粉瘤の手術費用を徹底解説|保険適用から術式の選び方まで

はじめに

「最近、皮膚の下にコリコリとしたしこりができて気になる」「これって粉瘤かもしれない。手術が必要なら費用はどれくらいかかるの?」

そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚科や形成外科で最も頻繁に診察される良性の皮膚腫瘍の一つです。一見小さな「できもの」に見えますが、自然に治ることはなく、放置すると徐々に大きくなったり、炎症を起こして痛みを伴うこともあります。

本記事では、アイシークリニック上野院の医療コラムとして、粉瘤の手術費用を中心に、保険適用の範囲、手術方法の種類、術後のケアまで、患者さまが知っておくべき情報を詳しくご紹介します。

粉瘤(アテローム)とは

粉瘤の基本的な特徴

粉瘤は、正式には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」または「アテローム」と呼ばれる良性の皮膚腫瘍です。「脂肪の塊」と誤解されることが多いのですが、実際には脂肪とは全く異なるものです。

皮膚の内側に袋状の構造物(嚢腫)が形成され、本来であれば皮膚から剥がれ落ちるはずの垢(角質)や皮脂が、この袋の中に溜まり続けることで発生します。溜まった角質や皮脂は袋の外に排出されないため、時間の経過とともに少しずつ大きくなっていくという特徴があります。

粉瘤の見た目と症状

粉瘤は、皮膚の下に数ミリから数センチメートルの半球状のしこりとして現れます。触るとコリコリとした感触があり、多くの場合、中央に黒い点のような開口部(へそ)が見られることがあります。この開口部から、独特の臭いを持つドロドロとした物質が出てくることもあります。

初期段階では痛みやかゆみはほとんどなく、表面の皮膚の色も正常な状態と変わらないことが多いです。しかし、粉瘤の内部に細菌が侵入すると感染を起こし、「炎症性粉瘤」や「化膿性粉瘤」と呼ばれる状態になります。この場合、赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を伴うようになります。

粉瘤ができやすい部位

粉瘤は全身のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、特に以下の部位にできやすい傾向があります。

  • 頭部・顔面:特に目の周り、鼻、頬、額など
  • 首・耳の後ろ:耳たぶや耳の付け根にもよく見られる
  • 背中・胸部:皮脂腺が多い部位
  • お尻・陰部:座る際の圧力や摩擦を受けやすい場所
  • 四肢:腕や太ももなど

これらの部位は、毛穴が多く皮脂腺が発達している場所であり、外部からの刺激を受けやすいという共通点があります。

粉瘤の原因とメカニズム

なぜ粉瘤ができるのか

粉瘤ができる明確な原因は完全には解明されていませんが、以下のようなメカニズムで形成されると考えられています。

毛穴の詰まりと閉塞 毛穴の出口が何らかの原因で詰まると、皮脂や角質が外へ排出されずに内部に溜まり始めます。この蓄積が袋状の嚢腫の形成につながります。

外傷や炎症 ケガや打撲、ニキビなどの慢性的な炎症により、表皮の一部が皮膚の奥に入り込んでしまうことがあります。この埋没した表皮組織が袋を形成し、その中に角質や皮脂が溜まっていきます。

ウイルス感染 ごく稀なケースではありますが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が粉瘤の発生に関与していることが報告されています。

体質的要因 家族性に粉瘤ができやすい方もいらっしゃり、遺伝的な要因も関係している可能性が指摘されています。

粉瘤の種類

粉瘤には、その発生部位や構造によっていくつかの種類があります。

表皮嚢腫 最も一般的なタイプで、皮膚の表面にある角質や毛髪などが毛穴に詰まることで発生します。嚢腫の壁は皮膚の表面と同じ細胞でできており、内部には古い角質が溜まっています。

外毛根鞘性嚢腫(トリキレンモーマ) 主に頭部に発生することが多く、表皮嚢腫と比較すると硬いのが特徴です。家族性に発生しやすい傾向があります。

多発性毛包嚢腫 腕や首、わきなどに数個から数十個できることがあります。嚢腫の内容物は黄色いマヨネーズのような色をしていて、臭いは少ないことが多いです。

脂腺嚢腫 皮脂を分泌する脂腺の周辺にできる袋状のできものです。毛穴に一致して発生することがあります。

なぜ手術が必要なのか

自然治癒しない理由

粉瘤は良性の腫瘍ですが、自然に治ることはありません。これは、皮膚の下に形成された袋状の構造(嚢腫)が、自然に消失することがないためです。

ニキビと間違えられることもありますが、ニキビは毛穴の一時的な詰まりであるのに対し、粉瘤は袋状の構造物そのものが問題なので、根本的に異なります。市販薬や軟膏を塗っても、この袋を取り除かない限り完治することはできません。

放置するリスク

粉瘤を放置すると、以下のようなリスクがあります。

サイズの増大 袋の中に角質や皮脂が徐々に溜まり続けるため、粉瘤は時間とともに大きくなっていきます。初期段階では数ミリ程度でも、放置すると数センチメートル、場合によっては10センチメートル以上になることもあります。大きくなればなるほど、手術時の傷跡も大きくなってしまいます。

細菌感染と炎症 粉瘤の開口部から細菌が侵入すると、内部で感染が起こり、炎症性粉瘤となります。急激に赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を伴います。膿が溜まって破裂することもあり、非常に不快な状態になります。

炎症を起こしてしまうと、まず炎症を鎮める処置(切開排膿)が必要となり、その後に改めて袋を摘出する手術を行うことになるため、治療が二段階になってしまいます。

日常生活への支障 大きくなった粉瘤や炎症を起こした粉瘤は、見た目が気になるだけでなく、衣服との摩擦で痛みを感じたり、座る際に違和感があったりと、日常生活に支障をきたすことがあります。

ごく稀な悪性化 極めて稀ではありますが、長期間放置した粉瘤が悪性腫瘍に変化するケースも報告されています。

これらのリスクを避けるためにも、粉瘤が小さいうちに手術で摘出することが推奨されます。

粉瘤手術の保険適用について

健康保険が適用される

粉瘤の治療においては、診察、検査、診断、手術、病理検査など、すべての医療行為が健康保険の適用対象となります。これは、粉瘤が「治療が必要な疾患」として認められているためです。

保険適用により、患者さまの自己負担額は、保険の負担割合に応じた金額となります。

  • 3割負担の方(多くの現役世代):医療費の30%
  • 2割負担の方(70歳以上の一定所得以下の方):医療費の20%
  • 1割負担の方(75歳以上の後期高齢者医療制度の方など):医療費の10%

保険適用の条件

粉瘤の手術で保険適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

医学的必要性の確認 粉瘤は良性腫瘍ですが、炎症を起こしたり、大きくなって日常生活に支障をきたしたりする場合は、病気として治療の対象となります。医師が手術の必要性を認めた場合に、保険が適用されます。

保険診療対応の医療機関での受診 保険診療を行っている医療機関(皮膚科、形成外科など)を受診する必要があります。

美容目的ではないこと 明らかに美容目的と判断される場合は、保険外(自由診療)となることがあります。ただし、顔面や露出部の粉瘤であっても、医学的な必要性が認められれば保険適用となります。

受診時に必要なもの

保険診療を受けるには、必ず健康保険証を持参してください。保険証がない場合、一旦全額自己負担となり、後日保険証を提示して精算することになります。

また、他の医療機関からの紹介状がある場合は、併せて持参すると診察がスムーズに進みます。

粉瘤手術の費用詳細

費用を決定する要素

粉瘤の手術費用は、以下の要素によって変動します。

粉瘤の大きさ 粉瘤の直径(長径)によって、手術の診療報酬点数が異なります。大きくなればなるほど、手術の難易度が上がり、費用も高くなります。

発生部位(露出部か非露出部か) 粉瘤ができた場所が「露出部」か「非露出部」かによって、費用が異なります。

  • 露出部:頭、顔、首、肘から手首まで、膝から足先まで
  • 非露出部:胸部、腹部、腰部、上腕部、大腿部など

露出部は、半袖・半ズボンを着用した際に外から見える部分を指します。露出部の粉瘤は、治療後の傷跡が目立ちやすいため、より丁寧な縫合や術後のケアが必要となることから、費用がやや高めに設定されています。

手術方法 後述する「くりぬき法」や「切開法」など、選択される術式によっても費用が変わることがあります。

複数個の摘出 一度に複数の粉瘤を摘出する場合、それぞれに対して費用が発生します。

手術費用の目安(3割負担の場合)

以下は、保険適用で3割負担の場合の手術費用の目安です。実際の費用は、初診料・再診料、処方料、検査費用、病理検査費用などが別途加算されます。

露出部(顔・首・肘から下・膝から下)の粉瘤

粉瘤の大きさ手術費用(概算)
2cm未満約5,000円〜7,000円
2cm以上4cm未満約11,000円〜14,000円
4cm以上約13,000円〜16,000円

非露出部(胸・腹・背中・お尻など)の粉瘤

粉瘤の大きさ手術費用(概算)
3cm未満約4,000円〜5,000円
3cm以上6cm未満約10,000円〜12,000円
6cm以上約13,000円〜15,000円

注意事項

  • 上記の金額は手術費用のみの目安であり、実際には以下の費用が別途発生します
    • 初診料または再診料:約900円〜3,000円
    • 処方料・薬剤料:約500円〜1,500円
    • 病理検査費(摘出した組織の検査):約3,000円〜4,000円
    • 超音波検査(エコー)を行う場合:約1,000円〜1,500円
  • したがって、初診から手術、処方まで含めた総額は、小さな粉瘤で約8,000円〜15,000円程度、大きな粉瘤で約20,000円〜30,000円程度が目安となります
  • 1割負担の方は、上記の金額の約3分の1が目安となります
  • 診療報酬は改定により変更されることがあるため、最新の情報は医療機関でご確認ください

炎症を起こした粉瘤の場合

すでに感染して炎症を起こしている粉瘤(炎症性粉瘤)の場合、まず切開して膿を出す処置(切開排膿)が必要になることがあります。この場合、初回の切開排膿処置と、炎症が落ち着いた後の根治手術の2回に分けて治療が行われるため、総費用も増加します。

炎症性粉瘤の切開排膿処置の費用は、3割負担で約3,000円〜6,000円程度が目安です(診察料・処方料別)。

粉瘤の手術方法

粉瘤の手術には、主に「くりぬき法(へそ抜き法)」と「切開法(切除縫縮術)」の2つの方法があります。いずれの方法も局所麻酔下で行われ、日帰り手術が可能です。

くりぬき法(へそ抜き法)

手術の特徴

くりぬき法は、皮膚トレパン(デルマパンチ)と呼ばれる円筒状の専用器具を用いて、粉瘤の中央に小さな穴を開け、そこから内容物と袋を摘出する方法です。

メリット

  • 切開範囲が非常に小さい(通常2mm〜6mm程度)
  • 傷跡が目立ちにくい
  • 手術時間が短い(5分〜15分程度)
  • 縫合が不要、または最小限で済むことが多い
  • 術後の回復が早い
  • 痛みや腫れが比較的少ない

デメリット

  • 粉瘤が大きすぎる場合は適応外となることがある
  • 炎症が高度で袋が破れている場合、完全に摘出できないことがある
  • 術者の技術により、結果に差が出やすい
  • 切開法に比べて、わずかに再発のリスクが高い可能性がある

手術の流れ

  1. 局所麻酔:粉瘤の周囲に局所麻酔を注射します。麻酔が十分に効くまで5〜10分程度待ちます
  2. 穴あけ:粉瘤の中心(開口部)に、トレパンで小さな円形の穴を開けます
  3. 内容物の排出:袋の中に溜まった角質や皮脂を丁寧に絞り出します
  4. 袋の摘出:内容物を出してしぼんだ袋を、専用の器具を用いて丁寧に引き出します。袋を完全に取り除かないと再発の原因となるため、慎重に行います
  5. 洗浄と処置:傷口を消毒液で洗浄し、必要に応じて縫合します(多くの場合、縫合は不要または1〜2針程度)
  6. ガーゼ保護:傷口にガーゼを当てて終了です

適応となるケース

  • 粉瘤の大きさが適切な範囲内(概ね直径3cm以下)
  • 炎症を起こしていない、または軽度の炎症
  • 顔や首など、傷跡を最小限にしたい部位
  • 袋が破れておらず、形が保たれている

切開法(切除縫縮術)

手術の特徴

切開法は、粉瘤の上の皮膚を紡錘形(レモン型)に切開し、内容物と袋を一体として摘出する方法です。形成外科領域における標準的な粉瘤手術法です。

メリット

  • 大きな粉瘤でも確実に摘出できる
  • 炎症を起こした粉瘤にも対応可能
  • 袋を完全に摘出できるため、再発リスクが非常に低い
  • 視野が広く、周囲組織を確認しながら安全に手術ができる
  • 複雑な形状の粉瘤にも対応可能

デメリット

  • くりぬき法に比べて切開範囲が大きい
  • 縫合が必要で、抜糸が必要になる(通常7〜14日後)
  • 術後の傷跡が線状に残る
  • 手術時間がやや長い(15分〜30分程度)

手術の流れ

  1. マーキング:粉瘤の大きさと皮膚のシワの方向を考慮して、切開線をデザインします
  2. 局所麻酔:切開範囲に沿って局所麻酔を注射します
  3. 切開:デザインした線に沿って皮膚を切開します。切開の大きさは粉瘤の長径とほぼ同じか、やや大きい程度です
  4. 粉瘤の剥離と摘出:袋を破らないように慎重に周囲組織から剥離し、袋ごと摘出します
  5. 止血:必要に応じて出血点を電気凝固で止血します
  6. 縫合:皮下組織を吸収糸で縫合し(中縫い)、皮膚表面を細い糸で丁寧に縫合します。傷跡が目立たないよう、皮膚のシワに沿った線状の傷になるように配慮します
  7. ガーゼ保護:傷口にガーゼを当てて終了です

適応となるケース

  • 粉瘤が大きい(直径3cm以上)
  • 炎症を繰り返している、または高度の炎症を起こしている
  • 袋が破れて周囲組織と癒着している
  • 再発した粉瘤
  • くりぬき法では対応が難しいと判断された場合

どちらの方法を選ぶか

手術方法の選択は、粉瘤の大きさ、部位、炎症の有無、患者さまのご希望などを総合的に判断して決定されます。

一般的には、小さな粉瘤で炎症を起こしていない場合は、傷跡が小さく済むくりぬき法が第一選択となることが多いです。一方、大きな粉瘤や炎症を起こした粉瘤、再発を繰り返している粉瘤などでは、確実性の高い切開法が選択されます。

担当医師とよく相談し、ご自身の状況に最適な方法を選択することが大切です。

粉瘤手術の流れ

初診・診察

粉瘤が疑われる「できもの」がある場合、まずは皮膚科または形成外科を受診します。

問診

  • いつ頃からしこりがあるか
  • 大きくなってきているか
  • 痛みや赤みはあるか
  • 過去に同様のできものができたことはあるか
  • 持病やアレルギーの有無
  • 服用中の薬

視診・触診 医師が実際に患部を見て、触って診察します。粉瘤には特徴的な所見(中央の黒い点、コリコリとした感触など)があるため、多くの場合は視診・触診だけで診断がつきます。

超音波検査(エコー) 必要に応じて、超音波検査を行います。粉瘤の大きさ、深さ、周囲組織との関係を確認するために有用です。特に大きな粉瘤や、場所によっては超音波検査が推奨されます。

診断と治療方針の決定 粉瘤であることが確認されたら、手術の必要性、適切な手術時期、手術方法などについて医師から説明があります。患者さまのご希望や生活スケジュールなども考慮して、治療方針を決定します。

手術日の決定

多くの医療機関では、診察当日に手術を行うことも可能です。ただし、以下のような場合は、後日改めて手術日を予約することになります。

  • 手術の予約枠が埋まっている
  • 患者さまが即日手術を希望されない
  • 炎症が強く、まず炎症を抑える治療が必要
  • 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している場合、休薬期間が必要

手術当日

手術前の準備

  • 手術部位の消毒
  • 手術着への着替え(部位による)
  • 同意書へのサイン

手術(所要時間:5分〜30分程度)

前述の「くりぬき法」または「切開法」により粉瘤を摘出します。局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。

術後の説明

手術終了後、以下について説明があります。

  • 傷口のケア方法
  • 入浴・洗髪の可否
  • 日常生活での注意点
  • 処方薬の服用方法
  • 次回受診日(抜糸や経過観察のため)

処方薬

通常、以下の薬が処方されます。

  • 抗生物質:感染予防のため、3〜5日分程度
  • 痛み止め:術後の痛みに対して、頓服または定期服用

術後の通院

くりぬき法の場合

  • 翌日〜数日後:傷の状態確認
  • 1週間後:経過観察
  • 2週間後:ほぼ完治の確認

縫合していない場合、または最小限の縫合の場合は、通院回数は少なくて済みます。

切開法の場合

  • 翌日〜数日後:傷の状態確認、ガーゼ交換
  • 7日〜14日後:抜糸
  • 1ヶ月後:経過観察、傷跡の確認

縫合した場合は、抜糸が必要なため、最低でも2回の通院が必要です。

病理検査

摘出した粉瘤は、念のため病理検査に提出されることが一般的です。顕微鏡で組織を詳しく調べ、本当に良性の粉瘤であるか、他の疾患ではないかを確認します。

病理検査の結果は、通常1〜2週間後に出ます。ほとんどのケースで良性の粉瘤と確定診断されますが、万が一異常が見つかった場合は、追加の検査や治療が必要になることもあります。

術後のケアと経過

手術当日の過ごし方

入浴について 手術当日は、出血や感染のリスクを避けるため、入浴は控えてください。シャワーも患部を濡らさないように注意が必要です。部位によっては、患部をガーゼとビニール袋などで保護すれば、軽いシャワーは可能な場合もあります。

飲酒・運動 手術当日は、血行が良くなると出血のリスクが高まるため、飲酒や激しい運動は控えてください。

痛みへの対処 麻酔が切れると、多少の痛みを感じることがあります。処方された痛み止めを適切に服用してください。我慢できる程度の痛みであることがほとんどですが、痛みが強い場合は医療機関に連絡しましょう。

翌日以降のケア

傷口の処置 医師の指示に従って、自宅でのガーゼ交換や傷口の消毒を行います。

入浴・洗髪 翌日以降は、通常シャワーが可能になります。患部を優しく洗い流し、清潔を保つことが大切です。湯船に浸かるのは、医師の許可が出てから(通常1〜2日後)にしましょう。

頭部の粉瘤の場合、洗髪方法について具体的な指示があります。泡立てたシャンプーで優しく洗い、しっかりすすぐことが重要です。

日常生活 デスクワークなど軽い仕事であれば、翌日から可能です。ただし、重い物を持ったり、激しい運動をしたりするのは、抜糸まで控えた方が安全です。

傷跡の経過

術後1週間 まだ傷は赤く、縫合跡が目立ちます。くりぬき法の場合、小さなへこみがあることもあります。

術後1ヶ月 傷は徐々に目立たなくなってきます。赤みも薄くなり始めます。くりぬき法の傷はさらに小さくなり、ほとんど気にならなくなることも多いです。

術後3〜6ヶ月 傷跡は大幅に改善され、薄い線状の跡になります。部位や個人差はありますが、最終的にはほとんど目立たなくなることが期待できます。

注意すべき症状

以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関に連絡してください。

  • 強い痛みや腫れが続く
  • 発熱(38度以上)
  • 傷口から膿が出る
  • 傷口が赤く腫れて熱を持つ
  • 出血が止まらない

これらは感染や炎症のサインである可能性があります。

民間医療保険の給付金について

手術給付金の対象となる場合

個人で生命保険会社や共済組合の医療保険、医療特約に加入されている場合、粉瘤の手術が手術給付金の対象となることがあります。

粉瘤の手術は、正式な術式名として「皮膚、皮下腫瘍摘出術」として分類されます。この術式が給付対象に含まれているかどうかは、契約内容によって異なります。

給付金の金額

給付金の額は、以下の要素によって決まります。

入院手術か外来手術か

  • 入院中に手術を受けた場合:手術給付金が高額になることが多い
  • 外来(日帰り)で手術を受けた場合:入院手術よりも少額、または対象外のこともある

粉瘤の手術は通常日帰りで行われるため、外来手術の給付対象となります。

診療報酬点数 給付金の支払いは、粉瘤治療の診療報酬点数をもとに計算されることがあります。粉瘤が大きいほど診療報酬点数が高くなるため、給付金も高くなる仕組みです。

一部の共済組合では、手術料の診療報酬点数が1,400点以上でないと給付対象にならないという条件があることもあります。この場合、小さな粉瘤(例:非露出部で3cm未満)は対象外となる可能性があります。

給付金の例 契約内容により大きく異なりますが、外来手術で2万円〜10万円程度の給付金が受け取れるケースが多いようです。治療で支払った金額よりも多く給付金を受け取れる保険もあります。

給付金を受け取るための手続き

給付金は、自動的に支払われるわけではありません。加入者自身が保険会社や共済組合に申請する必要があります。

手続きの流れ

  1. 保険会社への連絡 手術を受ける前、または手術後に、加入している保険会社または共済組合のカスタマーセンターに連絡します。粉瘤の手術が給付対象になるか確認しましょう。
  2. 必要書類の確認 給付金の請求に必要な書類について確認します。一般的には以下の書類が必要です。
    • 給付金請求書(保険会社所定の用紙)
    • 診断書(医療機関で発行、通常3,000円〜5,500円程度の費用がかかります)
    • 領収書のコピー
    • 診療明細書のコピー
  3. 医療機関で診断書を依頼 手術当日または抜糸時に、医療機関で診断書の発行を依頼します。診断書には、正式な病名(表皮嚢腫など)、術式名(皮膚、皮下腫瘍摘出術)、手術日などが記載されます。
  4. 書類の提出 必要書類を揃えて、保険会社に提出します。
  5. 給付金の受け取り 書類審査後、問題がなければ、指定の口座に給付金が振り込まれます。通常、書類提出から1〜2週間程度で支払われます。

注意点

術式によっては対象外 単なる「皮膚切開術」や「排膿処置」は、給付対象外となることが多いです。袋ごと摘出する「皮膚、皮下腫瘍摘出術」であることが重要です。

領収書・診療明細書の保管 手術を受けた際の領収書や診療明細書は、必ず保管しておきましょう。給付金請求時に必要となります。

事前確認が安心 保険会社によって給付条件が異なるため、手術前に必ず確認することをお勧めします。

よくある質問

Q1. 粉瘤は薬で治せないのですか?

A. 残念ながら、粉瘤は薬や軟膏では治りません。粉瘤は皮膚の下にできた袋状の構造物であり、この袋を完全に取り除かない限り治癒しません。
ただし、炎症を起こした粉瘤に対しては、抗生物質の内服により炎症を抑えることができます。しかし、これは一時的な処置であり、根本的な治療には手術が必要です。

Q2. 手術は痛いですか?

A. 局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。
麻酔の注射をする際にチクッとした痛みはありますが、極細の針を使用したり、麻酔薬を工夫したりすることで、痛みを最小限に抑える配慮がなされています。
術後は麻酔が切れると多少の痛みを感じることがありますが、我慢できる程度のことがほとんどです。痛み止めも処方されるので、適切に服用すれば問題ありません。

Q3. 手術後、仕事や学校は休む必要がありますか?

A. デスクワークや軽作業であれば、翌日から通常通り可能です。
ただし、重い物を持つ仕事や激しい運動を伴う仕事の場合は、数日間休むか、軽い業務に変更してもらうことをお勧めします。手術部位や手術方法によっても異なるため、医師と相談してください。

Q4. 粉瘤は再発しますか?

A. 袋を完全に摘出できれば、同じ場所に再発することはほとんどありません。

ただし、袋の一部が残ってしまった場合や、袋が破れて内容物が周囲に散らばってしまった場合は、再発する可能性があります。炎症を起こした粉瘤や、自分で潰してしまった粉瘤は、再発のリスクがやや高くなります。

また、粉瘤ができやすい体質の方は、別の場所に新しい粉瘤ができることはあります。

Q5. 小さな粉瘤でも手術した方が良いですか?

A. 小さいうちに手術することをお勧めします。

粉瘤は放置すると徐々に大きくなり、大きくなればなるほど手術の傷跡も大きくなります。また、いつ炎症を起こすかわかりません。小さいうちであれば、くりぬき法で傷跡を最小限にして摘出できる可能性が高いです。

ただし、全く症状がなく、場所も目立たない、大きくなる気配もない、という場合は、経過観察という選択肢もあります。医師と相談して決めましょう。

Q6. 顔の粉瘤の傷跡は目立ちますか?

A. 手術の方法や部位、個人差によりますが、適切な手術とケアにより、傷跡を最小限にすることができます。

顔などの露出部の粉瘤は、形成外科的な技術を用いて丁寧に縫合されるため、時間の経過とともに傷跡は薄くなっていきます。小さな粉瘤であれば、くりぬき法により非常に小さな傷で済むこともあります。

傷跡が気になる方は、皮膚科専門医や形成外科専門医が在籍している医療機関を選ぶと良いでしょう。

Q7. 粉瘤を自分で潰しても大丈夫ですか?

A. 絶対に自分で潰さないでください。

粉瘤を無理に潰すと、袋が破れて内容物が周囲に散らばり、炎症を引き起こす原因となります。また、細菌感染のリスクも高まります。さらに、袋が残ったまま傷口が閉じてしまうため、再発の可能性が高くなります。

気になる粉瘤がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

Q8. 複数の粉瘤を一度に手術できますか?

A. 可能です。

部位や大きさにもよりますが、同じ日に複数の粉瘤を摘出することができます。ただし、手術時間が長くなることや、複数箇所の傷のケアが必要になることを考慮する必要があります。

費用については、それぞれの粉瘤に対して手術費用が発生します。

Q9. 妊娠中や授乳中でも手術できますか?

A. 基本的には可能ですが、必ず医師に申し出てください。

局所麻酔や処方される抗生物質について、妊娠・授乳に影響の少ないものを選択する必要があります。緊急性がない場合は、出産・授乳後に延期することも検討できます。

Q10. 子どもの粉瘤も大人と同じように手術しますか?

A. 基本的な手術方法は同じですが、子どもの場合は特別な配慮が必要です。

小さな子どもの場合、局所麻酔の注射を怖がったり、手術中に動いてしまったりする可能性があるため、鎮静剤を使用したり、全身麻酔を検討したりすることもあります。また、成長に伴って粉瘤が自然に小さくなることもあるため、急いで手術する必要がなければ、様子を見ることもあります。

まとめ

粉瘤は非常に一般的な良性の皮膚腫瘍であり、自然に治ることはないため、根本的な治療には手術が必要です。幸いなことに、粉瘤の手術は健康保険の適用対象となっており、患者さまの経済的負担は比較的少なく済みます。

粉瘤手術費用のポイント

  • 保険適用:診察から手術、病理検査まですべて保険適用
  • 3割負担の費用:小さな粉瘤で総額約8,000円〜15,000円、大きな粉瘤で約20,000円〜30,000円程度が目安
  • 費用を決める要素:粉瘤の大きさ、部位(露出部か非露出部か)、手術方法
  • 民間保険:加入している医療保険により、手術給付金が受け取れることがある

早期受診のメリット

粉瘤は小さいうちに手術することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 傷跡が小さく済む
  2. 手術時間が短い
  3. 術後の回復が早い
  4. 費用も抑えられる
  5. 炎症を起こすリスクを避けられる

「気になるしこりがある」「これって粉瘤かもしれない」と思ったら、早めに皮膚科や形成外科を受診することをお勧めします。

アイシークリニック上野院では

アイシークリニック上野院では、粉瘤をはじめとする皮膚のできものの診察・治療を行っております。経験豊富な医師が、患者さま一人ひとりの症状やご希望に合わせて、最適な治療方法をご提案いたします。

粉瘤の手術に関してご不安な点やご質問がございましたら、お気軽にご相談ください。丁寧な診察と説明を心がけ、安心して治療を受けていただけるよう努めております。

参考文献

本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。

  1. 公益社団法人 日本皮膚科学会「アテローム(粉瘤)- 皮膚科Q&A」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa17/index.html
  2. 公益社団法人 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A – アテローム(粉瘤) Q1」 https://qa.dermatol.or.jp/qa17/q01.html
  3. 田辺三菱製薬「ヒフノコトサイト – 粉瘤(アテローム)の原因・症状・治療法」 https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/778
  4. 兵庫医科大学病院「みんなの医療ガイド – 粉瘤(ふんりゅう)」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/195

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

プロフィールを見る

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

プロフィールを見る