はじめに
顔や体にできた腫れ物を見て、「これはニキビ?それともおでき?」と迷った経験はありませんか。見た目が似ているこの2つの皮膚トラブルですが、実は原因や治療法が大きく異なります。
多くの方が「痛みのあるニキビ」や「大きなニキビ」をおできと混同していますが、正しく見分けることで、適切な治療法を選択でき、跡を残さずに治すことができます。本記事では、皮膚科の専門的な知識に基づいて、おできとニキビの違いを詳しく解説します。

おできとは何か
おできの定義と特徴
おできは、医学用語で「せつ(癤)」または「よう(癰)」と呼ばれる皮膚の感染症です。毛穴の奥深くにある毛包(毛嚢)という部分に細菌が感染し、化膿して膿が溜まった状態を指します。
おできの主な特徴は以下の通りです:
- 硬いしこり:触ると硬く、はっきりとした境界がある
- 強い痛み:触れなくても痛むことが多い
- 赤く腫れる:周囲の皮膚が赤く炎症を起こす
- 中心に膿:白色または黄色の膿が中央に見える
- 大きさ:数mmから数cmまで大きくなることがある
- 発熱を伴うことも:大きなおできの場合、発熱や倦怠感を伴うこともある
おできができる原因
おできの主な原因菌は**黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)**です。この細菌は健康な人の皮膚にも常在していますが、以下のような条件が揃うと感染を起こします:
1. 皮膚のバリア機能の低下
- 小さな傷や擦り傷
- 虫刺されの掻き壊し
- 乾燥による皮膚の亀裂
2. 免疫力の低下
- 疲労やストレスの蓄積
- 睡眠不足
- 栄養バランスの偏り
- 糖尿病などの基礎疾患
3. 不衛生な環境
- 汗や皮脂の過剰分泌
- 不十分な入浴習慣
- 衣服の摩擦や蒸れ
おできができやすい部位
おできは体のどこにでもできる可能性がありますが、特に以下の部位に発生しやすい傾向があります:
- 首の後ろ
- 背中
- お尻
- 太もも
- 脇の下
- 鼻の中や耳の中
これらの部位は、摩擦が起きやすい、汗をかきやすい、毛が太いなどの特徴があります。
ニキビとは何か
ニキビの定義と特徴
ニキビは医学的に「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚疾患です。思春期から成人期にかけて多く見られ、毛穴に皮脂が詰まることから始まります。
ニキビの主な特徴は以下の通りです:
- 段階的な進行:白ニキビ→黒ニキビ→赤ニキビ→黄ニキビと進行する
- 複数個できやすい:同時に複数箇所に発生することが多い
- 比較的小さい:多くは数mm程度
- 痛みの程度:炎症が起きていなければ痛みはない
- 年齢との関連:思春期や20〜30代に多い
ニキビができるメカニズム
ニキビは以下の4つの要因が複合的に作用して発生します:
1. 皮脂の過剰分泌
思春期におけるホルモンバランスの変化や、ストレス、生理周期などの影響で、皮脂腺から分泌される皮脂の量が増加します。特に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響が大きく、女性でも男性ホルモンの相対的な増加がニキビの原因となります。
2. 毛穴の詰まり(角化異常)
通常、毛穴の出口にある角質は自然に剥がれ落ちますが、何らかの原因でこのプロセスがうまくいかず、角質が厚くなって毛穴の出口を塞いでしまいます。これを「角化異常」と呼びます。
3. アクネ菌の増殖
毛穴に皮脂が溜まると、皮脂を栄養源とする**アクネ菌(Cutibacterium acnes、旧名Propionibacterium acnes)**が増殖します。アクネ菌自体は皮膚の常在菌で通常は無害ですが、増えすぎると問題を引き起こします。
4. 炎症反応
増殖したアクネ菌が産生する物質に対して、体の免疫系が反応し、炎症を起こします。これが赤く腫れたニキビ(炎症性ニキビ)の状態です。
ニキビの種類
ニキビは進行段階によって以下のように分類されます:
白ニキビ(閉鎖面皰)
- 毛穴に皮脂が詰まった初期段階
- 表面が閉じているため白っぽく見える
- 痛みや炎症はない
- 適切なケアで悪化を防げる
黒ニキビ(開放面皰)
- 毛穴の出口が開いている状態
- 詰まった皮脂が酸化して黒く見える
- 痛みや炎症はない
赤ニキビ(炎症性痤瘡)
- アクネ菌が増殖し炎症を起こした状態
- 赤く腫れて痛みを伴う
- 適切に治療しないと跡が残る可能性がある
黄ニキビ(膿疱性痤瘡)
- 炎症が進行し、膿が溜まった状態
- 黄色い膿が透けて見える
- 痛みが強く、跡が残りやすい
紫ニキビ(嚢腫)
- 炎症が真皮の深い部分まで達した重症の状態
- しこりのように硬く、紫色に見える
- 強い痛みがあり、跡が残りやすい
ニキビができやすい部位
ニキビは皮脂腺が多く分布する部位にできやすい傾向があります:
- 顔(特におでこ、鼻、顎)
- 胸
- 背中上部
- 肩
これらの部位は「脂漏部位(しろうぶい)」と呼ばれ、皮脂の分泌が活発な領域です。
おできとニキビの決定的な違い
ここまでそれぞれの特徴を見てきましたが、両者の主な違いを表にまとめます。
| 比較項目 | おでき(せつ) | ニキビ(尋常性痤瘡) |
|---|---|---|
| 原因菌 | 黄色ブドウ球菌 | アクネ菌 |
| 感染の深さ | 毛包全体(深い) | 毛穴の入り口付近(浅い) |
| 主な原因 | 細菌感染 | 皮脂の過剰分泌と毛穴の詰まり |
| 発症年齢 | 年齢問わず | 思春期〜成人期に多い |
| 痛みの程度 | 強い痛み | 炎症がなければ痛みなし |
| 大きさ | 比較的大きい(数cm) | 比較的小さい(数mm) |
| 硬さ | 硬いしこり | 柔らかめ |
| 発生数 | 単発が多い | 複数個できやすい |
| 発熱 | 大きい場合あり | 通常なし |
| 治療期間 | 1〜2週間以上 | 数日〜1週間 |
原因菌の違いが重要な理由
おできとニキビの最も重要な違いは、原因となる細菌が異なることです。
黄色ブドウ球菌は病原性が高く、感染すると強い炎症反応を引き起こします。放置すると感染が広がり、周囲の組織を破壊したり、まれに血液中に細菌が入り込む「菌血症」を起こしたりする危険があります。
一方、アクネ菌は通常の皮膚常在菌で、適切な環境では無害です。ただし、毛穴に皮脂が詰まって酸素の少ない環境ができると、嫌気性菌であるアクネ菌が増殖し、炎症を引き起こします。
この違いから、おできには抗生物質による治療が必要になることが多く、ニキビは抗生物質以外の治療法も効果的であるという違いが生まれます。
感染の深さの違い
おできは毛包全体が感染・化膿した状態で、真皮の深い層まで炎症が及びます。そのため、治った後に陥没した跡が残りやすいという特徴があります。
ニキビは毛穴の入り口付近で起こる炎症が多く、白ニキビや黒ニキビの段階では真皮まで達していません。ただし、炎症が進行して紫ニキビ(嚢腫)になると、真皮深層まで炎症が及び、おできに近い状態になります。
おできとニキビの見分け方
実際に皮膚にできた腫れ物が、おできなのかニキビなのかを見分けるポイントをご紹介します。
セルフチェックポイント
1. 触った感じ
- おでき:周囲の皮膚よりも明らかに硬く、はっきりとした境界がある
- ニキビ:比較的柔らかく、周囲との境界が曖昧
2. 痛みの程度
- おでき:触らなくても痛い、ズキズキとした拍動性の痛み
- ニキビ:炎症がなければ痛みなし、赤ニキビでも触ると痛い程度
3. 大きさと形
- おでき:数mm〜数cmと大きく、ドーム状に盛り上がる
- ニキビ:多くは5mm以下、平坦または軽度の隆起
4. 周囲の皮膚の状態
- おでき:広範囲に赤く腫れ、熱を持つ
- ニキビ:炎症は限局的で、周囲への広がりは少ない
5. 発生部位
- おでき:首の後ろ、お尻、太ももなど摩擦が多い部位
- ニキビ:顔、胸、背中上部など皮脂分泌が多い部位
6. 経過
- おでき:急速に大きくなり、1〜2週間で自然に破れることがある
- ニキビ:段階的に進行し、数日から1週間程度で治ることが多い
こんな症状があったらすぐに皮膚科へ
以下のような症状がある場合は、自己判断せず、すぐに皮膚科を受診しましょう:
- 発熱や悪寒を伴う
- 赤い線が腫れ物から広がっている(リンパ管炎の可能性)
- 急速に大きくなる(1日で2倍以上)
- 顔の中心部(鼻、唇周辺)にできた
- 複数のおできが同時にできた
- 糖尿病など基礎疾患がある
- 痛みが我慢できないほど強い
- 自然に破れて大量の膿が出た
特に、顔の中心部(危険三角地帯と呼ばれる)にできた感染は、脳に炎症が広がるリスクがあるため、緊急性が高いです。
おできの治療法
医療機関での治療
おできの治療は、皮膚科または形成外科で行います。
1. 抗菌薬治療
黄色ブドウ球菌に効果のある抗生物質を使用します。
- 内服薬:セファレキシン、レボフロキサシンなど
- 外用薬:ムピロシン軟膏、ゲンタマイシン軟膏など
通常、5〜7日間の投与で改善が見られます。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の場合は、バンコマイシンなど特殊な抗生物質が必要になることもあります。
2. 切開排膿
おできが大きく、膿が十分に溜まっている場合は、局所麻酔をした上で切開して膿を排出します。この処置により、痛みが劇的に軽減し、治癒が早まります。
処置の流れ:
- 局所麻酔
- メスで小さく切開
- 膿を絞り出す
- 内部を洗浄
- ガーゼを詰める(必要に応じて)
- 抗菌薬の処方
3. 温罨法(おんあんぽう)
医師の指導のもと、清潔な温かいタオルを当てることで、血流を改善し、自然な排膿を促します。
4. 鎮痛薬
痛みが強い場合は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を処方することがあります。
自宅でのケア
医師の治療を受けながら、自宅で以下のケアを行うことで回復を早めることができます:
- 患部を清潔に保つ
- 触ったり潰したりしない
- 処方された薬を指示通りに使用する
- 十分な休息と栄養をとる
- 患部への刺激を避ける(タイトな衣服を避けるなど)
やってはいけないこと
- 自分で潰す:感染を広げるリスクがあり、跡が残りやすくなる
- 市販の薬を勝手に使う:適切でない薬は症状を悪化させる可能性がある
- 放置する:重症化や合併症のリスクがある
ニキビの治療法
医療機関での治療
ニキビ治療は近年大きく進歩しており、複数の有効な治療法があります。
1. 外用薬
アダパレン(ディフェリンゲル)
- 毛穴の詰まりを改善
- 角化異常を正常化
- 白ニキビ、黒ニキビに効果的
過酸化ベンゾイル(ベピオゲル)
- アクネ菌の殺菌作用
- 毛穴の詰まりを改善
- 炎症性ニキビに効果的
配合剤(エピデュオゲル、デュアック配合ゲル)
- アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合
- より強力な効果
抗菌薬外用剤
- クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど
- 炎症性ニキビに使用
2. 内服薬
抗菌薬
- ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど
- 炎症性ニキビが多い場合に使用
- 長期使用は耐性菌のリスクがあるため注意
ホルモン療法
- 低用量ピル(女性の場合)
- 男性ホルモンの影響を抑える
ビタミン剤
- ビタミンB2、B6、Cなど
- 皮脂分泌の調整や抗酸化作用
3. 保険適用外の治療
ケミカルピーリング
- 酸性の薬剤で古い角質を除去
- 毛穴の詰まりを改善
- 1〜2週間ごとに複数回実施
イソトレチノイン(重症ニキビ治療薬)
- 日本では保険適用外
- 重症ニキビに対して非常に効果的
- 副作用管理が重要
レーザー治療
- アクネ菌の殺菌
- 皮脂腺の縮小
- ニキビ跡の改善
日本皮膚科学会のガイドライン
日本皮膚科学会が発行している「尋常性痤瘡治療ガイドライン」では、ニキビの重症度に応じた標準的な治療法が示されています。
軽症(白ニキビ、黒ニキビが主体):
- アダパレンまたは過酸化ベンゾイルの外用
中等症(赤ニキビが混在):
- 上記に加えて、抗菌薬外用または内服を併用
重症(膿疱、結節が多発):
- 抗菌薬内服を中心とした積極的治療
- イソトレチノインの検討(保険適用外)
セルフケアの重要性
医療機関での治療と並行して、日常のスキンケアも重要です:
洗顔
- 1日2回、優しく洗う
- 熱いお湯は避け、ぬるま湯を使用
- 洗顔料は刺激の少ないものを選ぶ
- ゴシゴシこすらない
保湿
- ニキビがあっても保湿は必要
- オイルフリーまたはノンコメドジェニック製品を選ぶ
化粧品の選び方
- ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい)製品を選ぶ
- 油分の多いファンデーションは避ける
生活習慣
- 十分な睡眠(7〜8時間)
- バランスの良い食事
- ストレス管理
- 適度な運動
おできとニキビの予防法
共通する予防法
1. 皮膚を清潔に保つ
毎日の入浴やシャワーで、汗や皮脂、汚れをしっかり洗い流しましょう。特に運動後は早めに汗を拭き取り、可能であればシャワーを浴びることが理想的です。
2. 免疫力を高める
- 十分な睡眠:7〜8時間の質の良い睡眠
- バランスの良い食事:タンパク質、ビタミン、ミネラルを十分に
- 適度な運動:週3回、30分程度の有酸素運動
- ストレス管理:趣味やリラクゼーションの時間を持つ
3. 皮膚への刺激を避ける
- タイトすぎる衣服は避ける
- 通気性の良い素材を選ぶ
- 摩擦が起きやすい部位は特に注意
- 清潔な衣服、寝具を使用する
4. 小さな傷のケア
虫刺されや擦り傷など、小さな傷でも放置せず、早めに消毒して清潔に保つことで、細菌感染のリスクを減らせます。
おでき特有の予防法
1. 鼻毛を抜かない
鼻の中にできるおできの多くは、鼻毛を抜くことによる小さな傷から感染します。鼻毛の処理は、抜くのではなく、専用のハサミで切るようにしましょう。
2. 糖尿病の管理
糖尿病があると免疫力が低下し、おできができやすくなります。血糖値を適切にコントロールすることが重要です。
3. 再発を繰り返す場合
おできを繰り返す場合、鼻腔内に黄色ブドウ球菌が定着している可能性があります。皮膚科で鼻腔内の除菌治療(ムピロシン軟膏の塗布など)を受けることで、再発を防げることがあります。
ニキビ特有の予防法
1. 適切な洗顔
- 朝晩2回の洗顔を習慣化
- 洗顔料をしっかり泡立てる
- Tゾーンから優しく洗う
- すすぎ残しがないように注意
2. 食生活の見直し
ニキビと食事の関係は完全には解明されていませんが、以下の点に注意すると良いとされています:
- 高GI食品(白米、パン、甘いものなど)を控えめに
- 乳製品の過剰摂取を避ける
- ビタミンB群、亜鉛を意識的に摂取
- 抗酸化物質(ビタミンC、E、ポリフェノール)を含む食品を摂る
3. ホルモンバランスを整える
- 規則正しい生活リズム
- 十分な睡眠
- ストレスをためない
- 女性の場合、生理周期に合わせたケア
4. 髪型や化粧品に注意
- 前髪が顔にかからないようにする
- 枕カバーをこまめに洗濯する
- 化粧品は肌に合ったものを選ぶ
- メイクは寝る前にしっかり落とす

よくある質問(Q&A)
A: 絶対に自分で潰してはいけません。おできを自己流で潰すと、以下のような危険があります:
感染が周囲に広がる
血液中に細菌が入り込む(菌血症)
深い跡が残る
痛みが増強する
膿が十分に溜まっていて排膿が必要な場合は、必ず医療機関で適切な処置を受けてください。
A: はい、同時にできることがあります。例えば、背中にニキビがある人が、別の部位におできができることは珍しくありません。また、重症のニキビ(嚢腫性痤瘡)は、おできに似た症状を呈することもあります。
判断が難しい場合は、皮膚科医の診察を受けることをお勧めします。
A: おでき:原因菌の黄色ブドウ球菌は、直接接触や膿の付着によって他人に感染する可能性があります。特に、膿が出ている状態では注意が必要です。タオルや衣類の共用は避け、触った手はすぐに洗いましょう。
ニキビ:アクネ菌は皮膚常在菌であり、ニキビ自体が他人にうつることはありません。ただし、同じタオルを使うことで、細菌叢が移ることはあります。
Q4: 市販薬で治せますか?
A: おでき:市販薬での治療はお勧めしません。抗生物質の内服が必要なケースが多く、適切な診断と処方が重要です。早めに医療機関を受診してください。
ニキビ:軽症の白ニキビや黒ニキビであれば、市販のアダパレン製剤(医療用医薬品と同成分)が効果的です。ただし、炎症性ニキビや繰り返すニキビは、皮膚科での治療が推奨されます。
Q5: 跡を残さないためにはどうすればいいですか?
A: 両者に共通する重要なポイント:
- 早期治療:症状が軽いうちに治療を開始する
- 触らない、潰さない:刺激を与えると炎症が悪化し、跡が残りやすい
- 紫外線対策:炎症後色素沈着を防ぐため、日焼け止めを使用
- 保湿:適切な保湿で皮膚の回復を促す
特におできは真皮層まで炎症が及ぶため、陥没した跡が残りやすい傾向があります。医師の指示に従い、適切に治療することが最も重要です。
Q6: 繰り返すニキビやおできはどうすればいいですか?
A: 繰り返す場合は、以下の原因が考えられます:
ニキビの場合:
- ホルモンバランスの乱れ
- スキンケア方法が不適切
- 生活習慣の問題
- 基礎疾患(多嚢胞性卵巣症候群など)
おできの場合:
- 鼻腔内の細菌の定着
- 糖尿病などの基礎疾患
- 免疫力の低下
- 不衛生な環境
いずれも、皮膚科で原因を特定し、根本的な治療を行うことが重要です。必要に応じて、内分泌科や内科など他科との連携も行います。
Q7: 子どもにできた場合、大人と治療は違いますか?
A: 基本的な治療方針は同じですが、以下の点で配慮が必要です:
- 薬剤の種類や用量の調整
- 痛みへの配慮(処置時の麻酔など)
- 説明の工夫(子どもにも理解できるように)
- 学校生活への影響への配慮
特に思春期のニキビは、心理的な影響も大きいため、早期の治療とメンタル面でのサポートも重要です。
Q8: 妊娠中や授乳中でも治療できますか?
A: 妊娠中・授乳中でも治療は可能ですが、使用できる薬剤に制限があります。
使用を避けるべき薬:
- イソトレチノイン(催奇形性あり)
- テトラサイクリン系抗生物質
- 一部の外用薬
必ず妊娠中または授乳中であることを医師に伝え、安全な治療法を選択してもらいましょう。
まとめ
おできとニキビは、一見似ているように見えても、原因菌や発生メカニズム、治療法が大きく異なる皮膚トラブルです。
おできは黄色ブドウ球菌による感染症で、毛包全体が化膿した状態です。強い痛みを伴い、放置すると重症化のリスクがあるため、早期の医療機関受診が重要です。
ニキビは皮脂の過剰分泌と毛穴の詰まりから始まり、アクネ菌の増殖によって炎症を起こす疾患です。段階的に進行するため、早期の適切なケアで悪化を防ぐことができます。
両者を正しく見分けるポイントは:
- 痛みの強さ(おできの方が強い)
- 硬さ(おできの方が硬い)
- 大きさ(おできの方が大きい)
- 発生部位(おできは摩擦部位、ニキビは皮脂分泌部位)
自己判断が難しい場合や、以下のような症状がある場合は、速やかに皮膚科を受診しましょう:
- 発熱を伴う
- 急速に大きくなる
- 痛みが我慢できないほど強い
- 顔の中心部にできた
- 繰り返しできる
適切な診断と治療を受けることで、跡を残さずに治すことができます。また、日々のスキンケアや生活習慣の改善によって、予防も可能です。
皮膚トラブルは、QOL(生活の質)に大きく影響します。「たかがニキビ」「たかがおでき」と軽視せず、気になる症状があれば、ぜひお気軽にアイシークリニック上野院にご相談ください。専門医が、一人ひとりの症状に合わせた最適な治療をご提案いたします。
参考文献
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」 https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=24
- 厚生労働省「皮膚疾患に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:にきび」 https://www.dermatol.or.jp/qa/
- 国立感染症研究所「黄色ブドウ球菌感染症とは」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9317-mrsa-intro.html
- 日本化粧品工業連合会「スキンケアの基礎知識」 http://www.jcia.org/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務