターを理解することで、予防につなげることができます。
🚫 便秘・下痢と排便習慣
便秘は、いぼ痔の最も大きな原因の一つです。硬い便を出そうとして強くいきむことで、肛門周辺の血管に大きな圧力がかかり、うっ血してしまいます。
慢性的な便秘により、繰り返し強いいきみを行うことで、徐々に血管が膨らみ、いぼ痔へと進行していきます。また、トイレに長時間座る習慣も、肛門への圧迫が続くため好ましくありません。
下痢もいぼ痔の原因になります。頻繁な排便により肛門に負担がかかり、また、勢いよく便が出ることで肛門周辺の組織を傷つけることがあります。
🍽️ 生活習慣・食生活の影響
デスクワークや長時間の運転など、長時間座り続ける生活習慣は、肛門周辺の血流を悪くし、うっ血を引き起こします。
以下のような食生活は、いぼ痔のリスクを高めます。
- 食物繊維の不足: 便が硬くなり、便秘の原因になります
- 水分摂取の不足: 便が硬くなる原因になります
- 刺激物の過剰摂取: 香辛料やアルコールは肛門周辺の血流を増加させ、うっ血を招きます
- 脂肪分の多い食事: 消化に時間がかかり、便秘の原因になります
🤱 妊娠・出産・加齢・遺伝的要因
妊娠中は子宮が大きくなることで腹部の血管が圧迫され、肛門周辺の血流が悪くなります。また、ホルモンの影響で便秘になりやすくなることも、いぼ痔の発症リスクを高めます。
年齢を重ねると、肛門周辺の組織を支える筋肉や靭帯が弱くなり、いぼ痔が発症しやすくなります。特に40代以降で発症率が高くなる傾向があります。
家族にいぼ痔の方がいる場合、遺伝的に血管の構造や組織の強さが似ているため、発症しやすい傾向があります。
🔬 いぼ痔(痔核)の診断方法
いぼ痔の診断は、問診、視診、触診、そして必要に応じて器械を使った検査により行われます。恥ずかしさから受診を躊躇される方も多いですが、専門医による正確な診断が適切な治療への第一歩です。
📋 問診・視診・触診
まず、症状について詳しくお話を伺います。
- いつから症状があるか
- 出血の有無や量、色
- 痛みの程度や発生するタイミング
- 脱出の有無
- 排便習慣(便秘や下痢の有無)
- 生活習慣(座位時間、運動習慣、食生活など)
肛門周囲を直接観察し、外痔核の有無、肛門の状態、皮膚の炎症などを確認します。また、手袋をつけた指で肛門内を触診し、内痔核の有無や大きさ、硬さなどを調べます。
🔍 肛門鏡・大腸内視鏡検査
肛門鏡という器具を使って、肛門の内側を直接観察します。内痔核の位置、大きさ、数、進行度などを詳しく確認することができます。
出血がある場合、大腸がんやポリープなど他の疾患との鑑別が必要になることがあります。そのような場合は、直腸鏡や大腸内視鏡を使って、直腸や大腸の状態を詳しく調べます。
⚖️ 鑑別診断の重要性
いぼ痔と似た症状を示す疾患には、以下のようなものがあります。
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
- 直腸脱
- 肛門周囲膿瘍
これらの疾患を見逃さないためにも、専門医による診察が重要です。
💊 いぼ痔(痔核)の治療法|正しい治療選択
いぼ痔の治療は、症状の程度や種類によって異なります。軽度の場合は生活習慣の改善や薬物療法などの保存的治療で改善することが多く、重症の場合は手術などの外科的治療が必要になることもあります。
🏠 保存的治療(生活習慣改善・薬物療法)
いぼ痔治療の基本は、生活習慣の改善です。以下のポイントを心がけることで、症状の改善や再発予防につながります。
排便習慣の改善
- 便意を我慢しない
- トイレに長時間座らない(5分以内を目安に)
- 強くいきまない
- 朝食後など、決まった時間にトイレに行く習慣をつける
症状に応じて、さまざまな薬が使用されます。
坐薬・軟膏
肛門に直接作用する局所治療薬で、以下のような成分が配合されています。
- 抗炎症成分:腫れや炎症を抑える
- 局所麻酔成分:痛みやかゆみを和らげる
- 血流改善成分:血行を良くしてうっ血を改善する
- ステロイド成分:強い炎症を抑える(短期間の使用に限定)
💉 注射療法・ゴム輪結紮療法
内痔核に硬化剤を注射し、痔核を固めて小さくする治療法です。主にⅠ度からⅢ度の内痔核に対して行われます。
外来で行える簡便な治療で、痛みもほとんどありません。ただし、効果が一時的な場合もあり、再発することがあります。
内痔核の根元に特殊なゴム輪を装着し、血流を遮断して痔核を壊死させ、自然に脱落させる方法です。主にⅡ度からⅢ度の内痔核に対して行われます。
🏥 外科的治療(手術)の種類と特徴
保存的治療で改善しない場合や、重症の場合は手術が検討されます。
痔核を根元で結紮(縛る)して切除する、最も一般的で確実性の高い手術方法です。Ⅲ度以上の内痔核や、大きな外痔核に対して行われます。
痔核に四段階注射法という特殊な方法でALTA(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸)という薬剤を注射し、痔核を硬化・縮小させる治療法です。
切らない治療として注目されており、入院期間も短く(2〜4日程度)、術後の痛みも比較的軽いのが特徴です。主に内痔核に対して行われます。
血栓性外痔核に対して、局所麻酔下で血栓を摘出する小手術です。外来または日帰りで行えることが多く、血栓を取り除くことで劇的に症状が改善します。
🛡️ いぼ痔(痔核)の予防方法と日常生活の注意点
いぼ痔は生活習慣と深く関わっている疾患です。日常生活で以下のような点に気をつけることで、発症を予防したり、再発を防いだりすることができます。
🥬 食事・排便習慣の改善
食物繊維は便の量を増やし、柔らかくする働きがあります。以下のような食品を積極的に摂りましょう。
- 野菜類:ごぼう、にんじん、ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草など
- 果物類:りんご、バナナ、キウイ、プルーンなど
- 海藻類:わかめ、ひじき、もずくなど
- きのこ類:しいたけ、えのき、しめじなど
- 豆類:納豆、大豆、小豆など
- 穀類:玄米、麦ごはん、全粒粉パンなど
1日に20〜25gの食物繊維摂取が推奨されています。
水分が不足すると便が硬くなります。1日1.5〜2リットル程度の水分摂取を心がけましょう。特に朝起きた時にコップ1杯の水を飲むと、腸の働きが活発になります。
🏃♂️ 運動・姿勢管理
1日30分程度のウォーキングは、全身の血行を良くし、腸の働きも活発にします。
デスクワークの場合、1時間に1回は立ち上がって体を動かしましょう。
肛門を締めたり緩めたりする運動を繰り返すことで、肛門周辺の筋肉を鍛え、血行を改善します。
🛁 清潔保持・入浴習慣
38〜40度程度のぬるめのお湯に10〜15分浸かることで、肛門周辺の血行が良くなります。熱すぎるお湯は逆効果なので注意しましょう。
トイレットペーパーで強くこすると、肛門周辺を傷つけてしまいます。優しく押さえるようにして拭きましょう。可能であれば、温水洗浄便座を使用したり、シャワーで洗い流したりすることをおすすめします。

よくある質問
A. 初期のいぼ痔であれば、生活習慣の改善により自然に治ることもあります。しかし、進行したいぼ痔は自然治癒が難しく、放置すると悪化する可能性があります。症状が続く場合や悪化する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
A. 軽症のいぼ痔であれば、市販薬で症状が改善することもあります。ただし、市販薬はあくまで症状を和らげるものであり、根本的な治療にはなりません。2週間程度使用しても改善しない場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
A. 手術方法によって異なりますが、現在は麻酔技術や手術方法の進歩により、術後の痛みは以前に比べて大幅に軽減されています。また、痛み止めも適切に使用されるため、我慢できないほどの痛みが続くことはほとんどありません。
A. 手術方法や個人差によりますが、デスクワークであれば1〜2週間程度、立ち仕事や体を使う仕事であれば2〜4週間程度で復帰できることが多いです。医師と相談しながら、無理のない復帰計画を立てましょう。
A. 手術後も生活習慣が改善されなければ、再発する可能性があります。便秘や下痢の予防、適度な運動、正しい排便習慣など、日常生活での注意を続けることが再発予防につながります。
A. 妊娠中は便秘になりやすく、またお腹が大きくなることで肛門周辺の血流が悪くなるため、いぼ痔になりやすい時期です。まずは産婦人科の医師に相談しましょう。妊娠中でも使用できる薬や、生活習慣の改善方法について指導を受けられます。
A. 出血という症状は共通していますが、いぼ痔による出血は鮮やかな赤色であることが多く、大腸がんによる出血は黒っぽいことが多いです。ただし、症状だけでは区別が難しい場合もあるため、出血が続く場合は必ず医療機関で検査を受けましょう。
A. はい、なります。いぼ痔は年齢に関係なく発症する可能性があります。特に最近は、若い世代でもデスクワークや運動不足、不規則な食生活などから、いぼ痔になる方が増えています。
A. その気持ちはよく分かりますが、肛門科や大腸肛門科の医師は、毎日多くの患者さんを診察しており、全く気にすることはありません。早期に適切な治療を受けることで、症状を早く改善でき、重症化を防ぐことができます。女性の場合、女性医師のいる病院を選ぶこともできます。
A. 痔自体が直接遺伝するわけではありませんが、血管の構造や組織の強さなどは遺伝的要素があるため、家族にいぼ痔の方がいる場合は、発症しやすい傾向があります。ただし、生活習慣に気をつけることで予防は十分可能です。
🏥 当院での治療について
アイシークリニック上野院では、いぼ痔をはじめとする肛門疾患の診断・治療を行っております。患者さんお一人お一人の症状や生活スタイルに合わせた最適な治療法をご提案いたします。
恥ずかしさから受診を躊躇される方も多いですが、当院では患者さんのプライバシーに十分配慮し、リラックスして診察を受けていただける環境を整えております。
また、多汗症や脇汗など、他の症状についてもお気軽にご相談ください。
📞 ご予約・お問い合わせ
いぼ痔の症状でお悩みの方は、お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
- 電話予約: 0120-000-702
- WEB予約: こちらから24時間受付
📝 まとめ
いぼ痔(痔核)は日本人の3人に1人が経験する一般的な疾患であり、決して恥ずかしがる必要はありません。適切な知識と早期の治療により、症状は大幅に改善できます。
重要なポイントをまとめると:
- 早期発見・治療: 症状があれば恥ずかしがらずに医療機関を受診する
- 生活習慣の改善: 食物繊維の摂取、適度な運動、正しい排便習慣を心がける
- 治療法の選択: 症状に応じて適切な治療法を医師と相談して選択する
- 予防の継続: 治療後も生活習慣に注意して再発を防ぐ
一人で悩まず、専門医に相談することで、必ず改善への道筋が見つかります。当院では患者さんの立場に立った丁寧な診療を心がけておりますので、お気軽にご相談ください。
📚 参考文献
- 厚生労働省 – 痔疾患に関する統計・疫学データ
- 日本大腸肛門病学会 – 痔核(いぼ痔)診療ガイドライン
- 日本消化器外科学会 – 肛門疾患の診断と治療
- 日本消化器病学会 – 消化器疾患診療ガイドライン
- 日本臨床外科学会 – 痔疾患の外科的治療に関する研究
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
いぼ痔の診断において最も大切なことは、患者さんの症状を正確に把握することです。内痔核と外痔核では症状や治療法が大きく異なるため、まずはどちらのタイプなのかを適切に見極めることが重要です。特に出血の性状や脱出の有無は、治療方針を決める上で非常に重要な情報となります。