はじめに
デリケートゾーンにできものやしこりを発見したとき、多くの方が不安に感じられることでしょう。特に陰部という部位の特性上、他人に相談することが難しく、一人で悩まれている方も少なくありません。そのようなできもののひとつに「粉瘤(ふんりゅう)」があります。
粉瘤は医学的には「アテローム」や「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」と呼ばれる良性の皮下腫瘍で、全身のどこにでもできる可能性がありますが、特に陰部は好発部位の一つとして知られています。陰部の粉瘤は決して珍しい病気ではなく、適切な診断と治療により改善が期待できる疾患です。
本記事では、陰部にできる粉瘤について、その原因や症状、治療法について詳しく解説いたします。デリケートな部位のお悩みだからこそ、正しい知識を持っていただき、適切な医療機関での治療をお受けいただくことが重要です。

粉瘤とは – 基本的な定義と病態
粉瘤の定義
粉瘤(ふんりゅう)とは、皮膚の内側に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に本来剥がれ落ちるはずの角質や皮脂などの老廃物が蓄積してできる良性の皮下腫瘍です。医学的には「表皮嚢腫」「アテローム(Atheroma)」と呼ばれることもあります。
粉瘤の袋の内壁は、正常な皮膚の表皮と同じような構造をしており、継続的に角質や皮脂を産生します。しかし、この袋には適切な排出路がないため、内容物が蓄積し続け、時間の経過とともに徐々に大きくなっていくのが特徴です。
粉瘤の種類
粉瘤には主に以下の3つの種類があります。
1. 表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ) 最も一般的な粉瘤で、毛穴の上部(毛漏斗部)が皮膚の内側に陥入することで袋状構造が形成されます。全身のどこにでもでき、陰部にできる粉瘤の大部分がこのタイプです。
2. 外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ) 主に頭部に発生することが多く、表皮嚢腫よりも硬く触れることが特徴です。陰部に発生することは比較的稀です。
3. 多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫) 腕や首、腋窩部に複数個できることが多く、内容物はマヨネーズのような黄色い粘調な物質で、通常の粉瘤と異なり臭いがないのが特徴です。
粉瘤の疫学
粉瘤は皮膚科を受診する患者さんの中でも頻繁に見られる疾患の一つです。年齢を問わず発生しますが、特に20歳代から50歳代の成人に多く見られます。性別では男性が女性の約2倍の発生率とされていますが、陰部については女性の方がやや多いとの報告もあります。
陰部に粉瘤ができる原因
なぜ陰部に粉瘤ができやすいのか
陰部(デリケートゾーン)は、身体の他の部位と比較して粉瘤ができやすい環境が揃っている部位です。その理由を詳しく見ていきましょう。
1. 皮膚の構造的特徴 陰部の皮膚は非常に薄く、角質層も他の部位と比べて薄いという構造的な特徴があります。このため、外部刺激に対するバリア機能が弱く、少しの摩擦や圧迫でもダメージを受けやすい状態にあります。
2. 分泌腺の密度 陰部には皮脂腺やアポクリン汗腺が密集しており、常に皮脂や汗の分泌が活発です。特にアポクリン汗腺は皮脂腺と同じ毛穴から分泌されるため、毛穴の閉塞が起こりやすい環境にあります。
3. 物理的刺激 陰部は日常生活において、以下のような継続的な物理的刺激を受けています:
- 下着による摩擦や圧迫
- 歩行時の太ももの摩擦
- 座位での圧迫
- 生理用品(ナプキンやタンポン)による刺激
- 除毛処理による刺激
4. 湿度と温度 陰部は下着や衣服で覆われているため、湿度と温度が高くなりやすい環境です。この高温多湿な環境は、皮脂や汗の分泌を促進し、細菌の繁殖にも適している条件となります。
女性に特に多い理由
女性の陰部に粉瘤ができやすい理由として、以下の要因が挙げられます。
1. 下着の特徴 女性は男性と比較して、体のラインを美しく見せるために密着度の高い下着を着用することが多く、これが継続的な圧迫や摩擦の原因となります。
2. 月経の影響 月経中は生理用品の使用により、通常以上に摩擦や蒸れが生じやすくなります。また、月経によるホルモンバランスの変化も皮脂分泌に影響を与える可能性があります。
3. 除毛の影響 アンダーヘアの処理により、毛穴周囲に微細な傷ができることがあり、これが粉瘤の形成に関与する可能性があります。
粉瘤形成のメカニズム
陰部における粉瘤形成は、以下のようなメカニズムで起こると考えられています:
- 毛穴の閉塞: 継続的な刺激や炎症により、毛穴の出口が閉塞します。
- 表皮の陥入: 閉塞した毛穴から表皮の一部が皮膚の深部に陥入し、袋状の構造を形成します。
- 角質の蓄積: 袋の内壁から産生される角質や皮脂が袋の中に蓄積していきます。
- 嚢腫の拡大: 内容物の蓄積により、嚢腫は徐々に大きくなっていきます。
陰部の粉瘤の症状と特徴
初期症状
陰部にできる粉瘤の初期症状は、以下のような特徴があります:
1. 無痛性のしこり 初期の粉瘤は通常痛みを伴わない、小さな硬いしこりとして始まります。大きさは数ミリメートルから1センチメートル程度で、皮膚の下にコロコロとした感触があります。
2. 皮膚の色調変化 粉瘤のできた部分の皮膚は、正常な皮膚色から淡青色を呈することがあります。
3. 中央の開口部 粉瘤の特徴的な所見として、しこりの中央部に小さな黒い点(開口部、へそ)が見られることがあります。この開口部は皮膚表面と袋の内部をつなぐ通路となっています。
進行した症状
時間の経過とともに、粉瘤は以下のような変化を示します:
1. サイズの増大 粉瘤は自然に小さくなることはなく、時間とともに徐々に大きくなります。放置すると数センチメートル、場合によっては10センチメートル以上に達することもあります。
2. 内容物の排出 しこりを圧迫すると、開口部から白色~黄白色のドロドロとした粥状の物質が出てくることがあります。この物質は角質や皮脂が混合したもので、特徴的な臭いを伴います。
3. 皮膚の可動性 粉瘤は皮膚と一体化しているため、皮膚と一緒に動きますが、その下の組織(筋肉や脂肪組織)との間では比較的自由に動きます。
炎症を起こした場合の症状(炎症性粉瘤)
粉瘤が細菌感染を起こすと、炎症性粉瘤となり、症状は大きく変化します:
1. 急激な腫脹と疼痛 感染が起こると、しこりは急速に大きく腫れ上がり、強い痛みを伴います。特に陰部では皮膚が薄いため、炎症は周囲に広がりやすく、歩行や座位が困難になるほどの痛みを生じることがあります。
2. 発赤と熱感 感染した部位は赤く腫れ上がり、触れると熱を持っています。
3. 膿の形成 感染が進行すると膿が形成され、自然に破れて膿が排出されることがあります。膿は通常の粉瘤の内容物と異なり、黄色~緑色を呈し、より強い臭いを伴います。
4. 全身症状 重篤な感染の場合、発熱や全身倦怠感などの全身症状を呈することもあります。
陰部特有の症状
陰部にできた粉瘤では、部位の特性上、以下のような特有の症状や問題が生じる可能性があります:
1. 座位時の不快感 陰部の粉瘤は座った時に圧迫され、不快感や痛みを感じることがあります。
2. 歩行時の摩擦 歩行時に太ももの内側で摩擦を受け、症状が悪化する可能性があります。
3. 排尿時の違和感 尿道近傍にできた場合、排尿時に違和感を感じることがあります。
4. 衛生面の問題 分泌物や臭いにより、衛生面での問題が生じる可能性があります。
診断方法
医師による診察
陰部の粉瘤の診断は、主に以下の手順で行われます:
1. 問診 医師は症状の経過、しこりに気づいた時期、痛みの有無、分泌物の性状などについて詳しく問診します。また、家族歴や既往歴についても確認します。
2. 視診 しこりの大きさ、形状、皮膚の色調変化、中央の開口部の有無などを観察します。
3. 触診 しこりの硬さ、可動性、圧痛の有無などを確認します。粉瘤は皮膚とは一緒に動きますが、その下の組織とは比較的自由に動くという特徴があります。
画像検査
1. 超音波検査(エコー検査) 超音波検査は粉瘤の診断において非常に有用な検査です。粉瘤は超音波検査では境界明瞭な低エコー腫瘤として観察され、嚢腫壁を反映した外側陰影や後方エコーの増強が見られます。また、内部には層状の角質塊を反映した高エコー領域を認めることもあります。
2. MRI検査 大きな粉瘤や深部に存在する粉瘤の場合、MRI検査により周囲組織との関係をより詳細に評価することができます。
鑑別診断
陰部にできるしこりは粉瘤以外にも様々な疾患の可能性があるため、以下の疾患との鑑別が重要です:
1. 毛嚢炎・毛包炎 毛穴の細菌感染による炎症で、粉瘤よりも急性に発症し、通常数日から1週間程度で改善します。
2. バルトリン腺嚢腫 女性の大陰唇にできる嚢腫で、バルトリン腺の出口が閉塞することで生じます。
3. 脂肪腫 脂肪細胞の良性腫瘍で、粉瘤よりも柔らかく、皮膚とは独立して動きます。
4. リンパ節腫脹 鼠径部のリンパ節が腫脹している場合があります。
5. 尖圭コンジローマ ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症で、カリフラワー状の隆起を呈します。
6. 悪性腫瘍 稀ですが、悪性腫瘍の可能性も考慮する必要があります。
病理検査
手術で摘出した粉瘤は、病理検査に提出して確定診断を行います。これにより、良性の粉瘤であることを確認するとともに、稀に起こる悪性変化の有無についても評価します。
治療法
治療の基本方針
粉瘤の治療の基本は外科的切除です。粉瘤は良性腫瘍であり、直ちに生命に危険をもたらすことはありませんが、自然治癒することはなく、時間の経過とともに大きくなったり、感染を起こしたりする可能性があるため、根治的治療が推奨されます。
非炎症性粉瘤の治療
炎症を起こしていない粉瘤に対しては、以下の手術法が選択されます:
1. 従来法(切開法) 粉瘤の大きさの2~3倍の範囲で紡錘形に皮膚を切開し、袋状の構造を周囲組織から剥離して完全に摘出する方法です。摘出後は皮膚を縫合し、約1~2週間後に抜糸を行います。
メリット:
- 袋状構造を確実に摘出できるため、再発率が低い
- 大きな粉瘤にも対応可能
デメリット:
- 比較的大きな切開が必要
- 術後の傷跡が目立つ可能性がある
2. くり抜き法(へそ抜き法) 特殊な円筒状のメス(トレパン)を使用して、粉瘤の開口部を中心に4~5ミリメートル程度の小さな穴を開け、そこから内容物を排出した後、袋状構造を摘出する方法です。
メリット:
- 傷跡が小さく済む
- 手術時間が短い(5~15分程度)
- 縫合が不要な場合が多い
デメリット:
- 大きな粉瘤には適用できない場合がある
- 術者の技術と経験が必要
炎症性粉瘤の治療
感染を起こして炎症を呈している粉瘤に対しては、以下の段階的な治療が行われます:
1. 急性期の治療
- 切開・排膿: 局所麻酔下で切開を行い、膿を排出します
- 抗生物質投与: 内服や点滴による抗生物質治療を行います
- 消炎鎮痛剤: 痛みと炎症を抑える薬剤を使用します
2. 慢性期の治療 炎症が落ち着いた後、残存する袋状構造を完全に摘出する根治手術を行います。通常、初回治療から4~6週間後に行われます。
手術に関する詳細情報
1. 麻酔 陰部の粉瘤手術は通常、局所麻酔下で行われます。局所麻酔により、手術部位の感覚は完全になくなりますが、意識は保たれます。
2. 手術時間 手術時間は粉瘤の大きさや部位によって異なりますが、通常30分から1時間程度です。
3. 日帰り手術 ほとんどの場合、日帰り手術が可能です。手術当日は麻酔の影響で2~3時間程度感覚が鈍くなりますが、その後は通常の日常生活に戻れます。
4. 術後管理
- 創部の保護: 手術部位を清潔に保ち、指示された期間はシャワーや入浴を控えます
- 感染予防: 抗生物質の内服を指示された期間継続します
- 定期受診: 術後の経過を確認するため、定期的な受診が必要です
手術費用
粉瘤の手術は健康保険の適用となります。3割負担の場合、粉瘤の大きさや手術方法によって異なりますが、おおよそ5,000円~18,000円程度の自己負担となります。
費用の内訳例:
- 初診・再診料
- 手術料
- 局所麻酔料
- 病理検査料
- 薬剤料(抗生物質など)
治療を受ける診療科
陰部の粉瘤の治療は、以下の診療科で受けることができます:
1. 皮膚科 皮膚の疾患に関する専門的な知識を持ち、粉瘤の診断と治療に精通しています。
2. 形成外科 美容的な仕上がりを重視する場合や、瘢痕を最小限に抑えたい場合に適しています。
3. 産婦人科 女性の陰部の粉瘤については、産婦人科での治療も選択肢の一つです。
4. 外科 一般的な外科手術として対応可能です。
予防策と日常生活での注意点
基本的な予防策
粉瘤の完全な予防は困難ですが、以下の対策により発症リスクを軽減することが可能です:
1. 皮膚の清潔維持 陰部を清潔に保つことは基本的な予防策です。ただし、過度の洗浄は皮膚のバリア機能を損なう可能性があるため、適度な清潔維持を心がけましょう。
洗浄方法のポイント:
- ぬるま湯で優しく洗う
- 刺激の少ない石鹸や専用の洗浄剤を使用
- ゴシゴシ擦らず、手で優しく洗う
- 洗浄後はしっかりと乾燥させる
2. 適切な下着の選択 下着による継続的な摩擦や圧迫を避けるため、以下の点に注意して下着を選びましょう:
- 素材: 通気性の良い綿素材を選ぶ
- サイズ: 身体にフィットするが、締め付けすぎないサイズを選ぶ
- 形状: 摩擦の少ないデザインを選ぶ
3. 除毛処理の注意 アンダーヘアの処理を行う場合は、以下の点に注意しましょう:
- 清潔な器具の使用: カミソリやシェーバーは清潔なものを使用
- 処理前後のケア: 処理前は皮膚を温めて柔らかくし、処理後は消毒と保湿を行う
- 頻度の調整: 過度な処理は避け、皮膚の回復期間を確保する
生活習慣の改善
1. 適切な体重管理 肥満は陰部の摩擦を増加させる要因となるため、適切な体重管理が重要です。
2. 適度な運動 適度な運動は血行を改善し、皮膚の健康維持に役立ちます。ただし、激しい運動による摩擦は避けるよう注意しましょう。
3. バランスの取れた食事 栄養バランスの取れた食事は、皮膚の健康維持に重要です。特に以下の栄養素を意識的に摂取しましょう:
- ビタミンA: 皮膚の新陳代謝に重要
- ビタミンC: コラーゲン合成に必要
- ビタミンE: 抗酸化作用
- 亜鉛: 皮膚の修復に重要
4. ストレス管理 慢性的なストレスは免疫機能や皮膚のバリア機能に悪影響を与える可能性があるため、適切なストレス管理が重要です。
月経期の注意点
女性の場合、月経期は特に以下の点に注意が必要です:
1. 生理用品の選択
- 通気性の良い製品を選ぶ
- こまめに交換する
- 肌に優しい素材のものを選ぶ
2. 清潔管理 月経期は特に清潔管理を心がけ、必要に応じてビデなどを活用することも検討しましょう。

よくある質問と回答
A1. いいえ、粉瘤と性感染症には直接的な関係はありません。粉瘤は皮膚の構造的な問題により生じる良性腫瘍であり、性的接触による感染症ではありません。ただし、陰部にできるその他の疾患(尖圭コンジローマなど)との鑑別は重要ですので、医師の診断を受けることが大切です。
A2. 妊娠中でも粉瘤の治療は可能ですが、妊娠時期や粉瘤の状態によって治療方針が変わります。炎症を起こしていない小さな粉瘤の場合は、出産後に治療を行うことが一般的です。しかし、炎症を起こして痛みがある場合や感染の危険がある場合は、妊娠中でも治療が必要になることがあります。産婦人科医と相談して最適な治療時期を決定しましょう。
Q3. 粉瘤を自分で潰しても大丈夫ですか?
A3. 絶対に避けてください。自分で粉瘤を潰すことは以下のリスクを伴います:
- 細菌感染のリスク
- 袋が破裂して内容物が皮下に散らばるリスク
- 炎症の悪化
- 瘢痕形成
- 再発の可能性
粉瘤の根治には袋状構造の完全な摘出が必要であり、これは医療機関でのみ可能な処置です。
Q4. 陰部の粉瘤は癌になる可能性がありますか?
A4. 粉瘤が悪性腫瘍(癌)に変化する可能性は極めて低いとされています。しかし、以下の場合は注意が必要です:
- 急速に大きくなる
- 硬く固着している
- 潰瘍形成がある
- 出血しやすい
このような症状がある場合は、早急に医師の診察を受けることをお勧めします。
Q5. 手術後の傷跡はどの程度残りますか?
A5. 傷跡の程度は以下の要因により異なります:
- 粉瘤の大きさ
- 手術方法(従来法 vs くり抜き法)
- 個人の創傷治癒能力
- 術後ケアの状況
一般的に、くり抜き法では傷跡は最小限に抑えられます。また、陰部は衣服で覆われている部位のため、美容的な問題となることは比較的少ないとされています。
Q6. 粉瘤の再発はありますか?
A6. 適切に袋状構造を完全に摘出できれば、再発の可能性は低いとされています。しかし、以下の場合に再発のリスクがあります:
- 袋の一部が残存している場合
- 炎症が強い状態での手術により完全摘出が困難だった場合
- 複数の粉瘤が存在する場合
再発を防ぐためには、経験豊富な医師による適切な手術を受けることが重要です。
Q7. 陰部の粉瘤は他の人にうつりますか?
A7. いいえ、粉瘤は感染性の疾患ではないため、他の人にうつることはありません。粉瘤は個人の皮膚の構造的な問題により生じる良性腫瘍であり、接触による感染はありません。
Q8. 治療を受ける際、恥ずかしさを感じるのですが…
A8. デリケートゾーンの診察や治療に対して恥ずかしさを感じるのは自然な感情です。以下の点を考慮して医療機関を選択することをお勧めします:
- 女性医師やスタッフがいる医療機関
- プライバシーに配慮した診察環境
- 同性スタッフによる対応
医療従事者は職業的な観点から診察・治療を行いますので、過度に恥ずかしがる必要はありません。適切な治療を受けることが最も重要です。
まとめ
陰部にできる粉瘤は、決して珍しい疾患ではありません。適切な診断と治療により、根治が期待できる良性疾患です。本記事の要点をまとめると以下のようになります:
粉瘤の特徴
- 皮膚内に形成された袋状構造に老廃物が蓄積する良性腫瘍
- 自然治癒することはなく、時間とともに大きくなる可能性
- 感染を起こすと急激に症状が悪化することがある
陰部に好発する理由
- 皮膚が薄く敏感な部位
- 分泌腺が密集している
- 継続的な物理的刺激を受けやすい環境
- 高温多湿な環境
症状
- 初期:無痛性のしこり、中央の黒い点
- 進行例:サイズの増大、内容物の排出
- 炎症例:急激な腫脹、疼痛、発赤、発熱
診断と治療
- 診断:視診、触診、超音波検査
- 治療:外科的切除(従来法、くり抜き法)
- 炎症例:段階的治療(排膿→根治手術)
予防
- 皮膚の清潔維持
- 適切な下着の選択
- 除毛処理時の注意
- 生活習慣の改善
重要なポイント
- 自己判断や自己処置は避ける
- 早期診断・治療が重要
- 適切な医療機関での治療を受ける
- 恥ずかしがらずに医師に相談する
陰部という部位の特性上、一人で悩まれている方も多いかもしれませんが、適切な医療機関で診断と治療を受けることで、症状の改善と根治が期待できます。気になる症状がある場合は、早めに皮膚科、形成外科、または産婦人科を受診することをお勧めいたします。
当アイシークリニック上野院では、デリケートゾーンの粉瘤治療についても豊富な経験と実績を有しており、患者さんのプライバシーに最大限配慮した診療を心がけております。ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「アテローム(粉瘤)Q&A」 https://qa.dermatol.or.jp/qa17/q02.html
- 日本形成外科学会「粉瘤(アテローム・表皮嚢腫)」 https://jsprs.or.jp/general/disease/shuyo/hifu_hika/funryu.html
- 兵庫医科大学病院「みんなの医療ガイド – 粉瘤(ふんりゅう)」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/195
- 日本医事新報社「粉瘤(表皮囊腫)[私の治療]」 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=22274
- メディカルノート「粉瘤を放置するとどうなるの?」 https://medicalnote.jp/diseases/粉瘤/contents/210716-003-KT
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務