ほくろから毛が生える理由と正しい処理方法|抜いてはいけない理由も解説

「ほくろから毛が生えてくるのはなぜ?」「ほくろから生える毛を抜いても大丈夫?」このような疑問をお持ちの方は少なくありません。顔や身体のほくろから太く目立つ毛が生えてくると、見た目が気になるだけでなく、「病気のサインなのでは」と心配になることもあるでしょう。実は、ほくろから毛が生えることは医学的に見て珍しいことではなく、むしろ良性のほくろである可能性を示す一つの指標とされています。本記事では、ほくろから毛が生えるメカニズムから、正しい処理方法、注意すべき悪性のほくろとの見分け方、そして安全なほくろ除去法まで、皮膚科専門の知見に基づいて詳しく解説します。ほくろと毛の関係について正しく理解し、適切なケアを行うための参考にしてください。


目次

  1. ほくろとは何か?基本的なメカニズムを理解しよう
  2. ほくろから毛が生える理由
  3. ほくろから生える毛はなぜ太くて目立つのか
  4. ほくろに毛が生えていることは良性の証拠?
  5. ほくろから生える毛の正しい処理方法
  6. やってはいけない処理方法とそのリスク
  7. 悪性のほくろ(メラノーマ)との見分け方
  8. ほくろ除去の方法と選び方
  9. 医療機関への受診が必要なケース
  10. ほくろと毛に関するよくある質問

ほくろとは何か?基本的なメカニズムを理解しよう

ほくろの正体と医学的な定義

ほくろは医学的に「母斑細胞母斑」または「色素性母斑」と呼ばれる良性の皮膚腫瘍です。日本皮膚科学会によれば、ほくろは皮膚の色に関与するメラニン色素を作る細胞であるメラノサイトが変化した「母斑細胞」が皮膚の一部に集まって形成されたものとされています。

メラノサイトは本来、紫外線から身体を守るためにメラニン色素を作り出す重要な役割を担っています。このメラノサイトが増殖したり塊になったりすることで、皮膚の一部が黒色や茶色に見えるようになるのがほくろの正体です。ほくろは良性の腫瘍であるため、基本的には健康上の問題はありません。

ほくろの種類と特徴

ほくろには生まれつきのものと後天的にできるものがあり、その性質や見た目もさまざまです。母斑細胞の存在する深さや、増殖の程度、メラニン色素産生の有無によって以下のように分類されます。

まず境界母斑は、母斑細胞が表皮と真皮の境界部分に限局して存在するタイプです。メラニン色素の産生が盛んで、見た目は黒くて平坦なほくろとして現れます。次に複合母斑は、母斑細胞が表皮と真皮の境界部分から真皮の浅い部分にかけて存在するタイプで、メラニンの産生も盛んなため、黒や茶色の隆起したほくろに見えます。そして真皮内母斑は、母斑細胞が真皮内にのみ存在するタイプです。メラニン色素の産生は乏しく、肌色または薄茶色、もしくは灰色の隆起したほくろとして見られます。

また、先天性色素性母斑は生まれつき存在する母斑で、大型のものでは剛毛が生えていることも多く、「黒アザ」のような外見を呈します。20cmを超える巨大先天性色素性母斑は悪性化するリスクがあるとされ、専門医による経過観察や場合によっては切除が推奨されることがあります。

ほくろができる原因

ほくろができる原因はさまざまですが、主なものとして以下が挙げられます。

遺伝的な要因として、体質的にほくろができやすい家系があることが知られています。紫外線の影響も重要な要因の一つで、日光に当たることでメラノサイトが刺激され、色素が増加してほくろが発生することがあります。ホルモンの影響も見逃せず、思春期や妊娠中、加齢などでホルモンバランスが変化すると、ほくろが増えたり色が濃くなったりすることがあります。

さらに、皮膚への刺激もメラノサイトを活発化させる要因となります。毎日行うメイクの刺激や、強くこすったり圧迫したりすることで、ほくろができやすくなる可能性があるとされています。また、栄養バランスの乱れた食事や睡眠不足により正常な皮膚のターンオーバーが障害されると、表皮に溜まったメラノサイトがいつまでも排出されず残ってしまい、シミやほくろが生じることもあります。

ほくろから毛が生える理由

ほくろにも毛穴と毛根が存在する

「ほくろから毛が生えるのはなぜ?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。その答えは意外とシンプルで、「ほくろにも他の皮膚と同様に毛穴が存在するから」です。

ほくろは皮膚の一部に母斑細胞が集まってできたものであり、皮膚としての基本構造は保たれています。つまり、ほくろの下に毛根(毛を作る細胞組織)が存在すれば、普通の皮膚と同じように毛が生えてくるのは自然なことなのです。ほくろは特別な場所ではなく、ただ色素が集中しているだけの「皮膚の一部」であると理解すれば、毛が生えてくることも納得できるでしょう。

最新研究で明らかになった毛の成長促進メカニズム

興味深いことに、近年の研究でほくろから太い毛が生える科学的なメカニズムがより詳しく解明されつつあります。カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームは、ほくろの内部に存在する分子が毛髪の成長を活性化する重要な役割を果たしていることを発見しました。

この研究によれば、ほくろに存在する「オステオポンチン」と「CD44」という2つの分子が、ほくろに生える長くて太い毛の成長を促進させる原因であることが明らかになりました。老化した色素細胞(メラノサイト)はオステオポンチンと呼ばれるシグナル伝達分子を大量に生成し、周りにある毛幹細胞にはこれに反応するCD44という受容体分子が存在しています。このオステオポンチンとCD44が分子レベルで相互作用すると、毛幹細胞が活性化され、毛髪がしっかりと成長することがわかったのです。

この発見は、将来的に薄毛治療への応用が期待されており、ほくろから生える毛の研究が医学的に重要な意味を持つことを示しています。

ほくろから生える毛はなぜ太くて目立つのか

活発な細胞分裂と毛嚢への刺激

ほくろから生える毛が他の部位の毛より太くて目立つと感じたことはありませんか?これには明確な理由があります。

ほくろのある部位はメラノサイトの活動が活発であり、皮膚の細胞分裂も盛んに行われています。ほくろが毛根の近くにあると、毛を作る部分である毛嚢(毛包)が刺激され、より多くの栄養が供給されます。その結果、ほくろがある場所は他の場所に比べて長くて太い毛が生えてきやすくなるのです。

また、母斑細胞が増えてできたほくろでは、メラニンを多く含む濃く太い毛が生えやすくなります。これは母斑細胞の活動が毛の成長にも影響を与えているためです。

毛が太く見える他の要因

ほくろから生える毛が太く見える理由は、細胞の活性化だけではありません。以下のような要因も関係しています。

まず、ほくろ部分の毛根が深い位置にあることが多いという点があります。毛根が深いほど毛は太くしっかりと成長する傾向があります。次に、色素沈着していることで毛の「黒さ」が強調されるという視覚的な効果もあります。黒いほくろの上に黒い毛が生えると、コントラストによって毛がより目立って見えるのです。さらに、皮膚が厚くて毛が抜けにくく育ちやすいという物理的な要因もあります。

これらの要因が組み合わさることで、ほくろから生える毛は実際に太い場合もあれば、単に目立ちやすくなっている場合もあります。いずれにしても、これは病気のサインではなく、ほくろの正常な特性の一つと言えます。

ほくろに毛が生えていることは良性の証拠?

皮膚科医の見解

「毛が生えているほくろは良性である」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。これは医学的にも一定の根拠がある見解です。

成田記念病院の皮膚科医によれば、毛が生えているほくろは良性である可能性が高いとされています。その理由は、本来悪性のほくろは毛が生えるような正常な皮膚構造を持っていないからです。良性のほくろは皮膚としての正常な構造を維持しているため、毛穴や毛根も正常に機能し、毛が生えてきます。一方で、悪性のほくろ(メラノーマなど)は細胞が異常に増殖し、皮膚の正常な構造を破壊しながら成長していくため、毛根も壊れてしまい毛が生えにくい傾向があるのです。

注意すべきポイント

ただし、「毛が生えているから100%安全」とは言い切れません。以下の変化が見られる場合は注意が必要です。

急にほくろが大きくなってきた場合、ほくろの形が左右非対称になった場合、色がムラになってきた(黒、赤、青など多彩な色になった)場合、かゆみや出血がある場合、これまで毛があったのに抜けてしまった場合は、皮膚科専門医への受診を検討してください。

特に「毛があったのに生えなくなった」という変化は、ほくろの細胞構造に何らかの変化が起きている可能性を示唆しています。このような変化に気づいた場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。

ほくろから生える毛の正しい処理方法

推奨される処理方法:ハサミでカットする

ほくろから生える毛が気になる場合、最も安全な処理方法はハサミで根元から短くカットすることです。この方法のメリットは、皮膚やほくろへの刺激を最小限に抑えられることです。

処理を行う際は、清潔なハサミを使用し、皮膚やほくろを傷つけないよう慎重に切ることが重要です。眉毛用の小さなハサミや、先端が丸くなった安全ハサミを使用すると、より安全に処理できます。

ただし、毛抜きで抜くより新しい毛が生えてくるターンが早くなる可能性がある点は留意しておきましょう。それでも、皮膚への刺激を最小限に抑えられるという点では、カットがより安全な選択肢と言えます。

電気シェーバーの使用

ボディ用の電気シェーバーを使用する方法もあります。電気シェーバーはカミソリのような強い刺激を皮膚に与えないため、比較的安全に毛を処理することができます。使用する際は、ほくろに強く押し当てないよう注意しながら、優しく滑らせるように使用しましょう。

処理の頻度について

ほくろの毛を処理する際は、頻繁に行いすぎないことも大切です。どのような方法であっても、ほくろへの慢性的な刺激は避けるべきです。「どうしても気になるときにだけ処理する」というスタンスで、必要最小限にとどめることをお勧めします。

やってはいけない処理方法とそのリスク

毛抜きで抜くことのリスク

「ほくろの毛は抜いてはいけない」という言い伝えを聞いたことがある方も多いでしょう。これは単なる迷信ではなく、医学的な根拠があります。

ほくろの毛を毛抜きで抜くと、まず毛穴が無理やり広がり皮膚が傷つきます。これにより細菌が侵入しやすくなり、ニキビなどの肌トラブルが起こりやすくなります。また、毛を引き抜く際には強い痛みを感じますが、この痛みが強いということは皮膚に大きな負担がかかっていることを意味します。ほくろのある場所に過度な負担がかかると、腫れや赤みを引き起こしやすくなり、場合によっては色素沈着を起こすこともあります。

慢性的な刺激と悪性化のリスク

さらに重要なのは、ほくろへの慢性的な刺激が悪性化のリスクを高める可能性があるという点です。良性のほくろであっても、繰り返し刺激を受け続けることで、まれに悪性のメラノーマに変化してしまうケースがあることが報告されています。

毛抜きで定期的に毛を抜くという行為は、まさにほくろに慢性的な刺激を与えることになります。また、カミソリの刃を肌に当て続けることもほくろへの刺激となるため、自己処理の方法には十分な注意が必要です。

脱毛サロンや医療脱毛の注意点

ほくろの毛を脱毛で処理しようと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、これにも注意が必要です。脱毛サロンで行われる光脱毛や医療脱毛で使用されるレーザーは、毛のメラニン色素に反応する性質を持っています。そのため、毛だけでなくメラニン色素を多く含むほくろにも反応してしまい、やけどや赤みなどの肌トラブルを引き起こす可能性があります。

多くの脱毛クリニックやサロンでは、ほくろの部分を避けて施術を行うか、ほくろを保護シールで覆ってから施術を行います。ほくろのある部位の脱毛を希望する場合は、事前に担当者に相談し、適切な対応をしてもらうことが大切です。

悪性のほくろ(メラノーマ)との見分け方

メラノーマとは

メラノーマ(悪性黒色腫)は、皮膚の色素細胞であるメラノサイトや母斑細胞ががん化したもので、一般的に「ほくろのがん」と呼ばれています。日本皮膚科学会によれば、メラノーマは悪性度の高い皮膚がんの一種ですが、早期に発見し早期に治療を受ければ完治する確率も非常に高くなります。

日本におけるメラノーマの発症率は10万人あたり1〜2人程度で、国内の患者数は年間約2,000〜4,000人と報告されています。発症のピークは60〜70代ですが、30〜50代の比較的若い世代にも発症することがあります。日本人のメラノーマの約半数は足の裏や爪といった部位に発生するのが特徴です。

ABCDEルールによるセルフチェック

良性のほくろと悪性のメラノーマを見分けるための指標として、「ABCDEルール」が広く知られています。これは国立がん研究センターや各医療機関でも紹介されている簡便な診断方法です。

A(Asymmetry:非対称性)は形が左右非対称であることを指します。良性のほくろは円形または楕円形で対称的な形をしていることが多いですが、メラノーマは形がいびつで非対称的であることが多いです。

B(Border:境界)は辺縁がギザギザして不整であること、または色のにじみ出しがあることを指します。良性のほくろは境界が明瞭で滑らかですが、メラノーマは境界がぼやけていたり、ギザギザしていたりします。

C(Color:色調)は色調が均一でないこと、色むらがあることを指します。良性のほくろは色が均一ですが、メラノーマは黒、茶、青、赤、白など複数の色が混在していることがあります。

D(Diameter:直径)は長径が6mm以上であることを指します。鉛筆の断面(直径約6mm)を当ててはみ出すサイズのほくろは注意が必要です。

E(Evolution:変化)は大きさの拡大、色や形、症状の変化があることを指します。短期間で急激に大きくなったり、形や色が変わったりする場合は要注意です。

毛の有無と悪性の関係

前述の通り、悪性のメラノーマは皮膚の正常な構造を破壊しながら成長するため、毛根も壊れてしまい毛が生えにくい傾向があります。したがって、「毛が生えていないほくろ」が必ずしも悪性というわけではありませんが、ABCDEルールに該当する特徴を持ち、かつ毛が生えていないほくろは、より注意深く観察する必要があります。

また、これまで毛が生えていたほくろから毛が生えなくなった場合も、何らかの変化が起きている可能性があるため、皮膚科専門医への相談をお勧めします。

ダーモスコピー検査の重要性

良性のほくろと悪性のメラノーマを正確に見分けるためには、専門的な検査が必要です。皮膚科専門医が行うダーモスコピー検査は、ダーモスコープという特殊なライト付き拡大鏡を使用して皮膚の状態を詳しく観察する検査です。病変部を10〜30倍に拡大して観察することで、肉眼では見えないメラニンの分布パターンや血管の状態を詳しく確認できます。

ダーモスコピー検査は痛みを伴わない簡単な検査であり、悪性黒色腫の早期発見に非常に有用です。ダーモスコピーを使用した場合、使用しない場合と比べて診断精度が4〜9倍向上するという報告もあります。気になるほくろがある場合は、まずダーモスコピー検査を受けることをお勧めします。

ほくろ除去の方法と選び方

ほくろ除去を検討するケース

ほくろは基本的に良性の腫瘍であり、医学的には必ずしも除去する必要はありません。しかし、以下のような場合にはほくろ除去を検討される方が多いです。

見た目が気になる場合、特に顔など目立つ場所にあるほくろは美容上の理由から除去を希望される方がいます。ほくろから生える毛が気になる場合も、毛の処理を繰り返すよりもほくろごと除去した方が良いと考える方もいます。ほくろが衣服や下着で擦れて刺激を受けやすい場所にある場合や、悪性の可能性を否定するために病理検査を行いたい場合なども除去の対象となります。

手術による切除法

メスでほくろを根元から切除し、縫合して治療する方法です。この方法のメリットとして、根からしっかり取り除けるため再発しにくいこと、切除した組織を病理検査に回せるため悪性かどうかの診断ができること、医師の判断次第で保険適用になる可能性があること、盛り上がった大きなほくろにも対応できることが挙げられます。

デメリットとしては、縫合が必要なため抜糸までの約1週間はダウンタイムがあること、ほくろの直径よりも長い線状の傷跡が残る可能性があることがあります。ただし、形成外科専門医であれば傷の方向や縫い方を工夫することで、かなり目立たなく仕上げることが可能です。

炭酸ガスレーザー治療

炭酸ガスレーザーは水分に反応するレーザーで、皮膚の水分に反応して生じる熱エネルギーによってほくろを除去する方法です。この方法のメリットとして、メスを使わないため傷が小さく縫合不要であること、処置が短時間で済みダウンタイムも短いこと、小さなほくろを複数個まとめて除去しやすいこと、顔の凹凸のある部分など細かい部分にも対応できること、出血が少なく手術と比べてケアが簡単であることが挙げられます。

デメリットとしては、レーザーで組織を焼いてしまうため病理検査ができず確定診断ができないこと、深いほくろや盛り上がったほくろでは再発する可能性があること、基本的に保険適用外(自由診療)となり費用が高額になる場合があること、一度で取りきろうとして深く削ると傷跡が目立ちやすくなることがあります。

ピコレーザー・Qスイッチレーザー

これらのレーザーはほくろのメラニン色素に反応して色素を破壊する方法です。皮膚を削ることがないため傷跡が残りにくく、平らで小さなほくろの治療に適しています。複数回の照射によって徐々にほくろの色を薄くしていくため、一度の施術では除去できない場合がありますが、ダウンタイムが短いのが特徴です。盛り上がったほくろや根の深いほくろには対応できないため、適応をよく確認することが重要です。

電気メス

電気メスの熱を用いてほくろを除去する方法で、レーザーでは取れないような盛り上がったほくろにも適しています。施術時間が比較的短く、一度の処置で除去できることが多いです。ただし、病理検査ができないこと、深いほくろでは再発の可能性があることなど、炭酸ガスレーザーと同様のデメリットがあります。

治療法の選び方

どの治療法が適しているかは、ほくろの大きさ、深さ、部位、悪性の可能性の有無などによって異なります。一般的な目安として、小さく平らなほくろで美容目的の除去を希望する場合はレーザー治療が適しています。盛り上がったほくろや5mm以上の大きなほくろ、悪性の可能性を否定したい場合は手術による切除が推奨されます。顔など目立つ場所で傷跡を最小限にしたい場合は、経験豊富な形成外科医や皮膚科専門医に相談することが重要です。

いずれの方法を選ぶにしても、まずは皮膚科専門医の診察を受け、ダーモスコピー検査などでほくろの状態を詳しく確認したうえで、適切な治療法を選択することが大切です。

医療機関への受診が必要なケース

すぐに受診すべき症状

以下のような症状がある場合は、できるだけ早く皮膚科専門医を受診することをお勧めします。

ほくろが急に大きくなってきた場合、特に数ヵ月以内に急速に拡大している場合は注意が必要です。ほくろの形がいびつになってきた場合、左右非対称になったり境界がギザギザになったりしている場合も受診が推奨されます。ほくろの色に変化があった場合、特に複数の色が混在するようになった場合や、一部が薄くなったり濃くなったりした場合も同様です。ほくろから出血したり、じゅくじゅくしたり、かさぶたができたりする場合、ほくろにかゆみや痛みがある場合、これまで生えていた毛が突然生えなくなった場合も医療機関への相談が必要です。

定期的な観察が推奨されるケース

以下に該当する方は、定期的に皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。

ほくろの数が50個以上ある方は、メラノーマのリスクが若干高くなるとされています。家族にメラノーマの既往がある方も注意が必要で、第1度近親者(親、兄弟、子ども)に黒色腫の既往がある場合、リスクが6〜8倍高くなるという報告があります。生まれつきの大きなほくろ(先天性色素性母斑)がある方、特に20cmを超える巨大なものは悪性化のリスクがあるため経過観察が重要です。過去にメラノーマを発症したことがある方も、新たなメラノーマが発生するリスクが高いため定期的な検診が必要です。

セルフケアで対応すべきでないこと

インターネット通販などで販売されている「ほくろ除去クリーム」など、自宅で使用できる製品には十分注意が必要です。皮膚科専門医は、これらの製品を使った自己処理は絶対に避けるべきだと警告しています。その理由として、悪性腫瘍の見逃しリスクがあること、深刻な傷跡が残る可能性があること、感染症のリスクがあること、適切な診断なしに処理することで重大な健康被害を招く可能性があることが挙げられます。

ほくろの除去は必ず医療機関で行い、適切な診断を受けた上で治療を受けるようにしましょう。

ほくろと毛に関するよくある質問

ほくろから毛が生えるのはなぜですか?

ほくろも皮膚の一部であり、毛穴と毛根が存在するため毛が生えてきます。ほくろの部位はメラノサイトの活動が活発で細胞分裂も盛んなため、毛嚢(毛包)が刺激されてより太くしっかりした毛が生えやすくなります。これは病気のサインではなく、ほくろの正常な特性の一つです。

ほくろから生える毛を抜いても大丈夫ですか?

毛抜きで抜くことは推奨されません。毛を抜くと毛穴が広がって皮膚が傷つき、細菌感染のリスクが高まります。また、ほくろへの慢性的な刺激は悪性化のリスクを高める可能性があります。毛を処理したい場合は、ハサミで根元からカットする方法が最も安全です。

毛が生えているほくろは良性ですか?

一般的に、毛が生えているほくろは良性である可能性が高いとされています。悪性のほくろ(メラノーマ)は皮膚の正常な構造を破壊しながら成長するため、毛根も壊れてしまい毛が生えにくい傾向があります。ただし、毛が生えているからといって100%安全とは言い切れないため、ABCDEルールに該当する特徴がある場合は皮膚科専門医を受診してください。

ほくろの部分に脱毛レーザーを当てても問題ありませんか?

ほくろの部分への脱毛レーザー照射は避けるべきです。脱毛レーザーはメラニン色素に反応する性質があるため、ほくろにも反応してやけどや赤みなどの肌トラブルを引き起こす可能性があります。多くの脱毛クリニックでは、ほくろの部分を避けて施術するか、保護シールで覆って施術を行います。

ほくろを除去すれば毛も生えなくなりますか?

ほくろを適切に除去すれば、その部分から毛は生えなくなります。ただし、除去方法によっては再発の可能性があり、再発した場合は再び毛が生えてくる可能性もあります。根本的に解決したい場合は、手術による切除が最も確実な方法です。レーザー治療の場合は、深いほくろでは取り残しが発生することがあります。

悪性のほくろ(メラノーマ)かどうかはどうやって見分けますか?

ABCDEルールが参考になります。A(非対称性)B(境界不整)C(色調のムラ)D(直径6mm以上)E(変化がある)の5つの特徴が当てはまる場合はメラノーマが疑われます。特に短期間で急に大きくなったり、色や形が変化したりする場合は注意が必要です。正確な診断には皮膚科専門医によるダーモスコピー検査が必要です。

ほくろ除去は保険適用されますか?

ほくろ除去が保険適用されるかどうかは、医師の判断と除去の理由によって異なります。悪性の疑いがある場合や、医学的な理由(炎症を繰り返す、衣服で擦れて出血するなど)がある場合は保険適用となる可能性があります。美容目的の場合は基本的に自由診療となります。また、レーザー治療は通常保険適用外です。詳しくは医療機関にご相談ください。

ほくろから毛が生えなくなったら心配すべきですか?

これまで毛が生えていたほくろから突然毛が生えなくなった場合は、ほくろの細胞構造に何らかの変化が起きている可能性があります。悪性化の兆候である可能性もあるため、念のため皮膚科専門医に相談することをお勧めします。他に色や形の変化、大きさの変化などがあれば、なおさら早めの受診が推奨されます。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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