足にできる汗疱と水虫の見分け方:症状・原因・治療法の完全ガイド

はじめに

足に小さな水ぶくれやかゆみが現れると、多くの方が「水虫かもしれない」と心配されることでしょう。確かに、足の皮膚トラブルの代表的な疾患として水虫は広く知られていますが、実は水虫と症状がよく似た「汗疱(かんぽう)」という皮膚疾患があることをご存知でしょうか。

水虫だと思って皮膚科を受診する患者さんの2~3人に1人は水虫ではない別の病気だといわれています。つまり、足の症状を自己判断で「水虫」と決めつけてしまうのは危険で、適切な診断と治療を受けるためには、これらの疾患の違いを理解することが重要です。

本コラムでは、足にできる汗疱と水虫の違いについて、症状、原因、治療法、予防方法まで、皮膚科医の視点から詳しく解説いたします。正しい知識を身につけることで、早期の適切な治療につなげていただければと思います。

汗疱(異汗性湿疹)とは

汗疱の基本的な定義

異汗性湿疹は手足に汗をかきやすい体質の人に多くみられます。汗疱は「異汗性湿疹」とも呼ばれる皮膚疾患で、主に手のひらや足の裏に小さな水ぶくれができる病気です。中が透き通った1~2mm大の小さな水ぶくれが、たくさんできます。

「汗疱」という名前から汗が直接的な原因と思われがちですが、実際には汗腺の詰まりが直接的な原因ではありません。汗疱は異汗性湿疹という別名がある通り、湿疹同様の皮膚の炎症もしくは何らかの物質に対するアレルギー反応が原因です。

汗疱の症状の特徴

1. 水疱の特徴

  • 大きさ:直径1~2mmの小水疱が多発し、薄く円く襟飾り状に皮がむける
  • 見た目:透明で中身が見える小さな水ぶくれ
  • 分布:群を成して多数発生する

2. 発生部位

  • 手のひら(最も多い)
  • 手指の側面
  • 足の裏
  • 足指の側面

手足同時に生じることが多いが,足の裏だけであれば白癬を,手掌だけであれば汗疱を疑うという診断の目安があります。

3. 症状の経過

「汗疱」で始まり、再発を繰り返します。無症状のこともありますが、赤くなって痒みを伴う場合や大きな水疱がむけてビランとなり、むしろ痛くなることもあります。

汗疱の原因

汗疱の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関係していると考えられています:

1. 金属アレルギー

金属アレルギーの関与が疑われています。手足は発汗が多く汗の中の金属濃度が高くなるため、食べ物や歯に詰めた金属が原因でアレルギー症状を起こすことがあるのです。

  • 歯科治療で使用された金属
  • 食品に含まれる微量金属
  • 装飾品や日用品から摂取される金属

2. 体質的要因

  • 多汗体質
  • アレルギー体質
  • 敏感肌

3. 季節的要因

夏に発症して悪化し、秋になると軽快するのが特徴で、季節の変わり目などに手のひらや足の裏、指趾側面に直径1~2mmの小水疱が多発します。

汗疱の診断

汗疱の診断は主に症状と発生部位の観察により行われますが、水虫との鑑別が重要です。視診だけでは医師でも正しく判断することは難しい症状ですため、顕微鏡検査により白癬菌の有無を確認することが必要です。

金属アレルギーが疑われる場合は、パッチテストによる金属アレルギー検査を行うこともあります。

水虫(足白癬)とは

水虫の基本的な定義

水虫とは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が足裏の皮膚に増殖して起こる感染症です。5人に1人は足水虫があり、また10人に1人は爪水虫があるという報告がありますという、非常に身近な感染症です。

白癬菌は皮膚糸状菌の一種で、ケラチンと呼ばれる皮膚のたんぱく質を栄養源とし、温かく湿った環境を好むため、靴下や靴で覆われ高温多湿となりやすい足部の皮膚(角層)でよく増殖します。

水虫の3つのタイプ

水虫は症状や発生部位により、以下の3つの型に分類されます:

1. 趾間型(しかんがた)

最も多いタイプで、足指の間に症状が現れます。

  • 症状:指の間が白くふやける、じくじくしたり皮がむけたりするタイプ
  • 特徴:湿潤型と乾燥型がある
  • 好発部位:特に第4-5趾間(薬指と小指の間)

2. 小水疱型(しょうすいほうがた)

汗疱と最も似ているタイプで、診断が難しい場合があります。

  • 症状:足底・土踏まず周辺や足のふちに小さい水ぶくれが多発し、それが破れて皮がむける
  • 特徴:「水虫=かゆい」というイメージがありますが、かゆみを伴う水虫は全体の10%程度です(特に小水疱型に多い)
  • 季節性:夏に症状が悪化する

3. 角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)

治療が困難なタイプで、慢性化しやすい特徴があります。

  • 症状:足底全体に生じ、足の裏が硬く厚くなり、時にひび割れを伴う
  • 特徴:かゆみが少ない、乾燥が強い
  • 治療期間:他の型より長期間を要する

水虫の感染経路と感染のメカニズム

感染経路

水虫は人から人への接触感染により広がります:

  1. 家庭内感染:足白癬患者の約60%は、素足の状態であれば10分間で白癬菌を環境中に散布してしまう
  2. 公共施設での感染:プール、温泉、スポーツジム、公衆浴場など
  3. 共有物を介した感染:スリッパ、足ふきマット、タオルなど

感染のメカニズム

白癬菌が皮膚に付着してから侵入するまでに丸一日(24時間)さらに傷がある場合は半日(12時間)程度要するとされています。つまり、24時間以内に足を洗えば感染を防ぐことができるのです。

感染しやすい条件:

  • 温度:温度は27度より35度の方が感染しやすい
  • 湿度:湿度は95%より100%の方が感染しやすい
  • 足の蒸れ:靴や靴下による密閉状態

水虫のリスク因子

水虫がうつりやすいリスク因子を調べた論文によると「加齢」「男性」「高コレステロール血症」「ゴルフ」「同居家族に水虫の方がいる」となっています。また、以下の要因も挙げられます:

  • 糖尿病などの基礎疾患
  • 免疫力の低下
  • 長時間の靴の着用
  • 足の外傷
  • 不衛生な環境

汗疱と水虫の見分け方

汗疱と水虫、特に小水疱型の水虫は症状が非常に似ており、専門医でも視診だけでは判断が困難な場合があります。ここでは、両者を見分けるための重要なポイントをご紹介します。

1. 発症部位の違い

特徴汗疱水虫(小水疱型)主な発症部位手のひら、足の裏の両方足の裏、足の側面中心手足の関係手足同時に生じることが多い足から始まり、手への感染は稀診断の目安手掌だけであれば汗疱を疑う足の裏だけであれば白癬を疑う

2. 水疱の特徴の違い

汗疱の水疱

  • 大きさ:1-2mm程度の小さな水疱
  • 透明度:透明で内容が見える
  • 分布:群を成して多発
  • 破れ方:薄く円く襟飾り状に皮がむける

水虫の水疱

  • 大きさ:様々なサイズ
  • 透明度:やや濁っている場合もある
  • 分布:散在性または群発性
  • 破れ方:不規則にむける

3. かゆみの特徴の違い

汗疱のかゆみ

  • 当初,痒みが強く症状が出る
  • 季節的な変動がある(夏に悪化)
  • 炎症が強い時期に限定される

水虫のかゆみ

  • かゆみを伴う水虫は全体の10%程度
  • 特に夏季にかゆく、秋以降はかゆみがおさまっていることが多い
  • かゆみがない場合も多い

4. 季節性の違い

汗疱の季節性

  • 悪化時期:夏に発症して悪化し、秋になると軽快するのが特徴
  • 改善時期:涼しい季節には自然軽快することが多い
  • 再発:毎年同じ時期に再発する傾向

水虫の季節性

  • 悪化時期:高温多湿な梅雨〜夏に症状悪化
  • 改善時期:冬は症状が軽減するが完治はしない
  • 慢性化:治療しなければ通年持続

5. 感染性の違い

汗疱

  • 感染性:感染することはありません
  • 家族への影響:他の人にはうつらない
  • 原因:アレルギー反応や体質的要因

水虫

  • 感染性:強い感染力がある
  • 家族への影響:家族間での感染リスクが高い
  • 原因:白癬菌による感染症

6. 顕微鏡検査による確定診断

最も重要で確実な判別方法は、皮膚科での顕微鏡検査です。

検査方法

診察のときに患部の皮膚を採取して顕微鏡を使い、白癬菌が存在するか調べます。その場で病変の原因となる菌を確認することができるためすぐに治療につなげることができます。

検査の重要性

  • 汗疱:白癬菌は検出されない
  • 水虫:白癬菌が検出される
  • 検査時間:3分程度で診断ができます

検査前の注意点

先に市販されている水虫薬を使ってしまうと、診断の精度が落ちることがあります。できれば、水虫薬を使わずに受診してください。

汗疱の治療法

汗疱の治療は症状の程度や原因によって異なりますが、基本的には外用薬による治療が中心となります。

1. 軽症例の治療

保湿療法

汗疱でかゆみがなく、比較的症状が軽い場合は、保湿するだけで治ることもあります。

  • 保湿剤の使用:ワセリン、セラミド配合クリームなど
  • 使用タイミング:入浴後の湿った肌に塗布
  • 使用頻度:1日2-3回

自然軽快

症状が軽い場合は、2~3週間で水ぶくれは吸収され、自然と改善されていきます。

2. 中等症〜重症例の治療

ステロイド外用薬

かゆみがあり症状も悪化している場合は、ステロイド外用薬を。手足は皮膚が厚く、湿疹ができるとなかなか治りにくい上に、特に手は薬を塗っても落ちやすいので、強めのものを選びましょう。

使用する薬剤

  • ミディアム〜ストロング クラスのステロイド
  • オキサゾール系、プロピオン酸系など

使用方法

  • 1日2回、朝夕に塗布
  • 症状改善後も数日間継続
  • 徐々にランクを下げて終了

3. 原因別治療

金属アレルギーが原因の場合

金属アレルギー検査(パッチテスト)で陽性が確認された場合:

  • 歯科金属の除去:歯科医師と連携し、アレルゲンとなる金属の除去
  • 食事制限:ニッケル、コバルト、クロムを多く含む食品の制限
  • 日用品の見直し:金属製アクセサリー、ベルトのバックルなどの回避

体質改善

  • 多汗対策:制汗剤の使用、適切な靴下の選択
  • ストレス管理:十分な睡眠、適度な運動
  • 生活習慣の改善:規則正しい生活リズム

4. 治療期間と経過

汗疱の治療は個人差がありますが:

  • 軽症例:2-3週間で改善
  • 中等症例:1-2か月の治療が必要
  • 重症例:数か月間の継続治療が必要

注意点

  • 症状が改善しても、原因が除去されない限り再発する可能性が高い
  • 季節性があるため、発症しやすい時期の予防的治療も検討

水虫の治療法

水虫の治療は、白癬菌を完全に除去することが目標です。治療法は水虫の型や重症度により異なります。

1. 外用薬による治療(基本治療)

抗真菌外用薬の種類

現在使用されている主な抗真菌薬:

イミダゾール系

  • ルリコン(ルリコナゾール)
  • ニゾラール(ケトコナゾール)
  • アトラント(ネチコナゾール)
  • マイコスポール(ビホナゾール)

アリルアミン系

  • ラミシール(テルビナフィン)
  • メンタックス(ブテナフィン)

外用薬の使用方法

塗布範囲:薬を自覚症状がある部分だけでなく、両方の指の間から足裏全体に最低1カ月毎日塗り続けることが大切です

使用期間:今ある水虫の薬はよく効きますので、通常の足白癬であれば、塗り薬を毎日つければ、約1-2 週間程度で症状は良くなります。しかし2週間程度の外用では白癬菌は死滅し切らず、生き残っていることも知られています

継続の重要性

  • 症状消失後も最低1か月継続
  • 症状が軽くなってからも、医師の指示がある限り、外用を継続することが大切です

剤型の選択

クリーム剤

  • 刺激が少ないので、亀裂やジュクジュクした部分に使いやすい。薬の伸びがよく、皮膚によく浸透する
  • 趾間型、小水疱型に適している

液剤(ローション)

  • アルコールを含み、スッキリした使用感があります。患部に亀裂がある場合はしみることがある
  • 角質増殖型の初期治療に有効

2. 内服薬による治療

以下の場合に内服薬を併用または単独使用します:

適応

  • 角質増殖型で外用薬の効果が不十分
  • 爪白癬を併発している場合
  • 広範囲に及ぶ水虫
  • 外用薬でアレルギーを起こす場合

主な内服薬

  • テルビナフィン(ラミシール)
  • イトラコナゾール(イトリゾール)

治療期間と注意点

  • 足白癬:飲み薬で治療をおこない、テルビナフィンやイトラコナゾールがつかわれます
  • 爪白癬:爪水虫の場合、内服薬を約3ヵ月~6ヵ月服用します
  • 副作用監視:稀に肝機能障害を生じることがあるため、治療中は血液検査をさせて頂きます

3. 水虫の型別治療戦略

趾間型

  • 第一選択:抗真菌クリーム
  • 治療期間:趾間型で 2 カ月以上
  • 注意点:二次細菌感染の予防

小水疱型

  • 第一選択:抗真菌クリームまたはローション
  • 治療期間:小水疱型で 3 カ月以上
  • 併用治療:強いかゆみがある場合は抗ヒスタミン薬

角質増殖型

  • 第一選択:外用薬+内服薬の併用
  • 治療期間:角化型で 6 カ月以上</iente>
  • 補助療法:角質軟化剤(尿素軟膏など)の併用

4. 治療が困難な理由と対策

治療困難な理由

足白癬が治らない最大の理由は、中途半端な治療といえます

  1. 治療中断:症状改善による自己判断での中止
  2. 不十分な塗布範囲:症状のある部分のみの治療
  3. 短期間の治療:菌が死滅する前の治療終了
  4. 再感染:家族や環境からの再感染

対策

  1. 十分な治療期間の確保
  2. 広範囲への薬剤塗布
  3. 家族全体の検査と治療
  4. 環境の除菌

予防方法とセルフケア

汗疱と水虫、どちらも予防可能な疾患です。それぞれの特徴に応じた予防法を実践することが重要です。

汗疱の予防

1. 汗対策

  • 適切な靴下の選択
    • 吸湿性の良い素材(綿、麻)
    • 5本指ソックスの活用
    • こまめな交換
  • 靴の管理
    • 通気性の良い靴を選択
    • 同じ靴を連日着用しない
    • 乾燥剤の使用

2. スキンケア

  • 保湿の徹底
    • 入浴後の保湿クリーム使用
    • 季節に応じた保湿レベルの調整
  • 刺激の回避
    • 強い石鹸やボディソープの避ける
    • 過度の洗浄を控える

3. 金属アレルギー対策

  • 歯科治療時の配慮
    • セラミックやレジン素材の選択
    • 既存の金属修復物の定期チェック
  • 食事の配慮
    • ニッケル、コバルト、クロムを多く含む食品の制限
    • バランスの取れた食事

4. 生活習慣の改善

  • ストレス管理
    • 適度な運動
    • 十分な睡眠
    • リラクゼーション

水虫の予防

1. 感染予防の基本

24時間ルールの活用: 24時間以内に足を洗えば感染を防ぐことができる

  • 帰宅後の足洗い:外出から帰宅したら必ず足を洗う
  • 公共施設利用後:プール、温泉、ジムの後は速やかに洗浄
  • 適切な洗浄方法:石鹸を使って指の間まで丁寧に洗う

2. 家庭内感染の予防

家族や同居者に水虫の方がいる場合は、お風呂のマットだけでなく、床や畳にも菌が多く存在している可能性があるため:

  • 個人用品の分離
    • タオル、バスマットの共有禁止
    • スリッパの個別使用
    • 足拭きマットの分離
  • 環境の清掃
    • 床の定期的な清拭
    • バスマットの頻繁な洗濯
    • 換気の徹底

3. 足の環境管理

蒸れの予防

  • 靴の選択
    • 通気性の良い素材
    • サイズの適正化
    • ローテーション使用
  • 靴下の管理
    • 吸湿性の良い素材
    • 日中の交換
    • 抗菌加工製品の活用

4. 高リスク環境での注意

公共施設での注意点

  • 素足での歩行を避ける
  • 個人用スリッパの持参
  • 利用後の速やかな洗浄

職場での配慮

  • 職場についたら靴をかえる、おなじ靴をはき続けなければいけない場合には靴下をかえるなどの工夫が必要です

共通の予防策

1. 足の衛生管理

  • 毎日の足洗い:石鹸を使った丁寧な洗浄
  • 完全な乾燥:特に指の間の水分除去
  • 爪の手入れ:適切な長さの維持、清潔の保持

2. 免疫力の維持

  • 規則正しい生活:十分な睡眠、適度な運動
  • 栄養バランス:ビタミン、ミネラルの適切な摂取
  • 基礎疾患の管理:糖尿病などの適切な治療

3. 早期発見・早期治療

  • 定期的な足の観察:異常の早期発見
  • 症状出現時の速やかな受診:自己診断の回避
  • 家族全体でのチェック:感染拡大の予防

いつ皮膚科を受診すべきか

足の皮膚症状は自己判断が困難な場合が多く、適切な診断と治療を受けるために皮膚科受診のタイミングを知ることが重要です。

即座に受診が必要な症状

1. 感染の拡大を疑う症状

  • 発熱を伴う足の腫れ:蜂窩織炎の可能性
  • 赤い筋状の線:リンパ管炎の徴候
  • 強い痛みと熱感:細菌の二次感染
  • 黄色い膿の排出:化膿性感染症

2. 症状の急激な悪化

  • 短期間での症状範囲拡大
  • かゆみから痛みへの変化
  • 水疱の化膿
  • 歩行困難を伴う症状

早期受診が推奨される状況

1. 自己診断の困難性

湿疹が汗疱なのか水虫なのかは肉眼では判断できません。皮膚科などで、皮膚の一部を取って顕微鏡で白癬菌がいないかどうかを調べてもらってください

  • 水疱の原因が不明
  • 症状が典型的でない
  • 複数の皮膚症状の併発

2. 治療効果の不十分

1週間使用を続けても症状が改善しなかったり、悪化したりする場合は速やかに皮膚科へ

  • 市販薬で改善しない:2週間程度使用しても症状が良くならない場合は、皮膚科を受診するようにしてください
  • 治療中の症状悪化
  • 再発を繰り返す

3. ハイリスク患者

以下の方は症状が軽微でも早期受診が重要:

  • 糖尿病患者:糖尿病の方が感染症にかかると、足の潰瘍や壊疽などが起こり、最悪の場合には足の切断を余儀なくされることがあります
  • 免疫力低下状態:ステロイド治療中、抗がん剤治療中など
  • 循環障害のある方:静脈瘤、動脈硬化症など
  • 高齢者:皮膚再生能力の低下

受診前の準備

1. 症状の記録

  • 発症時期:いつから症状が始まったか
  • 症状の変化:悪化・改善の経過
  • 随伴症状:かゆみ、痛み、発熱など
  • 誘因:新しい靴、薬剤使用、外傷など

2. 使用薬剤の情報

  • 市販薬の使用歴:市販薬を使用したことを医師に必ず伝えましょう
  • 使用期間と効果
  • 副作用の有無

3. 家族歴・既往歴

  • 家族の水虫歴
  • 金属アレルギーの有無
  • 基礎疾患:糖尿病、免疫疾患など
  • 薬物アレルギー歴

受診するべき診療科

第一選択:皮膚科

  • 専門的診断:顕微鏡検査による確定診断
  • 適切な治療選択:病型に応じた治療法
  • 長期フォロー:治療効果の監視

その他の診療科との連携

  • 内科:糖尿病などの基礎疾患管理
  • 歯科:金属アレルギーが疑われる場合
  • 整形外科:足の形態異常がある場合

よくある質問(FAQ)

Q1: 汗疱と水虫の最も確実な見分け方は何ですか?

A: 視診だけでは医師でも正しく判断することは難しい症状ですため、皮膚科での顕微鏡検査が最も確実な方法です。この検査により白癬菌の有無を確認でき、3分程度で診断ができます。汗疱では白癬菌は検出されませんが、水虫では白癬菌が確認されます。

Q2: 汗疱は完治しますか?再発はしないのでしょうか?

A: 汗疱は再発を繰り返しますが、適切な治療により症状をコントロールすることは可能です。症状が軽い場合は、2~3週間で水ぶくれは吸収され、自然と改善されていきます。ただし、原因となる金属アレルギーや体質的要因が解決されない限り、季節的な再発の可能性があります。

Q3: 家族に水虫の人がいます。どのような対策が必要ですか?

A: 水虫は感染力が強く、足白癬患者の約60%は、素足の状態であれば10分間で白癬菌を環境中に散布してしまうため、家族全体での対策が必要です:

  • バスマット、タオル、スリッパの共有禁止
  • 床掃除をまめにしてください
  • 患者は早期の皮膚科受診と治療開始
  • 24時間以内に足を洗えば感染を防ぐことができるため、帰宅後の足洗いを徹底

Q4: 市販薬で治療してもよいですか?

A: 診断が確定していない状態での市販薬使用はお勧めできません。水虫と見誤って抗真菌薬を使用すると、かぶれで汗疱が悪化してしまうことがあります。同様に、水虫にステロイド外用薬を使うことも悪化に繋がるため危険です。また、先に市販されている水虫薬を使ってしまうと、診断の精度が落ちるため、まず皮膚科で正確な診断を受けることが重要です。

Q5: 汗疱の金属アレルギー検査は必要ですか?

A: 以下の場合に検査をお勧めします:

  • 手足両方に症状がある場合
  • 症状が重症または長期間持続する場合
  • 歯科金属治療の既往がある場合
  • 全身に症状が広がっている場合などは、金属アレルギーが疑われるため、金属アレルギー検査を行うこともあります

検査により陽性が確認されれば、原因金属の回避により症状の改善が期待できます。

Q6: 水虫の治療はどのくらいの期間が必要ですか?

A: 水虫の型により治療期間は異なります:

  • 趾間型で 2 カ月以上、小水疱型で 3 カ月以上、角化型で 6 カ月以上というのが治療期間の目安
  • 症状は良くなります。しかし2週間程度の外用では白癬菌は死滅し切らず、生き残っているため、症状改善後も継続治療が重要
  • 爪水虫の場合:治療は半年~1年ほどかかるとされていますが、最近は効果の強い薬が出てきたため、3カ月ほどの治療期間で治るケースもあります

Q7: 妊娠中でも治療は可能ですか?

A: 妊娠中の治療については、以下の点に注意が必要です:

  • 汗疱:妊娠中も使用可能なマイルドなステロイド外用薬や保湿剤による治療
  • 水虫:外用薬は比較的安全ですが、内服薬は妊娠中は避けるべき
  • いずれの場合も皮膚科医と産婦人科医との連携が重要

Q8: 子どもにも同様の症状が現れることはありますか?

A: はい、両方とも子どもにも発症します:

  • 汗疱:かゆみが少ないタイプは小学生くらいまでに比較的よく見られ毎年繰り返すことがありますが、子どもでは成長するにつれて軽快することが多い
  • 水虫:大人からの感染により発症することがあり、早期診断・治療が重要

子どもの場合は症状の説明が困難な場合があるため、皮膚の変化に注意深く観察することが大切です。

まとめ

足にできる汗疱と水虫は、症状が似ているため混同されやすい疾患ですが、原因、治療法、予防法が大きく異なります。

重要なポイント

  1. 自己診断の危険性:水虫だと思って皮膚科を受診する患者さんの2~3人に1人は水虫ではない別の病気であることから、専門医による正確な診断が不可欠です。
  2. 顕微鏡検査の重要性:湿疹が汗疱なのか水虫なのかは肉眼では判断できませんため、皮膚科での顕微鏡検査による白癬菌の有無の確認が診断の決め手となります。
  3. 治療法の違い
    • 汗疱:ステロイド外用薬、保湿、原因除去
    • 水虫:抗真菌薬による菌の除去
  4. 感染性の違い
    • 汗疱:感染することはありません
    • 水虫:強い感染力があり、家族間での対策が必要
  5. 予防の重要性:両疾患とも適切な予防により発症リスクを大幅に軽減できます。

最終的なアドバイス

足の皮膚症状でお困りの場合は、「急がば回れ」で、足に症状があり、「水虫かな?」と思ったら、自分で生兵法をせずに、まず皮膚科専門医を受診し、正しい診断のもとに的確な治療を受けることが重要です。

早期の正確な診断と適切な治療により、どちらの疾患も良好な治療成果が期待できます。症状でお悩みの方は、お気軽にアイシークリニック上野院皮膚科までご相談ください。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会:皮膚真菌症診療ガイドライン2019
  2. 埼玉県皮膚科医会:異汗性湿疹について
  3. 田辺三菱製薬:水虫と間違えやすい水ぶくれについて
  4. 徳島県医師会:水虫、汗疱に関する医療情報
  5. 日本皮膚科学会:足白癬に関するQ&A
  6. 池田模範堂:水虫の原因・症状・治療法について
  7. 各地域皮膚科クリニック:診療実績と症例報告

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監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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