酒井若菜さんも公表した「膠原病」とは?症状・治療・日常生活の注意点を医師が解説

はじめに

女優・作家として活躍する酒井若菜さんが、2016年に膠原病であることを公表されたことをご存知でしょうか。彼女は19歳のころから膠原病の症状があり、2015年には新たな種類の膠原病が発症したことで治療を開始されました。しかし、酒井さんは「ぜんっぜん普通に仕事してる」と明るく語り、病気と前向きに向き合う姿勢を示されています。

膠原病という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような病気なのかよくわからないという方は多いかもしれません。実は膠原病は一つの病気ではなく、さまざまな疾患の総称です。

本記事では、膠原病の基本的な知識から最新の治療法、日常生活での注意点まで、わかりやすく解説していきます。

膠原病とは何か

膠原病とは、単一の病名ではなく、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに慢性的な炎症が見られる病気の総称です。心臓病という言葉が心筋梗塞や狭心症などをまとめた呼び方であるように、膠原病も関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど、30種類以上の病気をまとめた呼称なのです。

膠原病の3つの特徴

膠原病には共通する3つの重要な特徴があります。

1. 自己免疫疾患であること

通常、免疫システムは細菌やウイルスなど外部から侵入する異物を排除し、体を守る働きをしています。しかし膠原病では、この免疫システムが誤作動を起こし、自分自身の体の組織を「異物」と認識して攻撃してしまいます。これを自己免疫反応といいます。

実は、誰もが体内に自分自身を攻撃する細胞を少なからず持っていると考えられています。しかし健康な状態では、これらの細胞の働きがしっかりと抑制されています。ストレスや感染症、紫外線、妊娠、外傷などが引き金となり、この抑制が効かなくなることで膠原病が発症すると考えられています。

2. 結合組織疾患であること

人間の体は細胞だけでできているのではなく、細胞と細胞の間をつなぐ「結合組織」があります。結合組織に含まれる線維状のタンパク質を「膠原線維(こうげんせんい)」といい、コラーゲンと呼ばれる成分がこれにあたります。膠原病という名前は、この膠原線維に病変が見られることから名付けられました。

結合組織は全身のあらゆる場所に存在するため、膠原病も特定の臓器に限定されず、全身のさまざまな部位に症状が現れることが特徴です。

3. リウマチ性疾患であること

体を動かすための関節、筋肉、骨、靱帯などに痛みを起こす病気を総称して「リウマチ性疾患」と呼びます。膠原病の多くは、これらの運動器に痛みや障害をもたらすという特徴を持っています。

なぜ女性に多いのか

膠原病の患者さんの8~9割は女性です。これは、妊娠・出産に関わる機能と免疫機能に深い関わりがあるためと考えられています。

女性の体は、胎児を子宮内で守るという特別な免疫機能を持っています。この機能が、妊娠していない時期に何らかのきっかけ(ストレスや冷え、ホルモンバランスの変化など)で異常をきたし、自分自身を攻撃してしまうことがあるのです。特に、出産後や閉経前後の30~50代の女性に発症や悪化のピークがあります。

膠原病の種類

膠原病には多くの種類がありますが、ここでは代表的な疾患をご紹介します。

1. 関節リウマチ(RA)

関節リウマチは、膠原病の中で最も患者数が多い疾患です。日本国内に約80万人以上の患者さんがいるとされています。

特徴的な症状

  • 手指や手首、肘、肩、膝などの関節が痛み、熱を持って腫れる
  • 朝のこわばり(起床時に少なくとも1時間以上関節がこわばる)
  • 左右対称性に関節症状が現れる
  • 午前中に症状が強く、午後から徐々に改善する傾向

30~50代の女性に多く発症しますが、近年は60~80代の高齢発症も増加しています。放置すると関節の軟骨や骨が破壊され、関節が変形して日常生活に大きな支障をきたすため、早期診断・早期治療が重要です。

2. 全身性エリテマトーデス(SLE)

男女比は1:9と圧倒的に女性に多く、特に20~40歳の若い女性に多い病気です。日本の患者数は6~10万人といわれています。

特徴的な症状

  • 両頬に現れる蝶形紅斑(蝶のような形をした赤み)
  • 発熱、倦怠感、関節痛
  • 光線過敏症(日光に当たると症状が悪化する)
  • 口腔内潰瘍(痛みのないことが多い)
  • 脱毛
  • 腎炎(タンパク尿、血尿)
  • 中枢神経症状

全身のさまざまな臓器に障害を起こしやすく、症状の組み合わせや重症度は患者さんごとに大きく異なります。

3. 全身性強皮症

30~50代の女性に多く見られ、男女比は1:12です。日本での患者数は2万人以上とされています。

特徴的な症状

  • レイノー現象(寒冷刺激で手指が白→紫→赤に変色する)
  • 手指の腫れぼったさとこわばり
  • 皮膚の硬化(手指から始まり、体幹部へと進行することがある)
  • 爪のあま皮の黒い出血点
  • 指先の潰瘍
  • 間質性肺炎
  • 逆流性食道炎
  • 肺高血圧症

進行するタイプと進行がゆっくりのタイプがあり、患者さんによって経過が大きく異なります。

4. シェーグレン症候群

50歳代にピークがあり、男女比は1:17と女性に多い疾患です。日本の患者数は10~30万人といわれています。関節リウマチの約20%に合併することも知られています。

特徴的な症状

  • ドライアイ(涙が少なく、目がゴロゴロする、かゆみや痛み)
  • ドライマウス(口が渇く、虫歯が増える、乾燥した食品が食べにくい)
  • 鼻腔や腟の乾燥
  • 関節痛
  • レイノー現象
  • 疲労感

膠原病の中では比較的症状が軽く、病気に気づかない方もいますが、近年は唾液分泌を促進する薬が使えるようになり、治療の選択肢が広がっています。

5. 多発性筋炎・皮膚筋炎

筋肉に炎症が起こり、筋力低下を引き起こす病気です。皮膚筋炎では特徴的な皮膚症状も伴います。

特徴的な症状

  • 筋肉痛
  • 筋力低下(重いものを持ち上げにくい、階段を上りにくい)
  • 皮膚筋炎では特徴的な皮疹(ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候など)

6. ベーチェット病

膠原病の中では珍しく男性にも多く、男女比はほぼ1:1です。遺伝的な要素(HLA-B51)が強いとされています。

特徴的な症状

  • 口腔内潰瘍(アフタ性口内炎)
  • 性器潰瘍
  • 皮膚症状(結節性紅斑など)
  • 眼症状(ぶどう膜炎)
  • 関節炎
  • 消化器症状(回腸末端の潰瘍など)
  • 血管症状(血栓症)
  • 神経症状

膠原病の原因とメカニズム

膠原病がなぜ発症するのか、その全容はまだ完全には解明されていません。しかし、研究の進展により、発症のメカニズムが少しずつ明らかになってきています。

発症に関わる要因

膠原病の発症には、以下のような複数の要因が関わっていると考えられています。

1. 遺伝的要因

膠原病は親から子へ直接遺伝する遺伝病ではありません。しかし、膠原病を発症する人には、複数の「疾患感受性遺伝子」(病気にかかりやすい遺伝子)があることが知られています。これらの遺伝子を持っているからといって必ず発症するわけではなく、あくまで「発症しやすい体質」を持っているということです。

2. 環境要因

遺伝的な素因を持つ人に、以下のような環境要因が加わることで発症すると考えられています。

  • 感染症(ウイルスや細菌の感染)
  • 紫外線
  • 寒冷刺激
  • ストレス(精神的・肉体的)
  • 妊娠・出産
  • 外傷・手術
  • 薬剤
  • 喫煙

3. ホルモンの影響

女性ホルモン(エストロゲン)が免疫システムに影響を与えることが知られています。女性ホルモンの変動が大きい時期、特に出産後や閉経前後に症状が出やすいのはこのためです。

免疫システムの暴走

膠原病では、免疫システムを構成するマクロファージ、好中球、Tリンパ球、Bリンパ球などが過剰に活性化します。その結果、自分の体の成分(自己抗原)に反応する抗体(自己抗体)が作られ、これが全身のさまざまな組織や臓器を攻撃することで、慢性的な炎症が引き起こされます。

この免疫の暴走がなぜ起こるのか、その正確なメカニズムはまだ研究段階ですが、免疫細胞間のバランスの崩れや、免疫を調節する機能の低下などが関わっていると考えられています。

膠原病の症状

膠原病の症状は実に多彩で、同じ病名でも患者さんごとに現れる症状が大きく異なります。ここでは、多くの膠原病に共通して見られる症状と、疾患特有の症状についてご説明します。

初期症状・共通症状

全身症状

  • 原因不明の発熱(微熱~高熱)
  • 全身倦怠感(だるさ)
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 疲れやすい

関節・筋肉の症状

  • 関節痛(複数の関節に移動する痛み、または固定した痛み)
  • 関節の腫れ
  • 朝のこわばり
  • 筋肉痛
  • 筋力低下

皮膚症状

  • 発疹(さまざまな形状)
  • 紅斑
  • 皮膚の硬化
  • 脱毛
  • レイノー現象(手指が白→紫→赤に変色)
  • 光線過敏症

その他の症状

  • リンパ節の腫れ
  • 手足のむくみ
  • ドライアイ、ドライマウス
  • 息切れ、空咳

注意すべきポイント

膠原病の初期症状は、風邪や疲労と似ているため見過ごされがちです。以下のような場合は、膠原病の可能性を考えて専門医への受診を検討しましょう。

  • 発熱や倦怠感が1週間以上続く、または徐々に悪化する
  • 複数の関節に痛みや腫れがある
  • 原因不明の皮膚症状が続く
  • 寒い時に手指の色が変わる
  • 口や目の乾燥が著しい
  • 検査でタンパク尿や血尿、貧血、白血球減少などが指摘された

酒井若菜さんも、関節炎による体の痛みで「立ち上がる」「ミカンの皮をむく」といった動作ができないほど辛い時期があったと語っています。このような症状があるにもかかわらず、外見上は元気そうに見えることも多いため、周囲の理解を得にくいという問題もあります。

膠原病の診断方法

膠原病の診断は、一つの検査結果だけで確定できるものではありません。問診、身体診察、血液検査、尿検査、画像検査などを総合的に判断して行われます。

診断のプロセス

1. 問診・診察

医師は以下のような情報を詳しく聞き取ります。

  • いつ頃から、どのような症状があるか
  • 症状の経過(良くなったり悪くなったりするか)
  • 日常生活のどんな場面で困っているか
  • 家族歴
  • 最近の感染症、ストレス、紫外線暴露などの有無

身体診察では、関節の腫れや皮膚の変化、リンパ節の腫大などを確認します。

2. 血液検査

膠原病の診断には、以下のような血液検査が行われます。

抗核抗体(ANA) 多くの膠原病で陽性となる指標ですが、高齢者でも陽性になることがあり、陽性だからといって必ずしも膠原病とは限りません。逆に、一部の膠原病では陰性のこともあります。

疾患特異的な自己抗体

  • 関節リウマチ:リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体
  • 全身性エリテマトーデス:抗DNA抗体、抗Sm抗体
  • シェーグレン症候群:抗SS-A抗体、抗SS-B抗体
  • 全身性強皮症:抗セントロメア抗体、抗Scl-70抗体

炎症マーカー

  • CRP(C反応性タンパク)
  • 血沈(赤血球沈降速度)

その他

  • 補体(C3、C4)
  • 免疫グロブリン
  • 貧血の有無
  • 白血球数、血小板数

3. 尿検査

腎臓の障害を確認するため、尿中のタンパクや血球の有無を調べます。

4. 画像検査

  • X線検査:関節の変形や骨の変化を確認
  • CT、MRI:内臓の状態を詳しく調べる
  • 超音波検査:関節の炎症や内臓の評価
  • 心臓超音波検査:心臓や肺動脈の状態を確認

診断基準

それぞれの膠原病には、国際的な診断基準や分類基準があります。これらの基準に基づいて、症状、身体所見、検査結果を総合的に評価し、診断が確定されます。

診断には専門的な知識と経験が必要なため、膠原病が疑われる場合は、膠原病・リウマチ内科の専門医を受診することが重要です。

膠原病の治療法

膠原病の治療は大きく進歩しており、かつては有効な治療法がなく若くして亡くなる患者さんも多かった時代から、現在では多くの患者さんが病気をコントロールし、通常に近い生活を送れるようになっています。

治療の目標

膠原病の治療には、以下のような目標があります。

  1. 症状をコントロールし、日常生活の質(QOL)を向上させる
  2. 臓器障害の進行を防ぐ
  3. 寛解(症状や兆候がなく、日常生活に支障がない状態)を目指す
  4. 薬の副作用を最小限に抑える

薬物療法

1. ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)

膠原病治療の基本となる薬です。強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持ち、多くの膠原病に効果があります。

利点

  • 即効性がある
  • 炎症を速やかに抑える

注意点

  • 長期使用による副作用(ムーンフェイス、骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、白内障、感染症のリスク増加など)
  • 自己判断で急に中止するとショックを起こす危険がある
  • 現在の治療では、できるだけステロイドの使用量を減らす、または中止する方向で治療が進められている

2. 免疫抑制薬

ステロイドの効果が不十分な場合や、副作用を軽減するためにステロイドを減量したい場合に併用されます。

主な免疫抑制薬:

  • メトトレキサート(MTX)
  • アザチオプリン
  • シクロフォスファミド
  • ミコフェノール酸モフェチル
  • タクロリムス(カルシニューリン阻害薬)
  • シクロスポリン

それぞれの薬には特徴があり、病気の種類や病態に応じて使い分けられます。

3. 生物学的製剤

近年、膠原病治療に革命をもたらした新しいタイプの治療薬です。特に関節リウマチでは劇的な効果を示しています。

生物学的製剤は、炎症を引き起こす特定のサイトカイン(TNF-α、IL-6など)をピンポイントで抑制したり、免疫細胞の働きを調節したりします。

主な生物学的製剤:

  • TNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)
  • IL-6阻害薬(トシリズマブ)
  • B細胞抑制薬(リツキシマブ)
  • T細胞抑制薬(アバタセプト)

4. JAK阻害薬

飲み薬で、炎症を引き起こす複数のサイトカインの働きを抑制します。関節リウマチを中心に使用されています。

5. ヒドロキシクロロキン

全身性エリテマトーデスなどに使用され、ステロイドの減量に役立ちます。

6. その他の治療薬

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや炎症を抑える
  • 骨粗鬆症予防薬
  • 感染症予防薬

非薬物療法

血漿交換療法

重症例や薬物療法で効果が不十分な場合に行われます。血液中の自己抗体や有害物質を専用機器で取り除く治療法です。

γ-グロブリン大量療法

免疫グロブリンを大量に投与することで、異常な免疫反応を抑制します。

リハビリテーション

関節リウマチでは、適度な運動が重要です。安静にしすぎると関節が動かなくなる危険がありますが、過度な運動は関節を傷めます。理学療法士の指導のもと、適切な運動を行います。

外科的治療

関節リウマチで関節破壊が進行した場合、人工関節置換術などの手術が行われることがあります。

治療の進歩

関節リウマチの寛解率の劇的な向上

驚くべきデータがあります。関節リウマチで寛解(症状や兆候がなく日常生活に支障のない状態)を達成した患者さんの割合は、2001年時点ではわずか7.8%でしたが、2021年には60.8%にまで急増しています。これは、メトトレキサートや生物学的製剤、JAK阻害薬などの新しい治療薬の開発によるものです。

個別化医療への期待

今後は、遺伝子や細胞レベルで一人ひとりに合わせた個別化医療がさらに進んでいくと期待されています。

日常生活での注意点

膠原病は慢性疾患であり、長期にわたって病気と付き合っていく必要があります。しかし、適切な治療と生活管理により、多くの患者さんが普通に近い生活を送ることができます。

生活習慣の基本

1. 規則正しい生活

  • 十分な睡眠をとる(疲れたら昼寝も取り入れる)
  • 過労を避ける
  • バランスの取れた食事
  • 適正体重の維持

2. 感染予防

膠原病の治療では免疫を抑える薬を使用するため、感染症にかかりやすくなります。

  • 手洗い、うがいの励行
  • マスクの着用(特に人混みや冬季)
  • ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、新型コロナなど) ※生ワクチンは使用できない薬がある場合があるため、主治医に相談

3. 紫外線対策

特に全身性エリテマトーデスなど、紫外線で症状が悪化する疾患があります。

  • 日焼け止めクリームの使用(SPF50以上推奨)
  • 日傘、帽子、長袖の着用
  • なるべく日陰を歩く
  • 午前10時~午後2時の外出を避ける

4. 寒冷刺激を避ける

特にレイノー現象がある方は、寒さが症状を悪化させます。

  • 冬は暖かい服装
  • 手袋の着用
  • 冷水の使用を避ける

5. ストレス管理

精神的・肉体的ストレスは症状を悪化させる可能性があります。

  • 無理をしない
  • 適度な休息
  • リラックスできる時間を持つ
  • 趣味や楽しみを大切にする

6. 禁煙

喫煙は膠原病、特に関節リウマチの発症リスクを高め、治療効果も低下させます。必ず禁煙しましょう。

7. 節酒

お酒は少量にとどめましょう。薬との相互作用もあるため、主治医に相談してください。

服薬管理

薬は必ず指示通りに服用する

  • 決められた量、決められたタイミングで服用
  • 自己判断で増減したり中断したりしない
  • 飲み忘れた場合の対応を主治医に確認しておく
  • 薬の効能と副作用を理解する

定期的な通院

  • 定期的な検査で病状と副作用をモニタリング
  • 症状の変化があれば早めに相談
  • 疑問や不安があれば遠慮なく質問する

妊娠・出産について

膠原病があっても、条件を満たせば妊娠・出産は可能です。

条件

  • 病状が安定していること
  • 腎臓などの重要臓器に重い障害がないこと
  • ステロイド薬が少量(プレドニゾンで10mg以下程度)であること
  • 使用している薬が妊娠に適していること

注意点

  • 妊娠前から計画的に準備する
  • 産婦人科医と膠原病専門医の連携が必要
  • 流産のリスクは健常者より高い場合がある
  • 一部の薬は妊娠前に変更が必要

酒井若菜さんは、病気のことを考えて「結婚はしない」という決断をされたと報道されましたが、これは個人の選択です。適切な管理のもとで結婚生活や妊娠・出産を選択している患者さんも多くいらっしゃいます。

家族や周囲の理解

膠原病は「見えない病気」と言われることがあります。外見上は元気そうに見えても、本人は非常に辛い症状を抱えていることがあります。

  • 家族や職場の理解と協力が重要
  • 症状には波があることを理解してもらう
  • 感染症を持ち込まないよう家族も注意
  • 怠けているのではないことを理解してもらう

実際に、理解が得られず離婚に至ったケースもあると報告されています。周囲の正しい理解が、患者さんの生活の質を大きく左右します。

酒井若菜さんのケースから学べること

酒井若菜さんは、19歳から膠原病の症状があり、現在は複数の種類の膠原病(3つ)を患っていると公表されています。2015年に症状が悪化し治療が必要になった際には、関節炎による体の痛みで日常動作ができないほど辛い時期もあったそうです。

しかし、彼女のブログやインタビューからは、病気に対する前向きな姿勢が伝わってきます。

「ぜんっぜん普通に仕事してるらしいよ。あの人、気楽なもんだね。でも気楽って、意外と大事なことなのかもね」

この言葉には、病気に振り回されすぎず、自分らしく生きることの大切さが表れています。

前向きに生きるためのヒント

1. 病気を正しく理解する

「診断されたときはショックだったけれど、前向きに捉えている」と語る酒井さん。病気について正しい知識を持つことが、不安を軽減し、適切な対処につながります。

2. 「できること」を見つける

膠原病があっても、できることはたくさんあります。酒井さんは、病気と付き合いながら女優業、執筆活動、YouTubeチャンネルの運営など、幅広く活動されています。

3. サポートを受け入れる

適切な医療、家族や友人のサポート、時には公的な支援制度を活用することも大切です。

4. 「気楽に」構える

完璧を求めすぎず、できる範囲で無理なく生活することも重要です。

よくある質問

Q: 膠原病は治りますか?

A: 現時点では、多くの膠原病を完治させる方法はありません。しかし、適切な治療により症状をコントロールし、寛解状態(症状がほとんどない状態)を維持することは可能です。関節リウマチでは60%以上の方が寛解を達成しています。

Q: 膠原病は遺伝しますか?

A: 膠原病は親から子へ直接遺伝する病気ではありません。ただし、発症しやすい体質(疾患感受性遺伝子)は受け継がれる可能性があります。体質を持っているからといって必ず発症するわけではありません。

Q: 運動はしても大丈夫ですか?

A: 適度な運動は推奨されます。ただし、病気の種類や状態によって適切な運動内容は異なるため、主治医や理学療法士に相談しながら行いましょう。

Q: 仕事は続けられますか?

A: 多くの患者さんが仕事を続けています。酒井若菜さんも「この16年、普通に仕事してます」と語っています。職場の理解と協力、適切な治療により、仕事と治療の両立は可能です。

Q: 難病指定されている膠原病の医療費は?

A: 一部の膠原病は難病指定を受けており、重症度に応じて医療費の助成を受けられます。詳しくは最寄りの保健所や主治医にご相談ください。

まとめ

膠原病は、一つの病気ではなく、30種類以上の自己免疫疾患の総称です。かつては有効な治療法がなく、若くして亡くなる患者さんも多かった時代がありました。しかし、医学の進歩により、現在では多くの患者さんが病気をコントロールし、通常に近い生活を送れるようになっています。

重要なポイントをまとめます。

早期発見・早期治療が重要

  • 原因不明の発熱や関節痛が続く場合は専門医へ
  • 早期治療により臓器障害を防ぐことができる

治療は大きく進歩している

  • 生物学的製剤など新しい治療法の登場
  • 関節リウマチの寛解率は60%以上に向上
  • 副作用の少ない治療への移行

日常生活の管理が大切

  • 規則正しい生活、十分な睡眠
  • 感染予防、紫外線対策
  • ストレス管理
  • 薬は必ず指示通りに服用

前向きな姿勢

  • 病気と共存しながら自分らしく生きる
  • できることを見つける
  • 周囲のサポートを受け入れる

酒井若菜さんのように、膠原病と診断されても前向きに生活している方は多くいらっしゃいます。「病気を知るきっかけ、励みになれば」という彼女の言葉通り、正しい知識を持ち、適切な治療を受けることで、充実した人生を送ることは十分に可能です。

もし膠原病が疑われる症状がある方、すでに診断を受けている方も、専門医とよく相談しながら、ご自身の病気の状態やライフスタイルに合った治療を選択していただければと思います。


参考文献

  1. 公益社団法人日本皮膚科学会「膠原病(膠原病)Q&A」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/index.html
  2. 一般社団法人日本リウマチ学会「リウマチ・膠原病を心配したら」 https://www.ryumachi-jp.com/general/collagen-diseases/
  3. 難病情報センター「膠原病」 http://www.nanbyou.or.jp/
  4. 順天堂大学医学部附属順天堂医院「さまざまな病気を含む”膠原病”とは?」 https://goodhealth.juntendo.ac.jp/
  5. 大正製薬「膠原病|原因・症状・対策」 https://www.taisho-kenko.com/disease/466/
  6. 厚生労働省「難治性疾患克服研究事業」
  7. 日本医科大学広報誌ヒポクラテス「新たな治療法を見つけ “膠原病の患者さんを救いたい”」 https://hippocrates.nms.ac.jp/
  8. 慶應義塾大学医学部「驚くべき進展を遂げたリウマチ治療」 https://www.med.keio.ac.jp/
  9. ニッセイ基礎研究所「膠原病の医療を知ろう」 https://www.nli-research.co.jp/
  10. メディカルノート「膠原病とは?画像でみる膠原病の症状と種類、検査、治療法」 https://medicalnote.jp/

※本記事は医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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