はじめに
「頭にほくろがあるけど、これは大丈夫なのだろうか」「最近、頭皮のほくろが大きくなった気がする」――こうした不安を抱えている方は少なくありません。頭皮は髪の毛に覆われているため、顔や手足と比べてほくろの変化に気づきにくい部位です。しかし、実は頭皮は紫外線の影響を受けやすく、ほくろががん化するリスクも決して低くはありません。
本記事では、頭皮にできるほくろとがん(特に悪性黒色腫)の関係について、医学的な知見に基づきながらも、一般の方が理解しやすい形で詳しく解説します。どのようなほくろに注意すべきか、いつ医療機関を受診すべきかなど、実践的な情報をお届けします。

1. 頭皮のほくろとは何か
1-1. ほくろの基本知識
ほくろは医学用語で「色素性母斑(しきそせいぼはん)」または「母斑細胞性母斑」と呼ばれます。皮膚のメラニン色素を作る細胞(メラノサイト)が変化した母斑細胞が、局所的に増殖することで形成される良性の腫瘍です。
ほくろは生まれつきあるものもあれば、成長とともに新しくできるものもあります。思春期から30歳頃までに増えることが多く、その後は徐々に減少していく傾向があります。色は茶色から黒色まで様々で、平らなものから盛り上がったものまで形状も多様です。
1-2. 頭皮にほくろができる理由
頭皮は体の中でも特に紫外線を浴びやすい部位です。特に男性の場合、薄毛や脱毛により頭皮が直接紫外線にさらされることが多くなります。紫外線はメラノサイトを刺激し、ほくろの形成や変化を促す要因となります。
また、頭皮は血流が豊富で、細胞の代謝が活発な部位でもあります。このため、他の部位と比較してほくろができやすい環境にあると考えられています。
1-3. 頭皮のほくろの特徴
頭皮にできるほくろには、いくつかの特徴があります。
視認性の低さ:髪の毛に隠れているため、自分では発見しにくく、変化にも気づきにくい特徴があります。美容院や理容室で指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。
外的刺激を受けやすい:ブラッシング、シャンプー、ヘアカットなどの日常的な行為で刺激を受けやすい位置にあります。こうした物理的刺激が繰り返されることで、ほくろに変化が生じる可能性があります。
発見の遅れ:見えにくい部位であるため、悪性変化が起きても発見が遅れがちです。これが頭皮のがんの予後に影響を与える要因の一つとなっています。
2. ほくろとがん(悪性黒色腫)の違い
2-1. 悪性黒色腫(メラノーマ)とは
悪性黒色腫は、メラノーマとも呼ばれる皮膚がんの一種で、メラノサイトが悪性化したものです。日本人の皮膚がんの中では比較的少ないものの、非常に悪性度が高く、早期に転移しやすい特徴があります。
国立がん研究センターの統計によると、日本における悪性黒色腫の年間患者数は増加傾向にあり、早期発見・早期治療の重要性が指摘されています。
2-2. ほくろとがんを見分けるポイント
良性のほくろと悪性黒色腫を見分けることは、専門医でも難しい場合があります。しかし、いくつかの重要なチェックポイントがあります。
形の対称性:良性のほくろは左右対称であることが多いのに対し、悪性黒色腫は非対称的な形状を示すことが多くあります。
境界の明瞭さ:良性のほくろは輪郭がはっきりしていますが、悪性黒色腫は境界がぼやけていたり、ギザギザしていたりすることがあります。
色の均一性:良性のほくろは色が均一ですが、悪性黒色腫は複数の色(黒、茶、赤、白、青など)が混在することがあります。
大きさ:直径6mm以上のほくろは注意が必要です。ただし、これより小さくても悪性の場合があるため、大きさだけで判断することはできません。
変化の有無:短期間で大きさ、形、色が変化するほくろは要注意です。
2-3. 悪性黒色腫の日本人特有の特徴
日本人を含むアジア人に見られる悪性黒色腫には、特徴的なタイプがあります。
末端黒子型黒色腫:手のひら、足の裏、爪に発生しやすいタイプで、日本人の悪性黒色腫の約30〜40%を占めます。
結節型黒色腫:初期から隆起性の病変として現れるタイプで、進行が早い傾向があります。
悪性黒子型黒色腫:高齢者の顔面に多く見られ、ゆっくりと進行します。
頭皮に発生する悪性黒色腫は、これらのタイプのいずれも可能性があり、特に結節型は早期発見が重要とされています。
3. 頭皮のがん(悪性黒色腫)の特徴とリスク
3-1. 頭皮に発生する悪性黒色腫の統計
頭皮や首に発生する悪性黒色腫は、全体の約10〜15%を占めると報告されています。一見すると少ない割合に思えますが、頭頸部の悪性黒色腫は予後が比較的悪いことが知られており、注意が必要です。
その理由として、発見の遅れが挙げられます。髪の毛に覆われているため自己発見が難しく、診断時にはすでに進行していることが多いのです。また、頭皮は血流やリンパ流が豊富なため、がん細胞が転移しやすい環境にあります。
3-2. 頭皮の悪性黒色腫のリスク要因
以下のような方は、頭皮の悪性黒色腫のリスクが高いとされています。
紫外線曝露が多い方:屋外での仕事やスポーツを長年続けている方、特に帽子を被らずに過ごすことが多かった方はリスクが高まります。
薄毛・脱毛のある方:髪の毛による保護が少ないため、頭皮が直接紫外線にさらされやすくなります。
色白の方:メラニン色素が少ない方は、紫外線による DNA 損傷を受けやすい傾向があります。
家族歴のある方:家族に悪性黒色腫や他の皮膚がんの方がいる場合、遺伝的リスクが高まります。
免疫抑制状態の方:臓器移植後や免疫抑制剤を使用している方は、皮膚がんのリスクが上昇します。
既往歴のある方:過去に悪性黒色腫や他の皮膚がんを患ったことがある方は、再発や新たな発症のリスクがあります。
3-3. 頭皮特有の診断の難しさ
頭皮の悪性黒色腫には、診断における特有の課題があります。
視認性の問題:患者自身が発見することが難しく、かかりつけの美容師や理容師、あるいは家族が異常に気づくことが多いです。
多様な外観:頭皮の悪性黒色腫は、典型的なほくろの形状を取らないことがあります。出血しやすい結節や、治りにくい傷のように見えることもあります。
他疾患との鑑別:脂漏性角化症(老人性イボ)、基底細胞がん、有棘細胞がんなど、他の皮膚病変と区別が必要です。
生検の実施:髪の毛があることで、組織検査(生検)の実施がやや複雑になることがあります。
4. 危険なほくろを見分ける「ABCDEルール」
4-1. ABCDEルールとは
悪性黒色腫の可能性がある病変を見分けるために、国際的に広く使われているのが「ABCDEルール」です。これは、以下の5つの特徴の頭文字を取ったものです。
A(Asymmetry:非対称性)
ほくろの中心を通る線で左右に分けたとき、形が対称でない場合は要注意です。良性のほくろは通常、左右対称の形をしています。
B(Border:境界)
ほくろの輪郭がギザギザしている、不明瞭である、周囲にしみ出すように色素が広がっている場合は注意が必要です。良性のほくろは境界がはっきりしています。
C(Color:色)
一つのほくろの中に複数の色(黒、茶、赤、白、青など)が混在している場合は警戒すべきです。良性のほくろは通常、均一な色をしています。
D(Diameter:直径)
直径が6mm以上(鉛筆の消しゴム部分程度)のほくろは、悪性の可能性を考慮する必要があります。ただし、6mm未満でも悪性の場合があるため、大きさだけで判断することはできません。
E(Evolving:変化)
短期間(数週間から数ヶ月)で大きさ、形、色、高さなどが変化するほくろは要注意です。また、かゆみ、痛み、出血などの症状が現れた場合も警戒が必要です。
4-2. ABCDEルールの頭皮への応用
頭皮のほくろに対しても、このABCDEルールは有効です。ただし、頭皮は自分で観察しにくいため、以下の工夫が必要です。
鏡を使った自己チェック:手鏡と壁掛け鏡を使って、頭皮を確認する習慣をつけましょう。スマートフォンのカメラ機能も有効です。
家族やパートナーの協力:定期的に頭皮を見てもらい、変化がないかチェックしてもらうことが重要です。
美容師・理容師への相談:髪を切る際に、気になるほくろがないか聞いてみるのも良い方法です。
写真記録:気になるほくろを定期的に撮影し、変化を記録することで、早期発見につながります。
4-3. その他の警告サイン
ABCDEルール以外にも、以下のような症状がある場合は、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。
- ほくろから出血する、あるいは滲出液が出る
- ほくろの表面がただれる、かさぶたができる
- ほくろの周囲に赤みや腫れが生じる
- ほくろに痛みやかゆみがある
- ほくろの周囲に小さな黒い点(衛星病変)が出現する
- 以前は平らだったほくろが急に盛り上がってくる
5. 頭皮のほくろとがんの診断方法
5-1. 問診と視診
皮膚科を受診すると、まず問診が行われます。医師は以下のような点を確認します。
- ほくろに気づいた時期
- ほくろの変化(大きさ、色、形など)
- 自覚症状(痛み、かゆみ、出血など)
- 家族歴
- 日光曝露の程度
- 過去の皮膚疾患
次に視診が行われます。医師は肉眼でほくろの形、色、大きさ、境界などを詳しく観察します。頭皮全体を確認し、他にも気になる病変がないかチェックすることもあります。
5-2. ダーモスコピー検査
ダーモスコピー(皮膚拡大鏡検査)は、特殊な拡大鏡を使って皮膚を詳しく観察する検査です。10倍から数十倍に拡大することで、肉眼では見えない皮膚の構造やメラニン色素の分布パターンを確認できます。
この検査は痛みがなく、数分で終わります。ダーモスコピーにより、良性のほくろと悪性黒色腫を約80〜90%の精度で鑑別できるとされています。ただし、最終的な診断には組織検査が必要です。
5-3. 組織検査(生検)
悪性が疑われる場合、確定診断のために組織検査(生検)が行われます。生検にはいくつかの方法があります。
切除生検:病変を完全に切除して検査する方法です。小さな病変や悪性の可能性が高い場合に選択されます。最も確実な診断方法です。
パンチ生検:円筒形のメスを使って、病変の一部を採取する方法です。比較的大きな病変で行われることがあります。
切開生検:病変の一部をメスで切り取って検査する方法です。
頭皮の場合、髪の毛があるため、生検部位の一部を剃毛する必要があることがあります。生検は局所麻酔下で行われ、通常は数十分で終了します。
採取した組織は病理専門医によって顕微鏡で詳しく調べられ、悪性かどうか、悪性の場合はそのタイプや進行度などが判定されます。
5-4. 画像検査
悪性黒色腫と診断された場合、病気の広がり(病期)を調べるために、以下のような画像検査が行われることがあります。
超音波検査:リンパ節への転移の有無を調べます。
CT検査:胸部、腹部、骨盤部のCT検査により、内臓やリンパ節への転移を確認します。
MRI検査:脳や骨への転移が疑われる場合に行われます。
PET-CT検査:全身のがん細胞の分布を調べることができます。進行した悪性黒色腫で実施されることがあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、治療方針が決定されます。
6. 頭皮のがん(悪性黒色腫)の治療法
6-1. 外科的治療(手術)
悪性黒色腫の治療の基本は外科的切除です。病変とその周囲の正常組織を含めて切除することで、がん細胞を完全に取り除くことを目指します。
切除範囲:悪性黒色腫の厚さ(ブレスロー厚)に応じて、適切な切除マージン(病変の周囲の正常組織の幅)が決定されます。
- 厚さ1mm以下:1cmのマージン
- 厚さ1〜2mm:1〜2cmのマージン
- 厚さ2mm以上:2cmのマージン
頭皮の場合、切除後の傷を閉じるために、周囲の皮膚を移動させる局所皮弁術や、他の部位から皮膚を移植する植皮術が必要になることがあります。
センチネルリンパ節生検:悪性黒色腫の厚さが1mmを超える場合、センチネルリンパ節(がん細胞が最初に到達するリンパ節)生検が推奨されることがあります。これにより、リンパ節転移の有無を確認し、今後の治療方針を決定します。
リンパ節郭清:リンパ節に転移が認められた場合、その領域のリンパ節を広範囲に切除するリンパ節郭清が行われることがあります。
6-2. 薬物療法
進行した悪性黒色腫や転移がある場合、薬物療法が選択されます。近年、悪性黒色腫の治療は大きく進歩しており、以下のような治療法があります。
免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れるメカニズムを阻害し、免疫系ががん細胞を攻撃できるようにする薬です。ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、イピリムマブ(ヤーボイ)などがあり、顕著な治療効果が報告されています。
分子標的薬:悪性黒色腫の約半数に見られるBRAF遺伝子変異を標的とした薬(ベムラフェニブ、ダブラフェニブなど)や、MEK阻害薬(トラメチニブ、コビメチニブなど)があります。これらは特定の遺伝子変異を持つ患者に効果的です。
化学療法:従来の抗がん剤治療も、状況に応じて使用されることがあります。
6-3. 放射線療法
悪性黒色腫は一般的に放射線に抵抗性があるとされていますが、以下のような場合に放射線療法が選択されることがあります。
- 手術で完全に切除できなかった場合の補助療法
- 脳転移や骨転移に対する緩和治療
- 手術が困難な部位の病変に対する治療
- 高齢者など手術のリスクが高い患者への治療
6-4. 術後の経過観察
悪性黒色腫の治療後は、再発や転移の早期発見のために定期的な経過観察が重要です。
観察頻度:病期により異なりますが、通常は治療後3年間は3〜6ヶ月ごと、その後2年間は6〜12ヶ月ごとの受診が推奨されます。
観察内容:診察、血液検査、画像検査(CT、MRIなど)が行われます。また、全身の皮膚を詳しく観察し、新たな病変の発生がないか確認します。
悪性黒色腫は5年経過後も再発することがあるため、長期的なフォローアップが必要です。
7. 頭皮のほくろとがんの予防
7-1. 紫外線対策の重要性
頭皮の悪性黒色腫を予防する最も重要な方法は、紫外線対策です。
帽子の着用:外出時は必ず帽子を着用しましょう。つばの広い帽子(7cm以上)が理想的です。UVカット機能のある素材を選ぶとより効果的です。
日傘の使用:日傘も有効な紫外線対策です。UVカット率の高いものを選びましょう。
日焼け止めの使用:頭皮が見える部分や薄毛の部分には、日焼け止めを塗ることが重要です。スプレータイプの日焼け止めは頭皮にも使いやすく便利です。SPF30以上、PA+++以上のものを選び、2〜3時間ごとに塗り直しましょう。
紫外線の強い時間帯を避ける:午前10時から午後2時は紫外線が最も強い時間帯です。この時間帯の外出をできるだけ避けるか、日陰を選んで歩くようにしましょう。
7-2. 定期的なセルフチェック
月に一度、頭皮を含む全身のほくろをチェックする習慣をつけましょう。
チェック方法:
- 明るい照明の下で、全身を鏡で確認します
- 手鏡を使って、頭皮や背中など見えにくい部位もチェックします
- 家族やパートナーに協力してもらい、自分では見えない部分を確認してもらいます
- スマートフォンで気になるほくろを撮影し、記録しておきます
チェックポイント:
- 新しくできたほくろはないか
- 既存のほくろに変化はないか(大きさ、色、形)
- 出血や痛み、かゆみのあるほくろはないか
7-3. 生活習慣の改善
健康な免疫系を維持することも、がん予防に重要です。
バランスの取れた食事:野菜や果物を十分に摂取し、抗酸化物質やビタミンを補給しましょう。
適度な運動:定期的な運動は免疫機能を高めます。週に150分程度の中程度の運動が推奨されています。
禁煙:喫煙は様々ながんのリスクを高めます。
適度な飲酒:過度な飲酒は避けましょう。
ストレス管理:慢性的なストレスは免疫機能を低下させます。十分な睡眠と休息を取りましょう。
7-4. 定期的な皮膚科検診
特にリスクの高い方(家族歴がある、多数のほくろがある、紫外線曝露が多かったなど)は、年に1〜2回、皮膚科で全身の皮膚チェックを受けることをお勧めします。
専門医による定期的な検診により、早期発見・早期治療が可能になり、予後が大きく改善します。
8. いつ医師に相談すべきか
8-1. 受診が必要な症状
以下のような症状がある場合は、できるだけ早く皮膚科を受診してください。
緊急性の高い症状:
- 急速に大きくなるほくろ(数週間で明らかな変化)
- ほくろから繰り返し出血する
- ほくろが潰瘍化(ただれる)している
- ほくろの周囲に黒い点々(衛星病変)が出現
注意が必要な症状:
- 数ヶ月で徐々に大きくなっているほくろ
- 色が濃くなった、または複数の色が混在するようになったほくろ
- 形が非対称的なほくろ
- 境界が不明瞭なほくろ
- 直径6mm以上のほくろ
- 痛みやかゆみのあるほくろ
8-2. 受診する診療科
ほくろやがんの疑いがある場合は、皮膚科を受診してください。一般的な皮膚科クリニックでも診察は可能ですが、以下のような施設では、より専門的な診断・治療が受けられます。
- 皮膚科専門医が在籍する医療機関
- 大学病院や総合病院の皮膚科
- がん診療連携拠点病院
悪性黒色腫と診断された場合は、がん治療の経験が豊富な医療機関での治療が推奨されます。
8-3. 受診時の準備
皮膚科を受診する際は、以下の準備をしておくと診察がスムーズです。
情報の整理:
- ほくろに気づいた時期
- ほくろの変化の経過(可能であれば写真を撮っておく)
- 自覚症状の有無
- 家族歴(血縁者に皮膚がんや悪性黒色腫の方がいるか)
- 過去の紫外線曝露の程度
服装:全身の皮膚を確認することがあるため、脱ぎ着しやすい服装で受診しましょう。
質問リスト:医師に聞きたいことをあらかじめメモしておきましょう。

9. 頭皮のほくろに関するよくある質問
通常、良性のほくろ自体が直接的に抜け毛を引き起こすことはありません。ただし、ほくろの部分では毛の成長が影響を受けることがあり、その部分だけ毛が生えにくくなることはあります。また、ほくろを気にして頻繁に触ったり、刺激を与えたりすることで、周囲の毛が抜けやすくなる可能性があります。
ほくろから毛が生えているのは、むしろ良性の徴候と考えられています。悪性黒色腫では通常、毛は生えません。ただし、毛が生えているからといって100%安全とは言えないため、ほくろの他の特徴(形、色、大きさ、変化など)も総合的に判断する必要があります。
これは医学的根拠のない俗説です。適切な方法でほくろを除去しても、がんになりやすくなることはありません。むしろ、悪性の可能性のあるほくろを早期に除去することで、がんの進行を防ぐことができます。ただし、不適切な方法(自分で削る、市販の除去薬を使うなど)でほくろを処理すると、炎症を引き起こしたり、悪性の病変を見逃したりする危険があります。
はい、注意が必要です。悪性黒色腫には遺伝的要因があることが知られており、家族歴がある方はリスクが高まります。定期的な皮膚科検診を受け、日々のセルフチェックを行うことをお勧めします。また、紫外線対策を徹底することも重要です。
小児期のほくろは通常、良性です。しかし、生まれつき大きなほくろ(先天性巨大色素性母斑)がある場合や、ほくろが急速に変化する場合は、小児皮膚科または皮膚科を受診することをお勧めします。また、子どもの頃からの紫外線対策は、将来の皮膚がんリスクを減らすために非常に重要です。
10. まとめ:頭皮のほくろと向き合うために
頭皮のほくろは、多くの場合良性ですが、悪性黒色腫のような危険な病変が隠れている可能性もあります。見えにくい部位であるがゆえに、意識的な観察と早期発見の努力が必要です。
重要なポイント:
- 定期的なセルフチェック:月に一度、鏡やスマートフォンを使って頭皮を確認しましょう。家族やパートナーの協力も得ながら、変化を見逃さないようにします。
- ABCDEルールの活用:ほくろの非対称性、境界の不明瞭さ、色の不均一さ、大きさ、変化に注目し、異常を早期に発見します。
- 紫外線対策の徹底:帽子の着用、日焼け止めの使用など、日頃から頭皮を紫外線から守る習慣をつけましょう。
- 早期受診の重要性:気になる症状があれば、躊躇せずに皮膚科を受診してください。早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
- 定期的な専門医の検診:特にリスクの高い方は、年に1〜2回、皮膚科専門医による全身の皮膚チェックを受けることをお勧めします。
頭皮のほくろに関して不安や疑問がある場合は、一人で悩まず、専門医に相談することが最も確実な方法です。アイシークリニック上野院では、経験豊富な医師が丁寧に診察し、適切な診断と治療を提供しています。どうぞお気軽にご相談ください。
皮膚の健康は、全身の健康と密接に関連しています。日々のセルフケアと定期的な専門医のチェックにより、頭皮を含む皮膚を健やかに保ちましょう。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。
- 国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/skin/index.html - 日本皮膚科学会「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」
https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/ - 厚生労働省「がん対策情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/index.html - 日本癌治療学会「がん診療ガイドライン」
https://www.jsco-cpg.jp/ - 国立がん研究センター中央病院「皮膚腫瘍科」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/
※本記事の情報は2025年10月時点のものです。医学的な判断や治療については、必ず医療機関を受診し、専門医の診察を受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務