皮膚科のおでき治療完全ガイド|原因から治療法、予防まで専門医が解説

はじめに

「おでき」は誰もが一度は経験したことがある身近な皮膚トラブルです。赤く腫れて痛みを伴うおできは、日常生活に支障をきたすこともあります。しかし、「おでき」という言葉は一般的な呼び方であり、医学的にはさまざまな皮膚疾患が含まれています。

本記事では、おできの正体、原因、症状、そして適切な治療法について、専門医の視点から詳しく解説します。また、おできと間違えやすい疾患についても触れ、正しい診断と治療の重要性をお伝えします。

おできとは?医学的な定義と種類

おできの医学的定義

一般的に「おでき」と呼ばれるものは、医学的には毛嚢炎(もうのうえん)癤(せつ)、**癰(よう)**などの皮膚感染症を指します。これらは主に細菌感染によって引き起こされる皮膚の炎症性疾患です。

おできの種類と特徴

1. 毛嚢炎(folliculitis)

毛嚢炎は、毛穴の奥にある毛包(毛嚢)に細菌が感染して起こる炎症です。毛穴を中心として赤い丘疹や小さな膿疱ができます。比較的軽症で、自然治癒することも多いのが特徴です。

主な特徴:

  • 毛穴を中心とした赤い発疹
  • 直径5mm程度の小さな膿疱
  • 軽い痛みやかゆみ
  • 複数箇所に同時発生することがある

2. 癤(せつ)

癤は、毛嚢炎がさらに深部に進行し、毛包とその周囲の皮下組織に炎症が広がった状態です。一般的に「おでき」といえば、この癤を指すことが多いです。

主な特徴:

  • 直径1~3cm程度の赤く腫れた硬結
  • 中心部に膿が溜まる
  • 強い痛みと圧痛
  • 発熱を伴うこともある
  • 自然に破れて膿が出ることがある

3. 癰(よう)

癰は、複数の癤が融合して、より広範囲に炎症が広がった状態です。重症化しやすく、全身症状を伴うこともあります。

主な特徴:

  • 直径5cm以上の大きな腫瘤
  • 複数の膿栓が見られる
  • 激しい痛みと発赤
  • 発熱、倦怠感などの全身症状
  • 糖尿病患者に発症しやすい

おできの好発部位

おできは体のどこにでもできる可能性がありますが、特に以下の部位に発症しやすい傾向があります。

  • 顔面:鼻、頬、あごなど
  • 首・うなじ:衣服や髪の毛で刺激を受けやすい部位
  • 背中:皮脂分泌が多く、手が届きにくい部位
  • 臀部:座る際の圧迫や摩擦が加わる部位
  • 腋窩(わきの下):汗や摩擦の影響を受けやすい
  • 大腿部:摩擦や汗の影響を受けやすい

おできの原因|なぜできるのか?

主な原因菌

おできの原因は、ほとんどの場合**黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)**です。この菌は健康な人の皮膚や鼻腔にも常在していますが、何らかの要因で皮膚のバリア機能が低下すると、毛穴から侵入して感染を引き起こします。

黄色ブドウ球菌以外にも、以下のような細菌が原因となることがあります。

  • 表皮ブドウ球菌
  • 連鎖球菌
  • 緑膿菌(温水プールなどで感染する場合)

おできができやすくなる要因

1. 皮膚のバリア機能の低下

  • 外傷や擦り傷:カミソリ負けや衣服による摩擦
  • 乾燥肌:バリア機能の低下
  • 皮膚疾患:アトピー性皮膚炎など

2. 不衛生な環境

  • 汗や汚れが溜まった状態
  • 不潔な衣服の着用
  • 入浴頻度の低下

3. 免疫力の低下

  • 糖尿病:高血糖により免疫機能が低下
  • ステロイド使用:長期使用による免疫抑制
  • 栄養不良:ビタミン不足など
  • ストレスや疲労:免疫機能の低下
  • 加齢:免疫機能の自然な低下

4. 皮脂分泌の増加

  • 思春期のホルモン変化
  • 脂性肌
  • 高温多湿の環境

5. 生活習慣

  • 不規則な生活:睡眠不足など
  • 偏った食生活:脂質や糖質の過剰摂取
  • 運動不足:代謝の低下

特殊なケース

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染

通常の抗生物質が効きにくいMRSAによるおできも増加しています。病院での感染だけでなく、市中感染型MRSA(CA-MRSA)も問題となっています。

再発性おでき

繰り返しおできができる場合は、鼻腔内に黄色ブドウ球菌が保菌されている可能性があります。この場合、鼻腔内の除菌治療が必要になることもあります。

おできの症状と経過

初期症状

おできの発症初期には、以下のような症状が現れます。

  1. 発赤:皮膚が赤くなる
  2. 腫脹:患部が盛り上がる
  3. 熱感:患部に熱を持つ
  4. 痛み:触れると痛い、または自発痛

進行期の症状

感染が進行すると、以下のような変化が見られます。

  1. 膿瘍形成:中心部に白色または黄色の膿が見える
  2. 硬結:周囲が硬く腫れる
  3. 疼痛増強:ズキズキとした拍動性の痛み
  4. リンパ節腫脹:近くのリンパ節が腫れることがある

重症化のサイン

以下のような症状がある場合は、重症化している可能性があり、早急な医療機関受診が必要です。

  • 発熱:38度以上の高熱
  • 悪寒・戦慄:震えを伴う寒気
  • 赤い線:患部から延びる赤い線(リンパ管炎)
  • 広範囲の発赤・腫脹:感染が広がっている徴候
  • 全身倦怠感:体がだるい、力が入らない

自然経過

軽症の場合、おできは以下のような経過をたどることがあります。

  1. 発症:3~5日で膿瘍が成熟
  2. 自壊:自然に破れて膿が排出
  3. 治癒:1~2週間で徐々に治癒

ただし、自然治癒を待つことで以下のリスクがあります。

  • 痛みが長期間続く
  • 瘢痕(傷跡)が残る
  • 感染が深部や周囲に広がる
  • 敗血症などの重篤な合併症

おできと間違えやすい皮膚疾患

粉瘤(アテローム)

おできと最も間違えやすい疾患が**粉瘤(ふんりゅう)**です。アイシークリニック上野院では、粉瘤の治療を専門的に行っており、多くの患者様が「おでき」だと思って来院されます。

粉瘤の特徴

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に角質や皮脂が溜まった良性腫瘍です。

おできとの違い:

特徴おでき(癤)粉瘤
原因細菌感染袋状の構造物の形成
中心部毛穴黒い開口部(へそ)
経過1~2週間で治癒自然治癒しない
再発同じ場所には起こりにくい袋を取らないと再発
臭い通常なし独特の悪臭(炎症時)
治療抗生物質が有効手術による摘出が必要

炎症性粉瘤(感染性粉瘤)

粉瘤に細菌感染が起こると、おできと非常に似た症状を呈します。赤く腫れ、痛みを伴い、膿が出ることもあります。この状態を炎症性粉瘤または感染性粉瘤と呼びます。

炎症性粉瘤の場合、まず抗生物質で炎症を抑え、炎症が落ち着いてから袋の摘出手術を行うのが一般的です。

その他の鑑別疾患

1. 尋常性ざ瘡(ニキビ)

思春期から20代に多く見られる毛穴の炎症です。おできより小さく、顔面に多発する傾向があります。

2. せつ腫症

おできが慢性的に繰り返し発症する状態です。糖尿病や免疫不全などの基礎疾患が関与していることがあります。

3. 化膿性汗腺炎

腋窩や鼠径部など、アポクリン汗腺が多い部位に繰り返し膿瘍や結節ができる慢性炎症性疾患です。

4. 脂肪腫

柔らかい皮下腫瘤で、痛みは通常ありません。粉瘤と区別が必要です。

5. リンパ節炎

リンパ節の腫れが皮膚表面から触れる場合、おできと間違えることがあります。

正確な診断の重要性

これらの疾患は、見た目が似ていても治療法が大きく異なります。自己判断せず、皮膚科専門医による正確な診断を受けることが重要です。

特に粉瘤の場合、抗生物質だけでは根本的な治療にならず、必ず手術による袋の摘出が必要です。「おできが治らない」「何度も同じ場所にできる」という場合は、粉瘤の可能性が高いため、早めに皮膚科を受診しましょう。

おできの治療方法

おできの治療は、症状の程度や進行度によって選択されます。大きく分けて保存的治療(薬物療法)と外科的治療があります。

保存的治療(薬物療法)

1. 抗生物質の内服

おできの主な原因菌である黄色ブドウ球菌に効果的な抗生物質を使用します。

よく使用される抗生物質:

  • セファロスポリン系(セファレキシン、セフカペンピボキシルなど)
  • ペニシリン系(アモキシシリンなど)
  • マクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)

**内服期間:**通常5~7日間 **注意点:**処方された期間はしっかり飲み切ることが重要です。途中でやめると耐性菌が生まれる可能性があります。

2. 抗生物質の外用

軽症例や初期段階では、外用薬のみで治療することもあります。

代表的な外用薬:

  • フシジン酸ナトリウム軟膏
  • ナジフロキサシン軟膏
  • ゲンタマイシン軟膏

3. 消炎鎮痛剤

痛みが強い場合は、鎮痛剤を併用します。

  • ロキソプロフェン
  • アセトアミノフェン

4. 保存的治療の適応

以下のような場合は、保存的治療で経過観察します。

  • 小さな毛嚢炎
  • 膿瘍形成前の初期段階
  • 軽度の癤
  • 全身状態が良好な場合

外科的治療

1. 切開排膿

膿瘍が形成されている場合、最も効果的な治療法は切開排膿です。

手順:

  1. 局所麻酔を行う
  2. 膿瘍の中心部にメスで小さな切開を加える
  3. 貯留している膿を排出する
  4. 必要に応じて洗浄する
  5. ガーゼを挿入し、開放創とする

メリット:

  • 即効性がある(痛みが速やかに軽減)
  • 治癒期間が短縮される
  • 合併症のリスクが減少

術後管理:

  • 毎日の処置が必要(ガーゼ交換)
  • 抗生物質の内服を併用
  • 創部の清潔保持

2. 外科的切除

繰り返しおできができる場合や、大きな癰の場合は、病巣を含めた切除が必要になることがあります。

MRSA感染の場合の治療

通常の抗生物質が効かないMRSAによるおできの場合、特別な治療が必要です。

使用される抗生物質:

  • バンコマイシン(点滴)
  • リネゾリド(内服または点滴)
  • ST合剤(内服)

鼻腔内保菌の除菌: ムピロシン軟膏を鼻腔内に塗布して、保菌状態を解除します。

入院治療が必要な場合

以下のような場合は、入院による治療が必要です。

  • 広範囲の癰
  • 顔面の癤(海綿静脈洞血栓症のリスク)
  • 高熱や全身症状を伴う場合
  • 糖尿病などの基礎疾患がある場合
  • 免疫抑制状態にある場合

治療期間の目安

  • 軽症の毛嚢炎:3~5日
  • :1~2週間
  • 癰や重症例:2~4週間
  • 切開排膿後:1~2週間(創部が閉鎖するまで)

アイシークリニック上野院での治療

当院の特徴

アイシークリニック上野院は、日帰り手術を専門とするクリニックとして、おできや粉瘤などの皮膚・皮下腫瘍の治療に豊富な実績があります。

1. 専門性の高い診断

  • 皮膚科専門医による正確な診断
  • エコー検査による詳細な評価
  • おできと粉瘤の適切な鑑別

2. 日帰り手術対応

  • 局所麻酔による切開排膿
  • 粉瘤の摘出手術
  • 短時間で終わる低侵襲手術

3. 傷跡に配慮した治療

  • 形成外科的な縫合技術
  • 目立ちにくい傷跡への配慮
  • 術後のケア指導

診療の流れ

ステップ1:診察・診断

まず、患部の状態を詳しく診察します。必要に応じてエコー検査を行い、おできなのか粉瘤なのか、他の疾患なのかを正確に診断します。

ステップ2:治療方針の決定

患者様の症状や生活スタイルに合わせて、最適な治療方針を提案します。

  • 保存的治療で経過観察
  • 切開排膿
  • 手術による摘出(粉瘤の場合)

ステップ3:治療

日帰り手術が可能な症例では、その日のうちに処置を行うことができます。

ステップ4:術後フォロー

治療後の経過観察や創部のケアまで、しっかりとサポートします。

粉瘤治療における当院の強み

おできだと思って受診される患者様の中には、実は粉瘤であるケースが少なくありません。当院では、粉瘤の日帰り手術を専門的に行っており、以下の特徴があります。

  • くり抜き法(へそ抜き法):小さな傷で済む低侵襲手術
  • 炎症性粉瘤への対応:緊急的な切開排膿から根治手術まで
  • 再発予防:袋の完全摘出による確実な治療

受診のタイミング

以下のような症状がある場合は、早めの受診をお勧めします。

  • 痛みが強く、日常生活に支障がある
  • 赤く腫れてきた
  • 熱を持っている
  • 何度も同じ場所にできる
  • 大きくなってきた
  • 顔面にできた

早期に適切な治療を受けることで、痛みの軽減、治癒期間の短縮、傷跡の最小化が期待できます。

おできの予防法

おできは予防することが可能です。日常生活の中で以下のポイントに気をつけましょう。

1. 皮膚の清潔保持

入浴・シャワー

  • 毎日入浴またはシャワーを浴びる
  • 特に汗をかいた後は早めに洗い流す
  • 刺激の少ない石鹸を使用する
  • 洗いすぎに注意(皮脂を取りすぎると逆効果)

洗顔

  • 1日2回、朝晩の洗顔
  • ゴシゴシこすらず、優しく洗う
  • ぬるま湯で丁寧にすすぐ

2. 皮膚のバリア機能を保つ

保湿ケア

  • 入浴後は速やかに保湿
  • 乾燥しやすい季節は特に注意
  • 自分の肌に合った保湿剤を選ぶ

紫外線対策

  • 日焼け止めの使用
  • 帽子や日傘の活用
  • 過度な日焼けは避ける

3. 適切なスキンケア

カミソリの使用

  • 清潔なカミソリを使用
  • シェービングクリームを使う
  • 毛の流れに沿って優しく剃る
  • 使用後は十分に洗浄・乾燥

化粧品

  • 肌に合った製品を選ぶ
  • 化粧はしっかり落とす
  • 古い化粧品は使わない

4. 衣服の選択

  • 通気性の良い素材を選ぶ(綿など)
  • きつすぎる衣服は避ける
  • 汗をかいたら着替える
  • 清潔な衣服を着用する

5. 生活習慣の改善

食生活

  • バランスの取れた食事
  • ビタミンB群、ビタミンCを意識的に摂取
  • 脂質・糖質の過剰摂取を避ける
  • 十分な水分摂取

睡眠

  • 1日7~8時間の睡眠
  • 規則正しい睡眠リズム
  • 良質な睡眠環境

ストレス管理

  • 適度な運動
  • リラックスできる時間を持つ
  • 趣味や娯楽を楽しむ

6. 基礎疾患の管理

糖尿病

  • 血糖値のコントロール
  • 定期的な通院と検査
  • 食事療法・運動療法の実践

その他の疾患

  • アトピー性皮膚炎などの適切な治療
  • 免疫抑制剤使用中は特に注意

7. 再発予防

おできを繰り返す場合、以下の対策が有効です。

鼻腔内の除菌

黄色ブドウ球菌が鼻腔内に保菌されている場合があります。医師の指示のもと、ムピロシン軟膏を使用した除菌治療を行うことがあります。

クロルヘキシジン入り石鹸

抗菌作用のある石鹸を使用することで、皮膚表面の細菌数を減らすことができます。

免疫力の向上

  • バランスの良い栄養摂取
  • 適度な運動
  • 十分な休息

おできに関するよくある質問

Q1. おできは潰しても良いですか?

A. 自分で潰すことは絶対に避けてください。以下のリスクがあります。

  • 感染が深部や周囲に広がる
  • 瘢痕(傷跡)が残る
  • 菌血症や敗血症のリスク
  • 特に顔面では、海綿静脈洞血栓症という重篤な合併症の危険

膿が溜まっている場合は、医療機関で適切な切開排膿を受けましょう。

Q2. 市販薬で治療できますか?

A. 軽度の毛嚢炎であれば、抗菌作用のある外用薬(オロナイン軟膏など)で改善することもあります。しかし、以下の場合は必ず医療機関を受診してください。

  • 痛みが強い
  • 大きく腫れている
  • 発熱がある
  • 市販薬で改善しない

Q3. おできと粉瘤の見分け方は?

A. 以下のポイントで見分けることができます。

粉瘤の特徴:

  • 中心に黒い点(開口部)がある
  • 押すと白いドロッとした内容物が出る(悪臭あり)
  • 痛みがない(炎症を起こしていない場合)
  • 徐々に大きくなる
  • 同じ場所に何度もできる

確実な診断は医師による診察が必要です。

Q4. 顔にできたおできは特に注意が必要ですか?

A. はい、顔面のおできは特に注意が必要です。特に鼻や上唇、目の周りにできたおできは、以下のリスクがあります。

  • 海綿静脈洞血栓症:顔面の静脈から頭蓋内の静脈洞に感染が波及する重篤な合併症
  • 眼窩蜂窩織炎:目の周りの組織に感染が広がる

顔面のおできは自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。

Q5. おできは人にうつりますか?

A. おできそのものは直接うつることは少ないですが、原因菌である黄色ブドウ球菌は接触によって他の人に伝播する可能性があります。特にMRSAの場合は注意が必要です。

予防策:

  • 患部に触れた手は石鹸でよく洗う
  • タオルや衣服の共用を避ける
  • 膿が付着したガーゼは適切に処理する

Q6. 糖尿病だとおできができやすいですか?

A. はい、糖尿病患者さんはおできができやすく、また重症化しやすい傾向があります。

理由:

  • 高血糖により白血球の機能が低下
  • 皮膚の血流が悪くなる
  • 末梢神経障害により気づきにくい

糖尿病の方は、特に足などにおできができた場合、早めに医療機関を受診することが重要です。

Q7. おできを予防するサプリメントはありますか?

A. 特定のサプリメントでおできを完全に予防することは難しいですが、免疫力の維持に以下が役立つ可能性があります。

  • ビタミンB群(特にB2、B6)
  • ビタミンC
  • 亜鉛
  • プロバイオティクス

ただし、サプリメントに頼るよりも、バランスの良い食事と規則正しい生活習慣が最も重要です。

Q8. 妊娠中でもおできの治療はできますか?

A. 妊娠中でも治療は可能ですが、使用できる抗生物質に制限があります。必ず医師に妊娠していることを伝えてください。

妊娠中でも使用できる抗生物質:

  • ペニシリン系
  • セファロスポリン系

切開排膿などの外科的処置は、妊娠中でも安全に行えます。

Q9. 子どもにできたおできの対処法は?

A. 子どもの場合も基本的な対処法は大人と同じですが、以下の点に注意が必要です。

  • 触ったり潰したりしないよう見守る
  • 患部を清潔に保つ
  • 痛がる場合は早めに受診
  • 学校や保育園での接触感染に注意

子どもは患部を気にして触ってしまいがちなので、絆創膏やガーゼで保護することも有効です。

Q10. スポーツをしても大丈夫ですか?

A. おできの状態によります。

控えた方が良い場合:

  • 痛みが強い
  • 炎症が激しい
  • 患部が摩擦を受けやすい場所にある
  • 発熱などの全身症状がある

可能な場合:

  • 軽度の毛嚢炎
  • 治療が奏功して症状が軽減している
  • 患部を適切に保護できる

激しい運動は、汗や摩擦によって悪化する可能性があるため、医師に相談してください。

おできの合併症

適切な治療を受けないと、以下のような合併症を起こす可能性があります。

1. 蜂窩織炎(ほうかしきえん)

皮下組織に細菌感染が広がった状態です。広範囲に発赤、腫脹、疼痛が生じ、発熱を伴うことがあります。

2. リンパ管炎・リンパ節炎

感染がリンパ管に沿って広がり、赤い線状の発赤(リンパ管炎)や、リンパ節の腫脹(リンパ節炎)を起こします。

3. 敗血症

細菌が血液中に入り込んで全身に広がる重篤な状態です。高熱、悪寒、血圧低下などを起こし、生命に危険が及ぶこともあります。

4. 海綿静脈洞血栓症

顔面、特に鼻周囲のおできから感染が頭蓋内に波及する稀ですが重篤な合併症です。頭痛、視力障害、意識障害などを起こします。

5. 骨髄炎

感染が骨にまで達する状態です。特に糖尿病患者さんの足のおできから起こることがあります。

6. 瘢痕形成

不適切な処置や治療の遅れにより、目立つ傷跡が残ることがあります。

これらの合併症を防ぐためにも、早期の適切な治療が重要です。

おできと生活の質(QOL)

おできは、身体的な症状だけでなく、生活の質にも影響を及ぼします。

身体的影響

  • 疼痛:日常動作での痛み
  • 可動制限:関節近くにできた場合の動きづらさ
  • 睡眠障害:夜間の痛みによる不眠

心理的影響

  • 不安:治らないのではないかという心配
  • 恥ずかしさ:見た目への懸念
  • ストレス:繰り返す再発への苛立ち

社会的影響

  • 仕事への影響:集中力の低下、休暇の必要性
  • 対人関係:顔面のおできによる人前への躊躇
  • スポーツ・趣味:活動制限

これらの影響を最小限にするためにも、適切な治療と予防が重要です。

最新の治療動向

おでき治療の分野でも、新しい治療法や知見が報告されています。

1. 光線療法(PDT)

光感受性物質と特定の波長の光を使った治療法で、難治性のニキビやおできに効果が期待されています。

2. バクテリオファージ療法

抗生物質耐性菌に対する新しいアプローチとして、細菌を特異的に攻撃するウイルス(バクテリオファージ)を用いた治療法が研究されています。

3. 免疫療法

繰り返すおできに対して、免疫機能を調整する治療法が研究されています。

4. マイクロバイオーム研究

皮膚の常在菌叢(マイクロバイオーム)のバランスを整えることで、おできの予防につながる可能性が示唆されています。

まとめ

おできは身近な皮膚トラブルですが、適切な診断と治療が重要です。本記事のポイントをまとめます。

重要ポイント

  1. おできの正体:主に黄色ブドウ球菌による毛包とその周囲の感染症
  2. 種類:毛嚢炎、癤、癰の3段階がある
  3. 原因:皮膚バリアの低下、不衛生、免疫力低下など
  4. 鑑別診断:特に粉瘤との区別が重要
  5. 治療:抗生物質と切開排膿が基本
  6. 予防:清潔保持、スキンケア、生活習慣の改善
  7. 注意すべきサイン:発熱、広範囲の発赤、顔面のおでき

受診のすすめ

以下のような場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。

  • 痛みが強く日常生活に支障がある
  • 大きく腫れている
  • 発熱や全身症状がある
  • 顔面にできた
  • 繰り返しできる
  • 市販薬で改善しない
  • 糖尿病などの基礎疾患がある

アイシークリニック上野院からのメッセージ

当院では、おできや粉瘤などの皮膚・皮下の腫瘤に対して、専門的な診断と治療を提供しています。「おできだと思っていたら粉瘤だった」というケースも少なくありません。正確な診断のもと、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案いたします。

日帰り手術にも対応しており、お忙しい方でも通いやすい環境を整えています。おできや皮膚のできものでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

日常生活でできること

おできは予防可能な疾患です。日々のスキンケアと健康的な生活習慣を心がけることで、おできのリスクを大きく減らすことができます。

  • 毎日の清潔保持
  • 適切な保湿
  • バランスの良い食事
  • 十分な睡眠
  • ストレス管理

これらを実践し、健康な肌を保ちましょう。

参考文献

本記事は、以下の信頼できる情報源を参考に作成しました。

  1. 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
    https://www.dermatol.or.jp/qa/
  2. 厚生労働省「感染症情報」
    https://www.mhlw.go.jp/
  3. 国立感染症研究所「MRSA感染症とは」
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/392-mrsa-intro.html
  4. 日本化膿性疾患研究会「化膿性皮膚疾患の診療ガイドライン」
  5. 日本形成外科学会「皮膚・皮下腫瘍の診療」
    https://www.jsprs.or.jp/
  6. 東京都感染症情報センター「黄色ブドウ球菌感染症」
    https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/

※本記事の内容は2025年11月時点の医学的知見に基づいています。診断や治療については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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