はじめに
「最近ほくろが増えてきた気がする」「新しいほくろが気になる」そんな悩みをお持ちの方は少なくありません。ほくろは医学的には「色素性母斑」と呼ばれ、多くの場合は良性の皮膚病変です。しかし、ほくろが増える背景には様々な要因があり、中には注意が必要なケースも存在します。
アイシークリニック上野院では、日々多くの患者様からほくろに関するご相談をいただいております。本記事では、ほくろが増える原因、年代別の特徴、注意すべきサイン、そして適切な対処法について、皮膚科専門医の視点から詳しく解説いたします。

ほくろとは?基礎知識を理解しよう
ほくろの定義と種類
ほくろ(色素性母斑)とは、メラニン色素を産生するメラノサイトや母斑細胞が集積してできる良性腫瘍です。一般的に茶色から黒色の色素斑として認識されますが、実際にはその形成過程や組織学的特徴によって複数の種類に分類されます。
主なほくろの種類:
- 境界母斑:皮膚の表皮と真皮の境界部分にある平坦なほくろ
- 複合母斑:境界部分と真皮内の両方に母斑細胞があるもの
- 真皮内母斑:真皮内のみにある盛り上がったほくろ
- 青色母斑:真皮深部にあり、青みがかって見えるほくろ
ほくろの発生メカニズム
ほくろは、メラノサイトの増殖と色素産生によって形成されます。この過程には遺伝的要因と環境的要因の両方が関与しており、個人によってほくろの数や分布が大きく異なるのはこのためです。
ほくろが増える主な原因
1. 加齢による自然な変化
年齢を重ねるにつれて、ほくろが増えることは自然な現象です。これは細胞分裂の累積的な影響や、長年にわたる紫外線曝露の結果として起こります。
年代別のほくろの変化パターン:
- 乳幼児期(0-2歳):先天性母斑以外はほとんど見られない
- 幼児期(3-6歳):小さなほくろが出現し始める
- 学童期(7-12歳):ほくろの数が徐々に増加
- 思春期(13-18歳):ホルモンの影響でほくろが急激に増加
- 成人期(19-40歳):新しいほくろの出現と既存のほくろの変化
- 中年期以降(40歳以上):脂漏性角化症などの他の色素斑も増加
2. 紫外線による影響
紫外線は ほくろの発生と増加に最も大きな影響を与える環境因子です。紫外線にさらされることで、メラノサイトが刺激され、新しいほくろの形成や既存のほくろの色調変化が起こります。
紫外線がほくろに与える影響:
- 新しいほくろの発生促進
- 既存のほくろの色の濃化
- ほくろのサイズ拡大
- 悪性変化のリスク増加
3. ホルモンの影響
特に女性では、妊娠、月経周期、更年期などのホルモンバランスの変化がほくろの増加や変化に影響することがあります。
ホルモンによる影響の例:
- 妊娠中:エストロゲンの増加により既存のほくろが濃くなったり、新しいほくろが出現
- 思春期:性ホルモンの影響でほくろが急激に増加
- ピル服用時:ホルモン剤の影響で色素沈着が起こりやすくなる
4. 遺伝的要因
家族にほくろが多い人は、自分自身もほくろができやすい傾向があります。これは、メラノサイトの活性や紫外線に対する感受性が遺伝的に決定される部分があるためです。
5. 生活習慣と環境要因
ほくろの増加に影響する生活習慣:
- 長時間の屋外活動
- 不適切な日焼け対策
- 慢性的なストレス
- 喫煙
- 不規則な生活リズム
年代別ほくろの特徴と注意点
乳幼児期(0-6歳)
この時期のほくろは主に先天性のものです。生まれつきある大きなほくろ(先天性色素性母斑)は、将来的な悪性化のリスクを定期的に評価する必要があります。
注意すべきポイント:
- 急激に大きくなるほくろ
- 色調が不均一になるほくろ
- 出血や潰瘍を伴うほくろ
学童期〜思春期(7-18歳)
この時期は生理的にほくろが増加する時期です。特に思春期にはホルモンの影響で急激にほくろが増えることがあります。
正常な変化:
- 小さく均一な色調のほくろの出現
- 既存のほくろの軽度の拡大や色調変化
注意が必要な変化:
- 6mm以上の大きなほくろの出現
- 非対称性や色調の不均一性
- 急激な変化
成人期(19-40歳)
この時期のほくろの変化は、主に紫外線曝露や生活習慣によるものです。新しいほくろの出現よりも、既存のほくろの変化に注意が必要です。
注意すべき変化:
- 20歳以降の新しいほくろの出現
- 既存のほくろの急激な変化
- かゆみや痛みを伴うほくろ
中高年期(40歳以上)
この時期には、ほくろ以外の色素斑(脂漏性角化症、老人性色素斑など)も増加します。悪性黒色腫(メラノーマ)のリスクも高くなる年代のため、より注意深い観察が必要です。

注意すべきほくろの見分け方「ABCDEルール」
皮膚科では、悪性の可能性があるほくろを見分けるために「ABCDEルール」を使用します。
A(Asymmetry:非対称性)
正常なほくろは左右対称ですが、悪性の可能性があるほくろは非対称になることがあります。
B(Border:境界)
境界がぼやけていたり、ぎざぎざしているほくろは注意が必要です。
C(Color:色調)
一つのほくろの中に複数の色(茶色、黒色、赤色、青色など)が混在している場合は要注意です。
D(Diameter:直径)
直径6mm以上のほくろは、悪性の可能性を考慮する必要があります。
E(Evolving:変化)
サイズ、形、色、厚みなどが変化しているほくろは専門医の診察を受けましょう。
ほくろが増えた時の対処法
1. セルフチェックの方法
月1回のセルフチェックを推奨します:
- 全身の観察:鏡を使って全身のほくろをチェック
- 写真記録:気になるほくろの写真を撮影して変化を記録
- サイズ測定:定規を使って大きなほくろのサイズを測定
- 変化の記録:新しいほくろや変化したほくろを記録
2. 医療機関での診察
以下のような場合は、必ず皮膚科専門医の診察を受けましょう:
- ABCDEルールに該当するほくろがある
- 急激に変化したほくろがある
- 出血、かゆみ、痛みを伴うほくろがある
- 20歳以降に新しく出現した大きなほくろがある
3. 診断方法
皮膚科での主な診断方法:
- ダーモスコピー:特殊な拡大鏡を使った詳細観察
- デジタル画像解析:コンピューターを使った画像診断
- 生検:必要に応じて組織の一部を採取して病理検査
- 全身スキャン:多数のほくろがある場合の全身チェック
ほくろの治療法
1. 外科的切除
悪性の疑いがあるほくろや、大きなほくろの場合は外科的切除が第一選択となります。
手術の特徴:
- 局所麻酔下での日帰り手術
- 完全な病理診断が可能
- 再発リスクが最も低い
- 傷跡は残るが、適切な縫合により目立ちにくくできる
2. レーザー治療
小さな良性のほくろに対しては、レーザー治療が選択されることがあります。
レーザー治療の種類:
- 炭酸ガスレーザー:ほくろを蒸散させる
- Qスイッチレーザー:色素を破壊する
- エルビウムヤグレーザー:精密な除去が可能
レーザー治療の特徴:
- 傷跡が小さい
- 治療時間が短い
- ダウンタイムが短い
- 病理診断ができない
- 深いほくろでは再発の可能性がある
3. 電気焼灼法
小さなほくろに対して、電気メスを使って焼灼する方法です。
4. 液体窒素療法
一部の表在性のほくろに対して使用されることがあります。
ほくろの増加を予防する方法
1. 紫外線対策
効果的な紫外線対策:
- 日焼け止めの使用:SPF30以上、PA+++以上を推奨
- 適切な塗布量:顔全体で500円玉大の量
- 塗り直し:2-3時間おきに塗り直し
- 物理的遮光:帽子、長袖、日傘の使用
- 時間帯の考慮:10-14時の外出を控える
2. 生活習慣の改善
ほくろの増加を抑制する生活習慣:
- 抗酸化食品の摂取:ビタミンC、E、β-カロテンを含む食品
- 十分な睡眠:7-8時間の質の良い睡眠
- ストレス管理:適度な運動や趣味によるストレス発散
- 禁煙:喫煙は皮膚の老化を促進
- 適度な運動:血液循環を改善し、皮膚の健康を維持
3. スキンケア
適切なスキンケア方法:
- やさしい洗顔:刺激の少ない洗顔料を使用
- 保湿:皮膚バリア機能を維持
- 刺激の回避:過度な摩擦や化学的刺激を避ける

よくある質問(FAQ)
Q1. ほくろが急に増えるのは病気のサインですか?
A1. 急激なほくろの増加は、必ずしも病気のサインではありませんが、以下の場合は医師の診察を受けることをお勧めします:
- 短期間(数週間から数ヶ月)で多数のほくろが出現
- 既存のほくろが急激に変化
- ABCDEルールに該当するほくろがある
- 家族歴に皮膚がんがある
Q2. 妊娠中にほくろが増えるのは正常ですか?
A2. 妊娠中のほくろの変化は、ホルモンの影響により比較的よく見られる現象です。しかし、以下の点に注意が必要です:
- 急激な変化があるほくろは医師に相談
- 新しく出現した大きなほくろは要注意
- 妊娠中でも皮膚科の診察は可能
- 治療は産後まで待つことが多い
Q3. 子どもの頃からあるほくろと新しいほくろ、どちらが危険ですか?
A3. 一般的に、20歳以降に新しく出現するほくろの方が注意が必要とされています:
- 先天性・小児期のほくろ:多くは良性だが、大きなものは要観察
- 成人期以降のほくろ:悪性化のリスクがやや高い
- いずれの場合も、変化があれば専門医の診察を受けることが重要
Q4. ほくろの除去は保険が適用されますか?
A4. ほくろ除去の保険適用は、医学的な理由があるかどうかで決まります:
保険適用となる場合:
- 悪性の疑いがある
- 機能的な問題がある(視野の妨げ、衣服との摩擦など)
- 外傷により損傷したほくろ
保険適用外の場合:
- 美容目的のみの除去
- 医学的に問題のない小さなほくろ
Q5. レーザー治療と手術、どちらを選ぶべきですか?
A5. 治療法の選択は、ほくろの性状や患者様のご希望によって決まります:
レーザー治療が適している場合:
- 小さな良性のほくろ
- 美容目的
- 傷跡を最小限にしたい
手術が適している場合:
- 悪性の疑いがある
- 大きなほくろ
- 確実な除去と病理診断が必要
アイシークリニック上野院でのほくろ治療
当院の特徴
アイシークリニック上野院では、皮膚科専門医による丁寧な診察と、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。
当院の診療体制:
- 皮膚科専門医による診察
- 最新のダーモスコピーによる詳細診断
- 豊富な治療選択肢(手術、レーザー、等)
- 日帰り手術対応
- 術後のフォローアップ
治療の流れ
- 初診・診察:詳細な問診と視診、ダーモスコピー検査
- 診断・治療計画:適切な治療法の提案と説明
- 治療:選択された方法による治療実施
- 術後管理:経過観察と適切なアフターケア
- フォローアップ:必要に応じた定期的な経過観察
費用について
治療費用は、ほくろの性状や治療法によって異なります。保険診療と自費診療の両方に対応しており、事前に詳細な費用説明を行っています。
まとめ
ほくろが増えることは、多くの場合自然な現象ですが、中には注意が必要なケースも存在します。大切なのは、正しい知識を持ち、適切な対応を取ることです。
重要なポイント:
- 定期的なセルフチェック:月1回の全身観察を習慣化
- ABCDEルールの活用:危険なほくろの早期発見
- 適切な紫外線対策:ほくろの増加と悪性化の予防
- 専門医への相談:気になる変化があれば早期受診
- 生活習慣の改善:健康な皮膚を維持するための総合的なケア
ほくろに関する不安や疑問がございましたら、一人で悩まずに専門医にご相談ください。アイシークリニック上野院では、患者様の皮膚の健康をサポートするため、丁寧な診察と適切な治療を提供しています。
早期発見・早期治療により、多くの皮膚トラブルは良好な結果を得ることができます。定期的なチェックと適切なケアで、健康な皮膚を維持していきましょう。
参考文献
- 日本皮膚科学会編『皮膚科診療ガイドライン』第3版、金芳堂、2019年
- 山本明史『色素性母斑の診断と治療』皮膚科の臨床、62(8): 1123-1130、2020年
- Marghoob AA, et al. “Dermoscopy: An illustrated self-assessment guide.” Dermatologic Clinics, 2013
- Siegel RL, et al. “Cancer statistics, 2021.” CA Cancer J Clin, 71(1): 7-33, 2021
- 石井則久『メラノーマの早期診断』日本皮膚科学会雑誌、130(4): 789-796、2020年
- WHO International Agency for Research on Cancer. “Solar and ultraviolet radiation.” IARC Monographs, 2012
- 大原國章『色素性疾患の診断と治療』現代皮膚科学大系、中山書店、2018年
- American Academy of Dermatology. “Moles: Signs and symptoms.” AAD Guidelines, 2021
- 清水宏『皮膚腫瘍の診断と治療』医学書院、2019年
- 佐藤友隆『レーザー治療の適応と限界』レーザー治療学会誌、25(3): 45-52、2021年
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監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務