「気づいたら隆起したほくろが取れていた」という経験をされた方は、驚きや不安を感じることが少なくありません。ほくろは多くの方にとって身近な存在ですが、突然取れてしまうと「何か悪い病気のサインではないか」「このまま放置しても大丈夫なのか」と心配になるのは自然なことです。本記事では、隆起したほくろが取れる原因から、注意すべき症状、適切な対処法、そして医療機関での治療法まで、専門医の監修のもと詳しく解説します。自己判断で放置せず、正しい知識を身につけて適切に対応することで、皮膚の健康を守りましょう。

目次
- 隆起したほくろとは何か
- 隆起したほくろが取れる主な原因
- ほくろが取れた後の適切な対処法
- 注意すべき危険なサインとは
- 良性と悪性の見分け方(ABCDEルール)
- 皮膚科で行われる診断方法
- 隆起したほくろの除去方法
- ほくろ除去後のアフターケア
- 再発を防ぐための日常ケア
- よくある質問
隆起したほくろとは何か
ほくろは医学的には「母斑細胞母斑」または「色素性母斑」と呼ばれる良性の皮膚腫瘍です。皮膚のメラニン色素を作り出すメラノサイトという細胞が変質し、「母斑細胞」として増殖することで形成されます。ほくろには平坦なものから隆起したものまでさまざまな形態があり、色も黒色、褐色、肌色など多様です。
ほくろの分類と特徴
ほくろは母斑細胞が存在する位置によって、医学的に3つのタイプに分類されます。境界母斑は母斑細胞が表皮と真皮の境界部分に限局して存在するタイプで、メラニン色素の産生が盛んなため黒くて平坦なほくろとして現れます。複合母斑は母斑細胞が表皮と真皮の境界部分から真皮の浅い部分にかけて存在するタイプで、黒または茶色で隆起したほくろとして見えます。真皮内母斑は母斑細胞が真皮内にのみ存在するタイプで、メラニン色素の産生が乏しく、肌色または薄茶色、あるいは灰色の隆起したほくろとして現れます。
隆起したほくろは、このうち複合母斑や真皮内母斑に該当することが多く、母斑細胞が変質し増殖する過程で皮膚表面より盛り上がったものです。一般的にほくろが盛り上がっていること自体は問題ありませんが、もともとのほくろと比較して隆起してきた場合や、その他の変化が見られる場合には注意が必要です。
隆起したほくろと似た皮膚病変
隆起したほくろと混同しやすい皮膚の病変がいくつか存在します。代表的なものとして脂漏性角化症(老人性イボ)があります。これは30代以降、加齢に伴って増えやすい良性の皮膚腫瘍で、「老人性イボ」とも呼ばれます。色は褐色から黒色でザラザラとしており、顔や胸、背中など体のさまざまな場所にできます。ウイルスが原因ではないため周囲の人にうつることはありませんが、見た目がほくろに似ているため混同されやすい病変です。
また、軟性線維腫や皮膚線維腫といった良性腫瘍も隆起した皮膚病変として現れることがあります。さらに注意が必要なのは、ほくろに見える悪性腫瘍の存在です。悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞癌は初期段階ではほくろと見分けがつきにくいことがあり、専門医による診断が不可欠です。
隆起したほくろが取れる主な原因
隆起したほくろが取れてしまう原因はいくつか考えられます。多くの場合は心配のない原因によるものですが、まれに注意が必要なケースもあります。主な原因について詳しく見ていきましょう。
物理的な刺激による脱落
隆起したほくろが取れる最も一般的な原因は、物理的な刺激です。服やアクセサリーなどが頻繁に当たる部分にあるほくろは、日常的に摩擦や圧迫を受けやすく、徐々に剥がれ落ちることがあります。例えば、ネックレスやブラジャーの紐が当たる部分、ベルトの位置、首周りなどにあるほくろは特に取れやすい傾向があります。また、無意識に引っ掻いたりむやみに触ったりすることでもほくろが取れることがあります。
皮膚のターンオーバーによる自然な変化
皮膚の新陳代謝による自然な変化も、ほくろが取れる原因の一つです。肌は通常28日程度の周期でターンオーバー(新陳代謝)を行っており、古い角質が新しい皮膚に置き換わります。この過程で、表皮に溜まったメラノサイト(色素細胞)が排出され、ほくろが徐々に薄くなったり、自然に取れたりする場合があります。後天的にできたほくろは、このメラノサイトの排出によって取れることがあります。
ほくろではなく脂漏性角化症だった場合
取れた皮膚病変が実はほくろではなく、脂漏性角化症(老人性イボ)だったというケースも少なくありません。脂漏性角化症は皮膚の表層にできる良性腫瘍で、かさぶたのようにポロッと取れることがあります。脂漏性角化症はほくろに比べて表面がザラザラしていたり、色むらがあったりする特徴がありますが、外見だけでは判別が難しいこともあります。
医療処置やスキンケアの影響
レーザー治療やケミカルピーリングなどの医療処置を受けた際に、その過程でほくろが薄くなったり取れたりすることがあります。また、強力な美白成分やピーリング効果のあるスキンケア製品がほくろに作用し、取れる場合もあります。これらの処置やケア製品の使用後にほくろが取れた場合は、担当の医師に報告することが望ましいでしょう。
注意すべきケース
上記の原因とは異なり、注意が必要なケースもあります。ほくろが取れた部分から繰り返し出血がある場合、取れた後に傷が治らず潰瘍化している場合、同じ場所に再びほくろができて大きくなる場合などは、悪性の可能性を否定できないため、速やかに皮膚科を受診することが重要です。
ほくろが取れた後の適切な対処法
ほくろが取れてしまった場合、適切に対処することで炎症や色素沈着といった肌トラブルを予防できます。慌てずに以下のステップに従って対応しましょう。
患部を清潔に保つ
ほくろが取れた直後は、まず患部を清潔に保つことが大切です。石鹸と流水で優しく洗い、清潔なガーゼやティッシュで軽く押さえて水気を拭き取ります。出血がある場合は、清潔なガーゼで数分間圧迫して止血します。止血後は、傷口を乾燥させないように絆創膏や医療用テープで保護しましょう。
刺激を避ける
ほくろが取れた部分は皮膚が薄くなっており、外部からの刺激に敏感な状態です。患部を触ったり引っ掻いたりしないよう注意し、できるだけ刺激を与えないようにしましょう。衣服やアクセサリーが当たらないよう工夫することも大切です。
紫外線対策を徹底する
ほくろが取れた後の肌は非常に敏感で、紫外線に対して無防備な状態です。特にほくろが取れた部分は色素沈着しやすいため、紫外線対策が必要不可欠です。外出時には日焼け止めを塗布し、日差しが強い場合には帽子や日傘を使って対策をしましょう。新しい皮膚が形成されるまでの数週間から数カ月間は、特に念入りな紫外線対策を心がけてください。
取れたほくろを保管する
可能であれば、取れたほくろを清潔な容器に保管しておくことをお勧めします。皮膚科を受診した際に、医師が取れたほくろを観察したり、必要に応じて病理検査に回したりすることができるからです。乾燥を防ぐため、生理食塩水や水で湿らせたガーゼに包んで保管するとよいでしょう。
経過を観察し記録する
ほくろが取れた部分の経過を観察し、できれば写真を撮って記録しておきましょう。傷の治り具合、赤みや腫れの有無、新しい皮膚の状態などを確認します。異常が見られた場合や、数週間経っても傷が治らない場合は、速やかに皮膚科を受診してください。
注意すべき危険なサインとは
隆起したほくろが取れた場合、多くのケースでは問題ありませんが、いくつかの危険なサインには注意が必要です。以下のような症状が見られる場合は、悪性腫瘍の可能性も考慮して、できるだけ早く皮膚科専門医を受診することをお勧めします。
傷が治らない、または繰り返し出血する
通常、ほくろが取れた後の傷は1〜2週間程度で治癒に向かいます。しかし、数週間経っても傷が治らない場合や、完治したと思っても繰り返し出血する場合は要注意です。これらの症状は悪性腫瘍の特徴の一つであり、皮膚がんでは軽い刺激で出血したり、自然に出血したりすることがあります。
潰瘍やびらんが形成される
ほくろが取れた部分に潰瘍(深い傷)やびらん(表面がただれた状態)が形成される場合も危険なサインです。特に、じゅくじゅくとした状態が続いたり、かさぶたができては剥がれることを繰り返したりする場合は、悪性の可能性を考慮する必要があります。
同じ場所に再度ほくろができて急速に大きくなる
取れた場所に再びほくろができること自体は珍しくありませんが、そのほくろが急速に大きくなる場合は注意が必要です。良性のほくろは通常ゆっくりと成長しますが、悪性黒色腫(メラノーマ)などの悪性腫瘍は比較的短期間で大きくなることがあります。1〜2カ月で見た目が急に変化する場合は、速やかに受診してください。
その他の異常な症状
かゆみや痛みが持続する場合、患部が硬くなる場合、周囲の皮膚の色が変化する場合なども注意が必要な症状です。通常のほくろはかゆみや痛みを伴いませんが、皮膚がんの場合はこれらの症状を生じることがあります。また、患部から異臭がする場合も速やかに医療機関を受診すべきサインです。
良性と悪性の見分け方(ABCDEルール)
ほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)を見分けるための国際的な指標として「ABCDEルール」があります。このルールは、皮膚科専門医が診断に用いる重要な基準であり、一般の方がセルフチェックを行う際にも有用です。
A(Asymmetry):非対称性
良性のほくろは通常、左右対称な形をしています。一方、メラノーマは左右非対称の形をしていることが多く、中心線で分けたときに両側が同じ形にならない場合は要注意です。ほくろを二つに折ったとき、両側が重ならないようであれば、専門医に相談することをお勧めします。
B(Border):境界不整
良性のほくろは境界がはっきりしており、周囲の皮膚との境目がくっきりしています。これに対し、メラノーマは境界がギザギザしていたり、不明瞭だったりすることがあります。ほくろの縁が不規則で、まるで地図のようにいびつな形をしている場合は注意が必要です。
C(Color):色調不均一
良性のほくろは全体が均一な色をしていることが一般的です。しかし、メラノーマは色にムラがあり、黒、茶、赤、白、青など複数の色が混在していることがあります。一つのほくろの中に濃淡の差がある場合や、部分的に色が抜けている場合は要注意です。
D(Diameter):直径
直径6mm以上のほくろは、メラノーマの可能性を考慮する必要があります。これは鉛筆の消しゴム部分の大きさに相当します。ただし、すべての大きなほくろが悪性というわけではなく、逆に6mm未満のメラノーマも存在するため、大きさだけで判断することは適切ではありません。他の要素と合わせて総合的に判断することが重要です。
E(Evolution):変化
もっとも重要な指標と言われているのがこの「変化」です。大きさ、形、色が徐々に変化していくほくろは要注意です。良性のほくろは通常、長期間にわたって安定していますが、メラノーマは時間とともに変化することが特徴です。定期的にほくろを観察し、変化があれば記録しておくことが早期発見につながります。
ABCDEルール以外の注意点
ABCDEルールに加えて、「みにくいアヒルの子のサイン」も重要な指標です。これは体にある多くのほくろの中で、一つだけ見た目や大きさが明らかに違う「仲間はずれ」のほくろに注意するという考え方です。また、日本人のメラノーマは足の裏や手のひら、爪の下に発生することが多いため、これらの部位のほくろは特に注意深く観察する必要があります。
皮膚科で行われる診断方法
隆起したほくろが取れた場合や、ほくろに変化が見られた場合は、皮膚科専門医による診察を受けることが重要です。皮膚科ではさまざまな検査方法を用いて、病変が良性か悪性かを正確に診断します。
問診と視診
診察の基本は、まず医師が直接患部を目で見て確認する視診と、患者から詳しく話を聞く問診です。いつからほくろがあったのか、いつ取れたのか、取れる前に変化はあったか、かゆみや痛みなどの自覚症状はあるか、過去に過度な日焼けを経験したことはないか、家族に皮膚がんになった人はいるかなど、これらの情報が診断の重要な手がかりとなります。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査は、皮膚科専門医が疑わしい病変を詳しく調べるために用いる非侵襲的な検査方法です。ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使って皮膚の表面に光を当て、皮膚を切らずに表面下の色や血管の構造を詳細に観察します。この検査により、良性か悪性かの鑑別精度が飛躍的に向上します。例えば、基底細胞癌に特徴的な樹枝状の血管や、悪性黒色腫に見られる不規則な色素ネットワークなどを観察することができます。検査自体は痛みを伴わず、数分で終了します。
皮膚生検(病理検査)
ダーモスコピーで診断が難しい場合や、悪性が疑われる場合は、皮膚生検が行われます。これは病変の一部または全部を採取し、顕微鏡で細胞を詳しく調べる検査です。局所麻酔を行うため検査中の痛みはほとんどありません。皮膚生検の結果は通常約2週間で明らかになり、確定診断を得ることができます。病理検査では、細胞を一つ一つ皮膚病理の専門家が観察し、明確な診断を下すことができるため安心です。
画像検査
皮膚生検の結果、悪性度の高い皮膚がんと診断され、転移の可能性がある場合には、リンパ節や他の臓器への転移の有無を調べるために画像検査が追加で行われます。超音波検査、CT、MRI、PETなどの検査により、がんの進行度(ステージ)を正確に把握し、最適な治療方針を決定します。
隆起したほくろの除去方法
隆起したほくろを除去したい場合や、医師が除去を勧める場合には、いくつかの治療方法があります。ほくろの大きさ、深さ、位置、良性・悪性の可能性などによって最適な方法が選択されます。
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)治療
炭酸ガスレーザーは、ほくろ除去において最も一般的に用いられる治療法の一つです。このレーザーは水分に吸収されると一瞬にして熱エネルギーに転換される性質があり、皮膚に照射すると細胞に含まれる水分がレーザーのエネルギーを吸収し、蒸散作用を起こしてほくろ組織を除去します。炭酸ガスレーザーは小さく浅いほくろ、隆起したほくろ、縫合が困難な部位(頭部、鼻部、眉毛部、瞼の縁など)にあるほくろに適しています。
治療時は局所麻酔を行うため痛みはほとんどなく、出血も少ないのが特徴です。周囲の血管も同時に熱凝固されるため、メスによる手術と比較して出血がほとんど見られません。治療後は傷が完全にふさがるまでの1〜2週間、軟膏や絆創膏で保護する必要があります。治療部位には赤みが残りますが、通常3〜6カ月で目立たなくなります。
外科的切除(手術)
悪性を疑う病変、色素が深い病変、大きい病変、完全に取り切りたい病変には外科的切除が行われます。局所麻酔を用いた30分程度の日帰り手術で、ほくろをメスで切除し、縫合して傷を閉じます。切除した組織は病理検査に回され、良性か悪性かの確定診断を得ることができます。
手術後は翌日または翌々日に消毒のため来院し、手術から7日後に抜糸を行います。抜糸後は日常生活の制限はありません。手術痕は線状の傷跡になり、通常1年程度で目立たなくなりますが、体質や部位により傷跡が目立って残る場合もあります。
高周波メス(サージトロン)
高周波メスは、高周波の電気エネルギーを利用してほくろを除去する方法です。高周波は水分と反応し熱を発生させるため、ほくろの水分と反応してほくろを蒸散させることができます。従来のメスに比べて出血が少なく、傷口が小さいのが特徴です。また、レーザー治療では困難な微細な深さ調節が可能です。
液体窒素による凍結療法
液体窒素凍結療法は、マイナス196度の液体窒素を用いて病変部を凍らせて取り除く方法です。特殊な器具を必要としないため手軽に受けることができ、保険適用で行える場合もあります。時間の経過とともに凍結した組織は壊死し、かさぶたになって自然に剥がれ落ちます。ただし、1回で取り切ることができず何度か治療が必要であること、治療後に炎症後色素沈着が残る可能性があることなどのデメリットがあります。
治療法の選択について
どの治療法が最適かは、ほくろの状態や患者の希望によって異なります。見た目の改善を目的とする場合は自費診療となりますが、悪性の疑いがある場合や医師が医療的に治療が必要と判断した場合は、保険が適用になるケースもあります。治療法の選択については、必ず皮膚科専門医と相談し、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で決定することが大切です。
ほくろ除去後のアフターケア
ほくろを除去した後の適切なアフターケアは、傷跡を目立たなくし、再発を防ぐために非常に重要です。治療法によって異なる点もありますが、共通する基本的なケア方法を解説します。
術後の傷のケア
治療直後は医師が軟膏を塗り、テープや絆創膏で保護します。レーザー治療の場合、傷が完全にふさがるまでの1〜2週間は軟膏を塗り続け、創傷被覆材(ガーゼや絆創膏)で覆って湿潤状態を維持することが大切です。傷が乾燥するとかさぶたができ、その下に表皮が作られる際に凹みが残ってしまう原因になります。手術の場合は、術後24時間は患部を濡らさないようにし、翌日からシャワーは可能になります。
紫外線対策の徹底
治療後の傷跡は紫外線に非常に敏感で、色素沈着を起こしやすい状態です。外出時は必ず日焼け止めを塗り、帽子や日傘を使用して紫外線から保護しましょう。特に治療後3〜6カ月間は念入りな紫外線対策が必要です。紫外線による色素沈着は6カ月頃より消えていきますが、美白外用薬(ハイドロキノンなど)を使用するとより綺麗な仕上がりになります。
患部への刺激を避ける
治療後の患部はデリケートな状態のため、できるだけ刺激を避けることが大切です。患部を触ったり引っ掻いたりしないよう注意し、衣服やアクセサリーが当たらないように工夫しましょう。入浴時もゴシゴシこすらず、優しく洗うようにしてください。
経過観察と再診
治療後の経過は個人差があるため、医師の指示に従って定期的に再診を受けることが大切です。レーザー治療の場合、治療後3〜6カ月で赤みが引いてきますが、ほくろの色素が残っている場合やほくろが深かった場合は、追加治療が必要になることがあります。再発の有無を確認するためにも、定期的なフォローアップを受けましょう。
再発を防ぐための日常ケア
ほくろの除去後、同じ場所にほくろが再発することを防ぐため、また新しいほくろができることを予防するためには、日常的なケアが重要です。
紫外線対策を習慣化する
紫外線はほくろができる主な原因の一つです。紫外線を浴びると肌のメラノサイトがメラニンを作り出し、その過程でほくろができることがあります。日焼け止めは天候に関わらず毎日使用し、外出時は帽子や日傘を活用するなどして、ほくろが大きくなったり増えたりしないようにしましょう。若い時期から紫外線対策を適切に行うことで、将来的なほくろの発生予防が期待できます。
ほくろに刺激を与えない
既存のほくろを頻繁に触ったり、傷をつけたりすると、大きくなったり悪性化する恐れがあるため、できるだけ刺激を与えないようにしましょう。衣服やアクセサリーが繰り返し当たる場所にほくろがある場合は、除去を検討することも一つの選択肢です。
セルフケアの禁止
市販のほくろ取りクリームやお灸を使った自己処理は絶対に避けてください。火傷や化膿に発展したり、大きな傷跡として残ったりする恐れがあり、非常に危険です。また、ハサミや爪切りでほくろを切ろうとする行為も、感染症や瘢痕のリスクが高まるため厳禁です。ほくろの除去は必ず医療機関で行いましょう。
健康的な生活習慣
栄養バランスの乱れた食事や睡眠不足は、肌のターンオーバーを障害し、表皮に溜まったメラノサイトが排出されずに残ることで、シミやほくろの原因となります。肌のターンオーバーは成長ホルモンによって制御されているため、特に夜10時〜深夜2時の時間帯はできるだけ睡眠を取ることを意識しましょう。バランスの良い食事と十分な睡眠を心がけることで、肌の健康を維持できます。
定期的なセルフチェック
月に一度は全身のほくろをセルフチェックする習慣を持つことが大切です。特に足の裏、手のひら、爪の下などは見逃しやすい部位ですが、日本人のメラノーマが発生しやすい場所として知られています。入浴時などに意識してチェックする習慣をつけると良いでしょう。変化があれば写真を撮って記録し、専門医に相談してください。

よくある質問
隆起したほくろが取れた場合、必ずしもすぐに受診が必要というわけではありません。まずは患部を清潔に保ち、経過を観察してください。ただし、出血が止まらない場合、傷が2週間以上経っても治らない場合、同じ場所にほくろが再発して急速に大きくなる場合、かゆみや痛みが持続する場合は、速やかに皮膚科を受診することをお勧めします。また、取れたほくろを保管しておくと、医師の診断に役立つことがあります。
はい、ほくろが自然に取れることはあります。皮膚のターンオーバー(新陳代謝)によってメラノサイトが排出され、ほくろが徐々に薄くなったり自然に取れたりすることがあります。また、衣服やアクセサリーなどの物理的な刺激によって、隆起したほくろが剥がれ落ちることもあります。ほくろだと思っていたものが実は脂漏性角化症(老人性イボ)だった場合も、かさぶたのように自然に取れることがあります。
自分でほくろを取ることは絶対に避けてください。市販のほくろ取りクリームやお灸、ハサミなどを使った自己処理は、火傷や化膿、感染症のリスクがあり、大きな傷跡が残る可能性もあります。また、悪性腫瘍である可能性を見逃す危険性もあります。ほくろの除去は必ず皮膚科専門医に相談し、適切な診断と治療を受けてください。
ほくろが取れた後に同じ場所に再発することはあります。自然に取れた場合は、深い部分に母斑細胞が残っていると再発の可能性があります。医療機関でのレーザー治療や手術でも、ほくろの根が深い場合は完全に除去できず、再発することがあります。再発した場合は追加治療を検討しますが、再発したほくろが急速に大きくなる場合や外見が変化する場合は、悪性の可能性を考慮して速やかに受診することが大切です。
足の裏のほくろが必ずしも危険というわけではありません。多くは良性のほくろですが、日本人の悪性黒色腫(メラノーマ)は足の裏に発生する頻度が最も高いことが知られています。重要なのは場所がどこであれ、ABCDEルールに当てはまるような変化が見られるかどうかです。直径6mm以上の大きなほくろや、成人になってから出現したもの、形や色に変化があるものは皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。
ほくろ除去が保険適用になるかどうかは、除去の目的や医師の判断によって異なります。見た目の改善を目的とする美容目的の場合は保険適用されず、自費診療となります。一方、悪性の疑いがある場合、出血や炎症を繰り返している場合、視界を妨げる位置にある場合など、医師が医療的に治療が必要と判断した場合は保険が適用になるケースがあります。詳細は受診時に医師に確認してください。
ダーモスコピー検査は全く痛みを伴いません。ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚に当てて観察するだけの検査で、皮膚を切ったり針を刺したりすることはありません。検査時間も数分程度で終了します。この検査によって皮膚表面下の色素パターンや血管の構造を詳細に観察でき、良性か悪性かの鑑別精度が大幅に向上します。
炭酸ガスレーザーでほくろを除去した場合、傷跡は全く残らないわけではありませんが、メスで切除した場合よりも目立ちにくく治ることが多いです。治療後は赤みが3〜6カ月程度残りますが、時間とともに目立たなくなっていきます。ただし、ほくろの大きさや深さ、治療部位、個人の体質によって傷跡の残り方は異なります。また、治療後の紫外線対策や適切なアフターケアを行うことで、より綺麗に治すことができます。
参考文献
- 悪性黒色腫(メラノーマ)|国立がん研究センター 希少がんセンター
- 基底細胞がん|国立がん研究センター がん情報サービス
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- がん診療ガイドライン│皮膚悪性腫瘍│メラノーマ(悪性黒色腫)|日本癌治療学会
- 「ほくろ」「できもの」と『がん』|日本医科大学武蔵小杉病院
- 悪性黒色腫(メラノーマ)|独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター
- 悪性黒色腫(メラノーマ)|がん研有明病院
- 上皮系皮膚がんの診断にはどのような検査が必要?|小野薬品 がん情報
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務