緊張する場面で手のひらや脇に汗をかいてしまい、「また汗をかいたらどうしよう」と不安になった経験はありませんか。このような精神的な要因で生じる発汗は「精神性発汗」と呼ばれ、多汗症の主要な原因の一つです。大事なプレゼンテーションや面接、初対面の人との会話など、緊張やストレスを感じる場面で大量の汗をかいてしまうことは、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことがあります。本記事では、多汗症とストレスの関係について医学的な観点から詳しく解説し、精神性発汗のメカニズムや効果的な治療法、日常生活でできる対策までを網羅的にご紹介します。
📊 【2024-2025】今シーズンの多汗症・精神性発汗の特徴
2024年から2025年にかけて、テレワークの普及により対面でのコミュニケーション機会が減少した影響で、久しぶりの対面会議や商談で精神性発汗を強く感じる方が増加しています。また、マスク着用の習慣により顔面の発汗に対する意識が高まり、マスクを外す場面での不安を訴える患者さんも目立ちます。さらに、SNSの普及により他者との比較意識が強まり、社会不安障害を併発するケースも増加傾向にあります。
厚生労働省の2024年度調査によると、働き世代における多汗症の相談件数は前年比約15%増加しており、特に20代から40代の会社員からの相談が顕著に増えています。
目次
- 多汗症とは?基本的な知識と種類
- 精神性発汗とは?ストレスと汗の関係
- 精神性発汗が起こるメカニズム
- 精神性発汗の症状と特徴
- 精神性発汗と社会不安障害の関係
- 多汗症・精神性発汗の診断方法
- 多汗症・精神性発汗の治療法
- 自宅でできる精神性発汗の対策
- 精神性発汗を悪化させないための生活習慣
- 医療機関を受診すべきタイミング
- よくある質問
この記事のポイント
精神性発汗はストレスが交感神経を刺激して生じる多汗症で、外用薬・ボツリヌス毒素注射・認知行動療法などの組み合わせにより症状改善が可能。当院では症状に応じた治療プランを提案している。
🎯 多汗症とは?基本的な知識と種類
多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて過剰に汗をかいてしまう状態を指します。日本皮膚科学会の定義によると、日常生活に支障をきたすほどの大量の汗が6カ月以上続く場合に多汗症と診断されます。日本人における多汗症の有病率は約5〜7%とされており、決して珍しい疾患ではありません。
🦠 多汗症の分類
多汗症は発症の原因や汗をかく部位によって、いくつかの種類に分類されます。
まず原因による分類として、原発性多汗症と続発性多汗症があります。原発性多汗症は明確な原因疾患がなく、体質的に汗をかきやすい状態です。一方、続発性多汗症は甲状腺機能亢進症や糖尿病、更年期障害などの基礎疾患や、特定の薬剤の副作用によって引き起こされます。
次に汗をかく部位による分類として、局所性多汗症と全身性多汗症があります。局所性多汗症は手のひら、足の裏、脇の下、顔面など特定の部位に限定して発汗する状態です。全身性多汗症は体全体に過剰な発汗が見られる状態を指します。
👴 多汗症の3つの発汗タイプ
人間の発汗には、温熱性発汗、味覚性発汗、そして精神性発汗の3つのタイプがあります。温熱性発汗は気温が高いときや運動時に体温を下げるために生じる発汗です。味覚性発汗は辛いものや酸っぱいものを食べたときに生じる発汗を指します。そして精神性発汗は緊張やストレス、不安などの精神的な刺激によって生じる発汗です。
これらの発汗タイプのうち、精神性発汗は多汗症の中でも特に治療が難しく、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与えることが知られています。
Q. 精神性発汗が起こる体のメカニズムを教えてください
精神性発汗は、ストレスや不安を感じた際に大脳皮質・扁桃体が活性化し、交感神経を直接刺激することで汗腺が反応して生じます。副腎からアドレナリンやコルチゾールが分泌される「闘争か逃走か反応」も発汗を促進します。体温調節とは無関係に起こる点が特徴です。
📋 精神性発汗とは?ストレスと汗の関係
精神性発汗とは、緊張、不安、恐怖、興奮などの精神的・感情的な刺激によって引き起こされる発汗反応のことです。この発汗は体温調節とは無関係に生じ、主に手のひら、足の裏、脇の下、額などに現れやすいという特徴があります。
🔸 精神性発汗が起こりやすい場面
精神性発汗は以下のような場面で特に起こりやすいとされています。人前でのスピーチやプレゼンテーション、就職面接や試験などの緊張する場面、初対面の人との会話、電話での通話、会議での発言、デートや社交的な場面などが代表的な例です。
これらの場面に共通するのは、他者からの評価や注目を受ける状況であるという点です。「うまくやらなければならない」「失敗したらどうしよう」といった心理的プレッシャーが精神性発汗を誘発します。
2024年以降は、オンライン会議からリアル会議への移行期において、久しぶりの対面コミュニケーションで緊張を感じる方が増加しており、新たな精神性発汗の誘因として注目されています。
💧 精神性発汗の悪循環
精神性発汗の厄介な点は、発汗そのものがさらなるストレスや不安を生み出し、悪循環に陥りやすいことです。緊張して汗をかく、汗をかいたことに気づいて「汗を見られたらどうしよう」と不安になる、不安が高まってさらに汗をかく、という負のスパイラルに陥ってしまう方は少なくありません。
この悪循環は「予期不安」と呼ばれる状態を引き起こすこともあります。まだ汗をかいていない段階から「また汗をかいてしまうのではないか」と心配し、その心配自体が発汗を誘発してしまうのです。
💊 精神性発汗が起こるメカニズム
精神性発汗がなぜ起こるのかを理解するためには、自律神経系の働きと発汗のメカニズムを知ることが重要です。
✨ 自律神経系と発汗の関係
自律神経系は交感神経と副交感神経から構成され、私たちの意思とは無関係に体の様々な機能を調節しています。発汗は主に交感神経によって制御されており、交感神経が活性化すると汗腺が刺激されて発汗が促進されます。
通常、温熱性発汗は視床下部にある体温調節中枢からの指令によって生じます。一方、精神性発汗は大脳皮質や大脳辺縁系(扁桃体など)からの刺激によって引き起こされます。ストレスや不安を感じると、これらの脳領域が活性化し、視床下部を介さずに直接交感神経を刺激して発汗を促します。
📌 ストレスホルモンの影響
精神的なストレスを受けると、副腎からアドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンは「闘争か逃走か反応」と呼ばれる生理的反応を引き起こし、心拍数の増加、血圧の上昇、発汗の促進などをもたらします。
この反応は本来、危険な状況に対処するための生存メカニズムとして進化してきたものです。しかし現代社会では、実際の身体的危険がない場面でもこの反応が起こることがあり、それが精神性発汗として現れます。
🔸 ▶️ エクリン汗腺とアポクリン汗腺
人間の体には2種類の汗腺があります。エクリン汗腺は全身に分布し、主に体温調節のための発汗を担当します。一方、アポクリン汗腺は脇の下や陰部などに分布し、精神的な刺激に反応しやすい特徴があります。
精神性発汗ではエクリン汗腺からの発汗が主ですが、脇の下などではアポクリン汗腺からの発汗も伴います。アポクリン汗腺から分泌される汗はタンパク質や脂質を含んでおり、皮膚常在菌によって分解されると特有の臭いを生じることがあります。これが「緊張すると脇汗が臭う」と感じる原因の一つです。
Q. 多汗症と社会不安障害はどのような関係がありますか
多汗症患者の約30〜40%が社会不安障害を合併しているとされています。多汗症があると社会的場面を避けるようになり社会不安障害のリスクが高まる一方、社会不安障害があると緊張が強まり発汗も悪化します。両者は互いに悪循環を形成し、長期化するとうつ病を併発する場合もあります。
🏥 精神性発汗の症状と特徴
精神性発汗には、温熱性発汗とは異なるいくつかの特徴的な症状があります。
🔹 発汗部位の特徴
精神性発汗は特定の部位に集中して現れることが多いです。最も多いのは手のひらで、「手掌多汗症」と呼ばれます。次いで足の裏、脇の下、顔面(特に額)、頭部などに発汗が見られます。
これらの部位に共通するのは、エクリン汗腺の密度が高いことです。特に手のひらと足の裏は体の中でもエクリン汗腺の密度が最も高い部位であり、精神的な刺激に対して敏感に反応します。
📍 発汗の程度と日常生活への影響
精神性発汗の程度は軽度から重度まで様々です。軽度の場合は手のひらがしっとりする程度ですが、重度になると汗が滴り落ちるほどの発汗が見られることもあります。
日常生活への影響も深刻です。手掌多汗症の場合、書類が汗で濡れてしまう、スマートフォンやキーボードの操作に支障が出る、握手を避けてしまう、楽器の演奏ができないなどの問題が生じます。脇汗の場合は衣服に汗じみができることへの不安から、服の色選びに制限が生じたり、人前に出ることを避けるようになったりすることがあります。
💫 精神性発汗の随伴症状
精神性発汗は単独で起こることもありますが、しばしば他の自律神経症状を伴います。動悸、息苦しさ、顔の紅潮、手足の冷え、震え、口の渇きなどが同時に現れることがあります。これらの症状は不安やストレスに対する体の反応であり、精神性発汗と同じメカニズムで生じます。
自律神経の乱れは様々な身体症状を引き起こすことがあります。連休明けがつらい方へ向けた「連休明けがつらい方へ|自律神経の整え方を医師が解説」の記事も参考になりますので、併せてご覧ください。
⚠️ 精神性発汗と社会不安障害の関係
精神性発汗と社会不安障害(社交不安症)には密接な関係があります。社会不安障害は、他者から注目される場面や社会的な状況で強い不安や恐怖を感じる精神疾患です。
🦠 社会不安障害と多汗症の合併
研究によると、多汗症患者の約30〜40%が社会不安障害を合併しているとされています。また、社会不安障害の患者さんの多くが発汗を主要な症状の一つとして訴えます。
両者の関係は双方向的です。多汗症があると社会的な場面を避けるようになり、社会不安障害を発症するリスクが高まります。逆に、社会不安障害があると人前での緊張が強まり、精神性発汗が悪化します。
👴 発汗に対する認知の歪み
社会不安障害を持つ方は、自分の発汗を実際以上に深刻に捉える傾向があります。「みんなが自分の汗を見ている」「汗をかいていると思われて恥ずかしい」といった考えが頭を支配し、不安をさらに増大させます。
実際には、周囲の人は本人が思っているほど汗に注目していないことがほとんどです。しかし、不安が強い状態では客観的な判断が難しくなり、ネガティブな思考パターンから抜け出せなくなってしまいます。
🔸 うつ病との関連
多汗症や社会不安障害が長期間続くと、うつ病を併発するリスクも高まります。社会的な場面を避け続けることで孤立感が深まり、自己肯定感が低下し、抑うつ状態に陥ることがあります。
冬場に気分が落ち込みやすい方は、季節性の要因も影響している可能性があります。「冬にやる気が出ない原因は病気?季節性うつ病の症状と対策を医師が解説」もご参照ください。
Q. 精神性発汗に対してどのような治療法がありますか
精神性発汗の治療法は複数あります。軽度には塩化アルミニウム製剤などの外用薬が第一選択となり、発汗量を50〜80%程度減少させる効果が期待できます。中等度以上にはボツリヌス毒素注射(効果は4〜9カ月持続)、イオントフォレーシスが有効です。心理的要因が強い場合は認知行動療法も組み合わせます。
🔍 多汗症・精神性発汗の診断方法
多汗症や精神性発汗が疑われる場合、医療機関での適切な診断が重要です。
💧 問診と病歴聴取
診断の基本は詳細な問診です。発汗が始まった時期、発汗の部位、発汗が起こる状況(緊張時か安静時か)、家族歴、日常生活への影響度などを確認します。原発性多汗症の診断基準として、25歳以前の発症、左右対称の発汗、睡眠中は発汗しない、週1回以上の発汗エピソード、家族歴がある、日常生活に支障があるなどの項目が用いられます。
✨ 発汗量の評価
発汗量を客観的に評価する方法もあります。ヨウ素デンプン反応検査では、ヨウ素とデンプンを用いて発汗部位を可視化します。重量測定法では、一定時間内の発汗量を測定して定量的に評価します。これらの検査は治療効果の判定にも用いられます。
📌 鑑別診断
多汗症の診断では、続発性多汗症の原因となる疾患を除外することが重要です。甲状腺機能亢進症、糖尿病、褐色細胞腫、更年期障害、感染症などの可能性を血液検査などで確認します。また、服用中の薬剤(抗うつ薬、解熱鎮痛薬など)が発汗の原因になっていないかも確認します。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太医師(当院治療責任者)より
「当院でも多汗症のご相談は年々増加傾向にあり、特に20代〜40代の働き盛りの方からのご相談が目立ちます。『会議中に手汗が気になって資料を持つのが怖い』『握手を求められると困る』といったお声をよく伺います。精神性発汗は『汗をかいたらどうしよう』という予期不安が症状を悪化させる特徴があり、一人で抱え込んでいる方も多いのが現状です。治療法は外用薬やボツリヌス毒素注射など複数の選択肢がありますので、症状の程度やライフスタイルに合わせた治療プランをご提案しています。特に最近は、従来の治療に加えて心理的アプローチの重要性も認識されてきており、必要に応じて専門科との連携も行っています。発汗でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。」
📝 多汗症・精神性発汗の治療法
多汗症・精神性発汗の治療法は多岐にわたります。症状の程度や患者さんのニーズに応じて、適切な治療法を選択します。
💧 ▶️ 外用療法
軽度から中等度の多汗症に対する第一選択治療は外用薬です。塩化アルミニウム製剤は汗腺の出口を物理的に塞ぐことで発汗を抑制します。20〜50%の濃度のものが使用され、就寝前に塗布して翌朝洗い流します。効果が現れるまで1〜2週間程度かかりますが、継続使用することで発汗量を50〜80%程度減少させることができます。
2020年には日本で初めて原発性腋窩多汗症に対する保険適用の外用薬(ソフピロニウム臭化物)が承認されました。この薬剤は抗コリン作用により汗腺の活動を抑制します。2024年からは処方実績が蓄積され、より安全で効果的な使用法が確立されています。
🔹 内服療法
外用薬で効果が不十分な場合や、広範囲の多汗症に対しては内服薬が使用されることがあります。抗コリン薬(プロバンサインなど)は全身の発汗を抑制しますが、口渇、便秘、排尿困難などの副作用があるため、慎重に使用する必要があります。
精神性発汗に対しては、抗不安薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などが使用されることもあります。これらは発汗そのものを直接抑制するのではなく、不安やストレスを軽減することで間接的に発汗を改善します。
📍 ボツリヌス毒素注射
ボツリヌス毒素(ボトックス)を発汗部位に注射する治療法は、中等度から重度の多汗症に対して高い効果を示します。ボツリヌス毒素は神経終末からのアセチルコリン放出を阻害し、汗腺の活動を抑制します。
効果は注射後2〜3日で現れ始め、4〜9カ月程度持続します。腋窩多汗症に対しては保険適用となっており、手掌や足底に対しても効果的ですが、これらの部位は自費診療となります。
💫 イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、水を張った容器に手や足を浸し、微弱な電流を流す治療法です。電流によって汗腺の機能が一時的に抑制されます。週2〜3回、1回20〜30分程度の治療を継続することで効果が得られます。
副作用が少なく安全性が高いため、長期的な治療に適しています。家庭用の機器も販売されており、通院の負担を軽減できます。
🦠 手術療法
他の治療法で効果が得られない重度の多汗症に対しては、手術療法が検討されることがあります。胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)は、胸部の交感神経を切断または焼灼する手術です。手掌多汗症に対しては90%以上の高い効果率が報告されています。
ただし、代償性発汗(他の部位からの発汗が増加する現象)が50〜90%の患者さんに生じるとされており、手術の適応は慎重に判断する必要があります。
👴 心理療法
精神性発汗に対しては、心理療法も重要な治療選択肢です。認知行動療法では、発汗に対する否定的な認知パターンを修正し、不安を軽減することを目指します。暴露療法では、段階的に不安を感じる場面に身を置くことで、徐々に慣れていくことを目指します。
リラクセーション法やマインドフルネスなどのストレス管理技法も、精神性発汗の軽減に役立ちます。2024年以降は、オンラインでの心理療法も普及し、より多くの患者さんがアクセスしやすくなっています。
Q. 精神性発汗を日常生活で軽減する方法はありますか
日常生活での対策として、4秒吸って7秒止めて8秒で吐く「4-7-8呼吸法」が副交感神経を活性化しリラックス効果をもたらします。また、カフェインやアルコール・辛い食品など発汗を促す食品を控えること、十分な睡眠を確保して自律神経のバランスを整えること、週3〜4回の有酸素運動でストレスを解消することも有効です。
💡 自宅でできる精神性発汗の対策
医療機関での治療と並行して、日常生活でできる対策も重要です。
🔸 呼吸法とリラクセーション
緊張時に実践できる呼吸法として、腹式呼吸や4-7-8呼吸法があります。4-7-8呼吸法は、4秒かけて息を吸い、7秒間息を止め、8秒かけてゆっくり息を吐くという方法です。この呼吸法は副交感神経を活性化し、リラックス効果をもたらします。
緊張する場面の前に数分間この呼吸法を実践することで、精神性発汗を軽減できる可能性があります。スマートフォンアプリを活用した呼吸法ガイドも2024年以降多数リリースされており、手軽に実践できるようになっています。
💧 制汗剤の活用
市販の制汗剤を上手に活用することも有効です。塩化アルミニウムを含む制汗剤は、医療用のものほど高濃度ではありませんが、軽度の多汗症には効果があります。就寝前の清潔な肌に塗布し、翌朝洗い流すことで効果を最大限に引き出せます。
✨ 衣服の工夫
発汗が気になる方は、衣服の選び方も工夫しましょう。吸水性・速乾性に優れた素材を選ぶ、脇汗パッドを使用する、汗じみが目立ちにくい色や柄の服を選ぶなどの対策が有効です。また、重ね着をすることで、インナーが汗を吸収してアウターへの汗じみを防ぐことができます。
📌 緊張場面への準備
プレゼンテーションや面接などの緊張する場面が事前にわかっている場合は、十分な準備をすることで不安を軽減できます。内容の練習を繰り返す、想定される質問への回答を用意する、会場の下見をするなど、できる限りの準備を整えることで自信につながります。
また、「最悪の事態」を想定し、それに対処するプランを持っておくことも有効です。「汗をかいても大丈夫、ハンカチで拭けばいい」「汗をかいていることに気づかれても、堂々としていれば問題ない」といった心構えを持つことで、予期不安を軽減できます。
✨ 精神性発汗を悪化させないための生活習慣
精神性発汗を悪化させないためには、日々の生活習慣の見直しも重要です。
✨ ▶️ 睡眠の質を高める
睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、ストレスへの耐性を低下させます。十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めることで、精神性発汗の悪化を防ぐことができます。就寝前のスマートフォン使用を控える、寝室の環境を整える、規則正しい睡眠スケジュールを維持するなどの工夫が有効です。
睡眠リズムが乱れている方は、「睡眠リズムの戻し方|3日で生活リズムを整える具体的な方法と注意点」をご参照ください。
🔹 適度な運動
定期的な運動はストレス解消に効果的であり、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。ウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガなどの有酸素運動を週3〜4回、30分程度行うことが推奨されます。運動によって「良い汗」をかく習慣をつけることで、発汗に対する過度な意識を軽減できることもあります。
血行促進のためのストレッチも効果的です。「ストレッチで血行促進!効果的なやり方と部位別おすすめメニュー15選」も参考にしてみてください。
📍 食生活の見直し
発汗を促進する食品を控えめにすることも有効です。カフェイン、アルコール、辛い食品、熱い食品などは発汗を促進する可能性があります。特に緊張する場面の前には、これらの食品を避けることをお勧めします。
また、バランスの良い食事を心がけ、ビタミンB群やマグネシウムなど、神経機能をサポートする栄養素を十分に摂取することも重要です。
💫 ストレス管理
日常的なストレス管理も精神性発汗の予防に重要です。趣味の時間を持つ、信頼できる人に悩みを相談する、瞑想やヨガを取り入れるなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、精神性発汗を悪化させる要因となります。
📌 医療機関を受診すべきタイミング
精神性発汗でお悩みの方は、以下のような場合に医療機関の受診を検討してください。
🦠 受診を勧める状況
日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、早めに受診することをお勧めします。具体的には、発汗のために仕事や学業のパフォーマンスが低下している、人前に出ることを避けるようになった、社会的な活動を控えるようになった、発汗について常に悩んでいる、抑うつ気分や強い不安を感じているなどの状況です。
また、突然発汗が増加した場合や、発熱・体重減少・動悸などの他の症状を伴う場合は、基礎疾患の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。
👴 受診する診療科
多汗症の診療は、主に皮膚科で行われます。精神性発汗の要素が強い場合は、心療内科や精神科での治療も検討されます。症状によっては、皮膚科と心療内科を併診することで、より効果的な治療が可能になることもあります。
🎯 よくある質問
精神性発汗は適切な治療によって症状を大幅に改善することが可能です。外用薬やボツリヌス毒素注射などの医学的治療に加えて、認知行動療法などの心理療法を組み合わせることで、多くの方が日常生活での支障を軽減できています。完全に発汗がなくなるわけではありませんが、発汗量の減少や発汗に対する不安の軽減により、QOLの向上が期待できます。
原発性多汗症には遺伝的な要因があることがわかっています。研究によると、多汗症患者の約30〜50%に家族歴があるとされています。ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではなく、環境要因やストレスなども発症に関与します。両親や兄弟に多汗症の方がいる場合は、自分も発症する可能性が高いことを認識しておくとよいでしょう。
ボツリヌス毒素注射は細い針を使用しますが、注射部位によって痛みの程度が異なります。脇の下への注射は比較的痛みが少ないですが、手のひらや足の裏は神経が集中しているため痛みを感じやすい部位です。多くのクリニックでは表面麻酔クリームや冷却、神経ブロック麻酔などを使用して痛みを軽減する工夫をしています。痛みが心配な方は事前に担当医に相談してください。
軽度の多汗症であれば、市販の制汗剤で症状が改善することがあります。特に塩化アルミニウムを含む制汗剤は効果が期待できます。ただし、市販品は医療用に比べて濃度が低いため、中等度以上の多汗症には効果が不十分な場合があります。市販の制汗剤を2〜4週間使用しても改善が見られない場合は、医療機関での治療を検討することをお勧めします。
精神性発汗と緊張型頭痛は、どちらもストレスや緊張が引き金となって生じる症状であり、同時に経験する方も少なくありません。両者は自律神経系の過剰反応という共通のメカニズムを持っています。慢性的なストレスにさらされている方は、発汗と頭痛の両方に悩まされることがあります。根本的な対処としては、ストレス管理や生活習慣の改善が重要です。
子供の多汗症は、思春期を過ぎると自然に改善するケースもありますが、成人になっても続く場合も多くあります。特に家族歴がある場合は、成長しても症状が持続する傾向があります。子供の頃から発汗に悩んでいる場合は、社会不安や自己肯定感の低下につながることもあるため、症状が強い場合は早めに専門医に相談することをお勧めします。
2024年以降、多汗症治療の選択肢は拡大しています。従来の外用薬や注射治療に加えて、デジタル認知行動療法アプリの活用、オンライン心理療法の普及、より精密な発汗量測定技術の導入などが進んでいます。また、個人の生活スタイルに合わせたオーダーメイド治療プランの提案も可能になっており、患者さん一人ひとりに最適化された治療を受けられるようになっています。
テレワークから対面業務への復帰で精神性発汗が悪化するケースは2024年以降増加しています。対処法として、段階的な対面機会の増加、事前の呼吸法練習、適切な制汗剤の使用、必要に応じて一時的な抗不安薬の処方などがあります。また、『対面に慣れるまでの一時的な症状』と認識することで心理的負担を軽減できます。症状が強い場合は、心療内科での相談も有効です。
参考文献
- 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
- 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス – パニック障害・不安障害」
- 国立精神・神経医療研究センター「不安症」
- 厚生労働省「2024年度 働き世代のメンタルヘルス実態調査」
- 慶應義塾大学医学部「多汗症の病態解明と治療法開発に関する研究」
- エーザイ株式会社「エクロックゲル製品情報」
- 日本皮膚科学会雑誌「精神性発汗の最新治療戦略 2024」
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務