「手のひらの汗が止まらない」「緊張すると脇汗がひどくて服が濡れてしまう」このような多汗症の症状にお悩みの方は少なくありません。多汗症は日常生活に大きな支障をきたすことがあり、特に手掌多汗症(手のひらの多汗症)は仕事や人間関係に深刻な影響を与えることもあります。多汗症の治療法にはさまざまなものがありますが、重度の症状に対しては手術(ETS手術)が検討されることがあります。本記事では、多汗症の手術であるETS手術について、その効果やリスク、費用、術後の生活について詳しく解説します。手術を検討されている方が適切な判断ができるよう、医学的な観点から情報をお伝えします。
目次
- 多汗症とは?症状の程度と手術が検討されるケース
- ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)とは
- ETS手術の効果と適応部位
- ETS手術のリスクと副作用
- 代償性発汗について詳しく解説
- ETS手術の流れと入院期間
- ETS手術の費用と保険適用
- 手術以外の多汗症治療法
- ETS手術を受ける前に知っておくべきこと
- 当院での診療傾向【医師コメント】
- よくある質問
この記事のポイント
多汗症のETS手術は手掌多汗症に90%以上の効果があるが、50〜90%の確率で代償性発汗が生じる不可逆的な手術のため、まず保存的治療を試みた上で慎重に判断すべきである。
🎯 多汗症とは?症状の程度と手術が検討されるケース
多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて過剰に汗をかいてしまう状態を指します。原因となる疾患がない原発性多汗症と、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの疾患が原因で起こる続発性多汗症に分類されます。原発性多汗症は主に手のひら、足の裏、脇、顔面などの局所に症状が現れることが多く、精神的な緊張や暑さに関係なく発汗が起こることが特徴です。
🦠 多汗症の重症度分類
多汗症の重症度は、日常生活への支障の程度によって分類されます。軽度の場合は汗をかいても生活に大きな支障がなく、中等度になると汗が気になり日常生活に影響が出始めます。重度になると汗のために仕事や対人関係に深刻な問題が生じ、日常生活が著しく困難になります。手術が検討されるのは、保存的治療で十分な効果が得られない重度の多汗症の場合です。特に手掌多汗症で書類を扱う仕事に支障がある方、楽器演奏や精密作業を行う方、握手など対人関係に影響がある方などが手術を希望されることがあります。
👴 手術を検討する前に試すべき治療法
ETS手術は効果が高い反面、不可逆的な手術であり副作用のリスクもあるため、まずは保存的治療を試すことが推奨されます。塩化アルミニウム製剤の外用、イオントフォレーシス(電気治療)、ボツリヌス毒素注射、内服薬などの治療法があり、これらで効果が不十分な場合に手術が検討されます。
Q. ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)とはどのような手術ですか?
ETS手術は、過剰な発汗を引き起こす胸部の交感神経を遮断する手術です。全身麻酔下で脇の下に5mm〜1cm程度の切開を2〜3箇所入れ、胸腔鏡を用いて交感神経を切断・焼灼またはクリップで遮断します。手術時間は両側で1〜2時間程度です。
📋 ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)とは
ETS手術は「Endoscopic Thoracic Sympathectomy」の略で、日本語では「胸腔鏡下交感神経遮断術」または「内視鏡的胸部交感神経切除術」と呼ばれます。この手術は、発汗を制御している交感神経を遮断することで、過剰な発汗を抑制する治療法です。
🔸 手術のメカニズム
人間の発汗は自律神経系の一部である交感神経によってコントロールされています。手のひらや脇などの発汗は、胸部の脊椎の近くを走行する交感神経節から指令が出ています。ETS手術では、この交感神経節またはその周辺の神経を切断、焼灼、またはクリップで遮断することで、汗腺への発汗指令を遮断します。神経への信号が届かなくなることで、対象部位の発汗が大幅に減少または停止します。
💧 手術の方法
ETS手術は全身麻酔下で行われます。脇の下に5mm〜1cm程度の小さな切開を2〜3箇所入れ、そこから胸腔鏡(内視鏡)と手術器具を挿入します。胸腔内に二酸化炭素を注入して肺を一時的に縮小させ、視野を確保した上で交感神経を処理します。神経の遮断方法には、電気メスやレーザーで焼灼する方法、クリップで挟んで遮断する方法、神経を切断する方法などがあります。クリップ法は理論上は可逆的な方法とされていますが、実際にはクリップを外しても神経機能が回復しないケースが多いことが報告されています。両側を同時に手術することが一般的で、手術時間は両側で1〜2時間程度です。
✨ 遮断する神経の位置
交感神経は脊椎の両側に沿って走行しており、T1(第1胸椎)からT4(第4胸椎)あたりの神経節が手や脇の発汗に関与しています。どの位置の神経を遮断するかによって、効果が現れる部位や代償性発汗の程度が変わってきます。一般的に、T2を遮断すると顔面と手のひらの発汗が減少し、T3〜T4を遮断すると手のひらと脇の発汗が減少するとされています。近年は代償性発汗を軽減するため、遮断する範囲を限定する傾向にあります。
💊 ETS手術の効果と適応部位
ETS手術は特に手掌多汗症に対して高い効果を示します。手術直後から手のひらの発汗が減少し、多くの患者さんが劇的な改善を実感されます。
📌 手掌多汗症(手のひら)への効果
手掌多汗症に対するETS手術の効果は非常に高く、90%以上の患者さんで発汗の著明な減少が得られるとされています。手術直後から効果が現れ、これまで汗で濡れていた手のひらが乾いた状態になります。書類を扱う仕事、楽器演奏、握手など、手汗によって困難だった活動が問題なく行えるようになる方が多くいらっしゃいます。
👴 ▶️ 腋窩多汗症(脇)への効果
脇の多汗症に対してもETS手術は効果がありますが、手のひらほど確実ではありません。効果が得られる割合は70〜80%程度とされ、一部の患者さんでは効果が不十分な場合もあります。また、脇の多汗症に対しては、ボツリヌス毒素注射やミラドライ(マイクロ波治療)など、他の効果的な治療法も存在するため、ETS手術が第一選択とならないことも多いです。
🔹 顔面多汗症への効果
顔面の多汗症に対してもETS手術は効果を示しますが、適応は慎重に判断される必要があります。顔面多汗症や赤面症に対するETS手術後に、代償性発汗が強く出現することや、顔面の血流変化による問題が報告されているためです。顔面の治療目的でETS手術を受ける場合は、特にリスクと効果について十分な説明を受けることが重要です。
📍 足の多汗症への効果
足の裏の多汗症に対しては、ETS手術は直接的な効果がありません。足の発汗を制御する交感神経は腰部に位置しているため、胸部の手術では対応できません。足の多汗症に対しては、腰部交感神経遮断術(ELS)という別の手術が必要ですが、この手術は男性の場合、射精障害などの性機能に関わる副作用のリスクがあるため、適応は非常に限定的です。
Q. ETS手術の手掌多汗症への効果はどのくらいですか?
ETS手術は手掌多汗症(手のひらの多汗症)に対して非常に高い効果を示し、90%以上の患者で発汗の著明な減少が得られるとされています。手術直後から効果が現れ、書類の取り扱いや握手など、手汗によって困難だった日常活動が改善されるケースが多いです。
🏥 ETS手術のリスクと副作用
ETS手術は高い効果が期待できる一方で、いくつかの重要なリスクと副作用があります。手術を検討する際には、これらのリスクを十分に理解した上で判断することが不可欠です。
💫 代償性発汗
ETS手術の最も重要な副作用が代償性発汗です。これは手術によって手のひらや脇の発汗が減少する代わりに、体の他の部位(背中、腹部、大腿部など)の発汗が増加する現象です。代償性発汗は手術を受けた患者さんの50〜90%に何らかの程度で発生するとされており、中には手術前の手汗よりも深刻な問題となるケースもあります。代償性発汗の詳細については次の章で詳しく解説します。
🦠 ホルネル症候群
ホルネル症候群は、手術中に交感神経の損傷が上方に及んだ場合に発生する可能性がある合併症です。瞳孔の縮小、まぶたの下垂、眼球の陥没などの症状が現れます。発生頻度は1%未満とされていますが、発生した場合は永続的な症状となる可能性があります。
👴 気胸
手術は胸腔内で行われるため、術後に気胸(肺に空気が漏れる状態)が発生することがあります。多くの場合は軽度で自然に回復しますが、重症の場合は胸腔ドレナージ(管を挿入して空気を抜く処置)が必要になることもあります。
🔸 出血・感染
一般的な手術と同様に、出血や感染のリスクがあります。胸腔鏡手術は低侵襲であるため、これらの合併症の発生頻度は比較的低いですが、ゼロではありません。
💧 徐脈
交感神経は心臓の活動にも関与しているため、手術後に心拍数が低下する徐脈が見られることがあります。多くの場合は一時的ですが、まれに持続的な徐脈となることがあります。
✨ 味覚性発汗
一部の患者さんでは、手術後に特定の食べ物を食べた際に顔や首に発汗が起こる味覚性発汗が発生することがあります。辛いものや酸っぱいものを食べた時に症状が出やすいとされています。
📌 手の過度な乾燥
手術が成功すると手のひらの発汗が大幅に減少しますが、これにより手が過度に乾燥してしまうことがあります。ひび割れや皮膚トラブルが生じる場合は、保湿剤によるケアが必要になります。
⚠️ 代償性発汗について詳しく解説
代償性発汗はETS手術を検討する上で最も重要な問題です。手術を受ける前に、この副作用について十分に理解しておくことが不可欠です。
🔸 ▶️ 代償性発汗のメカニズム
人間の体は体温調節のために発汗を行いますが、ETS手術によって手のひらや脇からの発汗が止まると、体は他の部位からの発汗を増やすことで体温調節のバランスを保とうとします。これが代償性発汗です。正確なメカニズムは完全には解明されていませんが、交感神経系の複雑な相互作用が関係していると考えられています。
🔹 代償性発汗が起こりやすい部位
代償性発汗は主に背中、腹部、大腿部、臀部などの体幹部に現れることが多いです。これらの部位は衣服で覆われているため、汗をかくと服が濡れて不快感が生じます。特に暑い時期や運動時、緊張した時などに症状が強くなる傾向があります。
📍 代償性発汗の程度と予測
代償性発汗の程度は個人差が大きく、術前に予測することは困難です。軽度で日常生活に支障がない方から、手術前の手汗よりも深刻な問題となる方までさまざまです。一般的に、遮断する神経の範囲が広いほど代償性発汗が強く出る傾向があるため、近年は遮断範囲を限定する手術が主流となっています。統計的には、手術を受けた患者さんの約50〜90%に何らかの代償性発汗が発生し、そのうち約10〜30%の方が日常生活に支障をきたすレベルの代償性発汗を経験するとされています。
💫 代償性発汗への対処法
残念ながら、代償性発汗に対する確実な治療法はありません。対症療法として、吸汗性の良い衣服の着用、制汗剤の使用、涼しい環境を保つことなどが行われます。一部の患者さんではボツリヌス毒素注射が効果を示すこともありますが、広範囲に対する治療は現実的ではありません。代償性発汗は時間とともに軽減することもありますが、完全に消失することはまれです。
🦠 手術を後悔するケース
ETS手術を受けた患者さんの中には、代償性発汗のために手術を後悔される方もいらっしゃいます。国内外の調査では、手術を受けた患者さんの約5〜10%が「手術を受けなければよかった」と感じているという報告があります。特に、手汗の程度が中等度だった方や、代償性発汗について十分な説明を受けずに手術を受けた方で後悔の割合が高い傾向にあります。
Q. ETS手術後の代償性発汗とはどのような症状ですか?
代償性発汗とは、ETS手術で手のひらや脇の発汗が減少した代わりに、背中・腹部・大腿部などに発汗が増加する副作用です。手術を受けた患者の50〜90%に発生し、そのうち約10〜30%が日常生活に支障をきたすレベルとなります。確実な治療法はなく、術前に十分な理解が必要です。
🔍 ETS手術の流れと入院期間
ETS手術を受けることを決めた場合、どのような流れで手術が行われるのかを理解しておくことが重要です。
👴 術前検査と診察
手術前には、血液検査、胸部レントゲン、心電図、肺機能検査などの術前検査が行われます。また、麻酔科医による診察も行われ、全身麻酔が安全に行えるかどうかの評価が行われます。この段階で、手術のリスクと効果について詳しい説明があり、インフォームド・コンセント(説明と同意)が取られます。
🔸 手術当日
手術当日は、朝から絶飲絶食となります。全身麻酔下で手術が行われ、手術時間は両側で1〜2時間程度です。手術は仰向けまたは半座位の姿勢で行われ、脇の下の小さな切開から胸腔鏡を挿入して手術を行います。
💧 術後の経過
手術直後から手のひらの発汗減少を実感できます。術後は胸部の痛みや違和感が数日間続くことがありますが、鎮痛剤で管理できる程度です。胸部レントゲンで気胸がないことを確認した後、退院となります。
✨ 入院期間
入院期間は医療機関によって異なりますが、一般的には2〜4日程度です。日帰り手術を行っている施設もありますが、術後の気胸などの合併症に対応するため、最低1泊の入院を推奨する施設が多いです。
📌 術後の日常生活
退院後は徐々に日常生活に戻ることができます。デスクワークであれば1週間程度で復帰できることが多いですが、重労働や激しい運動は2〜4週間程度控える必要があります。創部は小さいため、傷跡はほとんど目立たなくなります。
📝 ETS手術の費用と保険適用
ETS手術の費用は、保険適用の有無によって大きく異なります。
💧 ▶️ 保険適用について
ETS手術は、一定の条件を満たす場合に健康保険が適用されます。保険適用となるのは、原発性手掌多汗症で、保存的治療(塩化アルミニウム外用やイオントフォレーシスなど)で効果が不十分な重症例です。保険適用の判断は医療機関によって異なる場合があるため、受診時に確認が必要です。
🔹 保険適用時の費用
保険適用の場合、3割負担で計算すると、手術費用は約15〜25万円程度となります。これに入院費用や検査費用が加わります。高額療養費制度を利用すれば、自己負担額はさらに軽減される場合があります。加入している健康保険組合や所得によって上限額が異なるため、事前に確認しておくことをお勧めします。
📍 自由診療の場合
保険適用外で自由診療として手術を受ける場合は、50〜100万円程度の費用がかかることがあります。医療機関によって価格設定が異なるため、複数の施設で見積もりを取ることをお勧めします。
Q. ETS手術の費用と保険適用はどうなっていますか?
ETS手術は、原発性手掌多汗症で保存的治療の効果が不十分な重症例に限り健康保険が適用される場合があります。保険適用時は3割負担で約15〜25万円程度となり、高額療養費制度でさらに軽減できます。自由診療の場合は50〜100万円程度かかることがあり、医療機関ごとに費用が異なります。
💡 手術以外の多汗症治療法
ETS手術は効果的な治療法ですが、副作用のリスクを考慮すると、まずは他の治療法を試すことが推奨されます。ここでは、手術以外の多汗症治療法について解説します。
💫 塩化アルミニウム製剤の外用
塩化アルミニウムは汗腺の出口を塞ぐことで発汗を抑制する外用薬です。市販品から医療機関で処方される高濃度のものまであります。手のひら、足の裏、脇など、さまざまな部位に使用できます。効果は一時的で、継続的な使用が必要です。皮膚刺激やかぶれが生じることがあるため、使用方法に注意が必要です。
🦠 イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、水を張った容器に手や足を浸し、弱い電流を流すことで発汗を抑制する治療法です。手掌多汗症や足底多汗症に効果があります。週に2〜3回程度の治療を継続する必要があり、効果が現れるまでに数週間かかることがあります。家庭用の機器も販売されており、通院の負担を軽減できます。
👴 ボツリヌス毒素注射
ボツリヌス毒素(ボトックス)を汗腺のある部位に注射することで、発汗を抑制する治療法です。脇の多汗症には保険適用されており、手のひらや足の裏にも効果があります。効果は4〜12ヶ月程度持続し、その後は再注射が必要です。手のひらへの注射は痛みが強いため、麻酔を併用することが多いです。
🔸 内服薬
抗コリン薬(プロバンテリンなど)は、発汗を抑制する内服薬として使用されることがあります。全身の発汗を抑制するため、口渇、便秘、排尿困難などの副作用が出ることがあります。2020年には原発性腋窩多汗症に対する外用抗コリン薬(エクロックゲル)が保険適用となり、新たな選択肢として注目されています。
💧 ミラドライ(マイクロ波治療)
ミラドライは、マイクロ波を照射して脇の汗腺を破壊する治療法です。主に腋窩多汗症に対して使用され、1〜2回の治療で長期的な効果が期待できます。ETS手術と異なり、代償性発汗のリスクがないのが大きなメリットです。ただし、保険適用外であり、費用は30〜50万円程度かかります。
✨ 精神療法・カウンセリング
多汗症は精神的な緊張で症状が悪化することがあります。認知行動療法やリラクセーション法などの精神療法が、症状の軽減に役立つことがあります。汗に対する不安や恐怖心を軽減することで、悪循環を断ち切る効果が期待できます。
✨ ETS手術を受ける前に知っておくべきこと
ETS手術を検討している方は、以下の点を十分に理解した上で判断することが重要です。
📌 手術は不可逆的である
ETS手術で神経を切断または焼灼した場合、元に戻すことはできません。クリップ法は理論上は可逆的ですが、実際にはクリップを外しても神経機能が回復しないケースが多いです。手術を受ける前に、この点を十分に理解しておく必要があります。
✨ ▶️ 代償性発汗は高確率で発生する
前述の通り、代償性発汗は手術を受けた患者さんの50〜90%に発生します。術前に代償性発汗が起こらないと保証することはできません。代償性発汗が起きた場合にどの程度許容できるか、事前に考えておくことが重要です。
🔹 他の治療法を十分に試してから検討する
ETS手術は最終手段として考えるべきであり、まずは保存的治療を十分に試すことが推奨されます。塩化アルミニウム外用、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素注射などの治療で効果が得られる場合も多いです。
📍 経験豊富な医療機関を選ぶ
ETS手術は専門的な技術を要する手術であり、経験豊富な医師が在籍する医療機関を選ぶことが重要です。手術件数の多い施設では、合併症の発生率が低く、代償性発汗を軽減するための工夫がなされていることが多いです。
💫 十分な説明を受け、納得してから手術を決める
手術前には、効果とリスクについて十分な説明を受けることが不可欠です。代償性発汗を含む副作用について詳しく説明してくれない医療機関は避けるべきです。疑問点があれば遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。セカンドオピニオンを求めることも有効です。
🦠 術後の生活について現実的に考える
手術を受けた場合、手のひらの汗は確実に減少しますが、代償性発汗という新たな問題が生じる可能性があります。「手汗がなくなる」というメリットと「他の部位の汗が増える」というデメリットを天秤にかけ、自分にとってどちらが重要かを考えることが大切です。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太医師(当院治療責任者)より
「多汗症に関するご相談は、特に春から夏にかけて増加する傾向にあります。当院では多汗症の外科的治療(ETS手術)は行っておりませんが、症状に応じた治療のご提案や、専門医療機関へのご紹介を行っております。多汗症の治療は、症状の程度や生活への影響度、患者さんのご希望によって最適な方法が異なります。特にETS手術を検討されている方には、代償性発汗などのリスクについて十分にご理解いただいた上で、慎重に判断していただくようお伝えしています。まずは塩化アルミニウム製剤やボツリヌス毒素注射など、可逆的な治療法から試していただくことをお勧めしております。多汗症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。」
📌 よくある質問
ETS手術は一般的に成人(18歳以上)を対象としています。思春期の多汗症は成長とともに改善することもあるため、未成年の方への手術は慎重に判断されます。ただし、症状が重度で日常生活に著しい支障がある場合は、保護者の同意のもと16歳頃から手術が行われることもあります。年齢に関係なく、まずは保存的治療を十分に試すことが推奨されます。
手術を受けた部位(主に手のひら)の発汗は大幅に減少または停止しますが、完全に乾いた状態になるとは限りません。効果には個人差があり、約90%以上の方で著明な改善が得られますが、一部の方では期待したほどの効果が得られない場合もあります。また、時間の経過とともに神経が再生し、発汗が一部回復するケースもまれに報告されています。
代償性発汗は、手術直後から数週間以内に発生することが多いです。手術によって手のひらの発汗が止まると、体は体温調節のバランスを保つために他の部位からの発汗を増やします。症状は暑い時期や運動時、緊張した時などに顕著になります。時間の経過とともに軽減する方もいますが、完全に消失することはまれです。
神経を切断または焼灼した場合、元に戻すことはできません。クリップ法は理論上は可逆的ですが、クリップを外しても神経機能が回復しないケースが多いことが報告されています。そのため、ETS手術は基本的に不可逆的な手術と考えるべきです。手術を受ける前に、この点を十分に理解し、慎重に判断することが重要です。
重度の心肺疾患がある方、以前に胸部の手術を受けたことがある方、胸膜癒着がある方などは、ETS手術が困難または不可能な場合があります。また、全身麻酔のリスクが高い方、出血傾向のある方、妊娠中の方なども手術が適さない場合があります。手術の適応については、術前検査と医師の診察によって判断されます。
デスクワークなどの軽い仕事であれば、退院後1週間程度で復帰できることが多いです。重労働や激しい運動を伴う仕事の場合は、2〜4週間程度の休養が必要です。術後は胸部に痛みや違和感が残ることがありますが、通常は数日〜1週間程度で軽減します。具体的な復帰時期については、担当医師と相談することをお勧めします。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務