手汗(手掌多汗症)の原因と治療法|日常生活への影響と改善方法を医師が解説

「手汗がひどくて書類が濡れてしまう」「握手をするのが恥ずかしい」「スマートフォンの操作がうまくできない」このような悩みを抱えている方は少なくありません。手のひらに過剰な汗をかく症状は「手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)」と呼ばれ、日本人の約5%が該当するといわれています。手掌多汗症は単なる「汗っかき」とは異なり、日常生活や仕事、対人関係に大きな支障をきたすことがある疾患です。本記事では、手掌多汗症の原因から診断基準、治療法、日常生活での対策まで、医学的な観点から詳しく解説します。手汗でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。


目次

  1. 手掌多汗症(手汗)とは
  2. 手掌多汗症の原因
  3. 手掌多汗症の重症度と診断基準
  4. 手掌多汗症の治療
  5. 手掌多汗症の日常生活での対策
  6. 手掌多汗症と心理的影響
  7. 手掌多汗症の治療を受ける際のポイント
  8. 当院での診療傾向【医師コメント】
  9. よくある質問
  10. 参考文献

この記事のポイント

手掌多汗症は日本人の約5%に見られる疾患で、外用療法・イオントフォレーシス・ボツリヌス注射・手術など段階的な治療法があり、当院でも適切な治療により症状コントロールが可能だと医師が解説している。

🎯 手掌多汗症(手汗)とは

手掌多汗症は、手のひらに通常の体温調節に必要な量を超えて過剰に発汗する疾患です。多汗症は全身に症状が現れる「全身性多汗症」と、特定の部位に限局して症状が現れる「局所性多汗症」に分類されます。手掌多汗症は局所性多汗症の一種であり、特に手のひらに汗が集中して現れます。

🦠 手掌多汗症の特徴

手掌多汗症には以下のような特徴があります。

発症時期は思春期から若年成人期に多く、10代後半から20代前半にかけて症状が顕著になることが多いです。小児期から症状が見られるケースもあり、幼少期から手汗に悩まされてきたという方も珍しくありません。

症状の出現パターンとしては、緊張や不安を感じる場面で悪化しやすいという特徴があります。しかし、リラックスしている状態でも発汗が続くことがあり、睡眠中は通常発汗が止まります。この睡眠中の発汗停止は、原発性手掌多汗症の重要な診断ポイントの一つとなっています。

発汗の程度は個人差が大きく、軽度の方は手が湿っている程度ですが、重度の方は手から汗が滴り落ちるほどの症状が見られます。

👴 手掌多汗症の発症率

手掌多汗症の発症率は、日本においては約5.3%といわれており、決して珍しい疾患ではありません。世界的に見ても、人口の1〜3%程度が何らかの局所性多汗症を有しているとされています。

男女比についてはほぼ同等とされていますが、医療機関を受診する割合は女性のほうがやや高い傾向にあります。これは、社会的な場面での手汗が女性のほうが気になりやすいためと考えられています。

Q. 手掌多汗症はどのくらいの人が発症する病気ですか?

手掌多汗症は日本人の約5.3%に見られる疾患で、決して珍しいものではありません。思春期から若年成人期に発症しやすく、10代後半〜20代前半に症状が顕著になることが多いです。男女比はほぼ同等ですが、医療機関を受診する割合は女性がやや高い傾向にあります。

📋 手掌多汗症の原因

手掌多汗症の原因は、大きく分けて「原発性(一次性)」と「続発性(二次性)」に分類されます。原発性は特定の原因疾患がないもの、続発性は他の疾患や薬剤などが原因となっているものを指します。

🔸 原発性手掌多汗症の原因

原発性手掌多汗症は、明確な原因疾患がないにもかかわらず過剰な発汗が起こる状態です。その発症メカニズムについては完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。

自律神経系の異常が最も重要な要因とされています。発汗は交感神経によって制御されており、エクリン汗腺という汗を分泌する器官を刺激します。原発性手掌多汗症の方は、この交感神経の活動が過剰になっており、通常よりも多くの汗を分泌してしまいます。

遺伝的要因も重要な役割を果たしています。家族歴がある方は発症リスクが高く、親や兄弟姉妹に多汗症の方がいる場合、自身も発症する確率が高まります。研究によると、多汗症患者の約30〜65%に家族歴があるとされています。

精神的要因も症状の悪化に関与しています。緊張、不安、ストレスなどの精神的な状態が交感神経を活性化させ、発汗を促進します。ただし、精神的要因は発汗を「悪化」させる要因であり、根本的な「原因」ではないことに注意が必要です。

💧 続発性手掌多汗症の原因

続発性手掌多汗症は、他の疾患や薬剤などが原因となって発症するものです。主な原因として以下が挙げられます。

内分泌疾患として、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、糖尿病、褐色細胞腫、末端肥大症などがあります。これらの疾患では、ホルモンバランスの異常により全身の代謝が亢進し、発汗量が増加することがあります。

神経疾患では、脊髄損傷、末梢神経障害、パーキンソン病などが多汗症を引き起こすことがあります。神経系の異常により、発汗を制御する機能が障害されることが原因です。

感染症として、結核、HIV感染症、心内膜炎などの慢性感染症では、発熱に伴う発汗や寝汗が見られることがあります。

悪性腫瘍では、リンパ腫や白血病などの血液腫瘍で、寝汗を主症状とする多汗が現れることがあります。

薬剤性の多汗症を引き起こす可能性のある薬剤として、抗うつ薬、解熱鎮痛剤、降圧剤、糖尿病治療薬などがあります。服用中の薬剤がある場合は、主治医に相談することが重要です。

更年期障害では、女性ホルモンの減少に伴い、ホットフラッシュ(のぼせ)や発汗が生じることがあります。

✨ エクリン汗腺と発汗のメカニズム

人間の皮膚には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類の汗腺があります。手掌多汗症に関係するのはエクリン汗腺です。

エクリン汗腺は全身に分布しており、特に手のひら、足の裏、額に多く存在します。1平方センチメートルあたりの汗腺数は、体の他の部位が100〜200個程度であるのに対し、手のひらでは約600〜700個と非常に高密度です。

発汗は視床下部にある体温調節中枢によって制御されています。体温が上昇すると、交感神経を介してエクリン汗腺が刺激され、汗が分泌されます。原発性手掌多汗症では、この調節機構が過敏になっており、わずかな刺激でも過剰な発汗が起こると考えられています。

Q. 手掌多汗症の原因として何が考えられますか?

手掌多汗症の原因は「原発性」と「続発性」に分類されます。原発性は交感神経の過剰活動や遺伝的要因が関与しており、多汗症患者の約30〜65%に家族歴があります。続発性は甲状腺機能亢進症・糖尿病などの内分泌疾患や、抗うつ薬などの薬剤が原因となる場合があります。

💊 手掌多汗症の重症度と診断基準

手掌多汗症の診断と重症度評価は、適切な治療法を選択するために重要です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、診断基準と重症度分類が定められています。

📌 原発性局所多汗症の診断基準

原発性局所多汗症の診断には、局所的に過剰な発汗が6か月以上続いていることに加え、以下の6項目のうち2項目以上を満たす必要があります

1つ目は、発症が25歳以下であることです。原発性手掌多汗症は若年層で発症することが多く、この年齢基準は重要な判断材料となります。

2つ目は、左右対称性に発汗が見られることです。手掌多汗症では、両手ともに同程度の発汗が認められるのが特徴です。

3つ目は、睡眠中は発汗が止まることです。原発性多汗症では、就寝中は交感神経活動が低下するため発汗が減少します。

4つ目は、週1回以上の多汗エピソードがあることです。症状の頻度も診断の重要な基準となります。

5つ目は、家族歴があることです。遺伝的要因が関与していることが多いため、家族に同様の症状がある場合は診断の裏付けとなります。

6つ目は、日常生活に支障をきたしていることです。多汗症は単なる汗っかきとは異なり、生活の質(QOL)に影響を与える疾患です。

📌 ▶️ 重症度の分類

手掌多汗症の重症度は、発汗の程度によって3段階に分類されます。

レベル1(軽度)は、手のひらが湿っている程度で、触れると汗ばんでいることがわかる状態です。見た目には光っている程度で、日常生活への支障は比較的軽微です。

レベル2(中等度)は、手のひらに水滴ができる程度の発汗があり、湿った状態が持続します。紙が湿って書きにくい、物を持つと滑りやすいなど、日常生活に支障が出始めます。

レベル3(重度)は、手のひらから汗が滴り落ちる状態です。書類が汗で濡れてしまう、電子機器の操作に支障が出るなど、日常生活や仕事に著しい影響があります。

🔹 HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)

HDSSは、多汗症の重症度を患者さん自身が評価するための尺度です。以下の4段階で評価します。

スコア1は「発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない」状態です。

スコア2は「発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある」状態です。

スコア3は「発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある」状態です。

スコア4は「発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある」状態です。

HDSSスコアが3または4の場合は重症と判断され、積極的な治療介入が推奨されます

🏥 手掌多汗症の治療法

手掌多汗症の治療法は、外用療法、内服療法、注射療法、イオントフォレーシス、手術療法など多岐にわたります。重症度や患者さんの希望、生活環境などを考慮して、最適な治療法を選択します。

📍 外用療法(塗り薬)

外用療法は、手掌多汗症治療の第一選択となることが多い治療法です。

塩化アルミニウム外用薬は、最も広く使用されている外用薬です。汗腺の開口部を物理的に閉塞し、発汗を抑制します。濃度は10〜30%のものが使用され、就寝前に塗布し、翌朝洗い流すという方法で使用します。効果は比較的穏やかで、継続使用が必要です。副作用として、かぶれやかゆみ、ヒリヒリ感が生じることがあります。

抗コリン薬外用薬は、2020年に保険適用となったソフピロニウム臭化物(エクロックゲル)や、2022年に適用されたオキシブチニン塩酸塩(アポハイドローション)があります。これらは汗腺に作用するアセチルコリンをブロックすることで発汗を抑制します。1日1回の塗布で効果が期待でき、手掌多汗症に対して高い有効性が報告されています。

💫 内服療法(飲み薬)

内服療法は、外用療法で効果不十分な場合や、複数部位に多汗がある場合に検討されます。

抗コリン薬の内服として、プロバンサイン(プロパンテリン臭化物)が保険適用されています。全身の発汗を抑制する効果がありますが、口渇、便秘、排尿困難、眼のかすみなどの副作用が出やすいという欠点があります。緑内障や前立腺肥大症のある方は使用できません。

漢方薬として、防已黄耆湯や桂枝加黄耆湯などが多汗症に対して使用されることがあります。効果は穏やかですが、副作用が少ないという利点があります。

🦠 ボツリヌス毒素注射療法

ボツリヌス毒素(ボトックス)注射は、手掌多汗症に対して高い効果を示す治療法です。ボツリヌス毒素は、神経と汗腺の接合部でアセチルコリンの放出を阻害し、発汗を抑制します。

治療は、手のひら全体に細かく注射を行います。効果は注射後数日〜1週間程度で現れ、4〜9か月程度持続します。効果が減弱してきたら、再度注射を行います。

手掌への注射は痛みを伴うため、局所麻酔(ブロック麻酔やクリーム麻酔)を併用することが一般的です。副作用として、注射部位の内出血や一時的な手の筋力低下が起こることがありますが、いずれも一過性です。

日本では、原発性腋窩多汗症(わき汗)に対しては保険適用がありますが、手掌多汗症に対しては保険適用外となっており、自費診療となります。

👴 イオントフォレーシス療法

イオントフォレーシスは、水道水に微弱な電流を流し、その中に手を浸すことで発汗を抑制する治療法です。電流によって汗腺のイオンチャネルが影響を受け、発汗が抑制されると考えられています。

治療は、1回20〜30分程度、週2〜3回の頻度で行います。効果が現れるまでに数週間かかることがあり、効果を維持するためには継続的な治療が必要です。

副作用は比較的少なく、軽度のピリピリ感や皮膚の乾燥程度です。ただし、ペースメーカーを装着している方や妊娠中の方は使用できません

医療機関での治療のほか、家庭用の機器も販売されており、自宅でも継続して治療を行うことができます。

🔸 手術療法(胸腔鏡下交感神経遮断術)

胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS:Endoscopic Thoracic Sympathectomy)は、手掌多汗症に対する外科的治療法です。胸部の交感神経節を切断または焼灼することで、手のひらへの発汗信号を遮断します。

手術は全身麻酔下で行われ、胸部に小さな穴を開けて内視鏡を挿入し、交感神経を処置します。手術時間は両側で1〜2時間程度で、入院期間は2〜4日程度です。

手術の効果は即効性があり、手術直後から手掌の発汗がほぼ消失します。効果は永続的であり、再発率は低いとされています。

ただし、代償性発汗という副作用に注意が必要です。これは、手掌の発汗が止まる代わりに、胸部、背部、腹部、大腿部など他の部位の発汗が増加する現象です。代償性発汗は程度の差こそあれ、ほぼ全例に見られるとされており、重度の代償性発汗により日常生活に支障をきたす方もいます。そのため、手術を検討する際は、代償性発汗のリスクについて十分な説明を受け、理解した上で決断することが重要です。

💧 治療法の選択

手掌多汗症の治療は、まず外用療法から開始し、効果不十分な場合に他の治療法を検討するのが一般的です。

軽度〜中等度の方には、塩化アルミニウム外用薬や抗コリン薬外用薬が推奨されます。これらで効果不十分な場合は、イオントフォレーシスやボツリヌス毒素注射を検討します。

重度の方や、他の治療で効果が得られない方には、手術療法が検討されます。ただし、代償性発汗のリスクを十分に理解した上で決断する必要があります。

治療法の選択にあたっては、症状の程度、生活スタイル、治療の利便性、費用、副作用のリスクなど、様々な要因を総合的に考慮することが大切です。

Q. 手掌多汗症にはどのような治療法がありますか?

手掌多汗症の治療は外用療法から段階的に行うのが一般的です。まず塩化アルミニウム外用薬や保険適用の抗コリン薬外用薬(エクロックゲル等)を使用し、効果不十分な場合はイオントフォレーシスやボツリヌス毒素注射(自費)を検討します。重度の場合は胸腔鏡下交感神経遮断術も選択肢となります。

⚠️ 手掌多汗症の日常生活での対策

医療機関での治療と併せて、日常生活での対策を行うことで、症状の軽減や生活の質の向上が期待できます。

✨ 生活習慣の改善

ストレス管理は手掌多汗症の症状コントロールに重要です。精神的なストレスは交感神経を活性化させ、発汗を促進します。深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れることで、ストレスを軽減し、症状の悪化を防ぐことができます。

規則正しい生活リズムを維持することも大切です。十分な睡眠をとり、自律神経のバランスを整えることで、症状の安定につながります。冬にやる気が出ない方や生活リズムが乱れがちな方は、自律神経の整え方についても参考にしてみてください。

食事面では、辛い食べ物やカフェイン、アルコールは発汗を促進する可能性があるため、摂取量を控えめにすることをおすすめします。

適度な運動は、全身の血行を促進し、自律神経のバランスを整える効果があります。ストレッチで血行促進を図ることも、症状の改善に役立つ場合があります。

📌 仕事・学校での工夫

書類作業が多い方は、紙の下にハンカチやタオルを敷くことで、書類が濡れるのを防ぐことができます。また、撥水加工された紙や、水に強いペンを使用するのも一つの方法です。

パソコン作業では、手汗でキーボードやマウスが滑りやすくなることがあります。吸湿性のあるリストレストやマウスパッドを使用したり、こまめに手を拭いたりすることで対処できます。

プレゼンテーションや会議など、緊張しやすい場面では、事前に深呼吸をしてリラックスする、手のひらにベビーパウダーをつけておくなどの対策が有効です。

🦠 ▶️ ▶️ 対人場面での対策

握手は手掌多汗症の方にとって最も緊張する場面の一つです。可能であれば、握手の代わりにお辞儀や会釈で挨拶する、名刺交換で代用するなどの方法があります。

どうしても握手が必要な場面では、事前にハンカチで手を拭いておく、相手に「手が冷たくてすみません」などと軽く声をかけておくことで、心理的な負担を軽減できます。

信頼できる人には、自分の症状について説明しておくことも一つの方法です。多汗症は医学的な疾患であり、本人の努力だけでは制御できないものであることを理解してもらうことで、対人関係のストレスを軽減できます。

🔹 グッズの活用

制汗剤は、手掌用に開発された製品を使用することをおすすめします。一般的な腋用の制汗剤は手に塗ると滑りやすくなることがあるため、手掌用の製品を選びましょう。

吸湿性の高いハンカチやタオルを常に携帯し、こまめに手を拭くことで、不快感を軽減できます。

手袋は、作業時の滑り止めや、人との接触を避ける目的で使用できます。薄手の綿手袋や、指先が出るタイプの手袋など、用途に応じて選択しましょう。

🔍 手掌多汗症と心理的影響

手掌多汗症は、身体的な症状だけでなく、心理的にも大きな影響を与えることがあります。

📍 社会生活への影響

手掌多汗症の方は、人との握手を避けたい、紙の資料を触りたくない、人前でペンを持ちたくないなど、様々な場面で制限を感じることがあります。これらの制限は、仕事のパフォーマンスや対人関係に影響を及ぼす可能性があります。

特に思春期の若い方にとっては、異性との交際や友人関係において大きなストレスとなることがあります。手をつなぐことへの不安から、恋愛に消極的になってしまうケースも少なくありません。

💫 心理的な問題

手掌多汗症に悩む方の中には、うつ症状や不安障害を併発する方もいます。「また汗が出たらどうしよう」という予期不安が、さらに交感神経を活性化させ、症状を悪化させるという悪循環に陥ることもあります。

自己肯定感の低下も見られます。「自分だけが異常なのではないか」「汗をかく自分は恥ずかしい」といった否定的な思考パターンに陥りやすく、これが日常生活の質をさらに低下させることがあります。

🦠 心理的サポートの重要性

手掌多汗症の治療においては、身体的な治療だけでなく、心理的なサポートも重要です。症状に対する正しい理解、ストレス管理の方法、認知行動療法などが有効な場合があります。

症状が心理的な問題を引き起こしている場合は、皮膚科や形成外科での治療と並行して、心療内科や精神科でのカウンセリングを受けることも検討してみてください。

Q. 手術療法の代償性発汗とはどのような症状ですか?

代償性発汗とは、胸腔鏡下交感神経遮断術後に手掌の発汗が止まる代わりに、胸部・背部・腹部・大腿部など他の部位の発汗が増加する現象です。程度の差はあれほぼ全例に見られ、重度の場合は手術前より生活に支障をきたすこともあるため、手術前に医師から十分な説明を受けることが重要です。

📝 手掌多汗症の治療を受ける際のポイント

手掌多汗症の治療を検討している方に向けて、受診から治療までのポイントをまとめます。

👴 受診する診療科

手掌多汗症の治療は、皮膚科、形成外科、美容外科などで受けることができます。手術療法を検討している場合は、胸腔鏡手術を行っている外科を受診することになります。

まずはお近くの皮膚科を受診し、症状の評価と治療方針の相談をすることをおすすめします。必要に応じて、専門的な治療を行っている医療機関を紹介してもらえます。

🔸 診察時に伝えること

診察時には、以下の点を医師に伝えましょう。

症状について、いつ頃から始まったか、どのような場面で悪化するか、睡眠中も発汗があるかなどを伝えます。

日常生活への影響として、仕事や学業、対人関係にどの程度支障が出ているかを具体的に伝えます。

家族歴について、血縁者に多汗症の方がいるかどうかを確認しておきましょう。

既往歴や服用中の薬剤についても、続発性多汗症の可能性を除外するために重要な情報です。

これまでに試した治療法や対策があれば、その効果についても伝えましょう。

💧 治療の継続と効果の評価

手掌多汗症の治療は、多くの場合、一度で完治するものではありません。外用療法やイオントフォレーシスは継続的な治療が必要ですし、ボツリヌス毒素注射も効果の持続期間が限られています。

治療効果は個人差があるため、一つの治療法で効果が不十分な場合は、別の治療法を試すことも検討しましょう。医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。

治療経過を記録しておくと、効果の評価に役立ちます。症状の程度、治療の頻度、副作用の有無などを記録しておきましょう。

✨ 治療費用について

手掌多汗症の治療費用は、治療法によって異なります。

保険適用となる治療として、塩化アルミニウム外用薬(一部)、抗コリン薬外用薬(エクロックゲル、アポハイドローション)、抗コリン薬内服(プロバンサイン)、イオントフォレーシス、胸腔鏡下交感神経遮断術があります。

保険適用外(自費診療)となる治療として、ボツリヌス毒素注射(手掌への注射)があります。ボツリヌス毒素注射は腋窩多汗症には保険適用がありますが、手掌多汗症には適用されていないため、自費となります。

治療を始める前に、費用についても医療機関に確認しておくことをおすすめします。

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太医師(当院治療責任者)より

当院でも手掌多汗症のご相談は増加傾向にあり、特に学生さんや若い社会人の方からのお問い合わせが目立ちます。患者さんの傾向として、長年悩んでいたものの『体質だから仕方ない』と諦めていた方が、インターネットで治療法を知って来院されるケースが多いです。実際に治療を開始された方からは、『もっと早く相談すればよかった』というお声をよくいただきます。手掌多汗症は適切な治療により症状をコントロールできる疾患です。症状の程度や生活スタイルに合わせて、外用療法から段階的に治療を進めていくことが多いですが、お一人おひとりのご希望に沿った治療プランをご提案しておりますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。」

💡 よくある質問

手掌多汗症は自然に治りますか?

原発性手掌多汗症は、成長とともに自然に軽快することは稀です。思春期に発症した場合でも、成人後も症状が持続することが多いとされています。ただし、症状の程度は年齢とともに変化することがあり、加齢に伴い若干軽減するケースもあります。根本的な改善を目指す場合は、医療機関での治療を検討することをおすすめします。

手掌多汗症の市販薬はありますか?

市販の制汗剤として、塩化アルミニウムを含む製品が販売されています。濃度は医療機関で処方されるものより低いことが多いですが、軽度の症状であれば一定の効果が期待できます。ただし、抗コリン薬外用薬(エクロックゲルやアポハイドローション)は処方薬となるため、医療機関の受診が必要です。市販の制汗剤で効果が不十分な場合は、医療機関への相談をおすすめします。

手掌多汗症とわきが(腋臭症)は関係がありますか?

手掌多汗症とわきが(腋臭症)は、それぞれ異なるメカニズムで起こる症状です。手掌多汗症はエクリン汗腺から分泌される無臭の汗が過剰になる状態であり、わきがはアポクリン汗腺から分泌される汗が皮膚常在菌によって分解されることで臭いが生じる状態です。ただし、両方の症状を併せ持つ方もいらっしゃいます。

手術後の代償性発汗はどの程度起こりますか?

胸腔鏡下交感神経遮断術後の代償性発汗は、程度の差こそあれ、ほぼ全ての方に見られるとされています。軽度であれば日常生活に支障がないことも多いですが、重度の場合は胸部、背部、腹部、大腿部などの発汗が著しく増加し、手術前よりも生活に支障をきたすケースもあります。手術を検討する際は、この代償性発汗のリスクについて医師から十分な説明を受け、ご自身で納得した上で決断することが重要です。

子どもの手汗がひどいのですが、何歳から治療できますか?

手掌多汗症の治療は、症状の程度や治療法によって開始できる年齢が異なります。塩化アルミニウム外用薬は、皮膚への刺激に注意しながら小児でも使用可能です。抗コリン薬外用薬については、添付文書上の適応を確認する必要があります。イオントフォレーシスは一般的に小学校高学年以上であれば実施可能です。ボツリヌス毒素注射や手術療法については、年齢や成長発達を考慮して慎重に適応を判断する必要があります。お子さんの手汗でお悩みの場合は、まず皮膚科を受診して相談されることをおすすめします。


✨ 参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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