精神的に疲れたときの症状と回復法|心の疲れを放置しないために

「最近、何をしていても疲れが取れない」「朝起きるのがつらい」「気分が沈んで何もやる気が起きない」――このような状態に心当たりはありませんか。現代社会では、仕事や人間関係、将来への不安など、さまざまなストレスにさらされる機会が増えています。厚生労働省が行った調査によると、日常生活において悩みやストレスを抱えている人は約75%にのぼり、仕事や職業生活に関して強い不安やストレスを感じている人は82%以上という結果が出ています。精神的な疲労は、体の疲れとは異なり、休息だけでは回復しにくいことがあります。放置しておくと、うつ病や自律神経失調症などの深刻な健康問題に発展する可能性もあるため、早い段階で適切な対処を行うことが大切です。本記事では、精神的な疲れのメカニズムから原因、症状、回復法、そして医療機関への相談が必要なケースまで、詳しく解説していきます。


目次

  1. 精神的に疲れたとはどのような状態か
  2. 精神的疲労の主な原因
  3. 精神的疲労のサインと症状
  4. 精神的疲労と関連する疾患
  5. 精神的疲労からの回復法
  6. 精神的疲労を予防するセルフケア
  7. 医療機関への相談が必要なケース
  8. 精神的疲労に対する治療とサポート
  9. よくある質問

精神的に疲れたとはどのような状態か

精神的な疲労とは、脳を酷使したり、悩みごとや不安が続いたりすることで、心が休まらなくなり、日常生活や仕事に支障が出るような状態を指します。肉体的な疲労が筋肉や体の消耗であるのに対し、精神的な疲労は脳や心の消耗であり、その性質は大きく異なります。

私たちの脳は、長時間の考え事や厳しいストレス環境にさらされると、大量の活性酸素が発生します。この活性酸素が神経細胞や重要なタンパク質を傷つけ、そのダメージを修復するために生じた免疫物質が疲労感を引き起こすと考えられています。これは脳に備わった一種の防御機構であり、「これ以上無理をしないでほしい」という体からのサインなのです。

精神的な疲労の大きな特徴は、休息を取っても回復しにくい点にあります。肉体的な疲れであれば、十分な睡眠や休養で回復できることが多いのですが、精神的な疲労の場合は、ストレスの原因が解消されない限り、いくら体を休めても心の疲れが取れにくい傾向があります。むしろ、休んでいること自体に罪悪感を感じてしまい、さらに疲労が蓄積するという悪循環に陥ることもあります。

また、精神的な疲労は体の症状としても現れます。頭痛や肩こり、胃腸の不調、不眠、食欲の変化など、一見すると体の病気のように見える症状が出ることも少なくありません。このため、内科などを受診しても明確な原因が見つからず、「気のせい」「自律神経の乱れ」と言われて適切な対処が遅れてしまうケースもあります。

精神的疲労の主な原因

精神的な疲労を引き起こす原因は多岐にわたります。現代人が抱えるストレスは複雑化しており、単一の原因ではなく、複数の要因が重なり合って心の疲労が蓄積していくことがほとんどです。

仕事や職場環境によるストレス

精神的疲労の原因として最も多いのが、仕事に関するストレスです。長時間労働や残業の常態化、厳しいノルマ、責任の重い業務など、過重な負担が続くと心身ともに消耗していきます。また、上司や同僚との人間関係の問題、ハラスメント、職場での孤立感なども大きなストレス要因となります。

特に問題となるのは、努力に見合った評価や報酬が得られないと感じる状況です。どれだけ頑張っても認められない、昇進や昇給につながらないという状態が続くと、モチベーションが低下し、心が疲弊していきます。リモートワークの普及により、仕事とプライベートの境界があいまいになり、常に仕事のことが頭から離れなくなってしまう人も増えています。

人間関係の悩み

職場だけでなく、家族や友人、恋人など、プライベートな人間関係もストレスの原因となります。家庭内の問題、育児や介護の負担、パートナーとの不和、友人関係のトラブルなど、身近な人間関係ほど精神的な負担が大きくなりがちです。人に気を遣いすぎる性格の方は、相手の顔色をうかがいながら過ごすことで、知らず知らずのうちに心が疲弊していることがあります。

将来への不安や経済的問題

経済的な不安定さ、将来の見通しの不透明さも精神的な疲労を招きます。収入への不安、失業の恐れ、老後の生活への心配、住宅ローンや借金などの経済的負担は、慢性的なストレス源となります。特に、解決の見通しが立たない問題は、常に頭の片隅にあり続け、心を休ませることができなくなります。

環境の変化やライフイベント

引っ越し、転職、結婚、出産、離婚、近親者の死別など、大きなライフイベントは、たとえそれが喜ばしいものであっても精神的な負担となります。新しい環境への適応には大きなエネルギーを要し、これまでの生活パターンが変わることで心身のバランスが崩れやすくなります。

生活習慣の乱れ

睡眠不足、不規則な食生活、運動不足、過度の飲酒やカフェイン摂取なども、精神的な疲労を悪化させる要因です。特に睡眠の質の低下は、脳の回復を妨げ、ストレスへの耐性を下げてしまいます。また、夜型の生活や昼夜逆転は、自律神経のバランスを乱し、心身の不調を招きやすくなります。

精神的疲労のサインと症状

精神的な疲労が蓄積すると、心と体にさまざまなサインが現れます。以下のような症状に心当たりがある場合は、精神的な疲れが溜まっている可能性があります。

心の症状

精神的な疲労が進むと、まず感情面での変化が現れます。以前は楽しめていたことに興味が持てなくなる、何をしても楽しいと感じられない、気分が落ち込みやすくなるといった症状は、心が疲れているサインです。

また、イライラしやすくなる、些細なことで怒りを感じる、涙もろくなるなど、感情のコントロールが難しくなることもあります。集中力や判断力の低下、物忘れが増える、決断ができなくなるといった認知機能の変化も見られます。やる気が出ない、何をするにも億劫に感じる、自分を責める気持ちが強くなるなどの症状は、精神的な疲労が深刻化しているサインかもしれません。

体の症状

精神的な疲労は、体にもさまざまな症状として現れます。慢性的な疲労感や倦怠感、朝起きられない、起きても疲れが取れないといった症状は代表的なものです。頭痛や頭重感、肩こり、首のこり、腰痛なども精神的なストレスと関連していることがあります。

胃痛や胸やけ、吐き気、食欲不振または過食、便秘や下痢といった消化器系の症状も多く見られます。動悸や息切れ、めまい、立ちくらみ、手足の冷えやしびれ、発汗なども自律神経の乱れによる症状として現れることがあります。

睡眠の問題

精神的な疲労と睡眠は密接に関連しています。なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めてしまう、眠りが浅く熟睡感がないといった不眠の症状は、心が休まっていないサインです。反対に、いくら寝ても疲れが取れない、日中も眠くて仕方がないという過眠の症状が出ることもあります。

行動の変化

精神的に疲れると、行動にも変化が現れます。人と会うのが億劫になる、外出を避けるようになる、趣味や好きなことへの関心が薄れるといった社会的な引きこもり傾向が見られることがあります。仕事のパフォーマンスが低下する、ミスが増える、遅刻や欠勤が増えるなども注意が必要なサインです。また、お酒やタバコの量が増える、暴飲暴食に走る、衝動的な買い物が増えるなど、ストレスを発散しようとして不健康な行動に走ることもあります。

精神的疲労と関連する疾患

精神的な疲労が長期間続くと、さまざまな心身の疾患に発展する可能性があります。早期に気づいて適切な対処をすることが大切です。

うつ病

精神的な疲労が長期化すると、うつ病に発展することがあります。うつ病は、気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなったりして、日常生活に支障が出る状態です。うつ病の基本的な症状には、強い抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲や体重の変化、睡眠障害、精神運動の障害(焦燥感や動作の緩慢化)、疲れやすさ、気力の減退、強い罪責感、思考力や集中力の低下などがあります。

厚生労働省の調査によると、日本におけるうつ病の生涯有病率は6.7%で、およそ15人に1人がうつ病を経験するという計算になります。うつ病は決して珍しい病気ではなく、誰でもかかる可能性があります。うつ病の診断基準として、上記の症状のうち抑うつ気分または興味・喜びの喪失のいずれかを含み、合計5つ以上の症状がほとんど1日中、ほとんど毎日、2週間以上続いている場合に診断されます。

燃え尽き症候群(バーンアウト)

燃え尽き症候群は、それまで熱心に仕事や活動に打ち込んでいた人が、突然やる気や意欲を失ってしまう状態です。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)では、職場での慢性的なストレスが適切に管理されなかったことによって生じる現象として位置づけられています。

燃え尽き症候群の主な症状には、エネルギーの枯渇や極度の疲労感、仕事への否定的・冷笑的な感情の増加、仕事上の有能感の低下があります。責任感が強い人、完璧主義者、真面目で頑張り屋の人がなりやすいとされています。医学的にはうつ病に近い状態と考えられており、放置すると本格的なうつ病に移行することもあります。

自律神経失調症

自律神経失調症は、ストレスによって脳が疲労し、自律神経のバランスが崩れることで全身にさまざまな症状が現れる状態です。自律神経は私たちの意思とは関係なく、呼吸、心拍、消化、体温調節などの生命維持に必要な機能を調整しています。交感神経(活動時に働く)と副交感神経(休息時に働く)のバランスが崩れると、体のさまざまな部位に不調が生じます。

主な症状としては、めまい、動悸、息切れ、発汗過多、頭痛、肩こり、手足の冷え、胃腸の不調、便秘や下痢、不眠、疲れやすさなどがあります。複数の症状が同時に現れたり、症状が出たり消えたりすることも特徴です。適切な生活習慣の改善と休養を続けることで、多くの場合は緩やかに改善していきます。

適応障害

適応障害は、特定のストレス要因に反応して情緒面や行動面に症状が現れる状態です。新しい環境への適応困難、職場での問題、人間関係のトラブルなど、明確なストレス要因があり、そのストレスの始まりから3か月以内に症状が出現することが特徴です。症状は抑うつ気分、不安、心配、行動面の問題など多岐にわたります。ストレス要因が解消されれば症状は改善しますが、ストレスが長期化するとうつ病などに移行することもあります。

慢性疲労症候群

慢性疲労症候群は、原因不明の強い疲労感が6か月以上持続または再発を繰り返す疾患です。休息を取っても疲れが回復せず、日常生活に著しい支障をきたします。微熱、リンパ節の腫れ、筋肉痛、関節痛、頭痛、思考力の低下、睡眠障害などの症状を伴うことがあります。精神的なストレスも発症や悪化に関与していると考えられています。

精神的疲労からの回復法

精神的な疲労から回復するためには、心と体の両面からアプローチすることが大切です。以下に、日常生活で取り入れられる回復法をご紹介します。

十分な休息と睡眠を確保する

精神的な疲労からの回復には、まず心身を休ませることが基本です。無理をせず、できるだけ早めに休むことを心がけましょう。睡眠は脳の疲労を回復させる最も重要な手段です。質の良い睡眠を確保するために、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控える、寝室の環境を整える、規則正しい生活リズムを維持するなどの工夫が効果的です。

また、可能であれば仕事を休む、休暇を取るなど、ストレスの原因となっている環境から一時的に距離を置くことも大切です。休むことに罪悪感を感じる方もいらっしゃいますが、心身の健康を守ることは、長期的に見れば自分のためだけでなく、周囲の人のためにもなります。

ぼーっとする時間を作る

精神的な疲労は、脳や心が疲れている証拠です。1日のうち数分でも構わないので、意識的にぼーっとする時間を作りましょう。完全に頭を空っぽにすることは難しくても、ただ目を閉じて数分間過ごすだけでも効果があります。一人だけの時間を確保し、あらゆることから意識を解放できると、心のケアにつながります。

適度な運動を取り入れる

運動は精神的な疲労の回復に効果があります。体を動かすことでストレスホルモンが減少し、気分を安定させるセロトニンやエンドルフィンなどの脳内物質が分泌されます。激しい運動である必要はなく、ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、自分のペースでできる軽い運動から始めることをおすすめします。屋外で体を動かすと、日光を浴びることでビタミンDが生成され、体内時計のリセットにも役立ちます。

自分なりのリラックス法を見つける

ストレスを和らげ、心をリラックスさせる方法は人それぞれです。「これをやると元気が出る」「リラックスできる」と思える自分なりの方法を見つけることが大切です。好きな音楽を聴く、映画や読書を楽しむ、友人と話す、入浴でゆっくり体を温める、アロマテラピーを取り入れる、瞑想や深呼吸をするなど、さまざまな方法があります。大切なのは、「やってみたい」「心地よい」という気持ちを基準にすることで、「こうすべき」という義務感で行うのではありません。

バランスの取れた食事を心がける

精神的な健康と食事は密接に関連しています。バランスの良い食事は、心身のエネルギーを補給し、ストレスへの耐性を高めます。特に、自律神経のバランスを整え、精神を安定させるセロトニンの分泌を助ける栄養素を意識して摂取すると良いでしょう。セロトニンの材料となるトリプトファンは、大豆製品、乳製品、卵、魚、バナナなどに多く含まれています。また、ビタミンB群(豚肉、玄米、ナッツ類など)やマグネシウム(海藻類、ナッツ類など)も精神の安定に役立ちます。

誰かに話を聞いてもらう

悩みや不安を一人で抱え込まず、信頼できる人に話を聞いてもらうことも大切な回復法です。話すことで気持ちが整理され、心の負担が軽くなることがあります。家族や友人、職場の同僚など身近な人に相談してみましょう。身近な人に話しにくい場合は、専門の相談窓口を利用する方法もあります。厚生労働省が提供する「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)や、各地域の精神保健福祉センターなど、無料で相談できる窓口があります。

精神的疲労を予防するセルフケア

精神的な疲労を溜め込まないためには、日頃からのセルフケアが重要です。以下のポイントを意識して、ストレスと上手に付き合っていきましょう。

規則正しい生活リズムを維持する

人間の体には体内時計があり、規則正しい生活リズムを維持することで自律神経のバランスが整います。毎日できるだけ同じ時間に起床し、朝日を浴びることで体内時計をリセットしましょう。食事も決まった時間に摂るようにし、夜更かしを避けて十分な睡眠時間を確保することが大切です。

仕事とプライベートを明確に分ける

特にリモートワークが増えた現代では、仕事とプライベートの境界があいまいになりがちです。業務時間を終えたらメールや電話は見ないようにする、仕事用のスペースと生活空間を分ける、オンとオフの切り替えを意識的に行うなど、メリハリをつけることが精神的な疲労の予防につながります。

完璧主義を手放す

完璧を求めすぎると、常に自分にプレッシャーをかけ続けることになり、精神的な消耗が激しくなります。「80点でも十分」「できる範囲でやればいい」という考え方を取り入れ、自分を追い込みすぎないようにしましょう。失敗を恐れすぎず、うまくいかないこともあると受け入れることで、心の余裕が生まれます。

適度に断る勇気を持つ

他人からの頼みごとや誘いを断れない方は、知らず知らずのうちに負担を抱え込みがちです。自分の限界を認識し、無理な依頼には「申し訳ないですが、今は難しいです」と断る勇気を持つことも大切なセルフケアです。すべての期待に応えようとする必要はありません。

自分の状態に気づく習慣をつける

精神的な疲労は、気づかないうちに蓄積していくものです。定期的に自分の心と体の状態をチェックする習慣をつけましょう。厚生労働省の「こころの耳」サイトでは、ストレスセルフチェックや疲労蓄積度セルフチェックを無料で利用できます。「最近、以前と比べてどうか」という視点で自分を観察し、変化があれば早めに対処することが大切です。

趣味や楽しみの時間を確保する

仕事や義務的なことばかりでなく、自分が心から楽しめる時間を意識的に確保しましょう。趣味に没頭する時間、友人との交流、旅行や外出など、リフレッシュできる活動を生活に取り入れることで、精神的なエネルギーを回復できます。忙しいからといって楽しみを後回しにせず、予定に組み込んでおくことがポイントです。

医療機関への相談が必要なケース

精神的な疲労は誰にでも起こりうるものですが、以下のような状態が続く場合は、医療機関への相談をおすすめします。

まず、症状が2週間以上続いている場合は注意が必要です。一時的な落ち込みや疲れは誰にでもありますが、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、睡眠障害、食欲の変化などの症状が2週間以上ほとんど毎日続いている場合は、うつ病などの可能性があります。

日常生活に明らかな支障が出ている場合も受診を検討しましょう。仕事に行けない、家事ができない、人と会えない、外出できないなど、これまでできていたことができなくなっている場合は、専門的な治療やサポートが必要かもしれません。

また、「消えてしまいたい」「死にたい」という思いが頭をよぎる場合は、すぐに専門家に相談することが大切です。このような気持ちは、心が限界に達しているサインです。一人で抱え込まず、精神科や心療内科を受診するか、相談窓口に連絡してください。

体の症状が続いているが、内科などで検査しても異常が見つからない場合も、心療内科や精神科への相談を検討してください。精神的なストレスが体の症状として現れている可能性があります。

周囲の人から変化を指摘された場合も、客観的な意見として受け止め、専門家に相談することを考えてみてください。自分では気づきにくい変化も、周囲の人は気づいていることがあります。

精神的疲労に対する治療とサポート

精神的な疲労やそれに関連する疾患の治療は、症状や状態に応じてさまざまな方法が組み合わされます。

休養

治療の基本として、まず心身の十分な休養があげられます。ストレスによって疲れてしまった心身を休め、回復に努めることが重要です。十分に休養するためには、ストレスから離れられる環境を作ることが大切です。仕事が原因であれば、残業を減らす、勤務形態を変える、有給休暇を取得する、場合によっては休職するなど、職場の制度を活用することも検討しましょう。

薬物療法

症状に応じて、薬物療法が行われることがあります。うつ病の場合は抗うつ薬、不安が強い場合は抗不安薬、不眠がある場合は睡眠薬など、それぞれの症状に合わせた薬が処方されます。自律神経失調症には、自律神経調整薬や漢方薬が用いられることもあります。薬物療法は医師の指示のもとで適切に行うことが重要であり、自己判断での服用中止は避けてください。

精神療法・心理療法

カウンセリングや認知行動療法など、心理的なアプローチも効果的です。認知行動療法は、物事の捉え方(認知)や行動のパターンに働きかけることで、気持ちを楽にし、ストレスへの対処能力を高める心理療法です。自分の考え方の癖に気づき、より適応的な考え方や行動パターンを身につけることを目指します。

また、自律訓練法というリラクゼーション技法も、自律神経のバランスを整えるのに効果があります。これは自己暗示によって心身の緊張を緩和する方法で、習得することで自分で体調をコントロールできるようになります。

生活習慣の改善

治療と並行して、生活習慣の改善も重要です。規則正しい生活リズム、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、基本的な生活習慣を見直すことで、心身の回復を促進します。医療機関では、具体的な生活指導を受けることもできます。

社会的サポートの活用

精神的な疲労や心の病気を抱えている方を支援するさまざまな制度やサービスがあります。通院にかかる医療費の自己負担を軽減する「自立支援医療制度」、日常生活や社会生活に必要な訓練や支援を受けられる「障害福祉サービス」、休職中の経済的支援となる「傷病手当金」など、状況に応じて活用できる制度があります。詳しくは、医療機関のソーシャルワーカーや、地域の精神保健福祉センターなどに相談してみてください。

相談窓口の活用

医療機関を受診する前段階として、または受診に踏み切れない場合でも、相談できる窓口があります。厚生労働省が提供する「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)、「まもろうよ こころ」(よりそいホットライン 0120-279-338)、「こころの耳」電話相談など、専門の相談員が対応してくれます。電話が苦手な方には、LINEやチャットで相談できるサービスもあります。相談は無料で、秘密は守られますので、気軽に利用してみてください。


よくある質問

精神的に疲れたときは何科を受診すればよいですか?

精神的な疲れやストレスに関する症状がある場合は、精神科や心療内科の受診が望ましいとされています。ただし、頭痛や胃腸の不調など体の症状が強い場合は、まず内科などで身体的な病気がないか検査を受け、異常がなければ精神科や心療内科を紹介されることもあります。いきなり精神科は敷居が高いと感じる方は、かかりつけ医に相談するところから始めてもよいでしょう。

精神的な疲れはどのくらいで回復しますか?

回復にかかる期間は個人差が大きく、一概には言えません。軽度の精神的疲労であれば、十分な休息と生活習慣の改善で数週間から1〜2か月程度で回復することもあります。一方、うつ病や燃え尽き症候群などの状態に発展している場合は、専門的な治療を含めて数か月から1年以上かかることもあります。焦らずに自分のペースで回復を目指すことが大切です。

精神的に疲れたときに絶対にやってはいけないことはありますか?

精神的に疲れているときに避けるべきことがいくつかあります。まず、お酒に頼ることは避けましょう。アルコールは一時的に気分を紛らわせますが、長期的には精神状態を悪化させます。また、カフェインの過剰摂取、夜更かし、無理な運動なども自律神経のバランスを崩す原因になります。そして最も大切なのは、一人で抱え込まないことです。誰かに相談することで、解決の糸口が見つかることがあります。

家族や同僚が精神的に疲れているようです。どのようにサポートすればよいですか?

まずは相手の話に耳を傾け、共感的に接することが大切です。アドバイスや解決策を急いで提示するのではなく、つらい気持ちを受け止める姿勢を示しましょう。無理に励まそうとしたり、「頑張って」「気の持ちよう」などの言葉は避けた方がよいでしょう。日常的なサポート(家事の手伝いなど)を申し出たり、専門家への相談を勧めたりすることも助けになります。ただし、あなた自身も無理をしすぎないことが大切です。

精神的な疲れと体の疲れの違いは何ですか?

体の疲れは筋肉や臓器の物理的な消耗であり、休息や睡眠で回復しやすいという特徴があります。一方、精神的な疲れは脳や心の消耗であり、休息だけでは回復しにくいことがあります。精神的な疲れは、ストレスの原因が解消されない限り蓄積し続け、気分の落ち込み、やる気の低下、集中力の低下などの心の症状だけでなく、頭痛、胃腸の不調、不眠など体の症状としても現れることがあります。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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