おしりのしこりが座ると痛い:原因と対処法の完全ガイド

はじめに

「座るとおしりが痛い」「おしりにしこりができた」このような症状で悩んでいませんか?日常生活に支障をきたすおしりの痛みやしこりは、多くの方が経験する症状です。デスクワークが増えた現代社会では、長時間座ることによる負担も相まって、おしりのトラブルを抱える方が増加傾向にあります。

おしりにできるしこりには様々な原因があり、それぞれ適切な対処法が異なります。放置すると悪化する可能性のある疾患もあれば、適切なケアで改善できるものもあります。本記事では、おしりにしこりができて座ると痛い場合に考えられる原因、症状の見分け方、治療法、そして予防法まで、包括的に解説していきます。

おしりにしこりができる主な原因

おしりにしこりができて痛みを伴う場合、いくつかの代表的な疾患が考えられます。ここでは、それぞれの特徴について詳しく説明します。

1. 粉瘤(アテローム)

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってできる良性腫瘍です。医学的には「表皮嚢腫」とも呼ばれ、体のどこにでもできる可能性がありますが、おしりは好発部位の一つです。

粉瘤の特徴

  • 皮膚の下に丸くて動くしこりができる
  • 中央に黒い点(開口部)が見られることがある
  • 通常は痛みがないが、感染すると急激に腫れて痛む
  • 感染した粉瘤は「炎症性粉瘤」と呼ばれる
  • サイズは数ミリから数センチまで様々
  • 悪臭のある内容物が溜まっている

粉瘤そのものは良性ですが、細菌感染を起こすと炎症性粉瘤になり、強い痛みと腫れを伴います。座るときに圧迫されることで痛みが増強し、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

2. 毛巣洞(もうそうどう)

毛巣洞は、主におしりの割れ目の上部(仙骨部)にできる慢性的な炎症性疾患です。英語では「pilonidal sinus」と呼ばれ、若い男性に多く見られます。

毛巣洞の特徴

  • おしりの割れ目の上部にできることが多い
  • 小さな穴(洞)があり、そこから膿や血液が出ることがある
  • 座位や前かがみの姿勢で痛みが増す
  • 毛髪が皮膚に刺さり込むことが原因の一つ
  • 繰り返し炎症を起こしやすい
  • 長時間の座位、肥満、多毛などがリスク因子

毛巣洞は再発しやすい疾患で、適切な治療を受けないと慢性化することがあります。デスクワークやドライバーなど、長時間座る仕事をしている方は特に注意が必要です。

3. 痔核(いぼ痔)

痔核は肛門周囲の血管がうっ血して腫れた状態です。内痔核と外痔核があり、外痔核の場合はしこりとして触れることができます。

痔核の特徴

  • 肛門の周囲や内部に腫れやしこりができる
  • 排便時の出血や痛み
  • 座ると痛みが増すことがある
  • 血栓性外痔核の場合は急激な痛みと腫れ
  • 便秘や長時間の座位、妊娠出産などが原因
  • 日本人の約3人に1人が経験すると言われる

痔核は非常に一般的な疾患で、多くの方が経験します。しかし、恥ずかしさから受診を躊躇し、症状が悪化してしまうケースも少なくありません。

4. 肛門周囲膿瘍・痔瘻

肛門周囲膿瘍は、肛門周囲に膿が溜まった状態です。これが慢性化して肛門と皮膚の間にトンネル(瘻管)ができると痔瘻になります。

肛門周囲膿瘍・痔瘻の特徴

  • 肛門周囲の強い痛みと腫れ
  • 発熱を伴うことがある
  • 座ると激痛を感じる
  • 膿が出ることがある
  • 痔瘻では肛門周囲に開口部がある
  • 下痢や免疫力の低下が誘因となる

肛門周囲膿瘍は緊急性の高い疾患で、早期の切開排膿が必要です。放置すると痔瘻に進行し、手術が必要になることがあります。

5. 座骨滑液包炎

座骨滑液包炎は、座骨の周囲にある滑液包(クッションの役割を果たす袋)に炎症が起きた状態です。

座骨滑液包炎の特徴

  • 座骨部(おしりの下の骨の部分)の痛みと腫れ
  • 長時間座ると痛みが増強
  • 硬い椅子に座ることで症状が悪化
  • スポーツや繰り返しの摩擦が原因
  • 触ると柔らかいしこりを感じることがある

長時間自転車に乗る人や、硬い椅子で長時間作業する人に多く見られます。

6. 皮膚腫瘍(脂肪腫、線維腫など)

おしりには様々な良性の皮膚腫瘍ができることがあります。

良性皮膚腫瘍の特徴

  • 脂肪腫:柔らかく弾力のあるしこり
  • 線維腫:やや硬めのしこり
  • 通常は痛みがない
  • 大きくなると座位で圧迫されて痛むことがある
  • ゆっくりと大きくなる
  • 境界が比較的明瞭

これらの腫瘍は基本的に良性ですが、サイズが大きくなったり、急速に成長する場合は医師の診察を受けることが重要です。

7. その他の原因

尋常性疣贅(いぼ) ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるいぼがおしりにできることがあります。

毛嚢炎 毛穴に細菌が感染して炎症を起こした状態です。小さな赤いしこりができ、痛みを伴うことがあります。

帯状疱疹 水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により、おしりに痛みを伴う発疹やしこりができることがあります。

なぜ座ると痛いのか?

おしりのしこりが座ると痛む理由は、主に以下のメカニズムによります。

圧迫による痛み

座ることで体重がおしりにかかり、しこりが圧迫されます。特に炎症を起こしている場合、この圧迫により痛みの神経が刺激され、強い痛みを感じます。

炎症による痛み

粉瘤や毛巣洞、肛門周囲膿瘍など、感染や炎症を起こしている場合、炎症部位には痛みを引き起こす物質(発痛物質)が放出されています。座位による圧迫でこれらの物質がさらに刺激され、痛みが増強します。

神経の圧迫

しこりが大きくなると、周囲の神経を圧迫することがあります。座ることでこの圧迫が強まり、痛みやしびれを感じることがあります。

血流障害

座位により患部の血流が悪くなると、組織の酸素不足が起こり、痛みを感じやすくなります。特に長時間座り続けることで症状が悪化します。

症状の見分け方:受診前のセルフチェック

医療機関を受診する前に、自分の症状を観察することで、ある程度の原因を推測することができます。ただし、自己判断だけで治療を決めることは避け、必ず専門医の診察を受けることが重要です。

チェックポイント

位置の確認

  • おしりの割れ目の上部 → 毛巣洞の可能性
  • 肛門の周囲 → 痔核、肛門周囲膿瘍の可能性
  • おしりの頬の部分 → 粉瘤、脂肪腫の可能性
  • 座骨部(おしりの下の骨の部分) → 座骨滑液包炎の可能性

しこりの性状

  • 柔らかく動く → 粉瘤、脂肪腫の可能性
  • 硬くて動かない → 線維腫、炎症性疾患の可能性
  • 中央に黒い点がある → 粉瘤の可能性が高い
  • 膿や血液が出る → 毛巣洞、肛門周囲膿瘍の可能性

痛みの特徴

  • 座るときだけ痛い → 圧迫による痛み
  • 常に痛い → 炎症や感染の可能性
  • ズキズキ脈打つような痛み → 膿瘍形成の可能性
  • 触ると激しく痛む → 炎症性疾患の可能性

随伴症状

  • 発熱がある → 感染症の可能性
  • 排便時に出血や痛み → 痔核の可能性
  • 膿や悪臭のある分泌物 → 感染性疾患の可能性
  • 発疹や水ぶくれ → 帯状疱疹の可能性

受診のタイミング:いつ病院に行くべきか

おしりのしこりは、自然に治ることもありますが、以下のような症状がある場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。

すぐに受診すべき症状

緊急性が高い症状

  • 激しい痛みで座ることができない
  • 発熱(38度以上)を伴う
  • しこりが急速に大きくなっている
  • 膿や血液が大量に出る
  • 排尿や排便に支障がある
  • 全身の倦怠感が強い

これらの症状がある場合、肛門周囲膿瘍や重症感染症の可能性があり、緊急の治療が必要です。

早めの受診が望ましい症状

  • 痛みが1週間以上続いている
  • しこりが徐々に大きくなっている
  • 市販薬で改善しない
  • 日常生活に支障がある(座れない、仕事ができない)
  • 繰り返し同じ場所にしこりができる
  • 色の変化がある(黒くなる、赤紫になる)

経過観察でよい場合

  • 小さなしこりで痛みがない
  • 数日で自然に縮小傾向
  • 日常生活に支障がない

ただし、経過観察中でも症状が悪化したり、長期間改善しない場合は受診が必要です。

診断方法:病院では何をするのか

おしりのしこりで医療機関を受診した場合、以下のような診察や検査が行われます。

問診

医師は症状について詳しく質問します。

  • いつからしこりがあるか
  • 痛みの程度と性質
  • 大きさの変化
  • 随伴症状(発熱、分泌物など)
  • 既往歴や現在の病気
  • 生活習慣(座位時間、運動習慣など)

視診・触診

患部を直接観察し、触って確認します。

  • しこりの大きさ、形状、硬さ
  • 皮膚の色調変化
  • 開口部や分泌物の有無
  • 圧痛の程度
  • 周囲組織との癒着

画像検査

必要に応じて以下の検査が行われます。

超音波検査(エコー)

  • しこりの内部構造を確認
  • 膿瘍の有無を判断
  • 血流の評価
  • 非侵襲的で痛みがない

MRI検査

  • 深部の構造を詳細に観察
  • 痔瘻の範囲や走行を確認
  • 悪性腫瘍の除外
  • より詳細な診断が必要な場合

CT検査

  • 膿瘍の範囲を確認
  • 骨や深部組織の評価
  • 緊急性の判断

その他の検査

血液検査

  • 炎症の程度を確認(白血球数、CRP値)
  • 全身状態の評価
  • 感染症の有無

培養検査

  • 分泌物から細菌を特定
  • 適切な抗生物質の選択

病理検査

  • 摘出した組織を顕微鏡で観察
  • 良性・悪性の判断
  • 確定診断

治療法:症状に応じた対処

おしりのしこりの治療は、原因となる疾患によって異なります。ここでは、主な疾患ごとの治療法を説明します。

粉瘤の治療

炎症がない場合

  • 経過観察:小さく無症状なら様子を見ることも可能
  • 手術的摘出:根治を希望する場合
    • 局所麻酔下で袋ごと完全に摘出
    • 再発予防のため袋を残さないことが重要
    • 日帰り手術が可能
    • 術後1〜2週間で抜糸

炎症を起こしている場合(炎症性粉瘤)

  • 切開排膿:膿を出して炎症を抑える
  • 抗生物質の投与
  • 消炎後に根治手術を検討
  • 緊急的な処置が必要なことが多い

アイシークリニックでは、くり抜き法(へそ抜き法)という傷跡が目立ちにくい方法で粉瘤の治療を行っています。

毛巣洞の治療

保存的治療

  • 抗生物質の投与
  • 洞内の清潔保持
  • 毛の除去(レーザー脱毛など)
  • 体重管理

手術治療

  • 洞の完全摘出
  • 再発予防のための工夫
  • 術後のケアが重要
  • 完治まで数週間から数ヶ月

毛巣洞は再発しやすいため、術後のケアと生活習慣の改善が重要です。

痔核の治療

保存的治療(軽症の場合)

  • 生活習慣の改善(便秘解消、長時間座位の回避)
  • 軟膏や座薬の使用
  • 温水洗浄
  • 食物繊維の摂取

外来処置

  • ゴム輪結紮術:内痔核を糸で縛って脱落させる
  • 硬化療法:薬剤を注入して痔核を固める

手術治療(重症の場合)

  • 痔核切除術
  • PPH(環状痔核根治術)
  • 入院が必要な場合もある

肛門周囲膿瘍・痔瘻の治療

肛門周囲膿瘍

  • 緊急切開排膿
  • 抗生物質の投与
  • 痛み止めの処方
  • 早期治療が重要

痔瘻

  • 瘻管切開術
  • くり抜き法
  • シートン法(糸を通して徐々に切開)
  • 再発予防が課題

座骨滑液包炎の治療

保存的治療

  • 安静(座位の制限)
  • 冷却療法(急性期)
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • クッション使用

注射治療

  • ステロイド注射(炎症が強い場合)
  • 局所麻酔薬の注射

手術治療

  • 保存療法で改善しない場合
  • 滑液包の摘出

皮膚腫瘍の治療

良性腫瘍

  • 経過観察(小さく無症状な場合)
  • 手術的摘出(大きい、痛みがある、整容面で気になる場合)
  • 日帰り手術が可能なことが多い

悪性腫瘍が疑われる場合

  • 生検(組織検査)
  • 広範囲切除
  • 追加治療の検討
  • 専門医療機関への紹介

自宅でできる対処法とセルフケア

医療機関を受診するまでの間や、軽症の場合に自宅でできる対処法を紹介します。ただし、これらはあくまで一時的な対症療法であり、根本的な治療にはなりません。

痛みの軽減

冷却療法

  • 清潔なタオルで包んだ保冷剤を患部に当てる
  • 1回15〜20分程度
  • 炎症による腫れと痛みを軽減
  • 直接氷を当てないよう注意

温熱療法

  • 慢性的な痛みには温めるのも効果的
  • ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
  • 使い捨てカイロは低温やけどに注意
  • 急性炎症期は冷却が優先

姿勢の工夫

  • 柔らかいクッションを使用
  • ドーナツクッションの活用
  • 長時間座らない(1時間ごとに立ち上がる)
  • 横向きに寝て患部への圧迫を避ける

清潔の保持

入浴

  • 毎日入浴して患部を清潔に保つ
  • 石鹸で優しく洗う
  • ゴシゴシこすらない
  • 入浴後はよく乾かす

下着の選択

  • 通気性の良い綿素材
  • ゆったりしたサイズ
  • 毎日清潔なものに交換
  • きつい下着は避ける

生活習慣の改善

座り方の工夫

  • 正しい姿勢を心がける
  • 1時間ごとに立ち上がって歩く
  • クッション性の良い椅子を選ぶ
  • 硬い椅子は避ける

便秘の予防

  • 水分を十分に摂る(1日1.5〜2リットル)
  • 食物繊維を多く含む食事
  • 規則正しい排便習慣
  • 適度な運動

体重管理

  • 適正体重の維持
  • バランスの取れた食事
  • 定期的な運動習慣
  • 肥満は多くの疾患のリスク因子

市販薬の活用

痛み止め

  • 非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)
  • 用法用量を守る
  • 胃腸障害に注意
  • 長期使用は避ける

外用薬

  • 抗生物質軟膏(毛嚢炎など)
  • 痔の軟膏や座薬
  • 使用前に患部を清潔に

注意点

  • 市販薬で3〜4日経っても改善しない場合は受診
  • アレルギーがある場合は使用を避ける
  • 複数の薬を併用する際は薬剤師に相談

予防法:再発を防ぐために

おしりのしこりや痛みを予防し、再発を防ぐためには、日常生活での注意が重要です。

座り方と環境の整備

適切な椅子の選択

  • クッション性が高い椅子
  • 座面が広く安定している
  • 高さ調節が可能
  • 背もたれがしっかりしている

正しい座り姿勢

  • 背筋を伸ばす
  • 骨盤を立てる
  • 深く腰掛ける
  • 足裏全体を床につける
  • 猫背を避ける

こまめな休憩

  • 1時間に1回は立ち上がる
  • 簡単なストレッチを行う
  • 歩いて血行を促進
  • 同じ姿勢を長時間続けない

スキンケアと清潔保持

日常的なケア

  • 入浴時に患部を優しく洗う
  • 汗をかいたらシャワーを浴びる
  • 通気性の良い下着を選ぶ
  • きつい衣類は避ける

皮膚の保護

  • 摩擦を避ける
  • 保湿を心がける(乾燥による刺激を防ぐ)
  • 刺激の強い石鹸は避ける
  • 肌に優しい素材の衣類

生活習慣の改善

食生活

  • バランスの取れた食事
  • 食物繊維を多く摂る(野菜、果物、全粒穀物)
  • 水分を十分に摂る
  • 刺激物(辛い食べ物、アルコール)の過剰摂取を避ける
  • 便秘を予防する食事

運動習慣

  • 適度な有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
  • ストレッチで柔軟性を保つ
  • 筋力トレーニング(体幹を鍛える)
  • 座りっぱなしを避ける

ストレス管理

  • 十分な睡眠(7〜8時間)
  • リラックスできる時間を持つ
  • 趣味や運動でストレス発散
  • 免疫力を維持する

特定の疾患の予防

粉瘤の予防

  • 皮膚を清潔に保つ
  • ニキビを潰さない
  • 皮膚への外傷を避ける
  • 過度な摩擦を避ける

毛巣洞の予防

  • おしりの毛の処理(レーザー脱毛など)
  • 長時間の座位を避ける
  • 体重管理
  • 清潔保持

痔核の予防

  • 便秘の予防と改善
  • 排便時に強くいきまない
  • 長時間トイレに座らない
  • 適度な運動
  • 長時間座り続けない

よくある質問(Q&A)

Q1: おしりのしこりは自然に治りますか?

A1: しこりの種類によります。小さな毛嚢炎や軽度の痔核であれば、生活習慣の改善や市販薬で自然に改善することもあります。しかし、粉瘤は自然に治ることはなく、毛巣洞や痔瘻も根治には治療が必要です。痛みがある場合や大きくなっている場合は、自己判断せず医療機関を受診することをお勧めします。

Q2: 何科を受診すればよいですか?

A2: 症状によって適切な診療科が異なります。

  • 肛門周囲のしこり → 肛門外科、大腸肛門科、外科
  • 皮膚のしこり → 皮膚科、形成外科
  • 判断に迷う場合 → まずは皮膚科や外科を受診

アイシークリニックのような粉瘤治療を専門とするクリニックもあります。

Q3: 手術は痛いですか?入院が必要ですか?

A3: 多くの場合、局所麻酔で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔注射時にチクッとした痛みがある程度です。粉瘤や小さな腫瘍の摘出は日帰り手術が可能です。ただし、痔瘻や大きな膿瘍の場合は入院が必要になることもあります。術後の痛みについては、処方される痛み止めでコントロール可能です。

Q4: 再発することはありますか?

A4: 疾患によって再発率は異なります。

  • 粉瘤:袋を完全に摘出すれば再発はほぼありません
  • 毛巣洞:適切な治療と予防を行わないと再発しやすい
  • 痔核・痔瘻:生活習慣が改善されないと再発する可能性がある

再発予防には、生活習慣の改善と定期的なフォローアップが重要です。

Q5: 悪性腫瘍の可能性はありますか?

A5: おしりにできるしこりの多くは良性ですが、稀に悪性腫瘍(がん)の可能性もあります。以下のような場合は注意が必要です。

  • 急速に大きくなる
  • 硬くて動かない
  • 潰瘍(皮膚が崩れる)を伴う
  • 出血しやすい
  • 痛みがない(進行した悪性腫瘍は痛みがないことがある)

気になる症状があれば、早めに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。

Q6: 市販の痔の薬は効きますか?

A6: 肛門周囲のしこりが痔核によるものであれば、市販の痔の薬(軟膏や座薬)で症状が改善することがあります。ただし、粉瘤や毛巣洞などには効果がありません。3〜4日使用しても改善しない場合、または症状が悪化する場合は、医療機関を受診してください。

Q7: 仕事を休む必要がありますか?

A7: 症状の程度と仕事の内容によります。

  • 軽症の場合:仕事を続けながら通院治療が可能
  • デスクワークで痛みが強い場合:クッション使用や立ち作業への変更で対応
  • 手術の場合:日帰り手術なら翌日から仕事復帰できることも多い
  • 肛門周囲膿瘍や重症例:数日〜1週間程度の休養が必要な場合も

担当医と相談して、仕事への影響を最小限にする方法を検討しましょう。

Q8: 妊娠中・授乳中でも治療できますか?

A8: 妊娠中や授乳中は、使用できる薬剤や治療法に制限があります。

  • 保存的治療(生活指導、外用薬など)が優先されます
  • 緊急を要する場合(膿瘍など)は、安全性を考慮した治療を行います
  • 手術が必要な場合は、出産後に行うことが多い
  • 必ず妊娠中・授乳中であることを医師に伝えてください

Q9: 保険は適用されますか?

A9: ほとんどの治療は健康保険が適用されます。

  • 粉瘤摘出術、痔核手術、膿瘍切開などは保険適用
  • 美容目的でない医療行為は基本的に保険適用
  • 初診料、再診料、検査費用、処方箋料も保険適用
  • 診療内容によって費用は異なりますので、受診時に確認してください

Q10: 予防のために脱毛は有効ですか?

A10: 毛巣洞の予防には、おしりの毛の脱毛が有効です。特にレーザー脱毛は毛巣洞の再発予防に推奨されます。また、毛嚢炎の予防にも脱毛が役立つことがあります。ただし、粉瘤の予防には直接的な効果はありません。脱毛を検討する場合は、皮膚科医や脱毛専門のクリニックに相談することをお勧めします。

まとめ

おしりのしこりが座ると痛い症状は、粉瘤、毛巣洞、痔核、肛門周囲膿瘍、座骨滑液包炎など、様々な原因が考えられます。それぞれの疾患によって適切な治療法が異なるため、自己判断せず医療機関を受診することが重要です。

重要なポイント

  1. 早期受診の重要性:症状が軽いうちに治療を始めれば、短期間で改善し、手術が不要なことも多くあります。痛みが強い、発熱を伴う、急速に大きくなるなどの症状がある場合は、すぐに受診してください。
  2. 適切な診療科の選択:肛門周囲なら肛門外科や大腸肛門科、皮膚のしこりなら皮膚科や形成外科が適しています。粉瘤の治療を専門とするクリニックもあります。
  3. 生活習慣の改善:長時間座る仕事をしている方は、こまめに休憩を取り、クッションを活用しましょう。便秘の予防、体重管理、適度な運動なども重要です。
  4. 再発予防:治療後も生活習慣を改善し、定期的なフォローアップを受けることで、再発を防ぐことができます。
  5. 清潔保持:患部を清潔に保ち、適切なスキンケアを行うことで、感染や炎症のリスクを減らすことができます。

おしりのトラブルは、恥ずかしさから受診を躊躇する方も多いですが、医療機関では日常的に診療している疾患です。放置すると悪化し、治療が難しくなることもあるため、早めの受診と適切な治療を心がけましょう。

日常生活での予防策を実践し、気になる症状があれば専門医に相談することで、快適な毎日を取り戻すことができます。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
    https://www.dermatol.or.jp/qa/
  2. 日本大腸肛門病学会「痔核(いぼ痔)」
    https://www.coloproctology.gr.jp/
  3. 厚生労働省「e-ヘルスネット」
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
  4. 国立がん研究センター「がん情報サービス」
    https://ganjoho.jp/
  5. 日本形成外科学会「形成外科で扱う疾患」
    https://www.jsprs.or.jp/
  6. 日本皮膚科学会雑誌「表皮嚢腫の診断と治療」
  7. 日本大腸肛門病学会誌「痔瘻の診断と治療」
  8. 日本臨床外科学会誌「毛巣洞の治療経験」

※本記事は医学的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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