うつ病の症状がひどい時の対処法|受診の目安から治療・サポートまで解説

うつ病の症状がひどい時期は、心身ともに非常につらく、どうしていいかわからなくなることがあります。気分の落ち込みや意欲の低下が激しくなり、日常生活さえままならなくなることも少なくありません。このような状態のとき、適切な対処法を知っておくことは症状の悪化を防ぎ、回復への第一歩となります。本記事では、うつ病の症状がひどい時の具体的な対処法から、受診すべきタイミング、家族ができるサポートまで、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。一人で抱え込まず、正しい知識を身につけて、回復への道を歩んでいきましょう。


目次

  1. うつ病の症状がひどい時とはどのような状態か
  2. うつ病の重症度と急性期の特徴
  3. うつ病の症状がひどい時にやるべきこと
  4. うつ病の症状がひどい時にやってはいけないこと
  5. うつ病の症状がひどい時の治療法
  6. 入院が必要となるケース
  7. 家族や周囲ができるサポート
  8. 相談窓口と支援制度の活用
  9. 回復への道のりと再発予防
  10. よくある質問

うつ病の症状がひどい時とはどのような状態か

うつ病の症状がひどい時とは、日常生活に著しい支障をきたしている状態を指します。厚生労働省によると、うつ病は気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなったりして強い苦痛を感じ、日常の生活に支障が現れるまでになった状態とされています。症状がひどくなると、この苦痛がさらに増大し、通常の活動が困難になります。

精神的な症状の深刻化

うつ病の症状がひどい時には、精神面でさまざまな変化が現れます。まず、抑うつ気分が著しく強くなり、一日中気分が沈んだ状態が続きます。朝起きた時が最もつらく、夕方になると少し楽になるという日内変動が見られることもあります。また、これまで楽しめていた趣味や活動に対して興味や喜びを完全に感じられなくなります。テレビを見ても内容が頭に入らない、好きだった音楽を聴いても何も感じないといった状態が続きます。

思考面では、集中力や決断力の著しい低下が見られます。簡単な選択さえできなくなり、何を食べるか、何を着るかといった日常的な判断にも時間がかかるようになります。自分には価値がないという強い罪責感や、自分を過度に責める考えが頭から離れなくなることもあります。さらに症状が進むと、妄想的な考えが現れることもあり、不治の病にかかっているという心気妄想、大きな罪を犯したという罪業妄想、お金がないという貧困妄想などが出現することがあります。

身体的な症状の悪化

うつ病の症状がひどい時には、身体面にも深刻な影響が現れます。睡眠障害は最も顕著な症状の一つで、夜中に何度も目が覚める中途覚醒、朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒、なかなか寝付けない入眠障害などが起こります。反対に、一日中眠り続けてしまう過眠の状態になる方もいます。

食欲の変化も深刻です。食べることへの興味がなくなり、体重が急激に減少することがあります。逆に過食になり、体重が増加するケースもあります。倦怠感や疲労感が強く、体を動かすことが億劫になり、朝起き上がることすら困難になることもあります。頭痛、肩こり、腰痛、消化器症状などの身体的な不調も現れやすく、内科を受診しても原因がわからないこともあります。

行動面での変化

うつ病の症状がひどくなると、行動面でも顕著な変化が現れます。精神運動制止と呼ばれる状態では、動作が遅くなり、話し方もゆっくりになります。口数が減り、表情も乏しくなります。反対に、落ち着きがなくなり、じっとしていられない焦燥感に駆られることもあります。

外出を避け、人との接触を極端に避けるようになります。仕事や学校に行けなくなり、家事や身の回りのことも手につかなくなります。入浴や着替えなどの基本的な生活習慣も乱れ、部屋が散らかった状態になることもあります。このような状態が続くと、社会生活や対人関係にも大きな影響を及ぼします。

うつ病の重症度と急性期の特徴

うつ病は症状の程度によって、軽度、中等度、重度に分類されます。症状がひどい時は重度のうつ病に該当することが多く、適切な治療がより重要になります。また、うつ病の経過において、症状が最も強く現れる時期を急性期と呼びます。

重度うつ病の診断基準

うつ病の診断には、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)という国際的な診断基準が用いられます。うつ病と診断されるためには、抑うつ気分または興味・喜びの減退のいずれかを含む9つの症状のうち5つ以上が2週間以上続き、日常生活に支障をきたしていることが必要です。重度うつ病では、これらの症状がより強く現れ、日常生活のほぼすべての面で著しい障害が生じます。

重度うつ病の特徴として、自発性の著しい低下があります。自分から何かをしようという意欲がほとんどなくなり、促されないと食事や入浴さえできなくなることがあります。また、希死念慮(死にたいという考え)が強くなり、自殺について具体的に考えるようになることもあります。このような状態では、専門的な医療介入が不可欠です。

急性期の特徴と期間

うつ病の治療過程は、急性期、回復期、再発予防期の3つの段階に分けられます。急性期はうつ病と診断されてから約1〜3か月の期間を指し、症状が最も強く現れる時期です。この時期は、十分な休養をとり、心身を休めることが最も重要です。

急性期には、ストレスとなる原因からできるだけ離れて、疲れてしまった心身の休養に専念することが大切です。症状が重い場合は、日常生活にも支障が生じている可能性が高いため、入院での治療が必要となることもあります。この時期の治療の中心は休養と薬物療法であり、無理に活動しようとすることは症状を悪化させる可能性があります。

症状の波と回復の見通し

うつ病の回復は、一直線に良くなるわけではありません。良くなったり悪くなったりという小さな波をもちながら、階段をゆっくりと1段ずつ上るように改善していきます。症状がひどい時期があっても、適切な治療を続けることで多くの方が寛解(症状がほとんどなくなる状態)を迎えることができます。

回復期には、少しずつ症状が落ち着くとともに、意欲や気力も次第に戻っていきます。ただし、この時期も症状の波があり、調子が良い日と悪い日が交互に現れることがあります。焦らず、医師の指示に従って治療を継続することが大切です。

うつ病の症状がひどい時にやるべきこと

うつ病の症状がひどい時には、まず自分の状態を正しく認識し、適切な対処をとることが重要です。無理をせず、自分を守るための行動をとりましょう。

専門家への相談と受診

症状がひどい時こそ、専門家の力を借りることが大切です。精神科や心療内科を受診し、現在の状態を正確に伝えましょう。すでに通院中の方は、予約日を待たずに主治医に連絡することをお勧めします。症状の変化を伝えることで、治療方針の見直しや薬の調整が行われることがあります。

医療機関を受診すべきかどうかわからない場合は、地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどの公的な相談窓口を利用することもできます。これらの機関では、電話相談や来所相談が可能で、こころの専門医の意見を聞くこともできます。厚生労働省が運営する「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)に電話すると、お住まいの地域の相談窓口につながります。

十分な休養をとる

うつ病の症状がひどい時は、とにかく休養をとることが最も重要です。うつ病は心身のエネルギーが枯渇した状態であり、回復のためにはしっかりと休むことが必要です。休養に対して焦りや罪悪感を覚える方もいますが、うつ病は骨折などのケガと同様に、安静にする期間を作る必要がある病気です。

仕事や学校を休む必要がある場合は、有給休暇や休職制度の利用を検討しましょう。自宅で休養する際は、できるだけストレスの原因から離れ、静かな環境で過ごすことが大切です。家事や育児などの負担がある場合は、家族や周囲の人に協力を求めることも必要です。

処方された薬を正しく服用する

うつ病の治療において、抗うつ薬は重要な役割を果たします。抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの働きを調整し、症状の改善を促します。症状がひどい時こそ、処方された薬を医師の指示通りに服用することが大切です。

抗うつ薬の効果が現れるまでには、通常2週間程度かかります。すぐに効果が感じられなくても、自己判断で服用を中断せず、継続することが重要です。副作用が気になる場合は、主治医に相談しましょう。また、症状が良くなったと感じても、自己判断で薬を止めないでください。再発のリスクが高まる可能性があります。

周囲の人に状況を伝える

うつ病の症状がひどい時は、一人で抱え込まないことが大切です。信頼できる家族や友人に自分の状態を伝え、サポートを求めましょう。うつ病は誰にでもかかる可能性のある病気であり、助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。

職場にうつ病のことを伝えることに抵抗がある方もいますが、休職が必要な場合は上司や人事担当者に状況を説明することが必要です。多くの企業では、メンタルヘルスに関する相談窓口や支援制度を設けています。産業医や社内カウンセラーに相談することで、適切なサポートを受けられることもあります。

うつ病の症状がひどい時にやってはいけないこと

うつ病の症状がひどい時には、症状を悪化させる可能性のある行動を避けることも重要です。以下のような行動は控えるようにしましょう。

重要な決断を下さない

うつ病の症状がひどい時は、判断力や思考力が低下しています。退職、離婚、引っ越しなどの人生に大きな影響を与える決断は、この時期に行うべきではありません。うつ病の状態では、物事を悲観的に捉えやすく、冷静な判断が困難になっています。重要な決断は、症状が回復してから改めて検討するようにしましょう。

無理に気晴らしをしない

症状が安定していない時期に、無理に趣味や外出などによる気晴らしをすることは避けましょう。うつ病の症状が強い状態では、通常なら楽しめるはずの活動も楽しめないことが多く、かえって疲労感が増すことがあります。調子が少し戻った時に無理をすると、その後に調子が悪くなることもあります。特に急性期では休養を優先し、症状が安定してきたタイミングで少しずつ活動範囲を広げていくことが大切です。

アルコールに頼らない

つらい気持ちを紛らわすためにアルコールを摂取することは避けてください。アルコールは一時的に気分を楽にするように感じられることがありますが、実際には抑うつ状態を悪化させる作用があります。また、抗うつ薬の効果を弱めたり、副作用を強めたりする可能性もあります。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、アルコールはうつ病の症状を悪化させる可能性があると警告しています。

自分を責めすぎない

うつ病になったことや、思うように回復しないことを自分のせいだと責めないでください。うつ病は心の弱さや性格の問題ではなく、脳の機能的な不調によって起こる病気です。自分を責めることは症状を悪化させる可能性があります。うつ病は適切な治療によって回復できる病気であることを忘れないでください。

うつ病の症状がひどい時の治療法

うつ病の治療は、休養、薬物療法、精神療法(心理療法)を組み合わせて行われます。症状がひどい時は、休養と薬物療法が治療の中心となります。

休養の重要性

うつ病の治療において、休養は最も基本的かつ重要な要素です。うつ病は心身のエネルギーが著しく低下した状態であり、そのエネルギーを回復させるためには十分な休養が不可欠です。特に症状がひどい急性期では、ストレスの原因から離れ、疲れた心身を休めることに専念することが大切です。

休養をとる際には、睡眠と覚醒のリズムを整えることも重要です。決まった時間に起きる、日中は適度に光を浴びる、夜は暗い環境で過ごすなど、生活リズムを整える工夫をしましょう。ただし、無理に規則正しい生活を送ろうとしてストレスを感じる必要はありません。まずは心身を休めることを最優先にしてください。

薬物療法

うつ病の薬物療法では、主に抗うつ薬が使用されます。現在、日本で広く使用されている抗うつ薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などです。これらの薬は、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬といった古いタイプの薬に比べて副作用が少ないのが特徴です。

抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの働きを調整し、症状の改善を促します。効果が現れるまでに通常2週間程度かかりますが、研究によると、抗うつ薬を使い始めて2週間で約半数の方が効果を感じ始め、4週間で約8割、6週間で約9割の方が効果を実感するとされています。

抗うつ薬に加えて、症状に応じて睡眠導入剤や抗不安薬(精神安定剤)が併用されることもあります。不眠や強い不安感がある場合、これらの薬によって症状を和らげることができます。薬物療法の効果や副作用には個人差があるため、気になることがあれば主治医に相談することが大切です。

認知行動療法

認知行動療法は、うつ病に対して科学的に効果が実証されている精神療法の一つです。この療法は、ものの考え方や受け取り方(認知)に働きかけて、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりすることを目指します。厚生労働省の研究によると、認知行動療法は薬物療法と同等かそれ以上の効果があり、再発予防にも効果的であることが示されています。

認知行動療法では、つらくなった時に頭に浮かぶ自動思考(瞬間的に浮かぶ考えやイメージ)に焦点を当てます。うつ状態のときは、自分、周囲、将来の3つに悲観的な考えを持ちやすくなります。この認知の偏りを現実に即した柔軟な考え方に修正することで、気分や行動の改善を図ります。

認知行動療法は、原則として30分以上の面接を16〜20回行います。2010年からはうつ病に対する認知行動療法が保険診療の対象となっています。ただし、症状がひどい急性期には認知行動療法よりも休養と薬物療法が優先されることが多く、回復期に入ってから導入されることが一般的です。

入院が必要となるケース

うつ病の症状がひどい場合、外来治療だけでなく入院治療が必要になることがあります。入院することで、24時間体制の医療ケアを受けながら、安全に休養することができます。

入院が検討される状況

入院が必要とされる主な状況として、まず自殺の危険性がある場合が挙げられます。うつ病患者の多くは希死念慮(死にたいという気持ち)を症状として経験しますが、この思いが具体的な自殺企図につながる可能性がある場合は、入院による安全確保が必要です。また、自傷行為のリスクがある場合や、他者に危害を加える可能性がある場合も入院の適応となります。

食事や睡眠がとれなくなり、生活リズムが著しく乱れている場合も入院が検討されます。うつ病による食欲低下が進み、体重が急激に減少している場合や、極度の不眠が続いている場合は、入院することで適切な食事や睡眠の確保が可能になります。また、自宅では十分に休養できない環境にある場合(家庭内のストレスが強い、一人暮らしで孤立しているなど)も、入院によって安静な環境を確保することができます。

入院治療の内容

入院中は、規則正しい生活リズムの中で、薬物療法や精神療法を集中的に受けることができます。医師や看護師が24時間体制で患者の状態を観察し、必要に応じて治療内容を調整します。また、作業療法士やケースワーカーなどの多職種チームによるサポートを受けることもできます。

入院期間は患者の状態によって異なりますが、急性期の治療が一段落し、症状が安定するまでには数週間から数か月かかることがあります。入院後半では、再発予防のための取り組みも行われます。うつ病になったきっかけを振り返り、社会復帰に向けてストレスへの対処法を身につけていきます。

家族や周囲ができるサポート

うつ病の症状がひどい時、家族や周囲の人のサポートは回復に大きな役割を果たします。ただし、接し方によっては患者を追い詰めてしまうこともあるため、適切な関わり方を知っておくことが大切です。

傾聴と共感

うつ病の患者に対しては、まず話を聴くことが大切です。患者が話したいと思った時に、批判や評価をせずにじっくりと耳を傾けましょう。アドバイスや励ましの言葉よりも、「つらかったね」「大変だったね」という共感の言葉の方が心に響くことがあります。話を聴くだけで、患者は「一人ではない」という安心感を得ることができます。

励ましの言葉に注意する

うつ病の患者に対して「がんばれ」「気持ちの問題だ」「もっとしっかりしろ」といった励ましの言葉は避けるべきです。うつ病の患者は、すでに自分なりに頑張っているにもかかわらず、それ以上のことができない状態にあります。このような言葉は、患者をさらに追い詰め、自分を責める気持ちを強めてしまう可能性があります。

また、「早く良くなってね」「いつ頃治るの」といった回復を急かす言葉も控えましょう。うつ病の回復には時間がかかり、焦りは症状を悪化させることがあります。患者のペースを尊重し、長期的な視点でサポートすることが大切です。

希死念慮への対応

患者が「死にたい」「消えてしまいたい」といった発言をした場合は、真剣に受け止める必要があります。このような発言を否定したり、話題を変えようとしたりせず、まずは「そう思っているんだね」と受け止めましょう。そして、できるだけ早く主治医や専門家に相談してください。

自殺の危険性が高いと感じた場合は、患者を一人にしないようにし、専門家に助けを求めましょう。緊急の場合は、救急車を呼ぶか、最寄りの救急病院を受診してください。家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りることが大切です。

家族自身のケア

うつ病の患者をサポートする家族も、精神的な負担を抱えやすくなります。患者のケアに専念するあまり、自分自身の健康を損なってしまうことがないよう注意が必要です。家族が健康でいることが、患者の回復を支えるための基盤となります。

家族会やサポートグループに参加することで、同じ境遇の人たちと経験や知識を共有し、適切な対処法を学ぶことができます。また、精神保健福祉センターや保健所などでは、家族向けの相談も受け付けています。一人で抱え込まず、必要に応じて専門家のサポートを受けることをお勧めします。

相談窓口と支援制度の活用

うつ病の症状がひどい時には、さまざまな相談窓口や支援制度を活用することができます。一人で悩まず、適切なサポートを受けることが回復への近道です。

公的な相談窓口

精神保健福祉センターは、各都道府県・政令指定都市に設置されている公的な相談機関です。こころの健康についての相談、精神科医療についての相談、社会復帰についての相談など、精神保健福祉全般にわたる相談を無料で受けることができます。電話相談や面接相談が可能で、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理師などの専門職が対応します。

保健所や保健センターでも、こころの健康に関する相談を受け付けています。医療機関を受診すべきかどうかわからない場合や、近隣の医療機関を紹介してほしい場合にも利用できます。「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)に電話すると、お住まいの地域の相談窓口につながります。

働く人向けの支援

働く人のメンタルヘルスをサポートする窓口として、厚生労働省が運営する「こころの耳」があります。電話やメール、SNSで相談でき、産業カウンセラーが対応します。労働者だけでなく、家族や企業の人事労務担当者からの相談も受け付けています。

うつ病により休職した場合、復職に向けた支援として「リワークプログラム」があります。このプログラムは、医療機関や精神保健福祉センター、障害者職業センターなどで実施されており、復職に向けた生活リズムの調整やストレス対処法の習得などを行います。復職後のフォローも含めた継続的な支援を受けることができます。

経済的な支援制度

うつ病の治療には、さまざまな経済的支援制度を利用することができます。自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、精神科の外来医療費の自己負担が1割になります。申請は市区町村の担当窓口で行います。

傷病手当金は、病気やけがで働けなくなった場合に、健康保険から支給される手当です。うつ病で休職した場合も対象となり、標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月間支給されます。また、障害年金は、うつ病などの精神障害により生活に支障がある場合に受給できる可能性があります。詳しくは年金事務所や市区町村の窓口に相談してください。

回復への道のりと再発予防

うつ病は適切な治療によって回復できる病気ですが、再発しやすいという特徴もあります。回復後も再発を防ぐための取り組みを続けることが大切です。

回復の3つの段階

うつ病の回復は、急性期、回復期、再発予防期の3つの段階を経て進みます。急性期(1〜3か月程度)は症状が最も強い時期で、休養と薬物療法が中心となります。回復期(4〜6か月程度)は徐々に症状が改善していく時期で、薬物療法を継続しながら少しずつ活動範囲を広げていきます。再発予防期(1年以上)は症状がほぼ落ち着いた時期で、再発を防ぐために治療を継続します。

これらの期間はあくまで目安であり、個人差があります。焦らず、医師と相談しながら自分のペースで回復を進めていくことが大切です。

薬の継続と減薬のタイミング

うつ病の治療において重要なことの一つは、「元気が回復してもすぐに薬は止めない」ということです。症状が良くなると自己判断で薬を止めてしまう方がいますが、これは再発のリスクを高めます。薬を減らしていくタイミングは主治医とよく相談して決める必要があります。

一般的に、症状が改善してから少なくとも6か月〜1年以上は薬物療法を継続することが推奨されています。うつ病を繰り返している方は、さらに長期間の継続が必要な場合もあります。長期の服用に不安を感じることもあるかもしれませんが、心配な点は主治医に相談しながら、根気強く治療を続けることが大切です。

再発予防のための生活習慣

再発を予防するためには、ストレスとの付き合い方を見直すことが重要です。うつ病になったきっかけを振り返り、同じような状況に陥らないための対策を考えましょう。認知行動療法などの精神療法を通じて、自分の思考パターンや行動パターンを見直すことも効果的です。

規則正しい生活リズムを維持することも再発予防に役立ちます。十分な睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけ、適度な運動を取り入れましょう。また、趣味や楽しみの時間を持つこと、信頼できる人とのつながりを大切にすることも、こころの健康を保つために重要です。無理をしすぎず、自分のペースで生活できるような環境を整えていくことが、長期的な回復と再発予防につながります。

よくある質問

うつ病の症状がひどい時、すぐに病院に行くべきですか?

うつ病の症状がひどい時は、できるだけ早く専門医を受診することをお勧めします。特に、日常生活に著しい支障が出ている場合、食事や睡眠がとれない場合、死にたいという気持ちがある場合は、速やかに精神科や心療内科を受診してください。すでに通院中の方は、予約日を待たずに主治医に連絡し、状態の変化を伝えることが大切です。受診に迷う場合は、精神保健福祉センターや保健所などの公的相談窓口に相談することもできます。

うつ病の薬を飲んでも効かない場合はどうすればいいですか?

抗うつ薬は効果が現れるまでに通常2〜4週間かかります。すぐに効果が感じられなくても、自己判断で服用を中断せず、継続することが重要です。4〜6週間服用しても改善が見られない場合は、主治医に相談してください。薬の種類の変更や増量、別の薬との併用など、治療方針の見直しが行われることがあります。また、抗うつ薬だけでなく、認知行動療法などの精神療法を併用することで、治療効果が高まることもあります。

うつ病の症状がひどい家族をどうサポートすればいいですか?

うつ病の症状がひどい家族に対しては、まず話を聴くことが大切です。批判や評価をせず、共感的な態度で接してください。「がんばれ」「気持ちの問題だ」といった励ましの言葉は避け、「つらいね」「大変だったね」と寄り添う姿勢を心がけましょう。また、回復を急かさず、本人のペースを尊重することが重要です。もし「死にたい」といった発言があった場合は、真剣に受け止め、できるだけ早く専門家に相談してください。家族自身も疲弊しやすいため、精神保健福祉センターなどで相談したり、家族会に参加したりすることをお勧めします。

うつ病で仕事を休む場合、どのような制度が利用できますか?

うつ病で仕事を休む場合、いくつかの支援制度を利用できます。まず、傷病手当金は健康保険の被保険者が病気やけがで働けなくなった場合に支給され、標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月間支給されます。また、自立支援医療制度を利用すると、精神科の外来医療費の自己負担が1割に軽減されます。復職に向けては、医療機関や障害者職業センターなどで実施されるリワークプログラムを利用することもできます。詳しくは、職場の人事担当者や社会保険労務士、精神保健福祉センターなどに相談してください。

うつ病はどのくらいで治りますか?

うつ病の回復には個人差がありますが、一般的には急性期が1〜3か月、回復期が4〜6か月、再発予防期が1年以上とされています。つまり、症状が落ち着くまでに数か月、再発を防ぐための治療を含めると1年以上かかることが多いです。ただし、これはあくまで目安であり、軽症で早期に治療を開始した場合はより早く回復することもあります。大切なのは焦らないことです。うつ病の回復は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、階段を少しずつ上るように進んでいきます。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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