はじめに
手足にできる硬いイボに悩んでいませんか?それはもしかすると「ウイルス性イボ」かもしれません。医学的には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」と呼ばれるこの皮膚疾患は、子どもから大人まで幅広い年齢層に見られる非常に一般的な病気です。
「イボなんて放っておけば治るだろう」と思われるかもしれませんが、実はウイルス性イボは感染性があり、放置すると大きくなったり数が増えたりする可能性があります。また、足の裏にできた場合は痛みで歩行に支障をきたすこともあります。
本記事では、ウイルス性イボの原因から症状、診断、治療法、そして予防方法まで、日本皮膚科学会のガイドラインをはじめとする信頼できる医学的知見に基づいて詳しく解説します。ご自身やご家族のイボにお悩みの方、適切な治療法を知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

ウイルス性イボとは何か
イボの定義と分類
一般的に「イボ」と呼ばれるものには、実はいくつかの異なる種類があります。大きく分けると以下の3つに分類されます。
1. ウイルス性疣贅(ゆうぜい) ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じるイボです。本記事で詳しく解説する「尋常性疣贅」はこの代表的なものです。
2. 軟性線維腫 いわゆる「首イボ」「スキンタッグ」と呼ばれるもので、加齢とともに首や脇の下などにできる柔らかい突起物です。ウイルスとは無関係です。
3. 脂漏性角化症(老人性疣贅) 加齢に伴って顔や体にできる茶色~黒色の盛り上がりで、こちらもウイルスとは関係ありません。
これらは原因も治療法も全く異なるため、正確な診断が重要です。
尋常性疣贅の特徴
尋常性疣贅は、ウイルス性イボの中で最も一般的なタイプです。以下のような特徴があります。
- 好発部位:手足の指、手のひら、足の裏など外傷を受けやすい部位
- 外観:表面がざらざらした硬い丘疹(きゅうしん:小さな盛り上がり)
- 大きさ:数ミリから1センチ程度が多いが、放置すると大きくなることも
- 数:単発のこともあれば、複数個できることもある
- 年齢:子どもにも大人にも発生するが、特に学童期に多い
ウイルス性イボの原因
ヒトパピローマウイルス(HPV)とは
ウイルス性イボの原因は、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)というウイルスです。このHPVは非常に多くの種類があり、現在200種類以上の型が知られています。
尋常性疣贅を引き起こす主なHPVの型
- HPV 2a型
- HPV 27型
- HPV 57型
これらは皮膚に親和性のある型で、主に手足の皮膚に感染します。
HPVの種類による違い
HPVには様々な型があり、それぞれ異なる病気を引き起こします。
| HPVの型 | 引き起こす主な病気 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2a、27、57型 | 尋常性疣贅(手足のイボ) | 本記事で扱う一般的なイボ |
| 3、10型 | 扁平疣贅(青年性扁平疣贅) | 顔や手の甲にできる平らなイボ |
| 6、11型 | 尖圭コンジローマ | 性器にできるイボ |
| 16、18型 | 子宮頸がん | がんの原因となる高リスク型 |
重要なポイント:手足のイボを引き起こすHPVの型と、子宮頸がんを引き起こすHPVの型は異なります。手足のイボが子宮頸がんの原因になることはありませんので、ご安心ください。
感染経路
HPVはどのようにして感染するのでしょうか。主な感染経路は以下の通りです。
1. 直接接触による感染
- イボのある人の皮膚と直接触れることで感染
- 自分のイボを触った手で別の部位を触ることで自家感染
2. 間接接触による感染
- プールや温泉の床
- ジムのマット
- 共用のスリッパやタオル
- 体育館の床
HPVは皮膚の目に見えない小さな傷口から侵入します。そのため、以下のような状況では感染リスクが高まります。
- 皮膚に小さな傷がある:擦り傷、ひび割れ、ささくれなど
- 皮膚が湿った状態:長時間の入浴後、汗をかいた後など
- アトピー性皮膚炎がある:掻いてできた傷から感染しやすい
- 免疫力が低下している:風邪をひいている、疲労が溜まっているなど
なぜ手足に多いのか
尋常性疣贅が手足に多く発生するのには、明確な理由があります。
- 外傷を受けやすい:手足は日常生活で最も使う部位で、細かい傷ができやすい
- 接触機会が多い:床や様々な物に触れる機会が多く、ウイルスとの接触頻度が高い
- 湿度が高い:靴の中や手袋の中など、湿った環境はウイルスの侵入を助ける
ウイルス性イボの症状
典型的な外観
尋常性疣贅の外観には、いくつかの特徴的なポイントがあります。
初期段階
- 小さな平らな盛り上がり
- 皮膚と同じ色か、わずかに白っぽい
- 表面はやや粗い
進行すると
- 徐々に盛り上がりが大きくなる
- 表面がザラザラして硬くなる
- カリフラワー状の外観を呈することも
- イボの中に黒い点々が見えることがある(毛細血管が透けて見える)
足底疣贅(足の裏のイボ)の特徴
- 体重がかかるため、盛り上がりが少なく平坦
- 周囲の皮膚が厚くなり、タコやウオノメと見分けにくい
- 中心部に黒い点々(出血点)が見られることが多い
- 複数のイボが融合して「モザイク疣贅」となることも
自覚症状
多くの場合、ウイルス性イボには以下のような特徴があります。
- 痛みやかゆみはほとんどない:通常は無症状
- 足底疣贅は痛みを伴うことがある:歩行時の圧迫で痛む
- 爪周囲のイボは痛みや変形の原因に:爪が変形したり、爪の周りが痛んだりする
タコ・ウオノメとの違い
足の裏のイボは、タコやウオノメと間違えられやすいため、鑑別が重要です。
| 特徴 | ウイルス性イボ | タコ・ウオノメ |
|---|---|---|
| 原因 | ウイルス感染 | 摩擦や圧迫 |
| 黒い点々 | あり(毛細血管) | なし |
| 皮膚の紋様 | 途切れる | 途切れない |
| 削ると | 出血しやすい | 出血しにくい |
| 伝染性 | あり | なし |
| 好発年齢 | 子どもにも多い | 大人に多い |
見分け方のポイント:ダーモスコープ(拡大鏡)で観察すると、ウイルス性イボには特徴的な黒い点々(血管の透見)が見られます。これがタコやウオノメとの最も確実な鑑別点です。
ウイルス性イボの診断
診断方法
皮膚科では、以下の方法でウイルス性イボを診断します。
1. 視診(目で見る診察)
- イボの形状、色、表面の状態を観察
- 発生部位や分布を確認
2. ダーモスコピー(拡大鏡による観察)
- 皮膚を拡大して詳細に観察
- 黒い点々(血管や出血点)の有無を確認
- イボの特徴的なパターンを確認
3. 病理組織検査(必要に応じて)
- 診断が困難な場合や、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合
- 組織の一部を採取して顕微鏡で観察
鑑別すべき他の疾患
ウイルス性イボと間違えやすい他の皮膚疾患には、以下のようなものがあります。
- タコ・ウオノメ:前述の通り
- 脂漏性角化症:特に高齢者の場合
- 悪性黒色腫(メラノーマ):黒い色素がある場合
- ボーエン病:イボ状の皮膚がん
- 尖圭コンジローマ:性器周囲のイボの場合
これらの鑑別のため、疑わしい場合は必ず皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。
ウイルス性イボの治療法
日本皮膚科学会が2019年に発表した「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」では、様々な治療法が推奨度とともに示されています。ここでは、主な治療法について詳しく解説します。
液体窒素による凍結療法(推奨度A)
最も一般的で標準的な治療法です。日本の皮膚科診療で最も広く行われています。
治療の仕組み
- マイナス196℃の液体窒素を綿棒やスプレーでイボに当てる
- 凍結と融解を繰り返すことで、ウイルスに感染した細胞を破壊
- 炎症反応を起こし、免疫系を活性化させる
治療の流れ
- 液体窒素をイボに5~30秒程度当てる
- イボが白くなるまで凍結させる
- これを2~3回繰り返す
- 1~2週間ごとに通院し、治療を繰り返す
メリット
- 保険適用で費用が安い
- 外来で短時間で施術可能
- 効果が高い
- 麻酔不要(通常)
デメリット
- 痛みを伴う(治療中と治療後数日間)
- 水ぶくれや血豆ができることがある
- 複数回の治療が必要
- 色素沈着や色素脱失が残ることがある
治療期間の目安
- 手足の指や手のひら:数回~10回程度
- 足の裏:10回~数十回(治りにくい)
- 爪の周囲:治療期間が長くなることが多い
サリチル酸外用薬(推奨度A)
液体窒素治療と併用することで効果が高まる治療法です。
代表的な製品
- スピール膏(絆創膏タイプ)
- サリチル酸軟膏(塗るタイプ)
作用機序
- 角質を溶解・剥離させる
- イボの免疫反応を高める
使用方法
- イボの大きさに合わせてスピール膏をカット
- イボにぴったり貼り付ける(正常な皮膚にはかからないように)
- 2~3日ごとに貼り替える
- 白くふやけた角質を除去
- 液体窒素治療の間にも継続使用
メリット
- 自宅でケアできる
- 痛みが少ない
- 保険適用
デメリット
- 効果が出るまで時間がかかる
- 正常な皮膚に付着するとかぶれることがある
- 単独での治癒率は高くない
ヨクイニン内服(推奨度B)
ハトムギの種子から抽出された生薬で、古くから使用されています。
効果と特徴
- イボに対する免疫力を高める
- 特に子どもで効果が高い(有効率:乳幼児71%、学童74%、青年57%、成人20%)
- 副作用が少ない
- 保険適用
服用方法
- 1日2~3回に分けて服用
- 粉薬と錠剤がある
- 数週間から数ヶ月継続
メリット
- 副作用がほとんどない
- 子どもにも使いやすい
- 他の治療と併用可能
デメリット
- 効果が出るまで時間がかかる
- 効果に個人差が大きい
- 味が独特(粉薬の場合)
ベセルナクリーム(イミキモド)(推奨度C1)
免疫を活性化させる外用薬で、尖圭コンジローマの治療薬としても使用されます。
作用機序
- 塗布した部位の免疫反応を高める
- インターフェロンなどの免疫物質の産生を促進
使用方法
- 週3回、就寝前にイボに塗布
- 翌朝、石鹸で洗い流す
適応
- 皮膚の薄い部位のイボ
- 顔や首のイボ
- 液体窒素治療が困難な部位
メリット
- 液体窒素治療より痛みが少ない
- 瘢痕が残りにくい
デメリット
- 保険適用外(尋常性疣贅に対しては)
- 皮膚の赤みやびらんなどの副作用
- 高価
外科的切除(推奨度C1)
イボを手術で取り除く方法です。
適応
- イボの数が1~2個と少ない場合
- 大きなイボ
- 他の治療で効果がない場合
方法
- 局所麻酔下でメスやハサミで切除
- 必要に応じて縫合
メリット
- 1回の治療で確実に除去できる
- 病理検査が可能
デメリット
- 痛み(麻酔時と術後)
- 瘢痕が残る可能性
- 再発のリスク(ウイルスが完全に除去できない場合)
炭酸ガスレーザー治療(推奨度C1)
レーザーでイボを蒸散させる治療法です。
方法
- 炭酸ガスレーザーでイボを蒸散
- 局所麻酔が必要
メリット
- 出血が少ない
- 比較的きれいに治る
デメリット
- 保険適用外の場合が多い
- 再発のリスク
- 深いイボの場合は瘢痕が残ることも
接触免疫療法(SADBE、DPCP)(推奨度C1)
人工的にかぶれを起こして免疫を活性化させる治療法です。
方法
- まず、SADBEやDPCPという化学物質で感作(アレルギーを作る)
- その後、イボに低濃度の同じ物質を塗布
- かぶれ反応を起こしてイボを治療
適応
- 難治性のイボ
- 多発性のイボ
- 液体窒素治療が困難な場合
メリット
- 痛みが少ない
- 多発性のイボにも有効
デメリット
- 治療期間が長い
- 保険適用外
- 扱っている施設が限られる
活性型ビタミンD3外用薬(推奨度C1)
皮膚の細胞増殖を抑える外用薬です。
使用方法
- イボに塗布後、ラップやばんそうこうで密封(密封療法)
メリット
- 痛みがない
- 副作用が少ない
デメリット
- 効果に個人差がある
- 効果が出るまで時間がかかる
モノクロロ酢酸塗布(推奨度C2)
強酸性の化学物質でイボを腐食させる治療法です。
方法
- モノクロロ酢酸をイボに塗布
- 周囲の正常皮膚を保護しながら慎重に塗布
適応
- 液体窒素治療が痛くて困難な子ども
- 難治性のイボ
メリット
- 液体窒素より痛みが少ない
デメリット
- 扱いに注意が必要(劇薬)
- 正常皮膚への付着リスク
- 保険適用外の場合がある
治療期間と治癒率
治療期間の実際
ウイルス性イボの治療には、残念ながら「すぐに治る」という特効薬はありません。根気強く治療を続けることが重要です。
一般的な治療期間の目安
- 手の指や手のひらのイボ:2~6ヶ月
- 足の裏のイボ:6ヶ月~1年以上
- 爪周囲のイボ:6ヶ月~1年以上
- 多発性のイボ:1年以上かかることも
なぜ治療に時間がかかるのか
治療に時間がかかる理由はいくつかあります。
- ウイルスが皮膚の深部に存在
- 表面だけでなく、皮膚の深い層にもウイルスが潜んでいる
- 免疫反応に個人差
- イボに対する免疫反応の強さは人によって異なる
- 部位による違い
- 足の裏や爪周囲は皮膚が厚く、治療が届きにくい
- 再感染のリスク
- 治療中に自分の他のイボから再感染することがある
自然治癒について
実は、ウイルス性イボは自然治癒することもあります。
自然治癒の可能性
- 子どもの場合:2年以内に約30~40%が自然治癒
- 大人の場合:自然治癒率は低い
自然治癒のメカニズム
- 免疫系がHPVを認識して排除
- 特に若年者で免疫反応が起こりやすい
注意点
- 自然治癒を待つ間に、イボが増えたり大きくなったりする可能性
- 他人への感染源となるリスク
- 一般的には早期治療が推奨される
ウイルス性イボの予防
日常生活でできる予防策
1. 皮膚の傷を防ぐ
- ささくれや小さな傷を作らないよう注意
- 手荒れやひび割れを防ぐため、保湿を心がける
- アトピー性皮膚炎がある場合は適切な治療を
2. 足の衛生管理
- 共用のスリッパを避ける
- プールや温泉では、自分専用のスリッパを使用
- 足を清潔に保ち、よく乾燥させる
3. イボがある人との接触
- 直接触れないよう注意
- タオルやスリッパの共用を避ける
4. 自分のイボを触らない
- イボを触った後は必ず手を洗う
- イボをむやみにいじったり、削ったりしない
- 爪を噛む癖がある人は注意(口から手指へ、手指から爪周囲へ感染)
免疫力を高める生活習慣
HPVに対する抵抗力を維持するため、以下の生活習慣を心がけましょう。
1. 十分な睡眠
- 規則正しい睡眠リズム
- 1日7~8時間の睡眠
2. バランスの取れた食事
- ビタミンA、C、Eなどの抗酸化ビタミン
- タンパク質の適切な摂取
- 腸内環境を整える発酵食品
3. 適度な運動
- 週に2~3回の有酸素運動
- ストレス解消効果も
4. ストレス管理
- 過度なストレスは免疫力を低下させる
- リラックスできる時間を作る
家族内感染を防ぐために
家族の誰かにイボがある場合、以下の点に注意しましょう。
- タオルの共用を避ける
- スリッパの共用を避ける
- バスマットは別々に、またはこまめに洗濯
- イボのある子どもが触ったおもちゃは定期的に消毒
- 患部に触れた後は石鹸で手洗い

よくある質問(Q&A)
A: 自然治癒する可能性はありますが、特に子どもの場合は2年以内に30~40%程度です。しかし、その間に大きくなったり数が増えたりするリスクがあります。また、他人への感染源にもなるため、早期に治療することをお勧めします。
Q2: 市販薬でイボは治りますか?
A: イボコロリなどのサリチル酸製剤やパッチ、凍結スプレーなどの市販薬もあります。軽度のイボであれば効果が期待できますが、確実に治すためには皮膚科での治療をお勧めします。特に以下の場合は医療機関を受診してください。
- 足の裏のイボ(魚の目やタコとの鑑別が必要)
- 顔や性器のイボ
- 数が多いイボ
- 大きなイボ
- 糖尿病などの持病がある方
Q3: 液体窒素治療はどのくらい痛いですか?
A: 個人差はありますが、多くの方が「チクッとする痛み」や「ズキズキする痛み」を感じます。治療直後が最も痛く、その後1~2日は軽い痛みが続くことがあります。子どもの場合、痛みを我慢できないことがあるため、他の治療法を選択することもあります。
Q4: イボの治療中にプールに入っても大丈夫ですか?
A: 基本的には可能ですが、以下の点に注意してください。
- 液体窒素治療後、水ぶくれができている場合は治るまで控える
- プールの後は患部をよく洗う
- 他の人への感染を防ぐため、患部を防水テープで覆う
- 学校のプールの場合は、学校の方針に従う
Q5: 妊娠中や授乳中でもイボの治療はできますか?
A: 治療法によって異なります。
可能な治療
- 液体窒素治療
- サリチル酸外用(限定的に)
- 外科的切除
避けるべき治療
- ベセルナクリーム(妊娠中は禁忌)
- 一部の内服薬
妊娠中または授乳中であることを必ず医師に伝えてください。
Q6: イボは癌になることがありますか?
A: 手足のウイルス性イボ(尋常性疣贅)は良性の病変で、癌になることはほとんどありません。ただし、以下の場合は注意が必要です。
- 急速に大きくなるイボ
- 色が黒い、または色にむらがあるイボ
- 出血しやすいイボ
- 痛みや潰瘍を伴うイボ
これらの場合は、悪性腫瘍の可能性もあるため、必ず皮膚科専門医の診察を受けてください。
Q7: 一度治ったイボが再発することはありますか?
A: はい、再発する可能性があります。再発する理由として以下が考えられます。
- ウイルスが完全に除去されていなかった
- 治療中に別の部位に自家感染していた
- 新たに感染した
再発を防ぐためには、完全に治るまで治療を継続すること、そして予防策を心がけることが重要です。
Q8: 子どものイボは治療した方がいいですか?
A: 基本的には治療をお勧めします。理由は以下の通りです。
- 自然治癒を待つ間に数が増える可能性
- 学校のプールなどで感染を広げる可能性
- 爪を噛む癖などで手指に広がりやすい
ただし、痛みの少ない治療法(ヨクイニン内服、モノクロロ酢酸など)を選択することも可能です。お子さんの年齢や性格に応じて、医師と相談しながら治療方針を決めましょう。
まとめ
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)による一般的な皮膚感染症です。以下のポイントを押さえておきましょう。
原因と感染
- HPVというウイルスが原因
- 小さな傷から感染
- プールやジムなど、裸足で歩く場所で感染しやすい
- 他人にも自分の他の部位にも感染する可能性がある
症状の特徴
- 手足にできる硬い盛り上がり
- 表面がザラザラしている
- 黒い点々(血管)が特徴的
- 通常は痛みやかゆみはない(足の裏は除く)
治療について
- 液体窒素による凍結療法が標準治療
- サリチル酸外用薬との併用が効果的
- ヨクイニン内服は子どもに特に有効
- 治療には数ヶ月~1年以上かかることも
- 根気強く治療を続けることが重要
予防のポイント
- 皮膚の小さな傷に注意
- 手足の清潔と保湿
- 共用のタオルやスリッパを避ける
- イボを触らない
- 免疫力を維持する生活習慣
こんな時は皮膚科へ
- イボかどうか分からない
- 数が多い、または急速に増えている
- 足の裏や爪の周りにできた
- 市販薬で効果がない
- 痛みがある
ウイルス性イボは、決して珍しい病気ではありません。適切な診断と治療、そして根気強い通院により、ほとんどの場合は治癒します。気になる症状がある場合は、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。
アイシークリニック上野院では、ウイルス性イボの診断と治療を行っております。お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会尋常性疣贅診療ガイドライン策定委員会「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」日本皮膚科学会雑誌, 129巻6号, 1265-1292, 2019
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/yuzei_gl2019.pdf - 日本皮膚科学会尋常性疣贅診療ガイドライン策定委員会「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」J-STAGE
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/129/6/129_1265/_article/-char/ja/ - Mindsガイドラインライブラリ「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00525/ - 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:イボとミズイボ、ウオノメとタコ─どう違うのですか?」
https://qa.dermatol.or.jp/qa23/q02.html - 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/hpv/index.html
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務