はじめに
手のひらや手の甲、指の付け根などに、コロコロとしたしこりができて気になっている方はいらっしゃいませんか。痛みがなく、ゆっくりと大きくなっていくそのしこりは、もしかすると「粉瘤(ふんりゅう)」かもしれません。
粉瘤は正式には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」とも呼ばれ、皮膚の良性腫瘍の中で最も多く見られる疾患のひとつです。全身のどこにでもできる可能性がありますが、手にできた場合は日常生活での使用頻度が高いため、特に気になる方が多いのではないでしょうか。
本記事では、手にできる粉瘤について、その特徴や原因、症状、治療方法まで詳しく解説していきます。手にできたしこりが気になる方、粉瘤の診断を受けた方、治療を検討している方はぜひ参考にしてください。

粉瘤とは何か
粉瘤の基本的な特徴
粉瘤とは、皮膚の下に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってできる良性の腫瘍です。袋の内側は皮膚の表面と同じ構造(表皮)でできており、通常は皮膚の表面から剥がれ落ちるはずの角質が、袋の中で蓄積され続けることで徐々に大きくなっていきます。
粉瘤の大きな特徴として、中央部分に小さな黒い点のような開口部(へそ)が見られることがあります。これは「ブラックヘッド」や「中心陥凹」と呼ばれ、粉瘤を診断する際の重要なポイントとなります。ただし、手にできる粉瘤では、この開口部が目立たないこともあります。
手にできる粉瘤の特徴
手は全身の中でも比較的粉瘤ができにくい部位とされていますが、まったくできないわけではありません。手にできる粉瘤には以下のような特徴があります。
発生しやすい場所
- 手の甲
- 手首周辺
- 指の付け根
- 指と指の間
- 手のひら(まれ)
手のひらは皮膚の構造が他の部位と異なるため、粉瘤は比較的できにくいとされています。一方、手の甲や手首、指の付け根などには発生することがあります。
サイズと成長速度 手にできる粉瘤は、数ミリ程度の小さなものから、数センチに達するものまでさまざまです。成長速度は非常にゆっくりで、数年かけて少しずつ大きくなることが一般的です。急激に大きくなる場合は、炎症を起こしている可能性があります。
手の粉瘤ができる原因
粉瘤形成のメカニズム
粉瘤ができる原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。
1. 毛穴の詰まり 最も一般的な原因と考えられているのが、毛穴や皮膚の開口部が何らかの理由で詰まり、皮膚の一部が内側に入り込んでしまうことです。この入り込んだ皮膚が袋状の構造を作り、その中に角質が蓄積されていきます。
2. 外傷による皮膚の埋没 手は日常生活で最もよく使う部位であり、擦り傷や切り傷などの外傷を受けやすい場所です。傷が治る過程で、皮膚の一部が皮下に埋没してしまい、それが粉瘤の袋を形成することがあります。
3. ピアスや異物の刺激 手首周辺にピアスをしている場合や、職業上、手に継続的な刺激や圧迫が加わる場合、それが引き金となって粉瘤が形成されることがあります。
4. 先天的な要因 まれに、生まれつき皮膚の構造に小さな異常があり、それが粉瘤の発生につながることもあります。
手特有のリスク要因
手は以下のような理由から、粉瘤ができる特有のリスクがあります。
日常的な外傷 手は日常生活で最も外傷を受けやすい部位です。小さな切り傷や擦り傷が繰り返されることで、皮膚の埋没が起こりやすくなります。
職業的な要因
- 手を頻繁に使う職業(美容師、料理人、大工など)
- 手に継続的な圧迫がかかる作業
- 化学物質や洗剤を頻繁に使用する仕事
これらの職業や作業環境では、皮膚のバリア機能が低下したり、微小な外傷が蓄積したりすることで、粉瘤のリスクが高まる可能性があります。
手の粉瘤の症状
初期症状
手にできる粉瘤の初期症状は、多くの場合非常に穏やかです。
小さなしこり 最初は数ミリ程度の小さなしこりとして気づかれます。触るとコロコロと動き、皮膚の下に何かが入っているような感触があります。
痛みがない 炎症を起こしていない粉瘤は、通常痛みを伴いません。押しても特に痛みを感じないことが多いです。
皮膚の色の変化 初期の段階では、皮膚の色はほとんど変化しません。皮膚と同じ色か、やや黄色っぽく見えることがあります。
炎症を起こした場合の症状
粉瘤は細菌感染を起こすと、「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼ばれる状態になります。手は日常的に様々なものに触れるため、細菌感染のリスクが比較的高い部位です。
炎症時の主な症状
- 腫れと赤み: しこりの周囲が赤く腫れ上がり、熱を持ちます
- 強い痛み: 触れなくても痛む、ズキズキとした拍動性の痛みが現れます
- 膿の形成: 内部に膿が溜まり、白っぽく見えることがあります
- 破裂: 皮膚が破れて、強い悪臭を伴う膿や角質が出てくることがあります
- 発熱: 炎症が強い場合、全身の発熱を伴うこともあります
日常生活への影響
手にできる粉瘤は、その位置によって日常生活に様々な影響を及ぼします。
手の動きへの影響
- 手首や指の付け根にできた場合、曲げ伸ばしの際に違和感や痛みを感じることがあります
- 大きくなると、手を握る動作が制限されることがあります
- 関節の近くにできた場合、可動域が制限される可能性があります
仕事や家事への影響
- 物を握る作業が困難になる
- キーボード入力や筆記作業に支障が出る
- 料理や掃除などの家事に不便を感じる
- 手袋の着用が困難になる
美容的な懸念
- 手の甲など目立つ部分にできると、見た目を気にする方も多いです
- 特に女性の場合、ネイルアートやアクセサリーの着用に抵抗を感じることがあります
粉瘤と似た疾患との見分け方
手にできるしこりは、粉瘤以外にもいくつかの疾患が考えられます。正確な診断のためには医療機関での受診が必要ですが、ここでは代表的な疾患との違いを説明します。
ガングリオン
特徴 ガングリオンは、手首や指の関節、腱鞘の近くにできるゼリー状の内容物を含む袋状の腫瘤です。手にできるしこりの中で最も多い疾患のひとつです。
粉瘤との違い
- 触った感じ: ガングリオンは弾力があり、やや柔らかい。粉瘤は硬めでコロコロと動く
- 発生部位: ガングリオンは関節や腱の近くに限定される
- 中心陥凹: ガングリオンには開口部がない
- 透光性: ガングリオンは光を当てると透けて見える(透光性陽性)
脂肪腫
特徴 脂肪腫は、脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。全身のどこにでもできる可能性があります。
粉瘤との違い
- 触った感じ: 脂肪腫は柔らかく、弾力性がある
- 可動性: 脂肪腫はゆっくりと動くが、粉瘤ほど自由に動かない
- 成長速度: 脂肪腫も成長は緩やかだが、粉瘤より大きくなることが多い
- 中心陥凹: 脂肪腫には開口部がない
疣贅(いぼ)
特徴 ウイルス感染によってできる皮膚の盛り上がりです。手にできることも多い疾患です。
粉瘤との違い
- 表面の状態: 疣贅は表面がざらざらしている。粉瘤は滑らか
- 大きさ: 疣贅は通常小さく、数ミリ程度のことが多い
- 深さ: 疣贅は皮膚表面の変化。粉瘤は皮下にできる
- 数: 疣贅は複数個できることが多い
類皮嚢腫
特徴 粉瘤に似た袋状の構造物ですが、先天性のものが多く、内容物に毛髪や皮脂腺なども含まれます。
粉瘤との違い
- 発生時期: 類皮嚢腫は生まれつきか幼少期に気づかれることが多い
- 発生部位: 顔面や頭部に多く、手は比較的まれ
- 内容物: より多様な組織を含む
悪性腫瘍との鑑別
まれなケースですが、皮膚がんなどの悪性腫瘍との鑑別も重要です。
注意すべきサイン
- 急速に大きくなる
- 表面に潰瘍ができる
- 出血しやすい
- 周囲の皮膚に浸潤している
- 硬く、可動性がない
- 痛みやしびれを伴う
これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
手の粉瘤の診断方法
問診と視診
医療機関での診断は、まず問診と視診から始まります。
問診の内容
- いつ頃からしこりに気づいたか
- 大きさの変化はあるか
- 痛みや赤みなどの症状はあるか
- 外傷の既往はあるか
- 家族歴はあるか
視診のポイント
- しこりの大きさ、形状、色
- 中心陥凹(開口部)の有無
- 皮膚の状態(発赤、腫脹、熱感など)
- 周囲の皮膚との境界
触診
触診は粉瘤の診断において非常に重要です。
触診で確認すること
- 硬さと弾力性
- 可動性(皮膚とともに動くか、深部組織に固定されているか)
- 圧痛の有無
- 波動感(内容物が液体か固体か)
- 周囲組織との癒着の有無
粉瘤は通常、皮膚と一体になって動き、周囲の深部組織とは独立して動かせることが特徴です。
画像検査
必要に応じて、以下のような画像検査が行われることがあります。
超音波検査(エコー) 手の粉瘤の診断で最もよく用いられる画像検査です。
- 袋状の構造を確認できる
- 内容物の性状を評価できる
- 周囲組織との関係を把握できる
- 痛みがなく、リアルタイムで観察できる
MRI検査 以下のような場合に検討されます。
- 深部に存在する場合
- 神経や血管との位置関係を詳しく知りたい場合
- 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合
X線検査 粉瘤自体はX線には写りませんが、内部に石灰化がある場合や、骨との関係を見る必要がある場合に行われることがあります。
病理検査
確定診断のためには、病理検査が最も確実です。
実施のタイミング
- 手術で摘出した組織を調べる
- 悪性腫瘍の可能性を否定する必要がある場合
わかること
- 粉瘤であることの確定
- 袋の壁の構造(表皮成分の確認)
- 炎症の程度
- 悪性所見の有無
手の粉瘤の治療方法
手の粉瘤の治療には、保存的治療と外科的治療があります。粉瘤は自然に消失することはほとんどなく、根治を目指す場合は手術による摘出が必要です。
保存的治療
経過観察 小さく、症状のない粉瘤の場合、すぐに治療せず経過観察を選択することもあります。
- 定期的な大きさの確認
- 炎症の兆候がないかチェック
- 生活への支障がないかの評価
ただし、粉瘤は時間とともに大きくなる傾向があるため、いずれは治療が必要になることが多いです。
炎症時の治療 粉瘤が炎症を起こしている場合、まず炎症を抑える治療を行います。
抗生物質の投与 細菌感染による炎症に対して、内服または外用の抗生物質を使用します。一般的に使用される抗生物質には、セフェム系やマクロライド系などがあります。
切開排膿 膿が溜まっている場合は、局所麻酔下で小さく切開し、膿を排出させます。これにより痛みや腫れが軽減されますが、袋が残っているため再発の可能性があります。
注意点 炎症が強い時期に粉瘤の袋を完全に摘出する手術を行うと、正常な組織との境界が不明瞭になり、摘出が不完全になるリスクがあります。そのため、炎症が治まってから根治手術を行うことが推奨されます。
外科的治療(手術)
粉瘤を根治するためには、袋ごと完全に摘出する手術が必要です。手の粉瘤の手術にはいくつかの方法があります。
従来法(切開摘出術)
最も一般的な方法で、しこりの上に紡錘形の切開を入れて、袋を周囲の組織から剥離して摘出します。
手順
- 局所麻酔を行う
- しこりを中心に紡錘形に皮膚を切開
- 袋を周囲組織から丁寧に剥離
- 袋を破らないように完全に摘出
- 止血を確認
- 縫合
メリット
- 確実に袋を摘出できる
- 再発率が低い
- 炎症の有無に関わらず施行可能
デメリット
- 切開が比較的大きくなる
- 傷跡が線状に残る
- 抜糸が必要(通常1〜2週間後)
くり抜き法(パンチ法)
小さな穴をあけて、そこから袋を摘出する方法です。
手順
- 局所麻酔を行う
- 中心陥凹(開口部)の部分に円形のパンチで小さな穴をあける(通常3〜5mm程度)
- 穴から内容物を排出
- 袋を引き出して摘出
- 必要に応じて縫合(1〜2針、または縫合しない)
メリット
- 傷が小さい
- 手術時間が短い
- 抜糸が不要または最小限
- 傷跡が目立ちにくい
デメリット
- 袋の摘出が不完全になる可能性がやや高い
- 炎症を起こしている場合は適応外
- ある程度小さい粉瘤に限られる
レーザー治療
CO2レーザーなどを用いて、粉瘤の袋に小さな穴をあけ、内容物を排出する方法です。
特徴
- 出血が少ない
- 傷の治りが早い
- 痛みが少ない
注意点 完全に袋を摘出するわけではないため、再発のリスクがあります。美容的な観点から選択されることもありますが、根治性では従来法に劣ります。
手術の麻酔
手の粉瘤の手術は、ほとんどの場合局所麻酔で行われます。
局所麻酔の方法
- しこりの周囲に麻酔薬を注射
- 注射時にチクッとした痛みがある
- 数分で効果が現れ、術中の痛みはほとんどない
手の麻酔の注意点 手は神経が密に分布しているため、麻酔の際に神経に触れると一時的にビリッとした感覚を感じることがあります。これは通常問題なく、すぐに治まります。
手術の所要時間
粉瘤の大きさや部位、炎症の有無によって異なりますが、おおむね以下のような時間がかかります。
- 小さな粉瘤(1cm以下): 15〜30分程度
- 中程度の粉瘤(1〜3cm): 30〜45分程度
- 大きな粉瘤(3cm以上): 45分〜1時間程度
手術後のケア
手の粉瘤手術後は、以下のようなケアが必要です。
当日
- 手術部位を清潔に保つ
- ガーゼで保護する
- 強い痛みがある場合は鎮痛剤を服用
- 出血や腫れが強い場合は冷やす
- 手をあまり使わないようにする
翌日以降
- 医師の指示に従って、ガーゼ交換を行う
- シャワーは通常翌日から可能(医師の指示による)
- 入浴は抜糸後まで控えることが推奨される
- 患部を濡らさないよう注意
日常生活の制限 手は日常生活で頻繁に使用する部位のため、手術後は以下のような制限があります。
- 重いものを持つ作業: 1〜2週間程度避ける
- 激しいスポーツ: 2〜3週間程度避ける
- 水仕事: 抜糸まで避けるか、手袋を着用
- パソコン作業: 痛みがなければ数日後から可能
- 運転: 術部の場所によるが、通常数日後から可能
抜糸のタイミング 手は動きが多い部位のため、抜糸のタイミングは他の部位よりやや遅めに設定されることがあります。
- 手の甲や手首: 術後10〜14日
- 指や指の付け根: 術後7〜10日
- 手のひら: 術後14日前後
手術の合併症とリスク
手の粉瘤手術は比較的安全な処置ですが、以下のような合併症のリスクがあります。
一般的な合併症
- 出血: 通常は自然に止まりますが、まれに圧迫止血や再縫合が必要になることがあります
- 感染: 手術部位が赤く腫れ、痛みや膿が出る場合は感染の可能性があります
- 血腫: 手術部位に血液が溜まることがあります
- 傷跡: すべての手術で傷跡は残りますが、時間とともに目立たなくなります
手特有のリスク
- 神経損傷: 手は神経が豊富なため、まれに一時的な感覚障害が起こることがあります
- 腱の損傷: 深部の粉瘤の場合、まれに腱を傷つけるリスクがあります
- 可動域の制限: 術後の腫れや瘢痕により、一時的に手の動きが制限されることがあります
- ケロイド: 傷跡が盛り上がって硬くなる体質の方は、ケロイドができるリスクがあります
再発のリスク 袋が完全に摘出されなかった場合、同じ場所に粉瘤が再発することがあります。再発率は以下のような要因で変わります。
- 従来法での完全摘出: 再発率1〜3%
- くり抜き法: 再発率5〜10%程度
- 炎症時の手術: 再発率がやや高くなる
- 切開排膿のみ: 再発率ほぼ100%(袋が残っているため)
手術を受けるタイミング
手の粉瘤の手術を受けるべきタイミングについて、よく質問されます。以下のような状況では、早めの手術を検討すべきです。
早めの手術を検討すべきケース
炎症を繰り返す場合 一度炎症を起こした粉瘤は、再び炎症を起こしやすい傾向があります。繰り返す炎症は組織の癒着を招き、手術が難しくなることもあるため、炎症が治まった時点で早めに摘出を検討すべきです。
日常生活に支障がある場合
- 手の動きが制限される
- 物を握ると痛い
- 仕事に支障をきたす
- 見た目が気になる
これらの症状がある場合は、QOL(生活の質)向上のために手術を検討する価値があります。
大きくなってきている場合 粉瘤は時間とともに徐々に大きくなる傾向があります。大きくなればなるほど、手術の傷も大きくなり、術後の回復にも時間がかかります。小さいうちに摘出する方が、傷跡も小さく済みます。
悪性腫瘍との鑑別が必要な場合 急速に大きくなる、痛みやしびれを伴う、出血しやすいなど、通常の粉瘤とは異なる症状がある場合は、早めに受診し、必要に応じて摘出・病理検査を行うべきです。
手術を急がなくてもよいケース
小さくて症状がない場合 数ミリ程度の小さな粉瘤で、痛みもなく、日常生活に支障がない場合は、経過観察を選択することも可能です。ただし、定期的に大きさや症状をチェックすることが重要です。
仕事や生活の都合で時期を選びたい場合 手は日常生活で頻繁に使う部位のため、手術後は一定期間、活動が制限されます。仕事や家庭の事情を考慮し、適切な時期を選んで手術を受けることも重要です。
- 長期休暇の前
- 繁忙期を避ける
- 利き手の場合は特に慎重にタイミングを選ぶ
手の粉瘤の予防
粉瘤の発生を完全に予防することは困難ですが、以下のような対策でリスクを減らすことができます。
日常生活でできる予防策
皮膚を清潔に保つ 手は特に汚れやすい部位です。こまめな手洗いで皮膚を清潔に保ち、毛穴の詰まりを防ぎましょう。
- 帰宅時や食事前の手洗い
- 適度な保湿で皮膚のバリア機能を保つ
- 洗いすぎにも注意(皮膚の乾燥を招く)
外傷を避ける 手の外傷は粉瘤発生のリスク要因です。
- 作業時は手袋を着用
- 鋭利な物の取り扱いに注意
- 小さな傷もきちんと消毒・処置する
皮膚への過度な刺激を避ける
- きつい時計やブレスレットを長時間着用しない
- 職業上、手に継続的な圧迫がかかる場合は適度に休憩を取る
- 化学物質を扱う際は保護手袋を着用
健康的な生活習慣 皮膚の健康を保つために、全身の健康管理も重要です。
- バランスの取れた食事
- 十分な睡眠
- ストレス管理
- 禁煙(喫煙は皮膚の老化を促進)
再発予防
一度粉瘤の手術を受けた方は、再発を防ぐために以下の点に注意しましょう。
手術痕のケア
- 医師の指示に従った適切なケア
- 傷跡を清潔に保つ
- 過度な刺激を避ける
- 必要に応じて瘢痕ケア用の軟膏やテープを使用
定期的なチェック 手術後は、定期的に術部をチェックし、再発の兆候がないか確認しましょう。小さな再発であれば、早期に対処することで大きな手術を避けられます。

よくある質問
小さくて症状がない粉瘤であれば、すぐに治療しなくても問題ありません。ただし、粉瘤は自然に消失することはほとんどなく、時間とともに徐々に大きくなる傾向があります。また、炎症を起こすと痛みや腫れが生じ、日常生活に支障をきたすことがあります。
放置する場合でも、定期的に大きさや症状をチェックし、変化があれば医療機関を受診することをお勧めします。
粉瘤の診断・治療は、主に以下の診療科で行われます。
皮膚科: 最も一般的な受診先です
形成外科: 手術や傷跡のケアに特化しています
外科: 粉瘤の手術も行っています
手の粉瘤の場合、機能面や美容面を考慮した治療が重要なため、形成外科や粉瘤治療の経験が豊富な皮膚科の受診をお勧めします。
手術は局所麻酔下で行われるため、術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みがありますが、これは数秒で治まります。
術後は個人差がありますが、軽い痛みや違和感を感じることがあります。通常は市販の鎮痛剤で対処できる程度です。強い痛みが続く場合は、感染などの合併症の可能性があるため、医療機関に相談してください。
Q4. 手術後、いつから仕事に復帰できますか?
仕事の内容によって異なります。
- デスクワーク: 翌日〜数日後から可能なことが多い
- 軽作業: 3〜7日程度
- 手を使う作業: 1〜2週間程度
- 重労働: 2〜3週間程度
利き手の場合や、手を頻繁に使う仕事の場合は、医師と相談して適切な休養期間を設定することが重要です。
Q5. 保険は適用されますか?
粉瘤の手術は、医学的に必要と判断された場合、健康保険が適用されます。自己負担額は、3割負担の場合で数千円〜1万円程度が一般的です(大きさや手術方法によって異なります)。
ただし、美容目的の治療や、一部のレーザー治療などは自費診療となることがあります。受診時に確認することをお勧めします。
Q6. 粉瘤は遺伝しますか?
粉瘤自体が遺伝するという明確な証拠はありませんが、粉瘤ができやすい体質は遺伝する可能性があると考えられています。家族に粉瘤ができやすい方がいる場合は、皮膚のケアに気をつけると良いでしょう。
Q7. 粉瘤ができやすい年齢はありますか?
粉瘤はあらゆる年齢で発生する可能性がありますが、20代〜40代に多く見られる傾向があります。これは、皮脂の分泌が盛んな年代であることや、外傷を受ける機会が多いことが関係していると考えられています。
Q8. 自分で潰しても大丈夫ですか?
絶対に自分で潰さないでください。粉瘤を自分で潰すと、以下のようなリスクがあります。
- 細菌感染を起こし、炎症が悪化する
- 周囲の組織を傷つける
- 袋が残るため、必ず再発する
- 瘢痕が残りやすくなる
- 深部に内容物が押し込まれ、治療が困難になる
粉瘤が気になる場合は、必ず医療機関を受診してください。
Q9. 手術の傷跡はどのくらい残りますか?
傷跡の残り方には個人差がありますが、一般的には以下のような経過をたどります。
- 直後〜1ヶ月: 赤く盛り上がった状態
- 3〜6ヶ月: 徐々に平らになり、色も薄くなる
- 1年以降: ほとんど目立たなくなることが多い
傷跡を最小限にするためには、以下が重要です。
- 経験豊富な医師による手術
- 術後の適切なケア
- 紫外線対策
- 必要に応じた瘢痕ケア用品の使用
Q10. 手の粉瘤はがん化しますか?
粉瘤自体が悪性化(がん化)することは極めてまれです。ただし、長期間放置された大きな粉瘤では、非常にまれですが悪性化の報告があります。
また、最初からがんであったものを粉瘤と勘違いしているケースもあります。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、詳しい検査を受けることをお勧めします。
- 急速に大きくなる
- 硬く、可動性がない
- 表面に潰瘍ができる
- 出血しやすい
- 痛みやしびれを伴う
まとめ
手にできる粉瘤は、日常生活に影響を及ぼしやすい良性腫瘍です。以下のポイントをまとめます。
粉瘤の特徴
- 皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質などが溜まる良性腫瘍
- 手の甲、手首、指の付け根などに発生することがある
- ゆっくりと成長し、放置すると徐々に大きくなる
- 炎症を起こすと痛みや腫れを伴う
診断と治療
- 診断は視診、触診、必要に応じて画像検査で行う
- 根治のためには袋ごと摘出する手術が必要
- 手術は局所麻酔で行われ、通常15分〜1時間程度
- 手術方法には従来法(切開摘出術)とくり抜き法がある
手術のタイミング
- 炎症を繰り返す場合
- 日常生活に支障がある場合
- 徐々に大きくなっている場合
- 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合
小さくて症状がない場合は経過観察も選択肢の一つですが、定期的なチェックが重要です。
予防と再発防止
- 手を清潔に保つ
- 外傷を避ける
- 過度な刺激を避ける
- 健康的な生活習慣を心がける
- 手術後は医師の指示に従った適切なケア
受診の目安
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 手にしこりができた
- しこりが大きくなってきた
- 痛みや赤みがある
- 膿が出ている
- 日常生活に支障がある
- 悪性腫瘍が心配
手の粉瘤は適切な診断と治療により、多くの場合、良好な結果が得られます。気になる症状がある方は、早めに専門医に相談することをお勧めします。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしています。
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
https://www.dermatol.or.jp/qa/ - 一般社団法人 日本形成外科学会
https://jsprs.or.jp/ - 国立研究開発法人 国立がん研究センター「がん情報サービス」
https://ganjoho.jp/ - 厚生労働省「e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - 日本医師会「健康の森」
https://www.med.or.jp/forest/
※本記事は医療情報の提供を目的としており、自己診断や自己治療を推奨するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
アイシークリニック上野院について
当院では、粉瘤をはじめとする皮膚・皮下腫瘍の日帰り手術を専門的に行っております。経験豊富な医師が、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。手の粉瘤でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務