はじめに
料理中に熱い鍋に触れてしまった、アイロンで指を火傷した、熱湯がかかってしまった――日常生活の中で、やけど(熱傷)は誰にでも起こりうる身近なケガです。やけどをした直後から感じる「ヒリヒリ」とした痛みは、多くの方が経験されたことがあるでしょう。
この記事では、「やけどのヒリヒリ感はいつまで続くのか」という疑問を中心に、やけどの深さによる症状の違い、適切な応急処置、治療方法、そして跡を残さないためのケアについて詳しく解説していきます。
やけどは軽く見られがちですが、適切な処置を行わないと痕が残ったり、感染症を引き起こしたりする可能性があります。正しい知識を持って対処することで、痛みを早く和らげ、きれいに治すことができます。

やけどの深さと分類
やけどのヒリヒリ感がいつまで続くかを理解するには、まずやけどの深さについて知る必要があります。医学的には、やけどは皮膚の損傷の深さによってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度の3段階に分類されます。さらにⅡ度は浅達性Ⅱ度(SDB:Superficial Dermal Burn)と深達性Ⅱ度(DDB:Deep Dermal Burn)に細分化されます。
Ⅰ度熱傷(表皮熱傷)
損傷の深さ: 表皮のみ
見た目の特徴:
- 皮膚が赤くなる(発赤)
- 軽い腫れ
- 水ぶくれはできない
- 触ると痛みがある
典型例:
- 軽い日焼け
- 熱い物に一瞬触れた程度
Ⅰ度熱傷は最も軽度のやけどで、表皮という皮膚の最も浅い層だけが損傷を受けた状態です。ヒリヒリとした痛みが特徴的ですが、比較的早く治癒します。
Ⅱ度熱傷(真皮熱傷)
浅達性Ⅱ度熱傷(SDB)
損傷の深さ: 真皮の浅層まで
見た目の特徴:
- 赤みが強い
- 水ぶくれ(水疱)ができる
- 水疱の底が赤い、またはピンク色
- 強い痛み(ヒリヒリ、ジンジンとした痛み)
- 触れると非常に痛い
典型例:
- 熱湯がかかった
- 熱い油がはねた
- 長時間の日焼け
浅達性Ⅱ度熱傷では、真皮の浅い部分まで損傷が及びますが、皮膚を再生する細胞(表皮細胞)が残っているため、適切な治療を行えば跡を残さず治る可能性が高いです。
深達性Ⅱ度熱傷(DDB)
損傷の深さ: 真皮の深層まで
見た目の特徴:
- 水ぶくれができる
- 水疱の底が白っぽい、または赤と白が混在
- 痛みはあるが、浅達性Ⅱ度より感じにくいこともある(神経が損傷されるため)
- 腫れが強い
典型例:
- 高温の液体に長時間触れた
- 熱源に押し付けられた
深達性Ⅱ度熱傷は、真皮の深い部分まで損傷が及んでいるため、治癒に時間がかかり、適切な治療を行わないと肥厚性瘢痕(盛り上がった傷跡)やケロイドが残る可能性があります。
Ⅲ度熱傷(皮下組織熱傷)
損傷の深さ: 皮膚全層(表皮、真皮)を超えて皮下組織まで
見た目の特徴:
- 白色または茶褐色、黒色
- 乾燥している
- 痛みを感じない(神経が完全に破壊されているため)
- 硬くなっている
典型例:
- 火災による火傷
- 高温の金属に長時間触れた
- 電気による火傷
Ⅲ度熱傷は最も重度のやけどで、皮膚のすべての層が破壊されています。自然には治らず、植皮手術などの専門的な治療が必要になります。
ヒリヒリ感がいつまで続くか(深さ別)
やけどのヒリヒリ感や痛みの持続期間は、やけどの深さによって大きく異なります。
Ⅰ度熱傷の場合
痛みの持続期間: 2〜3日程度
経過:
- 当日〜1日目: ヒリヒリとした痛みが最も強い。赤みと軽い腫れが見られる。
- 2〜3日目: 痛みが徐々に軽減。赤みは残るが、触っても痛くなくなってくる。
- 3〜7日目: 表皮が剥けることがある。新しい皮膚ができてくる。
- 1〜2週間: 完全に治癒。通常は跡が残らない。
Ⅰ度熱傷の場合、ヒリヒリ感は比較的短期間で治まります。冷やすことと保湿を心がければ、日常生活にほとんど支障なく過ごせます。
浅達性Ⅱ度熱傷(SDB)の場合
痛みの持続期間: 1〜2週間程度
経過:
- 当日〜2日目: 強いヒリヒリ、ジンジンとした痛みが続く。水ぶくれができる。痛みで眠れないこともある。
- 3〜5日目: 水ぶくれが破れることがある。痛みは強いが、徐々にピークを過ぎる。
- 1週間目: 痛みが明らかに軽減。新しい皮膚ができ始める。
- 2週間目: ヒリヒリ感はほぼなくなる。赤みは残るが、触っても痛くない。
- 2〜4週間: 表面が治癒。赤みは数ヶ月残ることがある。
- 3〜6ヶ月: 赤みが徐々に薄くなり、通常は跡が残らないか、目立たない程度に。
浅達性Ⅱ度熱傷では、最初の1週間が最も痛みが強く、特に最初の2〜3日間は非常に辛い時期です。しかし、適切な処置と治療を行えば、2週間程度でヒリヒリ感は大幅に軽減します。
深達性Ⅱ度熱傷(DDB)の場合
痛みの持続期間: 2〜3週間以上
経過:
- 当日〜1週間: 痛みはあるが、神経の損傷により浅達性Ⅱ度ほど強くないこともある。水ぶくれが大きい。
- 1〜2週間: 痛みが持続。感染のリスクが高い時期。
- 2〜3週間: 徐々に痛みが軽減するが、まだヒリヒリ感が残る。
- 3〜6週間: 表面が治癒し始めるが、完全に治るまで時間がかかる。
- 2〜3ヶ月以上: 赤みや硬さが残る。肥厚性瘢痕のリスクがある。
深達性Ⅱ度熱傷は治癒に時間がかかり、専門的な治療が必要です。ヒリヒリ感も長期間続くことがあり、3週間以上痛みが残ることも珍しくありません。
Ⅲ度熱傷の場合
痛みの持続期間: 痛みを感じないことが多い(神経が破壊されているため)
Ⅲ度熱傷では、神経が完全に破壊されているため、やけどをした部位そのものは痛みを感じないことがあります。ただし、周囲にⅡ度熱傷の部分があれば、そこに痛みを感じます。Ⅲ度熱傷は緊急の医療処置が必要で、入院治療や手術が必要になります。
ヒリヒリ感が続く理由とメカニズム
やけどによるヒリヒリ感は、なぜ起こり、なぜ続くのでしょうか。そのメカニズムを理解することで、適切な対処法も見えてきます。
炎症反応
やけどを負うと、体は損傷を受けた組織を修復しようとして炎症反応を起こします。この炎症反応の過程で、以下のような物質が放出されます。
- ヒスタミン: 血管を拡張し、痛みを感じやすくする
- ブラジキニン: 強力な痛み物質
- プロスタグランジン: 痛みを増強し、炎症を促進
これらの物質が神経を刺激することで、ヒリヒリとした痛みが生じます。炎症反応は治癒に必要な過程ですが、過剰な炎症は痛みを長引かせる原因になります。
神経の過敏化
やけどによって皮膚の神経終末が損傷を受けると、神経が過敏な状態になります。この「神経の過敏化」により、通常なら痛みを感じない程度の刺激(衣服が触れる、風が当たるなど)でも痛みを感じるようになります。
この過敏化は、損傷した組織が修復されるまで続くため、やけどの深さが深いほど、神経の回復にも時間がかかり、痛みが長引きます。
組織の修復過程
皮膚が再生される過程でも、痛みを感じることがあります。新しい皮膚ができる際に、細胞分裂が活発に行われ、その過程で神経が刺激されます。また、乾燥によって皮膚が引っ張られると、ヒリヒリ感が増すことがあります。
二次的損傷
適切な処置を行わないと、やけどをした部位が乾燥したり、感染したりすることがあります。これらの二次的な損傷は、痛みを長引かせ、治癒を遅らせる原因になります。
応急処置の方法
やけどをした直後の適切な応急処置は、痛みを軽減し、治癒を早め、跡を残さないために非常に重要です。
すぐに冷やす(最も重要)
方法:
- 流水で冷やす: やけどをした部位を、清潔な流水(水道水)で15〜30分間冷やします。水温は15〜25℃程度が理想的です。
- 氷は直接当てない: 氷を直接当てると、冷やしすぎて組織が損傷する可能性があります。どうしても氷を使う場合は、タオルなどで包んでから当てます。
- 広範囲の場合: 広い範囲をやけどした場合、体温が下がりすぎないよう注意しながら冷やします。
冷やす理由:
- 熱による組織の損傷を最小限に抑える
- 痛みを軽減する
- 炎症を抑える
- やけどが深くなるのを防ぐ
やけどをしてから冷やすまでの時間が短いほど、効果が高いです。やけどをしたら、何よりも先に冷やすことを優先してください。
衣服の処理
やってはいけないこと:
- 無理に衣服を脱がせる(皮膚がくっついている可能性がある)
正しい方法:
- 衣服の上から冷やす
- 衣服が皮膚にくっついている場合は、そのまま医療機関を受診する
- ゆとりがあり、簡単に脱げる衣服の場合は、優しく脱がせてから冷やす
水ぶくれの処理
基本原則: 水ぶくれは破らない
水ぶくれ(水疱)の中の液体は無菌で、下の新しい皮膚を保護する役割があります。破ってしまうと、感染のリスクが高まり、痛みも増します。
もし破れてしまった場合:
- 清潔な水で洗い流す
- 剥がれた皮膚は無理に取らない
- 清潔なガーゼで覆う
- 早めに医療機関を受診する
やってはいけないこと
以下は、昔から「やけどに良い」と言われてきた民間療法ですが、実際には治療の妨げになったり、悪化させたりする可能性があるため、絶対に行わないでください。
- アロエを塗る: 感染のリスクを高める
- 味噌や醤油を塗る: 感染のリスクを高め、傷を深くする可能性
- 油を塗る: 熱を閉じ込め、やけどを深くする
- 歯磨き粉を塗る: 刺激が強く、感染のリスクもある
- 消毒液を塗る: アルコール系消毒液は刺激が強く、組織を傷める
適切な治療とケア
やけどの治療とケアは、深さと範囲によって異なります。
Ⅰ度熱傷のケア
基本的なケア:
- 冷却を続ける: 最初の数時間は、痛みがぶり返したら再度冷やす
- 保湿: ワセリンや市販のやけど用軟膏を塗る
- 保護: 摩擦が起こる部位の場合、絆創膏やガーゼで保護
- 日光を避ける: 紫外線は炎症を悪化させるため、患部を日光から守る
使用できる市販薬:
- ワセリン(白色ワセリン)
- オロナインH軟膏
- 紫雲膏
Ⅰ度熱傷は基本的に自宅でのケアで治りますが、範囲が広い場合や痛みが強い場合は医療機関を受診しましょう。
Ⅱ度熱傷の治療
医療機関での治療が推奨される理由:
- 適切な深さの診断が必要
- 感染予防が重要
- 跡を残さないための専門的なケアが必要
一般的な治療法:
- 洗浄: 患部を清潔にする
- 外用薬の塗布:
- プロスタンディン軟膏(プロスタグランジン製剤)
- ゲーベンクリーム(銀含有抗菌薬)
- アクトシン軟膏(創傷治癒促進薬) など
- 被覆: 適切なドレッシング材で覆う
- ハイドロコロイド製剤
- ポリウレタンフィルム など
- 経過観察: 感染の兆候がないか、定期的にチェック
湿潤療法(モイストヒーリング):
現代のやけど治療では、「湿潤環境を保つことで治癒が早まる」という考え方が主流になっています。従来の「乾燥させて治す」方法ではなく、適度な湿り気を保つことで、以下の効果が得られます。
- 痛みの軽減
- 治癒期間の短縮
- 跡が残りにくい
痛みのコントロール
やけどの痛みが強い場合、我慢せずに鎮痛薬を使用することが大切です。
使用できる市販の鎮痛薬:
- アセトアミノフェン(タイレノール、ロキソニンSプラス など)
- イブプロフェン(イブ、ノーシン など)
- ロキソプロフェン(ロキソニンS など)
ただし、市販薬を使用しても痛みが治まらない場合や、夜眠れないほどの痛みがある場合は、医療機関を受診してください。
感染予防
やけどの最も重要な合併症の一つが感染症です。感染を予防するために、以下の点に注意してください。
感染のサイン:
- 赤みが広がる
- 腫れが強くなる
- 膿が出る
- 熱が出る
- 悪臭がする
- 痛みが急に強くなる
これらのサインが見られたら、すぐに医療機関を受診してください。
感染予防のポイント:
- 患部を清潔に保つ
- 処方された軟膏を指示通りに塗る
- ガーゼやドレッシング材を定期的に交換する
- 手をよく洗ってから処置する
- 患部を不必要に触らない
病院を受診すべき目安
以下のような場合は、自己判断でケアせず、必ず医療機関を受診してください。
早急に受診が必要なケース
すぐに医療機関(できれば救急外来)を受診すべき場合:
- Ⅲ度熱傷が疑われる
- 白色、茶褐色、黒色に変色している
- 痛みを感じない
- 硬くなっている
- やけどの範囲が広い
- 成人の場合、手のひら以上の範囲
- 小児の場合、手のひらの半分以上の範囲
- 顔、関節、性器にかかっている
- 化学薬品や電気によるやけど
- 見た目より深い損傷がある可能性
- 気道熱傷の可能性
- 煙を吸い込んだ
- 顔や首のやけど
- 呼吸がしにくい
- 声がかれる
- 乳幼児、高齢者のやけど
- より重症化しやすい
数日以内の受診が推奨されるケース
- Ⅱ度熱傷(水ぶくれができている)
- 範囲が小さくても、適切な治療で跡を残さないようにするため
- 痛みが強く、日常生活に支障がある
- 適切な鎮痛薬の処方を受けられる
- 手のひら、足の裏、関節部分のやけど
- 機能に影響が出る可能性がある
- 治りが遅い、悪化している
- 1週間以上経っても改善しない
- 赤みが広がっている
やけど跡を残さないためのポイント
やけどが治った後も、適切なケアを続けることで、跡を目立たなくしたり、予防したりすることができます。
紫外線対策
重要性: やけどの跡は、紫外線によって色素沈着が起こりやすくなります。治った後も数ヶ月から1年程度は、患部を紫外線から守る必要があります。
具体的な対策:
- 日焼け止めクリームを塗る(SPF30以上推奨)
- 衣服で覆う
- 直射日光を避ける
保湿ケア
重要性: やけどの跡は乾燥しやすく、乾燥すると痒みや赤みが増すことがあります。十分な保湿を続けることで、皮膚の再生を助けます。
具体的な方法:
- 1日2〜3回、保湿クリームを塗る
- ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)が効果的
- セラミド配合の保湿剤も有効
瘢痕予防
肥厚性瘢痕・ケロイドのリスクが高い場合:
- 深達性Ⅱ度以上のやけど
- 関節部分のやけど
- 体質的にケロイドができやすい人
予防方法:
- 圧迫療法: 弾性包帯やシリコンシートで患部を圧迫する
- シリコンゲルシート: 市販のシリコン製品を貼付
- ステロイド軟膏: 医師の処方により使用
- ビタミンC誘導体: 色素沈着予防
- ハイドロキノン: 色素沈着の治療(医師の処方)
マッサージ
やけどが完全に治った後(表面が治って2週間以上経過後)は、優しいマッサージが有効です。
方法:
- 保湿剤を塗りながら、円を描くように優しくマッサージ
- 1日2〜3回、各5分程度
- 痛みがある場合は無理をしない
マッサージにより、硬くなった組織を柔らかくし、血行を促進することができます。
経過観察とフォローアップ
やけどの治療は、表面が治っても終わりではありません。特にⅡ度以上のやけどの場合、長期的なフォローアップが重要です。
治癒後のチェックポイント
数週間〜数ヶ月:
- 赤みの変化
- 痒みの有無
- 硬さや盛り上がり
- 色素沈着の程度
- 関節部分の場合、可動域の制限
気になる変化があれば: 定期的に医師に診てもらうことで、早期に問題を発見し、適切な対処ができます。
専門的な治療が必要な場合
以下のような状態になった場合、形成外科や皮膚科の専門医による治療が必要になることがあります。
- 肥厚性瘢痕・ケロイド: ステロイド注射、レーザー治療、手術など
- 拘縮(関節が動かしにくくなる): リハビリテーション、場合によっては手術
- 色素沈着: レーザー治療、美白剤の処方
- 色素脱失(白く抜ける): 専門的な治療が必要

よくある質問
A: 最低でも15〜20分、理想的には30分程度冷やすことが推奨されています。ただし、範囲が広い場合や、乳幼児・高齢者の場合は、体温が下がりすぎないよう注意が必要です。冷やしている間に痛みが和らいできたら、一旦冷やすのを止めて様子を見ても良いでしょう。痛みがぶり返したら、再度冷やします。
A: 基本的には破らないことが推奨されます。水ぶくれの中の液体は無菌で、下の新しい皮膚を保護する役割があります。破ってしまうと感染のリスクが高まり、治りも遅くなります。ただし、非常に大きな水ぶくれで日常生活に支障がある場合や、破れそうな場合は、医療機関で適切に処置してもらうことをお勧めします。
A: Ⅰ度熱傷(赤くなっただけで水ぶくれがない)の場合は、ワセリンや市販のやけど用軟膏を使用しても問題ありません。ただし、水ぶくれができているⅡ度以上のやけどの場合は、自己判断で薬を使わず、医療機関を受診することをお勧めします。
A: Ⅰ度熱傷の場合は、痛みがなければ入浴しても構いません。ただし、熱いお湯は避け、患部を強くこすらないようにしてください。Ⅱ度以上のやけどや、水ぶくれがある場合は、医師の指示に従ってください。一般的には、患部が濡れないようにシャワーだけにする、または入浴を控えることが推奨されます。
A: やけどの深さと範囲によって異なります。Ⅰ度熱傷なら、痛みが治まれば(2〜3日程度)普通の生活に戻れます。浅達性Ⅱ度熱傷の場合、表面が治るまで2週間程度かかり、その間は患部を保護し、激しい運動や患部に負担がかかる活動は避けた方が良いでしょう。深達性Ⅱ度以上の場合は、医師の指示に従ってください。
A: 基本的な応急処置(冷やす)は同じですが、子どもは皮膚が薄く、やけどが深くなりやすい傾向があります。また、体が小さいため、同じ範囲のやけどでも、体に対する割合が大きくなります。そのため、小さな子どもがやけどをした場合は、範囲が小さくても医療機関を受診することをお勧めします。
A: レーザー治療は、やけど跡の色素沈着や赤み、肥厚性瘢痕の治療に効果がある場合があります。ただし、すべての跡が完全に消えるわけではなく、複数回の治療が必要なこともあります。やけどの跡が気になる場合は、形成外科や美容皮膚科で相談してみると良いでしょう。
A: やけどの治癒過程で痒みが出ることは非常に多いです。これは皮膚が再生している証拠でもありますが、掻いてしまうと傷が悪化したり、跡が残りやすくなります。対処法としては、(1)十分に保湿する、(2)冷やす、(3)医師に相談して抗ヒスタミン薬を処方してもらう、などがあります。決して掻かないようにしましょう。
まとめ
やけどのヒリヒリ感がいつまで続くかは、やけどの深さによって大きく異なります。
- Ⅰ度熱傷: 2〜3日程度
- 浅達性Ⅱ度熱傷: 1〜2週間程度
- 深達性Ⅱ度熱傷: 2〜3週間以上
やけどをした際の最も重要な応急処置は、すぐに流水で15〜30分程度冷やすことです。この初期対応により、痛みを軽減し、やけどが深くなるのを防ぐことができます。
水ぶくれができたⅡ度以上のやけどや、範囲が広い場合、関節部分や顔のやけどは、必ず医療機関を受診してください。適切な治療を受けることで、痛みを早く和らげ、跡を残さずに治すことができます。
やけどが治った後も、数ヶ月間は紫外線対策と保湿ケアを続けることが、きれいな肌を保つために重要です。
参考文献
- 日本熱傷学会「熱傷診療ガイドライン」
https://jsbi-burn.org/ - 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:やけど」
https://www.dermatol.or.jp/qa/ - 日本創傷外科学会「創傷治癒の基礎知識」
https://www.jswcs.org/ - 厚生労働省「家庭での事故防止ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/ - 日本形成外科学会「熱傷(やけど)の治療」
https://www.jsprs.or.jp/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務