はじめに
皮膚に現れる「できもの」として、誰もが一度は気になったことがあるイボとほくろ。鏡を見るたび、「これはイボ?それともほくろ?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
実は、イボとほくろは医学的に全く異なる性質を持つ皮膚の変化です。見た目が似ていることもあり、一般の方には区別が難しいケースも少なくありません。しかし、それぞれの原因や特徴、治療法は大きく異なり、中には注意が必要な悪性腫瘍が隠れていることもあります。
アイシークリニック上野院では、最新のダーモスコピー検査を用いた精密な診断と、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。本コラムでは、専門医の視点から、イボとほくろの違いについて、その見分け方から治療法まで、詳しく解説いたします。
「最近ほくろが大きくなった気がする」「顔のイボが気になって仕方ない」「これは取った方がいいの?」といった疑問をお持ちの方にも、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

第1章:イボとほくろの基本的な違い
1-1. 医学的な定義の違い
まず最も重要な違いは、イボとほくろの「成り立ち」にあります。
**ほくろ(母斑細胞母斑)**は、メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)が変化した「母斑細胞」と呼ばれる細胞が集まってできたものです。医学的には「色素性母斑」「母斑細胞母斑」「色素細胞母斑」などと呼ばれます。これは基本的に良性の腫瘍で、体のどこにでも発生する可能性があります。
一方、イボには大きく分けて2つのタイプがあります:
- ウイルス性イボ:ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じる「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」が代表的
- 非ウイルス性イボ:加齢や紫外線の影響で生じる「脂漏性角化症(老人性イボ)」「軟性線維腫(スキンタッグ)」など
1-2. 見た目の特徴の違い
イボとほくろを見分ける際の重要なポイントをまとめました:
盛り上がりの有無
- シミは絶対に盛り上がりません(表皮内の色素増加のみ)
- わずかでも盛り上がりがあれば、イボかほくろの可能性が高い
- ファンデーションが溜まる部分は、段差がある証拠
色の違い
- ほくろ:濃い茶色~黒色(母斑細胞内の色素工場が多いため)
- イボ:肌色~薄茶色が多い(ウイルス性は肌色、老人性は茶褐色)
- シミ:薄茶色~やや濃い茶色(メラニン増加による)
表面の質感
- ほくろ:表面がツルツルしていることが多い
- ウイルス性イボ:ざらざらした感触、表面に小さな黒い点(血管)が見えることも
- 老人性イボ:表面がゴツゴツ、ガサガサしている
発生部位の傾向
- ほくろ:全身どこでも発生可能
- ウイルス性イボ:手足、顔面など外傷を受けやすい部位
- 老人性イボ:顔面、頭部、手の甲など紫外線を浴びやすい部位
1-3. 原因の違い
ほくろの原因
- 遺伝的要因が大きい
- 紫外線の影響
- ホルモンバランスの変化(思春期、妊娠期)
- BRAF遺伝子の変異(後天性の場合)
イボの原因
- ウイルス性:HPV感染(220種類以上の型が存在)
- 非ウイルス性:加齢、紫外線の蓄積、皮膚の老化、摩擦
第2章:ほくろ(母斑細胞母斑)について詳しく知る
2-1. ほくろのメカニズム
ほくろは、皮膚の基底層にあるメラノサイト(色素細胞)が変化して母斑細胞となり、これが集まることで形成されます。母斑細胞もメラニン色素を産生するため、褐色から黒色の色調を呈します。
母斑細胞の分布位置により、以下の3つのタイプに分類されます:
- 境界母斑:母斑細胞が表皮と真皮の境界部(基底層)に存在
- 平らで色が濃い
- 若い人に多い
- 複合母斑:境界母斑と真皮内母斑の混合型
- わずかに盛り上がる
- 中間的な特徴
- 真皮内母斑:母斑細胞が真皮内に存在
- しっかり盛り上がる
- 色が薄くなることも
時間の経過とともに、境界母斑→複合母斑→真皮内母斑へと変化することがあります。これは母斑細胞が徐々に深部に移動するためです。
2-2. ほくろの種類(Ackermanの分類)
Miescher型母斑
- 顔面、頭部、首に多い
- ドーム状に盛り上がる
- 毛が生えていることがある
- 幼児期から小児期に発生
Unna型母斑
- 上腕、太もも、首に多い
- 柔らかく盛り上がる
- 表面が桑の実状
- くびれを有することも
Clark型母斑
- 全身どこでも発生
- 平らな黒褐色の丸い形
- 手のひら、足の裏にも発生
Spitz母斑
- 若年者に多い(60歳以上では稀)
- 黒褐色だけでなく紅色のことも
- 悪性黒色腫に似ることがある
2-3. 先天性と後天性の違い
先天性色素性母斑
- 生まれつき存在
- サイズが大きいことが多い
- 20cm以上の巨大色素性母斑は悪性化リスクあり
- 形がやや不整
後天性色素性母斑
- 学童期から思春期以降に出現
- 多くは5mm以下の小型
- 圧倒的に多い(全体の9割以上)
- 6mm以上で急速に大きくなる場合は注意が必要
第3章:イボの種類と特徴を詳しく解説
3-1. ウイルス性イボの詳細
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
最も一般的なウイルス性イボで、「石イボ」とも呼ばれます。
特徴
- HPV 1型、2型、4型、7型などが原因
- 手指、足裏、顔面、肘、膝などに好発
- 境界明瞭で表面粗造な硬い結節
- 直径2~10mm程度
- 圧迫すると点状出血(黒い点)が見える
- 子どもに多い(6~10歳で23%、11~15歳で17%の有病率)
感染経路
- 皮膚の微小な傷から感染
- プール、ジム、銭湯などでの間接接触
- 自家接種(自分の体の他の部位へ広がる)
- 潜伏期間:3~6か月
足底疣贅(そくていゆうぜい)
足の裏にできる特殊なタイプのイボです。
特徴
- 体重により圧迫されて扁平
- 周囲を角化した皮膚で囲まれる
- 歩行時に痛みを伴うことがある
- 魚の目と間違えやすいが、削ると点状出血する
青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)
特徴
- HPV 3型、10型が原因
- 顔面、手の甲、前腕に好発
- 若い女性に多い
- 平らで肌色~淡褐色
- 多発することが多い
尖圭コンジローマ
特徴
- HPV 6型、11型が原因
- 性感染症の一つ
- 外陰部、肛門周囲に発生
- カリフラワー状の外観
3-2. 非ウイルス性イボの詳細
脂漏性角化症(老人性イボ)
特徴
- 40代以降に多い(80代ではほぼ全員)
- 紫外線を浴びやすい部位に好発
- 褐色~黒色でやや盛り上がる
- 表面がザラザラ、ゴツゴツしている
- サイズは数mm~3cm程度
- 良性腫瘍で自然消退しない
発生メカニズム
- 紫外線の長期暴露
- 加齢による皮膚の老化
- 遺伝的要因
- 表皮の角化細胞の良性増殖
軟性線維腫(スキンタッグ、首イボ)
特徴
- 中年以降に多い
- 首、脇の下、鼠径部など摩擦部位に好発
- 肌色~淡褐色
- 有茎性(くびれがある)のことが多い
- 1~5mm程度の小さなもの
- 多発することが多い
発生要因
- 皮膚の老化
- 摩擦による慢性刺激
- 体質(家族性)
- 肥満、糖尿病との関連も指摘
稗粒腫(はいりゅうしゅ、ミリウム)
特徴
- 目の周りに多い
- 1~2mmの白色の小さな粒
- 角質が皮膚内に溜まったもの
- 新生児から高齢者まで発生
第4章:診断方法 – 最新の検査技術
4-1. ダーモスコピー検査の重要性
ダーモスコピー(皮膚拡大鏡検査)は、皮膚科診療において欠かせない検査となっています。日本皮膚科学会のガイドラインでも「メラノーマ診療に必須」と位置づけられています。
ダーモスコピーの原理
- 10~30倍の拡大観察
- 偏光レンズやエコージェルで光の乱反射を抑制
- 皮膚表面下の構造を詳細に観察
- 非侵襲的(痛みなし)
- その場で結果がわかる
ダーモスコピーで見える特徴的所見
ほくろの所見
- 色素ネットワーク(網目状のパターン)
- 均一な色調分布
- 対称性のある構造
- 境界明瞭
脂漏性角化症の所見
- 多発性稗粒腫様嚢腫
- 面皰様開孔(comedo-like opening)
- 溝と隆起(fissures and ridges)
- ヘアピン様血管
基底細胞癌の所見
- 樹枝状血管
- 青灰色の卵巣様構造
- 葉状領域
- 車輪状構造
4-2. 病理組織検査
確定診断が必要な場合は、病理組織検査を行います。
適応となるケース
- 悪性腫瘍の疑いがある
- ダーモスコピーでも診断が困難
- 急速に大きくなっている
- 出血、潰瘍形成がある
- 色調が不均一
- 境界不明瞭
検査方法
- パンチ生検:円筒状の器具で一部を採取
- 切除生検:病変全体を切除
- 部分生検:メスで一部を切り取る
4-3. その他の検査
血液検査
- 悪性黒色腫の腫瘍マーカー(LDH、S-100蛋白など)
- ウイルス抗体検査(必要に応じて)
画像検査
- 超音波検査(深達度の評価)
- CT、MRI(転移の検索、悪性腫瘍の場合)
第5章:治療法の選択 – それぞれに最適な方法
5-1. ほくろの治療法
炭酸ガスレーザー治療
特徴
- 5mm以下の小さなほくろに適応
- 出血が少ない
- 治療時間が短い(1個あたり数分)
- 局所麻酔使用
メリット
- 傷跡が目立ちにくい
- ダウンタイムが短い
- 複数個同時に治療可能
デメリット
- 深いほくろは再発の可能性
- 病理検査ができない
切除縫合術
特徴
- 大きなほくろ、深いほくろに適応
- 完全に除去できる
- 病理検査が可能
メリット
- 再発がほぼない
- 悪性の除外が確実
- 保険適用可能(医学的適応がある場合)
デメリット
- 線状の傷跡が残る
- 抜糸が必要(約1週間後)
- ダウンタイムがやや長い
くり抜き法(パンチ切除)
特徴
- 3~6mm程度のほくろに適応
- 円筒状の器具でくり抜く
- 縫合または自然治癒
メリット
- 手技が簡単
- 病理検査可能
- 傷跡が比較的小さい
5-2. ウイルス性イボの治療法
液体窒素凍結療法
特徴
- -196℃の液体窒素で凍結
- 最も一般的な治療法
- 保険適用
方法
- 綿棒法:綿棒に液体窒素を含ませて当てる
- スプレー法:液体窒素をスプレーで噴射
- ピンセット法:冷やしたピンセットでつまむ
治療スケジュール
- 1~2週間ごとに繰り返し治療
- 平均5~10回程度必要
- 完治まで2~3か月
注意点
- 治療時の痛みあり
- 水疱形成の可能性
- 色素沈着が残ることがある
ヨクイニン内服療法
特徴
- ハトムギ由来の生薬
- 免疫賦活作用
- 保険適用
効果
- 単独では効果が限定的
- 凍結療法との併用が推奨
- 子どもに使いやすい
その他の治療法
サリチル酸外用
- スピール膏の貼付
- 角質軟化作用
- 足底疣贅に有効
ビタミンD3外用
- 活性型ビタミンD3軟膏のODT療法
- 細胞増殖抑制作用
- 難治例に使用
電気焼灼術
- 電気メスで焼灼
- 出血のコントロールが良好
- 麻酔が必要
5-3. 老人性イボ・首イボの治療法
炭酸ガスレーザー
特徴
- 精密な蒸散が可能
- 周囲組織へのダメージが少ない
- 多数のイボを一度に治療可能
最新機器の特徴
- コンピューター制御で均一な照射
- 極薄層での蒸散が可能
- 治癒が早い
ラジオ波メス
特徴
- 4.0MHzの高周波を使用
- 熱変性が少ない
- 傷跡が残りにくい
メリット
- 止血しながら切除
- 細かい操作が可能
- ダウンタイムが短い
ハサミによる切除
特徴
- 有茎性の首イボに適応
- 簡便で早い
- 保険適用可能
第6章:注意すべき症状 – 悪性腫瘍との鑑別
6-1. 悪性黒色腫(メラノーマ)の見分け方
悪性黒色腫は「ほくろのがん」とも呼ばれ、早期発見が極めて重要です。
ABCDEルール
A: Asymmetry(非対称性)
- 左右非対称な形
- いびつな形状
B: Border(境界)
- 境界が不明瞭
- ギザギザ、にじんだような辺縁
C: Color(色調)
- 色むらがある
- 黒、茶、赤、白などが混在
D: Diameter(直径)
- 6mm以上の大きさ
- 急速に大きくなる
E: Evolving(変化)
- 大きさ、形、色の変化
- 出血、潰瘍形成
日本人に多いタイプ
- 末端黒子型:手のひら、足の裏、爪に発生
- 全体の約30%を占める
- 初期は境界不明瞭な黒褐色斑
6-2. 基底細胞癌
日本人では最も頻度の高い皮膚がんです。
特徴
- 顔面(特に鼻周囲)に好発
- 黒色の結節が多い(日本人の特徴)
- 中央が陥凹することがある
- 真珠様光沢
- 毛細血管拡張を伴う
鑑別のポイント
- ダーモスコピーで樹枝状血管
- ゆっくり成長
- 転移は稀だが局所破壊性
6-3. 有棘細胞癌
特徴
- 紫外線暴露部位に好発
- 表面がもろく崩れやすい
- 出血しやすい
- かさぶたを繰り返す
- 悪臭を伴うことがある
6-4. 受診すべきタイミング
以下の症状がある場合は、早めの受診をお勧めします:
- 急激な変化
- 1~2か月で急速に大きくなる
- 色が急に濃くなる、薄くなる
- 形が変わってきた
- 出血・潰瘍
- 少しの刺激で出血する
- なかなか治らない傷がある
- じくじくした分泌物がある
- 症状の出現
- かゆみが続く
- 痛みがある
- しびれ感がある
- 見た目の異常
- 色むらが目立つ
- 境界がぼやけている
- 周囲に小さな黒い点が出現(衛星病巣)
第7章:日常生活での予防とケア
7-1. 紫外線対策
紫外線は、シミ、イボ、皮膚がんのリスクを高める最大の要因です。
効果的な紫外線対策
- 日焼け止めの正しい使用
- SPF30以上、PA+++以上を選択
- 2~3時間ごとに塗り直し
- 顔は小さじ1杯分が目安
- 曇りの日も必須(紫外線の80%は雲を通過)
- 物理的遮断
- 帽子(つば7cm以上が理想)
- サングラス(UV400対応)
- 日傘(UV遮断率99%以上)
- UVカット衣類
- 時間帯の工夫
- 10時~14時の外出を控える
- 日陰を選んで歩く
- 屋内でも窓際は注意
7-2. スキンケアの重要性
保湿ケア
- 皮膚バリア機能の維持
- セラミド配合製品が効果的
- 入浴後5分以内の保湿
摩擦を避ける
- 首イボの予防
- 柔らかいタオルの使用
- 衣類の素材に注意(綿、シルクなど)
7-3. 生活習慣の改善
食事
- ビタミンC、E(抗酸化作用)
- βカロテン(皮膚の健康維持)
- オメガ3脂肪酸(炎症抑制)
睡眠
- 成長ホルモンの分泌(22時~2時)
- 皮膚の修復・再生
- 7~8時間の確保
ストレス管理
- 免疫力の維持
- ホルモンバランスの安定
- 適度な運動
7-4. セルフチェックの方法
月に1回、以下の方法でチェックしましょう:
- 全身チェック
- 明るい場所で
- 手鏡と姿見を使用
- 家族に見てもらう
- 記録を取る
- 写真撮影(スマートフォン可)
- 日付を記録
- 大きさの変化を測定
- チェックポイント
- 新しいできものはないか
- 既存のものの変化
- 左右対称性
- 色の均一性

第8章:よくある質問(Q&A)
Q1. ほくろは取った方がいいですか?
A. 医学的には、以下の場合に除去を検討します:
- 悪性の可能性がある
- 機能的に問題がある(ひげ剃りで出血など)
- 急激に変化している
美容的な理由での除去も可能ですが、傷跡のリスクを考慮して判断します。
Q2. イボは他人にうつりますか?
A. ウイルス性イボは感染する可能性があります:
- 直接接触による感染
- タオルやマットを介した間接感染
- プール、銭湯での感染リスク
ただし、健康な皮膚には感染しにくく、小さな傷がある部位から侵入します。老人性イボや首イボは感染しません。
Q3. 市販薬でイボは治りますか?
A. イボの種類により異なります:
- ウイルス性イボ:サリチル酸製剤が一定の効果
- 老人性イボ:市販薬では除去不可能
- 首イボ:市販薬の効果は限定的
確実な治療のためには、医療機関での診断と治療が推奨されます。
Q4. レーザー治療は痛いですか?
A. 局所麻酔を使用するため、治療中の痛みはほとんどありません:
- 麻酔の注射時にチクッとする程度
- 麻酔テープ(子ども向け)も使用可能
- 治療後の痛みは軽度(鎮痛剤で対応可能)
Q5. 治療後の跡は残りますか?
A. 治療法と個人差により異なります:
- レーザー治療:小さな凹みや色素沈着(数か月で改善)
- 切除縫合:線状の傷跡(時間とともに目立たなくなる)
- 液体窒素:一時的な色素沈着や脱色
適切なアフターケアで、跡を最小限に抑えることができます。
Q6. 妊娠中にほくろが増えました。大丈夫ですか?
A. 妊娠中はホルモンの影響で:
- ほくろが増えることがある
- 既存のほくろが濃くなることがある
- 多くは出産後に元に戻る
ただし、急激な変化がある場合は受診をお勧めします。
Q7. 子どものイボはどう対処すべきですか?
A. 子どものウイルス性イボは:
- 自然治癒することも多い(免疫の発達)
- 広がりやすいため早期治療も重要
- 液体窒素は痛みがあるため、状況に応じて判断
- ヨクイニン内服から開始することも
Q8. 顔のイボを予防する方法は?
A. 老人性イボの予防には:
- 日焼け止めの毎日使用
- 保湿ケアの徹底
- ビタミンC誘導体配合化粧品
- レチノール製品の使用(医師の指導下)
- 定期的なピーリング
Q9. ほくろから毛が生えるのはなぜですか?
A. ほくろから毛が生える理由:
- 毛包が正常に機能している証拠
- 良性である可能性が高い
- メラニン色素の影響で太く見える
- 抜いても問題ないが、炎症に注意
Q10. 治療費はどのくらいかかりますか?
A. 保険適用の場合(3割負担):
- 液体窒素:1回約1,000円
- 小手術:5,000~15,000円程度
- 病理検査:3,000円程度
自費診療の場合:
- レーザー治療:1個3,000~10,000円
- 美容目的の除去:クリニックにより異なる
第9章:最新の治療技術と今後の展望
9-1. 最新の診断技術
AI診断支援システム
- ディープラーニングによる画像解析
- 悪性腫瘍の検出精度向上
- 皮膚科専門医と同等の診断精度
共焦点レーザー顕微鏡
- 非侵襲的な組織観察
- リアルタイムでの細胞レベル観察
- 生検なしでの診断可能性
9-2. 新しい治療法の開発
免疫療法
- HPVワクチンの応用
- 免疫チェックポイント阻害薬
- サイトカイン療法
遺伝子治療
- CRISPR-Cas9による遺伝子編集
- mRNA治療薬の開発
- 個別化医療の実現
9-3. 再生医療の応用
幹細胞治療
- 瘢痕のない創傷治癒
- 色素異常の改善
- 若返り治療への応用
まとめ
イボとほくろは、見た目が似ていても全く異なる皮膚の変化です。本コラムでご紹介したように、それぞれの特徴を理解することで、ある程度の見分けは可能です。
重要なポイントの再確認
- 盛り上がりがあればイボかほくろ(シミは平ら)
- 色が濃く均一ならほくろの可能性が高い
- 表面がザラザラならイボ、ツルツルならほくろ
- 急激な変化は要注意
- ダーモスコピー検査で正確な診断が可能
しかし、最も大切なのは、自己判断に頼らず、気になる症状があれば早めに皮膚科を受診することです。特に、悪性腫瘍の可能性がある場合、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
アイシークリニック上野院では、経験豊富な専門医が、最新の診断機器を用いて正確な診断を行い、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。「これはイボ?ほくろ?」と悩まれている方、「最近できものが気になる」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
皮膚の健康は、全身の健康のバロメーターでもあります。日頃からのセルフチェックと適切なスキンケア、そして定期的な皮膚科受診により、健康で美しい肌を保ちましょう。
参考文献
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https://www.dermatol.or.jp/ - 日本皮膚科学会尋常性疣贅診療ガイドライン策定委員会. 尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版). 日本皮膚科学会雑誌. 2019;129(6):1265-1292.
- 日本形成外科学会. 色素性母斑(ほくろ・母斑細胞母斑・黒子)診療ガイドライン.
https://jsprs.or.jp/ - Menzies SW, et al. Dermoscopy: An Atlas. 3rd ed. McGraw-Hill; 2009.
- Argenziano G, et al. Dermoscopy of pigmented skin lesions: Results of a consensus meeting via the Internet. J Am Acad Dermatol. 2003;48(5):679-693.
- 門野岳史. 脂漏性角化症の基本的ダーモスコピー所見. 日本皮膚科学会雑誌. 2015;125(9):1763-1767.
- 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS. 色素性母斑(ほくろ).
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/ - MSDマニュアル プロフェッショナル版. 疣贅. 2023.
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/ - 石地尚興, 他. 尋常性疣贅の治療. 皮膚科の臨床. 2018;60(8):1123-1129.
- 日本医科大学形成外科学教室. ほくろ・いぼ・できもの外来.
https://www.nms-prs.com/
免責事項:本コラムは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療の代替となるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務