薬疹の基礎知識と対処法:写真でみる軽度の症状から重症化サインまで

はじめに

医療機関で処方された薬や市販薬を服用した後、皮膚に赤みやぶつぶつが現れたことはありませんか?もしかすると、それは「薬疹」かもしれません。

薬疹は、薬を内服したり注射したりすることによって生じる皮膚の発疹で、薬に対するアレルギー反応によって引き起こされることが多く、典型的な症状として発赤、膨らみ、水疱、じんま疹、かゆみなどがあります。

本コラムでは、「薬疹 軽度 写真」というキーワードで情報を探している方に向けて、薬疹の基礎知識から軽度の症状の見分け方、適切な対処法、予防策まで、分かりやすく解説していきます。特に、軽度の薬疹がどのような見た目なのか、写真ではどのように映るのかという視覚的な特徴についても詳しくご説明します。

第1章 薬疹とは何か

1-1. 薬疹の定義と基本的なメカニズム

薬疹とは、薬を内服したり注射したりすることにより生ずる発疹のことです。その中でも問題となるのは、薬を投与されたごく一部の人に生ずるアレルギー性薬疹です。薬疹という用語は、広義には薬剤による皮膚症状全般を指しますが、一般的にはアレルギー性薬疹を意味することが多いです。

薬疹が発生するメカニズムは複雑ですが、主に以下の2つのタイプに分類されます:

即時型アレルギー 薬を飲んで10~30分後に蕁麻疹として症状が現れます。これは、IgE抗体が関与する即時型の反応で、アナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こすこともあります。

遅延型アレルギー 12~48時間後に赤い発疹として症状が現れます。薬疹の多くはこのタイプで、T細胞が関与する細胞性免疫反応によって引き起こされます。

1-2. なぜ薬疹が起こるのか

薬疹の発生には個人差があり、同じ薬を服用しても、薬疹を起こす人と起こさない人がいます。薬に対して反応するような細胞や抗体がある人(これを薬に感作された状態と呼びます)にのみ生じます。

興味深いことに、通常、薬に反応するこのような細胞や抗体が出来るのには内服を始めて1~2週間程かかるので、そこで初めて発症すると考えられています。つまり、全く初めて服用する薬ですぐに薬疹を起こすことは通常ありません。

ただし、例外もあります。以前に服用したことがある薬や、構造が似ている薬に対して既に感作されている場合は、初回服用でも薬疹が起こることがあります。

第2章 薬疹の種類と症状

2-1. 軽度の薬疹の特徴

軽度の薬疹で最も多いのは「播種状紅斑丘疹型」と呼ばれるタイプです。全薬疹中、最も多い臨床型(>80%)で、小紅斑、紅色丘疹が、左右対称性に全身に播種状に分布、融合します。

軽度の薬疹の典型的な特徴は以下の通りです:

見た目の特徴

  • 赤い発疹や2~3mmの小さな赤いぶつぶつ(丘疹)
  • 左右対称に広がることが多い
  • 体幹部から始まり、四肢に向かって広がる傾向がある
  • かゆみを伴うことが多いが、かゆみがない場合もある

経過の特徴

  • 原因薬の中止で、通常1週間以内に発疹は消退します
  • ただし、薬剤中止後数日は発疹が拡大する可能性があります

2-2. 薬疹の様々なタイプ

薬疹には軽度から重症まで、様々なタイプがあります。主なものを以下に示します:

播種状紅斑丘疹型(軽度・最も一般的) 前述の通り、最も頻度が高く、比較的軽度な薬疹です。写真で見ると、全身に赤い小さな発疹が広がっている様子が確認できます。

蕁麻疹型 体の広範囲に拡がる小さな赤い丘疹が特徴です。薬剤を服用してから数日以内に発症することが多く、かゆみを伴います。写真では、蚊に刺されたような盛り上がった発疹が見られます。

固定薬疹型 同じ部位に繰り返し皮疹が現れ、回数を重ねるごとに症状が悪化していきます。解熱剤、風邪薬を原因とすることが多くなります。写真では、円形や楕円形の境界明瞭な紅斑が特徴的です。

多形滲出性紅斑型 円形の紅斑が現れます。同心円状に拡大し、二重丸や三重丸のように見えることもあります。標的病変(ターゲット型)と呼ばれる特徴的な形状を示します。

光線過敏型薬疹 薬を使用後、日光を浴びることで、皮疹が出現します。高血圧や脂質異常症の薬、便秘薬、湿布薬などが主な原因となります。写真では、日光が当たる部位(顔、首、手の甲など)に限局した発疹が見られます。

2-3. 重症薬疹の種類と特徴

薬疹の中には、生命に関わる重症型も存在します。主な重症薬疹について説明します:

スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS) 中毒性表皮壊死症、スチーブンス・ジョンソン症候群があります。SJSは、全身の皮膚に水疱やびらんが生じ、特に粘膜症状が顕著です。写真では、口唇や眼の周りの重篤な粘膜障害が確認できます。

中毒性表皮壊死症(TEN) 中毒性表皮壊死症は、皮膚を触るだけで剥がれていき、全身に渡り赤くなっていきます。全身の皮膚がやけどのように剥離し、致命率が高い最重症型です。

薬剤性過敏症症候群(DIHS) 最近、これに加えてウイルスが関与する薬剤性過敏症症候群という病態の存在が明らかになり注目を集めています。高熱、肝機能障害、リンパ節腫脹などの全身症状を伴います。

第3章 薬疹の原因となる薬剤

3-1. 薬疹を起こしやすい薬剤

どのような薬でも薬疹を引き起こす可能性がありますが、特に頻度が高い薬剤があります。

よく薬疹の原因となる薬剤 アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛剤、カルボシステインなどの去痰剤、クラビットやジェニナックなどの抗菌薬が挙げられます。

これらの薬剤は日常的に使用される機会が多いため、薬疹の原因となることも多くなっています。その他、以下の薬剤も薬疹を起こしやすいことが知られています:

  • 抗生物質(ペニシリン系、セフェム系など)
  • 解熱鎮痛薬(NSAIDs)
  • 抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトインなど)
  • 高血圧治療薬(ACE阻害薬、利尿薬など)
  • 痛風治療薬(アロプリノールなど)
  • 糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬など)

3-2. 薬疹が発生するまでの時間

薬疹が発生するまでの時間は、薬疹のタイプや個人の感作状態によって異なります。

初めて服用する薬の場合 はじめて服用する薬の場合、アレルギーが成立するまでの感作期間が必要であるため、投与直後に薬剤アレルギーを生じる可能性は低いです。通常、開始4,5日~2,3週間で発疹が出現した場合、薬疹の可能性が考えられます。

以前に服用したことがある薬の場合 「10日以上前に一度飲んだことがあり、発疹がでる直前もしくは1~2日前に飲んだ薬」が薬疹の原因薬として最も疑われます。

注意すべき例外

  • 光線過敏型薬疹:薬剤服用後、日光曝露により発症
  • 固定薬疹:薬剤服用の度に同じ部位に発症
  • 扁平苔癬型薬疹:発症までに数か月から数年を要することもあります

第4章 薬疹と他の皮膚疾患の見分け方

4-1. 薬疹と蕁麻疹の違い

薬疹と蕁麻疹は、どちらも皮膚に赤みやかゆみを生じるため、混同されやすい疾患です。しかし、以下の点で区別できます:

蕁麻疹の特徴 皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気です。個々の皮疹(ブツブツや赤み)は数十分から数時間以内に消えるのが普通です。

薬疹との違い

  • 蕁麻疹:個々の発疹が数時間で消失し、別の場所に新たに出現する
  • 薬疹:同じ場所に数日間持続し、徐々に改善する
  • 蕁麻疹:盛り上がった膨疹が特徴的
  • 薬疹:平坦な紅斑や小さな丘疹が多い

4-2. 薬疹と湿疹の鑑別

湿疹と薬疹も似た症状を示すことがありますが、以下の点で区別できます:

湿疹の特徴 湿疹は水泡ができたり、傷口からジュクジュクしてしまうこともあり、治った後も色素沈着など跡が残りやすいです。

薬疹との違い

  • 発症の経過:湿疹は徐々に悪化、薬疹は急性に発症
  • 分布:湿疹は局所的なことが多い、薬疹は全身性・対称性
  • 薬剤との関連:湿疹は薬剤と無関係、薬疹は薬剤服用後に発症

4-3. 薬疹とウイルス性発疹の鑑別

ウイルス感染による発疹と薬疹の鑑別は、時に困難です。発疹の形やかゆみの有無などからは、薬疹なのかウイルス性感染症による湿疹なのかの判断が困難な場合があります。

鑑別のポイント

  • 全身症状:ウイルス感染では発熱、倦怠感などが先行することが多い
  • 経過:ウイルス性発疹は一定の経過をたどる(麻疹、風疹など)
  • 薬剤歴:薬疹では必ず薬剤服用歴がある
  • 血液検査:ウイルス抗体価の測定が有用

第5章 薬疹の診断方法

5-1. 問診の重要性

薬疹の診断において最も重要なのは詳細な問診です。問診時に数ヶ月まで遡って使用した薬や、注射の有無などを細かく聞いていきます。

問診で確認する項目

  • 服用している全ての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメント、漢方薬)
  • 各薬剤の服用開始時期と服用期間
  • 発疹が出現した時期
  • 過去の薬疹やアレルギーの既往
  • 家族のアレルギー歴

5-2. 薬疹の検査方法

薬疹の原因薬剤を特定するために、いくつかの検査方法があります。

薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST) 血液検査で、患者さんの血液(リンパ球)と原因薬剤を試験管内で混ぜ、薬剤に対する反応をみる方法です。薬剤2剤まで保険で検査できます。

ただし、偽陰性、偽陽性が多く、これのみで判定は危険であるとされており、結果の解釈には注意が必要です。

パッチテスト 原因となった薬を軟膏にして背中に貼るテストです。内服薬では薬剤をすりつぶし同量のワセリンでといて、パッチテスト用絆創膏で上背部または上腕に48時間閉鎖し、剥がした30分後と翌日すなわち72時間後に判定する。

しかし、本当に原因だったとしても陽性に出ない場合(偽陰性)もかなり多いのですという限界があります。

内服誘発試験 最も確実なのは、もう一度原因薬を内服していただく誘発試験(内服試験)です。ただし、安全性の観点から慎重に実施する必要があり、1/10~1/100あたりから投与する方が安全と言えます。

5-3. 血液検査とその他の検査

薬疹の診断や重症度評価のため、以下の検査も行われます:

血液検査

  • 血算、白血球分画(好酸球増多の確認)
  • 肝機能、腎機能(臓器障害の評価)
  • CRP(炎症反応の評価)
  • 各種ウイルス抗体価(ウイルス感染との鑑別)

皮膚生検 重症薬疹が疑われる場合、皮膚組織を採取して病理検査を行うことがあります。標的病変(target)や水疱を含む紅斑より皮膚生検を行う。表皮細胞(壊)死の有無や程度、浸潤するリンパ球の密度を観察する。

第6章 薬疹の治療法

6-1. 軽度の薬疹の治療

軽度の薬疹の治療は、主に以下の手順で行われます:

原因薬剤の中止 まず最初に行うべきは、症状を引き起こしている可能性のある薬剤を特定し、直ちに使用を中止することです。これが最も重要な治療の第一歩です。

対症療法 軽度の反応には、ときにかゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドクリームが使用されます。

具体的には:

  • 抗ヒスタミン薬の内服:かゆみの軽減
  • ステロイド外用薬:炎症の抑制
  • 保湿剤:皮膚バリア機能の回復

経過観察 薬のタイプによって、使用中止から症状の軽快までの期間が異なりますが、おおむね数日~2週間で改善が見られます。

6-2. 中等症から重症の薬疹の治療

症状が広範囲に及ぶ場合や、全身症状を伴う場合は、より積極的な治療が必要です:

ステロイド内服 薬剤の使用中止後は、必要に応じて、段階的に、副腎皮質ホルモン剤の外用、抗アレルギー剤の内服、副腎皮質ホルモン剤の内服と進めていきます。

入院治療 重症の場合は入院治療をおすすめする場合もあります(適切な大学病院や総合病院を紹介します)。

重症薬疹の治療 重度の反応には、ときに薬剤の静脈内投与と入院が必要です。SJSやTENなどの重症薬疹では、集中治療室での管理が必要になることもあります。

6-3. 薬疹を早く治すために

薬疹は直ちに原因となる薬を中断するのが、早期回復の近道です。ただし、注意すべき点があります:

薬剤中止の注意点 常用していた薬を急にやめてしまった場合は、かえって悪化することも考えられます。そのときは、徐々に減薬する方法に切り替えるなど早く治すというよりも、根本的に治すことを第一としています。

特に以下の薬剤は、医師の指導なく中止すると危険です:

  • 心臓病の薬
  • 血圧の薬
  • 糖尿病の薬
  • 抗凝固薬
  • ステロイド薬

日常生活での注意点

  • 患部を掻かない、こすらない
  • 十分な休息と栄養摂取
  • アルコールや刺激物の摂取を控える
  • 入浴は短時間、ぬるめのお湯で
  • 紫外線を避ける(特に光線過敏型の場合)

第7章 薬疹の予防と再発防止

7-1. 薬疹の予防策

薬疹を完全に予防することは困難ですが、リスクを最小限にすることは可能です:

お薬手帳の活用 皮膚科を受診する際には、お薬手帳、原因と考えられる薬をお持ちください。日頃からお薬手帳を持って来院して下さい。

お薬手帳には以下の情報を記録しておきましょう:

  • 服用した全ての薬の名前と期間
  • 過去のアレルギー歴
  • 薬疹を起こした薬の名前(赤字で記載)
  • 体調変化があった薬

医療機関での申告 新たに薬を処方される際は、必ず以下を伝えましょう:

  • 過去の薬疹歴
  • アレルギー歴
  • 現在服用中の薬
  • サプリメントや健康食品の使用

7-2. 再発防止のために

薬疹の原因となった薬については、原則二度と使用しないようにします。再発防止のための具体的な対策を以下に示します:

アレルギーカードの携帯 薬疹を起こした経験がある場合、医療機関でアレルギーカードが発行されることがあります。このカードには、薬疹を起こした薬剤名が記載されています。常に携帯し、医療機関受診時には必ず提示しましょう。

代替薬の検討 薬疹を起こした薬が必要な場合、医師と相談して代替薬を検討します。可能であれば代替薬を提案することが推奨されています。

家族への情報共有 緊急時に備えて、家族にも薬疹歴を共有しておきましょう。意識がない状態で搬送された場合でも、適切な情報提供ができます。

7-3. 薬疹が起きた場合の記録

薬疹が起きた場合、以下の情報を詳細に記録しておくことが重要です:

  1. 原因と考えられる薬の名前(商品名と一般名)
  2. 服用開始日と薬疹発症日
  3. 症状の経過(写真撮影も有効)
  4. 治療内容と改善までの期間
  5. 検査結果(DLST、パッチテストなど)

これらの記録は、将来の医療において極めて重要な情報となります。

第8章 薬疹の写真による診断の重要性

8-1. 軽度の薬疹の写真の特徴

「薬疹 軽度 写真」で検索される方が知りたい、軽度の薬疹の視覚的特徴について詳しく説明します。

播種状紅斑丘疹型(最も一般的な軽度薬疹)の写真での見え方

  • 赤い小さな斑点が体幹部を中心に散在
  • 個々の発疹は2-5mm程度の大きさ
  • 左右対称に分布することが多い
  • 境界は比較的明瞭
  • 圧迫すると一時的に赤みが消える(紅斑)

蕁麻疹型薬疹の写真での見え方

  • 地図状に盛り上がった発疹
  • 個々の発疹の大きさは様々
  • 中心部が白っぽく、周辺が赤い
  • 形や位置が時間とともに変化

固定薬疹の写真での見え方

  • 円形または楕円形の境界明瞭な紅斑
  • 同じ場所に繰り返し出現
  • 治癒後に茶色い色素沈着を残す
  • 単発または数個程度

8-2. 写真撮影のポイント

薬疹が疑われる場合、写真撮影しておくことは診断や経過観察に非常に有用です。

撮影のコツ

  1. 自然光または明るい場所で撮影
  2. 発疹の全体像と拡大写真の両方を撮る
  3. 定規やコインを一緒に写して大きさを記録
  4. 毎日同じ時間、同じ条件で撮影
  5. 日付を記録

撮影すべき部位

  • 最も症状が強い部位
  • 体幹部、四肢、顔面など複数箇所
  • 粘膜症状がある場合は口腔内も

8-3. 写真だけでは診断できない理由

薬疹の写真は診断の参考になりますが、写真だけで確定診断することは困難です。その理由は:

  1. 他の疾患との類似性 多くの皮膚疾患が似た外観を示すため、視診だけでは鑑別が困難
  2. 個人差の大きさ 同じ薬による薬疹でも、人によって現れ方が異なる
  3. 時間経過による変化 薬疹は時間とともに外観が変化するため、一時点の写真では全体像が把握できない
  4. 問診情報の重要性 薬剤服用歴など、写真からは得られない情報が診断に不可欠

したがって、薬疹が疑われる場合は、写真を参考にしながらも、必ず医療機関を受診して適切な診断を受けることが重要です。

第9章 医療機関を受診すべきタイミング

9-1. すぐに受診すべき危険な症状

以下の症状がある場合は、直ちに医療機関を受診してください:

緊急受診が必要な症状 薬剤を内服後すぐ(15分以内)に息苦しさを自覚した場合は、アナフィラキシーの可能性があり、救急車を呼ぶ必要があります。

その他の危険なサイン:

  • 全身の広範囲に急速に広がる発疹
  • 高熱(38℃以上)
  • 口唇、眼、陰部などの粘膜症状
  • 皮膚の水疱形成や剥離
  • 呼吸困難、動悸、血圧低下
  • 意識障害

9-2. 早めの受診が推奨される場合

以下の場合は、緊急ではないものの早めの受診が推奨されます:

  • 薬を始めて1-2週間後に発疹が出現
  • かゆみが強く日常生活に支障がある
  • 発疹が3日以上改善しない
  • 発疹が徐々に拡大している
  • 微熱や倦怠感を伴う

薬を飲み始めて2週間くらいしてから薬を飲むたびに蕁麻疹が生じる、過去に飲んだことがある薬を久しぶりに飲んだら全身に赤い発疹が出てきて広がっている等の症状があれば薬を中止して皮膚科を受診してくださいね。

9-3. 受診時の準備

医療機関を受診する際は、以下を準備しておくと診断がスムーズです:

必ず持参すべきもの

  • お薬手帳
  • 現在服用中の薬(実物またはパッケージ)
  • サプリメント、健康食品(使用している場合)
  • 症状の写真(スマートフォンでも可)

伝えるべき情報

  • いつから薬を飲み始めたか
  • いつから症状が出たか
  • 症状の変化(悪化、改善、変わらない)
  • 過去のアレルギー歴
  • 家族のアレルギー歴

第10章 特殊な薬疹と注意点

10-1. 光線過敏型薬疹

光線過敏型薬疹は、薬剤と紫外線の相互作用により発症する特殊な薬疹です。

原因となりやすい薬剤 糖尿病薬、降圧剤(サイアザイド)、高脂血症薬、抗菌剤(ニューキノロン)などが原因となりやすいです。

また、湿布薬に含まれるケトプロフェンなども光線過敏を起こすことがあり、湿布を貼った部位が日光に当たると、その形に一致した発疹が生じます。

予防と対策

  • 原因薬剤服用中は紫外線を避ける
  • 日焼け止めの使用
  • 長袖、帽子などで物理的に遮光
  • 薬剤中止後も数週間は注意が必要

10-2. 薬剤性過敏症症候群(DIHS)

DIHSは、限られた薬剤により引き起こされる重症薬疹の一つです。

特徴 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑。多くの場合、紅皮症に移行する。原因薬剤中止後も2週間以上症状が遷延する。

原因薬剤 起こしやすい薬は抗けいれん剤、痛風の薬、サルファ剤などである。

注意点

  • ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化が関与
  • 原因薬中止後も症状が長期間持続
  • 多臓器障害を伴うことがある
  • 専門医による治療が必要

10-3. 医薬品副作用被害救済制度

重篤な薬疹により健康被害を受けた場合、救済制度があります。

病院・診療所などで投薬された医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用により、健康被害を受けた方の各種の救済を目的に設けられた公的な制度です。

救済の対象 副作用により生じた入院治療を必要とする程度の疾病、日常生活が著しく制限される程度の障害及び死亡です。

申請に必要なもの

  • 医師の診断書
  • 薬剤との因果関係の証明
  • 治療経過の記録

この制度により、医療費、医療手当、障害年金などの給付を受けることができる場合があります。詳細は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで確認できます。

まとめ

薬疹は、誰にでも起こりうる薬の副作用の一つです。「薬疹 軽度 写真」というキーワードで情報を探している方は、自分や家族の皮膚症状が薬疹かどうか心配されていることと思います。

本コラムで解説したように、軽度の薬疹は適切な対処により速やかに改善することが多いですが、重症化する可能性もあるため、早期の診断と治療が重要です。

覚えておくべき重要なポイント

  1. 薬疹の可能性を疑うタイミング
    • 新しい薬を始めて4日~2週間後に発疹が出現
    • 以前飲んだことがある薬を再開後1-2日で発疹が出現
  2. 軽度薬疹の典型的な見た目
    • 小さな赤い発疹が左右対称に広がる
    • かゆみを伴うことが多い
    • 薬を中止すれば1週間程度で改善
  3. すぐに受診すべき危険なサイン
    • 高熱、粘膜症状、呼吸困難
    • 皮膚の水疱や剥離
    • 急速に拡大する発疹
  4. 予防と再発防止
    • お薬手帳の活用
    • アレルギー歴の申告
    • 原因薬の記録と共有

薬疹は、写真だけで診断することは困難です。薬疹が疑われる場合は、症状の写真を撮影して記録しながらも、必ず皮膚科などの専門医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

また、薬疹を経験した場合は、その情報を正確に記録し、今後の医療において必ず申告することで、再発を防ぐことができます。

薬は私たちの健康を守る大切なものですが、時として薬疹のような副作用を起こすこともあります。正しい知識を持ち、適切に対処することで、安全に薬物治療を受けることができます。

何か心配な症状がある場合は、躊躇せず医療機関を受診してください。早期の診断と適切な治療が、良好な予後につながります。


参考文献

  1. MSDマニュアル家庭版「薬疹」(2024年5月9日更新) https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/過敏症と反応性皮膚疾患/薬疹
  2. 日本皮膚科学会「薬疹(重症)- 皮膚科Q&A」 https://qa.dermatol.or.jp/qa18/index.html
  3. 日経メディカル「薬疹」(2020年3月更新) https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/guideline/202205/575092.html
  4. 日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」 https://www.jsaweb.jp/uploads/files/アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024.pdf
  5. 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」
  6. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品副作用被害救済制度」
  7. 日本皮膚科学会雑誌 第134巻第11号(2024年)「薬疹のバイオマーカー」

本コラムは医療情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代替となるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診断を受けてください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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